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特開2025-9585光刺激による瞳孔径の変化を測定し、被験者の体調を判定する装置及びプログラム
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  • 特開-光刺激による瞳孔径の変化を測定し、被験者の体調を判定する装置及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009585
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】光刺激による瞳孔径の変化を測定し、被験者の体調を判定する装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20250109BHJP
   A61B 3/11 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B3/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023117882
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】317013555
【氏名又は名称】KIKURA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021751
【氏名又は名称】株式会社ナックイメージテクノロジー
(72)【発明者】
【氏名】倉島 渡
(72)【発明者】
【氏名】菊池 光一
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA28
4C316AA30
4C316AB16
4C316FA01
4C316FZ03
(57)【要約】
【課題】 自律神経失調症を簡単に判定できなかった。
【解決手段】脳活動が眼球の動き(目の瞳孔の変化)に表れる原理を利用して、被験者に短時間の明るさの変化する表示画面をみせることにより、被験者の瞳孔径の動きを解析して、脳疾患または自律神経失調症の判定装置に関する。
被験者に短時間の高輝度画面または低輝度画面を表示した時の、左右の眼球映像を別々のカメラで同時に撮影できる装置で、基本的には,脳疾患状態または自律神経失調症状態での瞳孔の変化の様子は,健常人のものと異なるという知見に基づくものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の左右の目の表示部に表示される同一または異なる表示画像を変化させる表示画像制御部と,
前記表示画像を目視する被験者の左右の眼球映像を別々の独立のカメラで同時に撮影する眼球撮影部と、
前記眼球撮影部が撮影した前記被験者の左右の目の瞳孔の大きさの経時変化のパターンにおいて,
短時間の高輝度画面表示と、低輝度画面を表示する表示パターンを用いて,被験者の瞳孔径の変化が健常者平均より乖離している度合いにより、前記被験者が悩疾患状態と自律神経失調状態を判定する装置及びプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の脳疾患状態と自律神経失調状態の判定装置であって,
最初、被験者の左右の目に低輝度表示画面を瞳孔径が安定する時間表示した後、短時間(例えば1秒)の高輝度画面を表示した場合、瞳孔径収縮速度、瞳孔径再拡大速度、短時間高輝度画面による瞳孔径収縮判定量の被験者の瞳孔径最大変化量との比、瞳孔径再拡大量が被験者の瞳孔径最大変化量に対する比等が被験者と同年代の健常者と異なる時、
または、高輝度画面開始から瞳孔径収縮開始判定までの時間(潜時)、高輝度画面表示終了後、瞳孔径再拡大判定時点までの時間”等が被験者と同年代の健常者と異なる時、前記被験者が悩疾患状態、前記被験者が悩疾患状態と自律神経失調状態を判定する装置及びプログラム。
自律神経失調状態を判定する装置及びプログラム。
【請求項3】
