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特開2025-9507メッシュ復号装置、メッシュ復号方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009507
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】メッシュ復号装置、メッシュ復号方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 9/00 20060101AFI20250110BHJP
   H04N 19/597 20140101ALI20250110BHJP
【FI】
G06T9/00 100
H04N19/597
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112558
(22)【出願日】2023-07-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、総務省「3次元空間データの無線伝送に向けた高能率圧縮技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】明堂 絵美
(72)【発明者】
【氏名】徐 建鋒
(72)【発明者】
【氏名】岸本 広輝
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭
【テーマコード(参考)】
5C159
【Fターム(参考)】
5C159PP03
(57)【要約】
【課題】設計を容易にすること。
【解決手段】本発明に係るメッシュ復号装置200は、細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部207を備え、アトラスデータ復号部207によって復号されるシンタックスの値は、15以下となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ復号装置であって、
細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、
前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、15以下となることを特徴とするメッシュ復号装置。
【請求項2】
メッシュ復号装置であって、
細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、
前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、7以下となることを特徴とするメッシュ復号装置。
【請求項3】
メッシュ復号装置であって、
細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、
高品質と設定されている場合、前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、7以下となり、
一般品質と設定されている場合、前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、15以下となることを特徴とするメッシュ復号装置。
【請求項4】
メッシュ復号方法であって、
細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号する工程を有し、
前記工程において復号される前記シンタックスの値は、15以下となることを特徴とするメッシュ復号方法。
【請求項5】
コンピュータを、メッシュ復号装置として機能させるプログラムであって、
前記メッシュ復号装置は、細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、
前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、15以下となることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メッシュ復号装置、メッシュ復号方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、メッシュを大まかな基本メッシュと詳細な変位量とに分けて符号化及び復号を行う技術が開示されている。
【0003】
具体的には、かかる技術では、復号時、ビットストリームは、基本メッシュビットストリームと変位量ビットストリームとに多重分離される。基本メッシュビットストリームは、基本メッシュ復号部で復号された後、細分割部で細分割を繰り返され細かなメッシュが復号される。その後、変位量が加算・減算されて復号メッシュが出力される。
【0004】
非特許文献2では、非特許文献1に開示されている技術を実現するための設計がなされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Khaled Mammou, Jungsun Kim, Alexis Tourapis, Dimitri Podborski, Krasimir Kolarov, “[V-CG] Apple’s Dynamic Mesh Coding CfP Response,” ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 7 m59281, April 2022.
【非特許文献2】”WD 3.0 of V-DMC,” ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG7 w22775, April 2023
