(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009564
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】アームレスト及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/75 20180101AFI20250110BHJP
【FI】
B60N2/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112650
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DC01
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シート前後方向の長さを簡単に調整することができ使い勝手のよいアームレスト及び車両用シートを得る。
【解決手段】アームレスト16は、ベースフレーム18、サブフレーム20及びスライド機構35を備えており、サブフレーム20をシート前後方向に沿ってスライド移動させることによってアームレスト16の長さを簡単に調整することができる。また、スライド機構35は、サブフレーム20に設けられた押込みパッド44が上方側から押圧されると当該サブフレーム20をシート前後方向に沿ってスライド移動を可能とし、押込みパッド44が押圧された状態が解除されると当該サブフレーム20のスライド移動を規制する。このため、比較例として、サブフレーム20をシート前後方向の後方側へ引っ張ることで当該サブフレーム20をシート前後方向に沿ってスライド移動させるという構成からすると、アームレスト16の操作が楽になり使い勝手がよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート前後方向に沿って配置されるベース部材と、
前記ベース部材に設けられ、当該ベース部材に対してシート前後方向に沿ってスライド移動可能なスライド部材と、
前記スライド部材に設けられた押圧部がシート上下方向の上方側から押圧されると当該スライド部材をシート前後方向に沿ってスライド移動可能とし、前記押圧部が押圧された状態が解除されると当該スライド部材のスライド移動を規制するスライド機構と、
を備えたアームレスト。
【請求項2】
前記スライド機構は、
前記ベース部材に設けられシート前後方向に沿って形成された複数の被係合部と、
前記スライド部材に設けられ、前記被係合部に対して係合又は係合解除される係合部材と、
を含んで構成されている請求項1に記載のアームレスト。
【請求項3】
前記押圧部は前記スライド部材におけるシート上下方向の上方側に設けられると共に、前記係合部材はシート幅方向に沿って配置された軸部の周りを回転可能に支持され、
前記係合部材は、
前記スライド部材側に配置され、前記押圧部が押圧されると前記軸部を中心にシート上下方向の下方側へ向かって押圧される押圧板と、
前記ベース部材側に配置され、前記押圧板がシート上下方向の下方側へ向かって押圧されると前記軸部を中心にシート上下方向の上方側へ向かって回転し前記被係合部に対して係合解除される係合部と、
を含んで構成されている請求項2に記載のアームレスト。
【請求項4】
前記スライド機構は、
一端部が前記ベース部材側に設けられると共に他端部が前記スライド部材側に設けられ、当該スライド部材を当該ベース部材側へ付勢する第1付勢部材をさらに含んで構成されている請求項3に記載のアームレスト。
【請求項5】
前記係合部材には、前記被係合部に対して前記係合部を係合させる方向へ当該係合部材を付勢する第2付勢部材が設けられている請求項3に記載のアームレスト。
【請求項6】
前記スライド部材におけるシート前後方向の前端部には、車両に搭載された車両ECUに接続され、前記車両ECUに接続された装置を操作可能な操作パネルが設けられている請求項1に記載のアームレスト。
【請求項7】
前記装置は、少なくとも車両用シートをシート前後方向に沿ってスライド移動させるスライド装置及びシートバックを傾動させるリクライニング装置とされている請求項6に記載のアームレスト。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1項に記載のアームレストが設けられている車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームレスト及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車体座席の近傍に設けられ、必要に応じて車両前方にスライドさせて肘掛として使用するアームレストに関する技術が開示されている。