(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009542
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】シートバックパッド及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/66 20060101AFI20250110BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20250110BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20250110BHJP
A47C 7/46 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B60N2/66
B60N2/22
B60N2/64
A47C7/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112618
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 賢三
(72)【発明者】
【氏名】石山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 正人
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊平
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084HA01
3B087BD05
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】ランバーサポート装置の作動範囲を広げる。
【解決手段】シートバックパッド20は、車両用シートのシートバック14のパッド材を構成し、シートバック表皮26によって覆われる。このシートバックパッド20では、シートバック14に搭載されたランバーサポート装置28と対向する下部の背面に、シート左右方向に延びる複数の溝24がシート上下方向に並んで形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックのパッド材を構成し、表皮によって覆われるシートバックパッドであって、
前記シートバックに搭載されたランバーサポート装置と対向する下部の背面に、シート左右方向に延びる複数の溝がシート上下方向に並んで形成されたシートバックパッド。
【請求項2】
前記複数の溝は、シート後方側へ向かうほどシート上下方向の幅が拡大している請求項1に記載のシートバックパッド。
【請求項3】
前記シートバックのシート左右方向中央部に配置されるパッド本体部と、
前記シートバックのシート左右方向両側部に配置される左右のパッドサイド部と、
を有し、
前記パッド本体部の下部の背面におけるシート左右方向の両端部には、シート前方側へ凹んだ左右の凹部が形成されており、
前記複数の溝は、前記パッド本体部の下部の背面に形成され、シート左右方向の両端部が前記左右の凹部に開口している請求項1に記載のシートバックパッド。
【請求項4】
車両の乗員が着座するシートクッションと、
前記乗員の背部を支持するシートバックと、
前記シートバックに搭載されたランバーサポート装置と、
を備え、
前記シートバックのパッド材が請求項1~請求項3の何れか1項に記載のシートバックパッドによって構成された車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特にシートバックのパッド材であるシートバックパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1~3には、シートバックにランバーサポート装置が搭載された車両用シートが開示されている。シートバックは、パッド材であるシートバックパッドと、シートバックパッドを覆う表皮とを有している。ランバーサポート装置は、シートバックパッドに対してシート後方側に配置され、シートバックパッドの下部をシート前方に押し出すことにより、乗員の腰部の支持力を調節する。これにより、乗員の体型差によらず乗員の快適性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭64-15556号公報
【特許文献2】実開昭63-42258号公報
【特許文献3】実開昭59-132557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、シートバックパッド及び表皮が抵抗となり、ランバーサポート装置を作動範囲が狭められるという課題がある。特に、シートバックの下端部側では表皮の変形抵抗が大きいため、乗員の腰部の支持位置を十分に下げることが困難である。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ランバーサポート装置の作動範囲を広げることができるシートバックパッド及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のシートバックパッドは、車両用シートのシートバックのパッド材を構成し、表皮によって覆われるシートバックパッドであって、前記シートバックに搭載されたランバーサポート装置と対向する下部の背面に、シート左右方向に延びる複数の溝がシート上下方向に並んで形成されている。
【0007】
第1の態様のシートバックパッドは、車両用シートのシートバックのパッド材を構成し、表皮によって覆われる。このシートバックパッドでは、シートバックに搭載されたランバーサポート装置と対向する下部の背面に、シート左右方向に延びる複数の溝がシート上下方向に並んで形成されている。これにより、ランバーサポート装置の作動時におけるシートバックパッドの変形抵抗が小さくなるため、ランバーサポート装置の作動範囲を広げることができる。
【0008】
第2の態様のシートバックパッドは、第1の態様において、前記複数の溝は、シート後方側へ向かうほどシート上下方向の幅が拡大している。
