(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009572
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】蓋材
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20250110BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/28 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112667
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】関口 朋伸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 圭一
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 侑哉
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA28
4F100AB10A
4F100AB33A
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK24B
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4F100GB18
4F100JL12B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】ガラス容器に対しても高いシール性を有しながらも、剥離の際にガラス容器側にヒートシール剤の一部が残りにくい蓋材を提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の少なくとも一方の面にヒートシール層とを含む蓋材であって、前記ヒートシール層がエチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を20~80重量%含むことを特徴とする蓋材に係る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面にヒートシール層とを含む蓋材であって、前記ヒートシール層がエチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を20~80重量%含むことを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記ヒートシール層が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酸化ビニル、エチレンビニルアルコール共重合樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
基材の厚さが7~30μmである、請求項1に記載の蓋材。
【請求項4】
ヒートシール層の積層量が、乾燥重量で10~30g/cm2である、請求項1に記載の蓋材。
【請求項5】
少なくともガラス製開口部を含む容器の当該ガラス製開口部にヒートシール層を接するようにしてヒートシールして密閉するために用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な蓋材に関する。より具体的には、本発明は、容器(特にガラス容器)を閉じるために使用される蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品、医薬品等を収容する容器を密閉するために蓋材が用いられている。蓋材としては、シーラント層を備えたシール型の蓋材のほか、王冠、スクリュー蓋、紙蓋等のように様々な種類がある。この中でも、特に、製造コストも安く、密閉も容易であるうえ、付着防止機能、印刷等を付加しやすいシール型の蓋材がよく用いられている。
【0003】
こうしたシール型の蓋材としては、紙容器、プラスチック容器等に対してシール性の高いヒートシール剤を用いた複層構造のものが知られている。例えば、エチレンメチルアクリレートコポリマーと、エチレンビニルアセテートコポリマーと、ポリアミドワックスとを含むヒートシール剤を用いた蓋が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような蓋材は、紙製又はプラスチック製の容器に対しては良好なシール性と剥離性を有するものの、ガラス容器に対してはシール性が不十分であり、満足できる密閉状態が得られないことがある。この場合、シール性を高めようとすると、剥離が困難になるだけでなく、開封の際にガラス容器側にヒートシール剤の一部が残ってしまい、ガラス容器(例えば瓶類)に直接に口をつけて飲食するような場合には不快感を抱くおそれがある。
【0006】
従って、本発明の主な目的は、ガラス容器に対しても高いシール性を有しながらも、剥離の際にガラス容器側にヒートシール剤の一部が残りにくい蓋材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の層構成を有する蓋材が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の蓋材に係る。
1. 基材と、前記基材の少なくとも一方の面にヒートシール層とを含む蓋材であって、前記ヒートシール層がエチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を20~80重量%含むことを特徴とする蓋材。
2. 前記ヒートシール層が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン酸化ビニル、エチレンビニルアルコール共重合樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含む、前記項1に記載の蓋材。
3. 基材の厚さが7~30μmである、前記項1に記載の蓋材。
4. ヒートシール層の積層量が、乾燥重量で10~30g/cm2である、前記項1に記載の蓋材。
