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特開2025-9538肥料生成方法、情報処理装置及び肥料生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009538
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】肥料生成方法、情報処理装置及び肥料生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   C05G 1/00 20060101AFI20250110BHJP
   C05F 3/00 20060101ALI20250110BHJP
   C05F 7/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
C05G1/00 F
C05F3/00
C05F7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112612
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】519309681
【氏名又は名称】株式会社プラントフォーム
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎 康明
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA02
4H061AA03
4H061BB01
4H061BB02
4H061BB21
4H061BB51
4H061CC35
4H061CC51
4H061EE66
4H061FF25
4H061GG10
4H061GG13
4H061GG21
4H061GG41
4H061GG54
4H061GG56
4H061GG65
(57)【要約】
【課題】植物の生育を促進することが可能な肥料を生成することを可能とする肥料生成方法、情報処理装置及び肥料生成プログラムを提供する。
【解決手段】リン成分と窒素成分とカリウム成分とを含む有機性排水から、少なくとも前記リン成分を含む第1溶液と、少なくとも前記窒素成分を含む第2溶液と、少なくとも前記カリウム成分を含む第3溶液とをそれぞれ抽出する工程と、前記第1溶液に含まれる前記リン成分をイオン化する工程と、イオン化した前記リン成分を含む前記第1溶液と、抽出した前記第2溶液と、抽出した前記第3溶液とのうちの少なくとも1つから肥料を生成する工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン成分と窒素成分とカリウム成分とを含む有機性排水から、少なくとも前記リン成分を含む第1溶液と、少なくとも前記窒素成分を含む第2溶液と、少なくとも前記カリウム成分を含む第3溶液とをそれぞれ抽出する工程と、
前記第1溶液に含まれる前記リン成分をイオン化する工程と、
イオン化した前記リン成分を含む前記第1溶液と、抽出した前記第2溶液と、抽出した前記第3溶液とのうちの少なくとも1つから肥料を生成する工程と、を有する、肥料生成方法。
【請求項2】
前記有機性排水は、養殖排水であり、
前記第2溶液は、前記窒素成分としてイオン化した硝酸成分を含み、
前記第3溶液は、前記カリウム成分としてイオン化したカリウム成分を含み、
前記抽出する工程では、
前記有機性排水から前記第1溶液を抽出し、
前記第1溶液を抽出した前記有機性排水に対して電圧を印加することによって、または、陰イオンを吸着可能な樹脂と陽イオンを吸着可能な樹脂とのうちの少なくともいずれかを用いることによって、前記第1溶液を抽出した前記有機性排水から、陰イオンである前記硝酸成分を含む前記第2溶液と陽イオンである前記カリウム成分を含む前記第3溶液とをそれぞれ抽出する、請求項1に記載の肥料生成方法。
【請求項3】
さらに、前記リン成分をイオン化した前記第1溶液から微生物を含む溶液を分離する工程を有し、
前記生成する工程では、前記微生物を含む溶液を分離した前記第1溶液と、抽出した前記第2溶液と、抽出した前記第3溶液とのうちの少なくとも1つから肥料を生成する、請求項2に記載の肥料生成方法。
【請求項4】
前記イオン化する工程では、生物処理によって前記第1溶液に含まれる前記リン成分をイオン化する、請求項1に記載の肥料生成方法。
【請求項5】
前記イオン化する工程では、前記第1溶液に含まれる汚泥を粉砕することによって、イオン化した前記リン成分を前記汚泥から溶出させる、請求項1に記載の肥料生成方法。
【請求項6】
リン成分と窒素成分とカリウム成分とを含む有機性排水から抽出された第1溶液と第2溶液と第3溶液とを混合させて肥料を生成する処理をコンピュータが実行する肥料生成方法であって、
前記第1溶液は、少なくともイオン化された前記リン成分を含み、
前記第2溶液は、少なくとも前記窒素成分を含み、
前記第3溶液は、少なくとも前記カリウム成分を含み、
前記肥料の用途と前記肥料の生成量との入力を受け付け、
前記第1溶液と前記第2溶液と前記第3溶液との混合比率に関する情報を記憶した記憶部を参照し、入力を受け付けた前記用途に対応する混合比率を特定し、
入力を受け付けた前記生成量と、特定した前記混合比率とに基づいて、前記第1溶液の第1混合量と前記第2溶液の第2混合量と前記第3溶液との第3混合量とを決定し、
前記第1混合量に対応する前記第1溶液と、前記第2混合量に対応する前記第2溶液と、前記第3混合量に対応する前記第3溶液とを混合させることによって、前記肥料を生成する、肥料生成方法。
【請求項7】
リン成分と窒素成分とカリウム成分とを含む有機性排水から抽出された第1溶液と第2溶液と第3溶液とを混合させて肥料を生成する情報処理装置であって、
前記第1溶液は、少なくともイオン化された前記リン成分を含み、
前記第2溶液は、少なくとも前記窒素成分を含み、
前記第3溶液は、少なくとも前記カリウム成分を含み、
前記肥料の用途と前記肥料の生成量との入力を受け付け、
前記第1溶液と前記第2溶液と前記第3溶液との混合比率に関する情報を記憶した記憶部を参照し、入力を受け付けた前記用途に対応する混合比率を特定し、
入力を受け付けた前記生成量と、特定した前記混合比率とに基づいて、前記第1溶液の第1混合量と前記第2溶液の第2混合量と前記第3溶液との第3混合量とを決定し、