この先行技術では、ベース及びアームレスト本体の何れか一方に取り付けられる第一部材に対して、何れか他方に取り付けられる第2部材をハートカム機構によって第1の位置と第2の位置とにスライド可能としアームレストの長さを調整可能としている。そして、第1部材と第2部材との間にコイルばねを設け、コイルばねの付勢力によって、アームレスト本体をその移動方向へ移動させ、アームレスト本体のスライドを半自動化できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、アームレスト本体をスライドさせるためハートカム機構を構成するカムフォロアとカム溝との係合状態を解除させる必要があるが、この場合、アームレスト本体を一旦シート後方側へ引っ張る必要があり、使い勝手があまりよくない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シート前後方向の長さを簡単に調整することができ、使い勝手のよいアームレスト及び車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るアームレストは、シート前後方向に沿って配置されるベース部材と、前記ベース部材に設けられ、当該ベース部材に対してシート前後方向に沿ってスライド移動可能なスライド部材と、前記スライド部材に設けられた押圧部がシート上下方向の上方側から押圧されると当該スライド部材をシート前後方向に沿ってスライド移動可能とし、前記押圧部が押圧された状態が解除されると当該スライド部材のスライド移動を規制するスライド機構と、を備えている。
【0007】
第1の態様に係るアームレストでは、ベース部材、スライド部材及びスライド機構を備えている。ベース部材は、シート前後方向に沿って配置されている。スライド部材は、ベース部材に設けられており、当該ベース部材に対してシート前後方向に沿ってスライド移動可能とされている。スライド機構は、スライド部材に設けられた押圧部がシート上下方向の上方側から押圧されると、当該スライド部材をシート前後方向に沿ってスライド移動可能とし、押圧部が押圧された状態が解除されると当該スライド部材のスライド移動を規制する。
【0008】
このように、本態様では、スライド部材をシート前後方向に沿ってスライド移動させることによって、体格差による腕の長さに合わせてアームレストの長さを簡単に調整することが可能となる。また、本態様では、アームレストに手を載せた状態で手首で押圧部をシート上下方向の上方側から押圧することができる。そして、当該押圧部を押圧するだけでスライド部材をシート前後方向に沿ってスライド移動させることができるため、比較例として、スライド部材をシート前後方向の後方側へ引っ張ることで当該スライド部材をシート前後方向に沿ってスライド移動させるという構成よりも操作が楽で使い勝手がよい。
【0009】
第2の態様に係るアームレストは、第1の態様に係るアームレストにおいて、前記スライド機構は、前記ベース部材に設けられシート前後方向に沿って形成された複数の被係合部と、前記スライド部材に設けられ、前記被係合部に対して係合又は係合解除される係合部材と、を含んで構成されている。
【0010】
第2の態様に係るアームレストでは、スライド機構は、複数の被係合部及び係合部材を含んで構成されている。複数の被係合部は、ベース部材に設けられており、シート前後方向に沿って形成されている。一方、係合部材は、スライド部材に設けられており、被係合部に対して係合又は係合解除される。
【0011】
すなわち、本態様では、被係合部に対して、係合部材が係合されることによって、スライド部材はスライド移動が規制され、また、係合部材の係合状態が解除される(いわゆる係合解除)ことによってスライド部材はスライド移動が可能となる。ここで、被係合部は、複数設けられているため、被係合部が設けられた数だけスライド部材においてシート前後方向に沿った位置を設定することが可能となる。つまり、アームレストの長さにおいて微調整が可能となる。
【0012】
第3の態様に係るアームレストは、第1の態様又は第2の態様に係るアームレストにおいて、前記押圧部は前記スライド部材におけるシート上下方向の上方側に設けられると共に、前記係合部材はシート幅方向に沿って配置された軸部の周りを回転可能に支持され、前記係合部材は、スライド部材側に配置され、前記押圧部が押圧されると前記軸部を中心にシート上下方向の下方側へ向かって押圧される押圧板と、前記ベース部材側に配置され、前記押圧板がシート上下方向の下方側へ向かって押圧されると前記軸部を中心にシート上下方向の上方側へ向かって回転し前記被係合部に対して係合解除される係合部と、を含んで構成されている。
