(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025095512
(43)【公開日】2025-06-26
(54)【発明の名称】治具
(51)【国際特許分類】
E05F 3/00 20060101AFI20250619BHJP
E05F 1/16 20060101ALI20250619BHJP
E05D 15/26 20060101ALI20250619BHJP
E06B 3/48 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
E05F3/00 B
E05F1/16 B
E05D15/26
E06B3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211562
(22)【出願日】2023-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健
(72)【発明者】
【氏名】今野 僚太
(72)【発明者】
【氏名】菅原 孝輔
【テーマコード(参考)】
2E015
2E034
【Fターム(参考)】
2E015AA01
2E015BA10
2E015CA02
2E015DA02
2E015FA01
2E034JA01
2E034JB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】枠体の横幅に拘わらず、ガイドレールに対するクローザの最適な取り付け位置を容易に決定し得る治具を提供する。
【解決手段】枠体に取り付けられたガイドレールに沿って扉体を閉じ切る又は開き切るためにガイドレールに対する最適な位置にクローザを取り付けるための治具(300)であって、治具(300)は、ガイドレールに着脱自在に取り付けられる本体部(301)と、扉体の上端部に取り付けられてガイドレールに沿って走行し、クローザに引き込まれる移動ローラと接触する端面(303a)が設けられた突出部(303)と、突出部(303)の端面(303a)から所定の距離だけ離れた本体部(301)の位置に上下方向に沿って設けられた貫通孔(305)と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に取り付けられたガイドレールに沿って扉体を閉じ切る、または、開き切るために当該ガイドレールに対する最適な位置にクローザを取り付けるための治具であって、
前記治具は、
前記ガイドレールに着脱自在に取り付けられる本体部と、
前記扉体の上端部に取り付けられて前記ガイドレールに沿って走行し、前記クローザに引き込まれる移動ローラと接触する端面が設けられた突出部と、
前記突出部の前記端面から所定の距離だけ離れた前記本体部の位置に上下方向に沿って設けられた貫通孔と
を備えることを特徴とする治具。
【請求項2】
前記本体部は、前記突出部の前記端面が前記移動ローラと接触して前記ガイドレールに取り付けられた状態で、前記扉体を閉じ切った場合に前記移動ローラと共に前記ガイドレールに沿って移動して停止したときの前記貫通孔と対向する前記ガイドレールの位置を、前記クローザを前記ガイドレールに取り付けるために設けられた当該クローザの貫通孔の位置とする
請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記本体部の側面には、前記ガイドレールに対して着脱自在に取り付けるための突起部分が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の治具。
【請求項4】
前記本体部は、前記移動ローラのタイヤが転動する一対のフランジ壁部の間から挿入可能な幅である
請求項1に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具として、例えば折戸装置の扉が完全に閉じた状態になるように付勢するクローザをガイドレールの適切な位置に取り付けるための治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒンジを介して2枚の扉体を2つ折りにすることにより開閉する折戸装置や、引戸を開閉方向に沿って移動させる引戸装置がある。このような折戸装置や引戸装置に設けられる開閉体緩衝装置(以下、これを「クローザ」と呼ぶ。)は、枠体上部のガイドレールに設けられた戸先側上金具を引き込むことにより、扉体や引戸を完全に閉め切る位置まで緩やかに移動させることができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなクローザにおいては、扉体を支持するガイドレールに対して当該扉体を完全に閉め切るための最適な位置にクローザを取り付けなければならない。しかしながら、ガイドレールのどの位置にクローザを取り付ければ扉体を完全に閉じた位置まで引き込むことができるかについては、個々の枠体の横幅によってそれぞれ異なる。