(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009468
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】プレスシステム及びプレスシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B21D 43/05 20060101AFI20250110BHJP
B30B 15/30 20060101ALI20250110BHJP
B30B 15/28 20060101ALI20250110BHJP
B30B 1/06 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B21D43/05 W
B30B15/30 108
B30B15/28 N
B30B1/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112492
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(71)【出願人】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五島 紘一
【テーマコード(参考)】
4E089
4E090
【Fターム(参考)】
4E089GA02
4E089GB10
4E089GC01
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA02
4E090CC02
4E090EA01
4E090EB05
4E090EC04
4E090FA02
4E090FA05
4E090GA03
4E090HA01
(57)【要約】
【課題】安全性を確保しつつ生産性を向上できるプレスシステム及びプレスシステムの制御方法。
【解決手段】所定の始動角度で停止している前記クランク軸を回転させ、前記スライドを下方に移動開始させるプレス始動処理と、前記クランク軸が所定の干渉チェック角度に到達した際に、前記第1の搬送装置が前記金型と干渉する金型干渉エリアにいるか否かを判定する干渉チェック処理とを実行可能に構成されており、前記プレス始動処理は、前記第1の搬送装置が前記プレス装置に前記ワークを搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行され、前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記ワークを搬入後に前記金型干渉エリアを離脱するまでにかかる離脱時間と、前記クランク軸が前記始動角度から前記干渉チェック角度に移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも前記離脱時間よりも短い。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸と、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドとを含み、前記スライドに装着された金型によりワークへ加工を行うプレス装置と、
前記プレス装置に前記ワークを搬入する第1の搬送装置と、
前記プレス装置と前記第1の搬送装置とを制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
所定の始動角度で停止している前記クランク軸を回転させ、前記スライドを下方に移動開始させるプレス始動処理と、
前記クランク軸が所定の干渉チェック角度に到達した際に、前記第1の搬送装置が前記金型と干渉する金型干渉エリアにいるか否かを判定する干渉チェック処理と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいると判定した場合には、前記プレス装置を停止させるプレス停止処理と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいないと判定した場合には、前記プレス装置に前記ワークを加工させるプレス処理と
を実行可能に構成されており、
前記プレス始動処理は、前記第1の搬送装置が前記プレス装置に前記ワークを搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行され、
前記干渉チェック角度は、前記金型と前記第1の搬送装置とが干渉するときの前記クランク軸の干渉角度と、急停止時間の間に前記スライドが移動する距離とに基づいて、前記干渉角度よりも前記始動角度側に設定されており、
前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記ワークを搬入後に前記金型干渉エリアを離脱するまでにかかる離脱時間と、前記クランク軸が前記始動角度から前記干渉チェック角度に移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも前記離脱時間よりも短い
プレスシステム。
【請求項2】
前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアを離脱した後に前記クランク軸が前記干渉チェック角度に到達するように設定される
請求項1に記載のプレスシステム。
【請求項3】
前記プレス装置から前記ワークを搬出する第2の搬送装置を備え、
前記制御手段は、所定の待機位置で待機している前記第2の搬送装置を始動させるロボット始動処理を実行可能に構成されており、
前記ロボット始動処理の始動タイミングは、所定の先行始動条件に基づいて、前記クランク軸が所定の進入可能角度に到達するよりも前のタイミングに設定される
請求項1又は2に記載のプレスシステム。
【請求項4】
前記先行始動条件は、前記第2の搬送装置が始動してから前記金型干渉エリアに進入するまでにかかる時間である
請求項3に記載のプレスシステム。
【請求項5】
所定の始動角度で停止しているプレス装置のクランク軸を回転させ、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドを下方に移動開始させるプレス始動工程と、
前記クランク軸が所定の干渉チェック角度に到達した際に、前記プレス装置にワークを搬入する第1の搬送装置が前記スライドに装着された金型と干渉する金型干渉エリアにいるか否かを判定する干渉チェック工程と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいると判定した場合には、前記プレス装置を停止させるプレス停止工程と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいないと判定した場合には、前記プレス装置に前記金型により前記ワークを加工させるプレス工程と
を備え、
前記プレス始動工程は、前記第1の搬送装置が前記プレス装置に前記ワークを搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行され、
前記干渉チェック角度は、前記金型と前記第1の搬送装置とが干渉するときの前記クランク軸の干渉角度と、急停止時間の間に前記スライドが移動する距離とに基づいて、前記干渉角度よりも前記始動角度側に設定されており、
前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記ワークを搬入後に前記金型干渉エリアを離脱するまでにかかる離脱時間と、前記クランク軸が前記始動角度から前記干渉チェック角度に移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも前記離脱時間よりも短い
プレスシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスシステム及びプレスシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定のプレスモーションに基づき、スライドを昇降駆動すると共に、スライドが送り可能高さと待機高さとの間を移動している間に、ワークの搬送も行うプレスシステムがある(特許文献1等)。送り可能高さは、ワークを上金型と干渉せず搬送可能なスライドの位置であり、搬送されるワークに上金型が干渉しないスライドの位置の下限である。待機高さは、送り可能高さよりも高く、プレスモーションのスライド最高位置である。
【0003】
特許文献1のプレスシステムは、プレス装置に対してコイル材を搬送するレベラーフィーダと、プレス加工により成形されたワークを搬送する搬送コンベアとを備えている。また、特許文献1のプレスシステムは、ワークの搬送動作と上金型の昇降動作との干渉が発生しないように、待機高さから下降を開始し監視位置に到達したスライドが、ワークの送り完了が検出されていない場合に、監視位置において減速を開始して送り可能高さよりも高い停止位置で停止できるように監視位置が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プレスシステムの生産性を向上するためには、ワークの搬送が完了する前にスライドを下降開始させることが好ましいが、プレスシステムの搬送装置が特許文献1のプレスシステムで採用されているレベラーフィーダや搬送コンベアのように瞬時にワークの搬送が可能な搬送装置ではない場合がある。例えば、トランスファープレスシステムで、多台のプレス装置による段階的な工程を経て製品となるようにスタンピングするとき、スライドストロークの長い工程と短い工程との差から生じる加工時間の差に起因して、送り可能高さが異なる場合がある。
【0006】
この場合、スライドストロークの長い工程の送り可能高さ以外で搬送装置を作動させると、搬送装置が搬送動作を完了し、上金型と干渉しない位置に退避する前にスライドが監視位置に達してしまい、実際には搬送装置と上金型が干渉しないプレス装置と搬送装置の関係であっても、トランスファープレスシステムとしてスライドが減速又は停止してしまうという問題がある。
【0007】
この問題を解決するためには、監視位置を送り可能高さから遠ざけて待機高さに近い位置に設定する方法が考え得るが、スライドストロークの長い工程の送り可能高さ以外で搬送装置を作動させる限りは、スライドストロークの長い工程と短い工程との差から生じる加工時間の差に起因する送り可能高さの異なりを解消するには至らず、緊急時にスライドが監視位置で減速を開始しても間に合わずに搬送装置と上金型とが衝突する可能性がある。また、緊急停止できたとしても、その位置からの再加速には時間を要し、結果的に緊急停止せずに加工するタクトタイムと比較して、時間を多く消費してしまう可能性がある。
【0008】
本発明の一態様は、安全性を確保しつつ生産性を向上できるプレスシステム及びプレスシステムの制御方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るプレスシステムは、クランク軸と、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドとを含み、前記スライドに装着された金型によりワークへ加工を行うプレス装置と、前記プレス装置に前記ワークを搬入する第1の搬送装置と、前記プレス装置と前記第1の搬送装置とを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、所定の始動角度で停止している前記クランク軸を回転させ、前記スライドを下方に移動開始させるプレス始動処理と、前記クランク軸が所定の干渉チェック角度に到達した際に、前記第1の搬送装置が前記金型と干渉する金型干渉エリアにいるか否かを判定する干渉チェック処理と、前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいると判定した場合には、前記プレス装置を停止させるプレス停止処理と、前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいないと判定した場合には、前記プレス装置に前記ワークを加工させるプレス処理とを実行可能に構成されており、前記プレス始動処理は、前記第1の搬送装置が前記プレス装置に前記ワークを搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行され、前記干渉チェック角度は、前記金型と前記第1の搬送装置とが干渉するときの前記クランク軸の干渉角度と、急停止時間の間に前記スライドが移動する距離とに基づいて、前記干渉角度よりも前記始動角度側に設定されており、前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記ワークを搬入後に前記金型干渉エリアを離脱するまでにかかる離脱時間と、前記クランク軸が前記始動角度から前記干渉チェック角度に移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも前記離脱時間よりも短い。
【0010】
本発明の一態様に係るプレスシステムの制御方法は、所定の始動角度で停止しているプレス装置のクランク軸を回転させ、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドを下方に移動開始させるプレス始動工程と、前記クランク軸が所定の干渉チェック角度に到達した際に、前記プレス装置にワークを搬入する第1の搬送装置が前記スライドに装着された金型と干渉する金型干渉エリアにいるか否かを判定する干渉チェック工程と、前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいると判定した場合には、前記プレス装置を停止させるプレス停止工程と、前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいないと判定した場合には、前記プレス装置に前記金型により前記ワークを加工させるプレス工程とを備え、前記プレス始動工程は、前記第1の搬送装置が前記プレス装置に前記ワークを搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行され、前記干渉チェック角度は、前記金型と前記第1の搬送装置とが干渉するときの前記クランク軸の干渉角度と、急停止時間の間に前記スライドが移動する距離とに基づいて、前記干渉角度よりも前記始動角度側に設定されており、前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記ワークを搬入後に前記金型干渉エリアを離脱するまでにかかる離脱時間と、前記クランク軸が前記始動角度から前記干渉チェック角度に移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも前記離脱時間よりも短い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、搬送装置がワークを搬入後に金型干渉エリアを離脱するまでにかかる離脱時間と、クランク軸が始動角度から干渉チェック角度に移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいてクランク軸を始動させるタイミングを搬送装置の離脱開始から遅らせることで、安全性を確保しつつ生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るプレスシステムの構成を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のプレス装置の構成を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のロボットの構成を示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のプレスシステムのブロック図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の各装置間で送受信される信号を説明する図である。
