IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローバルポリアセタール株式会社の特許一覧

特開2025-9546樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法、ペレット、および、成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009546
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法、ペレット、および、成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20250110BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250110BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20250110BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20250110BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20250110BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/013
C08K3/04
C08L101/02
C08K5/09
C08K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112625
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智則
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC033
4J002BC063
4J002CL011
4J002CL062
4J002DJ047
4J002DL006
4J002EG038
4J002EP029
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD017
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG02
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 ポリアミド樹脂と、強化材と、離型剤を含む樹脂組成物であって、促進耐候性試験前後のΔE*が小さく、湿熱試験後の吸水率(%)が小さく、湿熱試験前後のΔE*が小さく、シボ成形品の初期外観に優れている成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、樹脂組成物の製造方法、ペレット、および、成形品の提供。
【解決手段】 芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)を含むポリアミド樹脂(A)、強化材(B)、カーボンブラック(C)、非晶性樹脂(D)、および、離型剤(E)を含み、ポリアミド樹脂(A)中の芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)の質量比率が(A1)/(A2)<1であり、カーボンブラック(C)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、14~30質量部であり、非晶性樹脂(D)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、11~30質量部である、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)を含むポリアミド樹脂(A)、強化材(B)、カーボンブラック(C)、非晶性樹脂(D)、および、離型剤(E)を含み、
ポリアミド樹脂(A)中の芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)の質量比率が(A1)/(A2)<1であり、
カーボンブラック(C)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、14~30質量部であり、
非晶性樹脂(D)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、11~30質量部である、
樹脂組成物。
【請求項2】
非晶性樹脂(D)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、16~25質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物から形成された試験片を85℃、相対湿度95%環境下で120時間処理した際の吸水率が3.0%未満である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香族ポリアミド樹脂(A1)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、キシリレンジアミンに由来する、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記芳香族ポリアミド樹脂(A1)におけるジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記脂肪族ポリアミド樹脂(A2)が、ポリアミド6および/またはポリアミド66を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記強化材(B)が、ガラス繊維および/またはタルクを含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記強化材(B)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、100~230質量部である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記カーボンブラック(C)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、20質量部超30質量部以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記非晶性樹脂(D)が、分子内にスチレン単位を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記離型剤(E)が、高級脂肪酸金属塩および/または脂肪族カルボン酸アミドを含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
非晶性樹脂(D)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、16~25質量部であり、
前記樹脂組成物から形成された試験片を85℃、相対湿度95%環境下で120時間処理した際の吸水率が3.0%未満であり、
前記芳香族ポリアミド樹脂(A1)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、
前記脂肪族ポリアミド樹脂(A2)が、ポリアミド6および/またはポリアミド66を含み、
前記強化材(B)が、ガラス繊維および/またはタルクを含み、
