(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009486
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】全固体電池の製造方法、および、全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20250110BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20250110BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20250110BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/0565
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112523
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 弘和
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029AM16
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029CJ01
5H029CJ03
5H029CJ04
5H029CJ28
5H029DJ01
5H029DJ16
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】エネルギー密度の向上を図ることができる全固体電池の製造方法、および、全固体電池を提供する。
【解決手段】
全固体電池1の製造方法は、正極活物質を含有する粉体から作られる正極層21と、負極活物質を含有する粉体から作られる負極層22と、正極層21と負極層22との間に配置され、固体電解質の粉体から作られる固体電解質層23とを有するセル2を、第1基材F1の上に、乾式で形成するセル形成工程と、セル2の上に第2基材F2を積層して、得られた積層体Lをプレスするプレス工程と、セル2から第1基材F1および第2基材F2の少なくとも一方を剥がす剥離工程と、2つのセル2の間に1つの集電体3が配置されるように、セル2と集電体3とを交互に積層する積層工程とを含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含有する粉体から作られる正極層と、負極活物質を含有する粉体から作られる負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置され、固体電解質の粉体から作られる固体電解質層とを有するセルを、第1基材の上に、乾式で形成するセル形成工程と、
前記セルの上に第2基材を積層して、得られた積層体をプレスするプレス工程と、
前記セルから前記第1基材および前記第2基材の少なくとも一方を剥がす剥離工程と、
2つの前記セルの間に1つの集電体が配置されるように、前記セルと前記集電体とを交互に積層する積層工程と
を含む、全固体電池の製造方法。
【請求項2】
前記積層工程は、
第1のセルの上に前記集電体を積層する第1工程と、
第1工程に続いて、前記集電体の上に第2のセルを積層する第2工程と
を含み、
前記第2工程において、
前記第1のセルの前記負極層が前記集電体と接触している場合、前記第2のセルの前記負極層が前記集電体と接触するように、前記集電体の上に前記第2のセルを積層し、
前記第1のセルの前記正極層が前記集電体と接触している場合、前記第2のセルの前記正極層が前記集電体と接触するように、前記集電体の上に前記第2のセルを積層する、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項3】
前記集電体は、
導電体と
前記導電体の周縁部に積層される絶縁部材と
を有し、
前記積層工程において、前記セルは、前記導電体の上に積層され、かつ、前記絶縁部材は、前記セルの周りに配置される、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁部材は、前記導電体の一方面上に積層され、
前記集電体は、
前記導電体の周縁部において前記導電体の他方面上に積層される接着剤層を、さらに有する、請求項3に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項5】
前記集電体は、前記導電体のエッジから前記絶縁部材の内側まで切り欠かれた切欠きを有し、
前記積層工程において、前記切欠き内に治具を配置して、前記治具に前記セルのエッジが接触するように、前記集電体に対して前記セルを位置決めする、請求項3に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項6】
正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置される固体電解質層とを有する複数のセルと、
複数の集電体と
を備え、
前記セルと前記集電体とは、2つの前記セルの間に1つの前記集電体が配置されるように、交互に積層されており、
前記集電体は、
前記セルと接触する導電体と、
前記導電体の周縁部に積層される絶縁部材と
を有する、全固体電池。
【請求項7】
前記集電体は、前記導電体のエッジから前記絶縁部材の内側まで切り欠かれた切欠きを有する、請求項6に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池の製造方法、および、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極層と、負極層と、正極層と負極層との間に配置される固体電解質層とを有する電極層体と、電極層体の正極層と接触する正極集電体と、電極層体の負極層と接触する負極集電体とを備える全固体電池が知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されるような全固体電池において、さらなるエネルギー密度の向上が求められている。
【0005】
本発明は、エネルギー密度の向上を図ることができる全固体電池の製造方法、および、全固体電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、正極活物質を含有する粉体から作られる正極層と、負極活物質を含有する粉体から作られる負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置され、固体電解質の粉体から作られる固体電解質層とを有するセルを、第1基材の上に、乾式で形成するセル形成工程と、前記セルの上に第2基材を積層して、得られた積層体をプレスするプレス工程と、前記セルから前記第1基材および前記第2基材の少なくとも一方を剥がす剥離工程と、2つの前記セルの間に1つの集電体が配置されるように、前記セルと前記集電体とを交互に積層する積層工程とを含む、全固体電池の製造方法を含む。
【0007】
このような方法によれば、第1基材の上に乾式で形成されたセルを、第1基材と第2基材との間でプレスして固めた後に、第1基材および第2基材の少なくとも一方を剥がして、2つのセルの間に1つの集電体が配置されるように、セルと集電体とを交互に積層する。
【0008】
これにより、乾式で製造されたセルを有し、かつ、バイセル型である全固体電池を製造できる。
【0009】
そのため、得られた全固体電池は、湿式で製造されたセルを有する全固体電池と比べて、溶媒が揮発するときにセル中に生じる空隙、および、バインダーなどの樹脂に起因する発電効率の低下を抑制されている。また、得られた全固体電池は、バイセル型であることによって、体積および重量の低減も図られている。
【0010】
その結果、本発明の全固体電池の製造方法は、製造された全固体電池のエネルギー密度の向上を図ることができる。
【0011】
本発明[2]は、前記積層工程が、第1のセルの上に前記集電体を積層する第1工程と、第1工程に続いて、前記集電体の上に第2のセルを積層する第2工程とを含み、前記第2工程において、前記第1のセルの前記負極層が前記集電体と接触している場合、前記第2のセルの前記負極層が前記集電体と接触するように、前記集電体の上に前記第2のセルを積層し、前記第1のセルの前記正極層が前記集電体と接触している場合、前記第2のセルの前記正極層が前記集電体と接触するように、前記集電体の上に前記第2のセルを積層する、上記[1]または[2]の全固体電池の製造方法を含む。
【0012】
このような方法によれば、第1のセルと第2のセルとが1つの集電体と接触するバイセル型の全固体電池を製造できる。
【0013】