請求項1に記載の脳疾患状態と自律神経失調状態の判定装置であって,
被験者の左右の目に短時間の低輝度画面を表示した時
最初、被験者の左右の目に低輝度表示画面を瞳孔径が安定する時間表示した後、高輝度画面を瞳孔径が安定する時間表示し、短時間(例えば4秒)の低輝度画面を表示した場合、瞳孔径収縮速度、瞳孔径再拡大速度、瞳孔径再拡大量の瞳孔径変化量との比等が被験者と同年代の健常者と異なる時
または、高輝度画面開始から瞳孔収縮開始判定までの時間(潜時)、高輝度画面表示終了後の低輝度画面開始後、瞳孔径再拡大判定時点までの時間”等が
被験者と同年代の健常者と異なる時は、前記被験者が悩疾患状態、自律神経失調状態を判定する装置及びプログラム。
【請求項4】
請求項1に記載の脳疾患状態と自律神経失調状態の判定装置であって,
健常者の短時間高輝度画面または短時間の低輝度画面による左右の眼の瞳孔径の動きは健常者はほとんど一致しているが、左右の瞳孔径の動きに乖離がある場合、左右の瞳孔径の変化が同期していない場合は前記被験者が自律神経失調の判定する自律神経失調状態判定装置及びプログラム。
【請求項5】
請求項1に記載の脳疾患状態・自律神経失調状態の診断装置であって,
脳疾患の例は,てんかん,神経変性疾患,神経幹細胞疾患,神経前駆細胞疾患,虚血性疾患,神経性外傷,情動障害,神経精神疾患,網膜変性疾患,網膜損傷/外傷,認知・学習・記憶障害,アルツハイマー病,軽度認知障害(MCI),パーキンソン病,パーキンソン症候群,ハンチントン病,筋萎縮性側索硬化症,虚血性脳卒中,外傷性脳損傷,鬱病,双極性鬱病/障害,慢性疲労症候群,不安症候群/障害,自閉症,又はアスペルガー症候群である。
自律神経失調状態は体調不良である。
【請求項6】
請求項1から4における、被験者への表示画面のパターンと被験者の左右の瞳孔径変化パターンの実例をAIによる学習を通じて、よりきめ細かい、正確な脳疾患状態・自律神経失調状態の種類の判定を可能とする装置およびプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,脳活動と自律神経の動きが眼球(瞳孔)の変化に表れる原理を利用して、被験者に光の刺激を与え、前期被験者の左右の眼球の動きを解析して、前期被験者の脳疾患、自律神経失調状態の判定をする装置に関する。より詳しく説明すると,この発明は,左右の目に独立の映像を被験者に見せた際の,被験者の左右の瞳孔径の変化を用いて,その被験者が脳疾患、自律神経失調状態に罹っているか否かを判定する判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO2017-057631号パンフレットには,被験者感情判定装置が記載されている。上記の公報に記載された装置を用いれば,被験者の呼吸,環境の明暗の影響,被験者の脈拍といった影響を排除し,被験者の瞳孔を撮影して,被験者の感情を判定できる。
【0003】
上記の装置のような,被験者の瞳孔を撮影できる装置を用いた新たな装置と被験者の体調を判定するシステムの開発が望まれた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2017-057631号パンフレット
【特許文献2】PCT/JP2019/048894
【特許文献3】特願2022-83400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
国際公開WO2017-057631号パンフレットには,被験者の感情判定装置が記載されている。上記の公報に記載された装置を用いれば,被験者の呼吸,明暗の影響,被験者の脈拍といった影響を排除し,被験者の瞳孔を撮影して,被験者の感情を判定できる。
【0006】
上記の装置のような,被験者の瞳孔径を撮影できる装置を用いて、被験者に光の刺激を与えて被験者の眼球の動きから被験者の体調を判定するシステムの開発が望まれた。
【0007】
