(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009527
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】測定器、測定システム、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20250110BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
H04Q9/00 311H
G08C15/00 Z
H04Q9/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112594
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】寺腰 遼
(72)【発明者】
【氏名】志塚 佳彦
【テーマコード(参考)】
2F073
5K048
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA11
2F073AA16
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB01
2F073BB04
2F073BB07
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC06
2F073CC07
2F073CC12
2F073CC14
2F073CD11
2F073DE02
2F073DE06
2F073DE13
2F073EE01
2F073EE16
2F073FF01
2F073FF12
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG08
2F073GG09
5K048AA04
5K048AA13
5K048BA34
5K048DA02
5K048EB02
5K048EB10
5K048FB09
5K048FB15
5K048HA01
5K048HA02
5K048HA21
(57)【要約】
【課題】利便性を向上させることが可能な測定器を提供する。
【解決手段】測定器10は、他の測定器20を遠隔操作する測定器10であって、他の測定器20の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる測定器10での入力操作に従って他の測定器20を操作する第2処理の少なくとも一方を実行する制御部16、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の測定器を遠隔操作する測定器であって、
前記他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる前記測定器での入力操作に従って前記他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行する制御部、
を備える、
測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の測定器であって、
前記第1処理は、前記第1画像をキャプチャするための第1コマンドを前記制御部が前記他の測定器に送信することを含む、
測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の測定器であって、
前記第1処理は、前記第1コマンドに従ってキャプチャされた前記第1画像を前記測定器に転送させるための第2コマンドを前記制御部が前記他の測定器に送信することを含む、
測定器。
【請求項4】
請求項3に記載の測定器であって、
前記第1処理は、前記第1コマンド及び前記第2コマンドを対として前記制御部が前記他の測定器に周期的に送信することを含む、
測定器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の測定器であって、
前記第1処理は、前記測定器が本来映し出す第2画像と共に前記第1画像を前記制御部が表示させることを含む、
測定器。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の測定器であって、
複数の前記他の測定器を遠隔操作し、
前記第1処理は、複数の前記他の測定器の画面にそれぞれ映し出される複数の前記第1画像を前記制御部が一括して表示させることを含む、
測定器。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の測定器であって、
出力部をさらに備え、
前記第1処理は、前記制御部が前記第1画像を前記出力部に表示させることを含む、
測定器。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の測定器であって、
前記第2処理は、前記入力操作に従った操作イベントを前記他の測定器に実行させるための第3コマンドを前記制御部が前記他の測定器に送信することを含む、
測定器。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の測定器と、
前記測定器によって遠隔操作される少なくとも1つの前記他の測定器と、
を備える、
測定システム。
【請求項10】
他の測定器を遠隔操作する制御方法であって、
前記他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる前記測定器での入力操作に従って前記他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行すること、
を含む、
制御方法。
【請求項11】
他の測定器を遠隔操作する測定器に、
前記他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる前記測定器での入力操作に従って前記他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行すること、
を含む動作を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定器、測定システム、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定器の遠隔操作に関連する技術が知られている。例えば、特許文献1には、既存のリモート制御対象測定器自体を改造、又は購入し直すことなくネットワークを介して測定器のリモート操作を行えるようにするリモート測定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、他の測定器を遠隔操作する測定器の利便性について改善の余地があった。
【0005】
本開示は、利便性を向上させることが可能な測定器、測定システム、制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る測定器は、他の測定器を遠隔操作する測定器であって、前記他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる前記測定器での入力操作に従って前記他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行する制御部、を備える。
【0007】
これにより、測定器は、利便性を向上させることができる。測定器は、他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる測定器での入力操作に従って他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行する。したがって、測定器及び他の測定器を含む測定器を複数利用するユーザにとって測定器に対する利便性が向上する。
