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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009463
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】加熱調理装置
(51)【国際特許分類】
   F24C 1/00 20060101AFI20250110BHJP
   F23D 14/22 20060101ALI20250110BHJP
   F24C 3/08 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F24C1/00 320E
F23D14/22 G
F24C3/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112486
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】523172729
【氏名又は名称】株式会社H2&DX社会研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】福田 峰之
(72)【発明者】
【氏名】松本 勇美夫
【テーマコード(参考)】
3K019
【Fターム(参考)】
3K019BA01
3K019BB06
3K019CA03
(57)【要約】
【課題】簡易な構成の、過熱水蒸気を用いる加熱調理装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る加熱調理装置としての水素オーブン1は、水素ガスを燃焼させる水素バーナー2と、食材Mを調理する空間である加熱室3と、加熱室3に空気を供給可能な吸気部4とを備えている。水素バーナー2は、加熱室3内に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを燃焼させる水素バーナーと、
食材を調理する空間である加熱室と、
前記加熱室に空気を供給可能な吸気部とを備え、
前記水素バーナーは、前記加熱室内に配置されている、
加熱調理装置。
【請求項2】
前記吸気部は、燃焼する水素ガスに向けて空気を供給可能になっている、
請求項2に記載の加熱調理装置。
【請求項3】
前記加熱室は、過熱蒸気領域と、火炎領域とを有しており、
前記火炎領域に、前記水素バーナーが配置されており、
前記吸気部から前記加熱室に供給された空気は、前記火炎領域から前記過熱蒸気領域に向かって流れるようになっている、
請求項1に記載の加熱調理装置。
【請求項4】
前記加熱室に設けられた送風部を更に備え、
前記送風部は、前記加熱室において、前記火炎領域から前記過熱蒸気領域に向かって流れる気流を発生させるようになっている、
請求項3に記載の加熱調理装置。
【請求項5】
食材を搬送可能な搬送部を更に備え、
前記搬送部は、前記加熱室を通る、
請求項1又は3に記載の加熱調理装置。
【請求項6】
前記搬送部は、前記加熱室内において、前記過熱蒸気領域から前記火炎領域に向かって、食材を搬送する、
請求項3に従属する請求項5に記載の加熱調理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理装置に関し、特に、水素を利用する加熱調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、過熱水蒸気を使用して食材を調理する加熱調理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-015272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のこのような過熱水蒸気を用いる加熱調理装置は、過熱水蒸気を生成するためにボイラを備えている。また、調理方法や食材に応じて、過熱水蒸気により調理された食品の表面に焼き目を付けるために、電気やガス等を使用して食品の表面を加熱する他の加熱調理機構が必要になる場合がある。このように、過熱水蒸気を用いる加熱調理装置は、ボイラや他の加熱調理機構等の他の構成を必要とし、複雑な構成を有している。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成の、過熱水蒸気を用いる加熱調理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る加熱調理装置は、水素ガスを燃焼させる水素バーナーと、食材を調理する空間である加熱室と、前記加熱室に空気を供給可能な吸気部とを備え、前記水素バーナーは、前記加熱室内に配置されている。
