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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009460
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20250110BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20250110BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20250110BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20250110BHJP
   B60K 15/063 20060101ALI20250110BHJP
   B60K 8/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
E02F9/00 M
F01P3/18 A
F02M21/02 G
F02M21/02 X
B60K11/06
B60K15/063 B
B60K8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112479
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 昌志
(72)【発明者】
【氏名】平原 篤
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓則
(72)【発明者】
【氏名】岡 秀和
(72)【発明者】
【氏名】陸田 優一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 道雄
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
3D235
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D038CA08
3D038CA09
3D038CA12
3D038CB09
3D038CC18
3D235AA19
3D235BB06
3D235BB45
3D235CC23
3D235CC24
3D235FF23
(57)【要約】
【課題】水素漏れ時の安全性を向上させ、水素タンク周辺の温度上昇を抑制する。
【解決手段】作業機械(100)は、水素を貯留する水素タンク(31)と、冷却風(CA)と熱交換する熱交換器(33)と、作業機械(100)の動作のための電子機器(34)と、機械室(14)と、を備える。水素タンク(31)は、機械室(14)において、電子機器(34)よりも上方に配置され、熱交換器(33)よりも冷却風(CA)の流れ方向における上流に配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を貯留する水素タンクと、
冷却風と熱交換する熱交換器と、
作業機械の動作のための電子機器と、
機械室と、を備え、
前記水素タンクは、前記機械室において、前記電子機器よりも上方に配置され、前記熱交換器よりも前記冷却風の流れ方向における上流に配置される、作業機械。
【請求項2】
前記機械室は、前記機械室の外部の空気を前記冷却風として前記機械室の内部に吸入するための吸気口と、前記機械室の内部の前記冷却風を前記機械室の外部に排出するための排気口と、を有する壁部により画定され、
前記作業機械は、前記冷却風の流れを形成する冷却ファンをさらに備える、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記吸気口の少なくとも一部は、前記水素タンクに対して水平方向に並ぶような高さ位置又は前記水素タンクよりも上方の位置に形成される、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記排気口の少なくとも一部は、前記水素タンクに対して水平方向に並ぶような高さ位置又は前記水素タンクよりも上方の位置に形成される、請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記水素タンクの温度又はこれに関連する温度を検出する温度検出器と、
コントローラと、をさらに備え、
前記コントローラは、前記温度検出器により検出される温度が予め設定された規定値以上になると、前記冷却ファンの回転数を増加させるための制御を行う、請求項2に記載の作業機械。
【請求項6】
前記機械室において水素を検出する水素検出器と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記水素検出器が水素を検出すると、前記冷却ファンの回転数を増加させるための制御を行う、請求項2に記載の作業機械。
【請求項7】
前記熱交換器を通過した前記冷却風が前記機械室において前記熱交換器を通過する前の前記冷却風と混ざることを回避するための仕切りをさらに備える、請求項1~6の何れか1項に記載の作業機械。
【請求項8】
前記水素タンクから水素が供給される燃料電池装置をさらに備え、
前記燃料電池装置は、前記水素タンクよりも下方の位置で、かつ、上下方向から見たときに前記水素タンクと重なるような位置に配置される、請求項1~6の何れか1項に記載の作業機械。
【請求項9】
前記水素タンクから水素が供給される燃料電池装置をさらに備え、
前記水素タンク及び前記燃料電池装置を含む水素関連機器は、前記電子機器よりも上方に配置される、請求項1~6の何れか1項に記載の作業機械。
【請求項10】
ブームと、
旋回フレームと、をさらに備え、
前記旋回フレームは、フレーム本体と、前記フレーム本体から起立するとともに前後に延びる起立体と、有し、
前記起立体は、前記ブームの基端部が取り付けられるブーム取付部と、前記ブーム取付部よりも後方に位置し、前記ブーム取付部よりも高さの低い後側部分と、を含み、
前記水素関連機器は、前記起立体の前記後側部分よりも上方の位置で、かつ、上下方向から見たときに前記後側部分と重なるような位置に配置される、請求項9に記載の作業機械。
【請求項11】
前記電子機器は、前記起立体の前記後側部分の右及び左の少なくとも一方に配置される、請求項10に記載の作業機械。
【請求項12】
前記起立体は、前記フレーム本体から起立して前後に延びる左右の起立板を含み、
前記左右の起立板は、左右方向に互いに間隔をおいて配置され、
前記電子機器は、前記左右の起立板の間に配置される、請求項10に記載の作業機械。
【請求項13】
前記機械室において前記水素関連機器と前記電子機器との間に配置される隔壁をさらに備える、請求項9に記載の作業機械。
【請求項14】
前記水素関連機器は、前記隔壁の上においてモジュール化されている、請求項13に記載の作業機械。
【請求項15】
前記電子機器は、第1の電子機器であり、
前記隔壁は、第1の隔壁であり、
前記作業機械は、
前記第1の電子機器とは別の電子機器であって前記水素関連機器に対して水平方向に並ぶような位置に配置される第2の電子機器と、
前記機械室において前記水素関連機器と前記第2の電子機器との間に配置される第2の隔壁と、をさらに備える、請求項13に記載の作業機械。
【請求項16】
水素を貯留する水素タンクと、
冷却風と熱交換する熱交換器と、
作業機械の動作のための電子機器と、
機械室と、
前記機械室において前記水素タンクと前記電子機器との間に配置される隔壁と、を備え、
前記水素タンクは、前記機械室において前記熱交換器よりも前記冷却風の流れ方向における上流に配置される、作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素タンクを備える油圧ショベルなどの作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、漏れた水素を排出することを目的とする水素タンク収納ケースを開示している。特許文献2は、水素漏れに対する安全性を向上させることを目的とする燃料電池車両を開示している。特許文献1及び特許文献2の技術は、ともにトラックなどの自動車に採用されることを想定したものである。特許文献3は、燃料電池を備える油圧ショベルなどの作業機械を開示している。
【0003】
一般に、油圧ショベルなどの作業機械は、下部走行体と、この下部走行体に旋回可能に支持される上部旋回体と、この上部旋回体に回動可能に支持されるブームを含む作業装置と、油圧機器と、作業機械の動作のための電子機器と、を備える。前記油圧機器は、下部走行体の走行動作、上部旋回体の旋回動作及び作業装置の回動動作のための種々の機器を含む。上部旋回体の旋回フレームの前部には、キャブが配置され、旋回フレームの後部には、カウンタウエイトが配置され、キャブとカウンタウエイトとの間には、機械室が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-187163号公報
【特許文献2】特開2022-73237号公報
【特許文献3】国際公開第2022/137688号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように作業機械では、旋回フレームの上に、キャブ、カウンタウエイト、油圧機器などの多くの機器を配置する必要があるため、機械室のスペースは必然的に限られた大きさとなる。このように限られたスペースである機械室に、水素タンクを含む水素関連機器と、機器を冷却するための熱交換器と、作業機械の動作のための電子機器と、を配置する場合、水素漏洩時の安全対策として、特許文献1及び特許文献2の技術をそのまま採用することはできない。また、熱交換器と水素タンクの両方を機械室に配置する場合、水素タンク周辺の温度が上昇しやすいという問題も生じる。特許文献3は、これらの課題を解決する手段について何ら開示していない。
【0006】
本開示は、水素漏れ時の安全性を向上させることができるとともに、水素タンク周辺の温度上昇を抑制できる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る作業機械は、水素を貯留する水素タンクと、冷却風と熱交換する熱交換器と、作業機械の動作のための電子機器と、機械室と、を備え、前記水素タンクは、前記機械室において、前記電子機器よりも上方に配置され、前記熱交換器よりも前記冷却風の流れ方向における上流に配置される。
【0008】