【0008】
一実施形態における測定器では、前記第1処理は、前記第1画像をキャプチャするための第1コマンドを前記制御部が前記他の測定器に送信することを含んでもよい。これにより、測定器は、他の測定器における第1画像のキャプチャ処理を、第1処理における第1コマンドに基づき正確に実行させることが可能である。
【0009】
一実施形態における測定器では、前記第1処理は、前記第1コマンドに従ってキャプチャされた前記第1画像を前記測定器に転送させるための第2コマンドを前記制御部が前記他の測定器に送信することを含んでもよい。これにより、測定器は、他の測定器における第1画像の測定器への転送処理を、第1処理における第2コマンドに基づき正確に実行させることが可能である。
【0010】
一実施形態における測定器では、前記第1処理は、前記第1コマンド及び前記第2コマンドを対として前記制御部が前記他の測定器に周期的に送信することを含んでもよい。これにより、測定器は、他の測定器から周期的に第1画像を取得し、リアルタイムに更新された第1画像を、出力部を介してユーザに提供することができる。ユーザは、リアルタイムに、かつ円滑に変化する信号波形を、測定器の出力部に表示された第1画像に基づいて容易に確認することも可能である。
【0011】
一実施形態における測定器では、前記第1処理は、前記測定器が本来映し出す第2画像と共に前記第1画像を前記制御部が表示させることを含んでもよい。これにより、ユーザは、測定器の画面上で、他の測定器の各々の第1画像を第2画像と共に視認可能であり、これらの画像を操作することもできる。ユーザは、測定データを確認した後に設定を変更して再度測定を行うときに、他の測定器で測定した測定データを確認しながら、第2処理に基づいて他の測定器を遠隔操作することも可能である。
【0012】
一実施形態における測定器は、複数の前記他の測定器を遠隔操作し、前記第1処理は、複数の前記他の測定器の画面にそれぞれ映し出される複数の前記第1画像を前記制御部が一括して表示させることを含んでもよい。これにより、ユーザは、測定器の画面上で、他の測定器の各々の第1画像を視認可能であり、これらの画像を操作することもできる。ユーザは、測定データを確認した後に設定を変更して再度測定を行うときに、他の測定器で測定した測定データを確認しながら、第2処理に基づいて他の測定器を遠隔操作することも可能である。
【0013】
一実施形態における測定器は、出力部をさらに備え、前記第1処理は、前記制御部が前記第1画像を前記出力部に表示させることを含んでもよい。これにより、ユーザは、測定器に備わっている既存のディスプレイを用いて、他の測定器の第1画像を容易に確認できる。
【0014】
一実施形態における測定器では、前記第2処理は、前記入力操作に従った操作イベントを前記他の測定器に実行させるための第3コマンドを前記制御部が前記他の測定器に送信することを含んでもよい。これにより、測定器は、他の測定器の遠隔操作を、第2処理における第3コマンドに基づき正確に実行することが可能である。
【0015】
幾つかの実施形態に係る測定システムは、上記のいずれかに記載の測定器と、前記測定器によって遠隔操作される少なくとも1つの前記他の測定器と、を備える。
【0016】
これにより、測定システムは、測定器の利便性を向上させることができる。測定器は、他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる測定器での入力操作に従って他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行する。したがって、測定器及び他の測定器を含む測定器を複数利用するユーザにとって測定器に対する利便性が向上する。
【0017】
幾つかの実施形態に係る制御方法は、他の測定器を遠隔操作する制御方法であって、前記他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる前記測定器での入力操作に従って前記他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行すること、を含む。
【0018】
これにより、制御方法を実行する測定器は、利便性を向上させることができる。測定器は、他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる測定器での入力操作に従って他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行する。したがって、測定器及び他の測定器を含む測定器を複数利用するユーザにとって測定器に対する利便性が向上する。
【0019】
幾つかの実施形態に係るプログラムは、他の測定器を遠隔操作する測定器に、前記他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる前記測定器での入力操作に従って前記他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行すること、を含む動作を実行させる。
【0020】
これにより、測定器は、利便性を向上させることができる。測定器は、他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる測定器での入力操作に従って他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行する。したがって、測定器及び他の測定器を含む測定器を複数利用するユーザにとって測定器に対する利便性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一実施形態に係る測定器、測定システム、制御方法、及びプログラムによれば、利便性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の一実施形態に係る測定器を含む測定システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の測定器により実行される制御方法の第1例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図1の他の測定器により実行される制御方法の第1例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図1の測定器により実行される制御方法の第2例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図1の他の測定器により実行される制御方法の第2例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図1の測定器による処理の第1例を説明するための模式図である。
【
図7】
図1の測定器による処理の第2例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
従来技術の背景及び問題点についてより詳細に説明する。
【0024】
従来、1つの測定器をメインユニットとし、他の測定器をサブユニットとして、メインユニットに基づきサブユニットを制御するためのシステムが知られている。例えば、当該システムでは、メインユニットに複数のサブユニットが接続されている。複数のサブユニットの接続は、例えば、メインユニットを中心としたスター型トポロジの接続を含む。メインユニットと各サブユニットとは、有線を介して物理的に接続されている。
【0025】
