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特開2025-9452ゴム付き部材の製造方法、接着シート及びゴム付き部材
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  • 特開-ゴム付き部材の製造方法、接着シート及びゴム付き部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009452
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ゴム付き部材の製造方法、接着シート及びゴム付き部材
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20250110BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20250110BHJP
   H01M 8/0286 20160101ALI20250110BHJP
   H01M 8/0284 20160101ALI20250110BHJP
【FI】
F16J15/10 A
H01M8/0202
H01M8/0286
H01M8/0284
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112464
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】皆川 馨
(72)【発明者】
【氏名】三村 裕毅
(72)【発明者】
【氏名】橘 和孝
【テーマコード(参考)】
3J040
5H126
【Fターム(参考)】
3J040AA17
3J040CA04
3J040EA02
3J040EA16
3J040EA25
3J040FA06
3J040HA05
5H126AA12
5H126AA13
5H126DD02
5H126DD03
5H126DD05
5H126FF04
5H126FF07
5H126GG18
5H126HH01
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】バリを除去するための工程が必要となるという問題に対して、ゴム部材のバリの発生を抑制できるゴム付き部材の製造方法、接着樹脂シート及びゴム付き部材を提供すること。
【解決手段】ゴム付き部材の製造方法は、第1面に凹構造を有する接着シートを、当該第1面で、未架橋のゴム部材に当接させると共に、前記接着シートの第2面で基材に当接させる工程(S12)と、ゴム部材を加熱して、前記基材と前記ゴム部材を接着する工程(S13)と、を備えるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に凹構造を有する接着シートを、当該第1面で、未架橋のゴム部材に当接させると共に、前記接着シートの第2面で基材に当接させる工程と、
前記ゴム部材を加熱して、前記基材と前記ゴム部材を接着する工程と、を備える、ゴム付き部材の製造方法。
【請求項2】
前記接着シートの第1面中央部の凹構造の密度は、前記接着シートの第1面端部の凹構造の密度より高い請求項1に記載のゴム付き部材の製造方法。
【請求項3】
基材とゴム部材とを接着する接着シートであって、前記ゴム部材と接着する一面に凹構造を有する接着シート。
【請求項4】
基材と、
ゴム部材と、
前記基材及び前記ゴム部材の間に位置し、前記ゴム部材と当接する一面に凹構造を有する接着シートと、を備えるゴム付き部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム付き部材の製造方法、接着シート及びゴム付き部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シール部が形成される溝と、ゴムの逃がし溝(サイドリップ)を有するキャビプレートを用いた、シール付きプレートの製造方法が記載されている。特許文献1に記載のシール付きプレートの製造方法は、シール部の架橋処理を行う際のゴムの膨張分をサイドリップに流すことにより、シール部のバリを所定の位置にのみ生じるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-181551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシール付き部材の製造方法は、バリの発生位置を制御するものであり、バリの発生自体を抑制するものではなかった。そのため、バリを除去するための工程が必要となるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態のゴム付き部材の製造方法は、第1面に凹構造を有する接着シートを、当該第1面で、未架橋のゴム部材に当接させると共に、前記接着シートの第2面で基材に当接させる工程と、前記ゴム部材を加熱して、前記基材と前記ゴム部材を接着する工程と、を備えるようにした。
【0006】
一実施形態のゴム付き部材の製造方法は、前記接着シートの第1面中央部の凹構造の密度は、前記接着シートの第1面端部の凹構造の密度より高くした。
【0007】
一実施形態の接着シートは、基材とゴム部材とを接着する接着シートであって、前記ゴム部材と接着する一面に凹構造を有するようにした。
【0008】