【
図6】
図6は、本実施形態のクランク軸の角度と各領域や加工における所定のタイミングとの関係を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の領域を説明する図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の干渉チェック処理を示す模式図である。
【
図9】
図9は、本実施形態のロボット始動処理を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の遅延時間設定画面の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の先行始動条件設定画面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本実施形態のプレスシステムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、本実施形態の最適な遅延時間の一例を示す模式図である。
【
図14】
図14は、本実施形態の遅延時間が短い場合の一例を示す模式図である。
【
図15】
図15は、本実施形態の遅延時間がない場合の一例を示す模式図である。
【
図16】
図16は、本実施形態の遅延時間が長い場合の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明において、ワーク120が搬送される方向を「搬送方向」又は「左右方向」という。ここで、搬送方向の上流側が左、搬送方向の下流側が右と定義する。また、水平面内で搬送方向(左右方向)に直交する方向を前後方向とし、前後方向における前側がプレスシステム1の正面、前後方向における後側がプレスシステム1の背面とする。さらに、水平面に直交する方向、すなわち、搬送方向(左右方向)及び前後方向に直交する方向を上下方向とする。プレスシステム1のプレス装置300において加工が行われているときに搬送されているワーク120の高さ(例えば、プレスシステム1が設置されている床面を基準とした高さ)を「加工高さ」という。
【0014】
[実施形態]
<プレスシステム>
図1は、本発明の実施形態に係るプレスシステム1の構成を示す概略斜視図である。
図1にはワークの搬送方向及び上流、下流、前後方向、上下方向も示す。本実施形態のプレスシステム1は、ラインコントローラ10、リフタ100、水平フィーダ200、金型プレス装置(以下、「プレス装置」という)300、ワーク120の搬送装置であるロボット400を備えている。リフタ100、水平フィーダ200、プレス装置300、ロボット400は、プレス装置300の加工動作に連動して動作する。
【0015】
ラインコントローラ10は、プレスシステム1全体を制御する制御手段である。詳細は後述する。プレス装置300は、ワーク120の搬送方向の上流から下流に複数台設けられている。プレス装置300について、搬送方向の上流から下流に向かい、プレス装置P1、プレス装置P2、・・・、プレス装置Pn、・・・と表記する。ここで、nは1以上の整数である(n≧1)。
【0016】
ロボット400は、ワーク120の搬送方向の上流から下流に複数台設けられている。ロボット400について、搬送方向の上流から下流に向かい、ロボットR1、ロボットR2、・・・、ロボットRm、・・・と表記する。ここで、mは1以上の整数である(m≧1)。なお、
図1ではプレス装置P1~P5、ロボットR1~R5を示している。ロボット400は、プレスシステム1を正面から見たときに、プレス装置300とプレス装置300との間に配置されている。なお、ロボット400は、プレスシステム1を上面から見たときに、プレス装置300とプレス装置300との間に配置されていなくてもよい。例えば、
図1のように、搬送方向(左右方向)においてはプレス装置300とプレス装置300との間であって、上面から見たときにプレス装置300の前側に配置されていてもよい。以下の説明において、ロボット400がプレス装置300とプレス装置300との間に配置される、と表現するときは、
図1のように配置されていることを指すものとする。
【0017】
ここで、ロボット400がプレス装置300とプレス装置300との間に配置されている場合、詳細には次のような配置となる。ロボットR1は、プレス装置P1とプレス装置P2との間に配置される。このとき、ロボットR1から見ると、プレス装置P1は搬送方向の上流側のプレス装置であり、プレス装置P2は下流側のプレス装置である。なお、プレス装置P1から見ればロボットR1は搬送方向の下流側に配置されており、プレス装置P2から見ればロボットR1は上流側に配置されている。同様に、ロボットR2は、プレス装置P2とプレス装置P3との間に配置される。このとき、ロボットR2から見ると、プレス装置P2は搬送方向の上流側のプレス装置であり、プレス装置P3は下流側のプレス装置である。なお、プレス装置P2から見ればロボットR2は搬送方向の下流側に配置されており、プレス装置P3から見ればロボットR2は上流側に配置されている。
【0018】
同様に、所定搬送装置であるロボットRmは、前段プレス装置であるプレス装置Pnと後段プレス装置であるプレス装置Pn+1との間に配置される。このとき、ロボットRmから見ると、プレス装置Pnは搬送方向の上流側のプレス装置であり、プレス装置Pn+1は下流側のプレス装置である。なお、プレス装置Pnから見ればロボットRmは搬送方向の下流側に配置されており、プレス装置Pn+1から見ればロボットRmは上流側に配置されている。また、前段搬送装置であるロボットRm-1は、ロボットRmの上流側のロボットであり、後段搬送装置であるロボットRm+1は、ロボットRmの下流側のロボットである。
【0019】
<リフタ及び水平フィーダ>
リフタ100は、ワーク120を保持し、保持したワーク120を加工高さまで上昇させて水平フィーダ200によりワーク120が把持されるのを待機する。水平フィーダ200は、アーム240、アーム240の搬送方向の上流側に設けられたハンド210、アーム240の下流側に設けられたハンド220、テーブル230を有している。アーム240は搬送方向及び上下方向に移動することが可能である。ハンド210、220は、例えばエアによりワーク120を吸着して把持することができ、吸着を解除してワーク120を離すことができる。テーブル230はワーク120をハンド210からハンド220に渡すための一時的なワーク120の載置場所である。
【0020】
水平フィーダ200は、リフタ100において加工高さで待機しているワーク120を吸着により把持し、ハンド210を水平移動させて吸着を解除し、ワーク120をテーブル230に置く。ハンド220はテーブル230に載置されたワーク120を吸着により把持し、プレス装置300、具体的にはプレス装置P1にワーク120を搬送して(移動させて)吸着を解除し、プレス装置P1の加工位置(後述する下型303bの所定の位置)に置く。なお、
図1のプレスシステム1では、リフタ100とプレス装置P1との間に水平フィーダ200を配置したが、これに限定されない。例えば、リフタ100とプレス装置P1との間に、ロボット400を配置し、ロボット400によりリフタ100とプレス装置P1との間でワーク120を搬送させてもよい。
【0021】
<プレス装置>
図1のプレス装置300について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態のプレス装置300の構成を示す概略斜視図であり、例えば、一体型ストレートサイドフレーム型又はCフレーム型のプレス装置300の概略図である。
図3には、ワーク120の搬送方向や搬送方向における上流(左)、下流(右)、上下方向、及び前後方向(正面、背面)も示している。プレス装置300は、筐体302の内外に、駆動モータ304(駆動手段)、伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310、スライド312、ボルスタ322を有して構成される。また、プレス装置300は、コントローラ314、記憶部315、表示部316、入力部318、を有している。さらに、プレス装置300は、センサ324、ロータリーエンコーダ325、ギブ326を有している。なお、ギブはガイドギブまたはスライドガイドとも称す。
【0022】
駆動モータ304は、例えばサーボ制御されるサーボモータであり、回転量及び回転方向を制御しつつ伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310を介して後述する金型303を上下移動させるものである。伝達機構306は、例えばギヤやベルト等の伝達部材を有して構成され、駆動モータ304のモータ軸の回転をクランク軸308へと伝達するものである。駆動モータ304への制御信号はコントローラ314から送られるようになっている。
【0023】
クランク軸308及びコンロッド310は、伝達機構306により伝達されたモータ軸の回転移動を往復移動(本実施形態では、上下移動)に変換するためのものである。モータ軸の回転によりクランク軸308が回転し、クランク軸308に一端近傍が連結されたコンロッド310にその回転が伝達されてコンロッド310が上下移動(昇降移動)するようになっている。
【0024】
また、クランク軸308には、クランク軸308の回転に連動して、オン信号又はオフ信号を出力するロータリーカムスイッチ(不図示)が設けられている。ロータリーカムスイッチは、例えばクランク軸308の回転が所定の角度となったとき、言い換えれば加工動作中の所定のタイミングとなったときに、オン信号又はオフ信号を出力する。ロータリーカムスイッチがオン信号(又はオフ信号)を出力するタイミングを、以下、「出力タイミング」という。コントローラ314は、ロータリーカムスイッチから出力される信号に基づいて、プレスシステム1の他の装置と連動し、加工動作を行っている。
【0025】
コンロッド310の他端近傍にはスライド312が連結されている。コンロッド310の上下移動に伴いスライド312がその両サイドのギブ326に沿って上下移動するようになっている。プレス装置300においては、スライド312と対向するようにボルスタ322が配置されている。スライド312のボルスタ322と対向する側の面(本実施形態では下面)に金型303の一部としての上型303aが装着される。ボルスタ322のスライド312と対向する側の面(本実施形態では上面)に金型303の一部として、上型303aと対になる下型303bが装着される。
【0026】
上型303aと下型303bとの間に加工の対象物としてのワーク120を配置し、上型303aと下型303bとで押圧することにより、プレス装置300によるワーク120に対するプレス加工(以下、単に「加工」ともいう)が行われる。ワーク120は、例えば
図2中左(上流)側から右(下流)側に搬送される。
【0027】
詳しくは、コントローラ314により制御されて駆動モータ304が回転する。駆動モータ304の回転が伝達機構306、クランク軸308を介してコンロッド310へと伝達され、スライド312が上下移動する。スライド312の下方移動によって上型303aと下型303bとが押圧され、ワーク120のプレス加工が行われる。すなわち、プレス装置300において、駆動モータ304、伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310、スライド312がプレス部を構成する。伝達機構306には、クランク軸308の回転数を検知するための回転数検知手段であるロータリーエンコーダ325が設けられている。コントローラ314は、ロータリーエンコーダ325によりクランク軸308の回転数を検知することで、スライド312の位置を検知することが可能である。また、コントローラ314は、ロータリーエンコーダ325の検知結果に基づいてクランク軸308の角度を検知することも可能であり、角度検知手段としても機能する。なお、角度検知手段には上述したロータリーカムスイッチを含めてもよい。
【0028】
加工の際の荷重を検知する荷重検知手段であるセンサ324は、プレス装置300がワーク120にプレス加工を行う際に、コンロッド310に働く荷重を検知するためのセンサで、例えばロードセルである。センサ324は、例えば、筐体302に設置された歪ゲージであってもよい。センサ324は、コンロッド310のいずれかの位置(例えば、中央近傍位置)に設置されていてもよい。さらに、センサ324は複数設置されていてもよく、例えば、筐体302の左右の歪をそれぞれ検知し、検知した結果を加算してトータルの荷重としてもよい。なお、
図2において、表示部316が配置されている側がプレス装置300の前側である。
【0029】
コントローラ314は、記憶部315に記憶されている各種プログラムに従ってプレス装置300を制御する。記憶部315には、使用される金型303ごとに対応するプログラム(モーションプログラム)が記憶されている。表示部316は、プレス装置300の状態を示すデータを表示する。入力部318は、プレス装置300を操作するために必要なデータを入力するために用いられる。入力部318は、加工に必要なパラメータをユーザーが入力する際に用いられる。コントローラ314は、ラインコントローラ10による制御に従いつつ、プレス装置300とプレスシステム1の他の装置とが互いに連動して加工を行うように制御している。
【0030】
<ロボット>