このような接続が行われることで、複数のサブユニットの測定タイミングを同期させて信号波形を測定することができる。具体的な動作としては、メインユニットが測定データの取得を開始すると、全てのサブユニットが同期して信号波形の測定データの取得を開始する。メインユニットが測定データの取得を終了すると、全てのサブユニットが同期して信号波形の測定データの取得を終了する。
【0026】
例えば、メインユニットが、測定データの取得を開始するための入力操作を受け付けて測定データの取得を開始すると、メインユニットに接続されているサブユニットも同期して測定データの取得を開始する。その後、メインユニットが、測定データの取得を終了するための入力操作を受け付けて測定データの取得を終了すると、メインユニットに接続されているサブユニットも同期して測定データの取得を終了する。
【0027】
以上のような機能により、単体の測定器では測定が困難であるチャネル数で測定対象の測定データを高い同期確度で取得することができる。同期測定が行われるとき、一部の条件とイベントとは、メインユニットとサブユニットとの間で共有される。条件は、データの総保存点数及びデータ取得時間などを含む。イベントは、波形取得開始、波形取得終了、及び波形データ保存などを含む。
【0028】
メインユニットとサブユニットとは、物理的な接続を介し、プロトコルを通じて接続されている。したがって、メインユニットとサブユニットとが互いに離れている場合であっても、高い同期確度で測定を行うことができる。
【0029】
上述したとおり、メインユニットとサブユニットとの接続では、信号波形の測定データの取得を同期させるために、データの総保存点数及びデータ取得時間などの条件、並びに波形取得開始、波形取得終了、及び波形データ保存などのイベントのみが共有されていた。他の設定情報などは、メインユニットとサブユニットとの間で同期されていなかった。設定情報は、測定に用いる測定モジュールの種類及び測定パラメータの種類などを含む。
【0030】
メインユニットとサブユニットとは、有線で接続されており、設定情報及び信号波形の測定データを互いにやり取りすることも原理的には可能であった。しかしながら、以下のような主に2つの問題が生じていた。これにより、設定情報及び信号波形の測定データを互いに転送することが困難であり、その機能が実現されていなかった。
【0031】
1つ目の問題は、測定器におけるメモリの制限に起因する。測定器は、設定情報及び信号波形の測定データを格納するメモリを有する。測定器は、データ転送においてデータを受け取るとき、当該測定器の現在の設定情報及び信号波形の測定データをメモリに格納し続けながら、データを送る側の測定器の設定情報及び信号波形の測定データをメモリにさらに格納する必要がある。このようなことは、測定器のメモリ容量に鑑みると困難である。
【0032】
2つ目の問題は、やり取りを行うデータ転送のパフォーマンスに起因する。測定器は、測定データを取得し記録することを目的とした装置である。したがって、測定条件によっては記録される測定データは膨大な量になり得る。測定条件は、測定点の数などを含む。
【0033】
この点を踏まえて、メインユニットとサブユニットとの間で設定情報及び信号波形の測定データに関するデータ転送を考えると、仮にデータを受け取る側の測定器のメモリが十分に残っていたとしても、データ転送そのものに多くの時間を要する。したがって、測定器として用いることが困難なほどのパフォーマンスに陥ってしまう可能性も多々ある。
【0034】
以上のような問題に起因して、測定器を複数利用するユーザにとっては利便性が低い仕様がいくつか存在する。以下にそのような例をいくつか示す。
【0035】
測定器が複数互いに接続され、同期して測定データが取得されたとしても、取得された測定データ及び設定情報は、それぞれの測定器で保持されることになる。ユーザは、測定データを確認したり、設定情報を変更したりするために、各測定器に対して個別に対応しなければならなかった。したがって、ユーザは、測定の対象に応じた設定を測定器ごとに個別で行う必要があった。
【0036】
ユーザは、測定器同士が近くに配置されているとき、これらの測定器をまとめて操作することもできる。しかしながら、ユーザは、測定器同士を接続している有線の長さに依存して測定器同士が離れて配置されているとき、これらの測定器をまとめて操作することは困難である。例えば、数メートルのケーブルで測定器同士が接続されている場合もあれば、数十メートルのケーブルで測定器同士が接続されている場合もある。ユーザは、例えば、数十メートルのケーブルで測定器同士が接続されている場合、これらの測定器をまとめて操作することは非常に困難である。
【0037】
例えば、ユーザは、設定情報及び測定条件などを変えるとき、測定器から測定器に移動して測定器ごとに操作を行う必要があった。このような状況では、ユーザは、測定準備に多くの時間を要してしまう。結果として、測定器の利便性が低下していた。
【0038】
測定中においては、各測定器は、それ自体で取得している測定データをそれ自体で表示する。このとき、互いに接続されている複数の測定器のうちの1つの測定器で測定データの取得が問題なく実行されているときでも、接続中の他の測定器で同様に問題なく測定データが取得されているとは限らない。しかしながら、他の測定器で同様に問題なく測定データが取得されているか否かを現状確認する方法は、ユーザが各測定器の画面を実際に確認する方法、又はPC(Personal Computer)などを使用して確認する方法に限定される。
【0039】
加えて、ユーザは、1つの測定器を通じて他の測定器も一括して測定結果を確認することが困難であった。測定データは、測定器ごとに取得されており、複数接続が行われて測定チャネルの数が多くなったといえども、測定チャネルごとに対応する測定器に格納されるためである。したがって、ユーザは、測定データ同士の相関などを確認しようとしても、1つの測定器を用いてその場で確認をすることが困難であった。ユーザは、測定データの確認及び解析において、測定データを各測定器からPCなどに一度集約しないと、測定結果を正しく判断できなかった。
【0040】
以上は、測定器の仕様に起因する問題である。
【0041】
加えて、ソフトウェアの観点に着目すると、リソースの再利用についての問題が生じる。複数接続用に設定情報及び信号波形の測定データを測定期間でやり取りすることができるように、設定情報及び信号波形の測定データのやり取りを行うための設定メニューのインタフェースを新たに作成することは、一応は可能である。設定メニューが新規に作成されることで、ユーザは、複数接続中の測定器の中の1つを用いて他の測定器から設定情報及び信号波形の測定データを取得することも一応は可能である。
【0042】
しかしながら、複数接続中の測定器間で設定情報及び信号波形の測定データをやり取りする処理は、既存の仕組みに対して例外的なものと捉えられ、ソフトウェアの設計を必要とする。設定メニューを新規に作成することは、そのためのリソースを付加的に必要とし、既存のリソースを再利用するものではない。したがって、様々な問題を引き起こす可能性がありリスクが高い。
【0043】
測定器間でのやり取りという前提条件はあるものの、実際に行いたいことは測定器単体では問題なく実現できていることである。それにも関わらず、例外的な対応を行うことは、問題なく動作している既存のリソースを用いることなく新規で一からリソースを追加することを意味する。このような対応が行われることで、開発者は、新規リソースをまずは実装し、それが正常に動作しているか否かの検証を行う必要がある。また、保守を行う場合でも、新規リソース分の保守作業が既存のリソースの保守作業に加わり、作業が増えてしまう。
【0044】
したがって、設定情報及び信号波形の測定データのやり取りを実現するためにリソースを再利用することなく機能を追加することは、ソフトウェアを開発するうえで極力回避すべきである。