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献2では、合理的でない細分割の繰り返し回数が設定されており設計を難しくしているという問題点があった。 そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、容易な設計で実現できるメッシュ復号装置、メッシュ復号方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴は、メッシュ復号装置であって、細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、15以下となることを要旨とする。
【0008】
本発明の第2の特徴は、メッシュ復号装置であって、細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、7以下となることを要旨とする。
【0009】
本発明の第3の特徴は、メッシュ復号装置であって、細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、高品質と設定されている場合、前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、7以下となり、一般品質と設定されている場合、前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、15以下となることを要旨とする。
【0010】
本発明の第4の特徴は、メッシュ復号方法であって、細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号する工程を有し、前記工程において復号される前記シンタックスの値は、15以下となることを要旨とする。
【0011】
本発明の第5の特徴は、コンピュータを、メッシュ復号装置として機能させるプログラムであって、前記メッシュ復号装置は、細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、15以下となることを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容易な設計で実現できるメッシュ復号装置、メッシュ復号方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係るメッシュ処理システム1の構成の一例を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係るメッシュ復号装置200の機能ブロックの一例を示す図である。
図3図3は、細分割部203の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、細分割が関係するパラメータセット及びデータユニットの一例である。
図5図5は、ASPSシンタックス構成の一例について示す図である。
図6図6は、AFPSシンタックス構成の一例について示す図である。
図7図7は、PDUシンタックス構成の一例について示す図である。
図8A図8Aは、細分割部203に入力される基本メッシュを示す図である。
図8B図8Bは、1度の細分割時の細分割メッシュを示す図である。
図9A図9Aは、細分割対象の四面体の一例を示す図である。
図9B図9Bは、図9Aに示す四面体を細分割した際の細分割の繰り返し回数、必要なビット数、面数及び頂点数をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態における構成要素は、適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0015】
<第1実施形態>
以下、図1図9を参照して、本実施形態に係るメッシュ処理システムについて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るメッシュ処理システム1の構成の一例を示す図である。図1に示すように、メッシュ処理システム1は、メッシュ符号化装置100及びメッシュ復号装置200を備えている。
【0017】
図2は、本実施形態に係るメッシュ復号装置200の機能ブロックの一例を示す図である。
【0018】
図2に示すように、メッシュ復号装置200は、多重分離部201と、基本メッシュ復号部202と、細分割部203と、メッシュ復号部204と、変位量復号部205と、映像復号部206と、アトラスデータ復号部207とを有する。
【0019】
多重分離部201は、多重化されたビットストリームを、基本メッシュビットストリームと変位量ビットストリームとテクスチャビットストリームとアトラスビットストリームとに分離するように構成されている。
【0020】
基本メッシュ復号部202は、基本メッシュビットストリームを復号し、基本メッシュを生成して出力するように構成されている。
【0021】
細分割部203は、制御情報によって示された細分割手法により、基本メッシュ復号部202によって復号された基本メッシュから、追加された細分割頂点及びそれらの接続情報を生成して出力するように構成されている。
【0022】
ここで、基本メッシュ、追加された細分割頂点、及び、それらの接続情報を、併せて「細分割メッシュ」と呼ぶ。
【0023】
メッシュ復号部204は、細分割部203で生成された細分割メッシュ及び変位量復号部205で復号された変位量を用いて、復号メッシュを生成して出力するように構成されている。
【0024】
変位量復号部205は、変位量ビットストリームを復号して変位量を生成して出力するように構成されている。
【0025】
映像復号部206は、映像符号化によってテクスチャを復号して出力するように構成されている。例えば、映像復号部206は、非特許文献1のHEVCを用いてもよい。
【0026】
アトラスデータ復号部207は、アトラスビットストリームを復号し、制御情報を出力するように構成されている。
【0027】
(細分割部203)
図3は、細分割部203の動作の一例を示すフローチャートである。
【0028】
図3のステップS2031~S2033に示すように、細分割部205は、決められた細分割の繰り返し回数だけ細分割を繰り返す。
【0029】