【0007】
本発明の一態様に係る水素加熱調理装置おいて、前記吸気部は、燃焼する水素ガスに向けて空気を供給可能になっている。
【0008】
本発明の一態様に係る水素加熱調理装置おいて、前記加熱室は、過熱蒸気領域と、火炎領域とを有しており、前記火炎領域に、前記水素バーナーが配置されており、前記吸気部から前記加熱室に供給された空気は、前記火炎領域から前記過熱蒸気領域に向かって流れるようになっている。
【0009】
本発明の一態様に係る水素加熱調理装置は、前記加熱室に設けられた送風部を更に備え、前記送風部は、前記加熱室において、前記火炎領域から前記過熱蒸気領域に向かって流れる気流を発生させるようになっている。
【0010】
本発明の一態様に係る水素加熱調理装置は、食材を搬送可能な搬送部を更に備え、前記搬送部は、前記加熱室を通る。
【0011】
本発明の一態様に係る水素加熱調理装置おいて、前記搬送部は、前記加熱室内において、前記過熱蒸気領域から前記火炎領域に向かって、食材を搬送する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、過熱水蒸気を用いる加熱調理装置を簡易な構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係る加熱調理装置としての水素オーブンの概略構成を示す模式図である。
図2図1に示される水素オーブンの内部構造を概略的に示す図である。
図3】水素オーブンにおける水素バーナーの噴出体の構成を概略的に示す斜視図である。
図4図3に示される噴出体の有する管路の断面斜視図である。
図5】水素オーブンの構成を概略的に示す模式図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る水素オーブンの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面において、複数設けられている構成要素の全てに符号は付されておらず、複数設けられている構成要素の一部の符号は省略されている。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る加熱調理装置としての水素オーブン1の概略構成を示す図であり、図2は、水素オーブン1の内部構造を概略的に示す図である。図1,2に示されるように、水素オーブン1は、水素ガスを燃焼させる水素バーナー2と、食材Mを調理する空間である加熱室3と、加熱室3に空気を供給可能な吸気部4とを備えている。水素バーナー2は、加熱室3内に配置されている。以下、水素オーブン1の構成について具体的に説明する。
【0016】
図1,2に示されるように、水素オーブン1は、例えば、加熱室3を覆う部材である本体カバー20を有している。本体カバー20は、外部に対して閉ざされた空間又はおおよそ閉ざされた空間を形成しており、加熱室3を画成している。本体カバー20は、例えば、後述する搬送部5が通る開口である、搬入口21及び搬出口22を有している。なお、搬入口21及び搬出口22には、搬入口21及び搬出口22を開閉可能にする蓋が取り付けられていてもよい。
【0017】
図1,2に示されるように、水素オーブン1は、例えば、食材Mを搬送可能な搬送部5を備えている。搬送部5は、加熱室3を通過するようになっており、例えば、水平方向に又は略水平方向に、食材Mを搬送可能になっている。搬送部5は、例えば、ベルトコンベアである。搬送部5は、具体的には例えば、図1に示されるように、一対のスプロケット5a,5bに、金属製の無端状のベルト5cが巻き掛けられて構成されている。また、例えば、一対のスプロケット5a,5bの一方又は両方は、回転駆動するようになっている。搬送部5は、本体カバー20の搬入口21及び搬出口22を通って、本体カバー20を貫通している。搬送部5は、例えば、複数のベルトコンベアが連なって構成されている。
【0018】
上述のように、加熱室3には、水素バーナー2が配置されている。水素バーナー2は、例えば、加熱室3内において、上下方向から搬送部5を挟むように構成されている。水素バーナー2は、例えば図1,2に示されるように、一対の噴出体10を有しており、一方の噴出体は10が、搬送部5の上側に設けられており、他方の噴出体10が、搬送部5の下側に設けられている。また、例えば図1,2に示されるように、一対の噴出体10は、搬送部5を介して、上下方向において対向している。なお、噴出体10は、水素ガスを供給可能であり、供給された水素ガスを外部に噴出可能な部材である。
【0019】
