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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025094788
(43)【公開日】2025-06-25
(54)【発明の名称】フィルタベント装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/004 20060101AFI20250618BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20250618BHJP
【FI】
G21C9/004
G21C13/00 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210540
(22)【出願日】2023-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢彰
(72)【発明者】
【氏名】福井 宗平
【テーマコード(参考)】
2G002
【Fターム(参考)】
2G002CA01
2G002DA01
2G002EA01
(57)【要約】
【課題】湿式フィルタとして働く液体のベントガスの放出に伴う揺動を抑制し、ベントガスが通過する不揮発性液体の液層の厚さを確保して、不揮発性液体による有機よう素の捕集量の低下を抑制するフィルタベント装置を提供する。
【解決手段】フィルタベント装置は、ベントガス中の放射性物質をフィルタベント容器1の内部に保持されたスクラビング水6により捕集するスクラビング水処理部6Aと、スクラビング水処理部6Aを通過したベントガス中の放射性物質を不揮発性液体7により捕集する不揮発性液体処理部7Aと、不揮発性液体7の液面を貫通するように設けられており、不揮発性液体7の液面を部分同士に隔てて不揮発性液体7の揺動を抑制する揺動抑制手段10と、原子炉格納容器とフィルタベント容器1とを接続する入口配管と、入口配管に設けられており、原子力発電プラントの通常運転時に閉止され、原子力発電プラントの事故時に開放される入口弁と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電プラントの原子炉格納容器から排出されるベントガス中の放射性物質を除去するフィルタベント装置であって、
前記ベントガス中の放射性物質をフィルタベント容器の内部に保持されたスクラビング水により捕集するスクラビング水処理部と、
前記フィルタベント容器の内部、または、前記フィルタベント容器とは異なる捕集容器の内部に構成され、前記スクラビング水処理部を通過した前記ベントガス中の放射性物質を不揮発性液体により捕集する不揮発性液体処理部と、
前記不揮発性液体処理部において、前記不揮発性液体の液面を貫通するように設けられており、前記不揮発性液体の液面を部分同士に隔てて前記不揮発性液体の揺動を抑制する揺動抑制手段と、
前記原子炉格納容器と前記フィルタベント容器とを接続して前記ベントガスを前記フィルタベント容器に供給する入口配管と、
前記入口配管に設けられており、前記原子力発電プラントの通常運転時に閉止され、前記原子力発電プラントの事故時に開放される入口弁と、を有するフィルタベント装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタベント装置であって、
前記不揮発性液体は、前記フィルタベント容器の内部に保持されており、且つ、前記スクラビング水処理部を構成する前記スクラビング水から相分離して、前記スクラビング水の上方に前記不揮発性液体処理部としての液層を形成しており、
前記揺動抑制手段は、前記フィルタベント容器の内部に、前記不揮発性液体処理部としての液層を貫通するように設けられており、前記不揮発性液体の液層を部分同士に隔てて前記不揮発性液体の揺動を抑制するフィルタベント装置。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルタベント装置であって、
前記不揮発性液体は、前記フィルタベント容器の下流に設けられた捕集容器に保持されて前記捕集容器内にて前記不揮発性液体処理部を構成しており、
前記揺動抑制手段は、前記捕集容器の内部に設けられているフィルタベント装置。
【請求項4】
請求項1に記載のフィルタベント装置であって、
前記揺動抑制手段は、前記液面を部分同士に隔てる形状が、矩形状の複数の仕切を形成する格子状、円形状の複数の仕切を形成する多管状、または、扇状の複数の仕切を形成する放射状であるフィルタベント装置。
【請求項5】
請求項1に記載のフィルタベント装置であって、
前記揺動抑制手段は、管材の組み合わせによって形成されているフィルタベント装置。
【請求項6】
請求項1に記載のフィルタベント装置であって、
前記不揮発性液体の液面に向かう気泡を細分化させると共に整流させる多孔が形成された気泡整流手段を有するフィルタベント装置。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルタベント装置であって、
前記不揮発性液体は、前記フィルタベント容器の内部に保持されており、
前記揺動抑制手段は、前記フィルタベント容器の内部に設けられており、
前記気泡整流手段は、前記フィルタベント容器の内部における前記揺動抑制手段の下方に設けられているフィルタベント装置。
【請求項8】
請求項6に記載のフィルタベント装置であって、
前記不揮発性液体は、前記フィルタベント容器の下流に設けられた捕集容器に保持されており、
前記揺動抑制手段は、前記捕集容器の内部に設けられており、
前記気泡整流手段は、前記捕集容器の内部における前記揺動抑制手段の下方に設けられているフィルタベント装置。
【請求項9】
請求項6に記載のフィルタベント装置であって、
前記気泡整流手段は、パンチングメタルによって形成されているフィルタベント装置。
【請求項10】
請求項1に記載のフィルタベント装置であって、
前記不揮発性液体は、前記フィルタベント容器の下流に設けられた捕集容器に保持されており、
前記捕集容器は、横置き型の容器であり、鉛直方向の幅が水平方向の幅よりも短く設けられた内槽に前記不揮発性液体を保持しているフィルタベント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントの重大事故時に、原子炉格納容器からベントガスを排出する必要が生じたときに、ベントガス中の放射性物質を除去するフィルタベント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントには、ベント時の放射性物質の放出を抑制するために、フィルタベントシステムの設置が進められてきている。原子炉の異常時や事故時には、原子炉格納容器の内部が高圧になり、原子炉格納容器が破損するおそれがある、そのため、原子炉格納容器の内部の圧力を下げる措置として、原子炉格納容器の内部のガスを排出するベントが行われる。原子炉格納容器から排出されるベントガスは、湿式フィルタを用いるフィルタベント容器に通され、主要な放射性物質を除去されてから環境中に放出される。
【0003】
