(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009545
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】足場板固定具及び足場システム
(51)【国際特許分類】
E04G 7/28 20060101AFI20250110BHJP
F16B 7/22 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
E04G7/28 301A
F16B7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112621
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】315019894
【氏名又は名称】株式会社杉孝グループホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄子 直毅
【テーマコード(参考)】
3J039
【Fターム(参考)】
3J039AA06
3J039BB02
3J039JA08
3J039JA16
(57)【要約】
【課題】足場板の上方に生じる段差の数を減らす。
【解決手段】足場板固定具20は、中央に開口部32Vが形成され、根太の上に架設された足場板間の目地に上方から掛け渡される押え板32と、押え板32の下面に固定されて下方へ延出し、目地に配置されるボルト受け部34と、を備えた押え部材30と、軸部42が開口部32Vから足場板の下方へ挿通され、頭部44がボルト受け部34と接して配置されるボルト40と、ボルト40が捩じ込まれる雌ねじ部54と、根太に下方から掛止される引掛け部56と、を備えたアンカー部材50と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口部が形成され、根太の上に架設された足場板間の目地に上方から掛け渡される押え板と、前記押え板の下面に固定されて下方へ延出し、前記目地に配置されるボルト受け部と、を備えた押え部材と、
軸部が前記開口部から前記足場板の下方へ挿通され、頭部が前記ボルト受け部と接して配置されるボルトと、
前記ボルトが捩じ込まれる雌ねじ部と、前記根太に下方から掛止される引掛け部と、を備えたアンカー部材と、
を有する足場板固定具。
【請求項2】
前記ボルト受け部は上下方向に沿う平板状の当て板である、請求項1に記載の足場板固定具。
【請求項3】
前記押え板において、前記ボルト受け部が沿う方向と交わる方向の端部は、下方に向かって折曲げられている、
請求項2に記載の足場板固定具。
【請求項4】
前記押え部材には、
前記ボルト受け部の下方へ延出するガイド部が設けられ、
前記アンカー部材には、
前記ガイド部が挿入され前記押え部材の上下動を案内する筒部が設けられている、
請求項1に記載の足場板固定具。
【請求項5】
前記押え板は、前記開口部として円孔が形成された円環状の板である、
請求項1に記載の足場板固定具。
【請求項6】
前記ボルトの呼び径が6mm以下である、
請求項1に記載の足場板固定具。
【請求項7】
前記引掛け部は2枚の板材を用いて形成されている、
請求項1に記載の足場板固定具。
【請求項8】
根太と、
請求項1~7の何れか1項に記載の足場板固定具と、
前記足場板固定具を用いて前記根太に固定された足場板と、
を備えた足場システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場板固定具及び足場システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、腕木に足場板を固定するための足場板固定装置が記載されている。この足場板固定装置では、足場板の下方に配置された支持板に固定されたナットへ、足場板の上方からボルトを捩じ込んで、腕木に足場板を固定している。この際、ボルト頭で押え板を押圧することで、固定力を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の足場板固定装置では、押え板をボルト頭で押圧するため、足場板の上方に、押え板とボルト頭とを合わせた、複数段の突起が生じる。このような突起は、足場板の上での作業に支障を与える可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、足場板の上方に生じる段差の数を減らせる足場板固定具及び足場システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の足場板固定具は、中央に開口部が形成され、根太の上に架設された足場板間の目地に上方から掛け渡される押え板と、前記押え板の下面に固定されて下方へ延出し、前記目地に配置されるボルト受け部と、を備えた押え部材と、軸部が前記開口部から前記足場板の下方へ挿通され、頭部が前記ボルト受け部と接して配置されるボルトと、前記ボルトが捩じ込まれる雌ねじ部と、前記根太に下方から掛止される引掛け部と、を備えたアンカー部材と、を有する。