図1,2,3に示されるように、噴出体10は、複数の管路11を有している。図4に示されるように、管路11は、ガスを供給可能な空間12を有しており、また、空間12を外部に開放する孔である開放孔13を複数有している。開放孔13は、例えば、管路11に供給されたガスが開放孔13を出る速度が水素ガスの燃焼速度よりも大きくなるようになっている。なお、図3は、噴出体10の構成を概略的に示す斜視図であり、図4は、噴出体10の有する管路11の断面斜視図である。
【0020】
図3に示されるように、噴出体10は、例えば、バッファ管路14を有している。バッファ管路14は、図5に示されるように、内部に空間を有している。つまり、バッファ管路14は、その延び方向に延びる空間を有しており、バッファ管路14の延び方向に沿ってガスを案内することができるようになっている。また、バッファ管路14は、空間に供給されるガスを一時的に貯留し、空間内のガスの圧力を一定又は略一定の圧力にするよう形態に形成されている。図3に示されるように、バッファ管路14には、バッファ管路14に交差する方向に突出するように、複数の管路11が設けられている。管路11の一端である端11aが、バッファ管路14に接続しており、管路11の他端である端11bは、閉じている。また、管路11の空間12は、端11aにおいて、バッファ管路14の内部の空間に連通している。
【0021】
バッファ管路14は、例えば図3に示されるように、筒状に形成されており、管路11は、バッファ管路14の側面から突出するように設けられている。バッファ管路14の内部の空間は、管路11及び後述する供給管路15と連通する部分を除いて閉じられている。また、バッファ管路14の断面形状は、円形ではなくてもよい。例えば、バッファ管路14の断面形状は、三角形や四角形等の多角形であってもよい。
【0022】
管路11は、例えば図3に示されるように、直線に沿って延びている。管路11の端11aは、例えば図3に示されるように、バッファ管路14に接続しており、管路11は、バッファ管路14内の空間に連通している。また、図3に示されるように、管路11の端11bは閉じている。また、例えば図3に示されるように、複数の管路11は、並列に並べられている。複数の管路11は、具体的には例えば、等間隔又は略等間隔で互いに平行又は略平行に並べられている。なお、管路11は、直線に沿って延びているものに限られない。例えば、管路11は、曲線に沿って延びていてもよく、また、曲線と直線とが組み合わされた線に沿って延びていてもよく、種々の形に延びていてもよい。また、複数の管路11は、上述のように並列に設けられていなくてもよく、他の姿勢や配置形態となっていてもよい。また、管路11の断面形状は、図4に示されるような円形ではなくてもよい。例えば、管路11の断面形状は、三角形や四角形等の多角形であってもよい。
【0023】
図1,2に示されるように、上側の噴出体10は、複数の管路11が、開放孔13を下側に向けて、搬送部5に平行に又は略平行に並ぶように、加熱室3に配設されている。同様に、下側の噴出体10は、複数の管路11が、開放孔13を上側に向けて、搬送部5に平行に又は略平行に並ぶように、加熱室3に配設されている。また、図2に示されるように、各噴出体10の管路11は、本体カバー20の一部を貫通して加熱室3内に延びている。つまり、管路11の一部分が加熱室3内に延在しており、管路11の他の部分は、加熱室3内になく、管路11の一部分は、本体カバー20の外部に延在している。また、バッファ管路14は、本体カバー20の外部にある。
【0024】
各管路11には、例えば図3に示されるように、管路11内の空間12を閉塞して、開放孔13にガスが供給されないようにするための弁11cが設けられている。弁11cは、例えば、手動のコックを有しており、コックを手動で操作することにより、管路11内の空間12を開放又は閉塞できるようになっている。なお、弁11cは、図示しない駆動装置によって制御されて、管路11内の空間12を開放又は閉塞するようになっているものであってもよい。弁11cは、例えば図3に示されるように、バッファ管路14と、バッファ管路14に最も近い開放孔13との間に設けられており、管路11の空間12を部分的に閉塞可能になっている。また、弁11cは、本体カバー20の外部に位置するように、管路11に設けられている。
【0025】
