(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025095812
(43)【公開日】2025-06-26
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20250619BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212118
(22)【出願日】2023-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 圭佑
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BB12
3D131BC17
3D131BC34
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB23X
3D131EB28V
3D131EB31X
3D131EB47V
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
3D131EC15V
3D131EC15X
(57)【要約】
【課題】走行時の偏摩耗やチッピングを抑制する。
【解決手段】トレッド10を有する空気入りタイヤであって、トレッド10は、タイヤ周方向に連続して延びる一対のショルダー主溝30のタイヤ軸方向外側にそれぞれ設けられ、一対の接地端Eにより区画される一対のショルダー領域40と、一対のショルダー主溝30の間に設けられるセンター領域50と、を有し、センター領域50およびショルダー領域40には、複数のブロックが配置され、トレッド10の上面視において、センター領域およびショルダー領域に配置されるブロックの中で、最も面積の大きい最大ブロックの面積は、最も面積の小さい最小ブロックの面積の1.4倍以下であることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを有する空気入りタイヤであって、
前記トレッドは、
タイヤ周方向に連続して延びる一対のショルダー主溝のタイヤ軸方向外側にそれぞれ設けられ、一対の接地端により区画される一対のショルダー領域と、
一対の前記ショルダー主溝の間に設けられるセンター領域と、
を有し、
前記センター領域および前記ショルダー領域には、複数のブロックが配置され、
前記トレッドの上面視において、前記センター領域および前記ショルダー領域に配置されるブロックの中で、最も面積の大きい最大ブロックの面積は、最も面積の小さい最小ブロックの面積の1.4倍以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記センター領域には、
前記ショルダー主溝から離れて配置され略多角形状を有するセンターブロックと、
前記センターブロックの周囲に配置されたミドルブロックと、
が設けられている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センターブロックは、略六角形形状を有する、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記センター領域および前記ショルダー領域に配置される全てのブロックには、サイプおよびスリットが設けられていない、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記最大ブロックは、前記ショルダー領域に配置される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記センターブロックの面積は、前記最大ブロックの面積の0.85倍以上である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記センター領域には、
前記センターブロックを区画し、略多角形状を有する環状溝と、
タイヤ周方向において隣り合う前記環状溝同士を連結するセンター縦溝と、
前記環状溝と前記ショルダー主溝とを連結する複数のセンター横溝と、
が設けられている、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記環状溝の溝幅は、前記ショルダー主溝の溝幅の80%以上である、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
複数の前記センター横溝は、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに傾斜している、請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記センター領域および前記ショルダー領域に配置される全てのブロックの角部は、丸みを有し、