【0045】
以上のとおり、現状では、測定器自体に起因する問題及びソフトウェアに起因する問題が生じており、複数接続時の操作性及び利便性が著しく低下している。
【0046】
本開示は、以上のような問題点を解決するために、利便性を向上させることが可能な測定器、測定システム、制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。例えば、本開示は、複数接続時の測定器の操作性の改善、並びに測定に伴うユーザからの情報の入力及びユーザによる情報の確認の円滑化を可能にする測定器、測定システム、制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【0047】
以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態に係る測定器10について主に説明する。以下の説明は、本開示を適用した、測定器10を有する測定システム1、並びに測定器10が実行する制御方法及びプログラムにも当てはまる。
【0048】
図1は、本開示の一実施形態に係る測定器10を含む測定システム1の概略構成を示すブロック図である。
図1では、実線矢印は、信号波形の測定データの流れを示す。破線矢印は、制御情報の流れを示す。
図1を参照しながら、本開示の一実施形態に係る測定器10を含む測定システム1の概要について主に説明する。測定システム1は、測定器10に加えて、他の測定器20を有する。
【0049】
図1では説明の簡便のため、測定器10について1つのみ図示しているが、測定システム1が有する測定器10の数は2つ以上であってもよい。
図1では、他の測定器20について1つのみ図示しているが、測定システム1が有する他の測定器20の数は2つ以上であってもよい。
【0050】
測定器10と他の測定器20とは、有線又は無線により互いに通信可能に接続されている。測定器10と他の測定器20とは、移動体通信網及びインターネットなどを含むネットワークを介さずに互いに直接的に通信可能に接続されていてもよいし、当該ネットワークを介して互いに通信可能に接続されていてもよい。
【0051】
測定器10は、他の測定器20を遠隔操作する。測定器10は、測定器10及び他の測定器20を含む測定器が複数互いに接続されている測定システム1において、メインユニットとして機能する。他の測定器20は、測定器が複数互いに接続されている測定システム1において、メインユニットに基づき制御されるサブユニットとして機能する。
【0052】
例えば、
図1に示される測定システム1では、1つのメインユニットに1つのサブユニットが接続されている。これに限定されず、1つのメインユニットに対して複数のサブユニットが接続されていてもよい。少なくとも1つのメインユニットの各々に対して少なくとも1つのサブユニットが接続されていればよい。1つのメインユニットに対する複数のサブユニットの接続は、例えば、メインユニットを中心としたスター型トポロジの接続を含んでもよい。
【0053】
測定器10は、測定対象となる物理量に対する測定処理を実行して測定値を取得する任意の機器を含む。測定器10は、例えば、波形測定器及び光測定器などを含む。測定器10は、測定対象に対して測定処理を実行することで測定データを生成する。
【0054】
本開示において、「物理量」は、例えば波形測定器及び光測定器などを含む測定器10が配置されているネットワークにおいて測定器10により測定される、電気信号に関連するパラメータ、温度、加速度、及び光信号に関連するパラメータなどを含む。
【0055】
他の測定器20は、測定器10と同様に構成される。測定器10の構成に関連する説明と同様の内容が他の測定器20にも当てはまる。以下では、他の測定器20の構成に関連する説明は適宜省略する。
【0056】
測定器10は、通信部11と、記憶部12と、変換部13と、入力部14と、出力部15と、制御部16と、を有する。
【0057】
通信部11は、他の測定器20との通信を可能にする、有線又は無線に基づく1つ以上の通信インタフェースを含む。当該通信インタフェースは、ネットワークに接続されてもよい。当該通信インタフェースは、例えば、4G(4th Generation)及び5G(5th Generation)などの移動体通信規格、有線LAN(Local Area Network)規格、又は無線LAN規格に対応してもよいが、これらに限定されず任意の通信規格に対応してもよい。例えば、当該通信インタフェースは、近距離無線通信規格にも対応してもよい。一実施形態において、測定器10は、通信部11を介して他の測定器20と通信可能に接続されている。通信部11は、多様な情報及びデータを他の測定器20との間で送信及び受信する。
【0058】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などの記憶モジュールを含む。記憶部12は、測定器10の動作を実現するために必要な情報を記憶する。記憶部12は、測定器10の動作によって得られた情報を記憶する。例えば、記憶部12は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び通信などの任意の手段で取得される各種データなどを記憶する。
【0059】
記憶部12は、主記憶モジュール、補助記憶モジュール、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、測定器10に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートなどによって接続されている外付け型の記憶モジュールを含んでもよい。
【0060】
記憶部12は、例えば、ストレージ121、ROM122、RAM123、表示メモリ124、及び波形メモリ125を有する。ROM122は、動作プログラムを記憶する。RAM123は、一時データを記憶する。波形メモリ125は、信号入力を受けて変換部13によりアナログ信号からデジタル信号に変換された信号のデータを記憶する。表示メモリ124は、波形メモリ125に格納されたデータを制御部16が処理した後に、信号波形の測定データを表示するための表示内容を表示データとして記憶する。
【0061】
ストレージ121は、波形メモリ125に格納されたデータを、信号波形の測定データのファイルとして記憶する。制御部16は、ユーザによるセーブ実行キーの操作を入力部14が受け付けると、波形メモリ125に格納されたデータを、信号波形の測定データとして所定のファイルフォーマットに変換し、測定データのファイルをストレージ121に格納する。
【0062】
変換部13は、測定対象に対する測定を測定器10が実行するときに信号入力を受ける。変換部13は、入力された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する1つ以上の回路モジュールを含む。当該回路モジュールは、A/D(Analog to Digital)コンバータなどを含む。
【0063】
入力部14は、ユーザ入力を検出して、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。当該入力インタフェースは、物理キー、静電容量キー、出力部15のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、カメラなどの撮像モジュール、及び音声入力を受け付けるマイクロフォンなどを含む。
【0064】