【0009】
第2の態様によれば、シートバックパッドの下部の背面に形成された複数の溝は、シート後方側へ向かうほどシート上下方向の幅が拡大している。これにより、シートバックパッドの下部がランバーサポート装置によってシート前方側へ大きく押し出される際に、複数の溝が閉じにくくなる。その結果、シートバックパッドの変形抵抗を小さくする効果を維持しやすくなる。
【0010】
第3の態様のシートバックパッドは、第1の態様又は第2の態様において、前記シートバックのシート左右方向中央部に配置されるパッド本体部と、前記シートバックのシート左右方向両側部に配置される左右のパッドサイド部と、を有し、前記パッド本体部の下部の背面におけるシート左右方向の両端部には、シート前方側へ凹んだ左右の凹部が形成されており、前記複数の溝は、前記パッド本体部の下部の背面に形成され、シート左右方向の両端部が前記左右の凹部に開口している。
【0011】
第3の態様のシートバックパッドは、シートバックのシート左右方向中央部に配置されるパッド本体部と、シートバックのシート左右方向両側部に配置される左右のパッドサイド部とを有している。パッド本体部の下部の背面におけるシート左右方向の両端部には、シート前方側へ凹んだ左右の凹部が形成されている。パッド本体部の下部の背面に形成された複数の溝は、シート左右方向の両端部が上記左右の凹部に開口している。これにより、パッド本体部の下部がランバーサポート装置によってシート前方側へ押し出される際のパッド本体部の変形抵抗を、パッド本体部のシート左右方向の両端部にまでわたって小さくすることができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、車両の乗員が着座するシートクッションと、前記乗員の背部を支持するシートバックと、前記シートバックに搭載されたランバーサポート装置と、を備え、前記シートバックのパッド材が第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様のシートバックパッドによって構成されている。
【0013】
第4の態様の車両用シートでは、車両の乗員がシートクッションに着座し、該乗員の背部がシートバックによって支持される。このシートバックには、ランバーサポート装置が搭載されている。このシートバックのパッド材は、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様のシートバックパッドによって構成されているので、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係るシートバックパッド及び車両用シートでは、ランバーサポート装置の作動範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る車両用シートを示す側面図である。
【
図2】実施形態に係る車両用シートのシートバックパッドを示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係るシートバックパッドの縦断面図であり、
図2のF3-F3線に沿った切断面に対応した図である。
【
図4】実施形態に係るシートバックパッドの下部がランバーサポート装置によって押し出された状態を示す
図3に対応した断面図である。
【
図5】比較例に係る車両用シートのシートバックパッドを示す斜視図である。
【
図6】比較例に係るシートバックパッドの縦断面図であり、
図5のF6-F6線に沿った切断面に対応した図である。
【
図7】比較例に係るシートバックパッドの下部がランバーサポート装置によって押し出された状態を示す
図6に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1~
図7を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シート10の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10に対する方向を示すものとする。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、車両の乗員が着座するシートクッション12と、該乗員の背部を支持するシートバック14と、該乗員の頭部を支持するヘッドレスト16とを備えている。シートバック14は、骨格部材である図示しないフレームと、フレームに装着されたパッド材であるシートバックパッド20(
図2参照)と、シートバックパッド20を覆った表皮であるシートバック表皮26と、フレームに取り付けられ、シートバックパッド20を後方から弾性的に支持する図示しないシートバックスプリング(弾性体)と、シートバックスプリングに取り付けられたランバーサポート装置28とを備えている。
【0018】
シートバックパッド20は、例えばウレタンフォーム等の発泡体によって構成されている。このシートバックパッド20は、
図2に示されるように、シートバック14の左右方向中央部に配置されるパッド本体部20Aと、シートバック14の左右方向両側部に配置される左右のパッドサイド部20Bとを有している。このシートバックパッド20は、シートバック表皮26によって全周が包まれている。
【0019】
パッド本体部20Aの下部の背面における左右方向の両端部には、前方側へ凹んだ左右の凹部22が形成されている。また、パッド本体部20Aの下部の背面には、左右方向に延在する複数(ここでは5つ)の溝24が上下方向に略等間隔に並んで形成されている。複数の溝24は、左右方向の両端部が左右の凹部22に開口している(左右の凹部22に連通している)。また、複数の溝24は、
図3に示されるように、後方側へ向かうほど上下方向の幅(溝幅)が拡大しており、左右方向視で略楔形をなしている。
【0020】
上記複数の溝24は、パッド本体部20Aの後方に配置されたランバーサポート装置28と対向している。ランバーサポート装置28は、シートバック14の上下方向中間部に配置された上側昇降部30と、シートバック14の下端部に配置された下側昇降部32とを備えている。上側昇降部30及び下側昇降部32はそれぞれ、左右両端部が左右一対のガイドワイヤ34(左側のガイドワイヤ34は図示省略)に摺動可能に係合されている。左右のガイドワイヤ34は、シートバック14のフレームに支持されている。