ベントガスに含まれる放射性物質としては、希ガス、エアロゾル、無機よう素、有機よう素等がある。一般的なフィルタベント容器は、湿式フィルタとして働くスクラビング水を保持している。スクラビング水は、主にベントガス中のエアロゾルや無機よう素を捕集する。ベントガスは、スクラビング水に通された後に、金属フィルタや吸着材による処理を受ける。金属フィルタは、ベントガス中に残存するエアロゾルを捕集する。吸着材は、主にベントガス中の有機よう素を捕集する。
【0004】
有機よう素を捕集する吸着材としては、銀ゼオライトなどがある。しかし、吸着材は、水分の付着によって吸着力が低下するため、吸着材の使用量を抑制する観点等からは、ベントガス中の水分をできるだけ除去することが望まれる。吸着材を収容した乾式フィルタの容器に水分を除去する機構を設置する方法もあるが、緊急時に無動力で作動する湿分除去システムの構築は容易ではない。また、吸着容量を大容量化すると、乾式フィルタの容器の設置場所が限定されるという問題を生じる。
【0005】
このような問題に対し、ベントガス中の有機よう素を捕集する手段として、吸着材に代えて、イオン液体等の不揮発性液体を用いることが検討されている。特許文献1には、有機よう素を捕集することが可能な不揮発性液体をスクラビング水と共に用いる技術が記載されている。特許文献1には、不揮発性液体が、スクラビング水と混合せず、スクラビング水の上方に液層を形成する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-223535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フィルタベント容器の底部には、ベントガスを容器内に放出するノズルが備えられる。ベントガスは、フィルタベント容器に溜められた湿式フィルタとして働く液体中にバブリングされた状態で放出される。ベントガスが液体中に放出されると、ノズルからの噴出流や、気泡の破壊や合体等による乱流化等によって、不揮発性液体が揺動する場合がある。
【0008】
不揮発性液体による有機よう素の捕集量は、不揮発性液体とベントガスとの接触時間に左右される。不揮発性液体中におけるベントガスの移動距離が長いほど、接触時間が長くなり、有機よう素の捕集量が増加する傾向がある。しかし、不揮発性液体が揺動すると、ベントガスが通過する不揮発性液体の厚さが変動する。厚さが一時的に薄くなった領域では、不揮発性液体とベントガスとの接触時間が短くなるため、不揮発性液体による有機よう素の捕集量が低下するという問題を生じる。
【0009】
特許文献1には、フィルタベント容器の内部で、スクラビング水と不揮発性液体とが互いに相分離した状態で存在することが記載されている。不揮発性液体の揺動による有機よう素の捕集量の低下は、不揮発性液体がスクラビング水の上方に上層を形成している場合の他に、容器内で不揮発性液体が単独で用いられる場合にも生じ得る。
【0010】
特許文献1には、フィルタベント容器の内部に、不揮発性液体とベントガスとの接触時間を増加させるための流路絞り板を備えることが記載されている。しかし、この流路絞り板は、不揮発性液体部分の水路長を長くするというものである。原子炉格納容器の内部からは、多量のベントガスが排出されることも想定される。ベントガスが通過する流路の断面積を確保しながらも、不揮発性液体とベントガスとの接触時間を確保できるフィルタベントシステムが望まれている。
【0011】
そこで、本発明は、湿式フィルタとして働く液体のベントガスの放出に伴う揺動を抑制し、ベントガスが通過する不揮発性液体の液層の厚さを確保して、不揮発性液体による有機よう素の捕集量の低下を抑制するフィルタベント装置を提供することを目的とする。
【0012】
前記課題を解決するために本発明に係るフィルタベント装置は、原子力発電プラントの原子炉格納容器から排出されるベントガス中の放射性物質を除去するフィルタベント装置であって、前記ベントガス中の放射性物質をフィルタベント容器の内部に保持されたスクラビング水により捕集するスクラビング水処理部と、前記フィルタベント容器の内部、または、前記フィルタベント容器とは異なる捕集容器の内部に構成され、前記スクラビング水処理部を通過した前記ベントガス中の放射性物質を不揮発性液体により捕集する不揮発性液体処理部と、前記不揮発性液体処理部において、前記不揮発性液体の液面を貫通するように設けられており、前記不揮発性液体の液面を部分同士に隔てて前記不揮発性液体の揺動を抑制する揺動抑制手段と、前記原子炉格納容器と前記フィルタベント容器とを接続して前記ベントガスを前記フィルタベント容器に供給する入口配管と、前記入口配管に設けられており、前記原子力発電プラントの通常運転時に閉止され、前記原子力発電プラントの事故時に開放される入口弁と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、湿式フィルタとして働く液体のベントガスの放出に伴う揺動を抑制し、ベントガスが通過する不揮発性液体の液層の厚さを確保して、不揮発性液体による有機よう素の捕集量の低下を抑制するフィルタベント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】原子力発電プラントに設置される第1実施形態に係るフィルタベント装置を模式的に示す図。
図2】フィルタベント容器の構造を模式的に示す断面図。
図3】第1実施形態に係るフィルタベント容器の一例を模式的に示す断面図。
図4】揺動抑制手段の形状例を模式的に示すフィルタベント容器の断面図。
図5】揺動抑制手段の形状例を模式的に示すフィルタベント容器の断面図。
図6】揺動抑制手段の形状例を模式的に示すフィルタベント容器の断面図。
図7】第1実施形態に係るフィルタベント容器の一例を模式的に示す断面図。
図8】原子力発電プラントに設置される第2実施形態に係るフィルタベント装置を模式的に示す図。
図9】第2実施形態に係る捕集容器の一例を模式的に示す断面図。
図10】第2実施形態に係る捕集容器の一例を模式的に示す断面図。
図11】第2実施形態に係る捕集容器の一例を模式的に示す断面図。
図12】第2実施形態に係る捕集容器の一例を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るフィルタベント装置について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において、共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、原子力発電プラントに設置される第1実施形態に係るフィルタベント装置を模式的に示す図である。図1に示すように、原子力発電プラントには、原子炉圧力容器110を格納した原子炉格納容器120が備えられる。原子炉格納容器120には、フィルタベント装置100が配管を介して接続される。
【0017】
フィルタベント装置100は、原子力発電プラントの原子炉格納容器120から排出されるベントガス中の放射性物質を除去する装置である。フィルタベント装置100は、湿式フィルタとして働く液体を保持するフィルタベント容器1を備える。フィルタベント装置100は、原子炉格納容器120の外部に設置される。フィルタベント装置100は、例えば、原子炉建屋の地下や、原子炉建屋の外部等に設置される。