5. 少なくともガラス製開口部を含む容器の当該ガラス製開口部にヒートシール層を接するようにしてヒートシールして密閉するために用いられる、前記項1~4のいずれか1項に記載の蓋材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容器に対して高いシール性を有しながらも、剥離の際に容器側にヒートシール剤の一部が残りにくい蓋材を提供することができる。
【0010】
特に、本発明では、ヒートシール層中に、特定量のエチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を含有させているので、特にガラス容器に対しても優れたシール性を発揮することができる一方、蓋材を容器から剥がした際にもヒートシール成分がガラス容器側に残存しにくいという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体の化学構造を示す模式図である。
【
図3】エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA、
図3(a))、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA、
図3(b))、エチレン-アクリル酸共重合体(EMA、
図3(c))の化学構造を示す模式図である。
【
図4】本発明の蓋材を用いて容器開口部を密閉した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.蓋材
本発明の蓋材は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面にヒートシール層とを含む蓋材であって、前記ヒートシール層がエチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を20~80重量%含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の蓋材は、基材(基材フィルム)及びヒートシール層を有し、基材表面の少なくとも一方の面に直にヒートシール層が積層された構成を基本構成とする。例えば、
図1に示すように、基材の一方面にヒートシール層を備える構成を採用することができる。この場合、ヒートシール層は、容器開口部を閉じるために使用されるものであるため、少なくとも容器開口部と接する領域に形成されていれば良く、従って基材表面の全面にヒートシール層が形成されていても良い。以下においては、本発明の蓋材を構成する各層等について説明する。
【0014】
基材
本発明において基材は、蓋材の芯材として機能するものである。特に、蓋材にコシを付与し、蓋材に突き破り等に対する耐久性を付与するとともに、蓋材がガラス容器に接着されている状態で蓋材を引き剥がすにあたって蓋材が不用意に破れないように強度を持たせることができる。
【0015】
また、容器に充填される内容物が光、空気等に晒されることを嫌う場合には、基材には光の透過を抑制する機能を付与したり、外気の進入を防いだり、あるいは内容物の匂いが容器外に漏れることを防ぐという気体の透過の抑制機能を付与することもできる。
【0016】
基材の材質は、上記のような機能を有する限り、特に限定されず、例えばプラスチックス、ゴム、金属、ガラス、セラミックス、紙等の各種の材料を用いることができる。従って、基材を形成するための材料としては、例えば紙、合成紙、樹脂フィルム、蒸着層付き樹脂フィルム、合成樹脂板、アルミニウム箔又はその他の金属箔、金属板、織布、不織布、皮、合成皮革、木材、ガラス板等の単体又はこれらの複合材料又は積層材料を好適に用いることができる。この中でも、光又は気体の透過を防ぎつつ、所定の強度も得られるという点で、アルミニウム箔又は蒸着層付き樹脂フィルムを用いることが好ましい。
【0017】
基材は、単層であっても良いし、複層であっても良い。複層からなる基材を用いる場合の積層方法も、限定的でなく、例えばドライラミネート法、押し出しラミネート法、ウエットラミネート法、ヒートラミネート法等の公知の方法を採用することができる。また、蒸着層付き樹脂フィルムのような複層である場合は、蒸着させる金属成分(アルミニウム等)を真空状態で加熱蒸発させ、その蒸気を樹脂フィルムの表面に付着させる工程を含む方法により蒸着層を形成することができる。
【0018】
基材は、通常はフィルム又はシートの形態であれば良い。その場合の厚み(基材が複層である場合は総厚み)は、特に限定されないが、通常は7~30μm程度であり、特に12~20μmとすることが好ましい。
【0019】
ヒートシール層
本発明の蓋材では、基材の少なくとも一方の表面にヒートシール層が積層されている。ヒートシール層を容器の開口部に熱接着させることによって、本発明の蓋材で容器を密閉することができる。すなわち、本発明の蓋材のヒートシール層を備える面が、ガラス容器と接触した状態でヒートシールされて、ガラス容器が蓋されて密閉される。
【0020】
ヒートシール層は、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を20~80重量%含み、好ましくは40~80重量%含み、より好ましくは60~80重量%含む。従って、例えば70~80重量%と設定することもできる。このような含有量に設定することによって、容器(特にガラス容器)に対しても高いシール性を有しながら、蓋材を容器から剥離する際には容器側にヒートシール剤が残りにくいという効果を確実に得ることができる。上記含有量が20重量%未満である場合は、シール性が弱く、意図しないときに蓋材が剥がれるおそれがある。上記含有量が80重量%を超えると、容器にヒートシールした際に一部でブロッキングを生じ、容器を密閉できなくなるおそれがある。
【0021】
また、上記のように、本発明の蓋材では、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体の含有量は40~80重量%であることは、ヒートシール温度によらず、高いシール性と剥離性が得られるという点でも望ましい。
【0022】
ここで、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(以下「ET」と略記することもある。)は、