この作業機械では、仮に水素タンク又はその近傍から水素ガスが漏洩した場合であっても、水素ガスは、機械室において、水素タンク又はその近傍から上方に移動するので、水素タンクよりも下方に配置される電子機器に到達することが抑制される。これにより、水素漏れ時の安全性が向上する。また、機械室において、熱交換器よりも上流に配置される水素タンクには、熱交換器を通過する前の冷却風、すなわち、熱交換器において熱交換して温度が上昇する前の冷却風が供給されるので、水素タンク周辺の温度上昇が抑制される。水素タンク周辺の温度上昇の抑制は、水素タンクに水素を充填する際における水素タンクの温度上昇の抑制に寄与する。また、水素タンクが例えば樹脂製タンクである場合には、水素タンク周辺の温度上昇の抑制は、樹脂製タンクの劣化の抑制にも寄与する。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第2の態様に係る作業機械では、前記機械室は、前記機械室の外部の空気を前記冷却風として前記機械室の内部に吸入するための吸気口と、前記機械室の内部の前記冷却風を前記機械室の外部に排出するための排気口と、を有する壁部により画定され、前記作業機械は、前記冷却風の流れを形成する冷却ファンをさらに備えることが好ましい。この第2の態様では、吸気口から排気口に至る冷却風の流れを機械室において効果的に形成することができる。この第2の態様に係る作業機械では、前記冷却ファンは、例えば、前記排気口と前記熱交換器との間に配置されていてもよく、前記排気口と前記熱交換器との間で、かつ、前記排気口に隣接する位置に配置されてもよい。
【0010】
第3の態様は、第2の態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第3の態様に係る作業機械では、前記吸気口の少なくとも一部は、前記水素タンクに対して水平方向に並ぶような高さ位置又は前記水素タンクよりも上方の位置に形成されることが好ましい。この第3の態様では、仮に水素タンク又はその近傍から水素ガスが漏洩した場合であっても、水素タンクと同等の高さ位置又は水素タンクよりも上方の位置に形成される吸気口を通じて水素ガスが機械室の外部に排出されやすくなる。これにより、水素漏れ時の安全性がさらに向上する。
【0011】
第4の態様は、第2又は第3の態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第4の態様に係る作業機械では、前記排気口の少なくとも一部は、前記水素タンクに対して水平方向に並ぶような高さ位置又は前記水素タンクよりも上方の位置に形成されることが好ましい。この第4の態様では、仮に水素タンク又はその近傍から水素ガスが漏洩した場合であっても、水素タンクと同等の高さ位置又は水素タンクよりも上方の位置に形成される排気口を通じて水素ガスが機械室の外部に排出されやすくなる。これにより、水素漏れ時の安全性がさらに向上する。
【0012】
第5の態様は、第2~第4の何れかの態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第5の態様に係る作業機械は、前記水素タンクの温度又はこれに関連する温度を検出する温度検出器と、コントローラと、をさらに備え、前記コントローラは、前記温度検出器により検出される温度が予め設定された規定値以上になると、前記冷却ファンの回転数を増加させるための制御を行うことが好ましい。この第5の態様では、温度検出器により検出される温度が規定値以上になると、冷却ファンの回転数がコントローラによる制御で自動的に増加するので、水素タンク周辺の温度上昇が効果的に抑制される。温度検出器は、例えば、水素タンクの温度を検出するものであってもよく、水素タンク周辺の温度(雰囲気温度)を検出するものであってもよく、水素タンクの水素出口の温度を検出するものであってもよく、水素タンク内の水素の温度を検出するものであってもよく、水素タンクと燃料電池装置を接続する配管の温度を検出するものであってもよい。
【0013】
第6の態様は、第2~第5の何れかの態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第6の態様に係る作業機械は、前記機械室において水素を検出する水素検出器と、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記水素検出器が水素を検出すると、前記冷却ファンの回転数を増加させるための制御を行うことが好ましい。この第6の態様では、機械室において水素ガスが検出されると、冷却ファンの回転数がコントローラによる制御で自動的に増加して機械室の換気が促進される。これにより、水素漏れ時の安全性がさらに向上する。
【0014】
第7の態様は、第1~第6の何れかの態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第7の態様に係る作業機械は、前記熱交換器を通過した前記冷却風が前記機械室において前記熱交換器を通過する前の前記冷却風と混ざることを回避するための仕切りをさらに備えることが好ましい。この第7の態様では、熱交換器を通過して温度が上昇した冷却風が熱交換器を通過する前の冷却風と混ざることが仕切りによって抑制されるので、水素タンク周辺の温度上昇がさらに効果的に抑制される。この第7の態様に係る作業機械において、前記仕切りは、前記熱交換器の周囲の少なくとも一部に沿うように配置されることがより好ましく、前記熱交換器の全周に沿うように配置されることがさらに好ましい。
【0015】
第8の態様は、第1~第6の何れかの態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えていてもよい。すなわち、第8の態様に係る作業機械は、前記水素タンクから水素が供給される燃料電池装置をさらに備え、前記燃料電池装置は、前記水素タンクよりも下方の位置で、かつ、上下方向から見たときに前記水素タンクと重なるような位置に配置されてもよい。この第8の態様では、仮に燃料電池装置から水素ガスが漏洩した場合であっても、漏洩した水素ガスは燃料電池装置の上方に位置する水素タンクに向かって上昇するので、他の機器が配置される領域に水素ガスが拡散することを抑制できる。また、この第8の態様では、燃料電池装置は上下方向に見たときに水素タンクと重なるような位置に配置されるので、水素タンクと燃料電池装置を接続する配管の長さを小さくすることができる。
【0016】
第9の態様は、第1~第7の何れかの態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えていてもよい。すなわち、第9の態様に係る作業機械は、前記水素タンクから水素が供給される燃料電池装置をさらに備え、前記水素タンク及び前記燃料電池装置を含む水素関連機器は、前記電子機器よりも上方に配置されてもよい。この第9の態様では、仮に水素関連機器から水素ガスが漏洩した場合であっても、水素ガスは、機械室において、水素関連機器から上方に移動するので、水素関連機器よりも下方に配置される電子機器に到達することが抑制される。これにより、水素漏れ時の安全性が向上する。
【0017】
第10の態様は、第9の態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第10の態様に係る作業機械は、ブームと、旋回フレームと、をさらに備え、前記旋回フレームは、フレーム本体と、前記フレーム本体から起立するとともに前後に延びる起立体と、有し、前記起立体は、前記ブームの基端部が取り付けられるブーム取付部と、前記ブーム取付部よりも後方に位置し、前記ブーム取付部よりも高さの低い後側部分と、を含み、前記水素関連機器は、前記起立体の前記後側部分よりも上方の位置で、かつ、上下方向から見たときに前記後側部分と重なるような位置に配置されることが好ましい。この第10の態様では、サイズが大きく重量物である水素関連機器を起立体の後側部分よりも上方の位置で、かつ、上下方向から見たときに前記後側部分と重なるような位置に配置することで、作業機械全体の重心の位置をできるだけ後ろでかつ低くすることが可能になる。
【0018】
第11の態様は、第10の態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第11の態様に係る作業機械では、前記電子機器は、前記起立体の前記後側部分の右及び左の少なくとも一方に配置されることが好ましい。この第11の態様では、起立体の後側部分の右及び左の少なくとも一方に形成されるスペースに電子機器を配置することで、水素漏洩時の安全性を向上させるとともに作業機械を構成する部品の搭載効率を向上させることができる。
【0019】
第12の態様は、第10又は第11の態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第12の態様に係る作業機械では、前記起立体は、前記フレーム本体から起立して前後に延びる左右の起立板を含み、前記左右の起立板は、左右方向に互いに間隔をおいて配置され、前記電子機器は、前記左右の起立板の間に配置されることが好ましい。この第12の態様では、左右の起立板の間に形成されるスペースに電子機器を配置することで、水素漏洩時の安全性を向上させるとともに作業機械を構成する部品の搭載効率を向上させることができる。
【0020】
第13の態様は、第9~第12の何れかの態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第13の態様に係る作業機械は、前記機械室において前記水素関連機器と前記電子機器との間に配置される隔壁をさらに備えることが好ましい。この第13の態様では、水素関連機器が配置される領域と電子機器が配置される領域とが隔壁によって仕切られるので、水素漏洩時の安全性をさらに向上させることができる。
【0021】
第14の態様は、第13の態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第14の態様に係る作業機械では、前記水素関連機器は、前記隔壁の上においてモジュール化されていることが好ましい。この第14の態様では、水素関連機器に含まれる水素タンク及び燃料電池装置を隔壁の上において配置するときの作業性を向上させることができる。
【0022】
第15の態様は、第13又は第14の態様に係る作業機械において、さらに次の特徴を備えることが好ましい。すなわち、第15の態様に係る作業機械では、前記電子機器は、第1の電子機器であり、前記隔壁は、第1の隔壁であり、前記作業機械は、前記第1の電子機器とは別の電子機器であって前記水素関連機器に対して水平方向に並ぶような位置に配置される第2の電子機器と、前記機械室において前記水素関連機器と前記第2の電子機器との間に配置される第2の隔壁と、をさらに備えていてもよい。機械室において第1の電子機器の他に第2の電子機器を配置する必要があり、かつ、水素関連機器に対して水平方向に並ぶような位置に配置する必要がある場合であっても、この第15の態様では、水素関連機器が配置される領域と第2の電子機器が配置される領域とが第2の隔壁によって仕切られるので、水素漏洩時の安全性を確保することができる。
【0023】