前記第1混合量に対応する前記第1溶液と、前記第2混合量に対応する前記第2溶液と、前記第3混合量に対応する前記第3溶液とを混合させることによって、前記肥料を生成する、情報処理装置。
【請求項8】
リン成分と窒素成分とカリウム成分とを含む有機性排水から抽出された第1溶液と第2溶液と第3溶液とを混合させて肥料を生成する処理をコンピュータに実行させる肥料生成プログラムであって、
前記第1溶液は、少なくともイオン化された前記リン成分を含み、
前記第2溶液は、少なくとも前記窒素成分を含み、
前記第3溶液は、少なくとも前記カリウム成分を含み、
前記肥料の用途と前記肥料の生成量との入力を受け付け、
前記第1溶液と前記第2溶液と前記第3溶液との混合比率に関する情報を記憶した記憶部を参照し、入力を受け付けた前記用途に対応する混合比率を特定し、
入力を受け付けた前記生成量と、特定した前記混合比率とに基づいて、前記第1溶液の第1混合量と前記第2溶液の第2混合量と前記第3溶液との第3混合量とを決定し、
前記第1混合量に対応する前記第1溶液と、前記第2混合量に対応する前記第2溶液と、前記第3混合量に対応する前記第3溶液とを混合させることによって、前記肥料を生成する、肥料生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肥料生成方法、情報処理装置及び肥料生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、魚の養殖水槽(以下、単に養殖水槽とも呼ぶ)から排出される魚の排泄物等の有機性排水(以下、単に有機性排水とも呼ぶ)を用いることにより、植物の栽培において利用可能な有機肥料(以下、単に肥料とも呼ぶ)を生成する技術が登場している(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-131432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記のような技術分野では、例えば、植物の生育をより促進することが可能な肥料の生成が望まれている。具体的に、例えば、植物による吸収性を向上させることが可能な肥料の生成が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における肥料生成方法は、リン成分と窒素成分とカリウム成分とを含む有機性排水から、少なくとも前記リン成分を含む第1溶液と、少なくとも前記窒素成分を含む第2溶液と、少なくとも前記カリウム成分を含む第3溶液とをそれぞれ抽出する工程と、前記第1溶液に含まれる前記リン成分をイオン化する工程と、イオン化した前記リン成分を含む前記第1溶液と、抽出した前記第2溶液と、抽出した前記第3溶液とのうちの少なくとも1つから肥料を生成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示における肥料生成方法によれば、植物の生育を促進することが可能な肥料を生成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施の形態における肥料生成システム100の構成について説明する図である。
図2図2は、制御装置10のハードウエア構成を説明する図である。
図3図3は、制御装置10の機能について説明する図である。
図4図4は、第1の実施の形態における肥料生成制御について説明するフローチャート図である。
図5図5は、混合比率情報DTの具体例について説明する図である。
図6図6は、第2の実施の形態における肥料生成システム200の構成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる説明は限定的な意味に解釈されるべきではなく、特許請求の範囲に記載の主題を限定するものではない。また、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することがなく様々な変更や置換や改変をすることができる。また、異なる実施の形態を適宜組み合わせることができる。
【0009】
[第1の実施の形態における肥料生成システム100]
初めに、第1の実施の形態における肥料生成システム100の構成について説明を行う。図1は、第1の実施の形態における肥料生成システム100の構成について説明する図である。
【0010】
肥料生成システム100は、例えば、養殖水槽(図示しない)から排出される有機性排水から肥料(液状肥料)を生成するシステムである。有機性排水は、例えば、養殖水槽における魚の餌(食べ残し)や排泄物等を含む排水である。以下、肥料生成システム100において肥料を生成する方法を肥料生成方法とも呼ぶ。
【0011】
具体的に、肥料生成システム100は、図1に示すように、例えば、濾過装置1と、イオン化装置2と、イオン濃縮装置3と、貯留槽T0と、貯留槽T1と、貯留槽T2と、貯留槽T3と、貯留槽T4と、貯留槽T5とを有する。
【0012】
貯留槽T0は、例えば、養殖水槽から排出された有機性排水を貯留する。具体的に、養殖水槽と貯留槽T0とを連通する配管(図示せず)に設けられたポンプ(図示せず)は、例えば、養殖水槽に貯留された有機性排水を貯留槽T0に対して連続的に供給する。そして、貯留槽T0は、例えば、ポンプによって供給された有機性排水を順次貯留する。
【0013】
なお、養殖水槽から供給される有機性排水(貯留槽T0において貯留される有機性排水)は、例えば、リン成分、カリウム成分及び窒素成分を含む液体である。具体的に、有機性排水に含まれるリン成分には、例えば、不溶性のリン成分が含まれる。また、有機性排水に含まれるカリウム成分には、例えば、イオン化したカリウム成分(以下、単にカリウムイオンとも呼ぶ)が含まれる。さらに、有機性排水に含まれる窒素成分には、例えば、イオン化した硝酸成分(以下、単に硝酸イオンとも呼ぶ)が含まれる。
【0014】
濾過装置1は、例えば、濾過膜(図示せず)を用いることによって、ラインL1を介して貯留槽T0から供給された有機性排水についての限外濾過を行う。ラインL1は、例えば、貯留槽T0と濾過装置1とを連通する配管である。
【0015】