図2に示すような構造をしており、ポリエチレン骨格(-(CH
2-CH
2)-の繰り返し構造)のメチレン鎖の中にメチルアクリレート(
図2中の〇で示す部分)と無水マレイン酸(
図2中の△で示す部分)がランダムに共重合した構造となっている。エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体は、熱安定性に優れるほか、OH基との反応性に優れ、特にガラス容器との接着性が良好である一方で、積層量(積層厚さ)の均一性が高いために、ガラス容器から蓋材を剥離する際にも、ガラス容器側にヒートシール剤の一部が残りにくいという効果を発揮することができる。
【0023】
エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体は、文字通り、エチレンモノマー、メチルアクリレート(アクリル酸メチル)モノマー及び無水マレイン酸モノマーの3成分を含む共重合体である。
【0024】
この場合、各モノマーの割合は、例えばエチレンモノマー70~90重量%程度、メチルアクリレート(アクリル酸メチル)モノマー5~30重量%程度、無水マレイン酸モノマー1~10重量%程度とすることができるが、本発明の効果を妨げない限りは、これらの割合に限定されない。
【0025】
このようなエチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体としては、公知又は市販のものを使用できる。また、公知の製造方法によって得られるエチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体も使用することができる。市販品としては、例えば製品名「レクスパールET220X」、「レクスパールET220H」、「レクスパールET230X」、「レクスパールET330H」、「レクスパールET350X」、「レクスパールET530H」、「レクスパールET720X」(いずれも日本ポリエチレン株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
これに対し、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体に近い構造を有する、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA、
図3(a))、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA、
図3(b))、エチレンーアクリル酸共重合体(EMA、
図3(c))では、こうした効果が得られない。ただし、本発明の効果を妨げない範囲内において、これらの成分が含まれていて良い。
【0027】
ヒートシール層においては、本発明の効果を妨げない限りは、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体以外の成分が含まれていても良い。例えば、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体以外の樹脂成分(以下「第2樹脂成分」ともいう。)、充填粒子、粘着付与剤、ブロッキング防止剤、着色材、増粘剤等の各種の添加剤が挙げられる。
【0028】
特に、本発明では、ヒートシール層において、第2樹脂成分が含まれていることが好ましく、特に熱可塑性樹脂が含まれていることがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂のほか、エチレン酸化ビニル(EVA)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、エチレン酢酸ビニル共重合体等の少なくとも1種が挙げられる。この中でも、第2樹脂成分として、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にポリエチレン(PE)が適度な接着性と剥離性の観点でより好ましい。ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)等のいずれであっても良い。
【0029】
ヒートシール層に第2樹脂成分を含む場合、ヒートシール層中の第2樹脂成分の含有量は、特に限定されず、例えば20~80重量%程度とすれば良く、特に20~60重量%とすることが好ましい。
【0030】
ヒートシール層の積層量は、所望のヒートシール強度等に応じて適宜設定すれば良く、特に限定されないが、シール強度と剥離性とのバランスとの観点から乾燥重量で10~30g/cm2程度とすることが好ましい。また、ヒートシール層の厚みは、前記積層量に応じた厚みとすれば良く、例えば5~30μm程度の範囲とすることができるが、これに限定されない。
【0031】
その他の層
本発明では、必要に応じて、基材のヒートシール層を備える面とは反対の面に、公知の蓋材等で採用されている層を形成しても良い。例えば、OP層(オーバープリント層)、印刷層、接着剤層、表面保護層等の少なくとも1種が挙げられる。
【0032】
2.蓋材の製造方法
本発明の蓋材は、基材の片面又は両面にヒートシール層を形成する工程を含む方法によって製造することができる。
【0033】
この方法としては、例えばa)予め形成されたヒートシール層形成用フィルム(シーラントフィルム)を基材にラミネートする工程、b)基材用原料とヒートシール層形成用樹脂組成物とを溶融しながら共押出する工程、c)ヒートシール層形成用塗工液を基材上に塗布する工程等のいずれかを含む方法が挙げられる。これらの工程は、公知又は市販の装置を用いて実施することもできる。
【0034】
これらの中でも、本発明では、ヒートシール層の厚みが均一とすることができ、ガラス容器から蓋材を剥離する際にも、ガラス容器側にヒートシール剤の一部が残りにくいという理由から、特に上記a)の工程を採用することが望ましい。
【0035】
上記a)の工程では、ヒートシール層形成用フィルムは、前記のような各成分を含む混合物を調製した後、これをフィルム状に成形することによって得ることができる。前記の成形方法は、特に限定されず、例えば溶融押出成形法(Tダイ法、インフレーション法)、溶液キャスティング成形法等のいずれも採用することができる。特に、本発明では、溶融押出成形法として、基材の1層を構成し得る樹脂フィルム上に前記混合物の溶融物の皮膜を形成する方法を好適に採用することができる。