【0007】
請求項1の足場板固定具では、ボルトの軸部をアンカー部材の雌ねじ部に捩じ込むことで、押え部材とアンカー部材とが互いに引寄せられる。これにより足場板が押え板から押圧されて押し下げられ、また、相対的に根太が引掛け部に引上げられて、足場板が根太に固定される。
【0008】
そして、押え部材のボルト受け部は、押え板の下面に固定されて下方へ延出している。このため、ボルト受け部と接して配置されるボルトの頭部は、押え板の開口部に配置され、押え板の上面から突出し難い。このため、押え板をボルトで押圧する構成と比較して、足場板の上方に生じる段差の数を減らせる。これにより、例えば足場板上で作業する作業員がボルト頭部に躓くこと等が抑制され、作業の安全性を確保し易い。
【0009】
請求項2の足場板固定具は、請求項1に記載の足場板固定具において、前記ボルト受け部は上下方向に沿う平板状の当て板である。
【0010】
請求項2の足場板固定具では、上下方向に沿う平板状の当て板が目地に配置される。このため、当て板が足場板の長手方向に沿って配置される。これにより、当て板に固定された押え板の向きが、足場板に対して規制される。また、足場板の幅方向に対して、足場板固定具が位置決めされる。
【0011】
請求項3の足場板固定具は、請求項2に記載の足場板固定具において、前記押え板において、前記ボルト受け部が沿う方向と交わる方向の端部は、下方に向かって折曲げられている。
【0012】
請求項3の足場板固定具では、押え板において、当て板が沿う方向と交わる方向の端部、すなわち、足場板の幅方向の端部が、下方に向かって折り曲げられている。これにより、杉板のような木製足場板を使用したとき、押え板の端部が足場板に食い込み、足場板を根太へ強固に保持し易い。
【0013】
請求項4の足場板固定具は、請求項1に記載の足場板固定具において、前記押え部材には、前記ボルト受け部の下方へ延出するガイド部が設けられ、前記アンカー部材には、前記ガイド部が挿入され前記押え部材の上下動を案内する筒部が設けられている。
【0014】
請求項4の足場板固定具では、ガイド部を筒部に挿入することで、アンカー部材に対して押え部材が位置決めされる。このため、アンカー部材の引掛け部を根太に掛止することで、根太に対して押え板が位置決めされる。
【0015】
請求項5の足場板固定具は、請求項1に記載の足場板固定具において、前記押え板は、前記開口部として円孔が形成された円環状の板である。
【0016】
請求項5の足場板固定具では、押え板が円環状の板であることにより、矩形状の場合と比較して角部が少ない。このため、作業員の衣類やロープ等が押え板に引っ掛かり難く、作業の安全性を確保し易い。
【0017】
請求項6の足場板固定具は、請求項1に記載の足場板固定具において、前記ボルトの呼び径が6mm以下である。
【0018】
請求項6の足場板固定具では、ボルトの呼び径が6mmより大きい場合と比較して、足場板同士の隙間を小さくできる。
【0019】
請求項7の足場板固定具は、請求項1に記載の足場板固定具において、前記引掛け部は2枚の板材を用いて形成されている。
【0020】
請求項7の足場板固定具では、根太に掛止される引掛け部が2枚の板材を用いて形成されている。このため、1枚の場合と比較して高剛性であり、ボルトを捩じ込んだ際に変形し難い。
【0021】
請求項8の足場システムは、根太と、請求項1~7の何れか1項に記載の足場板固定具と、前記足場板固定具を用いて前記根太に固定された足場板と、を備える。
【0022】
請求項8の足場システムでは、請求項1~7の何れか1項に記載の足場板固定具と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、足場板の上方に生じる段差の数を減らせる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る足場板固定具及び足場システムを部分的に示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る足場板固定具を示す斜視図である。