この発明は,左右の眼球映像を別々のカメラで同時に撮影できる装置で、左右の同一または異なる表示画像を同時に見せた時の被験者の瞳孔径の変化を計測することにより、被験者の脳の疾患、自律神経失調状態の新たな判定手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,基本的には,被験者の左右の眼球に、左右独立の表示画像を変化させた際の脳疾患または自律神経失調状態による体調不良を有する被験者の瞳孔径の変化の様子は,健常者のものと異なるという知見に基づくものである。
【0009】
この明細書に開示される複数の態様のうちのひとつは,脳疾患、自律神経失調の判定装置に関する。
この脳疾患、自律神経失調の判定装置1は,表示画像制御部3と,眼球撮影部5と,判定部7とを有する。
表示画像制御部3は,映像表示部4に表示される表示画像を変化させるための要素である。
眼球撮影部5は,表示画像を目視する被験者の眼球映像を撮影するための要素である。
判定部7は,眼球撮影部5が撮影した被験者の瞳孔の大きさまたは表示画像の中の視点の動きの経時変化のパターンを用いて,被験者が脳疾患に罹患しているか否か、自律神経失調状態による体調不良を判定するための要素である。
この脳疾患、自律神経失調状態の判定装置1は,
表示画像制御部3が,あらかじめ記憶しておいたパターンに基づいて映像表示部4に表示される表示画像を変化させる。
眼球撮影部5は,表示画像を目視する被験者の左右の眼球映像を別々のカメラで同時に撮影する。
判定部7は,眼球撮影部5が撮影した被験者の眼球映像を含む像を受け取る。そして,判定部7は,眼球撮影部5が撮影した被験者の瞳孔の大きさの経時変化のパターン、視点の動きを求め,その経時変化のパターンを用いて,被験者が脳疾患、自律神経失調状態に罹患しているか否かを判定する。
【0010】
表示パターンは,例えば,被験者の左右の目に対する表示の輝度,色彩,明度、立体表示画像の遠近の動き、迷路画像のうちいずれか1つ又は2つ以上が,変動するものである。表示パターンの代表的な具体例は,短時間(例えば1秒)に明るい画面を被験者に見せる白画面、または短時間(例えば4秒)の暗い画面を被験者に見せる黒画面である。
【0011】
脳疾患の例は,てんかん,神経変性疾患,神経幹細胞疾患,神経前駆細胞疾患,虚血性疾患,神経性外傷,情動障害,神経精神疾患,網膜変性疾患,網膜損傷/外傷,認知・学習・記憶障害,アルツハイマー病,軽度認知障害(MCI),パーキンソン病,パーキンソン症候群,ハンチントン病,筋萎縮性側索硬化症,虚血性脳卒中,外傷性脳損傷,鬱病,双極性鬱病/障害,慢性疲労症候群,不安症候群/障害,自閉症,又はアスペルガー症候群である。
自律神経失調の例は体調不良である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば,比較的簡便な装置(例えば、左右の眼球映像を別々のカメラで同時に撮影できる装置で、左右の同一または異なる表示画像を同時に表示する装置)を用いるだけで,被験者が脳疾患に罹患しているか,脳疾患が重度か,罹患するリスクが高いか、自律神経失調状態の重度の判定をすることができる装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】計測器イメージ図
図2】短時間の高輝度画面を被験者に見せた時の被験者の瞳孔径の変化の実例
図3図2の瞳孔径変化のための表示画面の輝度変化
図4】表示画面に短時間高輝度画面を表示したときの被験者の瞳孔径変化のモデル
図5図4の瞳孔径変化の表示画面輝度の変化
図6】表示画面に短時間高輝度画面を表示したときの被験者の瞳孔径変化のモデル
図7図6の瞳孔径変化の表示画面輝度の変化
図8】左右の瞳孔径の変化が乖離している例
図9】左右の瞳孔径の動きが一致していない例
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【実施例0015】
この明細書に開示される複数の態様のうちのひとつは,自律神経失調症である。
