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特開2025-9541運転席用シートヒータ及び自動車用運転席
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  • 特開-運転席用シートヒータ及び自動車用運転席 図1
  • 特開-運転席用シートヒータ及び自動車用運転席 図2
  • 特開-運転席用シートヒータ及び自動車用運転席 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009541
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】運転席用シートヒータ及び自動車用運転席
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/74 20060101AFI20250110BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20250110BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
A47C7/74 B
B60N2/56
B60N2/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112617
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 賢三
(72)【発明者】
【氏名】田中 大助
(72)【発明者】
【氏名】石山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】北仲 史門
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 正人
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA06
3B084JF02
3B087DE03
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】乗員の快適性の確保と省電力化とを両立する。
【解決手段】運転席用シートヒータ30は、乗員の臀部及び大腿部を支持するメイン部12Mと、メイン部12Mのシート左右方向両側に設けられ、メイン部12Mよりシート上方に張り出した左右のサイドボルスター部12L、12Rとを有する自動車用運転席10のシートクッション12に配設される。この運転席用シートヒータ30は、メイン部12Mに配設されるメインヒータ32Mと、左右のサイドボルスター部12L、12Rのうち右側のサイドボルスター部12Rのみに配設されるサイドヒータ32Rと、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の臀部及び大腿部を支持するメイン部と、前記メイン部のシート左右方向両側に設けられ、前記メイン部よりシート上方に張り出した左右のサイドボルスター部とを有する自動車用運転席のシートクッションに配設される運転席用シートヒータであって、
前記メイン部に配設されるメインヒータと、
前記左右のサイドボルスター部のうち右側の前記サイドボルスター部のみに配設されるサイドヒータと、
を有する運転席用シートヒータ。
【請求項2】
前記メインヒータと前記サイドヒータとは別々のヒータ線によって構成され、
前記サイドヒータは、前記自動車用運転席が搭載された自動車が自動運転可能であり且つ当該自動車が自動運転モードで走行しているときにはオフにされる請求項1に記載の運転席用シートヒータ。
【請求項3】
前記メインヒータは、
前記メイン部の左側部分に配設される左側ヒータと、
前記メイン部の右側部分に配設される右側ヒータと、
を有し、
前記右側ヒータは、前記左側ヒータよりもシート左右方向の外側寄りに配置される請求項1又は請求項2に記載の運転席用シートヒータ。
【請求項4】
シートクッションのクッション材を構成するクッションパッドと、
前記クッションパッドに被せられたクッション表皮と、
前記クッションパッドと前記クッション表皮との間に配設された請求項1又は請求項2に記載の運転席用シートヒータと、
を備えた自動車用運転席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の運転席に関し、特に運転席のシートクッションに配設される運転席用シートヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートのシートクッションに配設される面状発熱体(シートヒータ)が開示されている。シートクッションは、左右方向の中央に配置された座面部(メイン部)と、座面部の左右外側に配置され、乗員の側部を支持する左右の張り出し部(左右のサイドボルスター部)とを有している。シートヒータは、メイン部に配設された第1ヒータと、左右のサイドボルスター部に配設された左右の第2ヒータとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-185084号公報
【特許文献2】特開2022-56310号公報
【特許文献3】特開2016-199166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、シートクッションのメイン部と左右のサイドボルスター部とにシートヒータが配設されているため、シートヒータの配線長が長くなり、消費電力が増加する。このため、省燃費化(電気自動車においては省電費化)の観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の快適性の確保と省電力化とを両立することができる運転席用シートヒータ及び自動車用運転席を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の運転席用シートヒータは、乗員の臀部及び大腿部を支持するメイン部と、前記メイン部のシート左右方向両側に設けられ、前記メイン部よりシート上方に張り出した左右のサイドボルスター部とを有する自動車用運転席のシートクッションに配設される運転席用シートヒータであって、前記メイン部に配設されるメインヒータと、前記左右のサイドボルスター部のうち右側の前記サイドボルスター部のみに配設されるサイドヒータと、を有している。