【0013】
第3の態様に係るアームレストでは、押圧部がスライド部材におけるシート上下方向の上方側に設けられると共に、係合部材は、シート幅方向に沿って配置された軸部の周りを回転可能に支持されている。また、係合部材は、押圧板及び係合部を含んで構成されている。押圧板は、スライド部材側に配置されており、押圧部が押圧されると軸部を中心にシート上下方向の下方側へ向かって押圧される。一方、係合部は、ベース部材側に配置されており、押圧板がシート上下方向の下方側へ向かって押圧されると軸部を中心にシート上下方向の上方側へ向かって移動(回転)し被係合部に対して係合解除される。
【0014】
すなわち、係合部材は、軸部を間において、スライド部材側に配置された押圧板とベース部材側に配置された係合部とを含んで構成される。そして、押圧部を介して押圧板がシート上下方向の下方側へ向かって押圧されると、係合部はシート上下方向の上方側へ向かって移動(回転)する。これにより、係合部は被係合部に対して係合解除され、スライド部材はシート前後方向に沿ってスライド移動可能となる。
【0015】
一方、押圧部を押圧する状態(押圧状態)が解除されると、押圧板がシート上下方向の上方側へ向かって移動(回転)し、係合部はシート上下方向の下方側へ向かって移動(回転)する。これにより、被係合部に対して係合され、スライド部材はスライド移動が規制される。
【0016】
第4の態様に係るアームレストは、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係るアームレストにおいて、前記スライド機構は、一端部が前記ベース部材側に設けられると共に他端部が前記スライド部材側に設けられ、当該スライド部材を当該ベース部材側へ付勢する第1付勢部材をさらに含んで構成されている。
【0017】
第4の態様に係るアームレストでは、スライド機構は、第1付勢部材をさらに含んで構成されている。この第1付勢部材は、一端部がベース部材側に設けられると共に他端部がスライド部材側に設けられており、スライド部材をベース部材側へ付勢する。
【0018】
このため、スライド部材をシート前後方向の前方側へスライド移動させると、第1付勢部材には弾性エネルギが蓄積される。この状態で、押圧部を介して係合部をシート上下方向の上方側へ向かって移動(回転)させ係合部を被係合部に対して係合解除させると、第1付勢部材による付勢力によってスライド部材はシート前後方向の後方側(ベース部材側)へスライド移動可能とされる。
【0019】
第5の態様に係るアームレストは、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係るアームレストにおいて、前記係合部材には、前記被係合部に対して前記係合部を係合させる方向へ当該係合部材を付勢する第2付勢部材が設けられている。
【0020】
第5の態様に係るアームレストでは、係合部材には第2付勢部材が設けられている。この第2付勢部材によって被係合部に対して係合部を係合させる方向へ当該係合部材を付勢することで、被係合部に対して係合部材が係合された状態が維持される。
【0021】
スライド部材に設けられた押圧部を押圧すると当該押圧部を介して押圧板がシート上下方向の下方側へ向かって押圧され、被係合部に対して係合部が係合解除される。本態様では、係合部材に設けられた第2付勢部材によって被係合部に対して係合部を係合させる方向へ当該係合部材が付勢されるため、押圧部を押圧している状態では、第2付勢部材には弾性エネルギが蓄積される。このため、押圧部を押圧している状態が解除されると、当該第2付勢部材の付勢力によって、押圧板はシート上下方向の上方側へ向かって移動(回転)し元の状態に戻る。
【0022】
第6の態様に係るアームレストは、第1の態様~第5の態様の何れか1の態様に係るアームレストにおいて、前記スライド部材におけるシート前後方向の前端部には、車両に搭載された車両ECUに接続され、前記車両ECUに接続された装置を操作可能な操作パネルが設けられている。
【0023】
第6の態様に係るアームレストでは、スライド部材におけるシート前後方向の前端部には操作パネルが設けられている。この操作パネルは、車両に搭載された車両ECUに接続されており、車両ECUに接続された装置を操作可能としている。これにより、例えば、車両ECUに接続された装置として、シートのスライド、リクライニング、車両の空調装置、オーディオ、ナビゲーションシステム等の操作を可能とすることができる。
【0024】
第7の態様に係るアームレストは、第1の態様~第6の態様の何れか1の態様に係るアームレストにおいて、前記装置は、少なくとも車両用シートをシート前後方向に沿ってスライド移動させるスライド装置及びシートバックを傾動させるリクライニング装置とされている。