自律神経失調の例は、バス運転者、タクシー運転者、大型及び長距離トラック運転者、列車の運転者、航空機パイロットなどの交通機関の運転者、さらに建設現場管理者および現場作業者、工場などの機械作業者など、労働安全衛生上、常に間違った行動が許されない仕事に就く時の体調不良状態の判定である。
【0016】
脳疾患の例は,てんかん,神経変性疾患,神経幹細胞疾患,神経前駆細胞疾患,虚血性疾患,神経性外傷,情動障害,神経精神疾患,網膜変性疾患,網膜損傷/外傷,認知・学習・記憶障害,アルツハイマー病,軽度認知障害(MCI),パーキンソン病,パーキンソン症候群,ハンチントン病,筋萎縮性側索硬化症,虚血性脳卒中,外傷性脳損傷,鬱病,双極性鬱病/障害,慢性疲労症候群,不安症候群/障害,自閉症,又はアスペルガー症候群である。
【0017】
この脳疾患・自律神経失調の判定装置1は,表示画像制御部3と,眼球撮影部5と,判定部7とを有する。
表示画像制御部3は,表示パターンに基づいて映像表示部4に表示される表示画像を変化させるための要素である。表示部の例は,モニタ画面である。
【0018】
この装置は,カメラなどの撮影装置と情報のやり取りができるようにされたコンピュータにより実装できる。
カメラなどによる撮影情報は,ケーブルなどを通してコンピュータに入力されてもよい。
また,撮影情報は,無線により,コンピュータに入力されてもよい。
コンピュータは,入出力部,制御部,演算部及び記憶部を含み,各要素はバスなどにより情報の授受を行うことができるようにされている。コンピュータは,入力された情報を,記憶部に記憶する。また,コンピュータの制御部は,記憶部に記憶した制御プログラムを読み出し,入力された情報や,記憶部に記憶された情報を用いて,演算部に各種演算を行わせる。
演算結果は,適宜記憶部11に記憶されるとともに,入出力部を介して,適宜出力される。
演算結果は解析結果ディスプレイ部に表示できるようにしても良い。
【0019】
表示パターンは,例えば,輝度,色彩,明度、立体画像の遠近変化、迷路画像、間違い探し画像のうちいずれか1つ又は2つ以上が,所定の時間パターンに基づいて変動するものである。
代表的な輝度変化パターンは、短時間(例えば1秒)の高輝度画像である。
【0020】
被験者に図1に示す映像表示部4により図3に示すような、輝度変化の画面を示すと、図2のように被験者の瞳孔径が変化する。
健常者は左右どちらの目の瞳孔径も同じ変化を示す。
最初の低輝度画面は瞳孔径が安定するまでの(例えば10秒以上)の時間を映像表示部4に最低輝度(たとえば“0”(nt))の画面を表示するが、この時の被験者の瞳孔径はこの表示画面を見ている時の最大瞳孔径なる。
その後、短時間(たとえば1秒間)、高輝度(例えば“100”(nt))画面を被験者に見せる。
すると被験者の瞳孔径が遅れて収縮し始める。
短時間の高輝度画面が終わって、表示画面が輝度“0”(nt)に戻ると、しばらく瞳孔径が収縮を続け、途中から、瞳孔径は再拡大をする。その時の瞳孔径は暗順応の瞳孔径拡大の動きをするが、一般に瞳孔径は明るい画面を見た時の明順応より、暗い画面を見た時の暗順応は遅い動きなので、瞳孔径は緩やかな拡大曲線を示す。数秒(例えば8秒)後に、再度、最初の短時間の高輝度と同じ輝度の表示画面を、被験者の瞳孔径が安定するまでの時間(例えば10秒以上)見せると、被験者の高輝度画面における本来の瞳孔径を示す。
【0021】
図4に、この瞳孔径の変化をモデル化して示した。
この図に基づいて、瞳孔径の変化を説明すると、
被験者に図1に示す映像表示部4に、図5に示すような輝度変化の画面を示すと、図2の実例をモデル化した図4に示す瞳孔径の変化を示すとする。
最初の低輝度画面は表示画面の最低輝度とする。
この時は瞳孔径が安定する時間(例えば10秒以上)表示するものとする。この時の瞳孔径はこの画面を見ている時の最大瞳孔径”h”である。
その後、時間(t1からt3)の短時間(例えば1秒)の間、高輝度画面を被験者に見せる。
すると被験者の瞳孔径が遅れて収縮し始めるが、その遅れを判定する時間を”t2”とする。
時間t2は瞳孔径収縮開始判定時であり、瞳孔径収縮量”L“の上から例えば10%にする時点である。