【0007】
第1の態様の運転席用シートヒータは、自動車用運転席のシートクッションに配設される。このシートクッションは、乗員の臀部及び大腿部を支持するメイン部と、メイン部のシート左右方向両側に設けられ、メイン部よりシート上方に張り出した左右のサイドボルスター部とを有している。このシートクッションに配設される運転席用シートヒータは、メイン部に配設されるメインヒータと、左右のサイドボルスター部のうち右側のサイドボルスター部のみに配設されるサイドヒータと、を有している。自動車用運転席に着座する乗員は、アクセルペダルを操作する右脚の股開き角度が、左脚の股開き角度より大きくなる傾向があるため、上記のサイドヒータによって右脚の大腿部を良好に温めることができ、乗員の快適性を確保することができる。しかも、左側のサイドボルスター部にはサイドヒータが配設されないので、省電力化を図ることができる。
【0008】
第2の態様の運転席用シートヒータは、第1の態様において、前記メインヒータと前記サイドヒータとは別々のヒータ線によって構成され、前記サイドヒータは、前記自動車用運転席が搭載された自動車が自動運転可能であり且つ当該自動車が自動運転モードで走行しているときにはオフにされる。
【0009】
第2の態様の運転席用シートヒータでは、メインヒータとは別のヒータ線によって構成されたサイドヒータは、自動車が自動運転モードで走行しているとき、すなわち自動車用運転席に着座した乗員が右脚でアクセルペダルを操作する必要がないときにはオフにされる。これにより、一層の省電力化を図ることができる。
【0010】
第3の態様の運転席用シートヒータは、第1の態様又は第2の態様において、前記メインヒータは、前記メイン部の左側部分に配設される左側ヒータと、前記メイン部の右側部分に配設される右側ヒータと、を有し、前記右側ヒータは、前記左側ヒータよりもシート左右方向の外側寄りに配置される。
【0011】
第3の態様の運転席用シートヒータでは、シートクッションのメイン部の右側部分に配設される右側ヒータが、メイン部の左側部分に配設される左側ヒータよりもシート左右方向の外側寄りに配置される。これにより、自動車用運転席に着座する乗員において、左脚よりも股開き角度より大きくなる傾向がある右脚の大腿部を、右側ヒータによって良好に温めることができる。
【0012】
第4の態様の自動車用運転席は、シートクッションのクッション材を構成するクッションパッドと、前記クッションパッドに被せられたクッション表皮と、前記クッションパッドと前記クッション表皮との間に配設された第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様の運転席用シートヒータと、を備えている。
【0013】
第4の態様の自動車用運転席では、シートクッションのクッション材を構成するクッションパッドと、クッションパッドに被せられたクッション表皮との間に、運転席用シートヒータが配設されている。この運転席用シートヒータは、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様のものであるため、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る運転席用シートヒータ及び自動車用運転席では、乗員の快適性の確保と省電力化とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る自動車用運転席を示す平面図である。
図2】実施形態に係る自動車用運転席のシートクッションにおいてクッション表皮の図示を省略した状態を示す平面図である。
図3】乗員の股開き角度について説明するための図2に対応した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図3を参照して本発明の一実施形態に係る自動車用運転席10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR及びLHは、自動車用運転席の前方及び左方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、自動車用運転席10に対する方向を示すものとする。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態に係る自動車用運転席10は、自動車の乗員が着座するシートクッション12と、該乗員の背部を支持するシートバック14と、該乗員の頭部を支持するヘッドレスト16とを備えている。上記の自動車は、例えばレベル2又はレベル3の自動運転機能を有しており、自動運転モードと手動運転モードとに切り替え可能とされている。
【0018】
シートクッション12は、フレームである図示しないクッションフレームと、クッションフレームに支持されたクッション材であるクッションパッド18と、クッションパッド18に被せられた表皮材であるクッション表皮20と、クッションパッド18とクッション表皮20との間に配設された運転席用シートヒータ30と、を備えている。クッションフレームは、例えば金属によって構成されている。クッションパッド18は、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって構成されている。クッション表皮20は、例えば布材、皮革、合成皮革等からなる複数の表皮片が互いに縫製されて構成されている。
【0019】
上記のシートクッション12は、乗員の臀部及び大腿部を下方から支持するメイン部12Mと、メイン部12Mの左右方向両側に設けられ、メイン部12Mより上方に張り出した左右のサイドボルスター部12L、12Rとを有している。メイン部12Mは、シートクッション12の左右方向中央部を構成しており、左右のサイドボルスター部12L、12Rは、シートクッション12の左右方向側部を構成している。
【0020】
図2に示されるように、運転席用シートヒータ30は、ヒータ本体32と、ヒータ本体32を支持するシート状の基材34とを有している。ヒータ本体32は、例えばニクロム線等のヒータ線(熱線)が波形状に曲げられたものであるが、図1図3ではヒータ本体32を概略的に図示している。基材34は、例えば不織布である。なお、ヒータ本体32は、通電により発熱可能な線状、シート状又はフィルム状のものであればよい。また、基材34は、不織布に限らず、可撓性を有するシート状又はフィルム状のものであればよい。