前記強化材(B)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、100~230質量部であり、
前記カーボンブラック(C)が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、20質量部超30質量部以下であり、
前記非晶性樹脂(D)が、分子内にスチレン単位を含み、
前記離型剤(E)が、高級脂肪酸金属塩および/または脂肪族カルボン酸アミドを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
カーボンブラック(C)を、前記非晶性樹脂(D)に溶融混練したカーボンブラックのマスターバッチを製造し、前記マスターバッチと、ポリアミド樹脂(A)、強化材(B)、および、離型剤(E)を溶融混練することを含む、請求項1、2または12に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1、2または12に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項15】
請求項1、2または12に記載の樹脂組成物から成形された成形品。
【請求項16】
請求項14に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法、ペレット、および、成形品に関する。特に、ポリアミド樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なエンジニアリングプラスチックであるポリアミド樹脂は、加工が容易であり、さらに、機械的物性、電気特性、耐熱性、その他の物理的・化学的特性に優れている。このため、車両部品、電気・電子機器部品、その他の精密機器部品等に幅広く使用されている。
このようなポリアミド樹脂の中でも、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂に代表される芳香族ポリアミド樹脂は、優れた機械的強度を有することから、各種用途に広く用いられている(例えば、特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-143023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、ポリアミド樹脂の用途もさらに拡大し、用途によっては、ポリアミド樹脂から形成された成形品に、促進耐候性試験前後のΔE*が小さいこと、湿熱試験後の吸水率(%)が小さいこと、湿熱試験前後のΔE*が小さいこと、および、シボ成形品の初期外観に優れていることが求められる。
ここで、ポリアミド樹脂から形成された成形品の機械的強度等を向上させるために、強化材を配合することが行われている。しかしながら、強化材を配合すると、得られる成形品の耐候性が劣る傾向にある。湿熱環境下でポリアミド樹脂が吸水すると、樹脂組成物のガラス転移温度が低下し、ポリアミドの低分子量成分や離型剤が析出することにより、湿熱試験前後のΔE*が大きくなる傾向にある。
【0005】
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリアミド樹脂と、強化材と、離型剤を含む樹脂組成物であって、促進耐候性試験前後のΔE*が小さく、湿熱試験後の吸水率(%)が小さく、湿熱試験前後のΔE*が小さく、シボ成形品の初期外観に優れている成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、樹脂組成物の製造方法、ペレット、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリアミド樹脂として、脂肪族ポリアミド樹脂と共に、芳香族ポリアミド樹脂を用い、さらに、非晶性樹脂を配合し、カーボンブラックを多めに配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)を含むポリアミド樹脂(A)、強化材(B)、カーボンブラック(C)、非晶性樹脂(D)、および、離型剤(E)を含み、
ポリアミド樹脂(A)中の芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)の質量比率が(A1)/(A2)<1であり、
カーボンブラック(C)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、14~30質量部であり、
非晶性樹脂(D)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、11~30質量部である、
樹脂組成物。
<2>非晶性樹脂(D)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、16~25質量部である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記樹脂組成物から形成された試験片を85℃、相対湿度95%環境下で120時間処理した際の吸水率が3.0%未満である、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記芳香族ポリアミド樹脂(A1)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、キシリレンジアミンに由来する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記芳香族ポリアミド樹脂(A1)におけるジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<4>に記載の樹脂組成物。
<6>前記脂肪族ポリアミド樹脂(A2)が、ポリアミド6および/またはポリアミド66を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記強化材(B)が、ガラス繊維および/またはタルクを含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記強化材(B)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、100~230質量部である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9>前記カーボンブラック(C)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、20質量部超30質量部以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>前記非晶性樹脂(D)が、分子内にスチレン単位を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<11>前記離型剤(E)が、高級脂肪酸金属塩および/または脂肪族カルボン酸アミドを含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<12>非晶性樹脂(D)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、16~25質量部であり、
前記樹脂組成物から形成された試験片を85℃、相対湿度95%環境下で120時間処理した際の吸水率が3.0%未満であり、