短時間(t1からt3)の高輝度画面が終わって、表示画像が最初の低輝度画面に戻っても、しばらく瞳孔径が収縮を続け、途中(時間t5)で瞳孔径が最低になり、そこから、瞳孔径は再拡大をする。
その時に瞳孔は暗順応の動きをするが、一般に瞳孔径は明順応より、暗順応は遅い動きなので、瞳孔径は緩やかな山なりの拡大曲線を示す。
数秒(例えば6秒)後に、再度、始めの短時間の高輝度と同じ輝度の表示画面を被験者に瞳孔径が安定する時間(例えば10秒以上)見せると、被験者の高輝度画面における本来の瞳孔径”r”を示す。
【0022】
健常者は高輝度画面が表示した時は,高輝度画面表示開始時(t1)から、瞳孔径が収縮開始判定時t2までの時間”E”は短い。
E-(t2-t1)
またその瞳孔径の収縮速度”A”は瞳孔収縮開始判定点403(例えば瞳孔径収縮量”L”の上から10%)の瞳孔径”i”と、瞳孔径収縮終了判定点(404)(例えば瞳孔径収縮量”L”の上から90%)の瞳孔径”k”、時間t4までの変化量”I”により、
I=i-k、
その時間“F”は
F=t4-t2
となり、その収縮速度”A”は
【0023】
【数1】
となる。
【0024】
瞳孔径再拡大開始の判定点405も瞳孔径再拡大量“M”の上から90%点とし、その時間はt6とし、その瞳孔径はsとする。
しかし瞳孔径再拡大の動作は暗順応なので遅く、収縮時のような直線部分がなく、最初の瞳孔径”h”になる時間が遅いので、例えば瞳孔径再拡大量Mの50%点の中間点“m”の瞳孔径の点406を瞳孔径再拡大判定点とする。またその時間をt7とする。
これにより、
瞳孔径再拡大判定量Jは
J=m-s
その拡大判定時間Hは
H=t7―t6
したがって、瞳孔径再拡大の速度”B”は
【0025】
【数2】
となる。
【0026】
被験者の瞳孔径最大変化量”K”は
K=h-r
である。
短時間高輝度画面による瞳孔径変化収縮判定量”I”(=i-k)の被験者の瞳孔径最大変化量”K”との比”U”は
U=I/K
である。
【0027】
再度最初と同じ低輝度画面をt3からt8まで(たとえば6秒)表示すると、瞳孔径は再拡大するが、t8で低輝度画面表示が終わっても、瞳孔径は拡大を続け、遅れて時間t9で瞳孔径はピークになり、その瞳孔径はnになる。この瞳孔径再拡大量”N”はnと同じ。
この瞳孔径再拡大量Nが被験者の瞳孔径最大変化量”K”に対する比U2は
U2=N/K
となる。
【0028】
また、表示画面が、時間“t3”で最初と同じ低輝度輝度画面に戻って、瞳孔径収縮終了判定点(404)の時間t4を通過しても瞳孔径が収縮して行く。t5で瞳孔径が底を示して、再拡大して行くが、再拡大判定時点の時間”t6”までの時間Gも、自律神経失調状態を判定する尺度になりうる。(機械と被験者によっては、t3とt4が前後することはある)
G=t6-t4
【0029】
以上のことから
A:瞳孔径収縮速度
B:瞳孔径再拡大速度
U:短時間高輝度画面による瞳孔径収縮判定量”I”の被験者の瞳孔径最大変化量”K”との比”
U2:瞳孔径再拡大量Nが被験者の瞳孔径最大変化量”K”に対する比
が被験者と同年代の健常者と異なる時、
または、
E:高輝度画面開始から瞳孔収縮開始判定までの時間(潜時)
G:高輝度画面表示終了後、瞳孔径が収縮判定点404を過ぎて、最初の低輝度画面開始後、瞳孔径再拡大判定時点405までの時間”(t6-t4)
が被験者と同年代の健常者と異なる時
悩疾患状態か自律神経系が失調状態であると判定出来る。
【0030】
一方、短時間の低輝度画面を被験者に見せた時の被験者の瞳孔径による脳疾患状態と自律神経失調状態の判定方法もありうる。
図7の表示画面での輝度変化による被験者の瞳孔径の変化モデルを図6に示した。
この図に基づいて、瞳孔径の変化を説明すると、
【0031】
被験者に図1に示す映像表示部4に、図7に示すような輝度変化の表示画面を被験者に示すと、被験者の瞳孔径は図6示す変化を示すとする。
最初の低輝度画面は瞳孔径が安定する時間(例えば10秒以上)表示することにする。この時の瞳孔径はこの映像表示を見ている時の最大瞳孔径”h”である。