【
図3】(A)は本発明の実施形態に係る足場板固定具を示す断面図であり、(B)は(A)のB-B線矢視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る足場板固定具を構成する部品を組み合わせた状態を示す断面図である。
【
図5】(A)は実施形態に係る足場板固定具を用いて根太に足場板を固定している状態を示す平面図であり、(B)は立面図である。
【
図6】実施形態に係る足場板固定具を用いて根太に足場板を固定している状態を示す斜視図である。
【
図7】(A)は実施形態に係る足場板固定具を用いて根太に足場板を固定した状態を示す平面図であり、(B)は立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る足場板固定具及び足場システムについて、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0026】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する、異なる構成と入れ替える、一実施形態及び各種の変形例を組み合わせて用いる等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0027】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0028】
<足場システム>
図1には、本発明の実施形態に係る足場システム10を平面視した状態が部分的に示されている。足場システム10は、図示しない支柱、梁材及びブレース等を用いて構築された支持体に、作業床12を構築して形成される。
【0029】
作業床12は、複数の足場板12AをX方向及びY方向に並べて形成される。この足場板12Aは、支持体に架設された根太14へ架け渡されて固定される。本発明の実施形態に係る足場板固定具20は、足場板12Aを根太14へ固定するための治具である。
【0030】
なお、
図1に示した足場板12Aの配置例において、X方向は足場板12Aの幅方向に沿う方向であり、Y方向は足場板12Aの長手方向に沿う方向である。
【0031】
<足場板固定具>
図2に示す足場板固定具20は、押え部材30、ボルト40及びアンカー部材50を含んで構成されている。押え部材30、ボルト40及びアンカー部材50は、それぞれ鋼材によって形成されている。
【0032】
(押え部材)
押え部材30は、押え板32、ボルト受け部34、ガイド部36を備えている。
【0033】
押え板32は、中央に円孔である開口部32Vが形成された円環状の板材である。
図3(B)に示すように、押え板32におけるX方向の端部は、下方に向かって折り曲げられている。この折り曲げられた端部は、後述する平板状のボルト受け部34が沿う方向(Y方向)と交わる方向(X方向)の端部である。
【0034】
図2に示すように、ボルト受け部34は、上下方向に沿う平板状の当て板であり、押え板32の下面に固定されて下方へ延出している。「当て板」とは、
図6に示すように、押え板32が足場板12Aの側面に当てがわれる板であること示している。
【0035】
ボルト受け部34は、2枚の板材34A及び34Bが、個別に押え板32の下面に溶接されることによって形成されている。
【0036】
図3(A)に示すように、板材34A及び34Bは、押え板32の下面に溶接された部分から、押え部材30の径方向内側へ突出している。このため、板材34A及び34Bは、開口部32Vの下方にも配置される。
【0037】
また、板材34A及び34Bの間には、幅W1の隙間が形成されている。この隙間には、
図4にも示すように、ボルト40の軸部42が挿通される。そして、板材34A及び34Bにおいて開口部32Vの下方に配置された部分には、ボルト40の頭部44が接して配置される。
【0038】
図2に示すように、ガイド部36は、ボルト受け部34の板材34Aと一体的に形成され、下方へ延出している。ガイド部36は、板材34Aが下方へ延長された部分である軸部36Aと、軸部36AからX方向の両側へそれぞれ突出すると共に上下方向に沿うフランジ部36Bと、を備えている。
【0039】
(アンカー部材)
図2に示すように、アンカー部材50は、筒部52、雌ねじ部54及び引掛け部56を備えている。
【0040】
筒部52は、上下端が開放した角型の管体であり、上端から押え部材30のガイド部36が挿入される。筒部52の一側面には上下方向に沿う溝52Aが形成されている。溝52Aは、筒部52の外側から内側へ貫通する貫通溝である。