前記芳香族ポリアミド樹脂(A1)が、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、
前記脂肪族ポリアミド樹脂(A2)が、ポリアミド6および/またはポリアミド66を含み、
前記強化材(B)が、ガラス繊維および/またはタルクを含み、
前記強化材(B)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、100~230質量部であり、
前記カーボンブラック(C)が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、20質量部超30質量部以下であり、
前記非晶性樹脂(D)が、分子内にスチレン単位を含み、
前記離型剤(E)が、高級脂肪酸金属塩および/または脂肪族カルボン酸アミドを含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13>カーボンブラック(C)を、前記非晶性樹脂(D)に溶融混練したカーボンブラックのマスターバッチを製造し、前記マスターバッチと、ポリアミド樹脂(A)、強化材(B)、および、離型剤(E)を溶融混練することを含む、<1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
<14><1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<15><1>~<12>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から成形された成形品。
<16><14>に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ポリアミド樹脂と、強化材と、離型剤を含む樹脂組成物であって、促進耐候性試験前後のΔE*が小さく、湿熱試験後の吸水率(%)が小さく、湿熱試験前後のΔE*が小さく、シボ成形品の初期外観に優れている成形品を提供可能な樹脂組成物、ならびに、樹脂組成物の製造方法、ペレット、および、成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
【0009】
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2023年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0010】
本実施形態の樹脂組成物は、芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)を含むポリアミド樹脂(A)、強化材(B)、カーボンブラック(C)、非晶性樹脂(D)、および、離型剤(E)を含み、ポリアミド樹脂(A)中の芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)の質量比率が(A1)/(A2)<1であり、カーボンブラック(C)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、14~30質量部であり、非晶性樹脂(D)の含有量が、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、11~30質量部であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、ポリアミド樹脂と、強化材と、離型剤を含む樹脂組成物であって、促進耐候性試験前後のΔE*が小さく、湿熱試験後の吸水率(%)が小さく、湿熱試験前後のΔE*が小さく、シボ成形品の初期外観に優れている成形品を提供可能な樹脂組成物を提供可能になる。
【0011】
<ポリアミド樹脂(A)>
本実施形態の樹脂組成物は、芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)を含む。さらに、ポリアミド樹脂(A)中の芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)の質量比率が(A1)/(A2)<1である。このような構成とすることにより、得られる成形品の強度、剛性および靭性が総合的に向上する傾向にある。
ポリアミド樹脂(A)は、通常、芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)の合計が99質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0012】
<<芳香族ポリアミド樹脂(A1)>>
本実施形態における芳香族ポリアミド樹脂(A1)は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の合計構成単位の20~80モル%(好ましくは30~80モル%、より好ましくは40~70モル%)が芳香環を含む構成単位であることをいう。このような半芳香族ポリアミド樹脂を用いることにより、得られる成形品の機械的強度を高くすることができる。半芳香族ポリアミド樹脂としては、テレフタル酸系ポリアミド樹脂(ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T)、後述するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂などが例示され、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が好ましい。
【0013】
本実施形態の樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含む。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂とは、ジアミン由来の構成単位と、ジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂である。好ましくは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、前記ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来することが好ましい。本実施形態の樹脂組成物においては、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が本来的に有する強度や耐薬品性を維持することができる。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上、特に一層好ましくは99モル%以上がキシリレンジアミン(好ましくはパラキシリレンジアミンおよび/またはメタキシリレンジアミン、より好ましくはメタキシリレンジアミン)に由来する。また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上、特に一層好ましくは99モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
【0014】
