(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025095864
(43)【公開日】2025-06-26
(54)【発明の名称】原子炉格納容器の冷却装置および原子力設備
(51)【国際特許分類】
G21C 9/004 20060101AFI20250619BHJP
G21C 13/00 20060101ALI20250619BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
G21C9/004
G21C13/00 200
G21C15/18 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212232
(22)【出願日】2023-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 千弘
【テーマコード(参考)】
2G002
【Fターム(参考)】
2G002AA04
2G002BA10
2G002CA03
2G002DA10
2G002EA14
(57)【要約】
【課題】原子炉格納容器の冷却装置および原子力設備において、原子炉格納容器を早期に冷却することを可能とする。
【解決手段】原子炉格納容器の内部に配置され、シリンダの内部のピストンにより第1室と第2室が仕切られ、第1室が前記原子炉格納容器の内部に連通し、第2室に作動油が充填される油圧ユニットと、原子炉格納容器の外部に配置され、シリンダの内部のピストンにより第3室と第4室が仕切られ、第3室が油圧連結管を介して油圧ユニットの第2室に連結され、第4室に冷却水が充填される水冷ユニットと、原子炉格納容器の内部に配置され、一端部が水冷連結管を介して水冷ユニットの第4室に連結され、他端部が原子炉格納容器の外部に開放される熱交換器と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器の内部に配置され、シリンダの内部のピストンにより第1室と第2室が仕切られ、前記第1室が前記原子炉格納容器の内部に連通し、前記第2室に作動油が充填される油圧ユニットと、
前記原子炉格納容器の外部に配置され、シリンダの内部のピストンにより第3室と第4室が仕切られ、前記第3室が油圧連結管を介して前記油圧ユニットの第2室に連結され、前記第4室に冷却水が充填される水冷ユニットと、
前記原子炉格納容器の内部に配置され、一端部が水冷連結管を介して前記水冷ユニットの第4室に連結され、他端部が前記原子炉格納容器の外部に開放される熱交換器と、
を備える原子炉格納容器の冷却装置。
【請求項2】
前記油圧ユニットと前記水冷ユニットは、前記原子炉格納容器の壁部を挟んで内部と外部に縦型配置され、前記油圧連結管は、前記壁部を貫通し、一端部が油圧ユニットの下部に配置される前記第2室に連結され、他端部が前記水冷ユニットの上部に配置される前記第3室に連結される、
請求項1に記載の原子炉格納容器の冷却装置。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記油圧ユニットより上方に配置される、
請求項1または請求項2に記載の原子炉格納容器の冷却装置。
【請求項4】
前記油圧ユニットは、一端部が前記第1室に連結されて他端部が前記原子炉格納容器の内部に開口する連通管と、前記連通管に原子炉格納容器の内部の圧力に応じて開放する開放弁が設けられる、
請求項1に記載の原子炉格納容器の冷却装置。
【請求項5】
前記開放弁は、ラプチャーディスクを有する、
請求項4に記載の原子炉格納容器の冷却装置。
【請求項6】
原子炉格納容器と、
前記原子炉格納容器の内部に配置される原子炉と、
請求項1に記載の原子炉格納容器の冷却装置と、
を備える原子力設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原子炉格納容器の冷却装置および原子力設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉格納容器は、岩盤等の堅固な地盤上に立設され、内部に原子炉が配置される。原子炉は、原子炉格納容器の基礎部に設けられたコンクリート構造物により支持される。原子力設備では、シビアアクシデントとして、原子炉格納容器の内部の圧力や温度が上昇する事象が想定される。このとき、冷却装置により原子炉格納容器の内部を冷却し、圧力や温度の上昇を抑制する必要がある。このような原子炉格納容器の冷却装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された原子炉格納容器の冷却装置では、原子炉格納容器の内部に熱交換器を設け、原子炉格納容器の外部に設けられた冷却ポンプを駆動し、冷却水を循環配管から熱交換器に供給することで、原子炉格納容器の内部を冷却している。