一実施形態のゴム付き部材は、基材と、ゴム部材と、前記基材及び前記ゴム部材の間に位置し、前記ゴム部材と当接する一面に凹構造を有する接着シートと、を備えるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本開示のゴム付き部材の製造方法、接着シート及びゴム付き部材によれば、ゴム部材のバリの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】、本実施の形態に係るゴム付き部材の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2】本実施の形態に係るゴム付き部材の製造方法の一例を示す断面図である。
図3】本実施の形態に係るシール部品付きセパレータの一例を示す断面図である。
図4】本実施の形態に係る接着性樹脂シートの一例を示す斜視図及び断面図である。
図5】本実施の形態に係る接着性樹脂シートの一例を示す斜視図及び断面図である。
図6】本実施の形態に係る接着性樹脂シートの一例を示す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施の形態
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。以下の開示では、基材をセパレータ、接着シートを接着性樹脂シート、ゴムをシール部品とした例で説明する。このようなシール部品付きセパレータは、燃料電池のセル間のシール部品に適用することができる。
【0012】
基材となるセパレータ基材としては、金属材料、樹脂材料及び黒鉛材料のいずれかが好適である。接着性樹脂シートの材料としては、熱可塑性樹脂が好適である。接着性樹脂シートには、断面から見て、段差溝または貫通溝が設けられている。そして、シール部品は、ゴムガスケットが好適である。
【0013】
セパレータに対する接着性樹脂シートの仮接着は、熱圧着法、超音波圧着、振動圧着及びレーザーのいずれかが好適である。そして、接着性樹脂シートを介して、セパレータとシール部品を接着する工法は、インサート成形工法、転写工法及び貼り合わせ工法が好適である。これらの工法は以下の通りである。
【0014】
インサート成形工法
・金型に接着樹脂シート付のセパレータ基材がセットされる。
・次に、未架橋状態のゴムに熱・圧力が加えられることにより、シール部材の原料である未架橋状態のゴムが金型に充填される。
・次に、金型内で未架橋状態のゴムに熱または光が与られ、シール部材の原料である未架橋状態のゴムが架橋と同時に、シール部品と接着性樹脂シートとセパレータ基材が接着される。
・そして、セパレータ基材と一体となったシール部品が金型から脱型される。
【0015】
転写工法
・未架橋状態のシール部材の原料に熱または圧力が加えられ、シール部材の原料が金型に充填される。
・次に、充填後、金型を開き、接着樹脂シート付のセパレータが金型に配置される。
・次に、金型内で熱または光が与えられることにより、シール部材が架橋されると共に、シール部品と接着性樹脂シートとセパレータ基材が接着される。
・そして、セパレータ基材と一体となったシール部品が金型から脱型される。
【0016】
貼り合わせ工法
・接着性樹脂シート付のセパレータ基材の上に、架橋が完了した成形済みのシール部品が置かれ、金型にセットされる。
・次に、金型内でシール部品と接着性樹脂シートとセパレータ基材に熱・圧力が加えられ、シール部品と接着性樹脂シートとセパレータ基材が接着される。
・セパレータ基材と一体となったシール部品が金型から脱型される。
【0017】
次に、ゴム付き部材の製造方法の一例を説明する。図1は、本実施の形態に係るゴム付き部材の製造方法の一例を示すフローチャートである。また、図2は、本実施の形態に係るゴム付き部材の製造方法の一例を示す断面図である。
【0018】
まず、ステップS11において、図2Aに示すように、金型211、212に未架橋のゴム213が射出成形される。そしてステップS12に進む。
【0019】
次に、ステップS12において、図2Bに示すように、溝付き接着性樹脂シート214を仮止めしたセパレータ215が金型211、212内に設置される。そしてステップS13に進む。
【0020】
ステップS13において、図2Cに示すように、加熱によりゴム213を架橋させると共に、接着性樹脂シート214を溶融してゴム213とセパレータ215が接着される。そしてステップS14に進む。
【0021】
なお、ステップS13においては、ゴム213の熱膨張分が、接着性樹脂シート214の溝に収容される。このような構成によると、ゴム213の熱膨張分が接着シートの端部から流出することを抑制できる。そのため、図1に記載のフローチャートによって示される製造方法を用いることにより、ゴム部材のバリの発生を抑制しつつ、ゴム付き部材を製造できる。
【0022】
ステップS14において、図2Dに示すように、金型211、212からセパレータが脱型される。以上の工程によりゴム付き部材が製造される。
【0023】
次に、ゴム付き部材の一例であるシール部品付きセパレータについて説明する。図3は、本実施の形態に係るシール部品付きセパレータの一例を示す断面図である。
【0024】
図3において、シール部品付きセパレータ301は、基材311と、樹脂シート312と、シール部品313とを備える。
【0025】
基材311は、樹脂シート312の第2面315で樹脂シート312と接着している。
樹脂シート312は、第1面314から第2面315まで貫通する溝316-1~316-n(nは任意の自然数)を有する。
【0026】
シール部品313は、樹脂シート312の第1面314で樹脂シート312と接着している。そして、溝316-1~316-nはシール部品313の一部が充填されている。
【0027】
また、シール部品付きセパレータ302は、基材321と、樹脂シート322と、シール部品323とを備える。
【0028】