第16の態様に係る作業機械は、水素を貯留する水素タンクと、冷却風と熱交換する熱交換器と、作業機械の動作のための電子機器と、機械室と、前記機械室において前記水素タンクと前記電子機器との間に配置される隔壁と、を備え、前記水素タンクは、前記機械室において前記熱交換器よりも前記冷却風の流れ方向における上流に配置される。この第16の態様に係る作業機械では、水素タンクが配置される領域と電子機器が配置される領域とが隔壁によって仕切られるので、仮に水素タンク又はその近傍から水素ガスが漏洩した場合であっても、機械室において、漏洩した水素ガスが電子機器に到達することが抑制される。これにより、水素漏れ時の安全性が向上する。また、機械室において、熱交換器よりも上流に配置される水素タンクには、熱交換器を通過する前の冷却風、すなわち、熱交換器において熱交換して温度が上昇する前の冷却風が供給されるので、水素タンク周辺の温度上昇が抑制される。水素タンク周辺の温度上昇の抑制は、水素タンクに水素を充填する際における水素タンクの温度上昇の抑制に寄与する。また、水素タンクが例えば樹脂製タンクである場合には、水素タンク周辺の温度上昇の抑制は、樹脂製タンクの劣化の抑制にも寄与する。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、水素漏れ時の安全性を向上させることができ、水素タンク周辺の温度上昇を抑制できる作業機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本開示の実施形態に係る作業機械を示す左側面図である。
図2】前記作業機械を示す右側面図である。
図3】前記作業機械の上部旋回体を左斜め後から見た斜視図である。
図4】前記上部旋回体の旋回フレーム及びキャブを示す平面図である。
図5】本開示の第1の実施形態に係る作業機械の機械室の内部を示す図であって図1のA-A線における断面図である。
図6】前記作業機械を示す一部破断の左側面図であり、前記機械室を画定する壁部を図5のVI-VI線において切断した断面を含む図である。
図7】前記機械室の内部を示す断面図である。
図8】前記機械室の内部を示す断面図であり、水素充填口に水素充填装置が接続された状態を示している。
図9】本開示の第2の実施形態に係る作業機械の旋回フレーム上に配置された電子機器と水素関連機器の配置を示す側面図である。
図10】第2の実施形態に係る作業機械の機械室の内部を示す図であって図1のA-A線における断面図である。
図11】第2の実施形態の変形例1に係る作業機械の旋回フレーム上に配置された電子機器と水素関連機器の配置を示す側面図である。
図12】第2の実施形態の変形例1に係る作業機械の機械室の内部を示す図であって図1のA-A線における断面図である。
図13】第2の実施形態の変形例1に係る作業機械の機械室の内部を示す図であって図1のB-B線における断面図である。
図14】第2の実施形態の変形例2に係る作業機械の機械室の内部を示す図であって図1のA-A線における断面図である。
図15】第2の実施形態の変形例2に係る作業機械の機械室の内部を示す図であって図1のB-B線における断面図である。
図16】第3の実施形態に係る作業機械の機械室の内部を示す図であって図1のA-A線における断面図である。
図17】第3の実施形態の変形例に係る作業機械の機械室の内部を示す図であって図1のB-B線における断面図である。
図18】他の変形例に係る作業機械の内部を示す図であって図1のA-A線における断面図である。
図19図18に示す変形例に係る作業機械の上部旋回体を右斜め前から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本開示の実施形態に係る作業機械100を示す左側面図である。図2は、作業機械100を示す右側面図である。図3は、作業機械100の上部旋回体2を左斜め後から見た斜視図である。図4は、上部旋回体2の旋回フレーム20及びキャブ11を示す平面図である。
【0027】
作業機械100は、走行装置を含む下部走行体1と、上下に延びる旋回軸Zの回りに下部走行体1に対して旋回可能となるように下部走行体1に支持される上部旋回体2と、上部旋回体2に支持される作業装置3と、を備える。本実施形態に係る作業機械100は油圧ショベルであるが、本開示における作業機械は、油圧ショベルに限られず、クレーン、ブルドーザなどの他の作業機械であってもよい。走行装置は、例えばクローラタイプの走行装置であってもよく、タイヤを有する走行装置であってもよい。
【0028】
上部旋回体2は、旋回フレーム20と、旋回フレーム20に支持されるキャブ11と、カウンタウエイト12と、複数のカバーと、を備える。
【0029】
旋回フレーム20は、下部走行体1に旋回可能に支持される部材である。旋回フレーム20は、フレーム本体21と、起立体22と、を含む。フレーム本体21は、キャブ11及び壁部13を配置することができる大きさの上面を有する。キャブ11は、フレーム本体21の左前部に配置され、カウンタウエイト12は、フレーム本体21の後部又はフレーム本体21よりも後方に配置される。キャブ11には、運転席、操作レバー、操作ペダルなどが配置される。キャブ11の後方には機械室14が形成されている。
【0030】
本実施形態では、機械室14は、キャブ11の後方で、かつ、カウンタウエイト12の前方に形成され、壁部13により画定されている。壁部13は、機械室14を画定することが可能な形状であればよく、具体的な形状は特に限定されない。壁部13は、例えば箱形状を有していてもよい。なお、機械室14に配置される機器の重量が大きい場合には、カウンタウエイト12は省略可能である。
【0031】
起立体22は、ブーム4を起伏可能に支持する。図1に示すように、起立体22は、図1において破線で示すようにフレーム本体21から起立するとともに前後に延びる形状を有する。起立体22は、図1において破線で示すブーム4の基端部4Aが取り付けられるブーム取付部22A(前側部分)と、後側部分22Bと、を含む。後側部分22Bは、ブーム取付部22Aよりも後方に位置し、ブーム取付部22Aよりも高さの低い部分である。本実施形態では、図1及び図4に示すように、起立体22は、左右に互いに間隔をおいて対向する左右の起立板23,23を含む。左右の起立板23,23のそれぞれは、フレーム本体21から起立するプレート状の部材であり、前端から後端まで前後に延びている。ブーム取付部22Aは、右側の起立板23の右側ブーム取付部と左側の起立板23の左側ブーム取付部とにより構成される。
【0032】
複数のカバーの少なくとも一部は、機械室14を画定する。複数のカバーは、機械室14の前側に位置する前カバー13Fと、機械室14の後側に位置する後カバー13Bと、機械室14の左側に位置する左カバー13Lと、機械室14の右側に位置する右カバー13Rと、機械室14の上側に位置する上カバー13Uと、を含む。本実施形態では、機械室14を画定する壁部13は、前カバー13F、後カバー13B、左カバー13L、右カバー13R及び上カバー13Uを含む。
【0033】
複数のカバーは、カウンタウエイト12を覆うウエイトカバー13Wと、内部に種々の機器を収容する機器収容空間を確保した機器収容室15を画定する機器カバー13Hと、をさらに含む。本実施形態では、ウエイトカバー13Wは、後カバー13Bの後方に位置し、機器カバー13Hは、フレーム本体21の右前部に配置され、前カバー13Fの前方に位置する。壁部13は、ウエイトカバー13W及び機器カバー13Hの一方又は両方を含んでいてもよい。ウエイトカバー13Wは、カウンタウエイト自体を構成するものであってもよい。機器収容室15の内部の機器収容空間は、機械室14の一部を構成する空間であってもよく、機械室14とは別の空間であってもよい。
【0034】
作業装置3は、上部旋回体2に対して起伏可能に取り付けられるブーム4と、ブーム4に対して回動可能に取り付けられるアーム5と、アーム5に対して回動可能に取り付けられる先端アタッチメント6と、を含む。本実施形態における先端アタッチメント6はバケットであるが、先端アタッチメントは、例えば、グラップル、フォーク、破砕機などの他の先端アタッチメントであってもよい。
【0035】
油圧機器は、油圧ポンプ81と、図略のコントロールバルブと、図略の作動油タンクと、を含む。前記油圧機器の一部又は全部は、機械室14の内部に配置されていてもよく、機械室14の外部に配置されてもよい。前記油圧機器の一部又は全部は、機器収容室15の内部の機器収容空間に配置されていてもよく、機器収容室15の外部に配置されていてもよい。本実施形態では、油圧ポンプ81は、機械室14に配置され、前記コントロールバルブは、機器収容室15の内部の機器収容空間に配置されている。油圧ポンプ81は、後述する電動モータ34Aにより駆動されて作動油を吐出する。
【0036】
作業機械100は、複数のアクチュエータを備える。複数のアクチュエータのそれぞれは、油圧ポンプ81から吐出される作動油の供給を受けて作動する。複数のアクチュエータは、ブーム4を起伏させるためのブームシリンダ7と、アーム5を回動させるためのアームシリンダ8と、先端アタッチメント6を回動させるための先端アタッチメントシリンダ9と、上部旋回体2を下部走行体1に対して旋回させるための図略の旋回モータと、下部走行体1の走行装置に含まれる図略の走行モータと、を含む。
【0037】
前記コントロールバルブは、オペレータによって図略の操作装置に与えられるレバー操作又はペダル操作に応じてその操作に対応するアクチュエータに油圧ポンプ81からの作動油が供給されるように開閉する。
【0038】
[第1の実施形態]
図5は、第1の実施形態に係る作業機械100の機械室14の内部を示す図であり、図1のA-A線における断面図である。図5は、機械室14に配置される種々の機器を示すとともに、機械室14における冷却風CAの流れを矢印で示している。
【0039】
第1の実施形態に係る作業機械100は、水素を貯留する水素タンク31と、水素タンク31から水素(水素ガス)が供給される燃料電池装置32と、冷却風CAと熱交換する熱交換器33と、作業機械100の動作のための電子機器34と、機械室14を画定する壁部13と、を備える。水素タンク31は、機械室14において、電子機器34よりも上方に配置され、熱交換器33よりも冷却風CAの流れ方向における上流に配置される。
【0040】
水素タンク31は、樹脂製タンクである。樹脂製タンクとしては、タイプ4の樹脂製タンクを例示できる。タイプ4の樹脂製タンクは、樹脂容器の外側に炭素繊維強化プラスチックが巻き付けられたものであり、高強度である。ただし、水素タンク31は、タイプ4の樹脂製タンクに限られず、他の樹脂製タンクであってもよく、樹脂製以外のタンクであってもよい。
【0041】
水素タンク31の貯留される高圧の水素ガスは、高圧水素配管41を介して減圧弁42に供給され、減圧弁42において減圧される。減圧された水素ガスは、中圧水素配管43を介して燃料電池装置32に供給される。
【0042】
燃料電池装置32は、電動モータ34Aに電力を供給することが可能なように構成される。燃料電池装置32は、水素タンク31から供給される水素と、酸素(例えば吸気口16から導入される空気に含まれる酸素)と、を電気化学反応させて電力を生成する燃料電池を備える。燃料電池は、例えば、複数のセルを含む燃料電池スタックにより構成される。
【0043】