このため、従来はガイドレールに取り付けるクローザの位置を個別具体的に計算し、設計図面を作成する等の煩雑な作業が要求されていた。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、枠体の横幅に拘わらず、ガイドレールに対するクローザの最適な取り付け位置を容易に決定し得る治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明においては、枠体に取り付けられたガイドレールに沿って扉体を閉じ切る、または、開き切るために当該ガイドレールに対する最適な位置にクローザを取り付けるための治具であって、前記治具は、前記ガイドレールに着脱自在に取り付けられる本体部と、前記扉体の上端部に取り付けられて前記ガイドレールに沿って走行し、前記クローザに引き込まれる移動ローラと接触する端面が設けられた突出部と、前記突出部の前記端面から所定の距離だけ離れた前記本体部の位置に上下方向に沿って設けられた貫通孔と、を備える。
【0007】
本発明において、前記本体部は、前記突出部の前記端面が前記移動ローラと接触して前記ガイドレールに取り付けられた状態で、前記扉体を閉じ切った場合に前記移動ローラと共に前記ガイドレールに沿って移動して停止したときの前記貫通孔と対向する前記ガイドレールの位置を、前記クローザを前記ガイドレールに取り付けるために設けられた当該クローザの貫通孔の位置とすることが好ましい。
【0008】
本発明において、前記本体部の側面には、前記ガイドレールに対して着脱自在に取り付けるための突起部分が設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記本体部は、前記移動ローラのタイヤが転動する一対のフランジ壁部の間から挿入可能な幅であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上の構成によれば、枠体の横幅に拘わらず、ガイドレールに対するクローザの最適な取り付け位置を容易に決定し得る治具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態における治具を用いる対象となる折戸装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態における治具を用いる対象となる折戸装置の構成を示す平面図(A)、正面図および側面図(B)である。
【
図3】本発明の実施の形態における治具を用いる対象となる折戸装置のガイドレールの構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態における治具を用いる対象となる折戸装置の移動ローラの構成を示す斜視図(A)乃至(C)である。
【
図5】本発明の実施の形態における治具を用いる対象となる折戸装置のクローザの構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態における治具の構成を示す斜視図(A)、正面図、平面図、下面図、および、右側面図(B)である。
【
図7】本発明の実施の形態における治具がガイドレールに取り付けられた状態であり、移動ローラとの位置関係を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態における治具を用いてクローザの取り付け位置を決定するまでの第1段階の説明に供する正面図(A)および平面図(B)である。
【
図9】本発明の実施の形態における治具を用いてクローザの取り付け位置を決定するまでの第2段階の説明に供する正面図(A)および平面図(B)である。
【
図10】本発明の実施の形態における治具を用いてクローザの取り付け位置を決定するまでの第3段階の説明に供する正面図(A)および平面図(B)である。
【
図11】本発明の実施の形態における治具を用いてクローザの取り付け位置を決定するまでの第4段階の説明に供する正面図(A)および平面図(B)である。
【
図12】本発明の実施の形態における治具を用いてクローザの取り付け位置を決定するまでの第5段階の説明に供する正面図(A)および平面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号が括弧を付して記載されている。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態においては、枠体(110)に取り付けられたガイドレール(170)に沿って扉体(130,150)を閉じ切る、または、開き切るために当該ガイドレール(170)に対する最適な位置にクローザ(230)を取り付けるための治具(300)であって、治具(300)は、ガイドレール(170)に着脱自在に取り付けられる本体部(301)と、扉体(130,150)の上端部に取り付けられてガイドレール(170)に沿って走行し、クローザ(230)に引き込まれる移動ローラ(190)と接触する端面(303a)が設けられた突出部(303)と、突出部(303)の端面(303a)から所定の距離だけ離れた本体部(301)の位置に上下方向に沿って設けられた貫通孔(305)と、を備える。