【0018】
原子力発電プラントにおいて、原子炉の重大事故時には、原子炉圧力容器110が損傷し、原子炉圧力容器110の内部の放射性物質を含む蒸気が原子炉格納容器120の内部に放出され得る。原子炉格納容器120の内部の圧力が過度に高くなると、原子炉格納容器120が損傷して、放射性物質の大規模漏洩が起こるおそれがある。このような事態を防ぐために、原子炉格納容器120の内部の圧力を下げる措置としてベントが行われる。
【0019】
ベント時には、原子炉格納容器120の内部のガスが、原子炉格納容器120から排出される。原子炉格納容器120からベントされるベントガスは、冷却水が蒸発した高温・高圧の蒸気や、原子炉圧力容器110から放出された放射性物質を含む。そのため、ベントガスは、フィルタベント容器1に通されて、主要な放射性物質を捕集されてから、原子力発電プラントの外部に放出される。
【0020】
原子炉格納容器120は、原子炉圧力容器110が収納されたドライウェル121と、圧力抑制プールが形成されたウェットウェル122と、を備えている。ウェットウェル122には、ドライウェル121中の蒸気や、主蒸気系から逃された蒸気が、不図示のベント管を介して流入する。
【0021】
原子炉の重大事故時には、ドライウェル121やウェットウェル122のガスが、入口配管2を通じて、フィルタベント容器1に送られる。入口配管2は、原子炉格納容器120とフィルタベント容器1とを接続する配管である。図1において、入口配管2は、ドライウェルベント配管2a、ウェットウェルベント配管2bおよび共通配管2cによって構成されている。
【0022】
ドライウェル121には、ドライウェル121のベントに使用するドライウェルベント配管2aの一端が接続している。ドライウェルベント配管2aの他端は、共通配管2cに接続している。ドライウェルベント配管2aには、常閉型の隔離弁である入口弁3aが備えられている。入口弁3aは、原子力発電プラントの通常運転時に閉止され、原子力発電プラントの事故時に開放される。入口弁3aは、遮蔽壁の外部からの遠隔操作や現場における操作によって開放される。
【0023】
ウェットウェル122には、ウェットウェル122のガスのベントに使用するウェットウェルベント配管2bの一端が接続している。ウェットウェルベント配管2bの他端は、共通配管2cに接続している。ウェットウェルベント配管2bには、常閉型の隔離弁である入口弁3bが備えられている。入口弁3bは、原子力発電プラントの通常運転時に閉止され、原子力発電プラントの事故時に開放される。入口弁3bは、遮蔽壁の外部からの遠隔操作や現場における操作によって開放される。
【0024】
共通配管2cは、一端がドライウェルベント配管2aとウェットウェルベント配管2bとに接続しており、他端がフィルタベント容器1の内部まで延びている。ドライウェル121のガスや、ウェットウェル122のガスは、ドライウェルベント配管2aやウェットウェルベント配管2bを流れた後、共通配管2cを通じて、フィルタベント容器1の内部に流入する。
【0025】
図2は、フィルタベント容器の構造を模式的に示す断面図である。図2には、湿式フィルタとしてスクラビング水6と不揮発性液体7とを収容したフィルタベント容器1の構造を示す。図2において、矢印は、ベントガスの流れを示す。図2に示すように、フィルタベント容器1は、分配管4と、ベントノズル5と、スクラビング水6と、不揮発性液体7と、金属フィルタ8と、を備える。フィルタベント容器1は、スクラビング水6と不揮発性液体7とが貯留されるように構成されている。なお、スクラビング水6がスクラビング水処理部6Aを構成し、不揮発性液体7が不揮発性液体処理部7Aを構成している。
【0026】
フィルタベント容器1は、ベントガス中の放射性物質を捕集する処理を行う容器である。フィルタベント容器1は、耐熱性および耐圧性を有する密閉型の容器によって形成される。フィルタベント容器1には、湿式フィルタとして働く液体や、金属フィルタ8が収容される。
【0027】
図2において、フィルタベント容器1の内部には、湿式フィルタとして働くスクラビング水6と不揮発性液体7が保持されている。スクラビング水6と不揮発性液体7とは、互いに相分離した状態で収容されており、上下に積層された二層液体を形成している。スクラビング水6は、二層液体の下層を形成している。不揮発性液体7は、二層液体の上層を形成している。
【0028】
フィルタベント容器1の入側には、入口配管2が接続されている。入口配管2の上流端は、原子炉格納容器120のドライウェル121やウェットウェル122に接続されている。入口配管2の下流側は、フィルタベント容器1の側壁を貫通して、容器内の下部まで延伸するように設置される。入口配管2の下流端には、分配管4が接続される。分配管4には、複数のベントノズル5が接続される。
【0029】
ベントノズル5は、原子炉格納容器120から排出されたベントガスを、フィルタベント容器1の内部の液体中に噴出させるノズルである。ベントノズル5は、フィルタベント容器1の内部の下部側に設置される。複数のベントノズル5が、互いに間隔を空けて分配管4に接続される。ベントノズル5は、フィルタベント容器1の内部の液体中に浸漬される。
【0030】
ベントノズル5としては、例えば、ベンチュリノズルが備えられる。ベンチュリノズルは、ベントガスをスロート部に流入させて負圧を発生させる。ベンチュリ効果による負圧によってベントガス中に液滴を噴霧して、ベントガスと液体との接触面積を増大させる。ベントノズル5によると、湿式フィルタとして働く液体によるベントガス中の放射性物質の捕集を効率的に行うことが可能になる。
【0031】
スクラビング水6は、無機よう素と反応する水溶液である。スクラビング水6は、ベントノズル5を浸漬させる深さ、且つ、金属フィルタ8の下方に気相部が形成される深さまで、フィルタベント容器1の内部に溜められる。スクラビング水6は、主に、ベントガス中のエアロゾルや無機よう素を捕集する。
【0032】
不揮発性液体7は、不揮発性を示す液体であり、カチオンとアニオンによって構成される。不揮発性液体7としては、スクラビング水6よりも比重が小さい物質が用いられる。不揮発性液体7は、金属フィルタ8の下方に気相部が形成される深さまで、スクラビング水6の上方に溜められる。不揮発性液体7は、主に、ベントガス中の有機よう素を捕集する。ベントガス中の有機よう素は、よう化メチルが主体であり、主に気体状で存在する。
【0033】
不揮発性液体7としては、イオン液体や、不揮発性を示す界面活性剤溶液等を用いることができる。不揮発性液体7の具体例としては、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムクロリドや、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムジシアナミド等が挙げられる。また、有機カチオンとアニオンで構成されるスクラビング水6よりも比重が小さい疎水性の物質を用いることができる。