熱交換器33は、燃料電池装置32の燃料電池を冷却する。本実施形態では、熱交換器33は、燃料電池装置32と熱交換器33との間を循環する冷却水と、冷却風CAと、の間で熱交換を行わせるように構成される。熱交換器33は、例えばラジエータであってもよく、他のタイプの熱交換器であってもよい。
【0044】
電子機器34は、電動モータ34Aと、インバータ34Bと、を含む。電子機器34は、図略のコンバータ、バッテリ、コンプレッサ、水ポンプ及びヒーターの少なくとも一つをさらに含んでいてもよい。バッテリは、燃料電池装置32により生成される電力により充電されてもよい。本実施形態では、電動モータ34A及びインバータ34Bは、燃料電池装置32よりも冷却風CAの流れ方向における上流に配置されている。ただし、電動モータ34A及びインバータ34Bの少なくとも一方は、燃料電池装置32よりも冷却風CAの流れ方向における下流に配置されていてもよく、具体的には、燃料電池装置32と熱交換器33との間の領域に配置されていてもよい。
【0045】
電動モータ34Aは、油圧ポンプ81を駆動する駆動源である。電動モータ34Aは、燃料電池装置32から電力の供給を受けて作動する。電動モータ34Aは、例えば三相モータで構成される。電動モータ34Aは、バッテリから出力される電力の供給を受けて作動してもよい。
【0046】
インバータ34Bは、高電圧配線47を介して燃料電池装置32と接続されている。インバータ34Bは、燃料電池装置32と電動モータ34Aとの間に介在し、燃料電池装置32及びバッテリの少なくとも一方から供給される直流電流を三相交流電流に変換して電動モータ34Aに供給する。インバータ34Bは、電動モータ34Aの回転数を調節する。
【0047】
前記コンバータは、燃料電池装置32又は前記バッテリから出力される高電圧を降圧して後述する冷却ファン35のファンモータ35Bに供給する。前記コンプレッサは、例えば、気化した冷媒を圧縮する機器であり、キャブ11内の温度を調節するための空調装置に含まれる。前記水ポンプは、水配管46を通じて冷却水を燃料電池装置32と熱交換器33との間で循環させる。前記ヒーターは、キャブ11内を暖房する暖房装置を構成する電熱器、バッテリを予熱するための電熱器、および、作動油を予熱するための電熱器のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0048】
この作業機械100では、仮に水素タンク31又はその近傍(例えば後述する水素充填口など)から水素ガスが漏洩した場合であっても、水素ガスは、空気を基準とする比重が1未満である(すなわち空気よりも軽い)ため、機械室14において、水素タンク31又はその近傍から上方に移動し、水素タンク31よりも下方に配置される電子機器34に到達することが抑制される。これにより、水素漏れ時の安全性が向上する。また、機械室14において、熱交換器33よりも上流に配置される水素タンク31には、熱交換器33を通過する前の冷却風CA、すなわち、熱交換器33において熱交換して温度が上昇する前の冷却風CAが供給される。水素タンク31周辺の温度は、燃料電池装置32、電子機器34、油圧ポンプ81等の機械室14の内部に配置された機器の稼働に伴う発熱に起因して上昇し得るが、本実施形態では、これらの機器の周辺にも、熱交換器33を通過する前の冷却風CAが供給されるので、水素タンク31周辺の温度上昇がより効果的に抑制される。水素タンク31に水素を充填する際には水素タンク31内の水素ガスの増圧に伴って水素タンクの温度が上昇するが、水素タンク31の周辺に冷却風CAが供給されるため、水素タンク31周辺の温度上昇が抑制される。水素の充填については後述する。また、水素タンク31周辺の温度上昇の抑制は、樹脂製タンクの劣化の抑制にも寄与する。水素タンク31から燃料電池装置32に水素を供給する際には、水素タンク31内の水素ガスの減圧に伴って水素タンク31の温度が低下し、水素タンク31の周辺を通過した冷却風CAの温度が低下する。従って、本実施形態では、機械室14において水素タンク31よりも下流に配置される熱交換器33には、水素タンク31の周辺を通過して温度が低下した冷却風CAが供給されるので、熱交換器33における熱交換効率(冷却効率)を向上させることができる。
【0049】
壁部13は、吸気口16と、排気口17と、を有する。吸気口16は、機械室14の外部の空気を冷却風CAとして機械室14の内部に吸入するための開口である。排気口17は、機械室14の内部の冷却風CAを機械室14の外部に排出するための開口である。本実施形態では、吸気口16は、壁部13の右カバー13Rに形成され、排気口17は、壁部13の左カバー13Lに形成されている。ただし、壁部13において、吸気口16が形成される部位は、右カバー13Rに限られず、排気口17が形成される部位は、左カバー13Lに限られない。具体的には例えば、吸気口16は、左カバー13Lに形成されてもよく、前カバー13Fに形成されてもよく、後カバー13Bに形成されてもよく、上カバー13Uに形成されてもよい。また、排気口17は、右カバー13Rに形成されてもよく、前カバー13Fに形成されてもよく、後カバー13Bに形成されてもよく、上カバー13Uに形成されてもよい。なお、吸気口16と排気口17は、壁部13において互いに水平方向に対向するような部位に形成されるのが好ましい。
【0050】
作業機械100は、冷却風CAの流れを形成する冷却ファン35を備える。冷却ファン35は、吸気口16から排気口17に至る冷却風CAの流れを機械室14において効果的に形成することができる。本実施形態では、冷却風CAは、機械室14において、図5において矢印で示すように右から左に流れる。冷却ファン35は、回転軸部の外周に沿って配列される複数の翼部を含む羽根車35Aと、羽根車35Aを駆動するファンモータ35Bと、羽根車35Aの外周を囲むように配置されるシュラウド35Cと、を含む。シュラウド35Cは、羽根車35Aに対してその径方向に隙間をあけて配置される。冷却ファン35は、例えば、燃料電池装置32又は前記バッテリから電力が供給されることにより作動する。
【0051】
本実施形態では、冷却ファン35は、排気口17と熱交換器33との間に配置されている。具体的には、冷却ファン35は、排気口17と熱交換器33との間で、かつ、排気口17に隣接する位置に配置されている。
【0052】
図5に示すように、吸気口16の一部は、水素タンク31に対して水平方向に並ぶような高さ位置に形成される。この場合、仮に、冷却ファン35が作動していないときに水素タンク31又はその近傍(例えば水素充填口など)から水素ガスが漏洩した場合であっても、水素タンク31と同等の高さ位置に形成される吸気口16を通じて水素ガスが機械室14の外部に排出されやすくなる。これにより、水素漏れ時の安全性がさらに向上する。なお、吸気口16の一部は、水素タンク31よりも上方の位置に形成されてもよい。
【0053】
また、排気口17の一部は、水素タンク31に対して水平方向に並ぶような高さ位置に形成される。この場合、仮に水素タンク31又はその近傍(例えば水素充填口など)から水素ガスが漏洩した場合であっても、冷却ファン35の作動の有無に関わらず水素タンク31と同等の高さ位置に形成される排気口17を通じて水素ガスが機械室14の外部に排出されやすくなる。これにより、水素漏れ時の安全性がさらに向上する。なお、排気口17の一部は、水素タンク31よりも上方の位置に形成されてもよい。
【0054】
本実施形態では、吸気口16の一部(上側の一部)は、水素タンク31に対して水平方向に並ぶような高さ位置に形成され、吸気口16の他の一部(下側の一部)は、燃料電池装置32に対して水平方向に並ぶような高さ位置に形成されている。また、排気口17の一部(上側の一部)は、水素タンク31に対して水平方向に並ぶような高さ位置に形成され、排気口17の他の一部(下側の一部)は、燃料電池装置32に対して水平方向に並ぶような高さ位置に形成されている。また、本実施形態では、排気口17の全ての領域が熱交換器33に対して水平方向に並ぶような高さ位置に形成されている。ただし、排気口17の一部は、熱交換器33に対して上方にずれた位置に形成されていてもよく、熱交換器33に対して下方にずれた位置に形成されていてもよい。
【0055】
燃料電池装置32は、機械室14において、水素タンク31よりも下方の位置で、かつ、上下方向から見たときに水素タンク31と重なるような位置に配置される。この場合、限られた大きさである機械室14の内部において、水素タンク31の下方のスペースを活用して燃料電池装置32を効率的に配置することができる。また、仮に燃料電池装置32から水素ガスが漏洩した場合であっても、漏洩した水素ガスは燃料電池装置32の上方に位置する水素タンク31に向かって上昇するので、他の機器が配置される領域に水素ガスが拡散することを抑制できる。また、燃料電池装置32は上下方向に見たときに水素タンク31と重なるような位置に配置されることで、水素タンク31と燃料電池装置32を接続する中圧水素配管43の長さを小さくすることができる。
【0056】
図5に示す具体例では、燃料電池装置32を機械室14において水素タンク31の真下に配置している。このことは、燃料電池装置32から漏洩した水素ガスを、より確実に水素タンク31に向かって上昇させることを可能にするとともに、中圧水素配管43の長さをより小さくすることを可能にする。また、図5に示す具体例では、減圧弁42は、水素タンク31に対して所定の方向(図5では右方向)にずれた位置に配置され、燃料電池装置32において中圧水素配管43が接続される部位は、燃料電池装置32の側面のうち前記所定の方向に向く側面(図5では右側面)である。このことは、中圧水素配管43の長さをさらに小さくすることを可能にする。
【0057】
本実施形態では、作業機械100は、複数の水素タンク31と、これらを支持する支持フレーム60と、を備える。複数の水素タンク31は、第1の水素タンク31と、その真上に配置される第2の水素タンク31と、を含む。支持フレーム60は、第1の上部フレーム61と、第1の上部フレーム61から下方に延びて第1の上部フレーム61を支持する複数の脚部フレーム62と、を含む。第1の上部フレーム61は、燃料電池装置32の真上において第1の水素タンク31を支持する。また、支持フレーム60は、第1の上部フレーム61よりも上方に配置される第2の上部フレーム63をさらに含む。第2の上部フレーム63は、燃料電池装置32及び第1の水素タンク31の真上において第2の水素タンク31を支持する。第2の上部フレーム63は、壁部13に支持されていてもよく、第1の上部フレーム61に支持されていてもよく、複数の脚部フレーム62に支持されていてもよい。
【0058】