本発明[3]は、前記集電体が、導電体と、前記導電体の周縁部に積層される絶縁部材とを有し、前記積層工程において、前記セルが、前記導電体の上に積層され、かつ、前記絶縁部材が、前記セルの周りに配置される、上記[1]の全固体電池の製造方法を含む。
【0014】
このような方法によれば、導電体の周縁部に絶縁部材が積層された集電体を使用するので、セルと集電体とを交互に積層するという簡単な工程で、全固体電池を製造できる。
【0015】
本発明[4]は、前記絶縁部材が、前記導電体の一方面上に積層され、前記集電体が、前記導電体の周縁部において前記導電体の他方面上に積層される接着剤層を、さらに有する、上記[3]の全固体電池の製造方法を含む。
【0016】
このような方法によれば、一の集電体の上にセルを積層し、そのセルの上に他の集電体を積層した場合に、他の集電体の接着剤層を、一の集電体の絶縁部材に接着できる。
【0017】
これにより、一の集電体と他の集電体との短絡を抑制できる。
【0018】
本発明[5]は、前記集電体が、前記導電体のエッジから前記絶縁部材の内側まで切り欠かれた切欠きを有し、前記積層工程において、前記切欠き内に治具を配置して、前記治具に前記セルのエッジが接触するように、前記集電体に対して前記セルを位置決めする、上記[3]または[4]の全固体電池の製造方法を含む。
【0019】
このような方法によれば、集電体に対するセルの位置がずれてしまうことを抑制しながら、セルと集電体とを簡単に積層できる。
【0020】
本発明[6]は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置される固体電解質層とを有する複数のセルと、複数の集電体とを備え、前記セルと前記集電体とが、2つの前記セルの間に1つの前記集電体が配置されるように、交互に積層されており、前記集電体が、前記セルと接触する導電体と、前記導電体の周縁部に積層される絶縁部材とを有する、全固体電池を含む。
【0021】
このような構成によれば、2つのセルの間に1つの集電体が配置されるように、セルと集電体とが交互に積層されている。つまり、全固体電池は、バイセル型の積層構造を有する。
【0022】
そのため、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0023】
また、集電体は、導電体と、導電体の周縁部に積層された絶縁部材とを有する。
【0024】
そのため、セルと集電体とを交互に積層するという簡単な工程で、導電体同士の短絡を抑制しながら全固体電池を製造できる。
【0025】
本発明[7]は、前記集電体が、前記導電体のエッジから前記絶縁部材の内側まで切り欠かれた切欠きを有する、上記[6]の全固体電池を含む。
【0026】
このような構成によれば、切欠きを利用して、集電体に対するセルの位置がずれてしまうことを抑制しながら、セルと集電体とを簡単に積層できる。
【0027】
また、絶縁部材の一部が切り欠かれていることにより、絶縁部材の使用量が低減される。そのため、絶縁部材中の水分に起因するセルの劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の全固体電池の製造方法によれば、製造された全固体電池のエネルギー密度の向上を図ることができる。
【0029】
また、本発明の全固体電池によれば、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1Aは、本発明の一実施形態としての全固体電池の平面図である。
図1Bは、
図1Aに示す全固体電池のA-A断面図である。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、全固体電池の製造方法を説明する工程図である。
図5Aは、セル形成工程において、スクリーンの開口に正極合剤が充填された状態を示す。
図5Bは、セル形成工程において、開口内の正極合剤を第1基材の上に転写して、第1基材の上に正極層を形成された状態を示す。
【
図6】
図6Aから
図6Cは、
図5Bに続いて、全固体電池の製造方法を説明する工程図である。
図6Aは、セル形成工程において、正極層の上に固体電解質層を形成され、固体電解質層の上に負極層を形成された状態を示す。
図6Bは、プレス工程を示す。
図6Cは、剥離工程を示す。
【
図7】
図7Aおよび
図7Bは、
図6Cに続いて、全固体電池の製造方法を説明する工程図である。
図7Aは、積層工程において、正極集電体の上に第1のセルが積層された状態を示す。
図7Bは、積層工程において、第1方向において、第1のセルが正極集電体に対して位置決めされた状態を示す。
【
図8】
図8Aおよび
図8Bは、
図7Bに続いて、全固体電池の製造方法を説明する工程図である。
図8Aは、積層工程において、第2方向において、第1のセルが正極集電体に対して位置決めされた状態を示す。
図8Bは、積層工程において、第1のセルの上に負極集電体が積層され、負極集電体の上に第2のセルが積層された状態を示す。
【
図9】
図9Aおよび
図9Bは、
図8Bに続いて、全固体電池の製造方法を説明する工程図である。
図9Aは、積層工程において、第1方向において、第2のセルが負極集電体に対して位置決めされた状態を示す。
図9Bは、積層工程において、第2方向において、第2のセルが負極集電体に対して位置決めされた状態を示す。
【
図11】
図11は、
図10に示す製造装置の平面図であり、各移動部材が離間位置に配置された状態を示す。
【
図13】
図13は、
図11に示す製造装置の支持テーブルの上に正極集電体が載置された状態を示す。
【
図14】
図14は、
図13に続いて、第1方向において、正極集電体が支持テーブルに対して位置決めされた状態を示す。
【
図15】
図15は、
図14に続いて、第2方向において、正極集電体が支持テーブルに対して位置決めされた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.全固体電池
全固体電池1について説明する。
【0032】
図1Aおよび
図1Bに示すように、全固体電池1は、複数のセル2と、複数の集電体3と、正極リード4と、負極リード5と、外装材6とを備える。
【0033】
(1)セル
本実施形態では、セル2は、シート形状を有する。セル2は、セル2の厚み方向から見て、略矩形状である。なお、セル2の形状は、限定されない。セル2は、板形状であってもよいし、フィルム形状であってもよい。また、セル2は、セル2の厚み方向から見て、略円形状であってもよい。
【0034】
セル2の厚みは、例えば、100μm以上、好ましくは、200μm以上、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、800μm以下である。
【0035】
図2Aに示すように、セル2は、正極層21と、負極層22と、固体電解質層23とを有する。セル2は、ベアセルである。セル2は、正極層21、負極層22および固体電解質層23からなる。セル2は、集電体を有さない。
【0036】
(1-1)正極層
正極層21は、セル2の厚み方向において、負極層22から離れて配置される。正極層21は、セル2の厚み方向において、固体電解質層23に対して負極層22の反対側に配置される。正極層21は、固体電解質層23と接触し、負極層22と接触しない。
【0037】
正極層21は、正極活物質を含有する粉体から作られる。本実施形態では、正極層21は、バインダーなどの樹脂を含有しない。本実施形態では、正極層21は、正極活物質の粉体と固体電解質の粉体との混合物から作られる。なお、正極層21は、固体電解質を含有しなくてもよい。正極層21は、正極活物質のみからなってもよい。
【0038】
正極活物質として、例えば、リチウム含有酸化物が挙げられる。リチウム含有酸化物として、例えば、リチウム・ニッケル複合酸化物(LiNiXM1-XO2)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、リチウム・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、NCA系層状酸化物)、マンガン酸リチウム(スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn2O4))、Li過剰の複合酸化物(Li2MnO3-LiMO2)が挙げられる。
【0039】
正極活物質は、リチウムイオンの挿入および離脱が可能であれば、リチウム含有酸化物に限定されない。正極活物質として、例えば、オリビン系化合物(LiMPO4)および硫黄含有化合物(Li2S)が挙げられる。
【0040】
なお、上記化学式中、Mは、遷移金属を示す。
【0041】
正極活物質として、高容量が得られ易い観点から、好ましくは、Co、NiおよびMnからなる群より選択される少なくとも一種を含むリチウム含有酸化物が挙げられる。
【0042】
また、正極活物質は、レート特性の改善の観点から、表面をコーティング材で被覆してもよい。