ところが、原子力設備における電源が喪失した場合、冷却ポンプを作動することができず、早期に原子炉格納容器の内部を冷却することができないおそれがある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、原子炉格納容器の内部を早期に冷却することを可能とする原子炉格納容器の冷却装置および原子力設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の原子炉格納容器の冷却装置は、原子炉格納容器の内部に配置され、シリンダの内部のピストンにより第1室と第2室が仕切られ、前記第1室が前記原子炉格納容器の内部に連通し、前記第2室に作動油が充填される油圧ユニットと、前記原子炉格納容器の外部に配置され、シリンダの内部のピストンにより第3室と第4室が仕切られ、前記第3室が油圧連結管を介して前記油圧ユニットの第2室に連結され、前記第4室に冷却水が充填される水冷ユニットと、前記原子炉格納容器の内部に配置され、一端部が水冷連結管を介して前記水冷ユニットの第4室に連結され、他端部が前記原子炉格納容器の外部に開放される熱交換器と、を備える。
【0007】
また、本開示の原子力設備は、前記原子炉格納容器の内部に配置される原子炉と、前記原子炉格納容器の冷却装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の原子炉格納容器の冷却装置および原子力設備によれば、原子炉格納容器の内部を早期に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の原子力設備を表す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の原子炉格納容器の冷却装置を表す概略図である。
【
図3】
図3は、原子炉格納容器の冷却装置の作用を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
<原子力設備>
図1は、本実施形態の原子力設備を表す概略図である。
【0012】
図1に示すように、原子力設備10は、原子力発電プラントに適用される。本実施形態の原子力設備10は、軽水を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を備える。但し、原子炉は、加圧水型原子炉に限定されるものではなく、沸騰型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)などのその他の原子炉に適用することもできる。
【0013】
原子炉格納容器11は、岩盤等の堅固な地盤G上に配置される。原子炉格納容器11は、原子炉格納容器11は、基礎部12と、格納容器本体13とを備える。基礎部12は、地盤G上に設置され、格納容器本体13は、基礎部12に立設される。基礎部12と格納容器本体13は、一体構造をなす。格納容器本体13は、内部に鉄筋コンクリートなどにより構築される構造物14が設けられる。構造物14は、基礎部12の上部で、格納容器本体13の内部に配置される。
【0014】
原子炉格納容器11は、中央部に原子炉15が配置される。構造物14は、原子炉格納容器11の中央部に円柱形状をなす空間部16が区画され、原子炉15は、空間部16に配置され、空間部16の内壁部を形成する構造物14により吊り下げ支持される。原子炉格納容器11は、原子炉15の周囲に複数の蒸気発生器17が配置される。複数の蒸気発生器17は、構造物14に支持される。原子炉15と複数の蒸気発生器17は、冷却水配管18により連結される。
【0015】
原子炉格納容器11は、原子炉15の下方にキャビティ19が区画形成される。キャビティ19は、原子炉15から落下する炉心溶融物を受け止めて冷却する。原子炉格納容器11は、基礎部12に冷却水を貯留する冷却水ピット20が設けられ、格納容器本体13の上部に冷却水噴射装置21が設けられる。冷却水ピット20は、冷却水経路22により冷却水噴射装置21に連結され、冷却水経路22に冷却水ポンプ23が設けられる。
【0016】
原子炉15は、原子炉容器24の内部に炉心25が配置されて構成される。原子炉容器24は、原子炉容器本体の上部に原子炉容器蓋が着脱自在に設けられて構成される。原子炉容器24は、上側部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を供給する入口ノズルと、軽水を排出する出口ノズルが設けられる。原子炉容器24は、入口ノズルと出口ノズルに蒸気発生器17からの冷却水配管18がそれぞれ連結される。原子炉容器24の内部に配置される炉心25は、複数の燃料集合体により構成される。燃料集合体は、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成される。なお、炉心25は、多数の燃料棒と共に原子炉15の出力を制御する複数の制御棒が配置される。