図5に示すように、第1の水素タンク31及び第2の水素タンク31のそれぞれは、一方向(長手方向)に延びる形状を有し、この長手方向が冷却風CAの流れの方向に沿うような向きに配置されている。図5に示す具体例では、各水素タンク31は、その長手方向が左右方向に向くように配置されている。また、第1の水素タンク31と第2の水素タンク31は上下に隙間をあけて配置されている。このような第1の水素タンク31及び第2の水素タンク31の配置は、冷却風CAの流れの抵抗が増加することを抑制し、熱交換器33の熱交換効率(冷却効率)の低下を抑制できる。また、機械室14に配置される前記複数の水素タンク31は、上下に並ぶ第1の水素タンク31及び第2の水素タンク31だけでなく、第1の水素タンク31に対して前方又は後方に並ぶ図略の水素タンクをさらに含んでいてもよく、第2の水素タンク31に対して前方又は後方に並ぶ図略の水素タンクをさらに含んでいてもよい。この場合、限られたスペースである機械室14の内部に効率的に水素タンク31が搭載される。
【0059】
支持フレーム60の第1の上部フレーム61、複数の脚部フレーム62及び第2の上部フレーム63のそれぞれは、水素タンク31を安定して支持することができ、かつ、冷却風CAの流れの抵抗になりにくいものであることが好ましい。すなわち、複数の脚部フレーム62のそれぞれは、冷却風CAの流れの抵抗になりにくい部材(例えば棒形状の部材)であることが好ましい。また、第1の上部フレーム61及び第2の上部フレーム63のそれぞれは、水素タンク31が配置される領域と燃料電池装置32が配置される領域の一方から他方への冷却風CAの流れの抵抗になりやすい部材(例えば板状の部材)ではなく、前記一方から前記他方への冷却風CAの流れの抵抗になりにくい部材(例えば棒形状の部材、パンチングメタルなど)であることが好ましい。
【0060】
図6は、作業機械100を示す一部破断の左側面図であり、機械室14を画定する壁部13を図5のVI-VI線において切断した断面を含む図である。図5及び図6に示すように、作業機械100は、熱交換器33を通過した冷却風CAが機械室14において熱交換器33を通過する前の冷却風CAと混ざることを回避するための仕切り18を備える。この場合、機械室14において、熱交換器33よりも冷却風CAの流れの上流の空間である上流空間と、熱交換器33よりも冷却風CAの流れの下流の空間である下流空間と、が熱交換器33及び仕切り18によって隔てられる。これにより、熱交換器33を通過して温度が上昇した冷却風CAが熱交換器33を通過する前の冷却風CAと混ざることが抑制されるので、水素タンク31周辺の温度上昇がさらに効果的に抑制される。
【0061】
仕切り18は、例えば、熱交換器33の周囲の少なくとも一部に沿うように配置される。図6に示す具体例では、仕切り18は、熱交換器33の上縁33Uに沿って配置される上側仕切り18Aと、熱交換器33の前縁33Fに沿って配置される前側仕切り18Bと、熱交換器33の後縁33Bに沿って配置される後側仕切り18Cと、を含む。上側仕切り18Aは、熱交換器33の上縁33Uに沿って前後に延び、熱交換器33の上縁33Uと壁部13の上カバー13Uとの隙間を塞ぐ。前側仕切り18Bは、熱交換器33の前縁33Fに沿って上下に延び、熱交換器33の前縁33Fと壁部13の前カバー13Fとの隙間を塞ぐ。後側仕切り18Cは、熱交換器33の後縁33Bに沿って上下に延び、熱交換器33の後縁33Bと壁部13の後カバー13Bとの隙間を塞ぐ。
【0062】
仕切り18は、熱交換器33の全周に沿うように配置されてもよい。この場合、仕切り18は、熱交換器33の下縁に沿って配置される下側仕切り18Dを含んでいてもよい。なお、仕切り18は、前記上流空間と前記下流空間とを隔てることができるような形状及び配置であればよいので、必ずしも熱交換器33に沿って配置されていなくてもよい。
【0063】
仕切り18は、シュラウド35Cの周囲の少なくとも一部に沿うように配置されてもよい。具体的には例えば、仕切り18は、上側仕切り18Aがシュラウド35Cの上端部分に沿って配置され、前側仕切り18Bがシュラウド35Cの前端部分に沿って配置され、後側仕切り18Cがシュラウド35Cの後端部分に沿って配置されてもよい。この態様では、熱交換器33を通過して温度が上昇した冷却風CAが熱交換器33を通過する前の冷却風CAと混ざることが仕切り18及びシュラウド35Cによって抑制されるので、水素タンク31周辺の温度上昇がさらに効果的に抑制される。仕切り18は、熱交換器33の周囲に配置されるものとシュラウド35Cの周囲に配置されるものとを両方含んでいてもよい。
【0064】
作業機械100は、複数のセンサと、これらのセンサによる検出結果が入力されるコントローラ70と、を備える。図7は、機械室14の内部を示す断面図であり、複数のセンサとコントローラ70とを示している。
【0065】
前記複数のセンサは、水素タンク雰囲気温度センサ51と、水素ガス温度センサ52と、水素ガスセンサ53と、水温センサ54と、を含む。
【0066】
水素タンク雰囲気温度センサ51は、水素タンク31の近傍の雰囲気の温度を検出し、検出結果をコントローラ70に入力する。水素ガス温度センサ52は、水素タンク31のガス出口における温度を検出し、検出結果をコントローラ70に入力する。水素ガス温度センサ52は、ガス出口を構成する部材の温度を検出してもよく、ガス出口から出る水素自体の温度を検出してもよい。水素タンク雰囲気温度センサ51は、本開示における温度検出器の一例である。また、水素ガス温度センサ52は、本開示における温度検出器の他の一例である。
【0067】
なお、当該温度検出器は、水素タンク31の温度(例えば水素タンク31の側面の温度)を検出するセンサであってもよい。なお、前記温度検出器は、例えば、水素タンク31内の水素の温度を検出するものであってもよく、水素タンク31と燃料電池装置32を接続する配管(例えば中圧水素配管43)の温度を検出するものであってもよい。
【0068】
水素ガスセンサ53は、機械室14における水素ガスを検出する。水素ガスセンサ53は、機械室14において水素ガスが滞留しやすい場所、例えば、機械室14の上部に配置されることが好ましく、機械室14の最上部に配置されることがより好ましい。前記複数のセンサは、複数の水素ガスセンサ53を含んでいてもよい。複数の水素ガスセンサ53は、機械室14において互いに離れた位置に配置されることが好ましい。水素ガスセンサ53は、本開示における水素検出器の一例である。
【0069】
水温センサ54は、燃料電池装置32と熱交換器33との間を循環する冷却水の温度又はこれに相関する温度を検出し、検出結果をコントローラ70に入力する。水温センサ54は、例えば水配管46の温度を検出してもよい。水温センサ54は、水配管46のうち、冷却水を燃料電池装置32から熱交換器33に送る水配管46の温度を検出してもよく、冷却水を熱交換器33から燃料電池装置32に送る水配管46の温度を検出してもよい。
【0070】
コントローラ70は、演算処理装置とメモリとを有するコンピュータを備える。コントローラ70は、メモリに予め記憶されたプログラムを演算処理装置が実行することにより、種々の制御を行う。具体的には以下のとおりである。
【0071】
作業現場において作業機械100が掘削作業、地面を均す作業などの種々の実作業を行うときには、コントローラ70は、例えば次のような制御を行う。すなわち、実作業中には、コントローラ70は、その時の作業負荷に応じた目標電力が電動モータ34Aに供給されるように燃料電池装置32における発電電力を制御する。この際、コントローラ70は、燃料電池装置32に水素タンク31から目標電力に応じた水素が供給されるような制御を行う。また、実作業中には、コントローラ70は、機械室14の外部の空気を冷却風CAとして機械室14の内部に吸入し、吸入した冷却風CAを機械室14の外部に排出するための換気が十分に行われるように冷却ファン35の回転数を調節し、その時の状況に応じた適切な風量の冷却風CAを生成する。
【0072】
また、実作業中には、コントローラ70は、燃料電池装置32の温度が許容範囲に維持されるように水ポンプを制御して冷却水を循環させる。燃料電池装置32が発電する際に生じる熱エネルギーは冷却水に伝達される。すなわち、燃料電池装置32と冷却水との間で熱交換が行われる。燃料電池装置32と熱交換した冷却水は、水配管46を通じて熱交換器33に送られ、熱交換器33において冷却風CAと熱交換する。これにより、冷却水は温度が下がり、冷却風CAは温度が上がる。熱交換器33を通過した高温の冷却風CAは、排気口17から機械室14の外部に排出される。熱交換器33において温度が低下した冷却水は、水配管46を通じて燃料電池装置32に戻り、再び、燃料電池装置32と熱交換する。
【0073】
コントローラ70は、水温センサ54により検出される温度に応じて冷却ファン35の回転数を調節する制御を行ってもよい。具体的には例えば、コントローラ70は、水温センサ54により検出される温度が予め設定された水温規定値以上になると、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御を行ってもよい。これにより、熱交換器33において冷却水の温度を十分に下げることができ、その結果、燃料電池装置32の冷却を適切に行うことができる。
【0074】
次に、水素充填の際のコントローラ70による制御について説明する。作業機械100は、水素充填ソケット45と、充填装置接続スイッチ55と、を備える。水素充填ソケット45は、配管44を介して水素タンク31に接続されている。水素充填ソケット45は、水素充填口を有する。図8は、機械室14の内部を示す断面図であり、水素充填ソケット45の水素充填口に水素充填装置48の端子49が接続された状態を示している。水素充填ソケット45の水素充填口に水素充填装置48の端子49が接続されると、接続されたことを示す信号(接続信号)が充填装置接続スイッチ55からコントローラ70に入力される。
【0075】
水素充填ソケット45の水素充填口に水素充填装置48の端子49が接続されると、水素充填装置48から水素タンク31への水素の充填が開始され、コントローラ70は、水素充填中の水素ガスの温度又はこれに関連する温度を監視する。コントローラ70は、水素充填中には実作業を禁止する。
【0076】
水素充填中には、水素充填装置48によって高圧下で水素ガスが水素タンク31に充填されるので、水素タンク31内の水素ガスの温度が上昇する。コントローラ70は、水素充填の開始時に冷却ファン35の回転を開始させ、水素充填中に、水素タンク雰囲気温度センサ51により検出される温度が予め設定された第1の規定値以上になると、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御を行ってもよい。また、コントローラ70は、水素充填の開始時に冷却ファン35の回転を開始させず停止状態を維持しておき、水素充填中に、水素タンク雰囲気温度センサ51により検出される温度が予め設定された第2の規定値以上になると、冷却ファン35の回転を開始させるための制御を行ってもよく、さらに、水素タンク雰囲気温度センサ51により検出される温度が第2の規定値よりも高い第3の規定値以上になると、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御を行ってもよい。このように冷却ファン35の回転数がコントローラ70による制御で自動的に増加するので、水素タンク31内の水素ガスの温度が上昇した場合であっても、水素タンク31周辺の温度上昇が効果的に抑制される。