【0041】
筒部52にガイド部36を挿入する際、ガイド部36の軸部36Aを溝52Aに配置する。このとき、ガイド部36のフランジ部36Bは、筒部52の内周壁に沿って配置される。これにより、ガイド部36を筒部52の軸方向に沿って移動させることができる。すなわち、筒部52は押え部材30の動きを上下方向に規制する(上下動を案内する)ことができる。
【0042】
雌ねじ部54は、筒部52の内側に固定された長ナットである。
図3(A)に示すように、雌ねじ部54の上端54Uは筒部52の上端52Uの下方に配置されている。このため、雌ねじ部54の上端54Uと筒部52の上端52Uとの間の部分において、ガイド部36が上下に移動できる。また、雌ねじ部54の下端54Dは筒部52の下端52Dの上方に配置されている。
【0043】
図2に示すように、引掛け部56は、筒部52における溝52Aの下方部分に固定され、横方向に突出している。引掛け部56の突出方向は、筒部52に押え部材30のガイド部36が挿入された状態で、ボルト受け部34の板材34A及び34Bが沿う方向と同方向(Y方向)である。また、引掛け部56は、2枚の板材を組み合わせて形成されている。
【0044】
引掛け部56の先端には、上方へ突出する抜け止め56Aが設けられている。
図6に示すように、引掛け部56を根太14に係止した際には、抜け止め56Aが根太14に引っ掛かって、足場板固定具20のY方向への移動が拘束される。
【0045】
(ボルト)
図3(A)に示すボルト40は、軸部42が押え板32の開口部32Vから板材34A及び34Bの間の隙間へ挿通されるボルトである。軸部42の呼び径W2は、板材34A及び34Bの間の隙間の幅W1より小さい。なお、呼び径W2は、一例として、6mm以下である。
【0046】
一方、頭部44は、呼び径が10mmのボルトにおける頭部と同等の大きさを有している。つまり、ボルト40は、「呼び径が10mmのボルトにおける頭部」と、「呼び径が6mmのボルトにおける軸部」と、を組み合わせて形成されている。「呼び径が10mmのボルトにおける頭部」は、対応する工具が多く、「呼び径が6mmのボルトにおける頭部」と比較して汎用性が高い。
【0047】
図4に示すように、ボルト40は、軸部42がアンカー部材50へ挿入されて、雌ねじ部54へ捩じ込まれる。ボルト40の頭部44は、軸部42が雌ねじ部54へ捩じ込まれた状態で、ボルト受け部34と接して配置される。
【0048】
頭部44の高さH2は、押え板32の高さH1より小さい。すなわち、高さH2は、高さH1の概ね1.0倍以下、0.7倍以上であることを示している。高さH2を高さH1の1.0倍程度以下とすることで、押え板32の上面からの突出幅が抑制され、かつ、段差の数が減り、躓きなどを抑制できる効果が高い。高さH2を高さH1の0.7倍以上とすることで、工具で頭部44を回し易い。
【0049】
軸部42の先端には、貫通孔46が形成されている。この貫通孔46には係止部材48を挿入することができる。係止部材48の長さL1は、軸部42の呼び径W2(
図3(A)参照)より長く、筒部52の内径L2より小さい。なお、貫通孔46は雌ねじとしてもよく、係止部材48は雄ねじとしてもよい。
【0050】
軸部42の先端が筒部52の下端から突出した状態で、貫通孔46に係止部材48を挿入する。そしてボルト40を回転させて筒部52からに引き抜こうとした際には、係止部材48が雌ねじ部54に係止して、ボルト40が抜け止めされる。このように、ボルト40は、押え部材30を介してアンカー部材50の筒部52へ捩じ込んだ際に、先端が筒部52の先端から突出する十分な長さを備えている。
【0051】
<固定方法>
足場板固定具20を用いて足場板12Aを根太14に固定するためには、まず、
図5(A)、(B)に示すように、引掛け部56を根太14に係止する。この際、既に位置決めまたは仮置きされた足場板12A(
図5における紙面左側の足場板12A)の近傍において、根太14に係止することが好ましい。
【0052】
また、この際、根太14の上に置かれた足場板12Aの上方に間隔を空けて押え板32を配置できるように、ボルト40の雌ねじ部54への捩じ込み量を調整しておく。
【0053】
次に、引掛け部56を根太14に係止させた状態で、足場板固定具20を足場板12A側へ移動させる。この際、
図6に示すように、ボルト受け部34の板材34A及び34Bが足場板12Aの側面に沿って配置される。
【0054】
また、引掛け部56を根太14に係止させた状態で、隣り合う足場板12A(