その後、時間(t10)から高輝度面を表示するが、被験者の瞳孔径がこの高輝度画面を見て瞳孔径が安定するまでの時間(例えば10秒以上)表示する。この時、被験者の瞳孔径はこの表示画面での最小瞳孔径“r”となる。
その後、時間t13からt16の短時間(例えば4秒)の低輝度画面を表示する。
被験者の瞳孔径が遅れて拡大し始めるが、表示画面が時間“t16”で高輝度画面になっても瞳孔径はしばらく拡大を続けて、時間t17で瞳孔径拡大がピーク値の”o”となって、その後収縮する。
【0032】
健常者は高輝度画面表示開始時(t10)から、瞳孔径が収縮開始判定時t11までの時間”V”は脳疾患者や自律神経失調者より短い。
V=(t11-t10)
またその瞳孔径の収縮速度”C”は瞳孔収縮開始判定点603(例えば瞳孔径収縮量”Q”(=h-r)の上から10%)の瞳孔径”e”と瞳孔収縮終了判定点(604)(例えば瞳孔径収縮量”Q”の上から90%)の瞳孔径”x”までの変化量”R”は、
R=e-x、
その収縮時間N2は
N2=t12-t11
したがって、その瞳孔径収縮速度”C”は
【0033】
【数3】
【0034】
瞳孔径再拡大の判定点(瞳孔径拡大量””S”のたとえば上から90%)605の瞳孔径の値“q”とその時間”t14”と、瞳孔径拡大の中間点(瞳孔径拡大量Sの50%)606の瞳孔径”p”とその時間t15との関係から、
瞳孔径拡大遅延時間”O”は
O=t14-t13
瞳孔径拡大判定時間Pは
P=t15-t14
その瞳孔径拡大判定量”W”は
W=p-q
従って瞳孔径再拡大速度”D”は
D=W/P
となる。
【0035】
瞳孔径再拡大量”S”の瞳孔径最大変化量”Q”との比”Y”は
Y=S/Q
となる。
【0036】
瞳孔径拡大の中間点を瞳孔径拡大速度の基準にしたのは、この時被験者の瞳孔径は暗順応を示すが、暗順応での瞳孔径は山なりの変化曲線を示すので、判定しやすい中間点606を基準にし、瞳孔径拡大の判定点とした。
【0037】
以上のことから、被験者と同年代の健常者平均と
C:瞳孔径収縮速度
D:瞳孔径再拡大速度
Y(瞳孔径拡大量の瞳孔径最大変化量との比)
が異なる時、
または、
V:高輝度画面開始から瞳孔収縮開始判定までの時間(潜時)
O:瞳孔径再拡大遅延時間(低輝度画面開始後、瞳孔径再拡大開始判定時点までの時間)
が被験者と同年代の健常者と異なる時
被験者は脳疾患状態、または自律神経失調状態と判定できる
【0038】
また、健常者の短時間高輝度画面による左右の眼の瞳孔径の動きはほとんど一致しているが、図8のように、左右の瞳孔径の動きに乖離がる場合、または図9のように左右の瞳孔径の変化が同期していない場合も脳疾患状態、または自律神経失調状態と判定できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明によれば,比較的簡便な装置(例えば、左右の眼球映像を別々のカメラで同時に撮影できる装置で、左右の同一または異なる表示画像を同時に表示する装置)を用いるだけで,被験者が脳疾患に罹患しているか,脳疾患が重度か,罹患するリスクが高いか、自律神経失調状態の程度を判定することができる装置を提供できる。
脳疾患の例は,てんかん,神経変性疾患,神経幹細胞疾患,神経前駆細胞疾患,虚血性疾患,神経性外傷,情動障害,神経精神疾患,網膜変性疾患,網膜損傷/外傷,認知・学習・記憶障害,アルツハイマー病,軽度認知障害(MCI),パーキンソン病,パーキンソン症候群,ハンチントン病,筋萎縮性側索硬化症,虚血性脳卒中,外傷性脳損傷,鬱病,双極性鬱病/障害,慢性疲労症候群,不安症候群/障害,自閉症,又はアスペルガー症候群である。
自律神経失調判定の産業への利用可能例は、バス運転者、タクシー運転者、大型及び長距離トラック運転者、列車の運転者、航空機パイロットなどの交通機関の運転者、さらに建設現場管理者および現場作業者、工場などの機械作業者など、労働安全衛生上、常に間違った行動が許されない仕事に就く時の体調不良状態の判定である。
【符号の説明】