具体的に、ラインL1に設けられたポンプ(図示せず)は、例えば、貯留槽T0に貯留された有機性排水を濾過装置1に対して連続的に供給する。そして、濾過装置1は、例えば、ポンプによって供給された有機性排水についての限外濾過を行うことにより、供給された有機性排水を、カリウム成分及び硝酸成分を含む液体(以下、膜透過液とも呼ぶ)と、リン成分及び汚泥を含む液体(以下、リン濃縮液または第1溶液とも呼ぶ)とに分離する。すなわち、濾過装置1は、例えば、濾過膜を透過した液体を膜透過液として抽出し、濾過膜を透過しなかった液体をリン濃縮液として抽出する。
【0016】
イオン化装置2は、例えば、ラインL2を介して濾過装置1から供給されたリン濃縮液に含まれるリン成分をイオン化する。ラインL2は、例えば、濾過装置1とイオン化装置2とを連通する配管である。
【0017】
ここで、イオン化装置2は、例えば、生物処理によってリン濃縮液に含まれるリン成分をイオン化するものであってよい。
【0018】
具体的に、イオン化装置2は、例えば、リン蓄積菌を用いて、好気条件下においてリンを蓄積し、さらに、嫌気状態下においてリン酸を放出させることにより、イオン化したリン成分であるリン酸イオン(以下、単にリン酸イオンとも呼ぶ)を回収するものであってよい。また、イオン化装置2は、例えば、フィターゼ生産菌を用いて、リン濃縮液に含まれる汚泥成分中のフィチン酸をリン酸に変化させることにより、イオン化したリン成分であるリン酸イオンを回収するものであってよい。
【0019】
これにより、イオン化装置2は、例えば、リン酸イオンの回収に要するコストを抑制することが可能になるとともに、発生する汚泥の量を抑制することが可能になる。また、イオン化装置2は、例えば、リン酸イオンの回収率を向上させることが可能になる。
【0020】
また、イオン化装置2は、例えば、リン濃縮液に含まれる汚泥を物理的に粉砕することによって、汚泥からリン酸イオンを溶出させるものであってよい。
【0021】
具体的に、イオン化装置2は、例えば、粉砕機や超音波照射機等を用いて、リン濃縮液に含まれる汚泥を微細化することにより、汚泥から溶出されたリン酸イオンを回収するものであってよい。
【0022】
これにより、イオン化装置2は、例えば、リン酸イオンを安定的に回収することが可能になる。
【0023】
なお、イオン化装置2は、生物処理と粉砕とを併用してもよい。また、イオン化装置2は、生物処理や汚泥の粉砕によってリン酸イオンを回収した後、例えば、透析法や電気透析法等を行うことによってリン酸イオンを濃縮させるものであってよい。
【0024】
貯留槽T1は、例えば、ラインL3を介してイオン化装置2から供給されたリン濃縮液を貯留する。ラインL3は、例えば、イオン化装置2と貯留槽T1とを連通する配管である。具体的に、ラインL3に設けられたポンプ(図示せず)は、例えば、イオン化装置2から供給されたリン濃縮液を貯留槽T1に対して連続的に供給する。そして、貯留槽T1は、例えば、ポンプによって供給されたリン濃縮液を順次貯留する。
【0025】
イオン濃縮装置3は、例えば、ラインL5を介して濾過装置1から供給された膜透過液に電圧を印加することによって、陰イオンである硝酸イオンを含む液体(以下、硝酸濃縮液または第2溶液とも呼ぶ)と、陽イオンであるカリウムイオンを含む液体(以下、カリウム濃縮液または第3溶液とも呼ぶ)とをそれぞれ抽出する。すなわち、硝酸濃縮液は、例えば、硝酸イオンの濃度がリン濃縮液やカリウム濃縮液よりも高い液体であり、カリウム濃縮液は、例えば、カリウムイオンの濃度がリン濃縮液や硝酸濃縮液よりも高い液体である。また、リン濃縮液は、例えば、リン酸イオンの濃度がカリウム濃縮液や硝酸濃縮液よりも高い液体である。
【0026】
具体的に、イオン濃縮装置3は、例えば、濾過装置1から供給された膜透過液が流れる流路(図示せず)と、流路を挟んで設けられた一対の電極(図示せず)とを有する。そして、イオン濃縮装置3は、例えば、直流電源(図示せず)を用いることによって、一対の電極間に電位差を発生させ、流路を流れる膜透過液の溶存イオンに含まれるカリウムイオン(陽イオン)をマイナスの電極側に移動させるとともに、流路を流れる膜透過液の溶存イオンに含まれる硝酸イオン(陰イオン)をプラスの電極側に移動させる。その後、イオン濃縮装置3は、例えば、マイナスの電極側に移動したカリウムイオンを含むカリウム濃縮液と、プラスの電極側に移動した硝酸イオンを含む硝酸濃縮液とのそれぞれを抽出する。なお、イオン濃縮装置3は、例えば、公知の溶存イオン分析システムと同様の方法によって各溶液の抽出を行うものであってもよい。
【0027】
また、イオン濃縮装置3は、例えば、陽イオンを吸着可能な樹脂(以下、第1樹脂とも呼ぶ)を用いることによって、流路を流れる膜透過液の溶存イオンに含まれるカリウムイオン(陽イオン)を第1樹脂に吸着させ、第1樹脂に吸着されたカリウムイオンを含むカリウム濃縮液と、第1樹脂に吸着されなかった硝酸イオンを含む硝酸濃縮液とのそれぞれを抽出するものであってもよい。また、イオン濃縮装置3は、例えば、陰イオンを吸着可能な樹脂(以下、第2樹脂とも呼ぶ)を用いることによって、流路を流れる膜透過液の溶存イオンに含まれる硝酸イオン(陰イオン)を第2樹脂に吸着させ、第2樹脂に吸着された硝酸イオンを含む硝酸濃縮液と、第2樹脂に吸着されなかったカリウムイオンを含むカリウム濃縮液とのそれぞれを抽出するものであってもよい。
【0028】
貯留槽T2は、例えば、ラインL6を介してイオン濃縮装置3から供給された硝酸濃縮液を貯留する。ラインL6は、例えば、イオン濃縮装置3と貯留槽T2とを連通する配管である。具体的に、ラインL6に設けられたポンプ(図示せず)は、例えば、イオン濃縮装置3から供給された硝酸濃縮液を貯留槽T2に対して連続的に供給する。そして、貯留槽T2は、例えば、ポンプによって供給された硝酸濃縮液を順次貯留する。
【0029】
貯留槽T3は、例えば、ラインL7を介してイオン濃縮装置3から供給されたカリウム濃縮液を貯留する。ラインL7は、例えば、イオン濃縮装置3と貯留槽T3とを連通する配管である。具体的に、ラインL7に設けられたポンプ(図示せず)は、例えば、イオン濃縮装置3から供給されたカリウム濃縮液を貯留槽T3に対して連続的に供給する。そして、貯留槽T3は、例えば、ポンプによって供給されたカリウム濃縮液を順次貯留する。
【0030】