(変位量ビットストリームの構成)
以下、図4図7を参照して、細分割に関連するビットストリームの構成の一例について説明する。
【0030】
図4は、細分割を制御する情報を含めアトラスが関係するパラメータセット及びデータユニットの一例である。これは、非特許文献2では、アトラスデータ復号部207によって得られる制御情報であるが、意味が同じであれば、別のビットストリームに移動しそこで復号されてもよい。
【0031】
図4に示すように、第1に、アトラスビットストリームは、シーケンスのアトラス情報の復号に関する制御情報の集合であるASPS(Atlas Sequence Parameter Set:アトラスシーケンスパラメータセット)を含んでいてもよい。
【0032】
第2に、アトラスビットストリームは、ASPSの後にフレームに対応する制御情報の集合であるAFPS(Atlas Frame Parameter Set:アトラスフレームパラメータセット)を含んでいてもよい。
【0033】
第3に、アトラスビットストリームは、AFPSの後に、パッチ単位のデータユニットであるPDU(Patch Data Unit:パッチデータユニット)を含んでいてもよい。
【0034】
図5図7は、シンタックスの一例について示す図である。なお、図5図7において、Descriptor欄は、各シンタックスがどのように符号化されているかを意味している。図5図7において、u(n)は、nビットの符号であることを意味する。
【0035】
図5は、ASPSシンタックス構成の一例について示す図である。
【0036】
図5において、ASPSは、細分割手法(afps_vdmc_ext_subdivision_method)を含む。
【0037】
例えば、afps_vdmc_ext_subdivision_methodが0以外のときは、細分割が行われると定義されており、ASPSが、細分割の繰り返し回数(afps_vdmc_ext_subdivision_iteration_count)を含む。これは、非特許文献2では、u(8)で与えられている。
【0038】
図6は、AFPSシンタックス構成の一例について示す図である。
【0039】
AFPSは、上書きするか否かのフラグ(afps_vdmc_ext_overriden_flag)を含む。
【0040】
例えば、afps_vdmc_ext_overriden_flagが1のときは、AFPSは、細分割を有効にするか否かのフラグ(afps_vdmc_ext_subdivision_enable_flag)を含む。
【0041】
例えば、afps_vdmc_ext_subdivision_enable_flagが1のときは、細分割が有効化される。
【0042】
細分割が有効化されたときは、AFPSは、細分割を示す手法(afps_vdmc_ext_subdivision_method)を含む。
【0043】
例えば、afps_vdmc_ext_subdivision_methodが0以外となり何らか細分割手法が指定されているときは、AFPSは、細分割の繰り返し回数(afps_vdmc_ext_subdivision_iteration_count)を含む。これは、非特許文献2では、u(8)で与えられている。
【0044】
図7は、PDUシンタックス構成の一例について示す図である。PDFは、パッチインデックスごとのデータである。
【0045】
PDUは、PDUパラメータを有効にするか否かのフラグ(pdu_parameters_enable_flag)を含む。
【0046】
例えば、pdu_parameters_enable_flagが1のとき、PDUは、細分割を有効にするか否かのフラグ(pdu_subdivision_enable_flag)を含む。
【0047】
例えば、pdu_subdivision_enable_flagが1のときは、細分割が有効化される。
【0048】
細分割が有効化されたとき、PDUは、細分割を示す手法(pdu__subdivision_method)を含む。
【0049】
例えば、pdu_subdivision_methodが0以外となり何らか細分割手法が指定されているとき、PDUは、細分割の繰り返し回数(pdu_subdivision_iteration_count)を含む。これは、非特許文献2では、u(8)で与えられている。
【0050】
(細分割部2032)
図8A及び図8Bは、1度の細分割で頂点数や面数がどのように変化するかを示したものである。
【0051】
図8Aは、細分割部203に入力される基本メッシュを示し、図8Bは、1度の細分割時の細分割メッシュを示す。
【0052】
一般的に、3角形のメッシュにMidpoint等の細分割手法を用いた場合、1度の細分割で細分割メッシュ数は、約4倍となる。
【0053】
図8Bにおいても、図8Aに対して面数が基本面数の4倍となっていることが分かる。つまり、1度細分割するごとに、面数は、分割前の面数×4となる。
【0054】
また、1度細分割するごとに、辺数は、分割前の辺数×2+面数×3となる。これは、分割前の辺が2つに分かれ、1つの面の内側に新たな辺が3つ作成されるからである。
【0055】
また、1度細分割するごとに、頂点数は、分割前の辺数+分割前の頂点数となる。これは、新たな頂点は分割前の辺の中点に1つでき、分割前の頂点と足した頂点数が新たな頂点数となるからである。面数は、頂点数の約2倍程度である。
【0056】
ここで、図9Aのような極端に小さい基本メッシュ(例えば、4つ面しかない四面体)を想定する。
【0057】
図9Bに、図9Aに示す四面体を細分割した際の細分割の繰り返し回数、必要なビット数、面数、頂点数及び頂点表現に必要なメモリをまとめた表を示す。
【0058】
図9Bに示すように、一般的な3回までの分割では細分割の繰り返し回数は2ビットで表せ、面数は256となり、頂点数は130となる。
【0059】
細分割の繰り返し回数を3ビットで表せる上限の7回とすると、面数は65,536となり、頂点数は32,770となる。
