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  • 特開-プラントの電力設備 図1
  • 特開-プラントの電力設備 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025095814
(43)【公開日】2025-06-26
(54)【発明の名称】プラントの電力設備
(51)【国際特許分類】
   G21D 3/04 20060101AFI20250619BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
G21D3/04 Q
G21D1/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212120
(22)【出願日】2023-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 千弘
(57)【要約】
【課題】プラントの電力設備において、非常時に適正に電力を確保可能とする。
【解決手段】プラントにおいて海水を冷却水して使用した後に放水する放水ピットと、放水ピットに配置される海水電池と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントにおいて海水を冷却水して使用した後に放水する放水ピットと、
前記放水ピットに配置される海水電池と、
を備えるプラントの電力設備。
【請求項2】
前記放水ピットは、海水の流れ方向の上流側に使用済の海水を放水する放水管が設けられ、前記海水電池は、前記放水管の放水開口より海水の流れ方向の下流側に配置される、
請求項1に記載のプラントの電力設備。
【請求項3】
前記海水電池は、前記放水開口に対して海水の流れ方向の下流側に対向して配置される、
請求項2に記載のプラントの電力設備。
【請求項4】
前記海水電池は、上面が前記放水ピットに貯留される海水の水面より下方に位置する、
請求項1に記載のプラントの電力設備。
【請求項5】
前記海水電池は、複数のセルを有し、前記複数のセルは、海水の流れ方向に沿うと共に海水の流れ方向に交差する方向に間隔を空けて配置される、
請求項1に記載のプラントの電力設備。
【請求項6】
前記海水電池に接続される蓄電池を有する、
請求項1に記載のプラントの電力設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラントの電力設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉格納容器は、岩盤等の堅固な地盤上に立設され、内部に原子炉が配置される。原子炉は、原子炉格納容器の基礎部に設けられたコンクリート構造物により支持される。原子力設備では、シビアアクシデントとして、通常使用する電源が喪失する事象が想定される。この場合、通常電源が喪失する事象の対策として、非常用電源を設置している。このような技術としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-151247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、建屋内に非常用ディーゼル発電機を設置し、非常用ディーゼル発電機を作動することで、電力を確保するようにしている。ところが、地震に伴った津波が発生し、非常用ディーゼル発電機が浸水してしまうと、非常用ディーゼル発電機を作動させることができないという課題がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、非常時に適正に電力を確保可能とするプラントの電力設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示のプラントの電力設備は、プラントにおいて海水を冷却水して使用した後に放水する放水ピットと、前記放水ピットに配置される海水電池と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のプラントの電力設備によれば、非常時に適正に電力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態のプラントの電力設備を表す正面概略図である。
図2図2は、本実施形態のプラントの電力設備を表す平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0010】
<電力設備の構成>
図1は、本実施形態のプラントの電力設備を表す正面概略図、図2は、本実施形態のプラントの電力設備を表す平面概略図である。
【0011】