貯留槽T4は、例えば、ラインL8を介してイオン濃縮装置3から供給された廃液を貯留する。廃液は、例えば、イオン濃縮装置3において硝酸濃縮液及びカリウム濃縮液が抽出された後の有機性排水である。また、ラインL8は、例えば、イオン濃縮装置3と貯留槽T4とを連通する配管である。具体的に、ラインL8に設けられたポンプ(図示せず)は、例えば、イオン濃縮装置3から供給された廃液を貯留槽T4に対して連続的に供給する。そして、貯留槽T4は、例えば、ポンプによって供給された廃液を順次貯留する。
【0031】
貯留槽T5は、例えば、ラインL4に介して貯留槽T1から供給されたリン濃縮液と、ラインL9に介して貯留槽T2から供給された硝酸濃縮液と、ラインL10に介して貯留槽T3から供給されたカリウム濃縮液との混合液(肥料)を貯留する。ラインL4は、例えば、貯留槽T1と貯留槽T5とを連通する配管である。また、ラインL9は、例えば、貯留槽T2と貯留槽T5とを連通する配管である。また、ラインL10は、例えば、貯留槽T3と貯留槽T5とを連通する配管である。
【0032】
すなわち、貯留槽T5は、例えば、リン濃縮液と硝酸濃縮液とカリウム濃縮液とを所定の混合比率に従って混合することによって生成された肥料を貯留する。所定の混合比率は、例えば、生成後の肥料が用いられる植物の種類等によって決定される混合比率である。
【0033】
このように、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、有機性排水に含まれる不溶性のリン成分を予めイオン化させてから肥料(有機肥料)の生成を行う。具体的に、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、生物処理や汚泥の物理的な粉砕処理を行うことによって、有機性排水に含まれるリン成分を予めイオン化する。
【0034】
これにより、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、微生物や菌類等(以下、単に微生物等とも呼ぶ)によってイオン化(無機化)を行う肥料よりも、効果が生じるまでに要する時間を短縮させることが可能な肥料を生成することが可能になる。そのため、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、植物の生育をより促進することが可能な肥料を生成することが可能になる。
【0035】
また、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、微生物等によるイオン化を行う必要がないことから、微生物等を含まない肥料を生成することが可能になる。そのため、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、土耕栽培において利用可能な肥料だけでなく、無菌管理が必要な植物工場において行われる水耕栽培(以下、単に水耕栽培とも呼ぶ)においても利用可能な肥料を生成することが可能になる。
【0036】
この点、従来の肥料を用いる水耕栽培では、例えば、リン成分のイオン化が行われないことに起因するリン成分の吸収不足を解消する必要性から、予めイオン化された化学肥料の使用が必要とされている。さらに、化学肥料に使用されるリンは、例えば、鉱物資源に依存しており、化学肥料に依存した農業の拡大によるこれら資源の枯渇が懸念されている。これに対し、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、水耕栽培において利用可能であって、かつ、予めイオン化されたリン成分を含む肥料(すなわち、有機肥料として使用することが可能な肥料)を生成することが可能になるため、化学肥料を用いる必要がない水耕栽培を実現することが可能になる。したがって、本実施の形態における肥料生成方法は、例えば、水耕栽培の普及を促進させることが可能になり、さらに、異常気象や人口増加等に伴う食糧不足の解消に寄与することが可能になる。
【0037】
また、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、主要な窒素成分が硝酸成分である養殖排水を用いることにより、陽イオンであるカリウム成分と陰イオンである硝酸成分とを含む膜透過液をイオン濃縮装置3に供給することが可能になる。そのため、イオン濃縮装置3では、例えば、膜透過液に電圧を印加することによって、カリウム成分と窒素成分(硝酸成分)との分離を容易に行うことが可能になる。
【0038】
なお、カリウム成分と窒素成分との分離は、例えば、蒸留処理を行うことによっても実現が可能である。しかしながら、蒸留処理では、例えば、反応促進剤として水酸化ナトリウム等の強塩基を用いる必要があり、有機農業に利用可能な肥料を生成することができない。そのため、本実施の形態における肥料生成方法では、蒸留処理以外の方法によって、カリウム成分と窒素成分との分離を行うことが好ましい。
【0039】
[第1の実施の形態における制御装置10]
次に、第1の実施の形態における制御装置10の構成について説明を行う。図2は、制御装置10のハードウエア構成を説明する図である。また、図3は、制御装置10の機能について説明する図である。
【0040】
肥料生成システム100は、図2及び図3に示すように、例えば、肥料の生成制御(以下、単に肥料生成制御とも呼ぶ)を行う制御装置10(以下、情報処理装置10とも呼ぶ)を有する。具体的に、制御装置10は、図1及び図3に示すように、例えば、ラインL4に設けられた弁V1と、ラインL9に設けられた弁V2と、ラインL10に設けられた弁V3との開制御及び閉制御を行う。
【0041】
さらに具体的に、制御装置10は、例えば、弁V1の開度を適宜調整することによって、貯留槽T1から貯留槽T5に供給されるリン濃縮液の供給量(例えば、単位時間あたりの供給量)を制御する。また、制御装置10は、例えば、弁V2の開度を適宜調整することによって、貯留槽T2から貯留槽T5に供給される硝酸濃縮液の供給量(例えば、単位時間あたりの供給量)を制御する。また、制御装置10は、例えば、弁V3の開度を適宜調整することによって、貯留槽T3から貯留槽T5に供給されるカリウム濃縮液の供給量(例えば、単位時間あたりの供給量)を制御する。
【0042】
すなわち、制御装置10は、例えば、貯留槽T5に貯留される混合液(肥料)における各溶液の混合比率を制御する。
【0043】
また、制御装置10は、図2に示すように、例えば、電子回路を有する電子機器である。具体的に、制御装置10は、例えば、プロセッサであるCPU101と、メモリ102と、通信装置103と、記憶媒体104とを有するコンピュータ装置である。各部は、例えば、バス105を介して互いに接続される。