図5における紙面右側の足場板12A)を、押え板32の下方にスライドさせる。これにより、互いに隣り合う2枚の足場板12A間の目地に、ボルト受け部34の板材34A及び34Bが挟み込まれて配置される。また、足場板12A間の目地に、押え板32が上方から架け渡される。
【0055】
次に、
図7(A)、(B)に示すように、ボルト40の軸部42を雌ねじ部54へ捩じ込んで、ボルト40の頭部44で、押え板32と一体化されたボルト受け部34を押圧する。これにより、足場板12Aと根太14とが、引掛け部56と押え板32との間で押圧力を受けて保持される。
【0056】
足場板12A一枚あたりに足場板固定具20を設ける箇所数は特に限定されるものではない。但し、
図1に示すように、足場板12Aの幅方向両側のそれぞれにおいて、少なくとも長手方向の2箇所に設けることが好ましい。
【0057】
「長手方向の2箇所」とは、足場板12Aの下方に架け渡されている複数の根太14の中から選択された2本と足場板12Aとが交わる場所である。この際の根太14としては、足場板12Aの長手方向の端部に最も近い位置に架け渡されている根太14を選択することが好ましい。
【0058】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る足場板固定具20及び足場システムでは、
図5、
図7に示すように、ボルト40の軸部42を、アンカー部材50の雌ねじ部54に捩じ込むことで、押え部材30とアンカー部材50とが互いに引寄せられる。これにより、足場板12Aが押え板32から押圧されて押し下げられ、また、相対的に根太14が引掛け部56に引上げられて、足場板12Aが根太14に固定される。
【0059】
そして、
図4に示すように、押え部材30のボルト受け部34は、押え板32の下面に固定されて下方へ延出している。このため、ボルト受け部34と接して配置されるボルト40の頭部44は、押え板32の開口部32Vに配置され、押え板32の上面から突出し難い。このため、押え板をボルトで押圧する構成と比較して、足場板12Aの上方に生じる段差の数を減らせる。これにより、例えば足場板12A上で作業する作業員がボルト40の頭部44に躓くこと等が抑制され、作業の安全性を確保し易い。
【0060】
また、
図6に示すように、実施形態に係る足場板固定具20及び足場システムでは、ボルト受け部34として、上下方向に沿う平板状の当て板(板材34A及び34B)が足場板12A間の目地に配置される。このため、板材34A及び34Bが足場板12Aの長手方向(Y方向)に沿って配置される。これにより、板材34A及び34Bに固定された押え板32の向きが、足場板12Aに対して規制される。
【0061】
押え板32の向きが足場板12Aに対して規制されることにより、
図7(B)に示すように、押え板32において下方に向かって折り曲げられた部分が、目地の両側の足場板12Aに食い込み易い。
【0062】
つまり、押え板32では、板材34A及び34Bが沿う方向と交わる方向の端部、すなわち、足場板12Aの幅方向(X方向)の端部が、下方に向かって折り曲げられている。これにより、押え板32において、足場板12A間の目地から足場板12Aの幅方向へ突出した部分に、折り曲げられた部分が配置される。
【0063】
これにより、足場板12Aとして、杉板のような木製足場板を使用したとき、押え板32の端部が足場板12Aに食い込み、足場板12Aを根太14へ強固に保持し易い。
【0064】
また、本発明の実施形態に係る足場板固定具20及び足場システムでは、
図2に示すように、押え部材30のガイド部36を、アンカー部材50の筒部52に挿入することで、アンカー部材50に対して押え部材30が位置決めされる。このため、
図6に示すように、アンカー部材50の引掛け部56を根太14に掛止することで、根太14に対して押え板32が位置決めされる。すなわち、押え部材30の足場板12Aの長手方向における位置決めが容易である。
【0065】
また、本発明の実施形態に係る足場板固定具20及び足場システムでは、押え板32が円環状の板であることにより、矩形状の場合と比較して角部が少ない。このため、作業員の衣類やロープ等が押え板に引っ掛かり難く、作業の安全性を確保し易い。
【0066】
また、本発明の実施形態に係る足場板固定具20及び足場システムでは、ボルト40の呼び径が6mm以下である。このため、呼び径が6mmより大きい場合と比較して、足場板12A同士の隙間を小さくできる。
【0067】
また、本発明の実施形態に係る足場板固定具20及び足場システムでは、根太14に掛止される引掛け部56が2枚の板材を用いて形成されている。このため、1枚の場合と比較して高剛性であり、アンカー部材50へボルト40を捩じ込んだ際に変形し難い。