【0043】
コーティング材として、例えば、Li4Ti5O12、LiTaO3、Li4NbO3、LiAlO2、Li2ZrO3、Li2WO4、Li2TiO3、Li2B4O7、Li3PO4、Li2MoO4、LiBO2、アルミナ(Al2O3)、および、炭素(C)が挙げられる。
【0044】
正極活物質は、単独で使用または2種以上併用することができる。
【0045】
固体電解質は、リチウムイオン伝導性を示す。固体電解質として、例えば、有機固体電解質、および、無機固体電解質が挙げられる。
【0046】
無機固体電解質として、例えば、硫化物、酸化物、窒化物、および、水素化物が挙げられる。
【0047】
硫化物としては、例えば、Li2Sと、周期表第13族元素、第14族元素および第15族元素からなる群より選択された少なくとも一種の元素を含む他の硫化物とを含むものが挙げられる。
【0048】
周期表第13族元素、第14族元素および第15族元素として、例えば、P、Si、Ge、As、Sb、および、Alが挙げられ、好ましくは、P、Si、および、Geが挙げられ、より好ましくは、Pが挙げられる。
【0049】
具体的には、硫化物として、例えば、Li2S-SiS2、Li2S-P2S5、Li2S-GeS2、Li2S-B2S3、Li2S-Ga2S3、Li2S-Al2S3、Li2S-GeS2-P2S5、Li2S-Al2S3-P2S5、Li2S-P2S3、Li2S-P2S3-P2S5、LiX-Li2S-P2S5、LiX-Li2S-SiS2、および、LiX-Li2S-B2S3(X:I、BrまたはCl)が挙げられる。
【0050】
固体電解質として、好ましくは、無機固体電解質が挙げられ、より好ましくは、硫化物が挙げられる。固体電解質は、単独で使用または2種以上併用できる。正極活物質と固体電解質との比率は、限定されない。
【0051】
正極層21の厚みは、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上である。正極層21の厚みは、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。
【0052】
(1-2)負極層
負極層22は、セル2の厚み方向において、正極層21から離れて配置される。負極層22は、セル2の厚み方向において、固体電解質層23に対して正極層21の反対側に配置される。負極層22は、固体電解質層23と接触し、正極層21と接触しない。
【0053】
負極層22は、負極活物質を含有する粉体から作られる。負極層22は、バインダーなどの樹脂を含有しない。本実施形態では、負極層22は、負極活物質の粉体と固体電解質の粉体との混合物から作られる。なお、負極層22は、固体電解質を含有しなくてもよい。負極層22は、負極活物質のみからなってもよい。
【0054】
負極活物質は、リチウムイオンの挿入および離脱が可能な物質であれば、限定されない。負極活物質として、例えば、炭素材料、金属およびその合金、半金属、および、金属または半金属の化合物が挙げられる。
【0055】
炭素材料として、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、ハードカーボン、および、非晶質炭素が挙げられる。金属およびその合金として、例えば、リチウムおよびその合金が挙げられる。半金属として、ケイ素が挙げられる。金属または半金属の化合物として、例えば、金属または半金属の酸化物、硫化物、窒化物、水化物、および、シリサイド(リチウムシリサイド)が挙げられる。金属または半金属の酸化物として、例えば、チタン酸化物、ケイ素酸化物が挙げられる。
【0056】
負極活物質は、単独で使用または2種以上併用できる。負極活物質として、例えば、ケイ素酸化物と炭素材料とを併用できる。
【0057】
負極層22が含有する固体電解質として、例えば、上記した固体電解質が挙げられる。好ましくは、負極層22が含有する固体電解質は、正極層21が含有する固体電解質と同じである。負極活物質と固体電解質との比率は、限定されない。
【0058】
負極層22の厚みは、正極層21の厚みとほぼ同じである。負極層22の厚みは、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上である。負極層22の厚みは、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下である。
【0059】
(1-3)固体電解質層
固体電解質層23は、セル2の厚み方向において、正極層21と負極層22との間に配置される。固体電解質層23は、固体電解質の粉体から作られる。固体電解質層23は、バインダーなどの樹脂を含有しない。
【0060】
固体電解質として、例えば、上記した固体電解質が挙げられる。好ましくは、固体電解質は、正極層21が含有する固体電解質と同じである。
【0061】
固体電解質層23は、正極層21および負極層22よりも薄い。固体電解質層23の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、30μm以上である。固体電解質層23の厚みは、例えば、300μm以下、好ましくは、100μm以下である。
【0062】
(2)集電体
図2Bに示すように、複数の集電体3のそれぞれは、複数のセル2のそれぞれと交互に積層されている。複数の集電体3は、正極集電体3Aと、負極集電体3Bとを含む。正極集電体3Aは、セル2の正極層21と接触する。負極集電体3Bは、セル2の負極層22と接触する。
【0063】
具体的には、本実施形態では、セル2と集電体3との積層方向において、一方側から他方側に向かって、正極集電体3A、第1のセル2A、負極集電体3B、第2のセル2B、正極集電体3Aの順に積層されている。積層方向において、1つの負極集電体3Bは、第1のセル2Aの負極層22と、第2のセル2Bの負極層22との間に配置される。つまり、積層方向において、1つの集電体3が、2つのセル2の間に配置される。
【0064】
図3Aおよび
図3Bに示すように、集電体3は、導電体31と、絶縁部材32と、接着剤層33とを有する。また、集電体3は、周縁部において、複数の切欠き34A,34B,34C,34D,34E,34F,34G,34Hを有する。なお、切欠きの数は、限定されない。
【0065】
(2-1)導電体
導電体31は、例えば、金属から作られる。導電体31は、積層部311と、タブ312とを有する。
【0066】
積層部311は、第1方向および第2方向に延びる。第1方向は、積層方向と直交する。第2方向は、第1方向および積層方向の両方と直交する。積層部311は、シート形状を有する。積層部311は、厚み方向において、一方面S1と他方面S2とを有する。言い換えると、導電体31は、厚み方向において、一方面S1と他方面S2とを有する。積層部311は、セル2と接触する。集電体3が正極集電体3Aである場合、積層部311は、セル2の正極層21と接触する。集電体3が負極集電体3Bである場合、積層部311は、セル2の負極層22と接触する。積層部311は、積層方向から見て、略矩形状を有する。積層部311は、複数のエッジE1、E2、E3、E4を有する。
【0067】
エッジE1は、第1方向における積層部311の一端部に配置される。エッジE1は、第2方向に延びる。エッジE1は、直線形状である。エッジE2は、第1方向における積層部311の他端部に配置される。エッジE2は、第2方向に延びる。エッジE2は、直線形状である。エッジE3は、第2方向における積層部311の一端部に配置される。エッジE3は、第1方向に延びる。エッジE3は、直線形状である。エッジE4は、第2方向における積層部311の他端部に配置される。エッジE4は、第1方向に延びる。エッジE4は、直線形状である。
【0068】
タブ312は、積層部311のエッジに配置される。本実施形態では、タブ312は、第2方向における積層部311の一方側のエッジE3に配置される。タブ312は、積層部311のエッジE3から突出する。タブ312は、積層部311とは別の部材であり、積層部311に接合されていてもよい。タブ312は、ベルト形状を有する。タブ312は、セル2と接触しない。集電体3が正極集電体3Aである場合、導電体31は、タブ312として正極タブ312Aを有する。集電体3が負極集電体3Bである場合、導電体31は、タブ312として負極タブ312Bを有する。セル2と正極集電体3Aと負極集電体3Bとが積層された状態で、負極タブ312Bは、正極タブ312Aから離れて配置される。セル2と正極集電体3Aと負極集電体3Bとが積層された状態で、積層方向において、負極タブ312Bは、正極タブ312Aと重ならない。
【0069】
導電体31の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
【0070】