本実施形態においては、キシリレンジアミンにおけるメタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比率は、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンの合計を100モルとしたときに、メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミンが、10~100/90~0であることが好ましく、20~100/80~0であることがより好ましく、40~100/60~0であることがさらに好ましく、80~100/20~0であることが一層好ましく、90~100/10~0であることがより一層好ましい。このような構成とすることにより、得られる成形品の表面外観がより良好になる傾向にある。
【0015】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0016】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、また、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来することが好ましい。前記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、6以上であることが好ましく、また、18以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、14以下であることがさらに好ましく、13以下であることが一層好ましく、12以下であることがより一層好ましい。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でも、アジピン酸、セバシン酸、および、ドデカン二酸のいずれか1種以上がより好ましく、アジピン酸がさらに好ましい。
本実施形態におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい一実施形態としてジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がアジピン酸、セバシン酸、および、ドデカン二酸のいずれか1種以上(好ましくはアジピン酸)に由来するものが例示される。
【0017】
上記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0018】
なお、芳香族ポリアミド樹脂(A1)は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として含むが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、芳香族ポリアミド樹脂(A1)を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本実施形態では、芳香族ポリアミド樹脂(A1)における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、97質量%以上を占めることがさらに好ましく、99質量%以上を占めることが一層好ましい。
【0019】
芳香族ポリアミド樹脂(A1)は結晶性樹脂であることが好ましく、その融点は、150~350℃であることが好ましく、180~330℃であることがより好ましく、200~330℃であることがさらに好ましく、200~320℃であることが一層好ましい。本実施形態の樹脂組成物が芳香族ポリアミド樹脂(A1)を2種以上含む場合、最も含有量が多い芳香族ポリアミド樹脂(A1)の融点とする。
【0020】
本明細書において、融点(Tm)は、示差走査熱量測定(DSC)に従い、ISO11357に準拠して、測定した値とする。示差走査熱量計を用い、樹脂を示差走査熱量計の測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で融点を超える温度まで昇温し、急冷する前処理を行った後に測定を行う。測定条件は、昇温速度10℃/分で、280℃で5分保持した後、降温速度-5℃/分で100℃まで測定を行い、融点(Tm)を求める。
示差走査熱量計としては、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC-60」を用いる。
【0021】
芳香族ポリアミド樹脂(A1)は、数平均分子量(Mn)の下限が、6,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、また、10,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。本実施形態の樹脂組成物が芳香族ポリアミド樹脂(A1)を2種以上含む場合、混合物の数平均分子量とする。
【0022】
芳香族ポリアミド樹脂(A1)の数平均分子量(Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値より求める。カラムとしては、充填剤として、スチレン系ポリマーを充填したものを2本用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウム濃度2mmol/Lのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度は40℃、流速0.3mL/分、屈折率検出器(RI)にて測定する。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定する。
【0023】
<<脂肪族ポリアミド樹脂(A2)>>
本実施形態の樹脂組成物は脂肪族ポリアミド樹脂を含む。脂肪族ポリアミド樹脂とは、ポリアミド樹脂を構成する構成単位の合計構成単位のうち、芳香族モノマー由来の構成単位が全構成単位の20モル%未満であるポリアミド樹脂を意味する。
脂肪族ポリアミド樹脂(A2)の例としては、ポリアミド4、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド666、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド116、ポリアミド12等が例示され、ポリアミド6、ポリアミド66およびポリアミド666の少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリアミド6および/またはポリアミド66を含むことがより好ましい。
なお、前記例示された脂肪族ポリアミド樹脂は、構成単位の20モル%未満の範囲(好ましくは10モル%未満、より好ましくは5モル%未満、さらに好ましくは1モル%未満)で、他のモノマー単位(脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂肪族アミノカルボン酸、芳香族アミノカルボ酸、ラクタム)で変性した脂肪族ポリアミド樹脂を含んでいてもよい。
【0024】
<ポリアミド樹脂(A)のブレンド比率>
本実施形態の樹脂組成物においては、ポリアミド樹脂(A)中の芳香族ポリアミド樹脂(A1)と脂肪族ポリアミド樹脂(A2)の質量比率が(A1)/(A2)<1であり、(A1)/(A2)<0.95であることが好ましく、(A1)/(A2)<0.90以下であることがより好ましく、(A1)/(A2)<0.85以下であることがさらに好ましく、また、0.1<(A1)/(A2)であることが好ましく、0.2<(A1)/(A2)であることがより好ましく、0.3<(A1)/(A2)であることがさらに好ましく、0.4<(A1)/(A2)であることが一層好ましく、0.5<(A1)/(A2)であってもよい。(A1)/(A2)<1とすることにより、得られる成形品の強度と剛性を保持しつつ、靭性を向上させることが可能となる。また、0.1<(A1)/(A2)とすることにより、成形品の初期外観をより良好にすることが可能となる。