【0021】
ヒータ本体32は、シートクッション12のメイン部12Mに配設されるメインヒータ32Mと、左右のサイドボルスター部12L、12Rのうち右側のサイドボルスター部12Rのみに配設されるサイドヒータ32Rと、を有している。この運転席用シートヒータ30は、左側のサイドボルスター部12Lに配設されるサイドヒータを有していない。また、シートクッション12には、運転席用シートヒータ30以外のヒータは配設されていない。
【0022】
メインヒータ32Mとサイドヒータ32Rとは、別々(別体)のヒータ線によって構成されている。メインヒータ32Mは、メイン部12Mの左側部分に配設される左側ヒータ32MLと、メイン部の右側部分に配設される右側ヒータ32MRとを有している。右側ヒータ32MRは、左側ヒータ32MLよりも若干左右方向の外側寄りに配置されている。
【0023】
基材34は、シートクッション12のメイン部12Mに配設されるメイン基材34Mと、右側のサイドボルスター部12Rに配設されるサイド基材34Rと、を有している。メイン基材34には、メインヒータ32Mすなわち左側ヒータ32ML及び右側ヒータ32MRが取り付けられており、サイド基材34Rには、サイドヒータ32Rが取り付けられている。
【0024】
メインヒータ32M及びサイドヒータ32Rを構成する各ヒータ線の両端は、例えばシートクッション12の後端部に配設されており、図示しない温度調節装置に電気的に接続されている。この温度調節装置には、自動車用運転席10に搭載された図示しない制御装置と、シートクッション12に配設された図示しない温度センサとが電気的に接続されている。温度調節装置は、制御装置からの信号が入力されると、制御装置から入力された信号に対応する所定の温度となるようにメインヒータ32M及びサイドヒータ32Rへの通電を制御する。本実施形態では、温度調節装置は、温度センサによって取得した温度が制御装置から入力された信号に対応する温度以下の場合にはメインヒータ32M及びサイドヒータ32Rに通電してメインヒータ32M及びサイドヒータ32Rの温度を上げ、上記信号に対応する温度を越えるとメインヒータ32M及びサイドヒータ32Rへの通電を停止するように構成されている。
【0025】
上記の制御装置は、自動車の自動運転を制御する自動運転制御装置と電気的に接続されており、自動車が自動運転モードで走行しているときには、温度調節装置によるサイドヒータ32Rへの通電を常に停止させる(すなわちサイドヒータ32Rを常にオフにする)ように構成されている。この制御装置は、自動車が手動運転モードで走行しているときには、温度調節装置によるサイドヒータ32Rへの通電を許容する。これにより、温度センサの検出結果に応じてサイドヒータ32Rがオンにされるように構成されている。
【0026】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0027】
上記構成の自動車用運転席10では、シートクッション12に運転席用シートヒータ30が配設されている。シートクッション12は、乗員の臀部及び大腿部を支持するメイン部12Mと、メイン部12Mのシート左右方向両側に設けられ、メイン部12Mより上方に張り出した左右のサイドボルスター部12L、12Rとを有している。運転席用シートヒータ30は、メイン部12Mに配設されるメインヒータ32Mと、左右のサイドボルスター部12L、12Rのうち右側のサイドボルスター部12Rのみに配設されるサイドヒータ32Rと、を有している。
【0028】
図3に示されるように、自動車用運転席10に着座する乗員Pは、アクセルペダルを操作する右脚RFの股開き角度θ1が、左脚LFの股開き角度θ2より大きくなる傾向がある。このため、右脚RFの大腿部RTとの接触が見込まれる右側のサイドボルスター部12Rにサイドヒータ32Rが配設されることにより、右脚RFの大腿部RTを良好に温めることができ、乗員Pの快適性を確保することができる。しかも、大柄の乗員以外では、左脚LFの大腿部LTとの接触の機会が少ない左側のサイドボルスター部12Lには、サイドヒータが配設されていないので、ヒータ線の配線長を短くすることができ、無駄な電力消費を抑えることができる。これにより、省電力化及び低コスト化を図ることができる。なお、図3においてCLはシートクッション12の左右方向中心線である。
【0029】
また、この運転席用シートヒータ30では、メインヒータ32Mとは別のヒータ線によって構成されたサイドヒータ32Rは、自動車が自動運転モードで走行しているとき、すなわち自動車用運転席10に着座した乗員Pが右脚RFでアクセルペダルを操作する必要がないときにはオフにされる。これにより、一層の省電力化を図ることができる。
【0030】
また、この運転席用シートヒータ30では、メインヒータ32Mは、前記メイン部12Mの左側部分に配設される左側ヒータ32MLと、前記メイン部12Mの右側部分に配設される右側ヒータ32MRとを有している。右側ヒータ32MRは、左側ヒータ32MLよりも左右方向の外側寄りに配置されている。これにより、自動車用運転席10に着座する乗員Pにおいて、左脚LFより股開き角度が大きくなる傾向がある右脚RFの大腿部RTを、右側ヒータ32MRによって良好に温めることができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、メインヒータ32Mの右側ヒータ32MRが左側ヒータ32MLよりも左右方向の外側寄りに配置された構成にしたが、これに限らず、右側ヒータ32MRと左側ヒータ32MLとが左右対称に配置された構成にしてもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、メインヒータ32Mとサイドヒータ32Rとが別々のヒータ線によって構成されたが、これに限らず、メインヒータ32とサイドヒータ32Rとが一本のヒータ線によって構成されてもよい。
【0033】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
10 自動車用運転席
12 シートクッション
12M メイン部
12L、12R サイドボルスター部
18 クッションパッド
20 クッション表皮
30 運転席用シートヒータ
32M メインヒータ
32ML 左側ヒータ
32MR 右側ヒータ
32R サイドヒータ
図1
図2
図3