導電体31の材料として、例えば、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレス鋼、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、リチウム(Li)、錫(Sn)、および、これらの合金が挙げられる。
【0071】
(2-2)絶縁部材
図3Bに示すように、絶縁部材32は、導電体31の一方面S1上に積層される。
図3Aに示すように、絶縁部材32は、導電体31の積層部311上に配置される。絶縁部材32は、導電体31の積層部311の周縁部に積層される。絶縁部材32は、積層方向から見て、略矩形の枠形状を有する。絶縁部材32は、導電体31のエッジE1に沿って延びる部分32Aと、導電体31のエッジE2に沿って延びる部分32Bと、導電体31のエッジE3に沿って延びる部分32Cと、導電体31のエッジE4に沿って延びる部分32Dとを有する。絶縁部材32は、導電体31のタブ312上には配置されていない。
【0072】
セル2と正極集電体3Aと負極集電体3Bとが積層された状態で、絶縁部材32は、セル2の周りに配置される。
図1Bに示すように、セル2と正極集電体3Aと負極集電体3Bとが積層された状態で、絶縁部材32は、積層方向において、正極集電体3Aと負極集電体3Bとの間に配置される。セル2と正極集電体3Aと負極集電体3Bとが積層された状態で、絶縁部材32は、正極集電体3Aを負極集電体3Bから絶縁する。
【0073】
積層方向において、絶縁部材32の厚みは、セル2の厚みよりも薄い。集電体3が接着剤層33を有さない場合、絶縁部材32の厚みは、セル2の厚みと同じであってもよい。絶縁部材32の厚みは、例えば、50μm以上、好ましくは、75μm以上、また、例えば、500μm以下、好ましくは、400μm以下である。
【0074】
絶縁部材32の材料として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリイミドが挙げられる。
【0075】
(2-3)接着剤層
図3Bに示すように、接着剤層33は、導電体31の周縁部において、導電体31の他方面S2上に積層される。集電体3は、接着剤層33を有さなくてもよい。
図1Bに示すように、2つの集電体3の間に1つのセル2が積層された状態で、積層方向においてセル2の他方側に配置された集電体3の接着剤層33は、積層方向においてセル2の一方側に配置された集電体3の絶縁部材32に接着される。
【0076】
接着剤層33の厚みと絶縁部材32の厚みとの総和は、セル2の厚み以下である。接着剤層33の厚みは、例えば、30μm以上、好ましくは、50μm以上、また、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0077】
接着剤層33は、好ましくは、絶縁性である。接着剤層33の材料として、例えば、アクリル、ポリイミド、シリコーンなどの樹脂、および、それらの樹脂を含侵した不織布が挙げられる。
【0078】
(2-4)切欠き
図3Aに示すように、切欠き34A,34Bは、第1方向における集電体3の一端部に配置される。切欠き34A,34Bのそれぞれは、導電体31のエッジE1から絶縁部材32の内側まで切り欠かれている。詳しくは、切欠き34A,34Bのそれぞれは、第1方向において、導電体31のエッジE1からエッジE2に向かって延びる。切欠き34A,34Bのそれぞれは、第1方向において、絶縁部材32の部分32Aと部分32Bとの間まで延びる。切欠き34A,34Bが形成されている部分において、絶縁部材32は、途切れている。
【0079】
切欠き34C,34Dは、第1方向における集電体3の他端部に配置される。切欠き34C,34Dのそれぞれは、導電体31のエッジE2から絶縁部材32の内側まで切り欠かれている。詳しくは、切欠き34C,34Dのそれぞれは、第1方向において、導電体31のエッジE2からエッジE1に向かって延びる。切欠き34C,34Dのそれぞれは、第1方向において、絶縁部材32の部分32Aと部分32Bとの間まで延びる。切欠き34C,34Dが形成されている部分において、絶縁部材32は、途切れている。切欠き34Cは、第1方向において、切欠き34Aと間隔を隔てて配置される。切欠き34Dは、第1方向において、切欠き34Bと間隔を隔てて配置される。
【0080】
切欠き34E,34Fは、第2方向における集電体3の一端部に配置される。切欠き34E,34Fのそれぞれは、導電体31のエッジE3から絶縁部材32の内側まで切り欠かれている。詳しくは、切欠き34E,34Fのそれぞれは、第2方向において、導電体31のエッジE3からエッジE4に向かって延びる。切欠き34E,34Fのそれぞれは、第2方向において、絶縁部材32の部分32Cと部分32Dとの間まで延びる。切欠き34E,34Fが形成されている部分において、絶縁部材32は、途切れている。
【0081】
切欠き34G,34Hは、第2方向における集電体3の他端部に配置される。切欠き34G,34Hのそれぞれは、導電体31のエッジE4から絶縁部材32の内側まで切り欠かれている。詳しくは、切欠き34G,34Hのそれぞれは、第2方向において、導電体31のエッジE4からエッジE3に向かって延びる。切欠き34G,34Hのそれぞれは、第2方向において、絶縁部材32の部分32Cと部分32Dとの間まで延びる。切欠き34G,34Hが形成されている部分において、絶縁部材32は、途切れている。切欠き34Gは、第2方向において、切欠き34Eと間隔を隔てて配置される。切欠き34Hは、第1方向において、切欠き34Fと間隔を隔てて配置される。
【0082】
セル2と集電体3とが積層された状態で、セル2は、第1方向において、切欠き34A,34Bと切欠き34C,34Dとの間に配置される。セル2と集電体3とが積層された状態で、セル2は、第2方向において、切欠き34E,34Fと切欠き34G,34Hとの間に配置される。
【0083】
なお、切欠き34A,34B,34C,34D,34E,34F,34G,34Hのそれぞれの形状は、限定されない。切欠き34A,34B,34C,34D,34E,34F,34G,34Hのそれぞれの形状として、例えば、円弧形状、三角形状、四角形状、台形状が挙げられる。切欠き34A,34B,34C,34D,34E,34F,34G,34Hのそれぞれの形状は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0084】
(3)正極リードおよび負極リード
図1Aに示すように、正極リード4の一部は、外装材6から露出している。
図4に示すように、正極リード4は、外装材6内において、正極タブ312Aと接合される。これにより、正極リード4は、正極集電体3Aと電気的に接続される。正極リード4は、負極集電体3Bとは接続されない。
【0085】
図1Aに示すように、負極リード5の一部は、外装材6から露出している。負極リード5は、外装材6内において、負極タブ312B(
図3A参照)と接合される。これにより、負極リード5は、負極集電体3B(
図1B参照)と電気的に接続される。負極リード5は、正極集電体3Aとは接続されない。
【0086】
正極リード4および負極リード5のそれぞれは、例えば、略矩形の平板形状を有する。正極リード4および負極リード5の材料として、例えば、純金属、および、合金が挙げられる。純金属として、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、金、および、白金が挙げられる。合金として、例えば、上記純金属の合金、ステンレス、および、チタンが挙げられる。正極リード4および負極リード5は、めっきされていてもよい。例えば、正極リード4および負極リード5は、ニッケルめっき層および金めっき層を有する銅板であってもよい。
【0087】
(4)外装材
図1Aおよび
図1Bに示すように、外装材6は、セル2と集電体3との積層体を覆う。外装材6として、例えば、金属箔の両面に樹脂製のフィルムが積層された金属ラミネートフィルムが挙げられる。
【0088】
2.全固体電池の製造方法
次に、全固体電池1の製造方法について説明する。
【0089】
【0090】
(1)セル形成工程
セル形成工程では、セル2を、第1基材F1の上に、乾式で形成する。具体的には、静電スクリーン印刷により、第1基材F1の上にセル2を形成する。
【0091】
詳しくは、まず、正極活物質の粉末と固体電解質の粉末とを混合して正極合材を調製する。また、負極活物質の粉末と固体電解質の粉末とを混合して負極合材を調製する。正極合材および負極合材は、バインダーなどの樹脂、および、有機溶剤などの液体を含有しない。正極合材は、好ましくは、正極活物質の粉末と固体電解質の粉末とからなる。負極合材は、好ましくは、負極活物質の粉末と固体電解質の粉末とからなる。
【0092】
次に、