【0068】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、
図3(B)に示すように、押え板32においてボルト受け部34が沿う方向と交わる方向の端部を下方に向かって折曲げているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0069】
例えばボルト受け部34が沿う方向と交わる方向の端部だけでなく、押え板32の外周部に亘って下方に折り曲げてもよい。押え板32をこのように構成しても、足場板12Aに対する食い込み性能を得ることができる。
【0070】
また、押え板32にはこのような折り曲げを形成せず、押え板32を平板状に形成してもよい。押え板32を平板状に形成すれば、加工手間が減るので足場板固定具20の製造が容易である。
【0071】
また、押え板32は必ずしも円環状でなくてもよく、中央に開口部が形成されているものであれば、正方形や長方形の矩形状等としてもよい。矩形状とする場合、角部は面取りすることが好ましい。
【0072】
また、上記実施形態においては、
図2及び
図6に示すように、押え部材30にガイド部36が設けられ、ガイド部36の軸部36Aが、アンカー部材50の筒部52に設けられた溝52Aに配置されるものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0073】
例えばこのような溝52Aは省略してもよい。すなわち、筒部52に溝を形成しないで、軸部36Aは筒部52の内側へ挿入できるようにY方向への突出幅を形成してもよい。溝52Aを省略すれば、加工手間が減るので足場板固定具20の製造が容易である。
【0074】
また、上記実施形態においては、ボルト40の呼び径が6mm以下としたが、本発明の実施形態はこれに限らない。ボルト40の呼び径は任意であり、必要なせん断耐力や引き抜き抵抗力を得られる呼び径とすればよい。
【0075】
また、上記実施形態においては、アンカー部材50の引掛け部56を2枚の板材を用いて形成したが、本発明の実施形態はこれに限らない。引掛け部56は1枚で形成してもよい。引掛け部56を1枚とすれば加工手間が減るので足場板固定具20の製造が容易である。このように、本発明は様々な態様で実施できる。
【0076】
<付記>
(((1)))
中央に開口部が形成され、根太の上に架設された足場板間の目地に上方から掛け渡される押え板と、前記押え板の下面に固定されて下方へ延出し、前記目地に配置されるボルト受け部と、を備えた押え部材と、
軸部が前記開口部から前記足場板の下方へ挿通され、頭部が前記ボルト受け部と接して配置されるボルトと、
前記ボルトが捩じ込まれる雌ねじ部と、前記根太に下方から掛止される引掛け部と、を備えたアンカー部材と、
を有する足場板固定具。
【0077】
(((2)))
前記ボルト受け部は上下方向に沿う平板状の当て板である、(((1)))に記載の足場板固定具。
【0078】
(((3)))
前記押え板において、前記ボルト受け部が沿う方向と交わる方向の端部は、下方に向かって折曲げられている、
(((2)))に記載の足場板固定具。
【0079】
(((4)))
前記押え部材には、
前記ボルト受け部の下方へ延出するガイド部が設けられ、
前記アンカー部材には、
前記ガイド部が挿入され前記押え部材の上下動を案内する筒部が設けられている、
(((1)))~(((3)))の何れかに記載の足場板固定具。
【0080】
(((5)))
前記押え板は、前記開口部として円孔が形成された円環状の板である、
(((1)))~(((4)))の何れかに記載の足場板固定具。
【0081】
(((6)))
前記ボルトの呼び径が6mm以下である、
(((1)))~(((5)))の何れかに記載の足場板固定具。
【0082】
(((7)))
前記引掛け部は2枚の板材を用いて形成されている、
(((1)))~(((6)))の何れかに記載の足場板固定具。
【0083】
(((8)))
根太と、
(((1)))~(((7)))の何れかに記載の足場板固定具と、
前記足場板固定具を用いて前記根太に固定された足場板と、
を備えた足場システム。
【符号の説明】
【0084】
10 足場システム
12A 足場板
14 根太
20 足場板固定具
30 押え部材
32 押え板
32V 開口部
34 ボルト受け部
36 ガイド部
40 ボルト
42 軸部
44 頭部
50 アンカー部材
52 筒部
52A 溝
54 引掛け部