【0034】
有機カチオンとしては、イミダゾリウム、ピリジニウム、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、ピぺリジニウム等が挙げられる。アニオンとしては、例えば、ハロゲン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート等の無機アニオンや、アセテート、スルホネート、イミデート等の有機アニオンが挙げられる。
【0035】
金属フィルタ8は、容器内の気相部に放出されたエアロゾルを、濾材に対する衝突や、拡散による濾材への付着等によって捕集する。金属フィルタ8は、フィルタベント容器1の内部の上部側に備えられる。金属フィルタ8は、金属繊維、金属メッシュ等の濾材が積層されて形成される。
【0036】
フィルタベント容器1の出側には、出口配管9が接続されている。出口配管9は、フィルタベント容器1と外部への放出口とを接続する配管である。出口配管9の上流端は、フィルタベント容器1の内部と連通するように、金属フィルタ8の二次側であるフィルタベント容器1の上部に接続される。出口配管9の下流端は、原子炉建屋に設けられた放出口や排気筒に接続される。
【0037】
原子力発電プラントにおけるベント時には、入口配管2に設けられた入口弁3a,3bが開放される。入口弁3a,3bが開放されると、原子炉格納容器120の内部の放射性物質を含む蒸気が、入口配管2を通じて、フィルタベント容器1に流入する。原子炉格納容器120からベントされたベントガスは、ベントノズル5によってスクラビング水6の液中に噴射される。
【0038】
スクラビング水6の液中に噴出したベントガスは、バブリングされた状態になる。ベントガスの気泡は、容器内の液中を上昇し、スクラビング水6の液層を通過した後に、不揮発性液体7の液層を通過する。ベントガスの気泡が液層を通過する間に、ベントガス中の放射性物質がスクラビング水6や不揮発性液体7と接触して捕集される。
【0039】
ベントガス中の放射性物質のうち、エアロゾル、無機よう素は、スクラビング水6への溶解や、スクラビング水6との反応によって捕集される。有機よう素は、不揮発性液体7に溶解し、不揮発性液体7と反応する。有機よう素を形成していた放射性よう素は、液中に捕捉される。液相部から気相部に放出されたエアロゾルは、金属フィルタ8に捕集される。主要な放射性物質が除去されたベントガスは、出口配管9を通じて環境中に放出される。
【0040】
図2に示すようなフィルタベント容器1では、原子炉格納容器120からベントされたベントガスが、バブリングされた状態で液中に噴射される。ベントガスが液中に噴出すると、ベントノズル5からの噴出流や、気泡の破壊や合体等による乱流化等によって、容器内に溜められた液体が揺動する場合がある。
【0041】
液体が揺動すると、界面が波打ちを生じ、液層の下端から上端までの距離が変化する。図2に示すように、スクラビング水6が下層を形成し、不揮発性液体7が上層を形成している場合であって、ベントガスがスクラビング水6の液中に噴射される場合には、スクラビング水6と不揮発性液体7との界面や不揮発性液体7と気相部との界面が波打ちを生じる。界面の波打ちによって、スクラビング水6の液層の厚さや、不揮発性液体7の液層の厚さが変動し、厚さが一時的に薄くなった領域が局所的に生じるようになる。
【0042】
液層の厚さが薄くなった領域では、液中におけるベントガスの気泡の移動距離が短くなり、液体とベントガスとの接触時間が短くなる。不揮発性液体7とベントガスとは、均一性高く混合ないし接触させることが望まれるが、不揮発性液体7とベントガスとの接触時間が短くなると、不揮発性液体7による放射性物質の捕集量が低下するという問題を生じる。
【0043】
一般に、湿式フィルタとして働く液体とベントガスとの接触時間を確保する方法としては、液体の容量を増やす方法や、特許文献1のように流路を絞る方法があり得る。しかし、液体の容量を増やす方法では、コストの増加や容器の大型化が問題となる。また、流路を絞る方法では、ベントガスの気泡が通過する液体の断面積が小さくなるため、ベントガスの処理量が少なくなる可能性がある。
【0044】
そこで、本実施形態に係るフィルタベント装置100では、フィルタベント容器1の内部に、不揮発性液体7の揺動を抑制する揺動抑制手段10を設置する。揺動抑制手段10は、図3に示すように、不揮発性液体7の液面を貫通する構造に設けられる。また、揺動抑制手段10は、図4図5および図6に示すように、不揮発性液体7の液面を部分同士に隔てる構造に設けられる。
【0045】
図3は、第1実施形態に係るフィルタベント容器の一例を模式的に示す断面図である。図3には、湿式フィルタとしてスクラビング水6(スクラビング水処理部6A)と不揮発性液体7(不揮発性液体処理部7A)とを収容したフィルタベント容器1に揺動抑制手段10を不揮発性液体処理部7Aの部分に設置した構造を示す。図3において、矢印は、ベントガスの流れを示す。図3に示すように、本実施形態に係るフィルタベント容器1は、分配管4と、ベントノズル5と、スクラビング水6と、不揮発性液体7と、金属フィルタ8と、揺動抑制手段10と、を備える。
【0046】
揺動抑制手段10は、不揮発性液体7の液面、すなわち、不揮発性液体7と気相部との界面を鉛直方向に貫通する構造に設けられる。揺動抑制手段10は、上端が不揮発性液体7の液面よりも上方に位置し、且つ、下端が不揮発性液体7の液面よりも下方に位置するように設置される。揺動抑制手段10は、スクラビング水6と不揮発性液体7とが二層液体を形成する場合、スクラビング水6の上方に位置する不揮発性液体7の液層を貫通する構造に設けられることが好ましい。また、スクラビング水6の上方に位置する不揮発性液体7の液層を部分同士に隔てる構造に設けられることが好ましい。
【0047】
また、揺動抑制手段10は、不揮発性液体処理部7Aにおける不揮発性液体7の液面、すなわち、不揮発性液体7と気相部との界面を水平方向に並列した部分同士に隔てる構造に設けられる。揺動抑制手段10は、不揮発性液体7の液面を、より小さい面積を持つ水平方向に並列した部分領域に細分化し、細分化された部分領域同士を互いに隔離された状態とする。
【0048】
このような揺動抑制手段10によると、ベントガスが液中に放出されたとき、不揮発性液体7の揺動を抑制できる。容器内に溜められた液体に噴出流やバブリングが加わったとしても、噴出流や乱流化による波動が水平方向に伝播し難くなり、不揮発性液体7が波打ちを起こし難くなる。また、ベントノズル5から噴出したベントガスの気泡の流路が細分化されるため、気泡を整流する作用が得られる。このような不揮発性液体7の揺動を抑制する作用と気泡を整流する作用とによって、不揮発性液体7の液層の厚さの変動が抑制されるため、液層の厚さが薄い領域が生じ難くなる。ベントガスが通過する液層の厚さを確保して、不揮発性液体7とベントガスとの接触時間を適切に確保することが可能になるため、不揮発性液体7による有機よう素の捕集量の低下を抑制することができる。
【0049】