を有する。
【0014】
〔2〕本発明において、本体部(301)は、突出部(303)の端面(303a)が移動ローラ(190)と接触してガイドレール(170)に取り付けられた状態で、扉体(130,150)を閉じ切った場合に移動ローラ(190)と共にガイドレール(170)に沿って移動して停止したときの貫通孔(305)と対向するガイドレール(170)の位置を、クローザ(230)をガイドレール(170)に取り付けるために設けられた当該クローザ(230)の貫通孔(231a)の位置とする。
【0015】
〔3〕本発明において、本体部(301)の側面には、ガイドレール(170)に対して着脱自在に取り付けるための突起部分(302)が設けられている。
【0016】
〔4〕本発明において、本体部(301)は、移動ローラ(190)のタイヤ(193)が転動する一対のフランジ壁部(173)の間から挿入可能な幅である。
【0017】
2.第1の実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態にかかる治具、および、治具を用いた折戸装置の構成について
図1乃至
図7を参照しながら詳細に説明する。また、本発明の実施の形態にかかる治具を用いてクローザの取り付け位置を決定し、クローザを取り付けるまでの流れを
図8乃至
図12を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
なお、以下の
図1乃至
図12の説明において、折戸装置100を正面から見て左側を戸閉側(矢印a方向)、右側を戸開側(矢印b方向)、紙面に対して奥側を室内側(矢印c方向)、手前側を室外側(矢印d方向)、折戸装置100を正面から見て上側を天井側(矢印e方向)、下側を床面側(矢印f方向)とする。したがって、開閉方向、水平方向または左右方向(矢印ab方向)、奥行方向(矢印cd方向)、および、上下方向(矢印ef方向)とし、第1扉体130における左側端部を戸先側、第2扉体150における右側端部を扉体の吊元側と呼ぶ。
【0019】
<折戸装置>
図1および
図2に示すように、本発明の実施の形態において治具300(
図6)が用いられる対象となる折戸装置100は、枠体110、第1扉体130、第2扉体150、ガイドレール170、移動ローラ190、固定ローラ210、クローザ230を有している。なお、
図1には、治具300が図示されておらず、当該治具300については後述する。
【0020】
<枠体>
枠体110は、上枠111、左枠113、右枠115および下枠117によって矩形状の開口を形成している。上枠111にはガイドレール170が固定されている。左枠113と右枠115との間の距離は、第1扉体130および第2扉体150を直線状に並べた長さよりも僅かに大きい。
【0021】
図3に示すように、上枠111は、断面略逆U字形状を有し、断面中央部分に矩形状の凹部空間111sを有している。この凹部空間111sは、2つの互いに対応した内側面111a、111bと、2つの内側面111a、111b間を繋ぐ天井面111uによって形成されている。上枠111の天井面111uにはガイドレール170が固定される。
【0022】
<第1扉体および第2扉体>
図2に示すように、第1扉体130は、折戸装置100を正面から見て左側に配置され、第2扉体150よりも面積の大きな板状部材からなる。第2扉体150は、折戸装置100を正面から見て右側に配置され、第1扉体130よりも面積の小さな板状部材からなる。
【0023】
第1扉体130は、室外側(矢印d方向)となる表面の左側端部に取手130aが取り付けられている。なお、第1扉体130では、表面の取手130aと同じように、室内側(矢印c方向)となる裏面の位置にも取手130bが取り付けられている。
【0024】
第1扉体130の横幅は第2扉体150の2倍の長さを有しており、2:1のサイズ比率を有している。ただし、これに限るものではなく、例えば、第2扉体150が第1扉体130の幅以上にならなければ、その他のサイズ比であってもよい。
【0025】
第1扉体130および第2扉体150は、第1扉体130における右側の上端部および第2扉体150における左側の上端部において上側ヒンジ141により両者が折り畳み自在に連結されている。同様に、第1扉体130および第2扉体150は、第1扉体130における右側の下端部および第2扉体150における左側の下端部において下側ヒンジ143により両者が折り畳み自在に連結されている。
【0026】