図5Aに示すように、所定容積の開口OPを有するスクリーンSCの開口OP内に、正極合材M1を充填する。
【0093】
次に、
図5Bに示すように、開口OP内の正極合材M1を、第1基材F1に向けて押し出し、静電気力によって第1基材F1上に転写する。これにより、第1基材F1の上に正極層21が形成される。
【0094】
次に、正極層21の形成と同じ方法で、正極層21の上に固体電解質層23を形成し、固体電解質層23の上に負極層22を形成する。
【0095】
これにより、
図6Aに示すように、第1基材F1の上にセル2が形成される。
【0096】
第1基材F1の材料は、静電スクリーン印刷可能であれば、限定されない。第1基材F1の材料として、例えば、金属箔が挙げられる。金属箔として、例えば、アルミニウム箔が挙げられる。
【0097】
なお、セル2を形成できれば、正極層21、負極層22および固体電解質層23の形成順序は、限定されない。第1基材F1の上に負極層22を形成し、負極層22の上に固体電解質層23を形成し、固体電解質層23の上に正極層21を形成してもよい。
【0098】
(2)プレス工程
プレス工程は、セル形成工程の後に実施される。
図6Bに示すように、プレス工程では、セル2の上に第2基材F2を積層して、得られた積層体Lをプレスする。なお、得られた積層体Lとは、第1基材F1、セル2、および、第2基材F2の積層体である。
【0099】
第2基材F2の材料は、第1基材F1の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0100】
積層体Lに加える圧力は、セル2を成形可能であれば、限定されない。積層体Lに加える圧力は、例えば、50MPa以上、好ましくは、300MPa以上であり、例えば、5000MPa以下、好ましくは、3000MPa以下である。
【0101】
(3)カット工程
カット工程は、プレス工程の後に実施される。カット工程では、セル2を所望の形状にカットする。本実施形態では、セル2を、セル2の厚み方向から見て略矩形状に、カットする。
【0102】
(4)剥離工程
剥離工程は、カット工程の後に実施される。なお、剥離工程は、カット工程の前に実施されてもよい。剥離工程では、
図6Cに示すように、セル2から第1基材F1および第2基材F2の少なくとも一方を剥がす。本実施形態では、第1基材F1および第2基材F2の両方をセル2から剥がす。なお、後述する変形例で説明するように、セル2が崩れてしまうことを抑制するために、第1基材F1および第2基材F2の片方だけをセル2から剥がしてもよい。
【0103】
(5)積層工程
積層工程では、セル2と集電体3とを交互に積層する。
【0104】
詳しくは、積層工程では、まず、
図7Aに示すように、正極集電体3Aの切欠き34A,34B,34E,34F内に治具RA,RB,RE,RFを配置する。詳しくは、切欠き34A内に治具RAを配置し、切欠き34B内に治具RBを配置し、切欠き34E内に治具REを配置し、切欠き34F内に治具RFを配置する。治具RA,RB,RE,RFのそれぞれは、積層方向に延びる。治具RA,RB,RE,RFのそれぞれは、例えば、ロッドである。治具RA,RB,RE,RFのそれぞれは、円柱形状を有する。
【0105】
次に、第1のセル2Aを正極集電体3Aの上に積層する。詳しくは、第1のセル2Aは、正極集電体3Aの絶縁部材32の内側において、正極集電体3Aの導電体31の上に積層される。これにより、第1のセル2Aが正極集電体3Aの導電体31の上に積層された状態で、正極集電体3Aの絶縁部材32は、第1のセル2Aの周りに配置される。また、第1のセル2Aが正極集電体3Aの上に積層された状態で、第1のセル2Aの正極層21(
図6C参照)は、正極集電体3Aの導電体31と接触する。
【0106】
次に、
図7Bに示すように、第1のセル2AのエッジE11が治具RA,RBと接触するように、第1方向において、第1のセル2Aを正極集電体3Aに対して位置決めする。エッジE11は、第1方向における第1のセル2Aの一端部のエッジである。詳しくは、第1方向における他方側から、治具RC,RDによって、第1のセル2Aを治具RA,RBに向けて押す。このとき、治具RCは、切欠き34C内に入り、治具RDは、切欠き34D内に入る。エッジE11が治具RA,RBと接触することにより、第1のセル2Aは、第1方向において、正極集電体3Aに対して位置決めされる。
【0107】
次に、
図8Aに示すように、第1のセル2AのエッジE12が治具RE,RFと接触するように、第2方向において、第1のセル2Aを正極集電体3Aに対して位置決めする。エッジE12は、第2方向における第1のセル2Aの一端部のエッジである。詳しくは、第2方向における他方側から、治具RG,RHによって、第1のセル2Aを治具RE,RFに向けて押す。このとき、治具RGは、切欠き34G内に入り、治具RHは、切欠き34H内に入る。エッジE12が治具RE,RFと接触することにより、第1のセル2Aは、第2方向において、正極集電体3Aに対して位置決めされる。
【0108】
次に、
図8Bに示すように、第1のセル2Aの上に負極集電体3Bを積層し(第1工程)、負極集電体3Bの切欠き34A,34B,34E,34F内に治具RA,RB,RE,RFを配置する。負極集電体3Bが第1のセル2Aの上に積層された状態で、負極集電体3Bの導電体31は、第1のセル2Aの負極層22(
図6C参照)と接触する。
【0109】
次に、第2のセル2Bを負極集電体3Bの上に積層する(第2工程)。詳しくは、第2のセル2Bは、負極集電体3Bの絶縁部材32の内側において、負極集電体3Bの導電体31の上に積層される。第2のセル2Bが負極集電体3Bの上に積層された状態で、第2のセル2Bの負極層22は、負極集電体3Bの導電体31と接触する。つまり、第1のセル2Aの負極層22が集電体3(負極集電体3B)と接触している場合、第2のセル2Bの負極層22が負極集電体3Bと接触するように、負極集電体3Bの上に第2のセル2Bを積層する。
【0110】
なお、第1のセル2Aの正極層21が集電体3(正極集電体3A)と接触している場合、第2のセル2Bの正極層21が正極集電体3Aと接触するように、正極集電体3Aの上に第2のセル2Bを積層する。
【0111】
このように、積層工程では、2つのセル2(第1のセル2Aおよび第2のセル2B)の間に1つの集電体3(本実施形態では、負極集電体3B)が配置されるように、セル2と集電体3とを交互に積層する。
【0112】
また、
図9Aおよび
図9Bに示すように、集電体3の上にセル2を積層する毎に、セル2のエッジE11が治具RA,RBと接触するように、第1方向において、セル2を集電体3に対して位置決めし(
図9A参照)、セル2のエッジE12が治具RE,RFと接触するように、第2方向において、セル2を集電体3に対して位置決めする(
図9B参照)。
【0113】
セル2と集電体3とを、それぞれ所望の数、積層することにより、積層工程は、完了する。
【0114】
積層工程の後、正極タブ312Aを正極リード4に接合し、負極タブ312Bを負極リード5に接合して、セル2と集電体3との積層体を外装材6で真空パックする。
【0115】
以上により、上記した全固体電池1(
図1A参照)の製造が完了する。
【0116】
3.全固体電池の製造装置
次に、上記した全固体電池1の製造方法の積層工程で使用可能な製造装置10について説明する。
【0117】
図10に示すように、製造装置10は、ベース101と、支持テーブル102と、4つの移動部材103A,103B,103C,103Dと、位置決め部材104と、2つの移動部材105A,105Bとを備える。
【0118】
(1)ベース101
ベース101は、支持テーブル102と、4つの移動部材103A,103B,103C,103Dと、位置決め部材104と、2つの移動部材105A,105Bとを支持する。本実施形態では、ベース101は、平板形状を有する。ベース101は、第1方向および第2方向に延びる。ベース101の形状は、限定されない。
【0119】
(2)支持テーブル102
支持テーブル102は、ベース101に対して固定される。本実施形態では、支持テーブル102は、略矩形の平板形状を有する。支持テーブル102は、第1方向および第2方向に延びる。支持テーブル102は、集電体3を支持可能である。
【0120】
図11に示すように、支持テーブル102は、複数の溝102A,102B,102C,102D,102E,102F,102G,102Hを有する。
【0121】
溝102A,102Bは、第1方向における支持テーブル102の一端部に配置される。溝102A,102Bのそれぞれは、第1方向において、支持テーブル102の一方側のエッジから他方側に向かって延びる。
【0122】