出力部15は、情報を出力してユーザに通知する1つ以上の出力インタフェースを含む。当該出力インタフェースは、情報を画像で出力するディスプレイ、情報を音で出力するスピーカ、及び情報を振動で出力するバイブレータなどを含む。ディスプレイは、LCD(Liquid Crystal Display)及び有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどを含む。出力部15は、表示メモリ124に格納された表示データを参照することで、測定器10が実際に取得した信号波形の測定データを画面に表示して可視化する。
【0065】
制御部16は、1つ以上のプロセッサを含む。本開示において、「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。制御部16は、測定器10を構成する各構成部と通信可能に接続され、測定器10全体の動作を制御する。
【0066】
測定器10の制御部16は、他の測定器20の画面に映し出される第1画像を出力部15に表示させる第1処理及びユーザによる測定器10での入力部14を用いた入力操作に従って他の測定器20を操作する第2処理の少なくとも一方を実行する。本開示において、「第1画像」は、静止画又は動画を含む。以下では、測定器10の制御部16によって実行される第1処理及び第2処理の各々について、詳細に説明する。
【0067】
測定システム1では、メインユニットが接続されているサブユニットの画面の第1画像が画像データとしてメインユニットに転送される。第1画像は、メインユニットの画面にも表示される。加えて、メインユニットの物理キー及びタッチスクリーンなどからの入力情報がサブユニットに転送され、サブユニット自体に操作イベントに関する処理を実行させることで、メインユニットからサブユニットへの遠隔操作が可能になる。
【0068】
サブユニットの第1画像を画像データとしてメインユニットに転送し、メインユニットの画面に表示させる第1処理と、メインユニットの入力情報をサブユニットに転送し、サブユニット自体に処理を実行させるための第2処理とは、互いに独立している。画像データの転送に関する第1処理では、一定周期で第1画像の更新処理が実行されることで、ユーザは、遅延が軽減された状態でリアルタイムにサブユニットの第1画像をメインユニットで確認することができる。以上の状態のことをリモートコントロール中と定義する。
【0069】
図2は、
図1の測定器10により実行される制御方法の第1例を説明するためのフローチャートである。
図2を参照しながら、
図1の測定器10が実行する制御方法の第1例について主に説明する。
図2に示されるフローチャートは、測定器10の制御部16によって実行される第1処理の流れを示す。
【0070】
ステップS101では、測定器10の制御部16は、第1処理を開始するための第1要求を取得する。例えば、制御部16は、測定器10の入力部14を用いてユーザにより入力された入力情報に基づいて第1要求を取得する。ユーザは、測定器10に第1処理を実行させるときに、測定器10の入力部14を用いながら、第1処理を開始するための入力操作を行う。
【0071】
ステップS102では、測定器10の制御部16は、ステップS101において取得された第1要求を、通信部11を介して他の測定器20に送信する。
【0072】
ステップS103では、測定器10の制御部16は、第1画像をキャプチャするための第1コマンドを、通信部11を介して他の測定器20に送信する。
【0073】
ステップS104では、測定器10の制御部16は、ステップS103において送信された第1コマンドに従って他の測定器20によりキャプチャされた第1画像を測定器10に転送させるための第2コマンドを、通信部11を介して他の測定器20に送信する。
【0074】
ステップS105では、測定器10の制御部16は、ステップS104において送信された第2コマンドに基づいて、第1画像を、通信部11を介して他の測定器20から取得する。
【0075】
ステップS106では、測定器10の制御部16は、ステップS105において取得された第1画像を、出力部15のディスプレイなどに表示させる。
【0076】
ステップS107では、測定器10の制御部16は、第1処理を終了するための第2要求を取得したか否かを判定する。例えば、制御部16は、測定器10の入力部14を用いてユーザにより入力された入力情報に基づいて第2要求を取得したか否かを判定する。例えば、ユーザは、測定器10に第1処理を停止させるときに、測定器10の入力部14を用いながら、第1処理を終了するための入力操作を行う。制御部16は、第1処理終了の第2要求を取得したと判定すると、ステップS108の処理を実行する。制御部16は、第1処理終了の第2要求を取得していないと判定すると、ステップS103の処理を再度実行する。
【0077】
測定器10の制御部16は、ステップS107において第1処理終了の第2要求を取得していないと判定すると、第1コマンド及び第2コマンドを、通信部11を介して他の測定器20に繰り返し送信する。制御部16は、第1コマンド及び第2コマンドを対として、通信部11を介し他の測定器20に周期的に送信する。制御部16は、他の測定器20から取得した画像を周期的に更新しながら、出力部15のディスプレイなどに表示させる。
【0078】
ステップS108では、測定器10の制御部16は、ステップS107において第1処理終了の第2要求を取得したと判定すると、取得された第2要求を、通信部11を介して他の測定器20に送信する。
【0079】
図3は、
図1の他の測定器20により実行される制御方法の第1例を説明するためのフローチャートである。
図3を参照しながら、
図1の他の測定器20が実行する制御方法の第1例について主に説明する。
図3に示されるフローチャートは、測定器10の制御部16によって実行される第1処理に対応して他の測定器20により実行される処理の流れを示す。他の測定器20は、測定器10の通信部11、記憶部12、変換部13、入力部14、出力部15、及び制御部16とそれぞれ対応する構成部として、通信部21、記憶部22、変換部23、入力部24、出力部25、及び制御部26を有する。
【0080】
ステップS201では、他の測定器20の制御部26は、
図2のステップS102で測定器10において送信された第1要求を、通信部21を介して測定器10から受信する。
【0081】
ステップS202では、他の測定器20の制御部26は、
図2のステップS103で測定器10において送信された第1コマンドを、通信部21を介して測定器10から受信する。
【0082】
ステップS203では、他の測定器20の制御部26は、ステップS202において取得された第1コマンドに従って、他の測定器20の出力部25のディスプレイに映し出されている第1画像をキャプチャする。
【0083】
ステップS204では、他の測定器20の制御部26は、
図2のステップS104で測定器10において送信された第2コマンドを、通信部21を介して測定器10から受信する。
【0084】
ステップS205では、他の測定器20の制御部26は、ステップS204において取得された第2コマンドに従って、ステップS203でキャプチャされた第1画像を、通信部21を介して測定器10に転送する。
【0085】
ステップS206では、他の測定器20の制御部26は、
図2のステップS108で測定器10において送信される第2要求を、通信部21を介して測定器10から受信したか否かを判定する。制御部26は、第2要求を受信したと判定すると、処理を終了する。制御部26は、第2要求を受信していないと判定すると、ステップS202の処理を再度実行する。
【0086】
他の測定器20の制御部26は、ステップS206において第2要求を受信していないと判定すると、第1コマンド及び第2コマンドを、通信部21を介して測定器10から繰り返し受信する。制御部26は、第1コマンド及び第2コマンドを対として、通信部21を介し測定器10から周期的に受信する。制御部26は、測定器10から受信した第1コマンド及び第2コマンドに基づいて、第1画像のキャプチャ及び転送を周期的に実行する。