【0036】
この場合の樹脂フィルムとしては、前記のように基材として使用される各種の樹脂を挙げることができ、特にポリオレフィン系樹脂のフィルムを好適に用いることができる。より具体的には、厚み10~30μm程度のポリオレフィン系樹脂フィルムの片面上に、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を20~80重量%含む混合物を150~200℃程度に加熱した溶融物を付与し、その皮膜を前記ポリオレフィン系樹脂フィルム上に形成することによって、「基材B/ヒートシール層」の積層体としてヒートシール層形成用フィルムを得ることができる。これは、そのまま本発明の蓋材とすることも可能であるが、基材としての機能を強化するため、次の工程でさらに基材Aと積層することが好ましい。
【0037】
次いで、別途用意された基材Aと、前記ヒートシール層形成用フィルムの基材B側とを必要に応じて接着剤を用いて積層することによって、「基材A/基材B/ヒートシール層」を含む蓋材を得ることができる。この場合に用いられる接着剤としては、特に制限されず、例えば市販のポリエステル系接着剤等を使用することができる。この場合の基材Aとして、前記で例示したものを採用することができる。例えば、アルミニウム箔/PETからなる積層体を基材Aとして用い、アルミニウム箔側と前記ヒートシール層形成用フィルムの基材B側と積層することによって、上記のような「基材A/基材B/ヒートシール層」(すなわち「PET/Al箔/基材B/ヒートシール層」)を含む蓋材を好適に作製することができる。
【0038】
3.蓋材の使用
本発明の蓋材は、各種の容器を密閉するために使用することできる。特に、本発明の蓋材におけるヒートシール層はガラスに対する接着性に優れているため、少なくともガラス製開口部を含む容器の当該ガラス製開口部にヒートシール層を接するようにしてヒートシールして密閉するために好適に用いることができる。
【0039】
その使用形態の一例を
図4に示す。
図4は、本発明の蓋材10によって、容器21の開口部を密封した状態の断面図を示す。容器21は、その開口部の周縁部にフランジ21aが形成されている。フランジ21aは、上方からみると略円形状又は略多角形状となっている。そのフランジ21a面に蓋材10のヒートシール層12を当接させた状態でヒートシールし、ヒートシール領域HSを介して蓋材10と容器21とが接合される。これによって、容器21の空間内部が密閉され、その内容物(図示せず)が保護されることになる。
図4の容器ではフランジ21aが形成されているが、所定のヒートシールが可能な限り、フランジのない容器又はその他の形状の容器であっても良い。
【0040】
この場合、少なくとも容器開口部(あるいはフランジ21a)の上面がガラス製である場合でも、本発明の蓋材を強固に接合させることができる一方、開封時において蓋材を容器から取り外す場合でも、容器側にヒートシール層が残存することを防止したり、あるいは低減することができる。従って、例えばガラス容器(ガラスビン等を含む。)の蓋材として、本発明の蓋材を好適に用いることができる。この場合の内容物は、限定的でなく、例えば飲食品、医薬品、化粧品、化学品等の各種の製品・物品を挙げることができる。
【実施例0041】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0042】
[実施例1]
基材として、厚さ12μmの市販のポリエチレンテレフタレート(PET)に、市販の接着剤(ポリエステル系樹脂)を乾燥重量で3g/m2塗布し、ここに厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム社製、1N30)を貼り合わせて積層した。このようにして、基材を作製した。
次に、ヒートシール層として、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体(日本ポリエチレン株式会社製、レクスパールET350X、以下「ET」)を80wt%と、市販のポリエチレン(PE)を20wt%とをドライブレンド混合して180℃押出機にて20μm厚のポリエチレン(PE)フィルム上に10μm厚(乾燥重量で10g/cm2)となるように、シーラントフィルムを作製した。
続いて、上述の基材のアルミニウム箔が露出した側の面に、市販の接着剤(ポリエステル系樹脂)を乾燥重量で3g/m2塗布し、ここに上述のシーラントフィルムのポリエチレンフィルム側の面を貼り合わせた。これにより、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(ET80:PE20)」(接着剤層の表記は省略する。)の蓋材のサンプルを得た。なお、表1には、本実施例のヒートシール層の組成(接着樹脂成分)を示し、表1中「共重合体」はET、「その他」はET以外の第2樹脂成分を示す(以下、他の実施例、比較例においても同様。)。
【0043】
[実施例2]
ヒートシール層として、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を50wt%、ポリエチレンを50wt%とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(ET50:PE50)」の蓋材のサンプルを得た。
【0044】
[実施例3]
ヒートシール層として、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を40wt%、ポリエチレンを60wt%とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(ET40:PE60)」の蓋材のサンプルを得た。
【0045】
[実施例4]
ヒートシール層として、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を20wt%、ポリエチレンを80wt%とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(ET20:PE80)」の蓋材のサンプルを得た。