前記丸みの曲率半径は、1.0mm以上、3.0mm以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タイヤ周方向に連続して延びる一対のショルダー主溝と、ショルダー主溝のタイヤ軸方向内側をタイヤ周方向に連続してのびる一対のクラウン主溝と、クラウン主溝とショルダー主溝との間にミドル陸部とを有するトレッドを備える空気入りタイヤが開示されている。また、特許文献1には、当該ミドル陸部は、踏面の面積がS1である第1ミドルブロックと、踏面の面積がS2である第2ミドルブロックとを有し、S1/S2が、0.9以上、1.1以下であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、空気入りタイヤには、走行時の偏摩耗やチッピングを抑制することが求められている。特に、不整地での走行が想定されるオフロードタイヤにおいては、路面からの入力が大きいため、走行時の偏摩耗やチッピングを抑制することがより求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の空気入りタイヤは、トレッドを有する空気入りタイヤであって、トレッドは、タイヤ周方向に連続して延びる一対のショルダー主溝のタイヤ軸方向外側にそれぞれ設けられ、一対の接地端により区画される一対のショルダー領域と、一対のショルダー主溝の間に設けられるセンター領域と、を有し、センター領域およびショルダー領域には、複数のブロックが配置され、トレッドの上面視において、センター領域およびショルダー領域に配置されるブロックの中で、最も面積の大きい最大ブロックの面積は、最も面積の小さい最小ブロックの面積の1.4倍以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の空気入りタイヤによれば、走行時の偏摩耗やチッピングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの半断面図である。
【
図2】実施形態の一例である空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【
図3】実験例2の空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【
図4】シミュレーションにより算出した各ブロックの縦剛性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する実施形態の各構成要素を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0009】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の半断面図であって、タイヤの内部構造を併せて図示している。
図1に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10と、トレッド10の両側に配置された一対のサイドウォール11と、サイドウォール11のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード12とを備える。また、空気入りタイヤ1は、一対のビード12の間に架け渡されるカーカス13と、を備える。空気入りタイヤ1は、オフロードでの使用が想定されている。
【0010】
トレッド10は、タイヤ周方向に連続して延びる一対のショルダー主溝30を有する。また、トレッド10は、ショルダー主溝30のタイヤ軸方向外側にそれぞれ設けられ、一対の接地端Eにより区画される一対のショルダー領域40と、一対のショルダー主溝30の間に設けられるセンター領域50とを有する。
【0011】
本明細書において、接地端Eとは、未使用の空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で、正規荷重を加えたときに平坦な路面に接地する領域のタイヤ軸方向両端と定義される。
【0012】
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAおよびETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。
【0013】