【0077】
また、コントローラ70は、水素充填の開始時に冷却ファン35の回転を開始させ、水素充填中に、水素ガス温度センサ52により検出される温度が予め設定された第4の規定値以上になると、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御を行ってもよい。また、コントローラ70は、水素充填の開始時に冷却ファン35の回転を開始させず停止状態を維持しておき、水素充填中に、水素ガス温度センサ52により検出される温度が予め設定された第5の規定値以上になると、冷却ファン35の回転を開始させるための制御を行ってもよく、さらに、水素ガス温度センサ52により検出される温度が第5の規定値よりも高い第6の規定値以上になると、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御を行ってもよい。このように冷却ファン35の回転数がコントローラ70による制御で自動的に増加するので、水素タンク31内の水素ガスの温度が上昇した場合であっても、水素タンク31周辺の温度上昇が効果的に抑制される。
【0078】
次に、水素漏洩時のコントローラ70による制御について説明する。コントローラ70は、冷却ファン35の回転が停止している状態において水素ガスセンサ53が水素ガスを検出すると、冷却ファン35の回転を開始させるための制御を行ってもよい。また、コントローラ70は、冷却ファン35が回転している状態において水素ガスセンサ53が水素ガスを検出すると、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御を行ってもよい。複数の水素ガスセンサ53が機械室14に配置されている場合には、コントローラ70は、一つ以上の水素ガスセンサ53が水素ガスを検出した場合に水素ガスセンサ53が水素ガスを検出したと判定して、上述した制御を行ってもよい。このように冷却ファン35の回転数がコントローラ70による制御で自動的に増加して機械室14の換気が促進される。これにより、水素漏れ時の安全性がさらに向上する。この制御においてコントローラ70は、水素ガスセンサ53が水素ガスを検出すると、冷却ファン35の回転数を最大値まで増加させる制御を行うことが好ましい。この水素漏洩時の制御は、実作業中及び水素充填中の両方において行われることが好ましく、コントローラ70の起動中には常時行われることがさらに好ましい。また、水素漏洩時に冷却ファン35の回転を開始させたり冷却ファン35の回転数を増加させたりする場合、冷却ファン35の羽根車35Aの回転方向が通常時とは逆になるように制御されてもよい。なお、本実施形態では、冷却ファン35の回転が停止している状態から冷却ファン35の回転を開始させる制御は、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御に含まれる。
【0079】
[第2の実施形態]
次に、本開示の第2の実施形態に係る作業機械100について説明する。第2の実施形態に係る作業機械100は、図1図4に示すような基本構造を備える点で第1の実施形態に係る作業機械100と同じである。
【0080】
図9は、第2の実施形態に係る作業機械100の旋回フレーム20上に配置された電子機器34と水素関連機器36の配置を示す側面図である。図9では、壁部13及び冷却ファン35の図示は省略されており、キャブ11及び熱交換器33の位置は二点鎖線で示されている。図10は、第2の実施形態に係る作業機械100の機械室14の内部を示す図であり、図1のA-A線における断面図である。図10は、機械室14に配置される種々の機器を示すとともに、機械室14における冷却風CAの流れを矢印で示している。
【0081】
図10に示すように、第2の実施形態に係る作業機械100は、水素を貯留する水素タンク31と、水素タンク31から水素(水素ガス)が供給される燃料電池装置32と、冷却風CAと熱交換する熱交換器33と、作業機械100の動作のための電子機器34と、機械室14を画定する壁部13と、を備える。水素タンク31は、機械室14において、電子機器34よりも上方に配置され、熱交換器33よりも冷却風CAの流れ方向における上流に配置される。これらの構成は、第1の実施形態に係る作業機械100と同じであり、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0082】
第2の実施形態においても、壁部13は、機械室14を画定することが可能な形状(例えば箱形状)を有し、吸気口16と排気口17とを有する。第2の実施形態においても、壁部13において吸気口16が形成される部位及び排気口17が形成される部位は、図10に示す具体例に限られず、第1の実施形態と同様に種々の部位に形成可能である。
【0083】
第2の実施形態においても、作業機械100は、冷却風CAの流れを形成する冷却ファン35を備える。冷却ファン35は、吸気口16から排気口17に至る冷却風CAの流れを機械室14において効果的に形成することができる。冷却ファン35は、羽根車と図略のファンモータと図略のシュラウドとを含む。
【0084】
図9及び図10に示す作業機械100では、水素タンク31及び燃料電池装置32を含む水素関連機器36は、電子機器34よりも上方に配置される。この場合、仮に水素関連機器36に含まれる水素タンク31及び燃料電池装置32の少なくとも一方から水素ガスが漏洩した場合であっても、水素ガスは、機械室14において、水素関連機器36から上方に移動するので、水素関連機器36よりも下方に配置される電子機器34に到達することが抑制される。これにより、水素漏れ時の安全性が向上する。なお、機械室14において、水素関連機器36は、電子機器34よりも上方に配置されるように、図略の支持フレーム(例えば第1の実施形態における支持フレーム60と同様のもの)によって支持されていてもよい。
【0085】
図10に示す第2の実施形態では、水素関連機器36は、水素充填口を有する水素充填ソケット45と、水素タンク31と燃料電池装置32を接続する水素配管40と、水素タンク31と水素充填ソケット45を接続する配管44と、をさらに含む。この場合、仮に水素関連機器36に含まれる水素充填ソケット45の水素充填口、水素配管40及び配管44の少なくとも一つからから水素ガスが漏洩した場合であっても、水素ガスは、機械室14において、水素関連機器36から上方に移動するので、水素関連機器36よりも下方に配置される電子機器34に到達することが抑制される。これにより、水素漏れ時の安全性がさらに向上する。
【0086】
水素関連機器36は、起立体22の後側部分22Bよりも上方の位置で、かつ、上下方向から見たときに後側部分22Bと重なるような位置に配置される。具体的には、水素関連機器36は、上下方向から見たときに起立体22における左右の起立板23,23の後側部分22Bのそれぞれに重なるように配置される。この場合、限られた大きさである機械室14の内部における起立体22の上方のスペースを活用して水素関連機器36を効率的に配置することができる。図9に示すように、水素関連機器36は、旋回フレーム20の起立体22の後側部分22Bの真上に位置するように配置される。サイズが大きく重量物である水素関連機器36を起立体22の後側部分22Bの真上に配置することで、作業機械100全体の重心の位置をできるだけ後ろでかつ低くすることが可能になる。
【0087】
図10に示すように、電子機器34は、旋回フレーム20の起立体22の後側部分22Bの右及び左に配置される。すなわち、電子機器34は、起立体22の後側部分22Bの右側方に隣接して配置される右側電子機器341と、起立体22の後側部分22Bの左側方に隣接して配置される左側電子機器343と、を含む。起立体22の後側部分22Bの右及び左に形成されるスペースに電子機器34のうちの右側電子機器341及び左側電子機器343を配置することで、水素漏洩時の安全性を向上させるとともに、限られた大きさである機械室14の内部における、作業機械を構成する部品の搭載効率を向上させることができる。
【0088】
また、電子機器34は、旋回フレーム20の左右の起立板23,23の間に配置される。すなわち、電子機器34は、左右の起立板23,23の間に配置される中央電子機器342を含む。左右の起立板23,23の間に形成されるスペースに電子機器34のうちの中央電子機器342を配置することで、水素漏洩時の安全性を向上させるとともに、限られた大きさである機械室14の内部における、作業機械100を構成する部品の搭載効率を向上させることができる。
【0089】
第2の実施形態では、電子機器34は、第1の実施形態において説明した前記電動モータ、前記インバータ、前記コンバータ、前記バッテリ、前記コンプレッサ、前記水ポンプ及び前記ヒーターを含んでいてもよい。これらの機器のそれぞれは、図10における起立体22の後側部分22Bの右側の空間、後側部分22Bの左側の空間、及び、左右の起立板23,23の間の空間の何れかに配置される。
【0090】
この第2の実施形態においても、コントローラ70は、第1の実施形態と同様の制御を行ってもよい。例えば、実作業中には、コントローラ70は、機械室14における換気が十分に行われるように冷却ファン35の回転数を調節し、その時の状況に応じた適切な風量の冷却風CAを生成する。また、実作業中には、コントローラ70は、燃料電池装置32の温度が許容範囲に維持されるように水ポンプを制御して冷却水を循環させる。燃料電池装置32が発電する際に生じる熱エネルギーは冷却水に伝達される。
【0091】
また、コントローラ70は、図略の水温センサにより検出される温度に応じて冷却ファン35の回転数を調節する制御を行ってもよい。具体的には例えば、コントローラ70は、水温センサにより検出される温度が予め設定された水温規定値以上になると、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御を行ってもよい。これにより、熱交換器33において冷却水の温度を十分に下げることができ、その結果、燃料電池装置32の冷却を適切に行うことができる。
【0092】
また、コントローラ70は、水素充填中に、図略の水素タンク雰囲気温度センサにより検出される温度が予め設定された第1の規定値以上になると、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御を行ってもよい。
【0093】
また、コントローラ70は、水素充填中に、図略の水素ガス温度センサにより検出される温度が予め設定された第2の規定値以上になると、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御を行ってもよい。
【0094】
また、コントローラ70は、水素ガスセンサ53が水素ガスを検出すると、冷却ファン35の回転数を増加させるための制御を行ってもよい。このように冷却ファン35の回転数がコントローラ70による制御で自動的に増加して機械室14の換気が促進される。