図3は、本実施形態のロボット400の構成を示す外観斜視図である。プレスシステム1が備えるロボット400は、例えば多関節型のロボットである。ロボット400は、支持台410、回転部420、第1アーム430、第2アーム440、第3アーム450、ハンド460、制御部470、記憶部480を有している。
【0031】
回転部420は、矢印Rt1方向に回転することが可能である。第1アーム430は、一端が回転部420に接続され、他端が第2アーム440に接続されている。第1アーム430は、矢印Rt2方向に回転することが可能である。第2アーム440は、一端が第1アーム430に接続され、他端が第3アーム450に接続されている。第2アーム440は、矢印Rt3方向に回転することが可能であり、また、矢印Rt4方向に回転することも可能である。
【0032】
第3アーム450は、一端が第2アーム440に接続され、他端がハンド460に接続されている。第3アーム450は、矢印Rt5方向に回転することが可能であり、また、矢印Rt6方向に回転することも可能である。ハンド460は、一端が第3アーム450に接続されており、他端にはワーク120を吸着する吸着部462を有している。ハンド460は、例えばエアの気圧を制御することにより、ワーク120を吸着させてワーク120を把持すること、ワーク120の吸着を解除しワーク120を離すことが可能である。なお、ワーク120を吸着しているときを吸着ON、吸着を解除しているときを吸着OFFとも表現する。
【0033】
以下、プレス装置Pnにおいて加工が終了したワーク120を、ロボットRmがプレス装置Pnから搬送することを「搬出する」という。また、プレス装置Pn+1でワーク120を加工するために、ロボットRmがプレス装置Pn+1にワーク120を搬送することを「搬入する」という。さらに、ロボットRmが、所定の位置から動作を開始してプレス装置Pnからワーク120を搬出し、プレス装置Pn+1にワーク120を搬入してから所定の位置に戻るまでの一連の動きを「搬送パターン」という。搬送パターンは、ワーク120の形状や金型303の形状、加工の種類等に応じて決定される。
【0034】
制御部470は、ロボット400が有するモータ(不図示)、シリンダ(不図示)、エア(不図示)等を制御する。これにより、制御部470は、回転部420の矢印Rt1方向の回転、第1アーム430の矢印Rt2方向の回転、第2アーム440の矢印Rt3方向の回転、矢印Rt4方向の回転、第3アーム450の矢印Rt5方向の回転、矢印Rt6方向の回転を制御する。制御部470がこのような制御を行うことで、ハンド460は、3次元空間内を自在に移動することができる。また、制御部470は、これらの回転速度も制御することで、ハンド460が3次元空間内を早く移動したり遅く移動したり等、所定の移動速度で移動することもできる。さらに、制御部470は、ハンド460によるワーク120の把持、把持の解除を制御する。
【0035】
なお、制御部470は、基準となる3次元座標系(例えば、x、y、zの数値)でハンド460の位置を制御している。3次元座標は、直交座標、極座標、円筒座標等、3次元空間内の所定の位置を指定し制御できるものであればよく、制御部470は、公知技術を用いてロボット400の姿勢制御及び速度制御等を行っているものとする。
【0036】
記憶部480には、3次元空間内の所定の空間形状、又は、2次元の所定の面形状の領域(以下、単に「領域」という)が定義され、定義された領域に関する情報が記憶されている。定義された領域は、ロボット400と他の構造物とが干渉しないようにロボット400を制御するために用いられる。例えば、定義された領域は、ロボット400が把持する物体、具体的にはワーク120が、プレス装置300又は別のロボット400若しくはプレス装置300による加工品又は他のロボット400が把持した物体、と干渉しないように設けられた領域である。なお、「干渉」とは、衝突、接触だけでなく、実際に接触はしないものの、互いの動作に影響を与える位置関係になることも含むものとする。一般に、ロボット400の記憶部480には、複数の領域、例えばj個(j≧1)の領域を設定することが可能となっている。本実施形態では、10個(j≦10)の領域が設定され、記憶部480に記憶されている。ここで、複数の領域を、領域C1、領域C2、・・・、領域Cj、・・・、領域C10と表現し、総称する場合は単に領域Cjと表現する。領域Cjの詳細な設定については後述する。
【0037】
なお、ハンド460によるワーク120の把持は、エアによる吸着で行うが、これに限定されない。例えば、ハンド460が爪部を有し、爪部を開状態又は閉状態にしてワーク120の把持及び把持の解除を行ってもよい。この場合、ワーク120を把持したこと、把持を解除したこと、等は、爪部に設けられたセンサにより検知してもよい。センサは、例えば、光学式、圧電式等種々のセンサが用いられてよい。
【0038】
また、ロボット400は、起動前及び正常に動作が完了した後は、所定の姿勢で所定の位置に戻っているものとし、所定の姿勢及び所定の位置をホームポジションともいう。制御部470は、ロボット400がホームポジションに位置するときの3次元座標を原点(又は定点)とすることができる。
【0039】
<ブロック図>
図4は、本実施形態のプレスシステム1のブロック図である。ラインコントローラ10は、プレスシステム1全体を制御し、演算装置20、入力装置30、表示装置40、記憶装置50、インターフェース(以下、I/Fとする)ボード60を有している。
【0040】
演算装置20は、I/Fボード60を介してプレス装置300及びロボット400から受信した後述する各種信号と、領域Cjと、に基づいて、プレス装置300によるワーク120の加工、及び、ロボット400によるワーク120の搬送を制御する。各種信号は、プレス装置300がワーク120に加工を行っているときの各タイミングで出力されるタイミング信号、ロボット400がワーク120を搬送しているときの各タイミングで出力されるタイミング信号を含む。演算装置20は、内部で生成した各種信号をI/Fボード60を介してプレス装置300、ロボット400に送信する。なお、演算装置20により行われる各種演算、各種制御、各種判断等について、以下の説明ではラインコントローラ10が行うように表現する。ラインコントローラ10とプレス装置300、ロボット400は、有線若しくは無線の通信手段によって、又は、ハードワイヤによって接続され、各種信号の送受信が可能となっている。
【0041】
このような構成を備える演算装置20は、所定の始動角度SAで停止しているクランク軸308を回転させ、スライド312を下方に移動開始させるプレス始動処理を実行可能に構成されている。プレス始動処理は、ロボットRm-1がプレス装置Pnにワーク120を搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行される。
【0042】
本実施形態において、「ワークを搬入した後」は、ロボットRm-1がプレス装置Pnの上型303aと下型303bとの間にワーク120を配置し、ハンド460の吸着をOFFにした後である。具体的には、演算装置20は、ロボットRm-1のハンド460が吸着をOFFにした後、ロボットRm-1の制御部470が吸着信号をOFFにしたことを確認すると、遅延時間のカウントを開始する。
【0043】
なお、「ワークを搬入した後」は、上述したタイミングに限定されない。例えば、「ワークを搬入した後」は、ワーク120を把持したハンド460が金型干渉エリアK内に進入した後でもよいし、プレス装置Pnの上型303aと下型303bとの間にワーク120を配置した後でもよい。具体的には、ワーク120を把持したハンド460が金型干渉エリアK内に進入し、ハンド460が金型干渉エリアKから離脱するまでの間であれば、種々の任意のタイミングを採用可能である。
【0044】
本実施形態において、「金型干渉エリアに侵入」とは、ハンド460が金型干渉エリアKに向かって後述する領域C2又は後述する領域C3を通過することを意味する。また、「金型干渉エリアから離脱」とは、ハンド460が金型干渉エリアKから領域C2又は領域C3を通過することを意味する。
【0045】
遅延時間は、ロボットRm-1がワーク120を搬入後にプレス装置Pnの金型干渉エリアKを離脱するまでにかかる離脱時間と、クランク軸308が始動角度SAから干渉チェック角度ICAに移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも離脱時間よりも短い。
【0046】
本実施形態において、「離脱時間」とは、ハンド460が吸着を解除してから金型干渉エリアKから領域C2又は領域C3を通過するまでにかかる時間のことを意味する。
【0047】
図13は、本実施形態の好適な遅延時間の一例を示す模式図である。
遅延時間は、ロボットRm-1(ハンド460)がプレス装置Pnの金型干渉エリアKを離脱した後にクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達するように設定されることが好ましい。また、遅延時間は、
図13に示すように、ロボットRm-1がプレス装置Pnの金型干渉エリアKを離脱するのと同時にクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達するように設定されることがより好ましい。
【0048】
図13及び後述する
図14~16は、縦軸が速度、横軸が時間のグラフであり、グラフの上段がロボットRm-1の移動速度の速度変化を示しており、グラフの下段がプレス装置Pnのクランク軸308の回転速度の速度変化を示している。また、時刻Tr1は、ロボットRm-1がプレス装置Pnの金型干渉エリアKから離脱を開始する時刻であり、時刻Tr2は、ロボットRm-1がプレス装置Pnの金型干渉エリアKから離脱する時刻である。
【0049】
さらに、時刻Tp1は、始動角度SAで待機しているプレス装置Pnのクランク軸308が始動を開始する時刻であり、時刻Tp2は、プレス装置Pnのクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達する時刻であり、時刻Tp3は、プレス装置Pnのクランク軸308が干渉角度IAに到達する時刻である。
【0050】
なお、
図13のグラフの下段の時刻Tp2から時刻Tp3にかけての破線の速度変化は、プレス装置Pnが停止する場合の速度変化を示すものである。
【0051】
遅延時間は、上述したように、ロボットRm-1がプレス装置Pnの金型干渉エリアKを離脱するのと同時にクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達するように設定されることがより好ましく、本実施形態において、最適な遅延時間は、離脱時間とチェック角度移動時間との時間差、すなわち、離脱時間からチェック角度移動時間を差し引くことで算出される。
【0052】
なお、遅延時間は、離脱時間とチェック角度移動時間とに基づいて設定されれば、離脱時間とチェック角度移動時間と時間差に限定されない。例えば、ロボットRm-1が干渉チェック角度ICAへ到達する時間を100%として、そのうちクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達する時間の割合を計算してもよい。すなわち、遅延時間は、ロボットRm-1とプレス装置Pnのクランク軸308が共に干渉チェック角度ICAを最高速で通過でき、プレス装置Pnのクランク軸308が最も遅く始動する時間に設定されることが最も好ましい。
【0053】
図14は、本実施形態の遅延時間が短い場合の一例を示す模式図である。
例えば、
図14に示すように、遅延時間が
図13に示す例よりも短い場合、ロボットRm-1がプレス装置Pnの金型干渉エリアKから離脱する時刻Tr2よりもプレス装置Pnのクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達する時刻Tp2が先であり、ロボットRm-1がプレス装置Pnの金型干渉エリアKを離脱する前にクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達するため、後述するように、演算装置20は、プレス装置Pnを一度停止させた後、プレス装置Pnを再始動させることになる。この場合、
図14に示す斜線部分がタクトタイムの遅延になり、生産性が低下してしまう。
【0054】
図15は、本実施形態の遅延時間がない場合の一例を示す模式図である。
また、
図15に示すように、遅延時間がなく、ロボットRm-1が始動するのと同時にプレス装置Pnのクランク軸308を始動させる場合も同様に、演算装置20は、プレス装置Pnのクランク軸308が干渉チェック角度ICAを通過した後、プレス装置Pnを一度停止させ、時刻Tr2以降にプレス装置Pnを再始動させることになる。そのため、この場合も、
図15に示す斜線部分がタクトタイムの遅延になり、生産性が低下してしまう。
【0055】
図16は、本実施形態の遅延時間が長い場合の一例を示す模式図である。
一方で、
図16に示すように、遅延時間が
図13に示す例よりも長い場合、ロボットRm-1がプレス装置Pnの金型干渉エリアKから離脱する時刻Tr2よりもプレス装置Pnのクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達する時刻Tp2が後であるため、演算装置20がプレス装置Pnを一度停止させた後、プレス装置Pnを再始動させることはない。
【0056】
しかしながら、クランク軸308を始動させてから最高速度に到達するまでには時間がかかり、その前にロボットRm-1がプレス装置Pnの金型干渉エリアKから離脱するため、最適な始動時間Tp1′と比較して無駄があり、
図16に示す斜線部分、すなわち、時間tがタクトタイムの遅延として発生し、生産性が低下してしまう。
【0057】
また、遅延時間をロボットRm-1がプレス装置Pnの金型干渉エリアKを離脱するのと同時にクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達するように設定することで、干渉角度IAよりも手前からプレス装置Pnのクランク軸308の加速が開始され、クランク軸308の干渉領域(後述するロボット干渉エリア外領域以外の領域)にプレス装置Pnのクランク軸308、ひいては、金型303がトップスピードで進入することが可能となる。これにより、干渉角度IAのぎりぎりでプレス装置Pnのクランク軸308(金型303)を待機させて、そこから再始動させた場合と比べて、プレス装置Pnのクランク軸308(金型303)が干渉領域を移動する時間を加速時間の1/2相当分を短縮することができる。よって、後段のロボットRmがワーク120を搬出するために進入するタイミングを早められるので、プレスシステム1全体のサイクルタイムを縮めることが可能となる。