詳しくは後述するが、トレッド10のショルダー領域40およびセンター領域50には、それぞれ異なる形状を有する複数のブロックが配置されている。そして、トレッド10の上面視において、センター領域50およびショルダー領域40に配置されるブロックの中で、最も面積の大きい最大ブロックの面積は、最も面積の小さい最小ブロックの面積の1.4倍以下である。最大ブロックの面積を最小ブロックの面積の1.4倍以下とすることで、各ブロックのブロック剛性の差分を小さくすることができ、走行時の偏摩耗やチッピングを抑制することができる。なお、ブロックとは、主溝、横溝および縦溝により分断され、タイヤ径方向外側に向かって突出した凸部である。つまり、サイプにより分断された領域は、ブロックには含まれない。また、本明細書では、幅1.5mm未満の溝をサイプと定義する。換言すると、ブロックとは、幅1.5mm以上の溝により分断され、タイヤ径方向外側に向かって突出した凸部である。
【0014】
サイドウォール11は、トレッド10の両側に配置され、タイヤ周方向に沿って環状に設けられている。サイドウォール11は、空気入りタイヤ1のタイヤ軸方向外側に最も張り出した部分であって、タイヤ軸方向外側に向かって凸となるように緩やかに湾曲している。サイドウォール11は、カーカス13の損傷を防止する機能を有する。
【0015】
ビード12は、サイドウォール11のタイヤ径方向内側に配置され、ホイールのリムに固定される部分である。ビード12は、ビードコア14と、ビードフィラー15とを有する。ビードコア14は、スチール製のビードワイヤで構成され、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状部材であり、ビード12に埋設されている。ビードフィラー15は、タイヤ径方向外側に延出する先端先細り形状を有し、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状の硬質ゴム部材である。
【0016】
カーカス13は、一対のビード12の間に架け渡され、ビードコア14の周りで折り返されることで係止されている。カーカス13は、少なくとも1枚のカーカスプライから構成されている。カーカスプライは、有機繊維からなるカーカスコードがコーティングゴムで被覆されることにより構成されている。カーカスコードは、タイヤ周方向に対して実質上直角(例えば、80°以上、90°以下)に配置されている。カーカスコードに用いられる有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、およびナイロン繊維が挙げられる。
【0017】
本実施形態では、カーカス13は、3枚のカーカスプライ13A,13B,13Cで構成されている。カーカス13を3枚以上のカーカスプライ13A,13B,13Cで構成することにより、空気入りタイヤ1の耐久性を向上させることができる。なお、カーカスプライの枚数はこれに限定されず、1枚または2枚でもよい。
【0018】
空気入りタイヤ1は、カーカス13のクラウン部の外周に配置されたベルト層16と、ベルト層16の外周に配置されたベルト補強層17と、をさらに備える。つまり、ベルト層16は、カーカス13とトレッド10との間に配置され、ベルト補強層17は、ベルト層16とトレッド10との間に配置される。
【0019】
ベルト層16は、2枚のベルトプライ16A,16Bで構成されている。ベルト層16を2枚のベルトプライ16A,16Bで構成することにより、トレッド10の剛性を高めることが容易になる。なお、ベルトプライの枚数はこれに限定されず、1枚でもよいし、3枚以上でもよい。
【0020】
ベルトプライ16A,16Bは、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に配列したコードをゴム被覆することにより形成されている。ベルトプライ16A,16Bのコードの材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維、またはスチール等の金属が挙げられる。
【0021】
ベルトプライ16Aは、ベルトプライ16Bのタイヤ径方向内側に配置される。また、ベルトプライ16Aのタイヤ軸方向の長さは、ベルトプライ16Bのタイヤ軸方向の長さよりも大きい。つまり、ベルトプライ16Aの端部は、ベルトプライ16Bの端部よりもタイヤ軸方向外側に位置する。
【0022】
ベルト補強層17は、2枚のベルト補強プライ17A,17Bで構成されている。ベルト補強層17を2枚のベルト補強プライ17A,17Bで構成することにより、ベルト層16の拘束力が向上し、空気入りタイヤ1の耐久性を向上させることが容易になる。なお、ベルト補強プライの枚数はこれに限定されず、1枚でもよいし、3枚以上でもよい。また、ベルト補強プライ17A,17Bは、ベルト層16の全幅を覆うキャッププライであってもよいし、ベルト層16のタイヤ軸方向両端のみを覆うエッジプライであってもよい。