【0095】
図11は、第2の実施形態の変形例1に係る作業機械100の旋回フレーム20上に配置された電子機器と水素関連機器の配置を示す側面図であり、図12は、その作業機械100の機械室14の内部を示す図であって図1のA-A線における断面図であり、図13は、その作業機械100の機械室14の内部を示す図であって図1のB-B線における断面図である。
【0096】
図11に示す変形例1に係る作業機械100は、機械室14において水素関連機器36と電子機器34との間に配置される第1の隔壁91をさらに備える点で、図9及び図10に示す作業機械100と異なる。第1の隔壁91は、右側電子機器341、中央電子機器342及び左側電子機器343が配置される空間(下側電子機器空間)と、これらの電子機器341,342,343よりも上方に位置する水素関連機器36が配置される空間(上側水素関連機器空間)と、を仕切ることが可能な部材である。第1の隔壁91は、例えば板状の部材によって構成されていてもよい。この変形例1では、仮に水素関連機器36から水素ガスが漏洩した場合であっても、漏洩した水素ガスが電子機器341,342,343に到達することが第1の隔壁91によってより確実に抑制され、下側電子機器空間と上側水素関連機器空間とが第1の隔壁91によって仕切られるので、水素漏洩時の安全性をさらに向上させることができる。
【0097】
また、この変形例1に係る作業機械100では、水素関連機器36は、第1の隔壁91の上においてモジュール化されていることが好ましい。例えば、水素関連機器36を構成する部品がユニット化されてクレーン等により一体的に吊り上げられるように構成されることが好ましい。これにより、水素関連機器36に含まれる水素タンク31及び燃料電池装置32を第1の隔壁91の上において配置するときの作業性を向上させることができる。
【0098】
変形例1に係る作業機械100は、第1の電子機器と第2の電子機器とを備える。第1の電子機器は、上述した右側電子機器341、中央電子機器342及び左側電子機器343を含む。図12に示すように、変形例1に係る作業機械100では、第2の電子機器344は、前記第1の電子機器とは別の電子機器であり、水素関連機器36に対して水平方向(この変形例1では、左右方向)に並ぶような位置に配置される。
【0099】
図12及び図13に示すように、この変形例1に係る作業機械100は、機械室14において水素関連機器36と第2の電子機器344との間に配置される第2の隔壁92をさらに備える。機械室14において第1の電子機器の他に第2の電子機器344を配置する必要があり、かつ、水素関連機器36に対して水平方向に並ぶような位置に配置する必要がある場合であっても、水素関連機器36が配置される領域と第2の電子機器344が配置される領域とが第2の隔壁92によって仕切られる。従って、仮に水素関連機器36から水素ガスが漏洩した場合であっても、漏洩した水素ガスが第2の電子機器344に到達することが第2の隔壁92によってより確実に抑制され、水素漏洩時の安全性を確保することができる。
【0100】
また、この変形例1では、図12に示すように、壁部13の上カバー13Uは、水素関連機器36が配置される空間(上側水素関連機器空間)に連通する1つ又は複数の通風口19をさらに有する。これにより、上側水素関連機器空間における換気が促進される。通風口19は、雨水や粉塵の機械室14の内部への侵入を抑制するために上方が板部材で覆われ、換気をするために側方が開放されるような形状であることが好ましい。
【0101】
図14は、第2の実施形態の変形例2に係る作業機械100の機械室14の内部を示す図であって図1のA-A線における断面図であり、図15は、その作業機械100の機械室14の内部を示す図であって図1のB-B線における断面図である。
【0102】
図14及び図15に示す変形例2に係る作業機械100は、第3の電子機器345と、第3の隔壁93と、第4の隔壁94と、をさらに備える点で、図12及び図13に示す変形例1と異なる。
【0103】
第3の電子機器345は、前記第1の電子機器及び第2の電子機器344とは別の電子機器であり、水素関連機器36に対して水平方向(この変形例1では、前後方向)に並ぶような位置に配置される。第3の隔壁93は、機械室14において水素関連機器36と第3の電子機器345との間に配置される。第4の隔壁94は、機械室14において水素関連機器36と熱交換器33との間に配置される。なお、この変形例2において、第4の隔壁94は省略してもよい。
【0104】
図12及び図13に示す変形例2では、機械室14において第1の電子機器及び第2の電子機器344の他に第3の電子機器345をさらに配置する必要があり、かつ、水素関連機器36に対して水平方向に並ぶような位置に配置する必要がある場合であっても、水素関連機器36が配置される領域と第3の電子機器345が配置される領域とが第3の隔壁93によって仕切られるので、仮に水素関連機器36から水素ガスが漏洩した場合であっても、漏洩した水素ガスが第3の電子機器345に到達することが第3の隔壁93によってより確実に抑制され、水素漏洩時の安全性を確保することができる。
【0105】
この変形例2においても、図14に示すように、壁部13の上カバー13Uは、水素関連機器36が配置される空間(上側水素関連機器空間)に連通する1つ又は複数の通風口19を有する。これにより、上側水素関連機器空間における換気が促進される。
【0106】
[第3の実施形態]
次に、本開示の第3の実施形態に係る作業機械100について説明する。第3の実施形態に係る作業機械100は、図1図4に示すような基本構造を備える点で第1の実施形態に係る作業機械100と同じである。
【0107】
図16は、第3の実施形態に係る作業機械100の機械室14の内部を示す図であり、図1のA-A線における断面図である。図17は、第3の実施形態の変形例に係る作業機械100の機械室14の内部を示す図であり、図1のB-B線における断面図である。
【0108】
図16に示す作業機械100及び図17に示す作業機械100のそれぞれは、水素を貯留する水素タンク31と、水素タンク31から水素が供給される燃料電池装置32と、冷却風CAと熱交換する熱交換器33と、作業機械100の動作のための電子機器34と、機械室14を画定する壁部13と、機械室14において水素タンク31と電子機器34との間に配置される隔壁90と、を備える。水素タンク31は、機械室14において熱交換器33よりも冷却風CAの流れ方向における上流に配置される。
【0109】
これらの作業機械100のそれぞれでは、機械室14において水素タンク31が配置される領域と電子機器34が配置される領域とが隔壁90によって仕切られる。従って、仮に水素タンク31又はその近傍(例えば水素充填口など)から水素ガスが漏洩した場合であっても、機械室14において、漏洩した水素ガスが電子機器34に到達することが抑制される。これにより、水素漏れ時の安全性が向上する。また、機械室14において、熱交換器33よりも上流に配置される水素タンク31には、熱交換器33を通過する前の冷却風CA、すなわち、熱交換器33において熱交換して温度が上昇する前の冷却風CAが供給されるので、水素タンク31周辺の温度上昇が抑制される。水素タンク31周辺の温度上昇の抑制は、水素タンク31に水素を充填するために必要な充填時間の増加の抑制に寄与する。また、水素タンク31が例えば樹脂製タンクである場合には、水素タンク31周辺の温度上昇の抑制は、樹脂製タンクの劣化の抑制にも寄与する。
【0110】
図16に示す作業機械100では、機械室14は、キャブ11とカウンタウエイト12との間に形成されている。水素タンク31は、燃料電池装置32及び電子機器34よりも冷却風CAの流れ方向における上流に配置され、燃料電池装置32及び電子機器34は、熱交換器33よりも冷却風CAの流れ方向における上流に配置されている。隔壁90は、機械室14において、水素タンク31が配置される領域と燃料電池装置32及び電子機器34が配置される領域とを隔てるような形状を有する。隔壁90は、水素タンク31が配置される領域と燃料電池装置32及び電子機器34が配置される領域とを連通させる連通口90Aを有していてもよい。図16に示す作業機械100では、水素タンク31は、機械室14において、電子機器34よりも上方に配置されておらず、電子機器34と水平方向(左右方向)に並ぶような位置に配置されているが、上記のような隔壁90が水素タンク31が配置される領域と燃料電池装置32及び電子機器34が配置される領域との間に配置されているので、水素漏れ時の安全性が向上する。
【0111】
図17に示す作業機械100では、機械室14は、キャブ11とウエイトカバー13W(最後部カバー13W)との間に形成されている。すなわち、機械室14は、ウエイトカバー13Wにより覆われる空間(ウエイト空間)の一部を含む。燃料電池装置32及び電子機器34が配置される空間(電子機器空間)とウエイト空間とは、隔壁90を介して前後に並ぶように配置される。この変形例2では、吸気口16、ウエイト空間、熱交換器33の順に冷却風CAが流れる経路と、吸気口16、電子機器空間、熱交換器33の順に冷却風CAが流れる経路と、は並行するように形成されている。水素タンク31は、熱交換器33よりも冷却風CAの流れ方向における上流に配置されている。同様に、燃料電池装置32及び電子機器34は、熱交換器33よりも冷却風CAの流れ方向における上流に配置されている。隔壁90は、機械室14において、水素タンク31が配置される領域と燃料電池装置32及び電子機器34が配置される領域とを隔てるような形状を有する。隔壁90は、水素タンク31が配置される領域と燃料電池装置32及び電子機器34が配置される領域とを連通させる連通口90Aを有していてもよい。図17に示す作業機械100では、水素タンク31は、機械室14において、電子機器34よりも上方に配置されておらず、電子機器34と水平方向(前後方向)に並ぶような位置に配置されているが、上記のような隔壁90が水素タンク31が配置される領域と燃料電池装置32及び電子機器34が配置される領域との間に配置されているので、水素漏れ時の安全性が向上する。
【0112】
[変形例]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例を含む。
【0113】
(A)仕切りについて
第2及び第3の実施形態に係る作業機械のそれぞれは、第1の実施形態における仕切り18を備えていてもよい。
【0114】
(B)電子機器について
第2の実施形態では、起立体22の後側部分22Bの右及び左の両方に電子機器341及び電子機器343が配置され、左右の起立板23,23の間に電子機器342が配置されるが、これらの電子機器341,342,343のうちの一つ又は二つを省略してもよい。なお、本開示に係る作業機械では、機械室に配置される電子機器は、電動モータ、インバータ、コンバータ、バッテリ、コンプレッサ、水ポンプ及びヒーターの少なくとも一つであってもよい。すなわち、電動モータ、インバータ、コンバータ、バッテリ、コンプレッサ、水ポンプ及びヒーターの一部は、機械室の外部に配置されていてもよい。