【0025】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリアミド樹脂(A)の総量は、樹脂組成物中、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリアミド樹脂(A)の総量の上限は、樹脂組成物中、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であってもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、芳香族ポリアミド樹脂(A1)および/または脂肪族ポリアミド樹脂(B2)をそれぞれ1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。芳香族ポリアミド樹脂(A1)および/または脂肪族ポリアミド樹脂(B2)を2種以上含む場合、それぞれ、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0026】
<強化材(B)>
本実施形態の樹脂組成物は、強化材(B)を含んでいてもよい。強化材(B)を含むことにより、得られる成形体の機械的強度を向上させることができる。
本実施形態で用いることができる強化材(B)は、その種類等、特に定めるものではなく、繊維、フィラー、ビーズ、粒状、ウィスカー等のいずれであってもよいが、繊維および粒状が好ましい。
【0027】
強化材(B)が繊維である場合、短繊維であってもよいし、長繊維であってもよい。
強化材(B)が短繊維やフィラー、ビーズ、ウィスカー等の場合、本実施形態の樹脂組成物は、ペレット、前記ペレットを粉末化したもの、および前記ペレットから成形されるフィルム等が例示される。
【0028】
強化材(B)の原料は、ガラス、炭素(炭素繊維等)、アルミナ、ボロン、セラミック、金属(スチール等)、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、窒化珪素二硫化モリブデン、植物(ケナフ(Kenaf)、竹等を含む)、アラミド、ポリオキシメチレン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、超高分子量ポリエチレン、炭酸カルシウムは、合成炭酸カルシウム、天然炭酸カルシウム、それらをケイ酸等または有機酸等で表面処理して得られる表面処理炭酸カルシウムが例示され、ガラス繊維および/またはタルクを含むことが好ましい。
【0029】
本実施形態の樹脂組成物は、強化材(B)として、特に、ガラス繊維を含むことが好ましい。ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Dガラス、Mガラス、Sガラスなどのガラス組成から選択され、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維は、長さ方向に直角に切断した断面形状が真円状または多角形状の繊維状の材料をいう。ガラス繊維は、単繊維の数平均繊維径が通常1~25μm、好ましくは5~17μmである。数平均繊維径を1μm以上とすることにより、樹脂組成物の成形加工性がより向上する傾向にある。数平均繊維径を25μm以下とすることにより、得られる成形体の外観が向上し、補強効果も向上する傾向にある。ガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取ったガラスロービング、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランド(すなわち、数平均繊維長1~10mmのガラス繊維)、長さ10~500μm程度に粉砕したミルドファイバー(すなわち、数平均繊維長10~500μmのガラス繊維)などのいずれであってもよいが、長さ1~10mmに切りそろえたチョップドストランドが好ましい。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
また、ガラス繊維としては、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径/短径比で示される扁平率が、例えば、1.5~10であり、中でも2.5~10、さらには2.5~8、特に2.5~5であることが好ましい。
【0030】
ガラス繊維は、本実施形態の樹脂組成物の特性を大きく損なわない限り、樹脂成分との親和性を向上させるために、例えば、シラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物などで表面処理したもの、酸化処理したものであってもよい。
【0031】
本実施形態の樹脂組成物は、強化材(B)(好ましくはガラス繊維および/またはタルク)を、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、100質量部以上含むことが好ましく、130質量部以上であることがより好ましく、135質量部以上であることがさらに好ましく、140質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形体の機械的強度がより上昇する傾向にある。また、前記強化材(好ましくはガラス繊維および/またはタルク)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、230質量部以下であることが好ましく、200質量部以下であることがより好ましく、195質量部以下であることがさらに好ましく、用途等に応じて、190質量部以下、180質量部以下、170質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形体の外観が向上し、かつ、耐湿熱性がより向上する傾向にある。
【0032】
本実施形態の樹脂組成物における強化材(B)(好ましくはガラス繊維および/またはタルク)の含有量は、樹脂組成物中、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることがさらに好ましく、47質量%以上であることが一層好ましい。また、前記強化材(好ましくはガラス繊維および/またはタルク)の含有量は、樹脂組成物中、70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、57質量%以下であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、機械的強度がより上昇する傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、成形体の外観が向上し、かつ、樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、強化材(B)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物においては、ポリアミド樹脂(A)と強化材(B)の合計含有量が、樹脂組成物100質量%中、65質量%以上であることが好ましく、また、90質量%以下であることが好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物は、マイカを含んでいてもよいが、マイカを含んでいなくてもよい。本実施形態の樹脂組成物の一例は、マイカを実質的に含まないことである。マイカを実質的に含まないとは、マイカの含有量が樹脂組成物に含まれる強化材(B)の総量の1質量%未満であることをいい、0.5質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましい。