【0021】
上側昇降部30と下側昇降部32との間には、左右一対のアーチ形成部36が架け渡されている。左右のアーチ形成部36は、上下方向を長手方向とする帯状の弾性を有する金属板又は樹脂板によって構成されており、左右方向視で前方へ凸をなす円弧状に湾曲している。上側昇降部30、下側昇降部32及び左右のアーチ形成部36は、ランバーサポート装置28が備える図示しない昇降機構によって上下方向に一体に昇降可能とされている。この昇降機構は、例えば送りねじ機構とされている。
【0022】
また、上側昇降部30と下側昇降部32とは、ランバーサポート装置28が備える図示しないアーチ変形機構によって互いに上下方向に切離移動可能とされている。このアーチ変形機構は、例えば送りねじ機構とされており、作動することで上側昇降部30を下側昇降部32に対して切離移動させるように構成されている。上側昇降部30が下側昇降部32に接近すると、左右のアーチ形成部36の湾曲の曲率が強くなり、アーチ形成部36の上下方向中間部が前方側へ突出する。これにより、パッド本体部20Aの下部がシートバック表皮26と一緒に前方に押し出される。上側昇降部30が下側昇降部32から離間すると、左右のアーチ形成部36の湾曲の曲率が弱くなり、左右のアーチ形成部36の上下方向中間部が後方側へ退避する。これにより、パッド本体部20A及びシートバック表皮26が元の状態に弾性復帰するように構成されている。なお、左右のアーチ形成部36とパッド本体部20Aとの間には、バスケット等と称される樹脂製の板材38が介在している。
【0023】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0024】
上記構成の車両用シート10では、シートバック14のパッド材を構成するシートバックパッド20がシートバック表皮26によって覆われている。このシートバックパッド20では、シートバック14に搭載されたランバーサポート装置28と対向する下部の背面に、左右方向に延びる複数の溝24が上下方向に並んで形成されている。これにより、ランバーサポート装置28の作動時におけるシートバックパッド20の変形抵抗が小さくなるため、ランバーサポート装置28の作動範囲を広げることができる。
【0025】
上記の効果について、
図5~
図7に示される比較例を用いて補足説明する。この比較例では、シートバックパッド20に複数の溝24が形成されていないが、それ以外の構成は本実施形態と同様とされている。この比較例では、ランバーサポート装置28が作動すると、シートバックパッド20及びシートバック表皮26が抵抗となり、ランバーサポート装置28の作動範囲(調整範囲)が狭められてしまう。具体的には、シートバックパッド20の下部において、ランバーサポート装置28によって押される背面側に余肉が集まることで(
図7の矢印A参照)、パッド本体部20Aの変形が妨げられるため、シートバックパッド20の前方への押し出しが阻害される。また、シートバック14の下端部側では、シートバック表皮26の変形抵抗が大きいため、ランバーサポート装置28の作動範囲が狭められる傾向が強くなる。このため、上側昇降部30、下側昇降部32及び左右のアーチ形成部36を昇降機構によって下降させても、シートバックパッド20による乗員の腰部の支持位置を下げることが困難になる(
図7の矢印B方向へのランバーサポート装置28の変位が困難になる)。
【0026】
これに対し、本実施形態では、シートバックパッド20の下部の背面に複数の溝24が形成されているため、シートバックパッド20の下部がランバーサポート装置28によって前方へ押し出される際に、上記背面における余肉の集まりが少なくなり、シートバックパッド20の変形抵抗が小さくなる。これにより、シートバックパッド20の変形が容易になるため、ランバーサポート装置28の作動範囲を下方側へ広げることが可能となる(
図4の矢印B参照)。その結果、シートバックパッド20による乗員の腰部の支持位置を十分に下げることが可能となり、乗員の姿勢保持性を改善可能となる。
【0027】
また、本実施形態では、シートバックパッド20の下部の背面に形成された複数の溝24は、後方側へ向かうほど上下方向の幅が拡大している。これにより、シートバックパッド20の下部がランバーサポート装置28によって前方側へ大きく押し出される際に、複数の溝24が閉じにくくなる。その結果、シートバックパッド20の変形抵抗を小さくする効果を維持しやすくなる。
【0028】
また、本実施形態では、シートバックパッド20は、シートバック14の左右方向中央部に配置されるパッド本体部20Aと、シートバック14の左右方向両側部に配置される左右のパッドサイド部20Bとを有している。パッド本体部20Aの下部の背面における左右方向の両端部には、前方側へ凹んだ左右の凹部22が形成されている。パッド本体部20Aの下部の背面に形成された複数の溝24は、左右方向の両端部が左右の凹部22に開口している。これにより、パッド本体部20Aの下部がランバーサポート装置28によって前方側へ押し出される際のパッド本体部20Aの変形抵抗を、パッド本体部20Aの左右方向の両端部にまでわたって小さくすることができる。
【0029】
なお、上記実施形態では、複数の溝24の左右方向両端部が左右の凹部22に開口した構成にしたが、これに限らず、シートバックパッド20に左右の凹部22が形成されない構成にしてもよい。
【0030】
また、上記実施形態では、複数(5つ)の溝24の上下幅が後方側へ向かうほど拡大した構成にしたが、これに限らず、複数の溝24の形状や数は適宜変更可能である。
【0031】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
20 シートバックパッド
20A パッド本体部
20B パッドサイド部
22 凹部
24 溝
26 シートバック表皮(表皮)
28 ランバーサポート装置