したがって折戸装置100は、例えば、ユーザが第1扉体130の取手130aを持ち、当該第1扉体130を奥側(矢印c方向)に押すと、上側ヒンジ141および下側ヒンジ143が手前側(矢印d方向)に移動されると共に、第1扉体130および第2扉体150が折り畳まれて開状態になる(
図8(B)参照。)。因みに、ユーザが第1扉体130の取手130aを手前側(矢印d方向)に押すと、上側ヒンジ141および下側ヒンジ143が奥側(矢印c方向)に移動されると共に第1扉体130および第2扉体150が折り畳まれて開状態になる。つまり、折戸装置100では、第1扉体130および第2扉体150が両方向に折り畳まれて開状態を形成することができるのである。
【0027】
また、折戸装置100は、第1扉体130および第2扉体150の開状態において、ユーザが第1扉体130を手前側(矢印d方向)に引くと、上側ヒンジ141および下側ヒンジ143が元の位置に戻ると共に、第1扉体130および第2扉体150が展開して閉状態になる(
図9(B)参照。)。
【0028】
<ガイドレール>
図3に示すように、ガイドレール170は、枠体110における上枠111の天井111uに対して当該上枠111と一体に固定された略逆U字状からなり、左枠113と右枠115との間の距離よりも僅かに小さな横幅を有している。
【0029】
ガイドレール170は、天壁部171、1対の側壁部172、および、1対のフランジ壁部173を有している。ガイドレール170の天壁部171は、上枠111の天井面111uに対して固定具または接着等により当該上枠111と一体に固定されている。
【0030】
ガイドレール170の天壁部171は、枠体110の左枠113と右枠115との間を上枠111の長手方向に沿って延在する板状部分である。天壁部171は、中央に下側(矢印f方向)に向かって所定の長さだけ互いに平行に延びる2個の突出壁部171aを有している。
【0031】
2個の突出壁部171aは、突出壁部171aと突出壁部171aとの間からに後述するクローザ230が入り込んだ状態でガイドレール170の天壁部171に取り付けられるように所定の間隔だけ離れて配置されている。
【0032】
また、2個の突出壁部171a同士の互いに対向する内側面の所定位置には、後述する治具300が着脱自在にガイドレール170に取り付けられた際に落下することなく保持するための小さな凹部171asがそれぞれ形成されている。
【0033】
ガイドレール170における1対の側壁部172は、フランジ壁部173の下端面と上枠111の下端面111cとが面一となる程度の上下方向(矢印ef方向)の長さを有する板状部材である。
【0034】
ガイドレール170における1対のフランジ壁部173は、1対の側壁部172の下側先端縁から天壁部171と平行かつ互いに近づくように延びて対向した状態に隔離配置された部分であり、移動ローラ190のタイヤ193が転がる転動面を有している。
【0035】
なお、一対の側壁部172および一対のフランジ壁部173ともに、天壁部171と同様に長手方向に延在している。ガイドレール170は、その略逆U字状の内側の収容空間に移動ローラ190を収容した状態で、当該移動ローラ190を当該ガイドレール170に沿って移動可能に保持する。
【0036】
<移動ローラ>
図2に示すように、移動ローラ190は、第1扉体130の上側の端面(以下、これを「上端面」と呼ぶ。)であって、その左右方向のほぼ中央の位置に取り付けられている。
【0037】
この移動ローラ190は、第1扉体130に対して水平方向(矢印ab方向)に回転自在に取り付けられており、第1扉体130が開閉する動きにあわせて本体部191および扉係合部195が回転する。また、移動ローラ190は、4個のタイヤ193を有しており、ガイドレール170の内側において開閉方向(矢印ab方向)へ移動可能に取り付けられている。
【0038】
図4(A)乃至(C)に示すように、移動ローラ190は、金属または樹脂等によって形成された本体部191と、この本体部191の下側(矢印f方向)に吊り下げられた状態で取り付けられた扉係合部195とによって構成されている。
【0039】
移動ローラ190の本体部191は、断面略U字形状を有しており、上枠111の天井面111uと平行に長手方向へ延びる底板部191aと、その底板部191aの短手方向における両側端部から上側(矢印e方向)へ向かって起立した2つの側板部191b、191bとを有している。
【0040】
本体部191の底板部191aは、当該底板部191aの戸閉側(矢印a方向)の端面191atを有している。この底板部191aの端面191atは、後述する治具300の突出部303の端面303aと接触する部分である。また、本体部191における底板部191aには、そのほぼ中央にクローザ230のラッチ234(
図5)と係合される被係合部192が設けられている。この被係合部192は、底板部191aの一部が切り取られた後に折り曲げられた逆U字形状を有している。