さらにまた、本実施形態の樹脂組成物は、タルク以外の鉱物を実質的に含んでいない方が好ましい。タルク以外の鉱物を実質的に含まないとは、タルク以外の鉱物の含有量が樹脂組成物に含まれる強化材(B)の総量の1質量%未満であることをいい、0.5質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましい。
【0034】
<カーボンブラック(C)>
本実施形態の樹脂組成物は、カーボンブラック(C)を含む。カーボンブラック(C)を含むことにより、得られる成形品の意匠性を向上させるとともに、得られる成形品の吸水率を低くすることができる。結果として、得られる成形品を湿熱環境下においたときにも、吸水率が低くなり、成形品中の低分子量成分を表面に析出しにくくすることができる。
【0035】
本実施形態に用いるカーボンブラック(C)としては、従来公知の任意のカーボンブラックを用いることができる。例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。中でも隠蔽力に優れる、DBP吸収量が30~300g/100cm3のカーボンブラック、特にファーネスブラックを用いることにより、安定した色調を発現させることができるので好ましい。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物においては、カーボンブラック(C)は、非晶性樹脂(D)のマスターバッチとして配合することが好ましい。マスターバッチにおけるカーボンブラック(C)の濃度は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、35質量%以上であることが一層好ましく、40質量%以上であることがより一層好ましく、また、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、55質量%以下であってもよい。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物におけるカーボンブラック(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、14質量部以上であり、20質量部超であることが好ましく、また、30質量部以下であることが好ましく、28質量部以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、より高い機械特性が得られる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、カーボンブラック(C)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
なお、上記カーボンブラック(C)の含有量には、マスターバッチに用いた樹脂の量は含まない。
【0038】
<非晶性樹脂(D)>
本実施形態の樹脂組成物は、非晶性樹脂(D)を含む。非晶性樹脂(D)を含むことにより、湿熱性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂(A)が非晶性樹脂(D)のとき、当該樹脂は非晶性樹脂(D)に分類されるものとする。
非晶性樹脂(D)は、明確な融点を有さない樹脂であり、結晶融解エンタルピーΔHmが5J/g以下のポリアミド樹脂をいう。結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、示差走査熱量測定(DSC)に従い、ISO11357に準拠して測定したとする。
非晶性樹脂(D)は、通常、熱可塑性樹脂である。
【0039】
非晶性樹脂(D)としては、分子内にスチレン単位を含む樹脂、ビニル樹脂、PMMA樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が例示され、分子内にスチレン単位を含む樹脂が好ましい。
分子内にスチレン単位を含む樹脂とは、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、トリブロモスチレン等に由来するスチレン単位を含む樹脂が例示され、該スチレン単位が全構成単位の30~100質量%を占める樹脂が好ましい。
より具体的には、分子内にスチレン単位を含む樹脂としては、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)が好ましく、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)がより好ましく、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)がさらに好ましい。
アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)を用いることにより、樹脂組成物が吸水しにくくなり、非晶部が拘束されやすくなり、樹脂組成物中の低分子量成分が表面に析出しにくくなり、耐湿熱性がより向上する傾向にある。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物における非晶性樹脂(D)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、11質量部以上であり、12質量部以上であることが好ましく、13質量部以上であることがより好ましく、16質量部以上であることがさらに好ましく、20質量部以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、耐湿熱性がより向上する傾向にある。また、前記非晶性樹脂(D)の含有量の上限値は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、30質量部以下であり、28質量部以下であることが好ましく、26質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の高い物性を保持し、外観も良好になる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、非晶性樹脂(D)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0041】
<離型剤(E)>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤(E)を含む。離型剤(E)を含むことにより、得られる成形品の離型性を向上させることができる。
離型剤(E)は、主に、樹脂組成物の成形時の生産性を向上させるために使用されるものである。離型剤(E)としては、例えば、脂肪族カルボン酸アミド、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、高級脂肪酸金属塩などが挙げられ、高級脂肪酸金属塩および/または脂肪族カルボン酸アミドが好ましく、脂肪族カルボン酸アミドがさらに好ましい。
【0042】
脂肪族カルボン酸アミドとしては、例えば、高級脂肪族モノカルボン酸および/または多塩基酸とジアミンとの脱水反応によって得られる化合物が挙げられる。