基材321は、樹脂シート322の第2面325で樹脂シート322と接着している。
樹脂シート322は、第1面324に溝326-1~326-n(nは任意の自然数)を有する。溝326-1~326-nは貫通溝ではなく、第2面325には溝326-1~326-nを有していない。
【0029】
シール部品323は、樹脂シート322の第1面324で樹脂シート322と接着している。そして、溝326-1~326-nはシール部品323の一部が充填されている。
【0030】
次に接着性樹脂シートについて説明する。図4は、本実施の形態に係る接着性樹脂シートの一例を示す斜視図及び断面図である。
【0031】
図4において、接着性樹脂シート401は、溝402-1~402-nを有する。溝402-1~402-n(nは任意の自然数)は、第1面403上をシール部品の幅方向(X軸方向)に垂直に伸びている。A-A’での断面図に示すように、溝402-1~402-nは接着性樹脂シート401の第1面403から第2面404まで貫通している溝である。
【0032】
また、接着性樹脂シート411は、溝412-1~412-nを有する。溝412-1~412-n(nは任意の自然数)は、第1面403上をシール部品の幅方向に垂直に伸びている。B-B’での断面図に示すように、溝412-1~412-nは接着性樹脂シート411の第1面413に設けられている。そして溝412-1~412-nは貫通溝ではなく、第2面414には存在しない。
【0033】
また、溝は、シール部品の幅方向に平行な方向に伸びていてもよい。図5は、本実施の形態に係る接着性樹脂シートの一例を示す斜視図及び断面図である。
【0034】
図5において、接着性樹脂シート501は、溝502-1~502-n(nは任意の自然数)を有する。溝502-1~502-nは、第1面503上をシール部品の幅方向に平行(X軸方向)に伸びている。C-C’での断面図に示すように、溝502-1~502-nは接着性樹脂シート501の第1面503から第2面504まで貫通している溝である。
【0035】
また、接着性樹脂シート511は、溝512-1~512-n(nは任意の自然数)を有する。溝512-1~512-nは、第1面513上をシール部品の幅方向に平行に伸びている。D-D’での断面図に示すように、溝512-1~512-nは接着性樹脂シート511の第1面513に設けられている。そして溝512-1~512-nは貫通溝ではなく、第2面514には存在しない。
【0036】
図5に示す接着性樹脂シート501及び接着性樹脂シート511は、シール部品の幅方向に対して、平行に溝を設けることで、シール部品の奥行方向でのゴム形状差異による膨張量差異に対応できる。
【0037】
また、シール部品の断面形状に応じた溝配置により、幅方向に平行な溝と奥行方向に平行な溝が、メッシュ状やドット状に混在することが考えられる。図6は、本実施の形態に係る接着性樹脂シートの一例を示す斜視図及び断面図である。
【0038】
図6において、接着性樹脂シート601は、溝602-1~602-n及び溝603-1~603-m(n、mは任意の自然数)を有する。溝602-1~602-nは、第1面604上をシール部品の奥行き方向(Y軸方向)に平行に伸びている。また、溝603-1~603-mは、第1面604上をシール部品の幅方向(X軸方向)に平行に伸びている。
【0039】
また、図6において、接着性樹脂シート611は、穴状構造612-1~612-n(nは任意の自然数)を有する。穴状構造612-1~612-nは、接着性樹脂シート611の第1面613上に点在している。そして、穴状構造612-1~612-nは、シール部品の幅方向及び奥行き方向の少なくとも1つに平行に配置されている。
【0040】
接着性樹脂シート601及び接着性樹脂シート611は、シール部品の形状差異による熱膨張差異に対応できる。
【0041】
以上のように、本実施の形態のゴム付き部材の製造方法、接着樹脂シート及びゴム付き部材によれば、ゴム部材の膨張分が、接着シートの凹構造に収容されるため、ゴム部材のバリの発生を抑制できる。
【0042】
また、本実施の形態のゴム付き部材の製造方法、接着樹脂シート及びゴム付き部材によれば、接着性樹脂シートに段差溝や貫通穴を設けることで、シール部品を圧縮時のセパレータへの面圧が均一化される。
【0043】
また、本実施の形態のゴム付き部材の製造方法、接着樹脂シート及びゴム付き部材によれば、接着性樹脂シートに段差溝や貫通穴を設けることで、転写工法時の膨張した余剰ゴム体積が接着性樹脂シート側に逃げ、セパレータの設計自由度を高められる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、ゴムの形状にあわせて、貫通溝と段差溝が、混在していてもよい。また、溝を上面視から見た形状は、点線であってもよい。すなわち溝が直線上で断続的に位置するものであってもよい。また、溝の所定の面積あたりの配置密度は、シール部品の幅方向に対して中央側が密、両端が粗など、密度分布があってもよい。
【0045】
また、例えば、ゴムの断面形状が、セパレータ接着面から頂点に掛けて幅が狭まる台形や山形の場合、ゴムが熱膨張する時、中央側のゴム膨張体積が多くなる。溝の深さ(貫通、段差)や溝の配置密度を設けることで、部位ごとの膨張量の差異に対応できる。
【符号の説明】
【0046】
211 金型
213 ゴム
214、401、411、501、511、601、611 接着性樹脂シート
215、301、302 セパレータ
311、321 基材
312、322 樹脂シート
313、323 シール部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6