上述したように、吸気部4は、加熱室3に空気を供給可能になっている。吸気部4は、例えば、燃焼する水素ガスに向けて空気を供給可能になっている。吸気部4は、例えば図1に示されるように、駆動部30と、管路部31とを有している。駆動部30は、回転駆動されるファン等の空気を流して気流を生成する機構である。管路部31は、駆動部30によって生成された気流を加熱室3に導く管路であり、例えば、供給管路32と複数の噴出管路33とを有している。複数の噴出管路33は、供給管路32から枝分かれしており、本体カバー20の一部を貫通して、加熱室3に開口している。駆動部30は、供給管路32に設けられている。このように、管路部31は、各噴出管路33を介して、加熱室3に連通しており、駆動部30の生成する気流は、管路部31を通って、加熱室3に導かれるようになっている。
【0026】
また、噴出管路33の開口33aは、水素バーナー2の噴出体10の管路11に空気が供給されるような位置に設けられている。例えば図1に示されるように、各噴出管路33の開口33aは、水素バーナー2の噴出体10の各管路11の近傍に位置している。具体的には例えば、図1に示されるように、複数の噴出管路33の一部は、加熱室3において、搬送部5の上側に位置するように設けられており、また、これら複数の噴出管路33の一部の開口33aが、上側の噴出体10の各管路11の近傍に位置するように設けられている。また、複数の噴出管路33の他の一部は、加熱室3において、搬送部5の下側に位置するように設けられており、また、これら複数の噴出管路33の他の一部の開口33aが、下側の噴出体10の各管路11の近傍に位置するように設けられている。なお、吸気部4の形態は、上述の形態に限られない。
【0027】
また、水素オーブン1には、例えば、排気部6が設けられている。排気部6は、加熱室3内のガスを加熱室3の外に排出するための機構である。例えば図1に示されるように、排気部6は、本体カバー20を上側から隙間を空けて覆う排気カバー25を有しており、また、排気管路26を有している。排気カバー25と本体カバー20との間には空間が形成されており、この空間が排気路25aを形成している。また、排気カバー25は、例えば図1に示されるように、本体カバー20の搬入口21及び搬出口22まで、または、本体カバー20の搬入口21の近傍及び搬出口22の近傍まで、延びており、排気路25aは、搬入口21及び搬出口22夫々を介して、加熱室3に連通されるようになっている。排気管路26は、図1に示されるように、排気カバー25の一部に接続されて排気路25aに連通しており、排気路25a内の気体を外部に導出するようになっている。排気部6には、駆動部27が設けられていてもよい。駆動部27は、回転駆動されるファン等の空気を流して気流を生成する機構である。駆動部27は、排気管路26内に、外部に向かう気流を生成し、排気路25a及び排気管路26に、搬入口21及び搬出口22側から外部に向かう気流を生成することができる。
【0028】
また、図2,3,5に示されるように、噴出体10には、水素タンク7から噴出体10に水素ガスを供給するための供給管路15が設けられている。なお、図5は、水素オーブン1の構成を概略的に示す模式図である。供給管路15は、例えば図3に示されるように、バッファ管路14の端部に接続して、バッファ管路14内の空間に連通している。なお、供給管路15は、バッファ管路14の他の部分に接続していてもよい。なお、噴射体10は、バッファ管路14を有していなくてもよく、供給管路15に管路11が直接連通していてもよい。この場合、管路11の空間12は、例えば、一端において供給管路15内の空間に連通している。
【0029】
また、図5に示されるように、水素オーブン1は、例えば、噴出体10に供給される水素ガスの流速を調整可能な流速調整体16を備えている。流速調整体16は、例えば、噴出体10に供給される水素ガスの圧力を調整可能になっており、図5に示されるように、供給管路15に設けられている。流速調整体16は、具体的には例えば、圧力調整弁であり、供給管路15内を流れる水素ガスの圧力を調整して、噴出体10に供給される水素ガスの圧力を調整することができる。つまり、流速調整体16によって、管路11の空間12における水素ガスの圧力を調整することができる。このため、流速調整体16は、管路11の開放孔13から出る水素ガスの噴出速度を調整することができる。
【0030】
水素オーブン1は、上述のような構成を有しており、搬送部5によって搬送される食材Mを加熱調理する。以下、水素オーブン1の作用を具体的に説明する。
【0031】
搬送部5に食材Mが配置されると、食材Mは、搬送部5によって搬送される。食材Mは搬入口21を通って、加熱室3内に入り、加熱室3内を搬送され、水素バーナー2の上側の噴出体10と下側の噴出体10との間を通る。
【0032】