【0060】
細分割の繰り返し回数を4ビットで表す上限の15回とすると、面数は4,294,967,296(約4.3ギガ)となり、頂点数は2,147,483,650(約2.2ギガ)となる(少数点第2位を繰り上げ)。
【0061】
細分割の繰り返し回数を15回より1回多く表現に5ビット必要な16回とすると、面数は17,179,869,184(約17.2ギガ)となり、頂点数は8,589,934,594(約8.6ギガ)となる(少数点第2位を繰り上げ)。
【0062】
ここで、図9Bの条件で圧縮したメッシュデータを復号した際の1フレームのメッシュ表現に必要なメモリを、特定の細分割の繰り返し回数に対して概算する。
【0063】
実際には、メモリにロードしたデータや復号プロセスに関係するメモリも必要であるが、復号して1フレーム保持するメモリが大きいと想定されるため、こちらを概算する。
【0064】
<16回>
5ビットで細分割の繰り返し回数を表現する場合の最小の繰り返し回数である16回の場合、頂点数は約8.6ギガである。
【0065】
頂点のxyz座標は、それぞれ32ビットの小数で表されることが多い。つまり、1つの頂点に12バイト必要である。頂点の表現のみで1フレームで103.1GBが必要となる。
【0066】
また、メッシュ表現では、頂点を接続したコネクティビティ情報も必要であり、コネクティビティ情報を表現するのに各頂点で最低1回は頂点インデックスを出力する必要がある。
【0067】
頂点数が8.6ギガの場合、各頂点のインデックス表現に33ビット必要となり、約4バイト必要となる。
【0068】
コネクティビティ情報の表現に1フレームでは8.6×4=34.4GBが必要である。よって、テクスチャ等を含まないメッシュ表現に1フレームあたり103.1+34.4=137.5GBが最低でも必要となる。
【0069】
現在のハイエンドなデスクトップパソコンでも最大128GBのメモリが一般的であり、16回の細分割の繰り返し回数は現実的でない。
【0070】
このように、メッシュの表現では、面や頂点に対して様々な情報を取り扱う必要があるため、メモリの量が膨大となり、メモリの観点で実装が非常に難しい。
【0071】
<15回>
4ビットで細分割の繰り返し回数を表現する場合の最大の繰り返し回数である15回の場合、頂点数は約2.2ギガである。
【0072】
頂点のxyz座標は、それぞれ32ビットの小数で表されることが多い。つまり、1つの頂点に12バイト必要である。頂点の表現のみで1フレームで25.8GB必要となる。
【0073】
また、メッシュ表現では、頂点を接続したコネクティビティ情報も必要であり、コネクティビティ情報を表現するのに各頂点で最低1回は頂点インデックスを出力する必要がある。
【0074】
頂点数が2.2ギガの場合、各頂点のインデックス表現に31ビット必要となり、約4バイト必要となる。
【0075】
コネクティビティ情報の表現に1フレームでは2.2×4=8.8GBが必要である。よって、テクスチャ等を含まないメッシュ表現に1フレームあたり25.8+8.8=34.6GBが最低でも必要となる。
【0076】
ただし、64GB~128GBのメモリであれば、その表現は可能である。細分割の繰り返し回数は合理的な範囲で設定することが重要であり、15回以下が望ましい。
【0077】
しかし、64GB以上のメモリは、ハイエンドな端末であり、一般に普及させるには問題がある。また、テクスチャやバッファや自由な形状等を想定すると15回の細分割では難しい場合がある。
【0078】
<8回>
4ビットで細分割の繰り返し回数を表現する場合の最小の繰り返し回数である8回の場合、頂点数は131,074である。
【0079】
頂点のxyz座標は、それぞれ32ビットの小数で表されることが多い。つまり1つの頂点に12バイト必要である。頂点の表現のみで1フレームで1,572,888B必要となる。
【0080】
また、メッシュ表現では、頂点を接続したコネクティビティ情報も必要であり、コネクティビティ情報を表現するのに各頂点で最低1回は頂点インデックスを出力する必要がある。
【0081】
頂点数が131,074の場合、各頂点のインデックス表現に18ビット必要となり、約2バイト必要となる。
【0082】
コネクティビティ情報の表現に1フレームでは131,074×2=262,148Bが必要である。よって、テクスチャ等を含まないメッシュ表現に1フレームあたり1,572,888+262,148=1,835,036≒1.8MBが最低でも必要となる。
【0083】
以上のように、形状が複雑でなくテクスチャ情報も含まない場合は、一般的に最小限となる1GB程度のメモリでも表現可能である。
【0084】
しかし、細分割をしない場合の基本的なメッシュの形状がある程度複雑で、頂点数が4ではなく514とする。
【0085】
これは、MPEGテストシーケンスで用いられる細分割前のフレーム辺り頂点数でも見られる値であり、細分割の繰り返し回数が3回で面数約65,0000となる。
【0086】
もしも細分割の繰り返し回数を8回とした場合、面数は67,108,864となり、頂点数は約33,554,434となる。頂点の表現のみで1フレーム33,554,434×12=402,653,208Bとなる。
【0087】
コネクティビティ情報を表現するには、各頂点のインデックス表現に26ビット必要となり、約3バイト必要となる。つまり、33,554,434×3=100,663,302Bとなる。メッシュ表現に1フレームあたり503,316,510B(約503MB)必要となる。
【0088】
復号プロセスで過去の複数フレームデータを参照する場合等を考慮すると、テクスチャがない場合においても、一部のパッチのみに細分割の繰り返し回数を限定する必要がある場合がある。
【0089】
また、テクスチャを考慮すると、xyz座標の頂点をuv座標にマッピングする必要がある。u及びvのそれぞれを32ビット小数とする場合、33,554,434×8=268,435,472Bとなる。合計して約750MBのメモリが1フレームあたり必要である。