【0044】
記憶媒体104は、例えば、肥料生成制御を行うためのプログラム110を記憶するプログラム格納領域(図示しない)を有する。また、記憶媒体104は、例えば、肥料生成制御を行う際に用いられる情報を記憶する情報格納領域130(以下、記憶部130とも呼ぶ)を有する。なお、記憶媒体104は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)であってよい。
【0045】
CPU101は、例えば、記憶媒体104からメモリ102にロードされたプログラム110を実行することによって肥料生成制御を行う。
【0046】
通信装置103は、例えば、インターネット等のネットワーク(図示せず)を介して作業者が必要な情報の入力等を行う操作端末(図示せず)とアクセスを行う。
【0047】
なお、制御装置10は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)を有するものであってもよい。そして、肥料生成制御は、例えば、FPGAやASICにおいて実行されるものであってもよい。
【0048】
また、以下、肥料生成制御が1台の制御装置10において行われる場合について説明を行うが、これに限られない。具体的に、例えば、肥料生成システム100が複数の制御装置10を有する場合、肥料生成制御において実行される各処理は、複数の制御装置10のそれぞれに分散された状態で実行されるものであってもよい。
【0049】
[肥料生成制御のフローチャート図]
次に、肥料生成制御のフローチャート図について説明を行う。図4は、第1の実施の形態における肥料生成制御について説明するフローチャート図である。
【0050】
制御装置10は、図4に示すように、例えば、肥料の用途と肥料の生成量とを含む肥料の生成指示(以下、単に生成指示とも呼ぶ)の入力を受け付けるまで待機する。具体的に、制御装置10は、例えば、作業者が操作端末を介して生成指示を入力するまで待機する。なお、肥料の用途は、例えば、生成後の肥料を用いる予定の植物の種類であってよい。また、肥料の生成量は、例えば、作業者が生成を希望する肥料の量であってよい。
【0051】
そして、生成指示の入力を受け付けた場合(図4のステップS1)、制御装置10は、例えば、情報格納領域130に記憶された混合比率情報DTを参照し、ステップS1で入力を受け付けた用途に対応する混合比率(以下、単に混合比率とも呼ぶ)を特定する(図4のステップS2)。混合比率情報DTは、例えば、リン酸イオンと硝酸イオンとカリウムイオンとの混合比率を示す情報である。なお、混合比率情報DTは、例えば、作業者によって予め生成されるものであってよい。以下、混合比率情報DTの具体例について説明を行う。
【0052】
[混合比率情報DTの具体例]
図5は、混合比率情報DTの具体例について説明する図である。
【0053】
図5に示す混合比率情報DTは、例えば、リン酸イオンの混合比率が設定される「リン酸イオン」と、硝酸イオンの混合比率が設定される「硝酸イオン」と、カリウムイオンの混合比率が設定される「カリウムイオン」と、肥料の用途が設定される「用途」とを項目として有する。
【0054】
具体的に、図5に示す混合比率情報DTにおいて、例えば、1行目の情報には、「リン酸イオン」として「30(g/L)」が設定され、「硝酸イオン」として「40(g/L)」が設定され、「カリウムイオン」として「30(g/L)」が設定され、「用途」として「植物A」が設定されている。
【0055】
また、図5に示す混合比率情報DTにおいて、例えば、2行目の情報には、「リン酸イオン」として「10(g/L)」が設定され、「硝酸イオン」として「10(g/L)」が設定され、「カリウムイオン」として「80(g/L)」が設定され、「用途」として「植物B」が設定されている。図5に含まれる他の情報についての説明は省略する。
【0056】
そのため、例えば、図4のステップS1において入力を受け付けた肥料の用途が植物Bである場合、制御装置10は、図4のステップS2において、図5に示す混合比率情報DTを参照し、リン酸イオンの混合比率として10(g/L)を特定し、硝酸イオンの混合比率として10(g/L)を特定し、カリウムイオンの混合比率として80(g/L)を特定する。
【0057】
なお、混合比率情報DTに含まれる情報は、例えば、適宜更新されるものであってもよい。具体的に、作業者は、例えば、混合比率情報DTに従って生成した肥料を用いた場合における植物の生育状況等に応じて、混合比率情報DTに含まれる情報を更新するものであってもよい。
【0058】
また、情報格納領域130には、例えば、複数の混合比率情報DTが記憶されるものであってもよい。そして、制御装置10は、例えば、肥料生成制御を行うタイミングの季節や天候等に応じて混合比率情報DTを選択し、選択した混合比率情報DTを参照して図4のステップS2を行うものであってもよい。
【0059】
図4に戻り、制御装置10は、例えば、図4のステップS1において入力を受け付けた肥料の生成量と、図4のステップS2において特定した混合比率とに基づいて、リン濃縮液の混合量(以下、第1混合量とも呼ぶ)と、硝酸濃縮液の混合量(以下、第2混合量とも呼ぶ)と、カリウム濃縮液の混合量(以下、第3混合量とも呼ぶ)とを決定する(図4のステップS3)。
【0060】
具体的に、図5に示す混合比率情報DTの「用途」が「植物A」である情報(1行目の情報)には、例えば、「リン酸イオン」として「30(g/L)」が設定されており、「硝酸イオン」として「40(g/L)」が設定されており、「カリウムイオン」として「30(g/L)」が設定されている。そのため、例えば、図4のステップS1において入力を受け付けた肥料の用途が植物Aであり、図4のステップS1において入力を受け付けた肥料の生成量が10(L)である場合、制御装置10は、図4のステップS3において、10(L)に30(g/L)を乗算することによってリン酸イオンの混合量として300(g)を算出し、10(L)に40(g/L)を乗算することによって硝酸イオンの混合量として400(g)を算出し、10(L)に30(g/L)を乗算することによってカリウムイオンの混合量として300(g)を算出する。
【0061】