一方、水素タンク7から供給管路15を介して水素ガスが供給されると、噴出体10に水素ガスが供給される。各管路11の弁11cが開いた状態において、噴出体10に供給された水素ガスは、バッファ管路14を介して各管路11に供給される。供給管路15において、流速調整体16によって噴出体10に供給される水素ガスの圧力が調整されて、バッファ管路14に一定又は略一定の圧力で水素ガスが貯留される。このため、管路11の空間12における水素ガスの圧力は所望とする圧力となっている。噴出体10の管路11に供給された水素ガスは、管路11の開放孔13から管路11外に出る。開放孔13から出た水素ガスは、空気と混ざり、着火装置等によって着火されて燃焼する。このように、管路11の開口孔13の周辺には、水素ガスが燃焼して火炎が形成される。なお、水素タンク7から供給管路15を介して噴出体10に供給される水素ガスには、空気等の他のガスが混合しないようになっている。また、水素タンク7には、純水素ガスが貯蔵されていてもよく、または、空気等の他のガスが水素ガスに混合された混合水素ガスが貯蔵されていてもよい。
【0033】
吸気部4は、管路部31の供給管路32及び複数の噴出管路33を介して、複数の噴出管路33の開口33aから、上側及び下側の噴出体10の各管路11又は各管路11の近傍に向かって、空気を噴出する。これにより、水素バーナー2の各管路11の開口孔13の周辺に形成された水素ガスの火炎に、吸気部4から空気が供給される。これにより、水素ガスが燃焼して形成された火炎によって、吸気部4から供給された空気が加熱され、過熱水蒸気が生成される。水素ガスの燃焼によって生成される火炎は、約2000°と高温であり、吸気部4から供給された空気を効率的に過熱水蒸気にすることができる。また、水素ガスの燃焼によって水蒸気が発生し、この水蒸気も、水素ガスの燃焼によって生成される火炎によって加熱され、過熱水蒸気が生成される。
【0034】
加熱室3内において、搬送部5によって搬送される食材Mは、水素バーナー2の上側の噴出体10と下側の噴出体10との間を移動する。この際、水素ガスの火炎によって生成される過熱水蒸気が食材Mの表面及びその近傍で凝縮水滴になり、これにより発生する凝縮潜熱によって食材Mは加熱調理される。また、食材Mの近傍の湿度は、高い湿度に維持され、これにより、凝縮潜熱による加熱が和らぎ、食材Mの表面が過度に加熱されることなく食品の内部も加熱調理される。
【0035】
また、加熱室3内において、搬送部5によって搬送される食材Mが、水素バーナー2の上側の噴出体10と下側の噴出体10との間を移動する際、食材Mは、水素ガスの燃焼によって生成する火炎によっても加熱調理される。これにより、食材Mの表面に焼き目を付けることができる。
【0036】
また、加熱室3内の水蒸気等のガスは、排気部6によって、搬入口21及び搬出口22から外部に搬出される。水素オーブン1による加熱調理の際に生成されるガスは、理論的には水蒸気のみであり、二酸化炭素が排出されることはない、または、ほとんど二酸化炭素が排出されない。
【0037】
このように、水素オーブン1は、過熱水蒸気の生成のためにボイラを必要とせず、また、食材Mの表面に焼き目を付けるために水素バーナー2の他の加熱機構を必要としない。また、水素ガスを燃焼させることにより、効率的に過熱水蒸気を生成することができ、効率的な加熱調理を提供することができる。
【0038】
上述のように、本発明の第1実施形態に係る水素オーブン1によれば、過熱水蒸気を用いる加熱調理装置を簡易な構成にすることができる。
【0039】
次いで、本発明の第2実施形態に係る加熱調理装置としての水素オーブン8について説明する。以下、水素オーブン8について、上述の水素オーブン1と同じ構成又は同様の機能を有する構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。図6は、本発明の第2実施形態に係る水素オーブン8の概略構成を示す図である。
【0040】
図7に示されるように、水素オーブン8は、加熱室3に、2つの領域が設けられており、加熱室3は、過熱蒸気領域R1と、火炎領域R2とを有している。火炎領域R2には、水素バーナー2が配置されている。また、水素オーブン8において、吸気部4から加熱室3に供給された空気は、火炎領域R2から過熱蒸気領域R1に向かって流れるようになっている。
【0041】
図6に示されるように、加熱室3において、過熱蒸気領域R1と火炎領域R2とは、搬送部5の食材Mの搬送方向に並んでおり、本体カバー20の搬入口21側に過熱蒸気領域R1が広がっており、本体カバー20の搬出口22側に火炎領域R2が広がっている。つまり、搬送部5は、加熱室3内において、過熱蒸気領域R1から火炎領域R2に向かって、食材Mを搬送するようになっている。
【0042】