【0023】
ベルト補強プライ17A,17Bは、長さ方向に引き揃えた有機繊維コードをタイヤ周方向に対して螺旋状に連続的に巻回することで構成されている。ベルト補強プライ17A,17Bに用いられる有機繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、およびこれらの繊維からなる複合繊維が挙げられる。
【0024】
以下、
図2を参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッドパターンについて詳説する。
図2は、空気入りタイヤ1(トレッド10)の平面図である。
【0025】
図2に示すように、トレッド10は、赤道CL上の任意の点を対称の中心として点対称となる点対称パターンである。ここで、赤道CLとは、トレッド10のタイヤ軸方向中央を通るタイヤ周方向に沿った仮想線である。
【0026】
トレッド10は、タイヤ周方向に連続して延びる一対のショルダー主溝30を有する。ショルダー主溝30は、タイヤ周方向にわたってジグザグ状に延びている。なお、ショルダー主溝30は、タイヤ周方向に沿って直線状に延びていてもよい。
【0027】
ショルダー主溝30の溝幅は、接地幅Dの3%以上であることが好ましく、接地幅Dの5%以上であることがより好ましい。ショルダー主溝30の溝幅を接地幅Dの3%以上とすることにより、排水性能を向上させることができる。また、ショルダー主溝30の溝幅の上限は、例えば、接地幅Dの10%である。よって、ショルダー主溝30の溝幅は、接地幅Dの3%以上、10%以下であることが好ましく、接地幅Dの5%以上、10%以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、溝の幅とは、特に断らない限り、トレッド10の接地面に沿ったプロファイル面における幅を意味する。
【0028】
ショルダー主溝30の深さは、特に限定されないが、例えば、8.0mm以上、20.0mm以下である。なお、本明細書において、溝の深さとは、特に断らない限り、トレッド10の接地面に沿ったプロファイル面から、溝底までのタイヤ径方向に沿った長さを意味する。
【0029】
トレッド10は、一対のショルダー主溝30のタイヤ軸方向外側に設けられ、接地端Eにより区画される一対のショルダー領域40と、一対のショルダー主溝30の間に設けられるセンター領域50とを有する。センター領域50のタイヤ軸方向長さは、例えば、接地幅Dの30%以上、80%以下である。ショルダー領域40のタイヤ軸方向長さは、片側で、接地幅Dの5%以上、30%以下である。
【0030】
ショルダー領域40には、それぞれ異なる形状を有する第1ショルダーブロック41および第2ショルダーブロック42と、第1ショルダーブロック41および第2ショルダーブロック42を区画するショルダー横溝43とが設けられている。第1ショルダーブロック41と第2ショルダーブロック42とは、ショルダー横溝43を介しタイヤ周方向にわたって交互に配置されている。
【0031】
本実施形態では、第1ショルダーブロック41のタイヤ軸方向内端は、第2ショルダーブロック42のタイヤ軸方向内端よりも内側に配置されている。また、第2ショルダーブロック42は、第1ショルダーブロック41よりも一回り大きく形成されている。第1ショルダーブロック41および第2ショルダーブロック42は、赤道CL側にいくにつれてタイヤ軸方向に対して傾斜するように緩やかに湾曲した形状を有する。
【0032】
ショルダー横溝43は、ショルダー主溝30と連通し、接地端E側に向かって延びている。ショルダー横溝43の溝幅は、ショルダー主溝30の溝幅の70%以上であることが好ましく、ショルダー主溝30の溝幅の80%以上であることがより好ましい。ショルダー横溝43の溝幅をショルダー主溝30の溝幅の70%以上とすることで、排水性能を向上させることができる。また、ショルダー横溝43の溝幅は、ショルダー主溝30の溝幅の110%以下であることが好ましく、ショルダー主溝30の溝幅の100%以下であることがより好ましい。ショルダー横溝43の溝幅をショルダー主溝30の溝幅の110%以下とすることで、タイヤ軸方向外側に配置されるブロックの容積を増加させることができ、その結果、走行時の旋回性能を向上させることができる。よって、ショルダー横溝43の溝幅は、ショルダー主溝30の溝幅の70%以上、110%以下であることが好ましく、ショルダー主溝30の溝幅の80%以上、100%以下であることがより好ましい。
【0033】