【0046】
[比較例1]
ヒートシール層として、エチレン-メチルアクリレート共重合体(日本ポリエチレン株式会社製、レクスパールEMA、以下「EMA」)を30wt%と、市販のエチレン酸化ビニル(EVA)を50wt%、市販のポリアミドワックス(PA)を5wt%、残部にポリエチレン(PE)を15wt%とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(EMA30:EVA50:PA5:PE15)」の蓋材のサンプルを得た。
【0047】
[比較例2]
ヒートシール層として、エチレン-メチルアクリレート共重合体(日本ポリエチレン株式会社製、レクスパールEMA、以下「EMA」)を80wt%と、市販のポリエチレン(PE)を20wt%とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(EMA80:PE20)」の蓋材のサンプルを得た。
【0048】
[比較例3]
ヒートシール層として、エチレン-エチルアクリレート共重合体(日本ポリエチレン株式会社製、レクスパールEEA、以下「EEA」)を80wt%と、市販のポリエチレン(PE)を20wt%とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(EEA80:PE20)」の蓋材のサンプルを得た。
【0049】
[比較例4]
ヒートシール層として、エチレン-アクリル酸共重合体(日本ポリエチレン株式会社製、レクスパールEEA、以下「EAA」)を80wt%と、市販のポリエチレン(PE)を20wt%とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(EAA80:PE20)」の蓋材のサンプルを得た。
【0050】
[比較例5]
ヒートシール層として、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を10wt%、ポリエチレンを90wt%とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(ET10:PE90)」の蓋材のサンプルを得た。
【0051】
[比較例6]
ヒートシール層として、エチレン-メチルアクリレート-無水マレイン酸共重合体を10wt%、ポリエチレンを90wt%とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(ET90:PE10)」の蓋材のサンプルを得た。
【0052】
[比較例7]
ヒートシール層として、エチレン-メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで結合したアイオノマー(三井・ダウポリケミカル株式会社製、ハイミラン1652)とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(アイオノマー)」の蓋材のサンプルを得た。
【0053】
[比較例8]
ヒートシール層として、ポリオレフィン系接着剤として知られる、無水マレイン酸で変性されたエチレンプロピレンランダム共重合体(三井化学社製、アドマーQE060)とした以外は、実施例1と同様にして、「PET/アルミニウム箔/PE/ヒートシール層(ポリオレフィン)」の蓋材のサンプルを得た。
【0054】
[試験例1]
各実施例及び比較例で得られた蓋材をそれぞれ7mm×100mmに裁断し、ヒートシール層を、ガラス容器に見立てた市販のガラス板と対向させてヒートシールにより貼り合わせた。このとき、ヒートシール条件は、(a)低温シール条件として140℃で3kg/cm2で2秒及び(b)高温シール条件として240℃で3kg/cm2で2秒、という2つの条件でそれぞれ実施した。
次いで、ヒートシールにより接着された蓋材とガラス板との接着強度を測定した。具体的には、室温(20℃)中で引張試験機(株式会社東洋精機 ストログラフVE50D)を用い、蓋材端をガラス板から少し剥がして、蓋材を45°曲げ、積層界面が45°で剥がれる状態で、剥離速度100mm/分、チャック間距離100mmにて行った。その結果を表1に示す。
なお、本願明細書で意味するところの剥離強度(N/15mm幅)は、上記のサンプル幅7mmの短冊状の試料で剥離強度を測定し、その値を試料幅15mmとした時の剥離強度に換算(15/7倍)したものである。
また、総合評価として、表1においては、低温シール条件及び高温シール条件のいずれの場合も、必要十分なシール強度である5N/15mm幅以上であったものをシール性「〇」とし、低温シール条件では5N/15mm幅を下回っていたものの、高温シール条件では5N/15mm幅以上であったものをシール性「△」とし、低温シール条件でも高温シール条件でも、5N/15mm幅を下回っていたものをシール性「×」と表記した。なお、比較例6及び比較例7では、高温シール条件では5N/15mm幅を超えていたが、ブロッキングを起こしたため、ガラス容器を密閉できないとみなし、シール性「×」と表記した。
【0055】
[試験例2]
蓋材の剥離性の試験を行った。上述の試験例1において、ガラス板から蓋材を剥離した後にガラス板上のヒートシール層(ヒートシール剤)の残存状態を目視にて観察した。その結果を表1に示す。
ガラス板上にヒートシール層の一部が残ったものが目視で確認できなかったものを剥離性「〇」とし、ヒートシール層がガラス板上に目視で確認できたものを剥離性「×」と表記した。
また、試験例1、2の結果において、いずれも〇のものを総合評価「〇」とし、シール性△であるが剥離性〇であるものを総合評価「△」とし、シール性と剥離性の少なくともいずれかが×であるものを総合評価「×」として判定した。
【0056】
【0057】
以上の結果からも明らかなように、本発明の蓋材は、ガラス容器に対しも高いシール性を有しながらも、剥離の際にガラス容器側にヒートシール成分が残りにくいことがわかる。特に、ヒートシール層においてETが40~80重量%、PEが20~60重量%を含む実施例1~3は、より高いシール性とともに良好な剥離性を兼ね備えていることがわかる。