【0058】
このような理由から遅延時間はロボットRm-1がプレス装置Pnの金型干渉エリアKを離脱するのと同時にクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達するように設定されることが好ましい。
【0059】
図8は、本実施形態の干渉チェック処理を示す模式図である。
クランク軸308が所定の干渉チェック角度ICAに到達した際に、第1の搬送装置(本実施形態において、ロボットRm-1)が金型303と干渉する金型干渉エリアKにいるか否かを判定する干渉チェック処理を実行可能に構成されている。干渉チェック角度ICAは、
図8に示すように、金型303とロボットRm-1とが干渉するときのクランク軸308の干渉角度IAと、急停止時間の間にスライド312が移動する距離とに基づいて、干渉角度IAよりも始動角度SA側に設定されている。
【0060】
干渉角度IAは、ロボットRm-1のハンド460に金型303の上型303aが干渉しないスライド312の位置の下限と対応するクランク軸308の角度である。
【0061】
干渉チェック角度ICAは、具体的には、干渉角度IAと、急停止時間の間にスライド312が移動する距離と対応するクランク軸308の角変位から設定される。本実施形態において、「急停止時間」とは、演算装置20がプレス装置Rnに後述する停止信号を送信してからプレス装置Rnが停止を開始し、クランク軸308、ひいては、スライド312が移動を停止するまでにかかる時間を意味する。
【0062】
急停止時間の間にスライド312が移動する距離は、
図13に示すように、時刻Tp2、時刻Tp3及び時刻Tp2におけるクランク軸308の回転速度の3点を結んで成る三角形の面積から求められる停止距離(減速開始から停止までにかかる時間の間に移動する距離)と、演算装置20が停止信号を送信してから原則を開始するまでの処理遅れ時間の間に移動する距離とに基づいて算出される。
【0063】
例えば、プレス装置300の回転数が60SPM、急停止時間が22/100秒(減速開始から停止までにかかる時間が20/100秒、処理遅れ時間が2/100秒とする)であり、干渉角度IAが90度である場合、急停止時間の間にスライド312が移動する距離と対応するクランク軸308の角変位が43.2度となり、干渉チェック角度ICAは、干渉角度IAよりもクランク軸308の角変位である43.2度分だけ始動角度SA側の46.8度に設定される。
【0064】
なお、上述した回転数、急停止時間、及び干渉角度IAは、一例を示すものに過ぎず、プレス装置300の仕様で種々の値に変化し得る。また、干渉チェック角度ICAは、クランク軸308の角変位に加えて更に動作誤差を考慮した安全マージンを数度足した値に設定されてもよい。
【0065】
また、演算装置20は、干渉チェック処理においてロボットRm-1が金型干渉エリアKにいると判定した場合には、プレス装置300(本実施形態において、プレス装置Pn)を停止させるプレス停止処理を実行可能に構成されている。具体的には、演算装置20は、プレス装置Pnのコントローラ314に後述するその場停止信号を送信し、プレス装置Pnの動作を停止させる。
【0066】
なお、演算装置20は、その場停止信号をプレス装置Pnのコントローラ314に送信する代わりに、起動信号をOFFにすることでプレス装置Pnを減速停止させ、干渉状態が解消された後に再度起動信号をONにすることでプレス装置Pnの動作を再開させてもよい。
【0067】
さらに、演算装置20は、干渉チェック処理においてロボットRm-1が金型干渉エリアKにいないと判定した場合には、プレス装置Pnにワーク120を加工させるプレス処理を実行可能に構成されている。具体的には、演算装置20は、プレス装置Pnのコントローラ314にその場停止信号を送信せずにプレス装置Pnの動作を継続させる。
【0068】
図9は、本実施形態のロボット始動処理を示す模式図である。
演算装置20は、所定の待機位置で待機しているロボットRmを始動させるロボット始動処理を実行可能に構成されており、ロボット始動処理の始動タイミングは、所定の先行始動条件に基づいて、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達するよりも前のタイミングに設定される。
【0069】
本実施形態において、所定の待機位置は、金型干渉エリアKの外側であり、具体的には、領域C2又は領域C3の近傍であるが、これに限定されない。所定の待機位置は、例えば、ロボットRmのホームポジションであってもよい。
【0070】
また、本実施形態において、進入可能角度AAは、クランク軸308の後述するロボット干渉エリア外領域の後述する加工終了側の下限の角度(例えば、300度)である。
【0071】
ロボット始動処理の始動タイミングは、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達した後にロボットRm(ハンド460)が金型干渉エリアKに進入するように設定されることが好ましい。また、ロボット始動処理の始動タイミングは、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達するのと同時にロボットRmが金型干渉エリアKに進入するように設定されることがより好ましい。
【0072】
先行始動条件は、ロボットRmが始動してから金型干渉エリアKに進入するまでにかかる時間(本実施形態において、進角時間)である。例えば、所定の待機位置で待機している、即ち停止状態にあるロボットRmが始動し、金型干渉エリアKに進入するまでに20ミリ秒かかる場合、先行始動条件は、20ミリ秒である。よって、演算装置20は、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達する20ミリ秒前にロボットRmを始動させる。
【0073】
入力装置30は、プレス装置300によるワーク120の加工、及び、ロボット400によるワーク120の搬送を制御する際に必要な各種情報の入力に用いられる。表示装置40は、プレスシステム1の状態に関する情報、プレスシステム1の各種設定の入力を促す情報、その他種々の情報を表示する。
【0074】
図10は、本実施形態の遅延時間設定画面の一例を示す図である。
また、表示装置40は、
図10に示すように、遅延時間設定画面42を表示可能に構成されている。遅延時間設定画面42は、プレス装置一覧表示領域42aと、先行起動ON/OFF設定領域42bと、遅延時間設定領域42cとを備える。プレス装置一覧表示領域42aは、プレスシステム1のプレス装置300の一覧が表示される。
【0075】
先行起動ON/OFF設定領域42bは、先行起動を行うか否かを設定可能に構成されている。先行起動を行う場合、ラインコントローラ10は、ロボットRm-1がプレス装置Pnにワーク120を搬入した後、所定の遅延時間の経過後にプレス装置Pnを始動させる。一方で、先行起動を行わない場合、ラインコントローラ10は、ロボットRm-1がプレス装置Pnにワーク120を搬入し、金型干渉エリアKから離脱した後にプレス装置Pnを始動させる。言い換えれば、先行起動ON/OFF設定領域42bは、プレス始動処理を行うか否かを設定可能な領域である。
【0076】
遅延時間設定領域42cは、プレス始動処理の所定の遅延時間(例えば、25/100秒)を設定可能に構成されている。本実施形態において、先行起動ON/OFF設定領域42bと、遅延時間設定領域42cは、プレス装置一覧表示領域42aのプレス装置300毎に設けられているため、遅延時間は、プレス装置300毎に異なる時間を設定可能である。
【0077】
なお、先行起動のON/OFF設定と、遅延時間の設定とは、プレス装置300毎に設定できなくてもよい。
【0078】
図11は、本実施形態の先行始動条件設定画面の一例を示す図である。
さらに、表示装置40は、
図11に示すように、先行始動条件設定画面44を表示可能に構成されている。先行始動条件設定画面44は、先行始動条件設定領域44aを備える。先行始動条件設定領域44aは、先行始動条件の設定値を設定可能であり、例えば、先行始動条件が上述したように時間の場合、その時間(例えば、20ミリ秒)を設定可能である。
【0079】
また、先行始動条件設定領域44aは、時間や角度等の複数の先行始動条件から任意の先行始動条件を選択可能に構成されてもよい。
【0080】
記憶装置50は、プレス装置300によるワーク120の加工、及び、ロボット400によるワーク120の搬送を制御する際に必要な各種情報の保存に用いられる。ラインコントローラ10は、ロボット400の記憶部480に記憶された複数の領域Cjに関する情報を、プレスシステム1による加工が開始される前に、予めI/Fボード60を介して受信し、記憶装置50に記憶しておく。
【0081】
<各種信号について>
図5は、本実施形態の各装置間で送受信される信号を説明する図である。
【0082】
(ラインコントローラ10からプレス装置300へ送信される信号)
ラインコントローラ10は、起動信号、停止信号をプレス装置300のコントローラ314に送信する。起動信号は、プレス装置300を起動させるため、言い換えれば、ワーク120への加工を開始させるための信号である。停止信号は、プレス装置300を種々の状況で停止させるための信号であり、例えば、緊急停止信号、その場停止信号、サイクル停止信号等が含まれる。緊急停止信号は、安全が確保できる位置に各装置を移動させた後、駆動モータ等からの動力を遮断して停止させるための信号である。その場停止信号は、各装置を信号が出力されたときの位置に維持した状態で(すなわち、その場で)停止させるための信号であり、後述するプレス装置300のインターロックが含まれる。サイクル停止信号は、連続運転中に停止させる際に、各装置の動作の1サイクルを終えてから各装置がホームポジションに戻って停止させるための信号である。なお、停止信号はこれらに限定されず、より少なくてもよいし、より多くてもよい。
【0083】
(プレス装置300からラインコントローラ10へ送信される信号)
図6は、本実施形態のクランク軸308の角度と各領域や加工における所定のタイミングとの関係を示す図である。
図6では、上死点及び下死点を黒丸で示し、加工開始及び加工終了を白丸で示す。また、始動位置領域を右上がり斜線のハッチングで示し、ロボット干渉エリア外領域を右下がり斜線で示す。なお、ロボット干渉エリア外領域の一部は始動位置領域とも重複している。また、下死点領域を横線で示し、加工領域を縦線で示す。なお、加工領域の一部は下死点領域とも重複している。
【0084】
プレス装置300のコントローラ314は、始動位置信号、下死点(最下降位置)信号、ロボット干渉エリア外信号及び干渉チェック位置信号をラインコントローラ10に送信する(プレス装置側送信工程)。始動位置信号は、加工が開始されるときのスライド312の位置、言い換えれば、クランク軸308の回転の角度(本実施形態において、始動角度SA)を示す信号である。始動位置信号は、例えば、350度~10度の範囲でONする。プレス装置300のコントローラ314は、クランク軸308の角度が加工を開始する所定の角度(始動角度SA)になると、始動位置信号をラインコントローラ10に送信する。始動位置信号は、例えば、クランク軸308が始動位置に対応する角度となったときにON、それ以外の角度でOFFとしてよい。
【0085】
なお、本実施形態において、始動角度SAは上死点であるが、これに限定されない。始動角度SAは、始動位置領域の角度(例えば、350度~10度の範囲)であれば、種々の任意の角度を採用可能である。
【0086】
下死点信号は、クランク軸308が下死点に達したことを示す信号である。下死点信号は、例えば、クランク軸308が下死点に対応する角度となったときにON、それ以外の角度でOFFとしてよい。下死点信号は、例えば、175度~185度の範囲でONする。
【0087】
ロボット干渉エリア外信号は、プレス装置300がロボット400と干渉するエリアの外にいることを示す信号である。プレス装置300の加工は、プログラムによって設定されており、加工が開始されるクランク軸308の角度(以下、「加工開始角度」という)と、加工が終了するクランク軸308の角度(以下、「加工終了角度」という)は予め設定されている。加工開始角度から加工終了角度までの間を「加工角度」(または、「加工領域」)という。加工角度は、例えば、90度~270度、120度~240度等である。加工角度内では、プレス装置300によるワーク120への加工が行われているため、ロボット400はプレス装置300の領域内に進入することができない。また、下型303bと上型303aとの間に少なくともハンド460及びワーク120の高さ分以上の空間がないとハンド460は金型内に進入することができない。上述したように、プレス装置300のコントローラ314は、クランク軸308の角度を検知しており、検知した角度に基づいてロボット干渉エリア外信号を送信する。ロボット干渉エリア外信号は、例えば、クランク軸308がロボット干渉エリア外(例えば、300度~60度)となったときにON、ロボット干渉エリア内(例えば、60度~300度)でOFFとしてよい。
【0088】
干渉チェック位置信号は、クランク軸308が所定の干渉チェック角度ICAに達したことを示す信号である。干渉チェック位置信号は、例えば、クランク軸308の角度が所定の干渉チェック角度ICAになったときにON、それ以外の角度でOFFとしてもよい。干渉チェック位置信号は、例えば、30度~330度の範囲でONする。
【0089】
(ラインコントローラ10からロボット400へ送信される信号)
ラインコントローラ10は、起動信号、停止信号、C1進入許可信号、・・・、Cj進入許可信号、・・・をロボット400の制御部470に送信する(制御手段側送信工程)。起動信号は、ロボット400を起動させるため、言い換えれば、ワーク120の搬送を開始させるための信号である。停止信号は、ロボット400を種々の状況で停止させるための信号であり、例えば、緊急停止信号、その場停止信号、サイクル停止信号等が含まれる。なお、停止信号についてはプレス装置300の停止信号と同様であり、説明を省略する。
【0090】
C1進入許可信号、・・・、Cj進入許可信号、・・・は、領域C1、・・・、Cj、・・・に対応した信号であり、本実施形態では、10個の信号がある(1≦j≦10)。Cj進入許可信号は、後述する領域Cjへのロボット400の進入を許可するか否かを表す信号であり、例えば、領域Cjへの進入が許可される場合にON、禁止される場合にOFFとしてよい。ラインコントローラ10は、プレス装置300及びロボット400から入力された信号に基づいて、C1進入許可信号、・・・、Cj進入許可信号、・・・の全てについて、ON又はOFFを設定し、ロボット400に出力する。