図1および図2に示すように、電力設備10は、原子力発電プラント11に配置される。なお、電力設備10は、原子力発電プラント11に限らず、火力発電プラントや化学プラントなどに配置されていてもよい。原子力発電プラント11は、両側に海12,13を挟んだ陸地14に設置される。原子炉建屋15は、陸地14に設置され、内部に原子炉格納容器16が設置される。原子炉格納容器16は、内部に原子炉(図示略)が配置される。電力設備10は、原子力発電プラント11の取水設備17に設けられる。
【0012】
原子炉建屋15は、海岸の近傍に設置される。取水設備17は、海岸の近傍に配置され、海水を冷却水として取水する。取水設備17は、取水した海水を原子炉建屋15に供給し、冷却水として使用する。取水設備17は、原子炉建屋15で使用された使用済の海水を放水する。
【0013】
取水設備17は、取水ピット21と、取水ポンプ22と、取水管32と、放水ピット23と、放水管24とを備える。
【0014】
取水ピット21は、海12から陸地14側に凹んだ凹部形状をなして設けられる。取水ピット21は、海12から陸地14に向けて長い形状をなす。取水ピット21は、海12から海水が流入して貯留される。取水ピット21に隣接した陸地14にポンプ建屋31が設けられる。取水ポンプ22は、ポンプ建屋31の内部に配置される。取水ポンプ22は、取水ピット21の最奥部に配置され、取水部32aが取水ピット21の海水に浸漬される。取水ポンプ22は、上部に取水管32の一端部が連結される。原子炉建屋15は、内部に冷却装置33が配置される。冷却装置33は、取水管32の他端部が連結される。
【0015】
取水ポンプ22が作動すると、取水ポンプ22は、取水部22aから取水ピット21の海水を取り込む。取水ポンプ22が取り込んだ海水は、取水管32により冷却装置33に供給される。このとき、取水ピット21は、海12から取水ポンプ22に向けて海水の流れが発生する。
【0016】
冷却装置33は、熱交換器である。冷却装置33は、例えば、発電に使用された蒸気を海水により冷却する。冷却装置33は、例えば、使用済燃料プールの冷却水を海水により冷却する。また、冷却装置33は、例えば、原子力発電プラント11で使用される各種機器を海水により冷却する。なお、冷却装置33が複数設けられていた場合、取水管32が複数の分岐し、取水ポンプ22が取り込んだ海水を取水管32により複数の冷却装置33に供給される。また、冷却装置33が複数設けられていた場合、取水ポンプ22や取水管32を複数組設けられる。
【0017】
放水ピット23は、海13から陸地14側に凹んだ凹部形状をなして設けられる。放水ピット23は、海13から陸地14に向けて長い形状をなす。放水ピット23は、海13の海水が貯留される。放水管24は、一端部が冷却装置33に連結され、他端部が放水ピット23の最奥部に配置される。放水管24は、他端部が放水ピット23に配置される。この場合、放水管24は、他端部にある放水開口は、放水ピット23の海水に浸漬されていてもよいし、放水ピット23の海水の水面より上方に位置していてもよい。
【0018】
冷却装置33から使用済の海水が放水管24に排出されると、放水管24は、放水開口から放水ピット23に海水を吐出する。このとき、放水ピット23は、放水管24から海12に向けて海水の流れが発生する。
【0019】
電力設備10は、取水設備17に設けられる。すなわち、電力設備10は、放水ピット23と、海水電池41と、蓄電池42とを備える。
【0020】
海水電池41は、放水ピット23に配置される。海水電池41は、放水ピット23にて、放水管24の放水開口24aより海水の流れ方向の下流側に配置される。海水電池41は、放水管24の放水開口24aに対して、海水の流れ方向の下流側に対向して配置されることが好ましい。このとき、海水電池41は、上面が放水ピット23に貯留される海水の水面より下方に位置する。放水管24は、放水開口24aが鉛直方向の下方に向いていてもよいし、水平方向における海13側に向いていてもよい。
【0021】
海水電池41は、正極(カソード)と負極(アノード)との間にセパレータを配置したサンドイッチ構造のセル41aを有する。海水電池41は、複数のセル41aを有する。海水電池41は、アノードにマグネシウムやアルミニウムなどを適用し、カソードにファイバーカーボンなどを使用する。
【0022】
そして、海水電池41は、複数のセル41aが海水の流れ方向に沿うと共に海水の流れ方向に交差する方向に間隔を空けて配置される。
【0023】
なお、放水ピット23における海水電池41の配置条件は、下記の条件であることが好ましい。
1.海水電池41のセル41aを海水の流れ方向に沿って配置する。
2.放水ピット23における海水の最低流速を0.1m/sとする。放水ピット23における海水の流速を0.1m/s以上とすると、セル41aに付着する生成物を除去することが可能となる。なお、海水の流速の設定は、放水管24の放水開口24aと海水電池41との距離、放水ピット23の形状、放水管24の放水開口24aからの海水の吐出量などを最適値に設定する。
3.放水ピット23における海水の最高温度を35℃とする。放水ピット23における海水の温度を35℃以下とすると、海水電池41の発電効率を向上することができる。