【0087】
以上のとおり、第1処理では、サブユニットの出力部25に表示される第1画像は、サブユニットの制御部26のCPUによりキャプチャされ、メインユニットの制御部16のCPUに画像データとして転送される。メインユニットの制御部16のCPUは、取得されたサブユニットの第1画像をメインユニットの出力部15に表示させる。以上により、リモートコントロール中のサブユニットからメインユニットへの第1画像の転送が実現される。
【0088】
図4は、
図1の測定器10により実行される制御方法の第2例を説明するためのフローチャートである。
図4を参照しながら、
図1の測定器10が実行する制御方法の第2例について主に説明する。
図4に示されるフローチャートは、測定器10の制御部16によって実行される第2処理の流れを示す。
【0089】
ステップS301では、測定器10の制御部16は、ユーザの入力操作を、入力部14を介して受け付ける。当該入力操作は、測定器10の第2処理によって遠隔操作を行う他の測定器20を指定する操作及び指定された他の測定器20の入力部24を用いて他の測定器20が操作されるときと同様の操作イベントを他の測定器20に実行させるための操作などを含む。
【0090】
ステップS302では、測定器10の制御部16は、ステップ301において受け付けた入力操作に基づく操作イベントを処理待ち状態に遷移させる。本開示において、「操作イベント」は、測定器10の入力部14を用いてユーザにより行われた、キー入力に対応するキーイベント及びタッチ入力に対応するタッチイベントなどを含む。
【0091】
ステップS303では、測定器10の制御部16は、ステップS302において処理待ち状態であった操作イベントを実行させる実行メッセージを生成する。
【0092】
ステップS304では、測定器10の制御部16は、ステップS303において生成された、操作イベントを実行させる実行メッセージを解読待ちに変更する。
【0093】
ステップS305では、測定器10の制御部16は、ステップS304において解読待ちに変更されていた実行メッセージを解読する。このとき、制御部16は、測定器10に接続されている少なくとも1つの他の測定器20のうち、どの測定器20に対して実行されるべき操作イベントであるのかを、実行メッセージを解読することで決定する。
【0094】
ステップS306では、測定器10の制御部16は、ステップS301での入力操作に基づく操作イベントを、ステップS305で決定された他の測定器20に実行させるための第3コマンドを生成する。
【0095】
ステップS307では、測定器10の制御部16は、ステップS306において生成された第3コマンドを処理待ち状態に遷移させる。
【0096】
ステップS308では、測定器10の制御部16は、ステップS307において処理待ち状態であった第3コマンドを、通信部11を介して他の測定器20に送信する。
【0097】
図5は、
図1の他の測定器20により実行される制御方法の第2例を説明するためのフローチャートである。
図5を参照しながら、
図1の他の測定器20が実行する制御方法の第2例について主に説明する。
図5に示されるフローチャートは、測定器10の制御部16によって実行される第2処理に対応して他の測定器20により実行される処理の流れを示す。
【0098】
ステップS401では、他の測定器20の制御部26は、
図4のステップS308で測定器10において送信された第3コマンドを、通信部21を介して測定器10から受信する。
【0099】
ステップS402では、他の測定器20の制御部26は、ステップS401において取得された第3コマンドに従って、操作イベントを、当該他の測定器20自体において実行する。
【0100】
以上のとおり、第2処理では、メインユニットの入力部14の物理キー及びタッチスクリーンなどから発生した入力に関する操作イベントは、メインユニットの制御部16におけるCPUによって処理される。このとき、制御部16は、サブユニットへ送信する第3コマンドを生成する。操作イベントは、実際には、サブユニットの入力部24を介していない。しかしながら、サブユニットの制御部26は、あたかもサブユニットの入力部24の物理キー及びタッチスクリーンなどによって発生した操作イベントであるかの如く操作イベントを処理する。リモートコントロール中のメインユニットからサブユニットへの第3コマンドの送信によって、操作イベントの転送が実現される。
【0101】
測定システム1では、他の測定器20が測定器10に複数接続されているときに、メインユニットである測定器10自体に1つのサブユニットの第1画像が転送され、メインユニットの画面に第1画像を表示させながら遠隔操作が可能になる。測定器10は、このような画像データの転送の機能を拡張し、複数のサブユニットの第1画像を取得して出力部15に表示させることも可能である。以下では、そのような場合について説明する。
【0102】
図6は、
図1の測定器10による処理の第1例を説明するための模式図である。
図6は、
図1の測定器10の出力部15が表示する画面の第1例を示す。
図6では、一例として、測定器10は、複数の他の測定器20を遠隔操作する。例えば、測定器10は、4つ以上の他の測定器20と接続されている。他の測定器20は、測定器20a、測定器20b、測定器20c、及び測定器20dなどを含む。
【0103】
測定器10の制御部16は、
図2のステップS106において、複数の他の測定器20の画面にそれぞれ映し出される複数の第1画像を一括して出力部15に表示させてもよい。例えば、制御部16は、測定器20aの画面に映し出される第1画像と、測定器20bの画面に映し出される第1画像と、測定器20cの画面に映し出される第1画像と、測定器20dの画面に映し出される第1画像と、を一括して出力部15に表示させてもよい。
図6では、測定器10自体が本来映し出す第2画像に代えて、複数の第1画像が出力部15に表示されている。本開示において、「第2画像」は、静止画又は動画を含む。
【0104】
図7は、
図1の測定器10による処理の第2例を説明するための模式図である。
図7は、
図1の測定器10の出力部15が表示する画面の第2例を示す。
図7では、一例として、測定器10は、複数の他の測定器20を遠隔操作する。例えば、測定器10は、4つ以上の他の測定器20と接続されている。他の測定器20は、測定器20a、測定器20b、測定器20c、及び測定器20dなどを含む。
【0105】
測定器10の制御部16は、
図2のステップS106において、測定器10が本来映し出す第2画像と共に第1画像を出力部15に表示させてもよい。例えば、制御部16は、測定器10の画面に映し出される本来の第2画像と、測定器20bの画面に映し出される第1画像と、測定器20cの画面に映し出される第1画像と、測定器20dの画面に映し出される第1画像と、を一括して出力部15に表示させてもよい。
図7では、測定器10自体が本来映し出す第2画像に加えて、複数の第1画像が出力部15に表示されている。
【0106】
以上のような一実施形態に係る測定器10によれば、利便性を向上させることができる。測定器10は、他の測定器20の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる測定器10での入力操作に従って他の測定器20を操作する第2処理の少なくとも一方を実行する。これにより、測定器10及び他の測定器20を含む測定器を複数利用するユーザにとって測定器10に対する利便性が向上する。
【0107】