【0091】
(ロボット400からラインコントローラ10へ送信される信号)
ロボット400の制御部470は、C1干渉エリア外信号、・・・、Cj干渉エリア外信号、・・・、吸着信号、搬送中信号をラインコントローラ10に送信する(搬送装置側送信工程)。ロボット400の制御部470は、ロボット400の記憶部480に記憶された複数の領域Cjと、ハンド460の座標とに基づいて、ハンド460が領域Cj外か否かを判断することができる。ロボット400の制御部470は、ハンド460が領域Cj外か否かに応じてCj干渉エリア外信号を送信する。Cj干渉エリア外信号は、例えば、ハンド460が領域Cj外にあるときにON(干渉エリア外)、領域Cj内にあるときにOFF(干渉エリア内)としてよい。なお、干渉エリアとハンド460との関係において、干渉エリアは、ワーク120がプレス装置300に装着された金型303や他のワーク120や他のロボット400と干渉しないための領域なので、加工するワーク120のサイズによって、エリアは変化するものであり、ワーク120を把持したハンド460の稼働可能領域もそのワークサイズによって変化するものである。
【0092】
吸着信号は、ロボット400のハンド460がワーク120を吸着し把持していることを示す信号であり、例えば、ワーク120を吸着しているときにON、吸着していないときにOFFとしてよい。搬送中信号は、ロボット400のハンド460がワーク120を吸着した後、吸着の解除をしていないこと、言い換えれば、ワーク120を把持し搬送中であることを示す信号である。搬送中信号は、例えば、ワーク120を搬送中であるときにON、搬送していないときにOFFとしてよい。
【0093】
<複数の領域の設定>
図7は、本実施形態の領域を説明する図であり、プレスシステム1の一部を上から見た模式図である。
図7には搬送方向及び前後方向も示す。
図7では、プレスシステム1はワーク120の搬送方向の上流側から、ロボットRm-1、プレス装置Pn、ロボットRm、プレス装置Pn+1、ロボットRm+1の順に配置されている。ここでは、ロボットRmの搬送制御を行うために設定される領域Cjについて説明する。このため、ロボットRmから見れば、プレス装置Pnは前段のプレス装置であり、プレス装置Pn+1は後段のプレス装置と言える。
【0094】
本実施形態では、プレス装置300の加工中にワーク120を搬送するロボットRmの搬送制御を行うために、10個の領域C1~C10が設定される。領域C1~領域C5は、ロボットRmと上流側の装置、すなわちプレス装置Pn又はロボットRm-1との干渉を回避するために設定された領域である。領域C6~領域C10は、ロボットRmと下流側の装置、すなわち、プレス装置Pn+1又はロボットRm+1との干渉を回避するために設定された領域である。
【0095】
また、10個の領域C1~C10には、プレス装置300の仕様により制限される領域、ロボット400の仕様により制限される領域が含まれる。例えば、プレス装置300によるワーク120への加工の際には、種々の大きさの金型303が用いられ、領域Cjは金型303の大きさによって設定される領域が含まれる。なお、プレス装置300のコントローラ314は、プレス装置300の表示部316からの入力に基づいて金型303のサイズを検知してもよい。また、コントローラ314は、プレス装置300が金型303のサイズを検知する手段を備え、その検知結果に基づいて金型303のサイズを検知してもよい。
【0096】
ロボット400の動作は、プレス装置300に装着される金型303の大きさに応じて制限される。例えば、小さな金型303が用いられる場合、ロボット400のハンド460が所定位置に進入することが可能であっても、大きな金型303が用いられる場合には、同じ所定位置にハンド460が進入できない場合がある。
図7に、プレス装置300で用いられる金型303の中で最も小さな金型303に相当する領域を金型干渉エリアK1として縦線のハッチングで示す。また、プレス装置300で用いられる金型303の中で最も大きな金型303、言い換えればスライド312の大きさに相当する領域を金型干渉エリアK2として横線のハッチングで示す。
図7では、金型干渉エリアK2は、一部が金型干渉エリアK1と重複しているが、金型干渉エリアK1も含めた領域である。なお、K1とK2とを特に区別する必要がない場合には、「金型干渉エリアK」という。
【0097】
また
図7に、ロボット400同士の可動域に応じて、ロボット400同士が干渉することを避けるために設けられた領域を、ロボット干渉エリアLとしてひし形格子のハッチングで示す。ロボット干渉エリアLは、ロボット400同士の干渉だけでなく、ロボット400とワーク120との衝突も避けるために設けられている。なお、金型干渉エリアK1の搬送方向の長さがロボット干渉エリアLの搬送方向の長さよりも短かったとしても、ロボット干渉エリアLはこれ以上短くすることはできず、金型303の大きさに依存しないエリアである。
【0098】
図7に右上がり線のハッチングで示す部分Qは、ロボットRmが停止信号を受信してから実際に停止するまでに要する距離(又は時間)に応じた部分である。部分Qは、搬送方向に例えば幅qで設けられている。部分Qは、ロボットRmの移動速度、停止信号の受信からロボットRmの停止までの時間等、言い換えればロボットRmの動作に基づいて設定される。
【0099】
以上をふまえ、ロボットRmの記憶部480には、領域C1~C10が次のように設定される。
【0100】
[第1領域である領域C1]
ロボットRmがプレス装置Pnのスライド312と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pnの金型干渉エリアK2及び部分Qに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。
【0101】
[第2領域である領域C2]
ロボットRmがプレス装置Pnの金型303と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pnの金型干渉エリアK2に基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)と搬送方向に平行な面(壁)として設定される。領域C2は、金型303が最も大きいサイズ、すなわち、スライド312の大きさである場合に対応して設定される領域である。
【0102】
[第2領域である領域C3]
ロボットRmがプレス装置Pnの金型303と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pnの金型干渉エリアK1に基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)と搬送方向に平行な面(壁)として設定される。領域C3は、金型303が小さいサイズである場合に対応して設定される領域である。領域C2と領域C3は、金型303の大きさに応じていずれかが用いられる。
【0103】
[第3領域である領域C4]
ロボットRmとロボットRm-1とが干渉しないように設定された領域であり、ロボットRmとロボットRm-1とのロボット干渉エリアLに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。
【0104】
[第1領域である領域C5]
ロボットRmがプレス装置Pnのスライド312と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pnの金型干渉エリアK1及び部分Qに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。領域C1と領域C5は、金型303の大きさに応じていずれかが用いられる。
【0105】
[第4領域である領域C6]
ロボットRmがプレス装置Pn+1のスライド312と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pn+1の金型干渉エリアK2及び部分Qに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。また、領域C6は、プレス装置Pn(又はPn+1)の搬送方向における、一点鎖線で示す中心PCn(又はPCn+1)を基準として領域C1と対称となる領域である。
【0106】
[第5領域である領域C7]
ロボットRmがプレス装置Pn+1の金型303と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pn+1の金型干渉エリアK2に基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)と搬送方向に平行な面(壁)として設定される。領域C7は、金型303が最も大きいサイズ、すなわち、スライド312の大きさである場合に対応して設定される領域である。また、領域C7は、プレス装置Pn(又はPn+1)の搬送方向における中心PCn(又はPCn+1)を基準として領域C2と対称となる領域である。
【0107】
[第5領域である領域C8]
ロボットRmがプレス装置Pn+1の金型303と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pn+1の金型干渉エリアK1に基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)と搬送方向に平行な面(壁)として設定される。領域C8は、金型303が小さいサイズである場合に対応して設定される領域である。また、領域C8は、プレス装置Pn(又はPn+1)の搬送方向における中心PCn(又はPCn+1)を基準として領域C3と対称となる領域である。領域C7と領域C8は、金型303の大きさに応じていずれかが用いられる。
【0108】
[第6領域である領域C9]
ロボットRmとロボットRm+1とが干渉しないように設定された領域であり、ロボットRmとロボットRm+1とのロボット干渉エリアLに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。また、領域C9は、プレス装置Pn(又はPn+1)の搬送方向における中心PCn(又はPCn+1)を基準として領域C4と対称となる領域である。
【0109】
[第4領域である領域C10]
ロボットRmがプレス装置Pn+1のスライド312と干渉しないように設定された領域であり、プレス装置Pn+1の金型干渉エリアK1及び部分Qに基づいて、上方から見たときに、搬送方向に交差する面(壁)として設定される。また、領域C10は、プレス装置Pn(又はPn+1)の搬送方向における中心PCn(又はPCn+1)を基準として領域C5と対称となる領域である。領域C6と領域C10は、金型303の大きさに応じていずれかが用いられる。
【0110】
以上をまとめると、領域C1、C5は第1領域に相当し、領域C2、C3は第2領域に相当し、領域C4は第3領域に相当する。領域C6、C10は第4領域に相当し、領域C7、C8は第5領域に相当し、領域C9は第6領域に相当する。なお、C1干渉エリア外信号、C5干渉エリア外信号は、第1領域に対応する第1領域外信号に相当する。C2干渉エリア外信号、C3干渉エリア外信号は、第2領域に対応する第2領域外信号に相当する。C4干渉エリア外信号は、第3領域に対応する第3領域外信号に相当する。C6干渉エリア外信号、C10干渉エリア外信号は、第4領域に対応する第4領域外信号に相当する。C7干渉エリア外信号、C8干渉エリア外信号は、第5領域に対応する第5領域外信号に相当する。C9干渉エリア外信号は、第6領域に対応する第6領域外信号に相当する。
【0111】
図7では、ロボットRmの記憶部480に記憶された領域C1~C10を実線で示している。なお、プレス装置Pnにおいて破線で示された領域C6~C10は、ロボットRm-1の記憶部480に記憶された領域である。また、プレス装置Pn+1において破線で示された領域C1~C5は、ロボットRm+1の記憶部480に記憶された領域である。
【0112】
<ロボットRmの搬送経路の区間>
領域Cjに設定される後述する所定の条件に用いるために、ロボットRmの搬送中の経路(以下、搬送経路ともいう)における状態について、次の区間D1~D4を定義する。なお、ロボットRmは実際には効率の良い自由な搬送経路を描いてワーク120の搬入・搬出を行っているが、説明を簡単にするため、
図7ではロボットRmの区間を搬送方向に平行に図示している。ラインコントローラ10は、ロボットRmから送信された吸着信号及び搬送中信号に基づいて、ロボットRmがどの区間にいるかを判断する。
【0113】
[区間D1]加工済のワーク120をプレス装置Pnから搬出するために、ロボットRmの吸着をONとして移動する(ワーク120を迎えに行く)区間
[区間D2]ロボットRmが、加工済のワーク120を吸着して、プレス装置Pnから搬出している(搬送中の)区間
[区間D3]ロボットRmが、ワーク120を吸着して、次の加工のためにワーク120をプレス装置Pn+1に搬入している(搬送中の)区間
[区間D4]プレス装置Pn+1にワーク120を搬入した後で、ロボットRmの吸着をOFFとしてホームポジションに戻る区間
【0114】
<複数の領域の進入条件>
領域Cjには、所定の条件が設定される。ラインコントローラ10は、所定の条件が満たされないうちは、ロボット400、具体的にはハンド460のその領域Cjの先への進入を禁止する。言い換えれば、ラインコントローラ10は、所定の条件が満たされない場合、ロボット400が動作できないようにインターロックをかける。インターロックとは、所定の条件が満たされない間は、例えば電気錠が解錠しない機構をいう。一方、ラインコントローラ10は、所定の条件が満たされると、ロボット400、具体的にはハンド460のその領域Cjの先への進入を許可する。
【0115】
ラインコントローラ10は、Cj進入許可信号をロボットRmに送信することで、ロボットRmの領域Cjへの進入の許可又は禁止を制御する。ロボット400から見れば、進行方向(進入方向)に壁があり、所定の条件が満たされないうちはその壁を突破できず、所定の条件が満たされるとその壁の向こうに進入することができる。以下の説明において、ロボットRmのハンド460の干渉を、単に、ロボットRmの干渉、と表現する。
【0116】
[領域C1の進入条件]
領域C1へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C1-1 ロボットRm-1が領域C9の外にいること
条件C1-2 プレス装置Pn内にワーク120があること
ただし、ロボットRmが区間D2に位置する間を除く。これは、ロボットRmが区間D2にあるときは、ロボットRm自身の搬出動作によりプレス装置Pnにはワーク120がなく、C1-2の条件が満たされなくなるからである。