【0025】
第7の態様に係るアームレストでは、車両ECUに接続された装置は、少なくともスライド装置及びリクライニング装置とされ、アームレストの前端部に設けられた操作パネルによって、アームレストに手を載せたまま車両用シートをスライド移動させたりリクライニングさせたりできるため、便利である。
【0026】
第8の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第7の態様の何れか1の態様に係るアームレストが設けられている。
【0027】
第8の態様に係る車両用シートでは、第1の態様~第7の態様の何れか1の態様のアームレストを用いたことによって得られる効果を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明に係るアームレストによれば、シート前後方向の長さを簡単に調整することができアームレスト本体の使い勝手をよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態に係るアームレストを右斜め後方かつ上方側から見た状態を示す概略斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るアームレストの構成を示す概略分解斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るアームレストの概略平面図である。
【
図4】
図3で示すA-A線に沿って切断したときの概略断面図である。
【
図5】(A)は、本実施形態に係るアームレストが適用された車両用シートであり、アームレストの一部を構成するスライド部材がスライドする前の状態を示す概略側面図であり、(B)は、スライド部材がスライドした後の状態を示す概略側面図である。
【
図6】本実施形態に係るアームレストのスライド部材がスライドする前の状態を示す
図4に対応する概略断面図である。
【
図7】本実施形態に係るアームレストのスライド部材のロック状態が解除された状態を示す
図4に対応する概略断面図である。
【
図8】本実施形態に係るアームレストのスライド部材がスライドした後の状態を示す
図4に対応する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において適宜示す矢印UPをシート上方向、矢印FRをシート前方向、矢印RHをシート右方向とする。つまり、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、
図1に示される車両用シート10における上下、前後、左右が基準となっている。また、後述する短手方向は、左右方向と同義である。
【0031】
(アームレストの構成)
まず、本実施の形態に係るアームレストの構成について説明する。
【0032】
図5(A)、(B)に示されるように、車両(図示省略)に設けられている車両用シート10は、乗員が着座する(乗員の大腿部及び臀部を支持する)シートクッション12と、乗員の背部を支持するシートバック14と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト(図示省略)と、乗員の前腕部(主に肘から手首まで)を支持するアームレスト16と、を有している。
【0033】
図5(A)、(B)に示されるように、アームレスト16は、車両用シート10の右側に設けられており、例えば、シートクッション12においてシート上下方向に沿って延在されたアーム15の先端部に固定されている。
【0034】
なお、本実施形態では、アームレスト16は、車両用シート10の右側に設けられているが、車両用シート10の左側に設けられていてもよいし、車両用シート10の左右に設けられていてもよい。また、本実施形態では、アームレスト16は、シートクッション12に固定されたアーム15に固定されているが、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、アーム15は車体フロアに固定されてもよい。これ以外にも、アームレスト16は直接シートバック14側に設けられてもよい。
【0035】
本実施形態に係るアームレスト16は、
図1に示されるように、シート前後方向を長手方向として設けられたベースフレーム(ベース部材)18と、当該ベースフレーム18の前部22に設けられたサブフレーム(スライド部材)20と、を含んで構成されている。
【0036】