フィルタベント容器1の内部において、揺動抑制手段10の上端は、金属フィルタ8よりも下方であって、不揮発性液体7の液面の最高位置よりも上方に配置されることが好ましい。液面の最高位置とは、不揮発性液体7と気相部との界面がフィルタベント容器1の稼働中に到達する最高の位置を意味する。このような配置であると、周囲との干渉を回避しつつ、不揮発性液体7の揺動を効果的に抑制できる。
【0050】
フィルタベント容器1の内部において、揺動抑制手段10の下端は、ベントノズル5よりも上方であって、スクラビング水6と不揮発性液体7との界面よりも下方、且つ、フィルタベント容器1における最低水位よりも下方に配置されることが好ましい。最低水位とは、フィルタベント容器1の稼働中にスクラビング水6の蒸発によって低下する可能性がある液面の最低の位置を意味する。このような配置であると、フィルタベント容器1の稼働中に、スクラビング水6の上方の不揮発性液体7の揺動を液層の全高にわたって抑制できる。
【0051】
揺動抑制手段10は、フィルタベント容器1の内部を鉛直方向からみた平面視において、ベントノズル5の上方の気泡が到達する範囲に少なくとも設置することが好ましく、不揮発性液体7の液面の略全体を覆う範囲に設置することがより好ましい。
【0052】
揺動抑制手段10は、金属製の管材、板材、これらの組み合わせ等によって形成できる。液面を部分同士に隔てる矩形状や円形状の仕切を形成する管材同士や、板材同士や、管材と板材とを互いに接合することによって、液面の所定の範囲を覆うように揺動抑制手段10を形成できる。揺動抑制手段10の材料としては、例えば、ステンレス鋼を用いることができる。ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316、SUS316L、SUS304等が挙げられる。揺動抑制手段10は、例えば、フィルタベント容器1の内面や入口配管2の外面に対して溶接等で固定できる。
【0053】
図4図5および図6は、揺動抑制手段の形状例を模式的に示すフィルタベント容器の断面図である。図4図5および図6には、揺動抑制手段10が設置されたフィルタベント容器1の内部を上方からみた構造を示す。図4図5および図6に示すように、揺動抑制手段10は、不揮発性液体7の液面を部分同士に隔てる形状を、不揮発性液体7の液面が細分化される限り、適宜の形状に設けることができる。
【0054】
図4には、不揮発性液体7の液面を部分同士に隔てる形状が格子状である形態(揺動抑制手段10A)を示す。格子状の揺動抑制手段10Aは、矩形状の複数の仕切を形成している。格子状の揺動抑制手段10Aは、例えば、断面が矩形状の管材同士を接合する方法や、板材を組み合わせる方法等で形成できる。格子状の揺動抑制手段10Aによると、仕切同士を強固に接合して高い耐久性を得ることができる。
【0055】
図5には、不揮発性液体7の液面を部分同士に隔てる形状が多管状である形態(揺動抑制手段10B)を示す。多管状の揺動抑制手段10Bは、円形状の複数の仕切を形成している。多管状の揺動抑制手段10Bは、例えば、断面が円形状の管材同士を接合する方法等で形成できる。多管状の揺動抑制手段10Bによると、一般的な円管の利用によって製造コストを低減できる。
【0056】
図6には、不揮発性液体7の液面を部分同士に隔てる形状が放射状である形態(揺動抑制手段10C)を示す。放射状の揺動抑制手段10Cは、扇状の複数の仕切を形成している。放射状の揺動抑制手段10Cは、例えば、板材を組み合わせる方法等で形成できる。放射状の揺動抑制手段10Cによると、不揮発性液体7の液面を、少ない部材によって広範囲に細分化できる。
【0057】
なお、揺動抑制手段10によって互いに隔てられる部分の個数は、特に限定されるものではない。不揮発性液体7の液面は、揺動抑制手段10が無い場合と比較して細分化される限り、任意の形状や任意の個数の部分同士に隔てることができる。不揮発性液体7の液面を部分同士に隔てる形状は、一種の形状で構成されてもよいし、複数種の形状で構成されてもよい。
【0058】
図7は、第1実施形態に係るフィルタベント容器の一例を模式的に示す断面図である。図7には、湿式フィルタとしてスクラビング水6と不揮発性液体7とを収容したフィルタベント容器1に揺動抑制手段10と気泡整流手段12を設置した構造を示す。図7において、矢印は、ベントガスの流れを示す。図7に示すように、フィルタベント容器1の内部には、揺動抑制手段10に加え、気泡整流手段12を設置することもできる。
【0059】
気泡整流手段12は、多孔が形成された部材によって構成される。気泡整流手段12は、不揮発性液体の液面に向かう気泡を細分化させると共に、不揮発性液体の液面に向かう気泡を整流させるための手段である。気泡整流手段12としては、部材を上下に貫通する複数の貫通孔が形成された部材を用いることができる。貫通孔は、所定の直径よりも小さい気泡のみが通過可能な内径に設けられ、所定の間隔を空けて配設される。
【0060】
このような気泡整流手段12によると、ベントガスが液中に放出されたとき、ベントガスの気泡を細分化させて、ベントガスと不揮発性液体7との接触面積を拡大させることができる。また、不揮発性液体7の液面に向かう気泡を整流させて、気泡同士の合体や液体の乱流化を抑制できる。不揮発性液体7に対して小さい気泡を通過させることができるため、不揮発性液体7による有機よう素の捕集量を向上できる。また、揺動抑制手段10を単独で用いる場合と比較して、不揮発性液体7の揺動をより抑制できる。
【0061】
フィルタベント容器1の内部において、気泡整流手段12は、揺動抑制手段10よりも下方に配置されることが好ましい。また、気泡整流手段12は、ベントノズル5よりも上方に配置されることが好ましい。気泡整流手段12は、揺動抑制手段10とは別体として配置されてもよいし、揺動抑制手段10と一体的に配置されてもよい。
【0062】
気泡整流手段12は、フィルタベント容器1の内部を鉛直方向からみた平面視において、ベントノズル5の上方の気泡が到達する範囲に少なくとも設置することが好ましく、不揮発性液体7の液面の略全体を覆う範囲に設置することがより好ましい。
【0063】
気泡整流手段12は、例えば、パンチングメタルや、規則的に配列した複数の貫通孔が形成された板材等によって形成できる。気泡整流手段12の材料としては、例えば、ステンレス鋼を用いることができる。ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316、SUS316L、SUS304等が挙げられる。気泡整流手段12は、例えば、フィルタベント容器1の内面や入口配管2の外面に対して溶接等で固定できる。
【0064】
以上の揺動抑制手段10を備えたフィルタベント装置100によると、容器内へのベントガスの放出に伴う不揮発性液体7の揺動を抑制できるため、ベントガスの気泡が通過する不揮発性液体7の液層の厚さを、一定以上の厚さに安定的に維持できる。不揮発性液体7とベントガスとの接触時間を一定以上に確保して、不揮発性液体7とベントガスとを、均一性高く混合ないし接触させることが可能になる。よって、湿式フィルタとして働く不揮発性液体7のベントガスの放出に伴う揺動を抑制し、ベントガスが通過する液層の厚さを確保して、不揮発性液体7による有機よう素の捕集量の低下を抑制することができる。そのため、環境中への放射性物質の漏洩を安定的に防止できる。