【0090】
メモリが最近のPCメモリの最小単位でありエッジ端末でも問題ない1GB程度である場合、ほぼテクスチャを表現するメモリはなく、過去のフレームをバッファに持つ等の複雑な復号プロセスも難しい。
【0091】
<7回>
3ビットで細分割の繰り返し回数を表現する場合の最大の繰り返し回数である7回の場合、頂点数は約32,770である。頂点のxyz座標は、それぞれ32ビットの小数で表されることが多い。つまり、1つの頂点で12バイト必要である。頂点の表現のみで1フレーム393,240B(約394kB)必要となる。
【0092】
また、メッシュ表現では、頂点を接続したコネクティビティ情報も必要であり、コネクティビティ情報を表現するのに各頂点で最低1回は頂点インデックスを出力する必要がある。
【0093】
頂点数が32,770の場合、各頂点のインデックス表現に16 ビット必要となり、約2バイト必要となる。コネクティビティ情報の表現に1フレームでは32,770×2=65,540B(約66kB)が必要である。
【0094】
よって、テクスチャ等を含まないメッシュ表現に1フレームあたり393,240+65,540=458,780B(約458kB)が最低でも必要となる。
【0095】
ロードしたデータの保持やデコーディングプロセスやテクスチャにかかるメモリ、細分割前の頂点数を含めて自由度は高くなる。
【0096】
ここで、細分割の繰り返し回数が8回のときと同様に、細分割前の基本的なメッシュ頂点数が4ではなく514を想定する。
【0097】
8回の時の約1/4となるので、1フレームあたりのテクスチャの座標を入れても約190MBとなる。
【0098】
1GBメモリでも過去のフレームを保持する複雑な復号プロセスやカラーのテクスチャ情報を表現することが可能になってくる。
【0099】
<3回>
2ビットで細分割の繰り返し回数を表現する場合の最大の繰り返し回数である3回の場合、これは、現在の参照ソフトウェアのデフォルト値として使われ、複雑なテクスチャを持つ場合でも復号でき、ベースラインとなっている。ベースラインであるため、メモリを含め設計が容易である。
【0100】
一方、ユースケースによっては凸凹が主観的に目立つ場合もあり、ユースケースに応じて細分割繰り返し回数を4回以上に増やせることも望ましい。
【0101】
以上をまとめると、表現に5ビット必要な細分割の繰り返し回数(16回)は、メモリの観点でほぼどの端末でも不能であり、4ビット以下(15回以下)が望ましい。
【0102】
しかしながら、4ビットの場合は、ハイスペックなメモリ要求(15回)や複雑な形状の表現や複雑な復号プロセスや複雑なテクスチャの両立が難しい(8回)等の制約があるため、3ビット以下の細分割の繰り返し回数(7回以下)がより望ましい。
【0103】
また、求めるレベルにより細分割の繰り返し回数の上限を変更してもよい。例えば、3つのレベルを想定した場合、一般品質となる低レベル用には細分割の繰り返し回数を2ビットで表現できる範囲までとし、高品質となる中レベル用には細分割の繰り返し回数を3ビットで表現できる範囲までとし、超高品質となる高レベル用には細分割の繰り返し回数を4ビットで表現できる範囲までとしてもよい。
【0104】
本実施形態によれば、細分割の繰り返し回数に関して合理的な制約を規定することで設計を容易にすることができる。
【0105】
上述のメッシュ符号化装置100及びメッシュ復号装置200は、コンピュータに各機能(各工程)を実行させるプログラムであって実現されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
なお、本実施形態によれば、例えば、動画像通信において総合的なサービス品質の向上を実現できることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0107】
1…メッシュ処理システム
100…メッシュ符号化装置
200…メッシュ復号部
201…多重分離部
202…基本メッシュ復号部
203…細分割部
204…メッシュ復号部
205…変位量復号部
206…映像復号部
207…アトラスデータ復号部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
【手続補正書】
【提出日】2024-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッシュ復号装置であって、
細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、
前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、以下となることを特徴とするメッシュ復号装置。
【請求項2】
メッシュ復号装置であって、
細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、
高品質と設定されている場合、前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、7以下となり、
一般品質と設定されている場合、前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、15以下となることを特徴とするメッシュ復号装置。
【請求項3】
メッシュ復号方法であって
細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号する工程を有し、
前記工程において復号される前記シンタックスの値は、7以下となることを特徴とするメッシュ復号方法
【請求項4】
コンピュータを、メッシュ復号装置として機能させるプログラムであって、
前記メッシュ復号装置は、細分割の繰り返し回数の最大値を規定するシンタックスを復号するように構成されるアトラスデータ復号部を備え、
前記アトラスデータ復号部によって復号される前記シンタックスの値は、7以下となることを特徴とするプログラム