そして、例えば、貯留槽T1に貯留されたリン濃縮液におけるリン酸イオンの濃度が100(g/L)である場合、制御装置10は、リン酸イオンの混合量である300(g)を、貯留槽T1に貯留されたリン濃縮液におけるリン酸イオンの濃度である100(g/L)で除算することにより、リン濃縮液の混合量(第1混合量)として3(L)を算出する。また、例えば、貯留槽T2に貯留された硝酸濃縮液における硝酸イオンの濃度が200(g/L)である場合、制御装置10は、硝酸イオンの混合量である400(g)を、貯留槽T2に貯留された硝酸濃縮液における硝酸イオンの濃度である200(g/L)で除算することにより、硝酸濃縮液の混合量(第2混合量)として2(L)を算出する。さらに、例えば、貯留槽T3に貯留されたカリウム濃縮液におけるカリウムイオンの濃度が300(g/L)である場合、制御装置10は、カリウムイオンの混合量である300(g)を、貯留槽T3に貯留されたカリウム濃縮液におけるカリウムイオンの濃度である300(g/L)で除算することにより、カリウム濃縮液の混合量(第3混合量)として1(L)を算出する。
【0062】
その後、制御装置10は、例えば、図4のステップS3で決定した第1混合量に対応するリン濃縮液と、図4のステップS3で決定した第2混合量に対応する硝酸濃縮液と、図4のステップS3で決定した第3混合量に対応するカリウム濃縮液とを混合させることによって肥料を生成する(図4のステップS4)。
【0063】
具体的に、制御装置10は、例えば、弁V1の開制御及び閉制御を行うことによって、図4のステップS3で決定した第1混合量に対応するリン濃縮液が貯留槽T1から貯留槽T5に供給されるように制御する。また、制御装置10は、例えば、弁V2の開制御及び閉制御を行うことによって、図4のステップS3で決定した第2混合量に対応する硝酸濃縮液が貯留槽T2から貯留槽T5に供給されるように制御する。また、制御装置10は、例えば、弁V3の開制御及び閉制御を行うことによって、図4のステップS3で決定した第3混合量に対応するカリウム濃縮液が貯留槽T3から貯留槽T5に供給されるように制御する。
【0064】
さらに具体的に、例えば、図4のステップS1において入力を受け付けた肥料の用途が植物Aであり、図4のステップS1において入力を受け付けた肥料の生成量が10(L)であり、図4のステップS2において決定した第1混合量が3(L)であり、図4のステップS2において決定した第2混合量が2(L)であり、図4のステップS2において決定した第3混合量が1(L)である場合、制御装置10は、例えば、3(L)のリン濃縮液が貯留槽T1から貯留槽T5に供給され、2(L)の硝酸濃縮液が貯留槽T2から貯留槽T5に供給され、1(L)のカリウム濃縮液が貯留槽T3から貯留槽T5に供給され、さらに、4(L)の水(希釈水)が貯留槽T5に供給されるように制御することにより、植物Aに対して利用可能な10(L)の肥料を生成する。
【0065】
これにより、制御装置10は、例えば、作業者によって指定された用途及び生成量に対応する肥料を生成することが可能になる。
【0066】
なお、上記の例では、肥料の生成指示の入力を受け付けたことに応じて肥料の生成を行う場合について説明を行ったが、これに限られない。具体的に、制御装置10は、例えば、所定のタイミングになったことに応じて、予め設定された用途及び生成量に従った肥料の生成を行うものであってもよい。所定のタイミングは、例えば、数時間ごと等の所定時間ごとのタイミングであってもよい。また、所定のタイミングは、例えば、貯留槽T1、貯留槽T2及び貯留槽T3のうちの少なくともいずれかにおける各溶液の貯留量が予め定められた閾値を超えたタイミングであってもよい。
【0067】
また、上記の例では、弁V1、弁V2及び弁V3の開制御及び閉制御を行うことによって貯留槽T5に対する各溶液の供給量を調整する場合について説明を行ったが、これに限られない。具体的に、貯留槽T5は、例えば、ベルトコンベア(図示せず)上に載置され、ラインL4と連通するリン濃縮液の供給口(図示せず)と、ラインL9と連通する硝酸濃縮液の供給口(図示せず)と、ラインL10と連通するカリウム濃縮液の供給口(図示せず)との下方を順次移動するものであってよい。そして、制御装置10は、例えば、弁V1、弁V2及び弁V3の開度を調整するとともに、貯留槽T5の移動速度を制御することによって、貯留槽T5に対する各溶液の供給量を調整するものであってもよい。
【0068】
このように、本実施の形態における肥料生成システム100における肥料生成方法は、例えば、リン成分と窒素成分とカリウム成分とを含む有機性排水から、少なくともリン成分を含むリン濃縮液と、少なくとも窒素成分(硝酸成分)を含む硝酸濃縮液と、少なくともカリウム成分を含むカリウム濃縮液とをそれぞれ抽出する工程と、リン濃縮液に含まれるリン成分をイオン化する工程と、イオン化したリン成分を含むリン濃縮液と、抽出した硝酸濃縮液と、抽出したカリウム濃縮液とのうちの少なくとも1つから肥料を生成する工程と、を有する。
【0069】
具体的に、本実施の形態における肥料生成システム100において、有機性排水は、例えば、養殖排水であり、硝酸濃縮液は、例えば、イオン化した硝酸成分を含み、カリウム濃縮液は、例えば、イオン化したカリウム成分を含む。そして、本実施の形態における肥料生成方法において、抽出する工程では、例えば、有機性排水からリン濃縮液を抽出し、リン濃縮液を抽出した有機性排水に対して電圧を印加することによって、または、陰イオンを吸着可能な樹脂と陽イオンを吸着可能な樹脂とのうちの少なくともいずれかを用いることによって、リン濃縮液を抽出した有機性排水から、陰イオンである硝酸成分を含む硝酸濃縮液と陽イオンであるカリウム成分を含むカリウム濃縮液とを抽出する。
【0070】
また、本実施の形態における肥料生成方法において、イオン化する工程では、例えば、生物処理によってリン濃縮液に含まれるリン成分をイオン化する。
【0071】
また、本実施の形態における肥料生成方法において、イオン化する工程では、例えば、リン濃縮液に含まれる汚泥を粉砕することによって、イオン化したリン成分を汚泥から溶出させる。
【0072】