【0117】
[領域C2の進入条件]
領域C2へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C2-1 ロボットRm-1が領域C9の外にいること
条件C2-2 プレス装置Pnがロボット干渉エリア外にいること
条件C2-3 プレス装置Pn内に加工済みのワーク120があること
ただし、ロボットRmが区間D2に位置する間を除く。これは、領域C1で区間D2を除いたことと同様の理由により、以下、同様である。
【0118】
[領域C3の進入条件]
領域C3へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C3-1 ロボットRm-1が領域C9の外にいること
条件C3-2 プレス装置Pnがロボット干渉エリア外にいること
条件C3-3 プレス装置Pn内に加工済みのワーク120があること
ただし、ロボットRmが区間D2に位置する間を除く。
【0119】
[領域C4の進入条件]
領域C4へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C4-1 ロボットRm-1が領域C9の外にいること
【0120】
[領域C5の進入条件]
領域C5へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C5-1 ロボットRm-1が後述する領域C9の外にいること
条件C5-2 プレス装置Pn内にワーク120があること
ただし、ロボットRmが区間D2に位置する間を除く。
【0121】
[領域C6の進入条件]
領域C6へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C6-1 ロボットRm+1が領域C4の外にいること
条件C6-2 プレス装置Pn+1内にワーク120がないこと
ただし、ロボットRmが区間D4に位置する間を除く。
【0122】
[領域C7の進入条件]
領域C7へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C7-1 ロボットRm+1が領域C4の外にいること
条件C7-2 プレス装置Pn+1がロボット干渉エリア外にいること
条件C7-3 プレス装置Pn+1内にワーク120がないこと
ただし、ロボットRmが区間D4に位置する間を除く。
【0123】
[領域C8の進入条件]
領域C8へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C8-1 ロボットRm+1が領域C4の外にいること
条件C8-2 プレス装置Pn+1がロボット干渉エリア外にいること
条件C8-3 プレス装置Pn+1内にワーク120がないこと
ただし、ロボットRmが区間D4に位置する間を除く。
【0124】
[領域C9の進入条件]
領域C9へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C9-1 ロボットRm+1が領域C4の外にいること
【0125】
[領域C10の進入条件]
領域C10へは、次の条件が満たされたときに進入が許可される。
条件C10-1 ロボットRm+1が領域C4の外にいること
条件C10-2 プレス装置Pn+1内にワーク120がないこと
ただし、ロボットRmが区間D4に位置する間は除く。
【0126】
<ワークの状態>
上述した領域Cjの条件C1-2、C5-2で、プレス装置Pn内にワーク120があること、という条件がある。また、条件C2-3、C3-3で、プレス装置Pn内に加工済みのワーク120があること、C6-2、C7-3、C8-3、C10-2で、プレス装置Pn+1内にワーク120がないことという条件がある。ラインコントローラ10は、次のようにしてワーク120の状態を「ワークあり」、「ワークなし」、「加工済ワークあり」と判断する。
【0127】
ラインコントローラ10は、ロボットRm-1から、金型干渉エリアK内で吸着信号のOFFを受信したときに、プレス装置Pnに「ワークあり」と判断する。ラインコントローラ10は、ロボットRm+1から、金型干渉エリアK内で吸着信号のONを受信したときに、プレス装置Pn+1に「ワークなし」と判断する。ラインコントローラ10は、プレス装置Pn、Pn+1から下死点信号のONを受信したときに、プレス装置Pn、Pn+1に「加工済ワークあり」と判断する。
【0128】
<プレス装置のインターロック>
本実施形態では、領域Cjを用いて、ラインコントローラ10がプレス装置300の加工の許可又は禁止を制御することも可能である。すなわち、ロボット400の状態に応じて、クランク軸308の加工角度内への進入を許可又は禁止することが可能である。言い換えれば、ラインコントローラ10は、所定の条件が満たされない場合、プレス装置300が動作できないようにインターロックをかける。ラインコントローラ10は、金型303のサイズに応じてプレス装置300の加工の許可又は禁止を次の条件で判断する。なお、プレス装置Pnと前段のロボットRm-1、プレス装置Pnと後段のロボットRmとの関係で説明する。
【0129】
(小さなサイズの金型の場合)
条件S1-1 ロボットRm-1が領域C8の外にいること
条件S1-2 ロボットRmが領域C3の外にいること
【0130】
(大きなサイズの金型の場合)
条件S2-1 ロボットRm-1が領域C7の外にいること
条件S2-2 ロボットRmが領域C2の外にいること
【0131】
ラインコントローラ10は、条件S1-1及び条件S1-2が両方満たされた場合、又は、条件S2-1及び条件S2-2が両方満たされた場合に、プレス装置Pnに加工を許可する。なお、ラインコントローラ10は、加工を禁止している間、
図5で説明した停止信号により、プレス装置Pnの加工動作を一時停止させてもよい。一時停止位置は、始動位置の範囲にかかわらず、ロボット干渉エリア外の範囲であればよい(
図6参照)。また、別途、加工許可信号等を設けて加工許可信号等がONで許可、OFFで禁止のようにし、加工許可信号に基づきプレス装置Pnが一時停止等してもよい。
【0132】
<ロボットRmの搬送制御>
ラインコントローラ10は、プレスシステム1が連続運転を開始してから連続運転を終了するまでの間、
図5で説明した始動位置信号、下死点信号、ロボット干渉エリア外信号を所定の時間間隔で全てのプレス装置300から受信している。同様に、ラインコントローラ10は、プレスシステム1が連続運転を開始してから連続運転を終了するまでの間、
図5で説明したCj干渉エリア外信号、吸着信号、搬送中信号を所定の時間間隔で全てのロボット400から受信している。さらに、ラインコントローラ10は、プレスシステム1が連続運転を開始してから連続運転を終了するまでの間、
図5で説明したCj進入許可信号を所定の時間間隔で全てのロボット400に送信している。
【0133】
このように、ラインコントローラ10は、プレスシステム1を構成する全てのプレス装置300及び全てのロボット400から各種信号を受信する。そしてラインコントローラ10は、全てのロボット400の領域Cjへの進入の禁止又は許可を判断し、全てのロボット400にCj干渉エリア外信号を送信している。また、上述したように、プレス装置300にインターロックをかけることも可能である。本実施形態では、このようにしてラインコントローラ10が集中管理を行っている。このため、プレス装置300はワーク120の加工制御に専念することができ、ロボット400はワーク120の搬送制御に専念することができる。領域Cjへの進入が可能か否かの判断はラインコントローラ10が集中して行い、ロボット400は、ラインコントローラ10から受信したCj進入許可信号に基づき許可が出た場合に、許可が出た領域Cjの先に進入する。ラインコントローラ10が集中管理を行うことで、プレスシステム1全体の加工工程、搬送工程におけるクリティカルパスを解消、又は、少なくとも所要時間を低減させることもできる。
【0134】
[本実施形態に係るプレスシステムの制御方法]
次に、本実施形態に係るプレスシステム1の制御方法について説明する。本実施形態に係るプレスシステム1の制御方法は、概略的には、所定の始動角度SAで停止しているプレス装置300(本実施形態において、プレス装置Pn)のクランク軸308を回転させ、スライド312を下方に移動開始させるプレス始動工程と、クランク軸308が所定の干渉チェック角度ICAに到達した際に、プレス装置Pnにワーク120を搬入する第1の搬送装置(本実施形態において、ロボットRm-1)が金型干渉エリアKにいるか否かを判定する干渉チェック工程と、ロボットRm-1が金型干渉エリアKにいると判定した場合には、プレス装置Pnを停止させるプレス停止工程と、ロボットRm-1が金型干渉エリアKにいないと判定した場合には、プレス装置Pnに金型303によりワーク120を加工させるプレス工程とを備える。
【0135】
プレス始動工程は、ロボットRm-1がプレス装置Pnにワーク120を搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行される。干渉チェック角度ICAは、金型303とロボットRm-1とが干渉するときのクランク軸308の干渉角度IAと、急停止時間の間にスライド312が移動する距離とに基づいて、干渉角度IAよりも始動角度SA側に設定されている。遅延時間は、ロボットRm-1がワーク120を搬入後に金型干渉エリアKを離脱するまでにかかる離脱時間と、クランク軸308が始動角度SAから干渉チェック角度ICAに移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも離脱時間よりも短い。
【0136】
まず、本実施形態のプレスシステム1の一連の処理の前段階として、ロボットRm-1は、プレス装置Pn-1からワーク120を搬出する。具体的には、ロボットRm-1は、所定の待機位置で待機しており、プレス装置Pn-1が金型303によりワーク120を加工した後、ラインコントローラ10は、起動信号をロボットRm-1の制御部470に送信し、ロボットRm-1を始動させる(ロボット始動工程)。
【0137】
ロボット始動工程のロボットRm-1の始動タイミングは、所定の先行始動条件に基づいて、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達するよりも前のタイミングに設定されている。本実施形態において、先行始動条件は、ロボットRm-1が始動してから金型干渉エリアKに進入するまでにかかる時間であり、ラインコントローラ10は、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達するよりもその時間分だけ先行してロボットRm-1を始動させる。
【0138】
図12は、本実施形態のプレスシステムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
そして、ロボットRm-1の制御部470は、ラインコントローラ10から起動信号(進入許可信号)が入力されると、プレス装置Pn-1の金型干渉エリアKに進入すると共に、ハンド460の吸着を開始し、ワーク120を吸着する(
図12のS10)。また、制御部470は、吸着信号をON、搬送中信号をOFFにし、プレス装置Pnにワーク120を搬入するためにハンド460の移動を開始する(
図12のS11)。その後、制御部470は、ハンド460を移動させ、プレス装置Pnの金型干渉エリアKに進入してプレス装置Pnの上型303aと下型303bとの間にワーク120を配置する。
【0139】
そして、制御部470は、ハンド460の吸着を終了し、ワーク120の搬入を終了する(
図12のS12)。また、制御部470は、吸着信号をOFF、搬送中信号をONにし、ハンド460を金型干渉エリアKから離脱させる(
図12のS13)。一方で、ラインコントローラ10は、ワーク120の搬入後にロボットRm-1の吸着信号のOFFを確認すると、起動信号をプレス装置Pnのコントローラ314に送信する。
【0140】
プレス装置Pnのコントローラ314は、ラインコントローラ10から起動信号が入力されると、所定の遅延時間のカウントを開始する(
図12のS1)。所定の遅延時間の経過後、コントローラ314は、所定の始動角度SAで停止しているクランク軸308を回転させ、スライド312を下方に移動開始させる(
図12のS2:プレス始動工程)。その後、回転を開始したクランク軸308は、所定の干渉チェック角度ICAに到達する(
図12のS2)。コントローラ314は、クランク軸308が所定の干渉チェック角度ICAに到達した際に、ラインコントローラ10に干渉チェック位置信号を送信する。
【0141】
ラインコントローラ10は、クランク軸308が所定の干渉チェック角度ICAに到達したことを確認すると、ロボットRm-1が金型干渉エリアKにいるか否かを判定する(
図12のS4:干渉チェック工程)。ラインコントローラ10は、ロボットRm-1が金型干渉エリアKにいると判定した場合には(
図12のS4にてYES)、プレス装置Pnのコントローラ314にその場停止信号を送信し、プレス装置Pnを停止させる(
図12のS5:プレス停止工程)。その後、再度、干渉チェック工程(
図12のS4)を実行する。
【0142】
一方で、ラインコントローラ10は、ロボットRm-1が金型干渉エリアKにいないと判定した場合には(
図12のS4にてNO)、プレス装置Pnに金型303によりワーク120を加工させる。プレス装置Pnは、クランク軸308の角度が加工を開始する角度を過ぎると、上型303aと下型303bとがワーク120を押圧し始め、ワーク120に対するプレス加工が開始される(
図12のS6:プレス工程)。その後、クランク軸308の角度が下死点を通過し、加工を終了する角度を過ぎると、プレス加工が終了する(
図12のS7)。以上の工程により、本実施形態に係るプレスシステム1の一連の処理が実行される。
【0143】
また、本実施形態のプレスシステム1の一連の処理の後段階として、ロボットRmは、プレス装置Pnからワーク120を搬出する。具体的には、ロボットRmは、所定の待機位置で待機しており、プレス装置Pnが金型303によりワーク120を加工した後、ラインコントローラ10は、起動信号をロボットRmの制御部470に送信し、ロボットRmを始動させる(ロボット始動工程)。
【0144】
ロボット始動工程のロボットRmの始動タイミングは、所定の先行始動条件に基づいて、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達するよりも前のタイミングに設定されている。本実施形態において、先行始動条件は、ロボットRmが始動してから金型干渉エリアKに進入するまでにかかる時間であり、ラインコントローラ10は、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達するよりもその時間分だけ先行してロボットRmを始動させる。