また、ショルダー横溝43の深さは、例えば、ショルダー主溝30の深さの50%以上、100%以下である。また、ショルダー横溝43の深さは、ショルダー横溝43の長さ方向にわたって略均一でもよいし、ショルダー横溝43の長さ方向において異なっていてもよい。例えば、ショルダー横溝43は、タイヤ軸方向外側にいくにつれて深さが小さくなる領域を有していてもよい。
【0034】
センター領域50には、ショルダー主溝30から離れて配置され、略多角形状を有するセンターブロック51と、センターブロック51の周囲に配置された第1ミドルブロック52および第2ミドルブロック53とが設けられている。本実施形態では、センターブロック51のタイヤ軸方向両側に第1ミドルブロック52が1つずつ配置され、センターブロック51のタイヤ周方向両側に第2ミドルブロック53が2つずつ配置されている。つまり、センターブロック51と、センターブロック51のタイヤ軸方向両側にそれぞれ配置された第1ミドルブロック52を第1ブロック群とし、2つの第2ミドルブロック53を第2ブロック群とした場合、第1ブロック群と第2ブロック群とは、タイヤ周方向にわたって交互に配置されている。
【0035】
センターブロック51は、略六角形形状を有することが好ましい。センターブロック51を略六角形状とすることで、センターブロック51の容積を確保することが容易になり、センターブロック51のブロック剛性を向上させることができる。その結果、センターブロック51の摩耗およびチッピングを抑制できる。
【0036】
また、センター領域50には、センターブロック51を区画し、略多角形状を有する環状溝54と、タイヤ周方向において隣り合う環状溝54同士を連結するセンター縦溝55と、環状溝54とショルダー主溝30とを連結する2本のセンター横溝56,57とが設けられている。
【0037】
本実施形態では、環状溝54、センター縦溝55、およびセンター横溝56,57は、いずれも略同一の溝幅を有する。各溝の幅は、ショルダー主溝30の溝幅の70%以上であることが好ましく、ショルダー主溝30の溝幅の80%以上であることがより好ましい。各溝の幅をショルダー主溝30の幅の70%以上とすることで、排土性能を向上させることができる。各溝の幅の上限は、例えば、ショルダー主溝30の溝幅の120%である。なお、環状溝54の溝幅は、センター縦溝55、およびセンター横溝56,57の溝幅よりも大きくてもよい。また、センター横溝56,57の溝幅は、センター縦溝55の溝幅よりも大きくてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、環状溝54、センター縦溝55、およびセンター横溝56,57は、いずれも略同一の深さを有する。各溝の深さは、例えば、ショルダー主溝30の深さの50%以上、100%以下である。
【0039】
センター縦溝55は、タイヤ軸方向に隣り合う第2ミドルブロック53同士を区画している。センター縦溝55は、タイヤ周方向に対して傾斜した方向に沿って延びている。タイヤ周方向に対するセンター縦溝55の延伸方向の傾斜角度は、例えば、30°以上、60°以下である。なお、センター縦溝55は、タイヤ周方向に沿って延びていてもよい。
【0040】
センター横溝56,57は、タイヤ軸方向に対して互いに逆向きに傾斜している。これにより、環状溝54に侵入した土、泥、水等の異物が、効率的に排出されやすくなり、排水性能および排土性能を向上させることができる。また、センター横溝57は、ショルダー主溝30を介して、ショルダー横溝43と対向配置されている。これにより、土、泥、水等の異物が、ショルダー横溝43を介して効率的に排出されやすくなり、排水性能および排土性能をより向上させることができる。
【0041】
ここで、トレッド10の上面視において、センター領域50およびショルダー領域40に配置されるブロックの中で、最も面積の大きい最大ブロックの面積は、最も面積の小さい最小ブロックの面積の1.4倍以下である。本発明者らの検討の結果、最大ブロックの面積を最小ブロックの面積の1.4倍以下とすることで、各ブロックのブロック剛性の差分を小さくすることができ、走行時の偏摩耗やチッピングを抑制することができることを見出した。換言すると、最大ブロックの面積が最小ブロックの面積の1.4倍を超えると、ブロック剛性の小さい最小ブロックにおいて偏摩耗やチッピングが発生する傾向がある。なお、上記のブロックの面積とは、トレッド10の接地面に沿ったプロファイル面におけるブロックの面積を意味する。
【0042】
最大ブロックの面積は、最小ブロックの面積の1.4倍以下であればよいが、最小ブロックの面積の1.38倍以下であることが好ましく最小ブロックの面積の1.36倍以下であることがより好ましい。最大ブロックの面積と最小ブロックの面積との差分を小さくすることで、走行時の偏摩耗やチッピングをより抑制することができる。一方、最大ブロックの面積と最小ブロックの面積との差分が過度に小さくなると、走行時の旋回性能が低下する場合がある。よって、最大ブロックの面積は、最小ブロックの面積の1.2倍以上であることが好ましい。