図2に示されるように、ベースフレーム18は、上方側を開口とする略箱状を成しており、サブフレーム20は上方側及び後方側を開口とする略箱状を成している。前述のように、ベースフレーム18の前部22にはサブフレーム20が設けられる。
【0037】
このため、ベースフレーム18の前壁部18A及びベースフレーム18の前部22側の一対の側壁部18Bの高さは、ベースフレーム18の後壁部18C及びベースフレーム18の中央部24及び後部26側の側壁部18Dの高さよりも低くなるように形成されている。そして、ベースフレーム18の後壁部18C及び側壁部18D上端には矩形板状の上蓋28が固定されている。
【0038】
ベースフレーム18の底壁部18Eの後部26には、アームレスト16の幅方向に沿った中央部において、アームレスト16の幅方向に沿った軸線を中心に巻回されたぜんまいばね(第1付勢部材)30を支持する一対のアングル32が固定されている。
【0039】
また、ベースフレーム18の底壁部18Eの中央部24には、アームレスト16の幅方向の両端部において、スライド機構35の一部を構成し複数の板状の被係合部34Aがベースフレーム18の長手方向に沿って配列されたラック部材34がそれぞれ設けられている。
【0040】
さらに、ベースフレーム18の底壁部18Eの前部22には、アームレスト16の幅方向に沿った中央部において、スライドユニット36がシート前後方向に沿って固定されている。スライドユニット36は略直方体状を成しており、スライドユニット36の幅方向の中央部には、略直方体状の凸部36Aが突設されている。
【0041】
ここで、サブフレーム20の底壁部20Aの下面側には、当該凸部36Aと係合する図示しない凹部が形成されたスライド部38が突設されている。当該スライド部38がスライドユニット36に対して係合されることによって、サブフレーム20は、スライド部38及びスライドユニット36を介してベースフレーム18の長手方向に沿ってスライド移動可能とされる。
【0042】
当該サブフレーム20がベースフレーム18に対して係合された状態で、サブフレーム20の側壁部20Bとベースフレーム18の側壁部18Dの高さは略同じとなるように設定されている。
【0043】
また、サブフレーム20の側壁部20Bの上端には、略矩形状の上蓋42が固定されている。上蓋42の中央部にはアームレスト16の長手方向の長手方向として楕円形状を成す開口部42Aが形成されている。この開口部42A内には、例えば、ウレタン製の押込みパッド(押圧部)44が挿入可能とされており、押込みパッド44を押圧可能としている。
【0044】
また、上蓋42の前端部には、操作パネル46が設けられている。操作パネル46には、例えば、車両ECU56(
図5(A)参照)に接続され、シートクッション12をシート前後方向に沿ってスライドさせたりシートバック14をリクライニングさせたりする操作部が設けられている。当該操作パネル46は、アームレスト16の前方側へ向かうにつれて上方側へ向かって傾斜するように配置されており、乗員が操作しやすいように設定されている。
【0045】
一方、サブフレーム20の側壁部20Bの後端部の上部側には、アームレスト16の幅方向に沿って回転軸(軸部)40が固定されている。回転軸40には、スライド機構35の他の一部を構成するロックユニット(係合部材)48が回転可能(回動可能)に支持されている。
【0046】
ロックユニット48は、押圧板50及び係合部52を含んで構成されている。押圧板50はロックユニット48の前部側に設けられ、サブフレーム20側に配置されている。一方、係合部52はロックユニット48の後端部に設けられ、ベースフレーム18側に配置されている。
【0047】
押圧板50は矩形板状に形成されており、押込みパッド44の下方側において、略水平に配置され、押込みパッド44を押圧すると回転軸40を中心に押圧板50は下方側へ移動する。押圧板50におけるアームレスト16の幅方向の中央部には、ぜんまいばね30の先端部がネジ止め等によって固定されており、押圧板50及び回転軸40を介してサブフレーム20をベースフレーム18側(シート後方側)へ付勢している。
【0048】
また、押圧板50におけるアームレスト16の幅方向の両端部からは略矩形枠状の線状部材54が延出されている。この線状部材54は、押圧板50の後方側へ向かうにつれて下方側へ向かって傾斜しており、線状部材54の先端部に係合部52が設けられ、当該係合部52は押圧板50と略平行となるように屈曲して形成されている。この係合部52がラック部材34の被係合部34Aに対して係合可能とされている。
【0049】