【0115】
(C)油圧機器について
第1~第3実施形態では、油圧ポンプ81は機械室14の内部に配置されるが、油圧ポンプ81は機械室14の外部に配置されてもよい。また、油圧ポンプ81の一部分が機械室14の内部に配置され、油圧ポンプ81の他の部分が機械室14の外部に配置されてもよい。
【0116】
例えば、図18に示す作業機械100では、油圧ポンプ81は、上部旋回体2の旋回フレーム20の前部(例えば右前部)に配置されている。この作業機械100では、旋回フレーム20の右前部に油圧機器37を配置する領域である油圧機器領域が形成されている。油圧機器37は、作動油を吐出する油圧ポンプ81と、油圧ポンプ81に供給する作動油を貯蔵する作動油タンク82と、を含む。作動油タンク82は、油圧機器領域の前端部に配置され、油圧ポンプ81は、作動油タンク82の後方に配置されている。図18に示す変形例では、作動油タンク82の後方に(真後ろに)油圧ポンプ81が配置され、作動油タンク82と油圧ポンプ81との間に他の機器が介在していないので、作動油タンク82と油圧ポンプ81を接続する配管の長さを小さくすることができる。図19に示す具体例では、油圧ポンプ81は、図19に示す機器カバー13H(具体的には、後述する第2機器カバー13H2)によって画定される機器収容室15の内部の機器収容空間に収容され、作動油タンク82は、機器カバー13Hの前に配置されている。ただし、油圧機器37の全部が機器カバー13Hによって画定される機器収容室15の内部の機器収容空間に収容されていてもよい。
【0117】
また、電子機器34を配置する領域である電子機器領域は、油圧機器領域の後方に形成されている。電子機器34は、電動モータ34A、インバータ34B、コンバータ34C及びバッテリ34Dを含む。電子機器領域の前端部には、電動モータ34Aが配置されている。すなわち、作動油タンク82、油圧ポンプ81及び電動モータ34Aが前から後に向かってこの順に配置されている。電子機器領域では、電動モータ34Aの後方にインバータ34B、コンバータ34C及びバッテリ34Dが配置されている。この変形例では、油圧機器領域の後方に電子機器領域が形成され、この電子機器領域の前端部に電動モータ34Aが配置されているので、電動モータ34Aに電力を供給するための配線を電子機器領域内に収めることができ、当該配線が長くなることを抑制することができる。この変形例では、電動モータ34A、インバータ34B、コンバータ34C及びバッテリ34Dは、前から後に向かってこの順に配置されているが、これらの機器の配置順序は、図18に示す具体例に限られない。
【0118】
さらに、燃料電池装置32は、電子機器領域の後端部(図18に示す具体例では、バッテリ34D)の左隣に配置されている。水素タンク31は、燃料電池装置32の上に配置されている。水素タンク31は、電子機器領域の後端部よりも上方に配置されている。油圧機器37の一部又は全部を機械室14の外部に配置することで、限られたスペースである機械室14の内部に水素タンク31、燃料電池装置32及び熱交換器33を搭載するとともに、機械室14の内部に電子機器34の一部又は全部を搭載することができる。なお、図18及び図19に示す変形例においても、水素タンク31は、機械室14において、熱交換器33よりも冷却風の流れ方向における上流に配置される。
【0119】
(D)通風口について
第2の実施形態では、壁部13の上カバー13Uに1つ又は複数の通風口19が形成されているが、第1の実施形態及び第3の実施形態の少なくとも一方においても、第2の実施形態と同様の通風口19が形成されていてもよい。例えば図18及び図19に示す作業機械100では、壁部13の上カバー13Uには左右一対の通風口19が形成されている。左の通風口19は、機械室14の内部の空気を左に向かって機械室14の外部に排出するように形成され、右の通風口19は、機械室14の内部の空気を右に向かって機械室14の外部に排出するように形成されている。具体的には、一対の通風口19のそれぞれは、上カバー13Uに形成された図略の開口を上から覆う板部材19Aと、上カバー13Uと、の隙間により構成される。図19に示す作業機械100において、左の通風口19は、例えば左側の板部材19Aの左縁と上カバー13Uとの隙間であり、右の通風口19は、例えば右側の板部材19Aの右縁と上カバー13Uとの隙間である。このように一対の通風口19から排出される空気の向きは互いに反対方向であることが好ましい。また、通風口19から排出される空気の向きは、後ろ向きであってもよい。通風口19から排出される空気の向きは、通風口19から排出される空気が作業機械100から遠ざかりやすい向きであるのが好ましい。図19に示す具体例では、右の通風口19と上カバー13Uの右縁との距離は、左の通風口19と上カバー13Uの左縁との距離よりも小さいので、右の通風口19から排出される空気は、左の通風口19から排出される空気に比べて、作業機械100から遠ざかりやすい。
【0120】
(E)充填口について
第1の実施形態では、水素充填ソケット45は、図8に示すのように機械室14の内部に配置され、水素充填装置48の端子49が機械室14の外部から吸気口16を通じて水素充填ソケット45の水素充填口に接続されるように構成されるが、このような構成に限られない。例えば図18及び図19に示す作業機械100では、水素充填口にアクセスするための構造が吸気口16以外の部位に形成されていてもよい。具体的には、図19に示すように、機械室14を画定する壁部13の前カバー13Fの一部分に水素充填開口25が形成されていてもよい。この水素充填開口25は、機械室14の内部に位置する水素充填口に機械室14の外部からアクセスするための開口であり、機械室14の内部に連通する開口である。この水素充填開口25には、機械室14の内部に雨水及び粉塵が侵入することを抑制するための開閉可能又は取り外し可能な蓋が取り付けられることが好ましい。このような蓋が設けられることで、作業者は水素充填開口25の開口状態と閉塞状態を蓋の操作によって切り替えることができる。例えば、水素充填時には水素充填開口25が開口状態とされ、水素充填を行わない時には水素充填開口25が閉塞状態とされる。水素充填開口25の近傍には作業者が手で触れることで身体に帯電している静電気を除去するための静電気除去シートが配置されることが好ましい。なお、水素充填開口25は機械室14の前側を塞ぐカバーに限られず、機械室の右側又は左側を塞ぐカバーに形成されていてもよく、機械室14の後側を塞ぐカバーに形成されていてもよく、機械室14の上側を塞ぐカバーに形成されていてもよい。
【0121】
(F)点検口について
図18及び図19に示す作業機械100の壁部13には、機械室14の内部に収容された水素タンク31を点検するための点検口が形成されていてもよい。具体的には例えば、図19に示す作業機械100では、機械室14を画定する壁部13の前カバー13Fの一部分に機械室14の内部の水素タンク31を機械室14の外部から点検するための点検口26が形成されている。この点検口26は、機械室14の内部の空間を機械室14の外部に開放させて目視により水素タンク31を確認するための開口である。この点検口26には、機械室14の内部に雨水及び粉塵が侵入することを抑制するための開閉可能又は取り外し可能な蓋が取り付けられることが好ましい。壁部13には、一つの点検口26だけでなく、複数の点検口26が形成されていてもよい。また、点検口26は、機械室14の前側を塞ぐカバーに限られず、機械室14の右側又は左側を塞ぐカバーに形成されていてもよく、機械室14の後側を塞ぐカバーに形成されていてもよく、機械室14の上側を塞ぐカバーに形成されていてもよい。
【0122】
(G)機器カバーについて
図19に示すように、機器収容室15を画定する機器カバー13Hは、部分的に高さの低い段差部131を有していてもよい。具体的には次のとおりである。図19に示すように、旋回フレーム20の起立体22の起立板23には、ブームシリンダ7の基端部を回動可能に連結する連結ピンが挿通される挿通孔23Aと、ブーム4の基端部4Aを回動可能に連結する連結ピンが挿通される挿通孔23Bと、が形成されている。機器収容室15を画定する機器カバー13Hは、第1機器カバー13H1と、第1機器カバー13H1の前に位置する第2機器カバー13H2と、を含む。第2機器カバー13H2の上面は、第1機器カバー13H1の上面よりも下方に位置し、かつ、水平線L1よりも下方に位置する。水平線L1は、挿通孔23Bの中心を通り左右方向に平行な直線(仮想線)である。段差部131は、第2機器カバー13H2の上面が第1機器カバー13H1の上面よりも下方に位置することによって形成されている。このような段差部131が形成されることにより、連結ピンを挿通孔23Bに着脱する着脱作業が行われるときに機器カバー13Hが当該連結ピンに干渉しないので、着脱作業の作業性が向上する。段差部131の前方には作動油タンク82が配置されている。図19に示す具体例では、第2機器カバー13H2の上面は、作動油タンク82の上面よりも下方に位置する。この場合、第2機器カバー13H2の上面は、第1機器カバー13H1の上面及び作動油タンク82の上面よりも下方に位置するので、段差部131は、下方に凹む凹部を構成する。第2機器カバー13H2により画定される内部空間には、例えば油圧ポンプ81が配置されていてもよい。
【0123】
(H)アクチュエータについて
第1~第3実施形態では、複数のアクチュエータの全てが、油圧ポンプ81から吐出される作動油の供給を受けて作動する油圧アクチュエータであるが、複数のアクチュエータのうちの少なくとも一部が、油圧アクチュエータ以外のアクチュエータで構成されてもよい。具体的には例えば、複数のアクチュエータのうちの少なくとも一部は、電動アクチュエータであってもよい。電動アクチュエータは、例えば、燃料電池装置32及びバッテリの少なくとも一方から電力が供給されることにより動作する電動モータによって伸縮動作、回転動作などの動作を行うように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0124】
4 :ブーム
4A :ブームの基端部
13 :壁部
14 :機械室
16 :吸気口
17 :排気口
18 :仕切り
20 :旋回フレーム
21 :フレーム本体
22 :起立体
22A :ブーム取付部
22B :後側部分
23 :起立板
31 :水素タンク
32 :燃料電池装置
33 :熱交換器
34 :電子機器
35 :冷却ファン
36 :水素関連機器
48 :水素充填装置
51 :水素タンク雰囲気温度センサ(温度検出器の一例)
52 :水素ガス温度センサ(温度検出器の一例)
53 :水素ガスセンサ
70 :コントローラ
81 :油圧ポンプ
90~94 :隔壁
100 :作業機械
CA :冷却風
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