さらに、本実施の形態における制御装置10は、例えば、肥料の用途と肥料の生成量との入力を受け付ける。そして、制御装置10は、例えば、リン濃縮液と硝酸濃縮液とカリウム濃縮液との混合比率に関する混合比率情報DTを記憶した情報格納領域130を参照し、入力を受け付けた肥料の用途に対応する混合比率を特定する。続いて、制御装置10は、例えば、入力を受け付けた生成量と、特定した混合比率とに基づいて、リン濃縮液の第1混合量と硝酸濃縮液の第2混合量とカリウム濃縮液との第3混合量とを決定する。その後、制御装置10は、例えば、決定した第1混合量に対応するリン濃縮液と、決定した第2混合量に対応する硝酸濃縮液と、決定した第3混合量に対応するカリウム濃縮液とを混合させることによって肥料を生成する。
【0073】
すなわち、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、有機性排水に含まれる不溶性のリン成分をイオン化させてから肥料の生成に用いる。
【0074】
これにより、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、微生物等によってイオン化(無機化)が必要な従来の有機肥料よりも、効果が生じるまでに要する時間を短縮させることが可能な肥料を生成することが可能になる。そのため、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、植物の生育をより促進することが可能な肥料を生成することが可能になる。
【0075】
また、本実施の形態における肥料生成システム100では、例えば、貯留槽T1に貯留されるリン濃縮液に含まれるリン成分と、貯留槽T2に貯留される硝酸濃縮液に含まれる硝酸成分と、貯留槽T3に貯留されるカリウム濃縮液に含まれるカリウム成分とのそれぞれがイオンの形態で存在している。そのため、本実施の形態における肥料生成システム100では、例えば、各種センサ(図示せず)を用いることによって、各成分の濃度を容易かつ正確に計測することが可能になる。したがって、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、図4のステップS2で特定した混合比率に対応する肥料を精度良く生成することが可能になる。
【0076】
なお、上記の例では、肥料の生成に用いられる有機性排水が養殖排水である場合について説明を行ったが、これに限られない。具体的に、肥料の生成に用いられる有機性排水は、例えば、メタン発酵液等の消化液(以下、単に消化液とも呼ぶ)であってもよい。
【0077】
また、例えば、肥料の生成に用いられる有機性排水として消化液が用いられる場合、肥料生成システム100は、例えば、消化液に含まれるアンモニア成分を硝酸成分に酸化(硝化)する硝化反応槽(図示せず)を有するものであってよい。そして、貯留槽T0は、例えば、硝化反応槽において酸化が行われた後の消化液を貯留するものであってよい。
【0078】
[第2の実施の形態における肥料生成システム200]
次に、第2の実施の形態における肥料生成システム200の構成について説明を行う。図6は、第2の実施の形態における肥料生成システム200の構成について説明する図である。以下、第1の実施の形態における肥料生成システム100と異なる点について説明を行う。
【0079】
肥料生成システム200は、図6に示すように、例えば、図1等で説明した肥料生成システム100が有する各構成に加え、濾過装置4と、濾過装置5と、貯留槽T6と、貯留槽T7とを有する。
【0080】
濾過装置4は、例えば、濾過膜(図示せず)を用いることによって、ラインL4aを介して貯留槽T1から供給されたリン濃縮液について濾過を行う装置である。ラインL4aは、例えば貯留槽T1と濾過装置4とを連通する配管である。なお、濾過装置4における濾過膜は、例えば、逆浸透膜であってよい。
【0081】
具体的に、ラインL4aに設けられたポンプ(図示せず)は、例えば、貯留槽T1に貯留されたリン濃縮液を濾過装置4に供給する。そして、濾過装置4は、例えば、ポンプによって供給されたリン濃縮液について濾過を行うことにより、供給されたリン濃縮液に含まれる肥効成分を含む液体を抽出する。言い換えれば、濾過装置4は、例えば、ポンプによって供給されたリン濃縮液のうち、濾過膜を透過しなかった液体を抽出する。リン濃縮液に含まれる肥効成分は、例えば、植物生育促進根圏細菌(PGPR:Plant Growth Promoting Rhizobacterium)や植物成育促進菌類(PGPF:PlantGrowth Promoting Fungi)等の成長促進作用を有する微生物等である。また、リン濃縮液に含まれる肥効成分は、例えば、フミン様物質やフルボ酸等の成長促進作用を有する高分子有機物や、無機化されなかったミネラル等を含む不溶性物質である。
【0082】
なお、濾過装置4は、この場合、例えば、ラインL4bを介して肥効成分が分離された後の液体を養殖水槽に返送するものであってよい。ラインL4bは、例えば、濾過装置4と養殖水槽とを連通する配管である。
【0083】
貯留槽T7は、例えば、ラインL4cを介して濾過装置4から供給された肥効成分を含む液体を貯留する。ラインL4cは、例えば、濾過装置4と貯留槽T7とを連通する配管である。具体的に、ラインL4cに設けられたポンプ(図示せず)は、例えば、濾過装置4から供給された肥効成分を含む液体を貯留槽T7に供給する。そして、貯留槽T7は、例えば、供給された肥効成分を含む液体を貯留する。
【0084】
また、制御装置10は、この場合、例えば、ラインL4dに設けられた弁V5の開制御及び閉制御を行う。ラインL4dは、例えば、貯留槽T7とラインL4とを連通する配管である。
【0085】
具体的に、制御装置10は、例えば、弁V5の開度を適宜調整することによって、ラインL4d及びラインL4の一部を介して貯留槽T7から貯留槽T5に供給される肥効成分を含む液体の供給量(例えば、単位時間あたりの供給量)を制御する。
【0086】
すなわち、生成後の肥料が水耕栽培において用いられる場合、肥料生成システム200では、例えば、微生物等が含まれない肥料を生成する必要がある。一方、生成後の肥料が土耕栽培において用いられる場合、肥料生成システム200では、例えば、地力を高める観点から、微生物等が含まれる肥料を生成することが好ましい。
【0087】