また、線状部材54は、3カ所の屈曲点54A、54B、54Cを有しており、屈曲点54Aは、回転軸40が配置される部位に設けられている。屈曲点54Aには、図示はしないが、例えば、回転軸40が挿通可能な支持部が形成されており、当該支持部に対して回転軸40が貫通している。この回転軸40を介してロックユニット48は回転可能に支持されている。また、屈曲点54B、54Cは、被係合部34Aの高さ寸法に合わせて形成されており、被係合部34Aに対して係合部52が係止されるように両者の離間距離が設定されている。
【0050】
一方、回転軸40には、図示しないトーションバネ(第2付勢部材)が設けられている。トーションバネの一端部は当該支持部に接続されると共に、トーションバネの他端部はサブフレーム20の側壁部20Bに接続されており、当該トーションバネは、被係合部34Aに対して係合部52を係合させる方向へロックユニット48を付勢している。つまり、押込みパッド44を押圧した状態(押圧状態)が解除されると、回転軸40を中心に押圧板50は上方側へ移動し被係合部34Aに対して係合部52が係合される。
【0051】
(アームレストの作用及び効果)
次に、本実施の形態に係るアームレストの作用及び効果について説明する。
【0052】
図2に示されるように、本実施形態では、アームレスト16は、ベースフレーム18、サブフレーム20及びスライド機構35を備えている。
【0053】
当該ベースフレーム18は、シート前後方向に沿って配置されており、サブフレーム20は、ベースフレーム18に設けられ、当該ベースフレーム18に対してシート前後方向に沿ってスライド移動可能とされている。また、スライド機構35は、サブフレーム20に設けられた押込みパッド44が押圧されると当該サブフレーム20をシート前後方向に沿ってスライド移動可能とし、押込みパッド44が押圧された状態が解除されると当該サブフレーム20のスライド移動を規制する(後述する)。
【0054】
このように、本実施形態では、
図5(A)、(B)に示されるように、サブフレーム20をシート前後方向に沿ってスライド移動させることによって、体格差による腕の長さに合わせてアームレスト16の長さを簡単に調整することができる。
【0055】
また、本実施形態では、アームレスト16に手を載せた状態で手首で押込みパッド44を上方側から押圧することができる。そして、当該押込みパッド44を上方側から押圧するだけでサブフレーム20をシート前後方向に沿ってスライド移動させることができる。このため、本実施形態では、比較例として、図示はしないが、サブフレーム20をシート前後方向の後方側へ引っ張ることで当該サブフレーム20をシート前後方向に沿ってスライド移動させるという構成からすると、アームレスト16の操作が楽になり使い勝手がよい。
【0056】
ここで、スライド機構35について具体的に説明する。
【0057】
本実施形態では、当該スライド機構35は、
図2に示されるように、複数の被係合部34A及びロックユニット48を含んで構成されている。複数の被係合部34Aは、ベースフレーム18に設けられており、シート前後方向に沿って形成されている。一方、ロックユニット48は、サブフレーム20側に設けられており、ロックユニット48の一部を構成する係合部52は、ベースフレーム18側に配置され複数の被係合部34Aに対して係合又は係合解除可能とされる。
【0058】
本実施形態では、
図6、
図8に示されるように、被係合部34Aに対して係合部52が係合されることによって、サブフレーム20はスライド移動が規制され、
図7に示されるように、係合部52の係合状態が解除される(いわゆる係合解除)ことによって、サブフレーム20はスライド移動が可能となる。
【0059】
本実施形態では、押込みパッド44がサブフレーム20の上方側に設けられており、ロックユニット48は、シート幅方向に沿って配置された回転軸40周りを回転可能に支持されている。さらに、当該ロックユニット48は、押圧板50を含んで構成されている。
【0060】
この押圧板50はサブフレーム20側に配置されており、押込みパッド44が押圧されると回転軸40を中心に押圧板50は下方側へ向かって押圧される。一方、係合部52は、ベースフレーム18側に配置されており、押圧板50が下方側へ向かって押圧されると、回転軸40を中心に上方側へ向かって移動し被係合部34Aに対して係合部52が係合解除される。これにより、サブフレーム20はシート前後方向に沿ってスライド移動可能となる。
【0061】
ここで、本実施形態では、回転軸40には、図示しないトーションバネが設けられており、当該トーションバネは、
図6に示されるように、押圧板50が略水平に配置された状態では、被係合部34Aに対して係合部52を係合させる方向へロックユニット48を付勢している。つまり、係合部52は被係合部34Aに対して係合され、サブフレーム20はスライド移動が規制される。