【0040】
1 診断装置
2 接眼部
3 表示画像制御部
4 映像表示部
5 眼球撮影部
6 計測機制御部
7 判定部
8 輝度計
9 演算部
10 解析結果ディスプレイ部
11 蓄積部
400 短時間高輝度画面表示の瞳孔径変化
401 縦軸:瞳孔径(mm)
402 横軸:経過時間
403 瞳孔収縮開始判定点(例えば瞳孔径変化量の上から10%)
404 瞳孔収縮終了判定点(例えば瞳孔径変化量の上から90%)
405 瞳孔径再拡大開始判定点
406 瞳孔径再拡大量Mの50%になる点
407 瞳孔径の変化曲線
h 高輝度画面表示前の低輝度画面での被験者の瞳孔径
i 瞳孔径収縮開始判定値(例えば”瞳孔径収縮量L”の上から10%点)
j 瞳孔径収縮時の最低値
k 瞳孔径収縮量終了判定値(例えば瞳孔径収縮量”L”の上から90%点)
r 瞳孔径最小値(高輝度画面と同等の輝度状態での瞳孔径)
m 瞳孔径再拡大中間点(瞳孔径再拡大量”M”の50%点)
n 再拡大瞳孔径
s 瞳孔径再拡大開始判定値(瞳孔径再拡大量”M”の上から90%の値)
A 被験者の瞳孔径収縮速度
B 被験者の瞳孔径再拡大速度
E 高輝度画面表示開始から瞳孔収縮開始判定までの時間(潜時)
F 瞳孔径収縮判定時間(=t4-t2)
G 瞳孔径収縮判定点から瞳孔径再拡大判定点までの時間(=t6-t4)
H 瞳孔径拡大判定時間(t7-t6)
I 被験者の瞳孔径収縮時の瞳孔径変化量
J 瞳孔径再拡大判定量
K 被験者の瞳孔径最大変化量
L 瞳孔径収縮量
M 瞳孔径再拡大量
N 最後の高輝度画面表示時の瞳孔径”r”からの瞳孔径再拡大量(=n)
U 短時間高輝度画面による瞳孔径変化量”I”の被験者の瞳孔径最大変化量”K”との比”
U2 瞳孔径再拡大量Nの被験者の瞳孔径最大変化量”K”に対する比
t1 高輝度画面表示開始時
t2 瞳孔径収縮開始判定時
t3 高輝度画面表示終了時
t4 瞳孔径収縮終了判定時
t5 瞳孔径収縮終了時
t6 瞳孔径再拡大量”M”の上から例えば90%になる時点
t7 瞳孔径再拡大の中間点(瞳孔径再拡大量”M”の上から例えば50%の時点)
t8 再度の低輝度画面終了時
t9 瞳孔径再拡大最大時
600 短時間低輝度画面表示の瞳孔径変化
601 縦軸:瞳孔径(mm)
602 横軸:経過時間
603 瞳孔収縮開始判定点(例えば瞳孔径変化量Qの上から10%)
604 瞳孔径収縮終了判定点(例えば瞳孔径変化量Qの上から90%)
605 瞳孔径再拡大開始判定点
606 瞳孔径再拡大の50%になる点
607 瞳孔径の変化曲線
e 瞳孔径収縮量開始判定値(例えば”瞳孔径収縮量Q”の上から10%点)
h 高輝度画面表示前の低輝度画面での被験者の瞳孔径
p 瞳孔径再拡大中間点(瞳孔径再拡大量”S”の50%)
q 瞳孔径再拡大判定値(瞳孔径再拡大量”S”の上から90%)点
r 瞳孔径収縮時の最低値
x 瞳孔径収縮終了判定値(例えば瞳孔径収縮量”Q”の上から90%点)
C 被験者の瞳孔径収縮速度
D 被験者の瞳孔径再拡大速度
V 高輝度画面表示”t10”から瞳孔径収縮判定までの時間(潜時)(=t11-t10)
N2 瞳孔径収縮時間(=t12-t11)
O 低輝度表示開始から瞳孔再拡大判定までの時間(潜時)(=t14-t13)
P 瞳孔径再拡大判定時間(瞳孔径拡大量Sの50%点)(=t15-t14)
Q 瞳孔径変化最大量
R 瞳孔径収縮判定量(=e-x)
S 瞳孔径拡大量(=o-r)
W 瞳孔径拡大判定量(=p-q)
Y 瞳孔径拡大量の瞳孔径最大変化量との比
t10 高輝度画面表示開始時
t11 瞳孔径収縮開始判定時
t12 瞳孔径収縮終了判定時
t13 低輝度画面表示開始時
t14 瞳孔径拡大の開始判定時(瞳孔径拡大値”S”の上から例えば90%になる時点)
t15 瞳孔径拡大の判定時(瞳孔径拡大値”S”の上から例えば50%になる時点)
t16 高輝度画面表示開始時
t17 瞳孔径拡大ピーク時
図1
図2
図3
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図9