4.海水電池41のセル41aの上面が海水の水面から0.3m以下の位置とする。海水電池41のセル41aの上面が海水の水面から0.3m以下に位置させることで、放水ピット23における海水の波立ちによるセル41aの露出を抑制することができる。
【0024】
海水電池41は、蓄電池42が接続される。蓄電池42は、原子炉建屋15に配置され、電力線により海水電池41に接続される。なお、蓄電池42は、その用途により原子炉建屋15以外の建屋に配置されてもかまわない。
【0025】
なお、放水ピット23は、放水管24からの放水がなくても、海13からの海水の流入や流出により流れが発生し、海水電池41に対して海水の流れを作用させることができ、海水電池41は、発電を行うことができる。
【0026】
<電力設備の作動>
原子力発電プラント11の通常運転時、取水ポンプ22が作動することで、取水ピット21から海水を取り込んで冷却装置33に供給し、使用済の海水が放水管24から放水ピット23に放水される。このとき、放水ピット23は、放水管24から放水された海水が海13に向けて流れることから、放水ピット23に配置された海水電池41が発電を行い、発電した電力が蓄電池42に蓄電される。
【0027】
原子力発電プラント11の非常時、通常電源が喪失すると、取水ポンプ22の作動が停止し、冷却装置33が機能しなくなるおそれがある。しかし、蓄電池42は、海水電池41が発電した電力が蓄電されていることから、蓄電池42の電力を用いて取水ポンプ22を作動することができる。取水ポンプ22が作動すると、放水ピット23で海水の流れが発生することから、海水電池41が発電を行い、発電した電力を蓄電池42に蓄電することができる。なお、蓄電池42の電力は、取水ポンプ22以外の設備にも供給することができる。
【0028】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係るプラントの電力設備は、原子力発電プラント11において海水を冷却水して使用した後に放水する放水ピット23と、放水ピット23に配置される海水電池41とを備える。
【0029】
第1の態様に係るプラントの電力設備によれば、原子力発電プラント11の非常時に、通常電源が喪失しても、海水電池41が発電した電力により取水ポンプ22を作動することができる。すなわち、原子力発電プラント11の非常時であっても、適正に電力を確保することができる。
【0030】
第2の態様に係るプラントの電力設備は、第1の態様に係るプラントの電力設備であって、さらに、放水ピット23は、海水の流れ方向の上流側に使用済の海水を放水する放水管24が設けられ、海水電池41は、放水管の放水開口24aより海水の流れ方向の下流側に配置される。これにより、海水電池41に対して海水の流れが作用することで、海水電池41は、効率良く発電することができる。
【0031】
第3の態様に係るプラントの電力設備は、第1の態様または第2の態様に係るプラントの電力設備であって、さらに、海水電池41は、放水開口24aに対して海水の流れ方向の下流側に対向して配置される。これにより、海水電池41に対して効率良く海水を供給することができる。
【0032】
第4の態様に係るプラントの電力設備は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係るプラントの電力設備であって、さらに、海水電池41は、上面が放水ピット23に貯留される海水の水面より下方に位置する。これにより、海水電池41の海水からの露出を抑制することができる。
【0033】
第5の態様に係るプラントの電力設備は、第4の態様に係るプラントの電力設備であって、さらに、海水電池41は、複数のセル41aを有し、複数のセル41aは、海水の流れ方向に沿うと共に海水の流れ方向に交差する方向に間隔を空けて配置される。これにより、海水電池41は、効率良く発電することができる。
【0034】
第6の態様に係るプラントの電力設備は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係るプラントの電力設備であって、さらに、海水電池41に接続される蓄電池42を有する。これにより、原子力発電プラント11の非常時に、通常電源が喪失しても、蓄電池42が蓄電した電力により取水ポンプ22を作動することができる。すなわち、原子力発電プラント11の非常時であっても、適正に電力を確保することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 電力設備
11 原子力発電プラント
12,13 海
14 陸地
15 原子炉建屋
16 原子炉格納容器
17 取水設備
21 取水ピット
22 取水ポンプ
23 放水ピット
24 放水管
31 ポンプ建屋
32 取水管
33 冷却装置
41 海水電池
41a セル
42 蓄電池
図1
図2