【0065】
特に、以上の揺動抑制手段10を備えたフィルタベント装置100によると、フィルタベント容器1の内部において、ベントガスが通過する流路を絞る必要がないため、ベントガスが通過する流路について、大きい断面積を容易に確保することが可能である。断面積の拡大によって、ベントガスの処理可能量が多くなるため、多量のベントガスの放出に対応できる。フィルタベント容器1の内部に溜める不揮発性液体7の容量を抑制できるため、コストの増大や、容器の大型化を回避できる。
【0066】
また、揺動抑制手段10と気泡整流手段12とを備えたフィルタベント装置100によると、気泡整流手段12によって微細化すると共に整流した気泡を、揺動抑制手段10の周辺に到達させることができる。ベントガスの気泡を細分化させて、ベントガスと不揮発性液体7との接触面積を拡大させると共に、スクラビング水6や不揮発性液体7の乱流化を抑制して、不揮発性液体7の揺動を抑制できる。そのため、不揮発性液体7による有機よう素の捕集量の低下を抑制し、有機よう素の捕集量を高い水準に維持できる。
【0067】
<第2実施形態>
図8は、原子力発電プラントに設置される第2実施形態に係るフィルタベント装置を模式的に示す図である。図8に示すように、原子力発電プラントには、ベントガス中の放射性物質を除去するフィルタベント装置として、フィルタベント容器1と捕集容器15とを備えたフィルタベント装置200を備えることもできる。
【0068】
フィルタベント装置200は、前記のフィルタベント装置100と同様に、原子力発電プラントの原子炉格納容器120から排出されるベントガス中の放射性物質を除去する装置である。フィルタベント装置200は、湿式フィルタとして働くスクラビング水6を保持するフィルタベント容器1と、湿式フィルタとして働く不揮発性液体7を保持する捕集容器15と、を備える。フィルタベント装置200は、前記のフィルタベント装置100と同様に、原子炉格納容器120の外部に設置される。
【0069】
フィルタベント装置200において、原子炉格納容器120には、ドライウェルベント配管2a、ウェットウェルベント配管2bおよび共通配管2cを介して、フィルタベント容器1が接続されている。フィルタベント容器1には、中継配管14を介して、捕集容器15が接続されている。捕集容器15には、出口配管16が接続されている。
【0070】
ベント時には、原子炉格納容器120の内部からベントされるベントガスが、フィルタベント容器1と捕集容器15にこの順に通されて、主要な放射性物質を捕集されてから、原子力発電プラントの外部に放出される。
【0071】
フィルタベント装置200において、フィルタベント容器1には、湿式フィルタとしてスクラビング水6のみが用意される。ベントガス中の放射性物質のうち、エアロゾル、無機よう素は、フィルタベント容器1において捕集される。捕集容器15には、湿式フィルタとして不揮発性液体7のみが用意される。有機よう素は、捕集容器15において捕集される。
【0072】
図9は、第2実施形態に係る捕集容器の一例を模式的に示す断面図である。図9には、湿式フィルタとして不揮発性液体7を収容した捕集容器15に揺動抑制手段10を設置した構造を示す。図9において、矢印は、ベントガスの流れを示す。図9に示すように、本実施形態に係る捕集容器15は、分配管4と、ベントノズル5と、不揮発性液体7と、揺動抑制手段10と、を備える。
【0073】
捕集容器15は、ベントガス中の放射性物質を捕集する処理を行う容器である。捕集容器15では、不揮発性液体7による有機よう素の捕集が行われる。捕集容器15は、耐熱性および耐圧性を有する密閉型の容器によって形成される。図9において、捕集容器15は、縦置き型の容器として設けられている。
【0074】
捕集容器15の入側には、中継配管14が接続されている。中継配管14の上流端は、フィルタベント容器1の内部と連通するように、金属フィルタ8の二次側であるフィルタベント容器1の上部に接続される。中継配管14の下流側は、捕集容器15の側壁を貫通して、容器内の下部まで延伸するように設置される。中継配管14の下流端には、分配管4が接続される。分配管4には、複数のベントノズル5が接続される。
【0075】
捕集容器15の出側には、出口配管16が接続されている。出口配管16は、捕集容器15と外部への放出口とを接続する配管である。出口配管16の上流端は、捕集容器15の内部の気相部と連通するように、捕集容器15の上部に接続される。出口配管16の下流端は、原子炉建屋に設けられた放出口や排気筒に接続される。
【0076】
捕集容器15の内部には、不揮発性液体7が保持されて不揮発性液体処理部7Aが構成されている。不揮発性液体7は、単独で容器内に溜められて、単層液体を形成する。ベントノズル5から放出されたベントガスは、ベントノズル5の放出口から不揮発性液体7の液面までの液層を移動する。
【0077】
捕集容器15の内部には、揺動抑制手段10が設置される。揺動抑制手段10は、不揮発性液体7の液面、すなわち、不揮発性液体7と気相部との界面を貫通する構造に設けられる。また、揺動抑制手段10は、不揮発性液体7の液面、すなわち、不揮発性液体7と気相部との界面を部分同士に隔てる構造に設けられる。
【0078】
原子力発電プラントにおけるベント時には、入口配管2に設けられた入口弁3a,3bが開放される。入口弁3a,3bが開放されると、原子炉格納容器120の内部の放射性物質を含む蒸気が、入口配管2を通じて、フィルタベント容器1に流入する。フィルタベント容器1では、ベントガス中のエアロゾルや無機よう素が捕集される。液相部から気相部に放出されたエアロゾルは、金属フィルタ8に捕集される。その後、フィルタベント容器1で処理されたベントガスは、捕集容器15に流入する。ベントガスは、ベントノズル5によって不揮発性液体7の液中に噴射される。
【0079】
不揮発性液体7の液中に噴出したベントガスは、バブリングされた状態になる。ベントガスの気泡は、不揮発性液体7の液層を通過する。ベントガスの気泡が液層を通過する間に、ベントガス中の有機よう素が不揮発性液体7と接触して捕集される。ベントガス中の有機よう素は、不揮発性液体7に溶解し、不揮発性液体7と反応する。有機よう素を形成していた放射性よう素は、不揮発性液体7の液中に捕集される。主要な放射性物質が除去されたベントガスは、出口配管16を通じて環境中に放出される。
【0080】
図9に示すような捕集容器15では、フィルタベント容器1で処理されたベントガスが、バブリングされた状態で液中に噴射される。ベントガスが液中に噴出すると、ベントノズル5からの噴出流や、気泡の破壊や合体等による乱流化等によって、容器内に溜められた液体が揺動する可能性がある。このような不揮発性液体7の揺動は、捕集容器15の内部に設置された揺動抑制手段10によって抑制される。
【0081】