また、水素オーブン8は、加熱室3に設けられた送風部9を備えている。送風部9は、加熱室3において、火炎領域R2から過熱蒸気領域R1に向かって流れる気流を発生させるようになっている。送風部9は例えば、1つ又は複数のファン9a,9bを有している。ファン9a,9bは、電力が与えられて駆動可能になっている。図6に示されるように、ファン9aは、加熱室3において、搬送部5の上側に配置されており、また、ファン9bは、加熱室3において、搬送部5の下側に設けられている。また、ファン9a,9bは、例えば、過熱蒸気領域R1と火炎領域R2との間に設けられている。具多的には例えば、上側のファン9aは、水素バーナー2の上側の噴出体10の最も搬入口21側の管路11の近傍に配置されており、下側のファン9bは、水素バーナー2の下側の噴出体10の最も搬入口21側の管路11の近傍に配置されている。ファン9a,9bは、過熱蒸気領域R1に設けられていてもよく、火炎領域R2に設けられていてもよい。また、ファン9a,9bは、過熱蒸気領域R1と火炎領域R2とに設けられていてもよい。
【0043】
図6に示されるように、送風部9は、加熱室3の過熱蒸気領域R1に、気流ガイド9c,9dを有している。気流ガイド9c,9dは、ファン9a,9bから送られてくる気流の向きを変更する部材であり、ファン9a,9bからの気流の向きを、搬送部5に向かうように変更する。気流ガイド9c,9dは、例えば、曲がった板状の部材である。図6に示されるように、例えば、送風部9は、複数の気流ガイド9c,9dを夫々有しており、複数の気流ガイド9c,9dは夫々、並んで配置されている。気流ガイド9cは、ファン9aに対応しており、搬送部5の上側に設けられており、ファン9aから送られてくる気流の向きを下側に向かう方向に変更するようになっている。また、気流ガイド9dは、ファン9bに対応しており、搬送部5の下側に設けられており、ファン9bから送られてくる気流の向きを上側に向かう方向に変更するようになっている。
【0044】
水素オーブン8は、上述のような構成を有しており、搬送部5によって搬送される食材Mを加熱調理する。以下、水素オーブン8の作用を具体的に説明する。
【0045】
搬送部5に食材Mが配置されると、食材Mは、搬送部5によって搬送される。食材Mは搬入口21を通って、加熱室3内に入り、加熱室3内を搬送され、過熱蒸気領域R1を通過し、次いで、火炎領域R2を通過する。また、火炎領域R2において、食材Mは、水素バーナー2の上側の噴出体10と下側の噴出体10との間を通る。
【0046】
一方、水素タンク7から供給管路15を介して水素ガスが供給されると、水素オーブン1の場合と同様に、噴出体10に水素ガスが供給される。噴出体10の管路11に供給された水素ガスは、水素オーブン1の場合と同様に、管路11の開放孔13から管路11外に出て、空気と混ざり、着火装置等によって着火されて燃焼する。このように、火炎領域R2において、管路11の開口孔13の周辺には水素ガスが燃焼して火炎が形成される。
【0047】
吸気部4は、管路部31の供給管路32及び複数の噴出管路33を介して、複数の噴出管路33の開口33aから、上側及び下側の噴出体10の各管路11又は各管路11の近傍に向かって、空気を噴出する。これにより、水素バーナー2の各管路11の開口孔13の周辺に形成された水素ガスの火炎に、吸気部4から空気が供給される。これにより、火炎領域R2において、水素ガスが燃焼して形成された火炎によって、吸気部4から供給された空気が加熱され、過熱水蒸気Vが生成される。水素ガスの燃焼によって生成される火炎は、約2000°と高温であり、吸気部4から供給された空気を効率的に過熱水蒸気にすることができる。また、水素ガスの燃焼によって水蒸気が発生し、この水蒸気も、水素ガスの燃焼によって生成される火炎によって加熱され、過熱水蒸気Vが生成される。このように、火炎領域R2において、水素オーブン1の場合と同様に、各管路11の開口孔13から噴出する水素ガスが燃料し、水素ガスの火炎が生成され、この水素ガスの火炎によって、空気又は水蒸気が加熱され、過熱水蒸気Vが生成される。
【0048】
火炎領域R2において生成された過熱水蒸気Vは、送風部9のファン9a,9bによって、過熱蒸気領域R1に送られる。そして、過熱蒸気領域R1において、ファン9a,9bから送られてきた過熱水蒸気Vは、気流ガイド9c,9dによって向きが変えられ、搬送部5に向かって流れる。
【0049】
このように、水素オーブン8においては、火炎領域R2の水素バーナー2の水素ガスの火炎の加熱によって生成された過熱水蒸気Vの一部は、送風部9によって、火炎領域R2から過熱蒸気領域R1に送られ、過熱蒸気領域R1において、搬送部5に達する。つまり、水素オーブン8においては、送風部9によって、火炎領域R2から過熱蒸気領域R1の搬送部5に向かう過熱水蒸気Vの流れが形成される。また、この過熱水蒸気Vの流れは、搬送部5の上側と下側とに形成される。