【0043】
本実施形態では、第2ショルダーブロック42の面積が最も大きく、第1ミドルブロック52の面積が最も小さい。つまり、第2ショルダーブロック42が最大ブロックに相当し、第1ミドルブロック52が最小ブロックに相当する。
【0044】
最大ブロックはショルダー領域40に配置されることが好ましい。上記のように最大ブロックの面積と最小ブロックの面積との差分を小さくすると、走行時の旋回性能が低下する場合がある。そして、最大ブロックをショルダー領域40に配置することで、タイヤ軸方向外側に配置されるブロックの剛性が増加し、旋回性能を向上させることができる。つまり、最大ブロックの面積を最小ブロックの面積の1.4倍以下としつつ、最大ブロックをショルダー領域40に配置することで、旋回性能を確保しつつ、走行時の偏摩耗やチッピングを抑制することができる。
【0045】
また、センターブロック51の面積は、最大ブロック、すなわち、第2ショルダーブロック42の面積の0.85倍以上であることが好ましく、0.90倍以上であることがより好ましい。センターブロック51は、タイヤ軸方向の中央に配置されるため、他のブロックに比べ偏摩耗およびチッピングが生じやすい。そこで、センターブロック51の面積を第2ショルダーブロック42の面積の0.85倍以上とすることで、センターブロック51の剛性を確保することができ、センターブロック51における偏摩耗やチッピングが抑制される。
【0046】
また、センターブロック51の面積は、最大ブロック、すなわち、第2ショルダーブロック42の面積の0.98倍以下であることが好ましく、0.95倍以下であることがより好ましい。センターブロック51の面積を第2ショルダーブロック42の面積の0.85倍以上とすることで、ショルダー領域40に配置されるブロックの容積を確保できる。これにより、旋回性能を確保しつつ、走行時の偏摩耗やチッピングを抑制することができる。よって、センターブロック51の面積は、最大ブロックの面積の0.85倍以上、0.98倍以下であることが好ましく、0.90倍以上、0.95倍以下であることがより好ましい。
【0047】
本実施形態では、上記の通り、ショルダー領域40には2種類の形状を有するブロックが配置され、センター領域50には、3種類の形状を有するブロックが配置されている。つまり、トレッド10の全体には、5種類の形状を有するブロックが配置されている。
【0048】
また、
図2に示すように、ショルダー領域40およびセンター領域50に配置される全てのブロックには、サイプおよびスリットが設けられていない。この場合、ショルダー領域40およびセンター領域50に配置される各ブロックのブロック剛性を向上させることができる。その結果、走行時の偏摩耗やチッピングを抑制することができる。なお、本明細書では、幅1.5mm以上の溝をスリットと定義する。
【0049】
また、ショルダー領域40およびセンター領域50に配置される全てのブロックの角部は、丸みを有する。ここで、当該丸みの曲率半径は、1.0mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。当該丸みの曲率半径を1.0mm以上とすることで、走行時のチッピングをより抑制することができる。また、当該丸みの曲率半径は、3.0mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましい。当該丸みの曲率半径を3.0mm以下とすることで、各ブロックの容積を確保することができる。その結果、各ブロックのブロック剛性を確保することができる。よって、当該丸みの曲率半径は、1.0mm以上、3.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以上、2.5mm以下であることがより好ましい。
【0050】
以上のように、ショルダー領域40およびセンター領域50に配置されるブロックの中で、最も面積の大きい最大ブロックの面積を、最も面積の小さい最小ブロックの面積の1.4倍以下とすることで、各ブロックのブロック剛性の差分を小さくすることができ、走行時の偏摩耗やチッピングを抑制することができる。
【0051】
なお、上記の実施形態は、本開示の目的を損なわない範囲で適宜変更できる。例えば、上記の実施形態では、トレッド10は、赤道CL上の任意の点を対称の中心として点対称となる点対称パターンであるが、トレッド10のパターン配置はこれに限定されない。例えば、トレッド10は、赤道CLを対象軸として線対称となる線対称パターンであってもよい。また、トレッド10は、上記の点対称パターンおよび線対称パターン以外のパターンであってもよい。