【0145】
そして、ロボットRmの制御部470は、ラインコントローラ10から起動信号(進入許可信号)が入力されると、プレス装置Pnの金型干渉エリアKに進入すると共に、ハンド460の吸着を開始し、ワーク120を吸着する(
図12のS10)。その後、制御部470は、吸着信号をON、搬送中信号をOFFにし、プレス装置Pn+1にワーク120を搬入するためにハンド460の移動を開始する。
【0146】
[本実施形態に係る包装プレスシステム及びプレスシステムの制御方法の利点]
以上説明したように、本実施形態に係るプレスシステム1は、クランク軸308と、クランク軸308の回転に応じて上下移動するスライド312とを含み、スライド312に装着された金型303によりワーク120へ加工を行うプレス装置300(本実施形態において、プレス装置Pn)と、プレス装置Pnにワーク120を搬入する第1の搬送装置(ロボット400、本実施形態において、ロボットRm-1)と、プレス装置300(プレス装置Pn)と第1の搬送装置(ロボットRm-1)とを制御する制御手段(ラインコントローラ10)とを備え、制御手段(ラインコントローラ10)は、所定の始動角度SAで停止しているクランク軸308を回転させ、スライド312を下方に移動開始させるプレス始動処理と、クランク軸308が所定の干渉チェック角度ICAに到達した際に、第1の搬送装置(ロボットRm-1)が金型303と干渉する金型干渉エリアKにいるか否かを判定する干渉チェック処理と、第1の搬送装置(ロボットRm-1)が金型干渉エリアKにいると判定した場合には、プレス装置300(プレス装置Pn)を停止させるプレス停止処理と、第1の搬送装置(ロボットRm-1)が金型干渉エリアKにいないと判定した場合には、プレス装置300(プレス装置Pn)にワーク120を加工させるプレス処理とを実行可能に構成されており、プレス始動処理は、第1の搬送装置(ロボットRm-1)がプレス装置300(プレス装置Pn)にワーク120を搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行され、干渉チェック角度ICAは、金型303と第1の搬送装置(ロボットRm-1)とが干渉するときのクランク軸308の干渉角度IAと、急停止時間の間にスライド312が移動する距離とに基づいて、干渉角度IAよりも始動角度SA側に設定されており、遅延時間は、第1の搬送装置(ロボットRm-1)がワーク120を搬入後に金型干渉エリアKを離脱するまでにかかる離脱時間と、クランク軸308が始動角度SAから干渉チェック角度ICAに移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも離脱時間よりも短い。
【0147】
そして、本実施形態に係るプレスシステム1は、このような構成を備えることにより、第1の搬送装置(ロボットRm-1)がワーク120を搬入後に金型干渉エリアKを離脱するまでにかかる離脱時間と、クランク軸308が始動角度SAから干渉チェック角度ICAに移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいてクランク軸308を始動させるタイミングを遅らせることで、干渉チェック角度ICAと干渉角度IAとの間隔を離しても、干渉チェック処理の際に異常時を除いて第1の搬送装置(ロボットRm-1)が金型干渉エリアKにいると判定されることが減少するため、安全性を確保しつつ生産性を向上できるという利点を有している。
【0148】
また、本実施形態に係るプレスシステム1は、クランク軸308が所定の干渉チェック角度ICAに到達した際に、第1の搬送装置(ロボットRm-1)が金型303と干渉する金型干渉エリアKにいるか否かを判定する干渉チェック処理を実行可能に構成され、干渉チェック角度ICAが金型303と第1の搬送装置(ロボットRm-1)とが干渉するときのクランク軸308の干渉角度IAと、急停止時間の間にスライド312が移動する距離とに基づいて、干渉角度IAよりも始動角度SA側に設定されることにより、始動角度SAからクランク軸308が回転を開始し、干渉チェック角度ICAにクランク軸308が到達した際に、第1の搬送装置(ロボットRm-1)が金型303と干渉する金型干渉エリアKにまだいた場合に、干渉チェック角度ICAにおいて減速を開始して干渉角度IAよりも手前の角度でクランク軸308、ひいてはスライド312が停止できるため、スライド312と第1の搬送装置(ロボットRm-1)が衝突することを防止できるという利点を有している。
【0149】
また、本実施形態に係るプレスシステム1において、遅延時間は、第1の搬送装置(ロボットRm-1)が金型干渉エリアKを離脱した後にクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達するように設定される。このような構成を備えることにより、平常時は第1の搬送装置(ロボットRm-1)が金型干渉エリアKにいると判定されることがなくなり、クランク軸308を減速又は停止させることなく、言い換えれば、助走を経て最高速度に達したスライド312がその速度を保ったままワーク120のプレス加工を実行できるため、安全性を確保しつつ生産性を向上できるという利点を有している。
【0150】
さらに、本実施形態に係るプレスシステム1は、プレス装置300(プレス装置Pn)からワーク120を搬出する第2の搬送装置(ロボット400、本実施形態において、ロボットRm)を備え、制御手段(ラインコントローラ10)は、所定の待機位置で待機している第2の搬送装置(ロボットRm)を始動させるロボット始動処理を実行可能に構成されており、ロボット始動処理の始動タイミングは、所定の先行始動条件に基づいて、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達するよりも前のタイミングに設定される。このような構成を備えることにより、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達することを待たずに第2の搬送装置(ロボットRm)を始動させることができるため、第2の搬送装置(ロボットRm)を金型干渉エリアK内に進入させてワーク120を搬出する際にかかる時間が短縮され、生産性を向上できるという利点を有している。
【0151】
またさらに、本実施形態に係るプレスシステム1において、先行始動条件は、第2の搬送装置(ロボットRm)が始動してから金型干渉エリアKに進入するまでにかかる時間である。このような構成を備えることにより、クランク軸308の回転数や、スライド312の移動速度が変化しても先行始動条件の設定値を変えずに対応可能であるという利点を有している。
【0152】
例えば、クランク軸308の回転数によっては、クランク軸308が進入可能角度AAに到達する前に第2の搬送装置(ロボットRm)が金型干渉エリアKに進入してプレス装置300(プレス装置Pn)にインターロックがかかってしまったり、クランク軸308が進入可能角度AAを通過してから遅れて(例えば、クランク軸308が停止する頃に)第2の搬送装置(ロボットRm)が金型干渉エリアKに進入してしまったりする。そのため、先行始動条件がクランク軸308のロボット干渉エリア外領域の所定の角度である場合、クランク軸308の回転数に応じて適切な先行始動条件の設定値を都度設定する必要がある。しかし、先行始動条件は、第2の搬送装置(ロボットRm)が始動してから金型干渉エリアKに進入するまでにかかる時間であれば、クランク軸308が進入可能角度AAを通過するタイミングよりも第2の搬送装置(ロボットRm)が始動してから金型干渉エリアKに進入するまでにかかる時間分だけ早く第2の搬送装置(ロボットRm)を始動させるため、回転数が変化しても同じ先行始動条件の設定値で対応することができる。
【0153】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上述した実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0154】
例えば、上述した実施形態において、遅延時間は、第1の搬送装置(ロボットRm-1)が金型干渉エリアKを離脱した後にクランク軸308が干渉チェック角度ICAに到達するように設定されるものとして説明したが、これに限定されない。遅延時間は、少なくとも離脱時間よりも短い時間であれば、種々の任意の時間を採用可能である。
【0155】
上述した実施形態において、プレスシステム1は、プレス装置300(プレス装置Pn)からワーク120を搬出する第2の搬送装置(ロボット400、本実施形態において、ロボットRm)を備え、制御手段(ラインコントローラ10)は、所定の待機位置で待機している第2の搬送装置(ロボットRm)を始動させるロボット始動処理を実行可能に構成されており、ロボット始動処理の始動タイミングは、所定の先行始動条件に基づいて、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達するよりも前のタイミングに設定されるものとして説明したが、これに限定されない。プレスシステム1は、第2の搬送装置(ロボット400、本実施形態において、ロボットRm)を備えなくてもよい。例えば、プレスシステム1は、第1の搬送装置(ロボットRm-1)がプレス装置300(プレス装置Pn)からワーク120を搬出してもよい。また、制御手段(ラインコントローラ10)は、ロボット始動処理を実行可能に構成されなくてもよい。さらに、ロボット始動処理の始動タイミングは、クランク軸308が所定の進入可能角度AAに到達すると同時、又は到達後のタイミングに設定されてもよい。
【0156】
上述した実施形態において、先行始動条件は、第2の搬送装置(ロボットRm)が始動してから金型干渉エリアKに進入するまでにかかる時間であるものとして説明したが、これに限定されない。先行始動条件は、第2の搬送装置(ロボットRm)が始動してから金型干渉エリアKに進入するまでにかかる時間でなくてもよい。例えば、先行始動条件は、クランク軸308のロボット干渉エリア外領域の所定の角度であってもよいし、スライド312の所定の高さであってもよい。
【0157】
上述した実施形態において、プレス装置300は、クランク軸308が上死点から下死点を通過し再び上死点に戻る回転運動を繰り返す、所謂フルストロークで動作するように構成されていることを前提として説明したが、これに限定されず、プレス装置300は、フルストロークで動作しなくてもよい。例えば、プレス装置300は、上死点ではなく、ロボット400と干渉が起こらない角度を始動角度SAとして、加工完了後、逆方向にクランク軸308を回転させて再び始動角度SAに戻る反転動作であってもよいし、それぞれ正転方向および逆転方向に所定角度で離れた2つの始動角度SAの一方から下死点を通過して他方までクランク軸308を回転させ、その後2つの始動角度SAの他方から一方までクランク軸308を回転させて往復する振り子動作であってもよい。また、クランク軸308は時計回り(正転方向)に回転することをn前提として説明したが、これに限定されず、クランク軸308は反時計回り(逆転方向)に回転してもよい。
【0158】
上述した実施形態において、プレスシステム1は、ワーク120の搬送装置として多関節型ロボットを備える構成としたがこれに限定されない。例えば、プレスシステム1が、多関節型ではないロボット等によりワーク120の搬送を行う構成にも適用可能である。
【0159】
上述した実施形態では、ロボット400に定義された複数の領域を用いてラインコントローラ10がロボット400の搬送制御を行ったが、これに限定されない。ロボット400に記憶された領域とは別に、ラインコントローラ10の記憶装置50に複数の領域を定義し、記憶装置50に記憶された複数の領域をロボット400の搬送制御に用いてもよい。
【0160】
上述した実施形態の各種信号のONとOFFは、逆であってもよい。すなわち、例えばハンド460がワーク120を吸着しているときにONとしたが逆にOFFとしてもよいし、吸着していないときにOFFとしたが逆にONとしてもよい。他の信号についても同様である。
【0161】
上述した実施形態において、プレスシステム1は、ロボット400による搬入、搬出の各ステージにおいて、ワーク120の有無を他のセンサを用いて検知してもよい。
【0162】
上述した実施形態において、ワーク120の搬送方向は、
図1では左から右へと搬送したが、逆に右から左へ搬送しても、上述した本実施形態の構成を適用することが可能である。
【0163】
上述した実施形態では、金型303のサイズについて大サイズの金型303と小サイズの金型303の2通りに対応できる構成としたがこれに限定されない。単一のサイズの金型303や3つ以上のサイズの金型303について、領域を設定することも可能である。なお、1つのサイズの金型303に対応して、前段の装置に対して2つの領域(例えばC1とC2)、後段の装置に対して2つの領域(例えばC6とC7)、の合計4つの領域の設定が必要となる。このため、何通りのサイズの金型303に対応できるか、言い換えれば設定できる領域の上限がいくつになるかは、ロボット400で設定できる領域の上限数に依存する。また、領域を設定する際の数値(辺の長さ等)が上位の装置から書き換え可能な場合、金型303のサイズの指定から各領域を自動的に設定してもよい。すなわち、金型303のサイズに応じて領域の設定を読み出して切り替える方法に限定されず、金型303のサイズに応じて都度領域の設定を書き換えてもよい。
【0164】
上述した実施形態において、
図7では、領域を左右方向(搬送方向)及び前後方向で定義したが、これに限定されない。さらに、上下方向についても定義し、3次元的な領域として定義してもよい。また、左右方向と上下方向、前後方向と上下方向等の2次元的な領域として定義してもよい。
【0165】
上述した実施形態において、ロボット400は、ロボット400の制御部470が3次元座標によりロボット400の姿勢や動き、移動の速さ等、すなわち、座標や速度等を制御したが、これに限定されない。例えば、ロボット400の外部にロボット400を撮像する撮像部を備え、撮像部によって撮像した画像を解析することで、ロボット400の姿勢や動き、移動の速さ等、すなわち、座標や速度等を制御してもよい。
【0166】
上述した実施形態では、プレス装置300及びロボット400とは独立したラインコントローラ10が領域Cjへの進入の許可又は禁止を判断したが、これに限定されない。所定のプレス装置300のコントローラ314がラインコントローラ10の機能を発揮してもよいし、所定のロボット400の制御部470がラインコントローラ10の機能を発揮してもよい。