【0043】
高級脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数16以上の飽和脂肪族モノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸が好ましく、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、12-ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
【0044】
多塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アゼライン酸などの脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0045】
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0046】
脂肪族カルボン酸アミドとしては、ステアリン酸とセバシン酸とエチレンジアミンを重縮合してなる化合物が好ましく、ステアリン酸2モルとセバシン酸1モルとエチレンジアミン2モルを重縮合させた化合物がさらに好ましい。また、N,N'-メチレンビスステアリン酸アミドやN,N'-エチレンビスステアリン酸アミドのようなジアミンと脂肪族カルボン酸とを反応させて得られるビスアミド系化合物の他、N,N'-ジオクタデシルテレフタル酸アミド等のジカルボン酸アミド化合物も好適に使用し得る。
本実施形態においては、エチレンビスステアロアマイド構造を含む離型剤が好ましい。
【0047】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6~36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0048】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族または脂環式飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。
【0049】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0050】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0051】
数平均分子量200~15000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ-トロプシュワックス、炭素数3~12のα-オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、脂肪族炭化水素の数平均分子量は好ましくは5000以下である。
【0052】
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、炭素数20以上の脂肪酸が好ましく、炭素数20~35の脂肪酸がより好ましく、炭素数25~30の脂肪酸がさらに好ましい。脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、リシノール酸が例示される。また、脂肪酸金属塩を構成する金属としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、バリウム、リチウムが例示され、カルシウムおよびバリウムが好ましく、バリウムがより好ましい。
【0053】
離型剤の詳細は、上記の他、特開2016-196563号公報の段落0037~0042の記載、特開2021-161125号公報の段落0067~0070の記載、および、特開2016-078318号公報の段落0048~0058の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0054】
離型剤(E)の含有量は、樹脂組成物100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、上限は、1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。このような範囲とすることによって、射出成形等の金型成形をする場合などに、離型性を良好にすることができ、また、金型汚染を効果的に抑制することができる。
離型剤(E)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0055】
<他の添加剤>
本実施形態の樹脂組成物は、上記以外の添加剤(他の添加剤)を含んでいてもよい。
他の添加剤としては、安定剤、アルカリ、耐加水分解性改良剤、艶消剤、可塑剤、分散剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等が例示される。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落0130~0155の記載、国際公開第2021/241471号の段落0047~0103の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
他の添加剤は、合計で、樹脂組成物の20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以下であることが一層好ましい。他の添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
<樹脂組成物の特性>
本実施形態の樹脂組成物は、前記樹脂組成物の促進耐候性試験前後のΔE*が小さいことが好ましい。具体的には、促進耐候性試験機(サンシャインウェザーメーター)を使用し、ブラックパネル温度63℃、60分中12分の水噴射をする試験条件での促進耐候性試験前後のΔE*が2.6以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.2以下であることがさらに好ましい。また、前記促進耐候性試験前後のΔE*の下限値は、0が好ましく、0.1以上が実際的である。
【0057】
本実施形態の樹脂組成物は、前記樹脂組成物の湿熱試験前後のΔE*が小さいことが好ましい。具体的には、樹脂組成物から形成された試験片を85℃/95%RH環境下で120時間処理した処理前後の試験片のΔE*が3.0未満であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。また、前記湿熱試験前後のΔE*の下限値は、0が好ましく、0.1以上が実際的である。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物は、湿熱試験後の吸水率が低いことが好ましい。具体的には、樹脂組成物から形成された試験片を85℃、相対湿度95%環境下で120時間処理した際の吸水率(質量変化率)が3.0%未満であることが好ましく、2.9%以下であることがより好ましく、2.8%未満であることがさらに好ましく、2.7%以下であることが一層好ましい。前記湿熱試験後の吸水率の下限値は、0%が好ましく、0.1%以上が実際的である。
【0059】
本実施形態の樹脂組成物は、ISO179-1、2に準拠して、ISO多目的試験片(4mm厚)に成形したときの、温度23℃、湿度50%の環境下でのノッチ有シャルピー衝撃強さは、10kJ/m2以上であることが好ましく、13kJ/m2以上であることがより好ましい。上限値は、特に定めるものではないが、40kJ/m2以下が実際的である。