例えば、ユーザは、測定器10に接続されている他の測定器20を測定器10一つで第2処理に基づき操作することができる。したがって、ユーザは、別途PCなどを用いて測定器のコントロールを集約し操作を行う必要がない。
【0108】
ユーザは、測定器10のタッチスクリーンだけでなく、測定器10の物理キーもサブユニットの操作において用いることができるため、従来の測定器10で得られていた操作感をそのまま維持しながら、全ての他の測定器20を操作することもできる。
【0109】
他の測定器20が測定器10から物理的に大きく離れているときであっても、ユーザは、1つの測定器10を介して全ての他の測定器20の設定を行うことができる。したがって、ユーザは、他の測定器20の各々に対して設定を行うために測定器10の位置から他の測定器20の位置まで移動する必要がない。ユーザは、測定準備に要する時間を短縮させることができる。結果として、測定器10の利便性が向上する。
【0110】
ユーザは、同期測定中に他の測定器20の状態を、測定器10を用いて容易に確認することができる。ユーザは、1つの測定器10でリアルタイムに他の測定器20の状態を容易に把握することができる。
【0111】
ユーザは、他の測定器20が測定器10に複数接続されているとき、測定器10を他の測定器20に同期させ測定チャネルを増やした状態で測定を実行させることができる。このとき、ユーザは、測定器10に第1処理を実行させることで、接続状態にある他の測定器20の第1画像を測定器10に転送させることができる。したがって、ユーザは、複数の測定器の各々に対して、測定データを容易に把握できる。ユーザは、測定データ同士の相関などを、1つの測定器10を用いてその場で容易に確認をすることができる。
【0112】
例えば、複数の他の測定器20が測定器10に接続されている測定システム1を用いて測定が行われる場合を想定する。メインユニットに所定の信号が入力されたときに、当該信号の入力に関連して、サブユニットで測定している所定の信号の入力状態に影響が及ぶと仮定する。従来、ユーザは、メインユニットで測定している所定の信号の変化に対して、サブユニットで測定している所定の信号が意図した変化を示しているかを確認するために、メインユニットで信号の変化を確認した後に、サブユニットでも信号の変化を確認する必要があった。
【0113】
メインユニットとサブユニットとが互いに近くに配置されているときであれば、ユーザは、所定の信号の変化を確認するために多くの時間を要しない。しかしながら、測定対象が離れていて、測定器10と他の測定器20とが大きく離れて配置されている場合、メインユニットとサブユニットとを用いて取得された測定データを確認するだけでも多くの時間がかかってしまう。加えて、測定が複数回実施されたときは、その回数分だけ確認する時間が増えることになる。
【0114】
本開示の一実施形態に係る測定器10によれば、ユーザは、リモートコントロール中に第1処理を実行させることで、メインユニット上でサブユニットの画面を容易に確認することができる。したがって、ユーザは、測定器ごとに画面を確認し、正しく測定ができているかを確認して回る必要がない。
【0115】
リモートコントロール中に、実際に接続されている他の測定器20に格納された測定データを測定器10に転送することも原理的には可能である。しかしながら、膨大なデータ量で測定が行われる傾向にある波形測定器では、データ転送がボトルネックになり低パフォーマンスに陥る可能性もある。
【0116】
しかしながら、本開示の一実施形態に係る測定器10によれば、他の測定器20との間で転送されるものは、あくまでも画像データ及び操作インベントである。したがって、波形測定器間で通信のやり取りを行うときのデータ量が軽減される。結果として、高いパフォーマンスで測定器10による遠隔操作の機能が実現される。したがって、ユーザは、他の測定器20が測定器10に複数接続されているときの測定器ごとの信号波形の取得状況を、リアルタイムで応答性が高い状態で容易に把握することができる。
【0117】
ユーザは、測定器10における操作用の入力インタフェースとして、測定器10に既存の仕組みを継続して用いることができる。したがって、従来技術と異なり、開発者が新規インタフェースを開発するための負担を負う必要がない。加えて、ユーザは、既存の正しく動作している入力インタフェースを継続して用いることもできる。したがって、測定器10において不具合などが発生する確率も軽減する。ユーザ及び開発者の双方に対して、測定器10の利便性が向上する。
【0118】
第1処理は、第1画像をキャプチャするための第1コマンドを制御部16が他の測定器20に送信することを含む。これにより、測定器10は、他の測定器20における第1画像のキャプチャ処理を、第1処理における第1コマンドに基づき正確に実行させることが可能である。
【0119】
第1処理は、第1コマンドに従ってキャプチャされた第1画像を測定器10に転送させるための第2コマンドを制御部16が他の測定器20に送信することを含む。これにより、測定器10は、他の測定器20における第1画像の測定器10への転送処理を、第1処理における第2コマンドに基づき正確に実行させることが可能である。
【0120】
第1処理は、第1コマンド及び第2コマンドを対として制御部16が他の測定器20に周期的に送信することを含む。これにより、測定器10は、他の測定器20から周期的に第1画像を取得し、リアルタイムに更新された第1画像を、出力部15を介してユーザに提供することができる。ユーザは、リアルタイムに、かつ円滑に変化する信号波形を、測定器10の出力部15に表示された第1画像に基づいて容易に確認することも可能である。
【0121】
第1処理は、測定器10が本来映し出す第2画像と共に第1画像を表示させることを含む。これにより、ユーザは、測定器10の画面上で、他の測定器20の各々の第1画像を第2画像と共に視認可能であり、これらの画像を操作することもできる。ユーザは、測定データを確認した後に設定を変更して再度測定を行うときに、他の測定器20で測定した測定データを確認しながら、第2処理に基づいて他の測定器20を遠隔操作することも可能である。
【0122】
第1処理は、複数の他の測定器20の画面にそれぞれ映し出される複数の第1画像を一括して表示させることを含む。これにより、ユーザは、測定器10の画面上で、他の測定器20の各々の第1画像を視認可能であり、これらの画像を操作することもできる。ユーザは、測定データを確認した後に設定を変更して再度測定を行うときに、他の測定器20で測定した測定データを確認しながら、第2処理に基づいて他の測定器20を遠隔操作することも可能である。
【0123】
測定器10は、複数の他の測定器20の第1画像を出力部15に表示させた状態で、入力部14から画像保存の入力操作をユーザから受け付けると、複数の測定データが測定結果として出力部15に表示された状態の画像を記憶部12に格納することもできる。これにより、複数の測定データのユーザによる確認及び整理が容易になる。
【0124】
第1処理は、制御部16が第1画像を出力部15に表示させることを含む。これにより、ユーザは、測定器10に備わっている既存のディスプレイを用いて、他の測定器20の第1画像を容易に確認できる。
【0125】
第2処理は、入力操作に従った操作イベントを他の測定器20に実行させるための第3コマンドを制御部16が他の測定器20に送信することを含む。これにより、測定器10は、他の測定器20の遠隔操作を、第2処理における第3コマンドに基づき正確に実行することが可能である。
【0126】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0127】