溝102C,102Dは、第1方向における支持テーブル102の他端部に配置される。溝102C,102Dのそれぞれは、第1方向において、支持テーブル102の他方側のエッジから一方側に向かって延びる。溝102Cは、第1方向において、溝102Aと間隔を隔てて配置される。溝102Dは、第1方向において、溝102Bと間隔を隔てて配置される。
【0123】
溝102E,102Fは、第2方向における支持テーブル102の一端部に配置される。溝102E,102Fのそれぞれは、第2方向において、支持テーブル102の一方側のエッジから他方側に向かって延びる。
【0124】
溝102G,102Hは、第2方向における支持テーブル102の他端部に配置される。溝102G,102Hのそれぞれは、第2方向において、支持テーブル102の他方側のエッジから一方側に向かって延びる。溝102Gは、第2方向において、溝102Eと間隔を隔てて配置される。溝102Hは、第2方向において、溝102Fと間隔を隔てて配置される。
【0125】
(3)移動部材103A,103B,103C,103D
図10に示すように、移動部材103Aは、第1方向において、支持テーブル102の一方側に配置される。移動部材103Aは、上記した治具RA,RBを有する。移動部材103Aの形状は、限定されない。本実施形態では、移動部材103Aは、第2方向に延びる。移動部材103Aは、略矩形の平板形状を有する。
【0126】
移動部材103Bは、第1方向において、支持テーブル102の他方側に配置される。移動部材103Bは、上記した治具RC,RDを有する。移動部材103Bの形状は、限定されない。本実施形態では、移動部材103Bは、第2方向に延びる。移動部材103Bは、略矩形の平板形状を有する。
【0127】
移動部材103Cは、第2方向において、支持テーブル102の一方側に配置される。移動部材103Cは、上記した治具RE,RFを有する。移動部材103Cの形状は、限定されない。本実施形態では、移動部材103Cは、第1方向に延びる。移動部材103Cは、略矩形の平板形状を有する。
【0128】
移動部材103Dは、第2方向において、支持テーブル102の他方側に配置される。移動部材103Dは、上記した治具RG,RHを有する。移動部材103Dの形状は、限定されない。本実施形態では、移動部材103Dは、第1方向に延びる。移動部材103Dは、略矩形の平板形状を有する。
【0129】
移動部材103A,103B,103C,103Dのそれぞれは、ベース101に移動可能に取り付けられる。
【0130】
図11および
図12に示すように、移動部材103Aは、第1離間位置(
図11参照)と第1近接位置(
図12参照)との間を、第1方向に移動可能である。移動部材103Aが第1離間位置に配置された状態で、移動部材103Aは、第1方向において、支持テーブル102から離れて配置される。移動部材103Aが第1近接位置に配置された状態で、移動部材103Aは、第1方向において、第1離間位置よりも支持テーブル102の近くに配置される。移動部材103Aが第1近接位置に配置された状態で、治具RAは、支持テーブル102の溝102A内に入り、治具RBは、支持テーブル102の溝102B内に入る。
【0131】
移動部材103Bは、第2離間位置(
図11参照)と第2近接位置(
図12参照)との間を、第1方向に移動可能である。移動部材103Bが第2離間位置に配置された状態で、移動部材103Bは、第1方向において、支持テーブル102から離れて配置される。移動部材103Bが第2近接位置に配置された状態で、移動部材103Bは、第1方向において、第2離間位置よりも支持テーブル102の近くに配置される。移動部材103Bが第2近接位置に配置された状態で、治具RCは、支持テーブル102の溝102C内に入り、治具RDは、支持テーブル102の溝102D内に入る。
【0132】
移動部材103Cは、第3離間位置(
図11参照)と第3近接位置(
図12参照)との間を、第2方向に移動可能である。移動部材103Cが第3離間位置に配置された状態で、移動部材103Cは、第2方向において、支持テーブル102から離れて配置される。移動部材103Cが第3近接位置に配置された状態で、移動部材103Cは、第2方向において、第3離間位置よりも支持テーブル102の近くに配置される。移動部材103Cが第3近接位置に配置された状態で、治具REは、支持テーブル102の溝102E内に入り、治具RFは、支持テーブル102の溝102F内に入る。
【0133】
移動部材103Dは、第4離間位置(
図11参照)と第4近接位置(
図12参照)との間を、第2方向に移動可能である。移動部材103Dが第4離間位置に配置された状態で、移動部材103Dは、第2方向において、支持テーブル102から離れて配置される。移動部材103Dが第4近接位置に配置された状態で、移動部材103Dは、第2方向において、第4離間位置よりも支持テーブル102の近くに配置される。移動部材103Dが第4近接位置に配置された状態で、治具RGは、支持テーブル102の溝102G内に入り、治具RHは、支持テーブル102の溝102H内に入る。
【0134】
(4)位置決め部材104
図10に示すように、位置決め部材104は、支持テーブル102に対して固定される。支持テーブル102の上に集電体3が載置された状態で、位置決め部材104は、支持テーブル102に対する集電体3の位置を決める。位置決め部材104は、第1位置決め部104Aと、第2位置決め部104Bとを有する。
【0135】
第1位置決め部104Aは、第1方向において、支持テーブル102の一端部に配置される。支持テーブル102の上に集電体3が載置された状態で、第1位置決め部104Aは、第1方向において、支持テーブル102に対する集電体3の位置を決める。第1位置決め部104Aは、第2方向および積層方向に延びる。
【0136】
第2位置決め部104Bは、第2方向において、支持テーブル102の一端部に配置される。支持テーブル102の上に集電体3が載置された状態で、第2位置決め部104Bは、第2方向において、支持テーブル102に対する集電体3の位置を決める。第2位置決め部104Bは、第1方向および積層方向に延びる。
【0137】
(5)移動部材105A,105B
図10に示すように、移動部材105Aは、第1方向において、支持テーブル102の他方側に配置される。移動部材105Aは、2つの当接部1051A,1052Aと、支持部1053Aとを有する。
【0138】
当接部1051Aは、第2方向において、移動部材103Bよりも一方側に配置される。当接部1051Aは、第1方向および積層方向に延びる。本実施形態では、当接部1051Aは、略矩形の板形状を有する。なお、当接部1051Aの形状は、限定されない。
【0139】
当接部1052Aは、第2方向において、当接部1051Aから離れて配置される。当接部1052Aは、第2方向において、移動部材103Bよりも他方側に配置される。当接部1052Aは、第1方向および積層方向に延びる。本実施形態では、当接部1052Aは、板形状を有する。なお、当接部1052Aの形状は、限定されない。
【0140】
支持部1053Aは、当接部1051Aと当接部1052Aとを支持する。支持部1053Aは、第2方向に延びる。当接部1051Aは、第2方向における支持部1053Aの一端部に取り付けられる。当接部1052Aは、第2方向における支持部1053Aの他端部に取り付けられる。支持部1053Aは、略矩形の板形状を有する。なお、支持部1053Aの形状は、限定されない。
【0141】
移動部材105Bは、第2方向において、支持テーブル102の他方側に配置される。移動部材105Bは、2つの当接部1051B,1052Bと、支持部1053Bとを有する。
【0142】
当接部1051Bは、第1方向において、移動部材103Dよりも他方側に配置される。当接部1051Bは、第2方向および積層方向に延びる。本実施形態では、当接部1051Bは、略矩形の板形状を有する。なお、当接部1051Bの形状は、限定されない。
【0143】
当接部1052Bは、第1方向において、当接部1051Bから離れて配置される。当接部1052Bは、第1方向において、移動部材103Dよりも一方側に配置される。当接部1052Bは、第1方向および積層方向に延びる。本実施形態では、当接部1052Bは、板形状を有する。なお、当接部1052Bの形状は、限定されない。
【0144】
支持部1053Bは、当接部1051Bと当接部1052Bとを支持する。支持部1053Bは、第1方向に延びる。当接部1051Bは、第1方向における支持部1053Bの一端部に取り付けられる。当接部1052Bは、第1方向における支持部1053Bの他端部に取り付けられる。支持部1053Bは、略矩形の板形状を有する。なお、支持部1053Bの形状は、限定されない。
【0145】
移動部材105A,105Bのそれぞれは、ベース101に移動可能に取り付けられる。
【0146】
図11および
図12に示すように、移動部材105Aは、第5離間位置(
図11参照)と第5近接位置(