促進耐候性試験前後のΔE*、湿熱試験前後のΔE*、湿熱試験前後の吸水率およびシャルピー衝撃強さは、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0060】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態において、樹脂組成物の製造方法は、特に定めるものではなく、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。具体的には、各成分を、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどで溶融混練することによって樹脂組成物を製造することができる。
【0061】
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、樹脂組成物を製造することもできる。
さらに、例えば、一部の成分(着色剤等)を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって、ペレットを製造することもできる。
特に、本実施形態の樹脂組成物は、カーボンブラック(C)を、非晶性樹脂(D)に溶融混練したカーボンブラックのマスターバッチを製造し、前記マスターバッチと、ポリアミド樹脂(A)、強化材(B)、および、離型剤(E)を溶融混練することを含む、製造方法によって製造されることが好ましい。
【0062】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物ないしペレットから形成される。
本実施形態の成形品の製造方法は、特に定めるものではない。一例として、射出成形により成形した射出成形品が例示される。
例えば、本実施形態の成形品は、各成分を溶融混練した後、直接に各種成形法で成形してもよいし、各成分を溶融混練してペレット化した後、再度、溶融して、各種成形法で成形してもよい。
【0063】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
【0064】
本実施形態の成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、歯車状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
【0065】
本実施形態の成形品の利用分野については特に定めるものではなく、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。
【実施例0066】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0067】
1.原料
以下の表1に示す原料を用いた。
【表1】
【0068】
<製造例1:マスターバッチ(1)>
アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)とカーボンブラックとステアリン酸バリウム(離型剤)とを、AS樹脂/カーボンブラック/=49.5/50/0.5(質量比)の割合で溶融混練してマスターバッチ(1)を得た。AS樹脂は非晶性樹脂である。
【0069】
<製造例2:マスターバッチ(2)>
ポリアミド6とカーボンブラックを、ポリアミド6/カーボンブラック=75/25(質量比)の割合で溶融混練してマスターバッチ(2)を得た。
【0070】
2.実施例1~4、比較例1~6
<コンパウンド>
表2~表3に示す通り、それぞれ秤量し(各成分の単位は、質量部である)、ガラス繊維以外の成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(芝浦機械社製、TEM26SS)の根元から投入し、溶融した。その後、ガラス繊維をサイドフィードして樹脂組成物のペレットを作製した。二軸押出機の温度設定は、280℃とした。
【0071】
<促進耐候性試験前後のΔE*
上記の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製、「J100ADS」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で、表面がシボ加工された平板試験片(60mm×60mm×2mmt)を作製した。作製した平板試験片を促進耐候性試験機(サンシャインウェザーメーター)に設置し、ブラックパネル温度63℃、60分中12分の水噴射をする試験条件で2000時間処理した。試験片を取り出し、日本電色工業社製の分光色差計「SE6000」を使用し、表面のL*、a*、b*を測定した。測定したL*、a*、b*と試験前の試験片表面のL*、a*、b*からΔE*を算出した。測定したΔE*の最大値を促進耐候性試験前後のΔE*とした。
促進耐候性試験機(サンシャインウェザーメーター)は、スガ試験機株式会社製のものを用いた。
【0072】
<湿熱試験の吸水率(%)>
上記方法で作製した平板試験片を恒温恒湿機内に静置し、85℃/95%RHで120時間処理した。試験前と試験後の試験片質量から算出した質量変化率を吸水率とした。
を恒温恒湿機はエスペック社製「PL-3KP」を用いた。
【0073】
<湿熱試験前後のΔE*
上記方法で恒温恒湿機内に静置した平板試験片と、試験前の試験片表面のL*、a*、b*を分光色差計で測定し、ΔE*を算出した。
分光色差計は、日本電色工業社製の「SE6000」を用いた。
【0074】
<シボ成形品の初期外観>
上記方法で作製した平板試験片のシボ加工された面を目視で観察した。外観の違いによって評価をA、Bで評価した。評価は専門家5名が行い多数決で判断した。
A:試験片表面に外観不良がない。
B:試験片表面の一部に外観不良(強化材の析出、ガス焼け)が確認された。
【0075】
<曲げ特性>
上記の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で、ISO多目的ダンベル試験片タイプA1(4mm厚)を射出成形した。
ISO178に準拠して、温度23℃、湿度50%の環境下で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。
【0076】
<シャルピー衝撃強さ>
上記の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃、成形サイクル50秒の条件で、ISO多目的試験片タイプA1(4mm厚)を射出成形した。
ISO多目的試験片を所定のサイズ形状に切削し、ISO179-1、2に準拠して、上記ISO多目的試験片(4mm厚)を用いて、温度23℃、湿度50%の環境下でノッチ有シャルピー衝撃強さ(単位:kJ/m2)を測定した。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
上記結果から明らかなとおり、本実施形態の樹脂組成物から形成された成形品は、高い機械的強度を維持しつつ、促進耐候性試験前後のΔE*が小さく、湿熱試験後の吸水率(%)が低く、湿熱試験前後のΔE*が小さく、シボ成形品の初期外観に優れていた。特に、カーボンブラック(C)の割合をポリアミド樹脂(A)に対し20質量部超とすることにより、顕著に優れた促進耐候性試験前後のΔE*および湿熱試験前後のΔE*を格段に小さくすることができた。