【0041】
移動ローラ190は、本体部191の被係合部192がクローザ230のラッチ234によって補足されると、当該クローザ230によって移動ローラ190が戸閉側(矢印a方向)に引き込まれることになる。移動ローラ190は、第1扉体130に取り付けられているため、クローザ230により第1扉体130が完全に閉じ切る位置まで引き込まれる。
【0042】
本体部191における2つの側板部191b、191bの外側には、4つのタイヤ193が回転自在に支持されている。2つの側板部191b、191bの内側空間は、クローザ230を収容可能な幅を有すると共に(
図3参照。)、後述する治具300についても収容可能な幅を有している(
図7参照。)。つまり、2つの側板部191b、191bの内側空間は、クローザ230を収容可能なクローザ収容空間、かつ、治具300の治具収容空間として機能する。
【0043】
これにより、移動ローラ190がガイドレール170に対して開閉方向(矢印ab方向)へ移動した場合であっても、クローザ230と2つの側板部191b、191bとが干渉することなく移動ローラ190の内側空間にクローザ230が入り込むことができる。
【0044】
移動ローラ190の扉係合部195は、第1扉体130の上端面であって、その左右方向(矢印ab方向)のほぼ中央の位置に埋め込まれた状態で取り付けられている(
図2)。この扉係合部195は、第1扉体130に取り付けるための取付部196と、第1扉体130の移動に応じて移動ローラ190を回転可能に支持する回動軸197とを有している。
【0045】
<固定ローラ>
なお、第2扉体150の上端面であってかつ右側の端部の吊元側には、固定ローラ210が取り付けられている。固定ローラ210は、移動ローラ190と同一の構造を有しているため、ここでは説明を省略する。
【0046】
この固定ローラ210においても移動ローラ190と同様に、第2扉体150に対して水平方向(矢印ab方向)に回転自在に取り付けられており、第2扉体150が開閉する動きにあわせて回転する。なお、固定ローラ210は、移動ローラ190とは異なり、ガイドレール170の右側の端部に対して移動することのないように固定されている。
【0047】
<クローザ>
図5に示すように、クローザ230は、第1扉体130および第2扉体150を閉めるときの閉じ際に、当該クローザ230のラッチ234が移動ローラ190の被係合部192を捕捉することにより、枠体110に対して第1扉体130および第2扉体150を完全に閉じ切るまで引き込むものである。なお、クローザ230は、第1扉体130および第2扉体150が勢いよく閉じられた場合に、その勢いを殺して、緩やかに閉じ切る位置まで移動するものでもある。
【0048】
クローザ230は、主に、本体部231、捕捉部235、ダンパー237、および、バネ部材239を有している。クローザ230の本体部231は、ガイドレール170の長手方向(矢印ab方向)に沿って延びる断面矩形状の角筒状部材であり、その内側空間に捕捉部235のラッチ234、ダンパー237、および、バネ部材239等を収容している。
【0049】
クローザ230の本体部231は、左側となる戸閉側(矢印a方向)の端部に上下方向(矢印ef方向)に沿って貫通した貫通孔231aと、右側となる戸開側(矢印b方向)の端部に上下方向(矢印ab方向)に沿って貫通した貫通孔231bとを有している。これらの貫通孔231aおよび貫通孔231bは、クローザ230をガイドレール170の天壁部171に取り付けて固定するために用いられる。
【0050】
クローザ230の捕捉部235は、本体部231の側面に対して形成されたL字状のガイド孔232に沿って移動するリンクピン233と、そのリンクピン233と一体に設けられて移動ローラ190の被係合部192と係合されるラッチ234とを有している。
【0051】
クローザ230のダンパー237は、第1扉体130および第2扉体150が閉まるときの勢いを緩める緩衝部材である。クローザ230のバネ部材239は、捕捉部235のラッチ234と移動ローラ190の被係合部192とが係合されると、当該バネ部材239の付勢力によって移動ローラ190を引き込む。このときダンパー237は、バネ部材239により移動ローラ190を引き込む方向への勢いを吸収することができる。
【0052】
<治具>
図6(A)および(B)に示すように、治具300は、枠体110における上枠111のガイドレール170に取り付けられる第1扉体130および第2扉体150を完全に閉め切るために、当該ガイドレール170に対するクローザ230の最適な取り付け位置を決定するための道具である。
【0053】
治具300は、全体的に略直方体形状の金属または樹脂等からなり、直方体形状の本体部301と、当該本体部301の長手方向における一方の端部において下側(矢印f方向)に向かって突出した突出部303とによって構成されている。