【実施例0052】
以下、実験例を示すが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0053】
<実験例1>
図2に示すトレッドパターンを有する空気入りタイヤT1(タイヤサイズ:37X12.50R17LT、接地幅D:250mm)について、有限要素に分割したFEMモデルを作成した。そして、当該FEMモデルを用いたコンピューターシミュレーションにより、トレッドを構成する各ブロックの縦剛性を算出した。なお、縦剛性とは、トレッドに対して上方から下方に向けて加わる縦荷重に抗する剛性である。また、シミュレーションでは、タイヤを規定リムに装着し、規定内圧(150kPa)にした状態で上記剛性を算出した。
【0054】
<実験例2>
実験例2の空気入りタイヤT2のトレッドパターンを
図3に示す。なお、実験例2の空気入りタイヤT2は、トレッドパターン以外の構成は実験例1と共通である。また、
図3においては、上記実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0055】
図3に示すように、実験例2のトレッド10Aは、実験例1のトレッド10(
図2参照)と同様に点対称パターンであり、センターブロック51、第1ミドルブロック52、第2ミドルブロック53、第1ショルダーブロック41、および第2ショルダーブロック42を有する。なお、実験例2のトレッド10Aは、各ブロックにサイプ60が形成されている点で実験例1のトレッド10と異なる。また、実験例2のトレッド10Aは、センターブロック51、第1ミドルブロック52、および第2ミドルブロック53に各ブロックの内部で終端するスリット61,62,63が形成されている点で実験例1のトレッド10と異なる。
【0056】
実験例1および実験例2のトレッドに含まれる各ブロックの上面視における面積を表1に示す。また、表1には、最小ブロックの面積に対する最大ブロックの面積の比率(Smax/Smin)、および最大ブロックの面積に対するセンターブロックの面積の比率(Scen/Smax)も併せて示す。
【0057】
【0058】
表1に示すように、実験例1の空気入りタイヤT1は、最小ブロックの面積に対する最大ブロックの面積の比率(Smax/Smin)が1.4以下であるのに対し、実験例2の空気入りタイヤT2は、最小ブロックの面積に対する最大ブロックの面積の比率(Smax/Smin)が1.4を超える空気入りタイヤである。
【0059】
次に、シミュレーションにより算出した各ブロックの縦剛性を
図4に示す。なお、
図4では、センターブロック51をブロック番号1、第1ミドルブロック52をブロック番号2、第2ミドルブロック53をブロック番号3、第1ショルダーブロック41をブロック番号4、第2ショルダーブロック42をブロック番号5として表記している。また、
図4では、各実験例における各ブロックの縦剛性の平均値を100として表記している。本発明者らの検討の結果、各ブロックの縦剛性のばらつきが小さい、すなわち縦剛性の最大値と最小値の差分が小さい空気入りタイヤは、走行時の偏摩耗やチッピングが発生しにくい空気入りタイヤである。
【0060】
図4に示すように、実験例1の空気入りタイヤT1は、各ブロックの縦剛性のばらつきが、平均値に対して±20%以内に範囲に収まっている。一方、実験例2の空気入りタイヤT2は、各ブロックの縦剛性のばらつきが、平均値に対して±25%程度となっている。これより、最小ブロックの面積に対する最大ブロックの面積の比率(Smax/Smin)を1.4以下とすることで、各ブロックのブロック剛性の差分を小さくすることができると言える。つまり、最小ブロックの面積に対する最大ブロックの面積の比率(Smax/Smin)を1.4以下とすることで、走行時の偏摩耗やチッピングを抑制することができる。
1 空気入りタイヤ、10 トレッド、11 サイドウォール、12 ビード、13 カーカス、13A,13B,13C カーカスプライ、14 ビードコア、15 ビードフィラー、16 ベルト層、16A,16B ベルトプライ、17 ベルト補強層、17A,17B ベルト補強プライ、30 ショルダー主溝、40 ショルダー領域、41 第1ショルダーブロック、42 第2ショルダーブロック、43 ショルダー横溝、50 センター領域、51 センターブロック、52 第1ミドルブロック、53 第2ミドルブロック、54 環状溝、55 センター縦溝、56,57 センター横溝