図12参照)との間を、第1方向に移動可能である。移動部材105Aが第5離間位置に配置された状態で、移動部材105Aは、第1方向において、支持テーブル102から離れて配置される。移動部材105Aが第5近接位置に配置された状態で、移動部材105Aは、第1方向において、第5離間位置よりも支持テーブル102の近くに配置される。支持テーブル102の上に集電体3が載置された状態で、移動部材105Aが第5離間位置から第5近接位置に向かって移動するときに、当接部1051Aおよび当接部1052Aは、支持テーブル102上の集電体3と当接可能である。
【0147】
移動部材105Bは、第6離間位置(
図11参照)と第6近接位置(
図12参照)との間を、第2方向に移動可能である。移動部材105Bが第6離間位置に配置された状態で、移動部材105Bは、第2方向において、支持テーブル102から離れて配置される。移動部材105Bが第6近接位置に配置された状態で、移動部材105Bは、第2方向において、第6離間位置よりも支持テーブル102の近くに配置される。支持テーブル102の上に集電体3が載置された状態で、移動部材105Bが第6離間位置から第6近接位置に向かって移動するときに、当接部1051Bおよび当接部1052Bは、支持テーブル102上の集電体3と当接可能である。
【0148】
(6)積層工程における製造装置の動作
次に、上記した積層工程における製造装置10の動作について説明する。
【0149】
上記した積層工程に製造装置10を使用する場合、
図13に示すように、まず、移動部材103Aが第1離間位置に配置され、移動部材103Bが第2離間位置に配置され、移動部材103Cが第3離間位置に配置され、移動部材103Dが第4離間位置に配置され、移動部材105Aが第5離間位置に配置され、移動部材105Bが第6離間位置に配置された状態で、支持テーブル102の上に正極集電体3Aを載置する。
【0150】
正極集電体3Aが支持テーブル102の上に載置された状態で、切欠き34A,34Bは、第1方向における正極集電体3Aの一端部に配置され、切欠き34C,34Dは、第1方向における正極集電体3Aの他端部に配置され、切欠き34E,34Fは、第2方向における正極集電体3Aの一端部に配置され、切欠き34G,34Hは、第2方向における正極集電体3Aの他端部に配置される。
【0151】
次に、
図14に示すように、移動部材105Aを第5離間位置から第5近接位置へ移動させる。移動部材105Aが第5離間位置から第5近接位置へ向かって移動すると、正極集電体3Aは、移動部材105Aの当接部1051Aおよび当接部1052Aによって押されて、第1位置決め部104Aに向かって移動する。つまり、移動部材105Aが第5離間位置から第5近接位置へ向かって移動することにより、移動部材105Aは、支持テーブル102の上に載置された集電体3を第1位置決め部104Aに向けて移動させる。
【0152】
移動部材105Aによって押された正極集電体3Aが第1位置決め部104Aに接触することにより、正極集電体3Aは、第1方向において、支持テーブル102に位置決めされる。
【0153】
次に、
図15に示すように、移動部材105Bを第6離間位置から第6近接位置へ移動させる。移動部材105Bが第6離間位置から第6近接位置へ向かって移動すると、正極集電体3Aは、移動部材105Bの当接部1051Bおよび当接部1052Bによって押されて、第2位置決め部104Bに向かって移動する。つまり、移動部材105Bが第6離間位置から第6近接位置へ向かって移動することにより、移動部材105Bは、支持テーブル102の上に載置された集電体3を第2位置決め部104Bに向けて移動させる。
【0154】
移動部材105Aによって押された正極集電体3Aが第2位置決め部104Bに接触することにより、正極集電体3Aは、第2方向において、支持テーブル102に位置決めされる。
【0155】
正極集電体3Aが第1方向および第2方向の両方において支持テーブル102に位置決めされた状態で、切欠き34Aは、溝102Aに重なり、切欠き34Bは、溝102Bに重なり、切欠き34Cは、溝102Cに重なり、切欠き34Dは、溝102Dに重なり、切欠き34Eは、溝102Eに重なり、切欠き34Fは、溝102Fに重なり、切欠き34Gは、溝102Gに重なり、切欠き34Hは、溝102Hに重なる。
【0156】
次に、移動部材103A(
図15参照)を第1離間位置から第1近接位置へ移動させ、移動部材103C(
図15参照)を第3離間位置から第3近接位置へ移動させる。
【0157】
すると、移動部材103Aが第1近接位置に配置された状態で、
図7Aに示すように、治具RAは、切欠き34A内に配置され、治具RBは、切欠き34B内に配置される。移動部材103Cが第3近接位置に配置された状態で、治具REは、切欠き34E内に配置され、治具RFは、切欠き34F内に配置される。
【0158】
次に、上記したように、第1のセル2Aを正極集電体3Aの上に積層する。なお、このとき、第1のセル2Aを正極集電体3Aの上に積層するための作業スペースを確保するために、第1のセル2Aを正極集電体3Aの上に積層する前に、移動部材105Aを第5離間位置に配置し、移動部材105Bを第6離間位置に配置することもできる。
【0159】
次に、移動部材103B(
図15参照)を第2離間位置から第2近接位置へ移動させる。
【0160】
すると、移動部材103Bが第2近接位置に配置された状態で、
図7Bに示すように、治具RCは、切欠き34C内に配置され、治具RDは、切欠き34D内に配置される。このとき、上記したように、治具RC,RDは、第1のセル2Aを、第1方向における他方側から治具RA,RBに向けて押す。治具RC,RDによって押された第1のセル2Aは、エッジE11が治具RA,RBと接触することにより、第1方向において、正極集電体3Aに対して位置決めされる。
【0161】
つまり、集電体3が支持テーブル102の上に載置され、セル2が集電体3の上に載置され、かつ、移動部材103Aが第1近接位置に配置された状態で、移動部材103Bが第2離間位置から第2近接位置へ向かって移動することにより、治具RC,RDは、セル2のエッジE11が治具RA,RBと接触するようにセル2を治具RA,RBに向けて移動させて、第1方向において、セル2を集電体3に対して位置決めする。
【0162】
次に、移動部材103D(
図15参照)を第4離間位置から第4近接位置へ移動させる。
【0163】
すると、移動部材103Dが第4近接位置に配置された状態で、
図8Aに示すように、治具RGは、切欠き34G内に配置され、治具RHは、切欠き34H内に配置される。このとき、上記したように、治具RG,RHは、第1のセル2Aを、第2方向における他方側から治具RE,RFに向けて押す。治具RG,RHによって押された第1のセル2Aは、エッジE12が治具RE,RFと接触することにより、第2方向において、正極集電体3Aに対して位置決めされる。
【0164】
つまり、集電体3が支持テーブル102の上に載置され、セル2が集電体3の上に載置され、かつ、移動部材103Cが第3近接位置に配置された状態で、移動部材103Dが第4離間位置から第4近接位置へ向かって移動することにより、治具RG,RHは、セル2のエッジE12が治具RE,RFと接触するようにセル2を治具RE,RFに向けて移動させて、第2方向において、セル2を集電体3に対して位置決めする。
【0165】
次に、再度、移動部材103Aを第1離間位置に配置し、移動部材103Bを第2離間位置に配置し、移動部材103Cを第3離間位置に配置し、移動部材103Dを第4離間位置に配置し、移動部材105Aを第5離間位置に配置し、移動部材105Bを第6離間位置に配置して、第1のセル2Aの上に負極集電体3Bを載置する。
【0166】
次に、上記した正極集電体3Aと同様に、移動部材105Aを第5離間位置から第5近接位置へ移動させて、負極集電体3Bを、第1方向において支持テーブル102に位置決めし、移動部材105Bを第6離間位置から第6近接位置へ移動させて、負極集電体3Bを、第2方向において支持テーブル102に位置決めする。
【0167】
次に、移動部材103Aを第1離間位置から第1近接位置へ移動させて、
図8Bに示すように、治具RAを切欠き34A内に配置し、治具RBを切欠き34B内に配置する。また、移動部材103Cを第3離間位置から第3近接位置へ移動させて、治具REを切欠き34E内に配置し、治具RFを切欠き34F内に配置する。その後、負極集電体3Bの上に第2のセル2Bを積層する。
【0168】
次に、移動部材103Bを第2離間位置から第2近接位置へ移動させて、
図9Aに示すように、第2のセル2Bを、第1方向において、負極集電体3Bに対して位置決めする。
【0169】
次に、移動部材103Dを第4離間位置から第4近接位置へ移動させて、
図9Bに示すように、第2のセル2Bを、第2方向において、負極集電体3Bに対して位置決めする。