例えば、スマートフォン又はコンピュータなどの汎用の電子機器を、上述した一実施形態に係る測定器10として機能させる構成も可能である。具体的には、一実施形態に係る測定器10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、電子機器のメモリに格納し、電子機器のプロセッサにより当該プログラムを読み出して実行させる。したがって、本開示は、プロセッサが実行可能なプログラムとしても実現可能である。
【0128】
又は、本開示は、一実施形態に係る測定器10に各機能を実行させるために1つ又は複数のプロセッサにより実行可能なプログラムを記憶した非一時的なコンピュータ読取可能な媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0129】
例えば、上述した一実施形態で測定器10において実行される少なくとも一部の処理動作が他の測定器20において実行されてもよい。他の測定器20において実行される少なくとも一部の処理動作が測定器10において実行されてもよい。
【0130】
上記実施形態では、測定器10は、第1処理において、第1画像をキャプチャするための第1コマンドを他の測定器20に送信すると説明したが、これに限定されない。測定器10は、このような処理を実行しなくてもよい。
【0131】
上記実施形態では、測定器10は、第1処理において、第1コマンドに従ってキャプチャされた第1画像を測定器10に転送させるための第2コマンドを他の測定器20に送信すると説明したが、これに限定されない。測定器10は、このような処理を実行しなくてもよい。
【0132】
上記実施形態では、測定器10は、第1処理において、第1コマンド及び第2コマンドを対として他の測定器20に周期的に送信すると説明したが、これに限定されない。測定器10は、第1コマンド及び第2コマンドを対として他の測定器20に非周期的に送信してもよい。測定器10は、第1コマンド及び第2コマンドを対として他の測定器20に送信しなくてもよい。
【0133】
上記実施形態では、測定器10は、第1処理において、測定器10が本来映し出す第2画像と共に第1画像を表示させると説明したが、これに限定されない。測定器10は、このような処理を実行しなくてもよい。
【0134】
上記実施形態では、測定器10は、第1処理において、複数の他の測定器20の画面にそれぞれ映し出される複数の第1画像を一括して表示させると説明したが、これに限定されない。測定器10は、このような処理を実行しなくてもよい。
【0135】
上記実施形態では、測定器10は、出力部15を有すると説明したが、これに限定されない。測定器10は、第1画像、第2画像、及び測定データなどを表示させる機能を有していればよく、出力部15を直接的に有さなくてもよい。例えば、測定器10は、出力部15に代えて、又は加えて、測定器10と別装置として構成される任意の表示機に、第1画像、第2画像、及び測定データなどを表示させてもよい。
【0136】
上記実施形態では、測定器10は、第2処理において、入力操作に従った操作イベントを他の測定器20に実行させるための第3コマンドを他の測定器20に送信すると説明したが、これに限定されない。測定器10は、このような処理を実行しなくてもよい。
【0137】
上記実施形態では、測定器10は、例えば、波形測定器及び光測定器などを含むと説明したが、これに限定されない。測定器10は、フィールド機器を含んでもよい。このとき、測定器10が配置されているネットワークは、プラント設備を含んでもよい。
【0138】
本開示において、「プラント設備」は、例えば化学などの工業プラントの他、ガス田及び油田などを含む井戸元、並びにその周辺を管理制御するプラントを含む。その他にも、プラント設備は、水力、火力、及び原子力などの発電を管理制御するプラント、太陽光及び風力などの環境発電を管理制御するプラント、並びに上下水及びダムなどを管理制御するプラントなどを含んでもよい。
【0139】
このとき、物理量は、フィールド機器としての測定器10が配置されているプラント設備において発生した気体及び液体などを含む流体の温度、圧力、流量、及びPH、並びにプラント設備の腐食度及び振動量などを含んでもよい。これに限定されず、物理量は、バルブ、モータ、及びリレーなどを含むアクチュエータに関連する、温度及び圧力などを含む状態パラメータを含んでもよい。
【0140】
以下に本開示の実施形態の一部について例示する。しかしながら、本開示の実施形態はこれらに限定されない点に留意されたい。
[付記1]
他の測定器を遠隔操作する測定器であって、
前記他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる前記測定器での入力操作に従って前記他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行する制御部、
を備える、
測定器。
[付記2]
付記1に記載の測定器であって、
前記第1処理は、前記第1画像をキャプチャするための第1コマンドを前記制御部が前記他の測定器に送信することを含む、
測定器。
[付記3]
付記2に記載の測定器であって、
前記第1処理は、前記第1コマンドに従ってキャプチャされた前記第1画像を前記測定器に転送させるための第2コマンドを前記制御部が前記他の測定器に送信することを含む、
測定器。
[付記4]
付記3に記載の測定器であって、
前記第1処理は、前記第1コマンド及び前記第2コマンドを対として前記制御部が前記他の測定器に周期的に送信することを含む、
測定器。
[付記5]
付記1乃至4のいずれか1つに記載の測定器であって、
前記第1処理は、前記測定器が本来映し出す第2画像と共に前記第1画像を前記制御部が表示させることを含む、
測定器。
[付記6]
付記1乃至5のいずれか1つに記載の測定器であって、
複数の前記他の測定器を遠隔操作し、
前記第1処理は、複数の前記他の測定器の画面にそれぞれ映し出される複数の前記第1画像を前記制御部が一括して表示させることを含む、
測定器。
[付記7]
付記1乃至6のいずれか1つに記載の測定器であって、
出力部をさらに備え、
前記第1処理は、前記制御部が前記第1画像を前記出力部に表示させることを含む、
測定器。
[付記8]
付記1乃至7のいずれか1つに記載の測定器であって、
前記第2処理は、前記入力操作に従った操作イベントを前記他の測定器に実行させるための第3コマンドを前記制御部が前記他の測定器に送信することを含む、
測定器。
[付記9]
付記1乃至8のいずれか1つに記載の測定器と、
前記測定器によって遠隔操作される少なくとも1つの前記他の測定器と、
を備える、
測定システム。
[付記10]
他の測定器を遠隔操作する制御方法であって、
前記他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる前記測定器での入力操作に従って前記他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行すること、
を含む、
制御方法。
[付記11]
他の測定器を遠隔操作する測定器に、
前記他の測定器の画面に映し出される第1画像を表示させる第1処理及びユーザによる前記測定器での入力操作に従って前記他の測定器を操作する第2処理の少なくとも一方を実行すること、
を含む動作を実行させる、
プログラム。
【符号の説明】
【0141】
1 測定システム
10 測定器
11 通信部
12 記憶部
121 ストレージ
122 ROM
123 RAM
124 表示メモリ
125 波形メモリ
13 変換部
14 入力部
15 出力部
16 制御部
20 測定器
20a 測定器
20b 測定器
20c 測定器
20d 測定器
21 通信部
22 記憶部
23 変換部
24 入力部
25 出力部
26 制御部