【0050】
このようにして過熱蒸気領域R1の搬送部5及びその近傍に達した過熱水蒸気Vによって、過熱蒸気領域R1において、搬送部5に搬送されている食材Mが加熱調理される。つまり、搬入口21から加熱室3に搬入された食材Mは、先ず、過熱蒸気領域R1において、過熱水蒸気Vによって加熱調理される。
【0051】
次いで、過熱水蒸気Vによって調理された食材Mは、搬送部5によって、過熱蒸気領域R1から火炎領域R2に搬送される。火炎領域R2において、食材Mは、水素バーナー2の上側の噴出体10と下側の噴出体10との間を移動し、水素オーブン1の場合と同様に加熱調理される。つまり、噴出体10から出た水素ガスの火炎によって生成される過熱水蒸気によって、食材Mが加熱調理される。また、食材Mは、水素ガスの火炎によっても加熱調理される。これにより、食材Mの表面に焼き目を付けることができる。
【0052】
加熱室3内の水蒸気等のガスは、水素オーブン1の場合と同様に、排気部6によって、搬入口21及び搬出口22から外部に搬出される。水素オーブン8による加熱調理の際に生成されるガスは、理論的には水蒸気のみであり、二酸化炭素が排出されることはない、または、ほとんど二酸化炭素が排出されない。
【0053】
このように、水素オーブン8は、過熱水蒸気の生成のためにボイラを必要とせず、また、食材Mの表面に焼き目を付けるために水素バーナー2の他の加熱機構を必要としない。また、水素ガスを燃焼させることにより、効率的に過熱水蒸気を生成することができ、効率的な加熱調理を提供することができる。また、過熱蒸気領域R1と火炎領域R2とで、2段階の加熱調理ができ、調理法の幅を広げることができる。
【0054】
上述のように、本発明の第2実施形態に係る水素オーブン8によれば、過熱水蒸気を用いる加熱調理装置を簡易な構成にすることができる。
【0055】
なお、水素オーブン8において、過熱蒸気領域R1及び火炎領域R2は、搬送部5の食材Mの搬送方向に、過熱蒸気領域R1、火炎領域R2の順で並んでいるが、過熱蒸気領域R1及び火炎領域R2は、搬送部5の食材Mの搬送方向に、火炎領域R2、過熱蒸気領域R1の順で並んでいてもよい。また、水素オーブン8は、複数の過熱蒸気領域R1を有していてもよく、また、複数の火炎領域R2を有していてもよい。例えば、水素オーブン8は、2つの過熱蒸気領域R1の間に1つの火炎領域R2を有していてもよい。この場合、送風部9は、例えば、火炎領域R2から両方の過熱蒸気領域R1における搬送部5に向かう過熱水蒸気Vの流れを生成するようになっている。過熱蒸気領域R1及び火炎領域R2の配置、過熱蒸気領域R1及び火炎領域R2夫々の数、過熱蒸気領域R1及び火炎領域R2の組み合わせは、例えば、食材Mの種類や、調理方法等によって、種々の形態に設定される。
【0056】
以上、上記実施形態を通じて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に様々な変更又は改良を加えることができることが当業者には明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0057】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、上述の実施形態は、本発明が利用される利用対象を限定するものではなく、本発明はあらゆるものをその利用対象として含み得る。上記実施形態が備える各構成要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。例えば、本発明は、製造上の公差等の実施において発生する差を含むものである。また、技術的に矛盾しない範囲において、異なる実施形態で示した構成要素同士を部分的に置換し又は組み合わせることができる。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 水素オーブン、2 水素バーナー、3 加熱室、4 吸気部、5 搬送部、6 排気部、7 水素タンク、9 送風部、9a,9b ファン、9c,9d 気流ガイド、10 噴出体、11 管路、11a,11b 端、11c 弁、12 空間、13 開放孔、14 バッファ管路、15 供給管路、16 流速調整体、20 本体カバー、21 搬入口、22 搬出口、 25 排気カバー、25a 排気路、26 排気管路、27 駆動部、30 駆動部、31 管路部、32 供給管路、33 噴出管路、33a 開口、M 食材、R1 過熱蒸気領域、R2 火炎領域、V 過熱水蒸気
図1
図2
図3
図4
図5
図6