【0170】
製造装置10を用いて、セル2と集電体3とを、位置決めしつつ所望の数、積層することにより、上記した積層工程は、完了する。
【0171】
4.作用効果
(1)全固体電池1の製造方法によれば、第1基材F1の上に乾式でセル2を形成されたセル2をプレスして固めた後に、2つのセル2の間に1つの集電体3が配置されるように、セル2と集電体3とを交互に積層する。
【0172】
詳しくは、
図5Aから
図6Aに示すように、静電スクリーン印刷により、第1基材F1の上に、正極層21、固体電解質層23、および、負極層22を順に形成する。これにより、第1基材F1の上にセル2を乾式で形成する(セル形成工程)。
【0173】
次に、
図6Bに示すように、セル2の上に第2基材F2を積層して、得られた積層体Lをプレスする。これにより、セル2を固める(プレス工程)。
【0174】
次に、
図6Cに示すように、第1基材F1および第2基材F2の少なくとも一方をセル2から剥がす(剥離工程)。
【0175】
その後、
図1Bに示すように、2つのセル2の間に1つの集電体3が配置されるように、セル2と集電体3とを交互に積層する(積層工程)。
【0176】
これにより、乾式で製造されたセル2を有し、かつ、バイセル型である全固体電池1を製造できる。
【0177】
そのため、得られた全固体電池1は、湿式で製造されたセルを有する全固体電池と比べて、溶媒が揮発するときにセル中に生じる空隙、および、バインダーなどの樹脂に起因する発電効率の低下を抑制されている。また、得られた全固体電池1は、バイセル型であることによって、体積および重量の低減も図られている。
【0178】
その結果、全固体電池1の製造方法は、製造された全固体電池1のエネルギー密度の向上を図ることができる。
【0179】
(2)全固体電池1の製造方法によれば、
図8Bに示すように、積層工程において、第1のセル2Aの上に集電体3を積層する第1工程と、第1工程に続いて、集電体3の上に第2のセル2Bを積層する第2工程とを含む。
【0180】
図8Bでは、負極集電体3Bの上に第2のセル2Bを積層する、すなわち、第1のセル2Aの負極層22と接触している集電体3の上に第2のセル2Bを積層するので、第2のセル2Bの負極層22が集電体3と接触するように、集電体3の上に第2のセル2Bを積層する。
【0181】
なお、正極集電体3Aの上に第2のセル2Bを積層する場合、第2のセル2Bの正極層21が集電体3と接触するように、集電体3の上に第2のセル2Bを積層する。
【0182】
これにより、第1のセル2Aと第2のセル2Bとが1つの集電体3と接触するバイセル型の全固体電池1を製造できる。
【0183】
(3)全固体電池1の製造方法によれば、
図3Aおよび
図3Bに示すように、集電体3は、導電体31と、導電体31の周縁部に積層される絶縁部材32とを有する。
図8Aに示すように、積層工程において、セル2は、導電体31の上に積層され、かつ、絶縁部材32が、セル2の周りに配置される。
【0184】
導電体31の周縁部に絶縁部材32が積層された集電体3を使用するので、セル2と集電体3とを交互に積層するという簡単な工程で、全固体電池1を製造できる。
【0185】
(4)全固体電池1の製造方法によれば、
図3Bに示すように、絶縁部材32が、導電体31の一方面S1上に積層され、集電体3が、導電体31の他方面S2上に積層される接着剤層33を有する。
【0186】
そのため、一の集電体3の上にセル2を積層し、そのセル2の上に他の集電体3を積層した場合に、他の集電体3の接着剤層33を、一の集電体3の絶縁部材32に接着できる。
【0187】
具体的には、
図1Bに示すように、正極集電体3A(一の集電体3)の上にセル2を積層し、そのセル2の上に負極集電体3B(他の集電体3)を積層した場合に、負極集電体3Bの接着剤層33を、正極集電体3Aの絶縁部材32に接着できる。
【0188】
これにより、一の集電体3と他の集電体3との短絡を抑制できる。
【0189】
(5)全固体電池1の製造方法によれば、
図3Aに示すように、集電体3は、導電体31のエッジE1から絶縁部材32の内側まで切り欠かれた切欠き34A,34B、および、導電体31のエッジE3から絶縁部材32の内側まで切り欠かれた切欠き34E,34Fを有する。
【0190】
そして、積層工程において、
図7Aおよび
図7Bに示すように、切欠き34A内に治具RAを配置し、切欠き34B内に治具RBを配置して、治具RA,RBにセル2のエッジE11が接触するように、第1方向において、集電体3に対してセル2を位置決めする。
【0191】
また、
図7Bおよび
図8Aに示すように、切欠き34E内に治具REを配置し、切欠き34F内に治具RFを配置して、治具RE,RFにセル2のエッジE12が接触するように、第2方向において、集電体3に対してセル2を位置決めする。
【0192】
これにより、集電体3に対するセル2の位置がずれてしまうことを抑制しながら、セル2と集電体3とを簡単に積層できる。
【0193】
(6)全固体電池1によれば、
図1Bに示すように、2つのセル2の間に1つの集電体3が配置されるように、セル2と集電体3とが交互に積層されている。つまり、全固体電池1は、バイセル型の積層構造を有する。
【0194】
そのため、エネルギー密度の向上を図ることができる。
【0195】
また、集電体3は、導電体31と、導電体31の周縁部に積層された絶縁部材32とを有する。
【0196】
そのため、セル2と集電体3とを交互に積層するという簡単な工程で、導電体31同士の短絡を抑制しながら全固体電池1を製造できる。
【0197】
(7)全固体電池1によれば、
図3Aに示すように、集電体3が、導電体31のエッジE1~E4から絶縁部材32の内側まで切り欠かれた切欠き34A~34Hを有する。
【0198】
そのため、
図7A~
図8Aに示すように、切欠き34A~34Hを利用して、集電体3に対するセル2の位置がずれてしまうことを抑制しながら、セル2と集電体3とを簡単に積層できる。
【0199】
また、
図3Aに示すように、絶縁部材32の一部が切り欠かれていることにより、絶縁部材32の使用量が低減される。そのため、絶縁部材32中の水分に起因するセル2の劣化を抑制できる。
【0200】
5.変形例
以下、変形例について説明する。変形例において、上記した実施形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0201】
上記した実施形態では、剥離工程(
図6C参照)において、第1基材F1および第2基材F2の両方をセル2から剥がしている。
【0202】
対して、変形例では、第1基材F1および第2基材F2の片方だけをセル2から剥がす。なお、変形例では、セル2から剥がされない基材の材料は、導電性を有する材料に限定される。導電性を有する材料として、例えば、金属箔が挙げられる、金属箔として、例えば、アルミニウム箔が挙げられる。
【0203】
例えば、負極層22と接触する基材(第2基材F2)だけをセル2から剥がした場合、セル2と、正極層21と接触する基材(第1基材F1)とを有する積層体L1(
図16A参照)が得られる。
【0204】
剥離工程において積層体L1だけを製造した場合、積層工程において、
図16Aに示すように、積層体L1と集電体3とを交互に積層する。この場合、積層体L1の第1基材F1は、正極集電体3Aと接触する。
【0205】
また、正極層21と接触する基材(第1基材F1)だけをセル2から剥がした場合、セル2と、負極層22と接触する基材(第2基材F2)とを有する積層体L2(
図16B参照)が得られる。
【0206】
剥離工程において積層体L2だけを製造した場合、積層工程において、積層体L2と集電体3とを交互に積層する。この場合、積層体L2の第2基材F2は、負極集電体3Bと接触する。
【0207】
また、剥離工程において積層体L1と積層体L2とを製造した場合、
図16Bに示すように、積層体L1の第1基材F1が正極集電体3Aと接触し、積層体L2の第2基材F2が負極集電体3Bと接触するように、積層体L1と積層体L2と集電体3とを積層する。
【0208】
変形例でも、上記した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0209】
また、この変形例では、セル2から剥がされなかった基材(第1基材F1または第2基材F2)によって、セル2をサポートできる。そのため、セル2が崩れてしまうことを抑制できる。
【符号の説明】
【0210】
1 全固体電池
2 セル
2A 第1のセル
2B 第2のセル
21 正極層
22 負極層
23 固体電解質層
3 集電体
31 導電体
32 絶縁部材
33 接着剤層
34A 切欠き
E1 導電体のエッジ
E11 セルのエッジ
F1 第1基材
F2 第2基材
RA 治具
S1 導電体の一方面
S2 導電体の他方面