【0062】
そして、
図7に示されるように、押込みパッド44を介して押圧板50を押圧している状態では、トーションバネには弾性エネルギが蓄積される。したがって、
図8に示されるように、押込みパッド44を押圧している状態(押圧状態)が解除されると、トーションバネの付勢力により押圧板50は上方側へ向かって移動し元の状態に戻り、係合部52は下方側へ向かって移動する。これにより、係合部52は被係合部34Aに対して係合され、サブフレーム20はスライド移動が規制される。
【0063】
なお、本実施形態では、被係合部34Aは、複数設けられているため、被係合部34Aが設けられた数だけサブフレーム20においてシート前後方向に沿った位置を設定することが可能となる。つまり、アームレスト16の長さにおいて微調整が可能となる。
【0064】
一方、本実施形態では、スライド機構35は、
図4に示されるように、ぜんまいばね30をさらに含んで構成されている。このぜんまいばね30はベースフレーム18側に設けられると共に、当該ぜんまいばね30の先端部はサブフレーム20側に設けられたロックユニット48の押圧板50に固定されており、押圧板50及び回転軸40を介してサブフレーム20をベースフレーム18側へ付勢している。
【0065】
このため、
図8に示されるように、当該サブフレーム20が前方側へ向かってスライド移動すると、ぜんまいばね30には弾性エネルギが蓄積される。この状態で、押込みパッド44を介して係合部52を上方側へ向かって移動させ係合部52を被係合部34Aに対して係合解除させると、サブフレーム20は前後方向に沿ってスライド可能とされる。このとき、ぜんまいばね30による付勢力によってサブフレーム20はベースフレーム18側(後方側)へスライド移動可能となる。
【0066】
以上のような構成により、本実施形態では、サブフレーム20に設けられた押込みパッド44を介して押圧板50を下方側へ向かって押圧し、被係合部34Aに対して係合部52を係合解除させ、サブフレーム20を移動可能とする。
【0067】
このとき、サブフレーム20が前方側へ向かってスライド移動すると、ぜんまいばね30には弾性エネルギがさらに蓄積される。このように、ぜんまいばね30には弾性エネルギが蓄積されるため、サブフレーム20が後方側へ向かってスライド移動する際は、ぜんまいばね30による付勢力によってベースフレーム18側(後方側)へスライド移動可能となる。
【0068】
但し、サブフレーム20を移動させる際は、被係合部34Aに対して係合部52を係合解除させる必要があるため、押込みパッド44を介して押圧板50が下方側へ向かって押圧された状態が維持される必要がある。
【0069】
ところで、本実施形態では、
図5(A)に示されるように、サブフレーム20の前端部には、操作パネル46が設けられている。操作パネル46には、車両ECU56に接続され、シートクッション12をシート前後方向に沿ってスライドさせたりシートバック14をリクライニングさせたりする装置と接続された操作部(図示省略)が設けられている。
【0070】
本実施形態では、操作パネル46は、アームレスト16の前方側へ向かうにつれて上方側へ向かって傾斜するように配置されており、乗員が操作しやすいように設定されている。このため、シートクッション12やシートバック14を操作する際に、乗員は着座姿勢を維持した状態でアームレスト16に手を載せたままこれらの操作が可能となるため、便利である。
【0071】
なお、当該操作部は、シートクッション12やシートバック14を操作する装置以外にも車両ECU56に接続された空調装置、オーディオ、ナビゲーションシステム等を操作する装置と接続されてもよい。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る車両用シート10のアームレスト16について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両用シート10のアームレスト16は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。
【符号の説明】
【0073】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
16 アームレスト
18 ベースフレーム(ベース部材)
20 サブフレーム(スライド部材)
30 ぜんまいばね(第1付勢部材)
34A 被係合部(スライド機構)
35 スライド機構
40 回転軸(軸部)
44 押込みパッド(押圧部)
46 操作パネル
48 ロックユニット(係合部材、スライド機構)
50 押圧板(係合部材)
52 係合部(係合部材)
56 車両ECU