捕集容器15の内部において、揺動抑制手段10の上端は、不揮発性液体7の液面の最高位置よりも上方に配置されることが好ましい。液面の最高位置とは、不揮発性液体7と気相部との界面が捕集容器15の稼働中に到達する最高の位置を意味する。このような配置であると、周囲との干渉を回避しつつ、不揮発性液体7の揺動を液面付近において効果的に抑制できる。
【0082】
捕集容器15の内部において、揺動抑制手段10の下端は、ベントノズル5よりも上方であって、不揮発性液体7の液面の最低位置よりも下方に配置されることが好ましい。液面の最低位置とは、不揮発性液体7と気相部との界面が捕集容器15の稼働中に到達する最低の位置を意味する。このような配置であると、ベントノズル5との干渉を回避しつつ、不揮発性液体7の揺動を液面付近において効果的に抑制できる。
【0083】
揺動抑制手段10は、捕集容器15の内部を鉛直方向からみた平面視において、ベントノズル5の上方の気泡が到達する範囲に少なくとも設置することが好ましく、不揮発性液体7の液面の略全体を覆う範囲に設置することがより好ましい。
【0084】
揺動抑制手段10は、例えば、捕集容器15の内面や中継配管14の外面に対して溶接等で固定できる。
【0085】
図10は、第2実施形態に係る捕集容器の一例を模式的に示す断面図である。図10には、湿式フィルタとして不揮発性液体7を収容した捕集容器15に揺動抑制手段10と気泡整流手段12を設置した構造を示す。図10において、矢印は、ベントガスの流れを示す。図10に示すように、捕集容器15の内部には、揺動抑制手段10に加え、気泡整流手段12を設置することもできる。
【0086】
捕集容器15の内部において、気泡整流手段12は、揺動抑制手段10よりも下方に配置されることが好ましい。また、気泡整流手段12は、ベントノズル5よりも上方に配置されることが好ましい。気泡整流手段12は、揺動抑制手段10とは別体として配置されてもよいし、揺動抑制手段10と一体的に配置されてもよい。
【0087】
気泡整流手段12は、捕集容器15の内部を鉛直方向からみた平面視において、ベントノズル5の上方の気泡が到達する範囲に少なくとも設置することが好ましく、不揮発性液体7の液面の略全体を覆う範囲に設置することがより好ましい。
【0088】
気泡整流手段12は、例えば、パンチングメタルや、規則的に配列した複数の貫通孔が形成された板材等によって形成できる。気泡整流手段12の材料としては、例えば、ステンレス鋼を用いることができる。ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316、SUS316L、SUS304等が挙げられる。気泡整流手段12は、例えば、捕集容器15の内面や中継配管14の外面に対して溶接等で固定できる。
【0089】
以上の揺動抑制手段10を備えたフィルタベント装置200によると、容器内へのベントガスの放出に伴う不揮発性液体7の揺動を抑制できるため、ベントガスの気泡が通過する不揮発性液体7の液層の厚さを、一定以上の厚さに安定的に維持できる。不揮発性液体7とベントガスとの接触時間を一定以上に確保して、不揮発性液体7とベントガスとを、均一性高く混合ないし接触させることが可能になる。よって、湿式フィルタとして働く不揮発性液体7のベントガスの放出に伴う揺動を抑制し、ベントガスが通過する液層の厚さを確保して、不揮発性液体7による有機よう素の捕集量の低下を抑制することができる。
【0090】
特に、以上の揺動抑制手段10を備えたフィルタベント装置200によると、不揮発性液体7が、フィルタベント容器1とは異なる捕集容器15の内部に保持されるため、不揮発性液体の容量の自由度を拡張させることができる。スクラビング水を保持する容器として、既存のフィルタベント容器を用いる場合、全体の水位が上昇するため、容器のサイズによっては、不揮発性液体の充填が困難な場合がある。このような場合であっても、大容量の不揮発性液体を使用することが可能になる。フィルタベント容器1の大型化を回避できるため、システムの設置場所の確保が容易になる。
【0091】
また、揺動抑制手段10と気泡整流手段12とを備えたフィルタベント装置200によると、気泡整流手段12によって微細化すると共に整流した気泡を、揺動抑制手段10の周辺に到達させることができる。ベントガスの気泡を細分化させて、ベントガスと不揮発性液体7との接触面積を拡大させると共に、不揮発性液体7の乱流化を抑制して、不揮発性液体7の揺動を抑制できる。そのため、不揮発性液体7による有機よう素の捕集量の低下を抑制し、有機よう素の捕集量を高い水準に維持できる。
【0092】
図11は、第2実施形態に係る捕集容器の一例を模式的に示す断面図である。図11には、湿式フィルタとして不揮発性液体7を収容した横置き型の捕集容器18に揺動抑制手段10を設置した構造を示す。図11において、矢印は、ベントガスの流れを示す。図11に示すように、湿式フィルタとして働く不揮発性液体7を保持する容器は、横置き型の捕集容器18とすることもできる。
【0093】
横置き型の捕集容器18は、ベントガス中の放射性物質を捕集する処理を行う容器である。捕集容器18では、不揮発性液体7による有機よう素の捕集が行われる。捕集容器18は、耐熱性および耐圧性を有する密閉型の容器によって形成される。横置き型の捕集容器18は、鉛直方向の幅が水平方向の幅よりも短く設けられる。
【0094】
横置き型の捕集容器18の入側には、中継配管17が接続されている。中継配管17の上流端は、フィルタベント容器1の内部と連通するように、金属フィルタ8の二次側であるフィルタベント容器1の上部に接続される。中継配管17の下流側は、捕集容器18の側壁を貫通して、容器内の下部まで延伸するように設置される。中継配管17の下流端には、分配管4が接続される。分配管4には、複数のベントノズル5が接続される。
【0095】
横置き型の捕集容器18の内部には、内槽19が設けられている。内槽19は、上部が開口した横長の構造に設けられており、捕集容器18の内部の空間に対して槽内が開放されている。内槽19は、鉛直方向の幅が水平方向の幅よりも短く設けられる。内槽19の内部には、下部側を水平方向に延伸するように分配管4が敷設されて、複数のベントノズル5が互いに間隔を空けて設置される。
【0096】
横置き型の捕集容器18の出側には、出口配管20が接続されている。出口配管20は、捕集容器18と外部への放出口とを接続する配管である。出口配管20の上流端は、捕集容器18の内部の気相部と連通するように、捕集容器18の側面に接続される。出口配管20の下流端は、原子炉建屋に設けられた放出口や排気筒に接続される。
【0097】
横置き型の捕集容器18の内槽19の内部には、不揮発性液体処理部7Aを構成する不揮発性液体7が保持される。不揮発性液体7は、単独で内槽19に溜められて、単層液体を形成する。ベントノズル5から放出されたベントガスは、ベントノズル5の放出口から不揮発性液体7の液面までの液層を移動する。内槽19は、水平方向の幅を確保し易い横長の構造に設けられるため、ベントノズル5を分散的に設置することによって、ベントガスの気泡を水平方向に沿って離散的に放出させることができる。
【0098】