【符号の説明】
【0167】
1 プレスシステム
10 ラインコントローラ
20 演算装置
30 入力装置
40 表示装置
42 遅延時間設定画面
42a プレス装置一覧表示領域
42b 先行起動ON/OFF設定領域
42c 遅延時間設定領域
44 先行始動条件設定画面
44a 先行始動条件設定領域
50 記憶装置
60 I/Fボード
100 リフタ
120 ワーク
200 水平フィーダ
210、220 ハンド
230 テーブル
240 アーム
300 プレス装置
302 筐体
303 金型
303a 上型
303b 下型
304 駆動モータ
306 伝達機構
308 クランク軸
310 コンロッド
312 スライド
314 コントローラ
315 記憶部
316 表示部
318 入力部
322 ボルスタ
324 センサ
325 ロータリーエンコーダ
326 ギブ
400 ロボット
410 支持台
420 回転部
430 第1アーム
440 第2アーム
450 第3アーム
460 ハンド
462 吸着部
470 制御部
480 記憶部
AA 進入可能角度
C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、Cj 領域
D1、D2、D3、D4 区間
IA 干渉角度
ICA 干渉チェック角度
K、K1、K2 金型干渉エリア
L ロボット干渉エリア
P1、P2、・・・、Pn、Pn+1、・・・ プレス装置
Q 部分
R1、R2、・・・、Rm-1、Rm、Rm+1・・・ ロボット
SA 始動角度
q 幅
【手続補正書】
【提出日】2024-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
<プレス装置>
図1のプレス装置300について、
図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態のプレス装置300の構成を示す概略斜視図であり、例えば、一体型ストレートサイドフレーム型又はCフレーム型のプレス装置300の概略図である。図
2には、ワーク120の搬送方向や搬送方向における上流(左)、下流(右)、上下方向、及び前後方向(正面、背面)も示している。プレス装置300は、筐体302の内外に、駆動モータ304(駆動手段)、伝達機構306、クランク軸308、コンロッド310、スライド312、ボルスタ322を有して構成される。また、プレス装置300は、コントローラ314、記憶部315、表示部316、入力部318、を有している。さらに、プレス装置300は、センサ324、ロータリーエンコーダ325、ギブ326を有している。なお、ギブはガイドギブまたはスライドガイドとも称す。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0140
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0140】
プレス装置Pnのコントローラ314は、ラインコントローラ10から起動信号が入力されると、所定の遅延時間のカウントを開始する(
図12のS1)。所定の遅延時間の経過後、コントローラ314は、所定の始動角度SAで停止しているクランク軸308を回転させ、スライド312を下方に移動開始させる(
図12のS2:プレス始動工程)。その後、回転を開始したクランク軸308は、所定の干渉チェック角度ICAに到達する(
図12のS
3)。コントローラ314は、クランク軸308が所定の干渉チェック角度ICAに到達した際に、ラインコントローラ10に干渉チェック位置信号を送信する。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸と、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドとを含み、前記スライドに装着された金型によりワークへ加工を行うプレス装置と、
前記プレス装置に前記ワークを搬入する第1の搬送装置と、
前記プレス装置と前記第1の搬送装置とを制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
所定の始動角度で停止している前記クランク軸を回転させ、前記スライドを下方に移動開始させるプレス始動処理と、
前記クランク軸が所定の干渉チェック角度に到達した際に、前記第1の搬送装置が前記金型と干渉する金型干渉エリアにいるか否かを判定する干渉チェック処理と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいると判定した場合には、前記プレス装置を停止させるプレス停止処理と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいないと判定した場合には、前記プレス装置に前記ワークを加工させるプレス処理と
を実行可能に構成されており、
前記プレス始動処理は、前記第1の搬送装置が前記プレス装置に前記ワークを搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行され、
前記干渉チェック角度は、前記金型と前記第1の搬送装置とが干渉するときの前記クランク軸の干渉角度と、急停止時間の間に前記スライドが移動する距離とに基づいて、前記干渉角度よりも前記始動角度側に設定されており、
前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記ワークを搬入後に前記金型干渉エリアを離脱するまでにかかる離脱時間と、前記クランク軸が前記始動角度から前記干渉チェック角度に移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも前記離脱時間よりも短く、
前記プレス装置は、複数設置されており、
前記遅延時間は、前記プレス装置毎に異なる時間を設定可能である
プレスシステム。
【請求項2】
遅延時間設定画面を表示可能に構成された表示装置を更に備え、
前記遅延時間設定画面は、
所定の前記遅延時間の経過後に前記プレス装置を始動させる先行起動と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアから離脱した後に前記プレス装置を始動させる非先行起動と
を切り替え可能に構成されている
請求項1に記載のプレスシステム。
【請求項3】
前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアを離脱した後に前記クランク軸が前記干渉チェック角度に到達するように設定される
請求項1又は2に記載のプレスシステム。
【請求項4】
前記プレス装置から前記ワークを搬出する第2の搬送装置を備え、
前記制御手段は、所定の待機位置で待機している前記第2の搬送装置を始動させるロボット始動処理を実行可能に構成されており、
前記ロボット始動処理の始動タイミングは、所定の先行始動条件に基づいて、前記クランク軸が所定の進入可能角度に到達するよりも前のタイミングに設定される
請求項1又は2に記載のプレスシステム。
【請求項5】
前記先行始動条件は、前記第2の搬送装置が始動してから前記金型干渉エリアに進入するまでにかかる時間である
請求項4に記載のプレスシステム。
【請求項6】
所定の始動角度で停止しているプレス装置のクランク軸を回転させ、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドを下方に移動開始させるプレス始動工程と、
前記クランク軸が所定の干渉チェック角度に到達した際に、前記プレス装置にワークを搬入する第1の搬送装置が前記スライドに装着された金型と干渉する金型干渉エリアにいるか否かを判定する干渉チェック工程と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいると判定した場合には、前記プレス装置を停止させるプレス停止工程と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいないと判定した場合には、前記プレス装置に前記金型により前記ワークを加工させるプレス工程と
を備え、
前記プレス始動工程は、前記第1の搬送装置が前記プレス装置に前記ワークを搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行され、
前記干渉チェック角度は、前記金型と前記第1の搬送装置とが干渉するときの前記クランク軸の干渉角度と、急停止時間の間に前記スライドが移動する距離とに基づいて、前記干渉角度よりも前記始動角度側に設定されており、
前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記ワークを搬入後に前記金型干渉エリアを離脱するまでにかかる離脱時間と、前記クランク軸が前記始動角度から前記干渉チェック角度に移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも前記離脱時間よりも短く、
前記プレス始動工程、前記干渉チェック工程、前記プレス停止工程及び前記プレス工程は、複数のプレス装置のそれぞれに対して実行され、
前記遅延時間は、前記プレス装置毎に設定される
プレスシステムの制御方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸と、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドとを含み、前記スライドに装着された金型によりワークへ加工を行うプレス装置と、
前記プレス装置に前記ワークを搬入する第1の搬送装置と、
前記プレス装置と前記第1の搬送装置とを制御する制御手段と、
遅延時間設定画面を表示可能に構成された表示装置と
を備え、
前記制御手段は、
所定の始動角度で停止している前記クランク軸を回転させ、前記スライドを下方に移動開始させるプレス始動処理と、
前記クランク軸が所定の干渉チェック角度に到達した際に、前記第1の搬送装置が前記金型と干渉する金型干渉エリアにいるか否かを判定する干渉チェック処理と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいると判定した場合には、前記プレス装置を停止させるプレス停止処理と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいないと判定した場合には、前記プレス装置に前記ワークを加工させるプレス処理と
を実行可能に構成されており、
前記プレス始動処理は、前記第1の搬送装置が前記プレス装置に前記ワークを搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行され、
前記干渉チェック角度は、前記金型と前記第1の搬送装置とが干渉するときの前記クランク軸の干渉角度と、急停止時間の間に前記スライドが移動する距離とに基づいて、前記干渉角度よりも前記始動角度側に設定されており、
前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記ワークを搬入後に前記金型干渉エリアを離脱するまでにかかる離脱時間と、前記クランク軸が前記始動角度から前記干渉チェック角度に移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも前記離脱時間よりも短く、
前記プレス装置は、複数設置されており、
前記遅延時間は、前記プレス装置毎に異なる時間を設定可能であり、
前記遅延時間設定画面は、
所定の前記遅延時間の経過後に前記プレス装置を始動させる先行起動と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアから離脱した後に前記プレス装置を始動させる非先行起動と
を切り替え可能に構成されている
プレスシステム。
【請求項2】
前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアを離脱した後に前記クランク軸が前記干渉チェック角度に到達するように設定される
請求項1に記載のプレスシステム。
【請求項3】
前記プレス装置から前記ワークを搬出する第2の搬送装置を備え、
前記制御手段は、所定の待機位置で待機している前記第2の搬送装置を始動させるロボット始動処理を実行可能に構成されており、
前記ロボット始動処理の始動タイミングは、所定の先行始動条件に基づいて、前記クランク軸が所定の進入可能角度に到達するよりも前のタイミングに設定される
請求項1又は2に記載のプレスシステム。
【請求項4】
前記先行始動条件は、前記第2の搬送装置が始動してから前記金型干渉エリアに進入するまでにかかる時間である
請求項3に記載のプレスシステム。
【請求項5】
所定の始動角度で停止しているプレス装置のクランク軸を回転させ、前記クランク軸の回転に応じて上下移動するスライドを下方に移動開始させるプレス始動工程と、
前記クランク軸が所定の干渉チェック角度に到達した際に、前記プレス装置にワークを搬入する第1の搬送装置が前記スライドに装着された金型と干渉する金型干渉エリアにいるか否かを判定する干渉チェック工程と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいると判定した場合には、前記プレス装置を停止させるプレス停止工程と、
前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアにいないと判定した場合には、前記プレス装置に前記金型により前記ワークを加工させるプレス工程と
を備え、
前記プレス始動工程は、前記第1の搬送装置が前記プレス装置に前記ワークを搬入した後、所定の遅延時間の経過後に実行され、
前記干渉チェック角度は、前記金型と前記第1の搬送装置とが干渉するときの前記クランク軸の干渉角度と、急停止時間の間に前記スライドが移動する距離とに基づいて、前記干渉角度よりも前記始動角度側に設定されており、
前記遅延時間は、前記第1の搬送装置が前記ワークを搬入後に前記金型干渉エリアを離脱するまでにかかる離脱時間と、前記クランク軸が前記始動角度から前記干渉チェック角度に移動するまでにかかるチェック角度移動時間とに基づいて設定され、少なくとも前記離脱時間よりも短く、
前記プレス始動工程、前記干渉チェック工程、前記プレス停止工程及び前記プレス工程は、複数のプレス装置のそれぞれに対して実行され、
前記遅延時間は、前記プレス装置毎に設定され、
所定の前記遅延時間の経過後に前記プレス装置を始動させる先行起動と、前記第1の搬送装置が前記金型干渉エリアから離脱した後に前記プレス装置を始動させる非先行起動とを切り替え可能に構成された遅延時間設定画面を表示装置に表示させる
プレスシステムの制御方法。