【0054】
図7に示すように、治具300の本体部301は、移動ローラ190における本体部191の側板部191bと側板部191bとの間の幅よりも小さく、かつ、ガイドレール170における突出壁部171aと突出壁部171aとの間の幅よりも僅かに小さな横幅を有している。
【0055】
また、本体部301は、治具300がガイドレール170における2つの突出壁部171aの間から挿入可能であり、当該本体部310が2つの突出壁部171aの間から挿入されて取り付けられる際、突出壁部171aの凹部171asに嵌合される突起部分302を有している。
【0056】
突起部分302は、治具300の本体部301の両側側面のそれぞれ背向する位置に設けられており、ガイドレール170における突出壁部171aの凹部171asに嵌り込むことが可能な大きさ及び水平方向(矢印ab方向)の長さを有している。
【0057】
また、本体部301における一方の端部に設けられた突出部303は、直方体形状からなり、本体部301の下面301bよりも下側(矢印f方向)へ突出した部分であり、本体部301と一体に設けられている。
【0058】
この突出部303の右側(矢印b方向)の端面303aは、本体部301と面一であり、移動ローラ190(
図4)における本体部191の底板部191aの左側(矢印a方向)の端面191atと当接する部分である。
【0059】
さらに、本体部301における他方の端部には、上下方向(矢印ef方向)に沿って貫通した貫通孔305が設けられている。この貫通孔305の内径は、後述するドリルピン400(
図10乃至
図12)よりも大きく形成されている。
【0060】
本体部301の貫通孔305と突出部303の端面303aとの間には所定の距離が設けられている。この距離は、治具300を用いてクローザ230をガイドレール170に取り付ける場合、クローザ230が移動ローラ190を引き込んで第1扉体130を完全に閉じ切ることができる最適な位置となることが考慮された値である。
【0061】
つまり、第1扉体130を完全に閉じ切るような位置にクローザ230を配置する場合、移動ローラ190の長手方向における寸法と、クローザ230をガイドレール170に取り付けるための貫通孔231aの位置関係とに基づいて、本体部301の貫通孔305と突出部303の端面303aとの間の距離が決定される。
【0062】
<治具によるクローザの取付手順>
続いて、折戸装置100のガイドレール170に対してクローザ230を最適な位置に取り付けるための取付手順について説明する。なお、見易さの観点から、
図8(A)乃至
図12(A)では第1扉体130および第2扉体150を表示しておらず、
図8(B)乃至
図12(B)ではガイドレール170を表示していない。
【0063】
図8(A)および(B)に示すように、第1段階として、折戸装置100の枠体110に対して第1扉体130および第2扉体150が上側ヒンジ141および下側ヒンジ143を介して折り畳まれた半扉開き状態を形成する。そして、第1扉体130に取り付けられた移動ローラ190にとって左側となる戸閉側(矢印a方向)に治具300を配置するようにガイドレール170に取り付ける。
【0064】
この場合、治具300は、本体部301の突起部分302がガイドレール170における天壁部171の突出壁部171aの凹部171asに嵌り込むことにより当該ガイドレール170から落下することなく保持される。
【0065】
ここで、治具300は移動ローラ190と接触するように配置される。具体的には、治具300における突出部303の端面303a(
図6)と移動ローラ190における本体部191の底板部191aの端面191at(
図4)とが接触した状態で配置される。
【0066】
次に、
図9(A)および(B)に示すように、第2段階として、第1扉体130および第2扉体150の半扉開き状態から、第1扉体130および第2扉体150を完全に閉じ切った状態を形成する。このとき、治具300は、移動ローラ190と当接されているので、当該移動ローラ190により戸閉側(矢印a方向)へ押されることになり、ガイドレール170に沿って移動される。
【0067】
続いて、
図10(A)および(B)に示すように、第3段階として、第1扉体130および第2扉体150が完全に閉じ切られた状態から、第1扉体130および第2扉体150の半扉開き状態を再度形成すると、治具300と移動ローラ190とは接触しているだけなので、当該治具300だけがその場所に置き去りにされる。
【0068】
ガイドレール170に置き去りにされた治具300の貫通孔305の位置は、当該ガイドレール170に対してクローザ230を取り付ける際に、クローザ230における本体部231の貫通孔231aを対応させるべき位置である。つまり、この位置にクローザ230の貫通孔231aを対応させてガイドレール170の天壁部171に取り付ければ、当該クローザ230により枠体110に対して第1扉体130および第2扉体150を完全に閉じ切ることができることになる。