そこで、制御装置10は、例えば、図4のステップS1において、生成後の肥料が水耕栽培において用いられることを示す情報、または、生成後の肥料が土耕栽培において用いられることを示す情報の入力を併せて受け付けるものであってもよい。そして、例えば、生成後の肥料が水耕栽培において用いられることを示す情報の入力を受け付けた場合、制御装置10は、貯留槽T1から供給されたリン濃縮液を濾過装置4に供給するように制御し、貯留槽T1から供給されたリン濃縮液に含まれる肥効成分を濾過装置4において抽出させるものであってよい。すなわち、制御装置10は、この場合、例えば、ラインL4c、貯留槽T7、ラインL4d及びラインL4の一部を介して、肥効成分が分離された後のリン濃縮液が貯留槽T5に供給されるように制御するものであってよい。
【0088】
具体的に、制御装置10は、この場合、例えば、貯留槽T1から供給されたリン濃縮液がラインL4aを介して濾過装置4に供給されるように、ラインL4aに設けられた弁V6の開制御を行うとともに、ラインL4におけるラインL4dとの合流点の上流側に設けられた弁V7の閉制御を行うものであってよい。
【0089】
一方、例えば、生成後の肥料が土耕栽培において用いられることを示す情報の入力を受け付けた場合、制御装置10は、貯留槽T1から供給されたリン濃縮液が貯留槽T5に直接供給されるように制御するものであってよい。すなわち、制御装置10は、この場合、例えば、貯留槽T1から供給されたリン濃縮液が濾過装置4を迂回して貯留槽T5に対して直接供給されるように制御するものであってよい。
【0090】
具体的に、制御装置10は、この場合、例えば、ラインL4を介して貯留槽T1から貯留槽T5にリン濃縮液が直接供給されるように、弁V6の閉制御を行うとともに、弁V7の開制御を行うものであってよい。
【0091】
なお、図6に示す例では、ラインL4dがラインL4と連通しているが、これに限られない。具体的に、ラインL4dは、例えば、ラインL4の一部を介さずに貯留槽T5と直接連通するものであってもよい。すなわち、肥効成分が分離された後のリン濃縮液は、例えば、ラインL4の一部を介さずに貯留槽T5に対して直接供給されるものであってもよい。
【0092】
これにより、肥料生成システム200では、例えば、肥効成分が分離された後のリン濃縮液(貯留槽T7から供給されるリン濃縮液)と、肥効成分が分離されていないリン濃縮液(貯留槽T1から直接供給されるリン濃縮液)とのそれぞれが流れるラインを完全に分離することが可能になる。そのため、肥料生成システム200では、例えば、肥効成分が分離された後のリン濃縮液に対する微生物等の混入を防止することが可能になる。
【0093】
濾過装置5は、例えば、濾過膜(図示せず)を用いることによって、ラインL11を介して貯留槽T4から供給された廃液についての限外濾過を行う装置である。ラインL11は、例えば貯留槽T4と濾過装置5とを連通する配管である。
【0094】
具体的に、ラインL11に設けられたポンプ(図示せず)は、例えば、貯留槽T4に貯留された廃液を濾過装置5に供給する。そして、濾過装置5は、例えば、ポンプによって供給された廃液について濾過を行うことにより、供給された廃液から肥効成分を含む液体を抽出する。言い換えれば、濾過装置5は、例えば、ポンプによって供給されたリン濃縮液のうち、濾過膜を透過しなかった液体を抽出する。
【0095】
なお、濾過装置5は、この場合、例えば、ラインL12を介して肥効成分が分離された廃液を養殖水槽に返送するものであってよい。ラインL12は、例えば、濾過装置5と養殖水槽とを連通する配管である。
【0096】
貯留槽T6は、例えば、ラインL13を介して濾過装置5から供給された肥効成分を含む液体を貯留する。ラインL13は、例えば、濾過装置5と貯留槽T6とを連通する配管である。具体的に、ラインL13に設けられたポンプ(図示せず)は、例えば、濾過装置5から供給された肥効成分を含む液体を貯留槽T6に供給する。そして、貯留槽T6は、例えば、供給された肥効成分を含む液体を貯留する。
【0097】
また、制御装置10は、この場合、例えば、ラインL14に設けられた弁V4の開制御及び閉制御を行う。ラインL14は、例えば、貯留槽T6と貯留槽T5とを連通する配管である。
【0098】
具体的に、制御装置10は、例えば、弁V4の開度を適宜調整することによって、貯留槽T6から貯留槽T5に供給される肥効成分を含む液体の供給量(例えば、単位時間あたりの供給量)を制御する。
【0099】
このように、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、リン成分をイオン化したリン濃縮液から微生物等の肥効成分を含む溶液を分離する。そして、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、肥効成分を含む溶液を分離したリン濃縮液と、抽出した硝酸濃縮液と、抽出したカリウム濃縮液とのうちの少なくとも1つから肥料を生成する。
【0100】
すなわち、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、水耕栽培において用いる肥料を生成する場合、肥効成分(リン濃縮液に含まれる肥効成分)を含まない肥料の生成を行う。一方、例えば、土耕栽培において用いる肥料を生成する場合、本実施の形態における肥料生成方法では、肥効成分(リン濃縮液に含まれる肥効成分)を含む肥料の生成を行う。
【0101】
これにより、本実施の形態における肥料生成方法では、例えば、各用途に適した肥料を生成することが可能になる。
【符号の説明】
【0102】
1:濾過装置 2:イオン化装置
3:イオン濃縮装置 4:濾過装置
5:濾過装置 10:制御装置
100:肥料生成システム 101:CPU
102:メモリ 103:通信装置
104:記憶媒体 105:バス
110:プログラム 130:情報格納領域
DT:混合比率情報 T0:貯留槽
T1:貯留槽 T2:貯留槽
T3:貯留槽 T4:貯留槽
T5:貯留槽 T6:貯留槽
L1:ライン L2:ライン
L3:ライン L4:ライン
L4a:ライン L4b:ライン
L4c:ライン L4d:ライン
L5:ライン L6:ライン
L7:ライン L8:ライン
L9:ライン L10:ライン
L11:ライン L12:ライン
L13:ライン L14:ライン
V1:弁 V2:弁
V3:弁 V4:弁
V5:弁 V6:弁
V7:弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6