横置き型の捕集容器18の内槽19の内部には、揺動抑制手段10が設置される。揺動抑制手段10は、不揮発性液体7の液面、すなわち、不揮発性液体7と気相部との界面を貫通する構造に設けられる。また、揺動抑制手段10は、不揮発性液体7の液面、すなわち、不揮発性液体7と気相部との界面を部分同士に隔てる構造に設けられる。
【0099】
原子力発電プラントにおけるベント時には、入口配管2に設けられた入口弁3a,3bが開放される。入口弁3a,3bが開放されると、原子炉格納容器120の内部の放射性物質を含む蒸気が、入口配管2を通じて、フィルタベント容器1に流入する。フィルタベント容器1では、ベントガス中のエアロゾルや無機よう素が捕集される。液相部から気相部に放出されたエアロゾルは、金属フィルタ8に捕集される。その後、フィルタベント容器1で処理されたベントガスは、捕集容器18に流入する。ベントガスは、ベントノズル5によって不揮発性液体7の液中に噴射される。
【0100】
不揮発性液体7の液中に噴出したベントガスは、バブリングされた状態になる。ベントガスの気泡は、不揮発性液体7の液層を通過する。ベントガスの気泡が液層を通過する間に、ベントガス中の有機よう素が不揮発性液体7と接触して捕集される。ベントガス中の有機よう素は、不揮発性液体7に溶解し、不揮発性液体7と反応する。有機よう素を形成していた放射性よう素は、不揮発性液体7の液中に捕集される。主要な放射性物質が除去されたベントガスは、出口配管20を通じて環境中に放出される。
【0101】
図11に示すような横置き型の捕集容器18では、フィルタベント容器1で処理されたベントガスが、バブリングされた状態で液中に噴射される。ベントガスが液中に噴出すると、ベントノズル5からの噴出流や、気泡の破壊や合体等による乱流化等によって、容器内に溜められた液体が揺動する可能性がある。このような不揮発性液体7の揺動は、捕集容器18の内部に設置された揺動抑制手段10によって抑制される。
【0102】
横置き型の捕集容器18の内槽19の内部において、揺動抑制手段10の上端は、不揮発性液体7の液面の最高位置よりも上方に配置されることが好ましい。液面の最高位置とは、不揮発性液体7と気相部との界面が捕集容器18の稼働中に到達する最高の位置を意味する。このような配置であると、不揮発性液体7の揺動を液面付近において効果的に抑制できる。
【0103】
横置き型の捕集容器18の内槽19の内部において、揺動抑制手段10の下端は、ベントノズル5よりも上方であって、不揮発性液体7の液面の最低位置よりも下方に配置されることが好ましい。液面の最低位置とは、不揮発性液体7と気相部との界面が捕集容器18の稼働中に到達する最低の位置を意味する。このような配置であると、ベントノズル5との干渉を回避しつつ、不揮発性液体7の揺動を液面付近において効果的に抑制できる。
【0104】
揺動抑制手段10は、内槽19の内部を鉛直方向からみた平面視において、ベントノズル5の上方の気泡が到達する範囲に少なくとも設置することが好ましく、不揮発性液体7の液面の略全体を覆う範囲に設置することがより好ましい。
【0105】
揺動抑制手段10は、例えば、内槽19の内面や捕集容器18の内面に対して溶接等で固定できる。
【0106】
図12は、第2実施形態に係る捕集容器の一例を模式的に示す断面図である。図12には、湿式フィルタとして不揮発性液体7を収容した横置き型の捕集容器18に揺動抑制手段10と気泡整流手段12を設置した構造を示す。図12において、矢印は、ベントガスの流れを示す。図12に示すように、横置き型の捕集容器18の内部には、揺動抑制手段10に加え、気泡整流手段12を設置することもできる。
【0107】
横置き型の捕集容器18の内槽19の内部において、気泡整流手段12は、揺動抑制手段10よりも下方に配置されることが好ましい。また、気泡整流手段12は、ベントノズル5よりも上方に配置されることが好ましい。気泡整流手段12は、揺動抑制手段10とは別体として配置されてもよいし、揺動抑制手段10と一体的に配置されてもよい。
【0108】
気泡整流手段12は、内槽19の内部を鉛直方向からみた平面視において、ベントノズル5の上方の気泡が到達する範囲に少なくとも設置することが好ましく、不揮発性液体7の液面の略全体を覆う範囲に設置することがより好ましい。
【0109】
気泡整流手段12は、例えば、内槽19の内面や捕集容器18の内面に対して溶接等で固定できる。
【0110】
このような横置き型の捕集容器18によると、容器の全高を低くすることが可能になるため、システムの設置場所の確保が容易になる。フィルタベント容器1の大型化が回避されると共に、捕集容器18の全高が抑制されるため、原子炉建屋の地下等にも容易に設置できる。捕集容器18の全高が抑制されるため、出口配管が敷設されているトレンチ等のように高さが制限された場所に容易に設置できる。また、ベントガスの気泡が通過する液中の断面積を大きく確保できるため、ベントガスの処理量を確保しつつ、気泡の整流や大容量のベントガスの処理を実現できる。
【0111】
横置き型の捕集容器18において、揺動抑制手段10は、ベントガスの噴出による不揮発性液体7の揺動だけでなく、地震の発生時等に、スロッシングによる不揮発性液体7の溢れを抑制する作用をもたらす。そのため、揺動抑制手段10を設置することによって、有機よう素の捕集量の低下が起こり難く堅牢性が高い横置き型の捕集容器18の提供が可能になる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、本発明は、必ずしも前記の実施形態が備える全ての構成を備えるものに限定されない。或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成の一部を他の形態に追加したり、或る実施形態の構成の一部を省略したりすることができる。
【0113】
例えば、揺動抑制手段を備えたフィルタベント装置は、任意の形式の原子炉に設置できる。原子炉の型式としては、沸騰水型原子炉(Boiling Water Reactor:BWR)、改良型沸騰水型原子炉(Advanced Boiling Water Reactor:ABWR)、加圧水型原子炉(Pressurized Water Reactor:PWR)等が挙げられる。原子炉圧力容器や原子炉格納容器の構造は、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0114】
1 フィルタベント容器
2a ドライウェルベント配管(入口配管)
2b ウェットウェルベント配管(入口配管)
2c 共通配管(入口配管)
3a 入口弁
3b 入口弁
4 分配管
5 ベントノズル
6 スクラビング水
6A スクラビング水処理部
7 不揮発性液体
7A 不揮発性液体処理部
8 金属フィルタ
9 出口配管
10 揺動抑制手段
12 気泡整流手段
14 中継配管
15 捕集容器(縦置き型)
16 出口配管
17 中継配管
18 捕集容器(横置き型)
19 内槽
20 出口配管
100 フィルタベント装置
110 原子炉圧力容器
120 原子炉格納容器
121 ドライウェル
122 ウェットウェル
200 フィルタベント装置
図1
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図12