【0069】
したがって、作業者は治具300の貫通孔305を利用して、ガイドレール170の天壁部171にドリルビス400を打ち込むことにより、当該天壁部171に対してクローザ230を取り付けるための下孔171c(
図11(A))を形成することができる。
【0070】
図11(A)および(B)に示すように、第4段階として、ドリルビス400を治具300から取り外すと供に、治具300をガイドレール170から取り外し、ガイドレール170の天壁部171に設けられた下孔171cに対してクローザ230における本体部231の貫通孔231aを上下方向(矢印ef方向)に対向するように配置する。
【0071】
図12(A)および(B)に示すように、第5段階として、ガイドレール170の天壁部171に設けられた下孔171cに対してクローザ230における本体部231の貫通孔231aの位置を合わせた状態で、ドリルビス400により天壁部171および上枠111にクローザ230の本体部231を取り付ける。
【0072】
また、クローザ230における本体部231の貫通孔231bと対向するガイドレール170の天壁部171の位置には下孔が形成されていないが、ドリルビス400により当該天壁部171および上枠111に対して本体部231を直接取り付ける。
【0073】
これによりクローザ230は、ガイドレール170の天壁部171および上枠111に対して、第1扉体130および第2扉体150を完全に閉じ切ることができる最適な位置に取り付けられて固定される。
【0074】
<作用および効果>
以上の構成によれば、治具300は、移動ローラ190の被係合部192と、クローザ230とラッチ234とが係合して当該クローザ230が第1扉体130を引き込み、枠体110に対して第1扉体130および第2扉体150を完全に閉じ切るのに最適なガイドレール170の位置を容易に決定することができる。
【0075】
これにより、枠体110の上枠111の横幅が個別に異なる場合であっても、それぞれの上枠111のガイドレール170に合わせてクローザ230を取り付けるための最適な位置を個別具体的に計算し、設計図面を作成する等の煩雑な作業を行う必要がなくなる。かくして、作業者が治具300を現場で用いるだけで、瞬時にクローザ230の最適な取り付け位置を決定し、下孔403を形成することができる。
【0076】
また、治具300は、ガイドレール170の天壁部171に対して最適な取り付け位置を本体部301の貫通孔305によって提示すると同時に、この貫通孔305を利用してドリルビス400を打ち込ませることができるので、効率的に下孔171cを形成することができる。
【0077】
3.他の実施の形態
なお、上述した実施の形態においては、枠体110に対して第1扉体130および第2扉体150を用いた折戸装置100に対して本発明の治具300を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、1枚の扉を有する引戸装置に適用するようにしてもよい。
【0078】
また、上述した実施の形態においては、ガイドレール170の左側の所定位置にクローザ230を取り付けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、第1扉体130および第2扉体150を完全に開き切るためガイドレール170の右側の最適な位置にも治具300を用いてクローザ(図示せず)を取り付けるようにしてもよい。
【0079】
なお、その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の治具を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
100…折戸装置、110…枠体、111…上枠、111a,111b…内側面、111c…下端面、111s…凹部空間、111u…天井面、113…左枠、115…右枠、117…下枠、130…第1扉体、130a…取手、141…上側ヒンジ、143…下側ヒンジ、150…第2扉体、170…ガイドレール、171…天壁部、171a…突出壁部、171as…凹部、172…側壁部、173…フランジ壁部、190…移動ローラ、191…本体部、191a…底板部、191b…側板部、192…被係合部、193…タイヤ、195…扉係合部、196…取付部、197…回転軸、210…固定ローラ、230…クローザ、231…本体部、231a,231b…貫通孔、232…ガイド孔、233…リンクピン、234…ラッチ、235…捕捉部、237…ダンパー、239…バネ部材、300…治具、301…本体部、302…突起部分、303…突出部、303a…端面、305…貫通孔、400…ドリルビス。