【0017】
原子炉15は、炉心25を構成する原子燃料が核分裂することで中性子を放出し、減速材および一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。このとき、炉心25に制御棒を挿入することで、炉心25内で生成される中性子数を調整することで、原子炉15の出力が調整される。
【0018】
蒸気発生器17は、原子炉格納容器11の外部に設けられた蒸気タービンに蒸気配管を介して連結される。蒸気タービンは、発電機が連結される。蒸気発生器17は、原子炉15から供給される高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換を行うことで、蒸気を生成する。生成された蒸気は、蒸気タービンに送られて駆動し、発電機による発電を行う。蒸気タービンを駆動した蒸気は、冷却された後に蒸気発生器17に戻される。
【0019】
<原子炉格納容器の冷却装置>
図2は、本実施形態の原子炉格納容器の冷却装置を表す概略図である。
【0020】
図1に示すように、原子力設備10は、原子炉格納容器の冷却装置30を備える。原子炉格納容器の冷却装置30は、原子炉15(
図1参照)を取り囲むように配置された原子炉格納容器11の内部を冷却するものである。原子炉格納容器の冷却装置30は、油圧ユニット31と、水冷ユニット32と、熱交換器33とを備える。
【0021】
油圧ユニット31は、原子炉格納容器11の内部に配置される。油圧ユニット31は、例えば、基礎部12上に支持台40に縦型に支持される。油圧ユニット31は、シリンダ41と、ピストン42と、連通管43とを有する。
【0022】
シリンダ41は、支持台40に縦型に取付けられる。ピストン42は、シリンダ41の内部に軸方向(鉛直方向)に移動自在に支持される。シリンダ41は、内部にピストン42が配置されることで、シリンダ41とピストン42により第1室R1と第2室R2が仕切られて区画される。第1室R1は、シリンダ41におけるピストン42の上方側に配置され、第2室R2は、シリンダ41におけるピストン42の下方に配置される。
【0023】
連通管43は、L字形状をなすように屈曲して形成される。連通管43は、一端部がシリンダ41の上部に連結され、第1室R1に連通する。連通管43は、他端部が水平方向に沿って配置され、原子炉格納容器の内部に連通するように開口する。なお、連通管43は、L字形状に限らず、湾曲形状としたり、直線形状としたりしてもよい。そして、シリンダ41は、第2室R2に非圧縮性流体である作動油が充填される。
【0024】
また、油圧ユニット31は、連通管43に開放弁44が設けられる。開放弁44は、原子炉格納容器11の内部の圧力に応じて開放するものであり、ラプチャーディスクを採用することが好ましい。すなわち、開放弁44は、原子炉格納容器11の内部の圧力が予め設定された所定圧力になると、ラプチャーディスクが破裂することで、開放される。
【0025】
水冷ユニット32は、原子炉格納容器11の外部に配置される。水冷ユニット32は、例えば、基礎部12上に支持台50に縦型に支持される。水冷ユニット32は、シリンダ51と、ピストン52とを有する。
【0026】
シリンダ51は、支持台50に縦型に取付けられる。ピストン52は、シリンダ51の内部に軸方向(鉛直方向)に移動自在に支持される。シリンダ51は、内部にピストン52が配置されることで、シリンダ51とピストン52により第3室R3と第4室R4が仕切られて区画される。第3室R3は、シリンダ51におけるピストン52の上方側に配置され、第4室R4は、シリンダ51におけるピストン52の下方に配置される。
【0027】
油圧ユニット31と水冷ユニット32は、油圧連結管53により連結される。油圧連結管53は、Z字形状をなすように屈曲して形成される。油圧連結管53は、一端部が油圧ユニット31のシリンダ41の下部に連結され、第2室R2に連通する。油圧連結管53は、他端部が水冷ユニット32のシリンダ51の上部に連結され、第3室R3に連通する。なお、油圧連結管53は、Z字形状に限らず、別の屈曲形状や湾曲形状などとしてもよい。
【0028】
すなわち、油圧ユニット31と水冷ユニット32は、原子炉格納容器11における格納容器本体13の壁部を挟んで、原子炉格納容器11の内部と外部に縦型配置される。油圧連結管53は、格納容器本体13の壁部を貫通し、一端部が油圧ユニット31の下部に配置される第2室R2に連通され、他端部が水冷ユニット32の上部に配置される第3室R3に連通される。
【0029】
そして、水冷ユニット32は、シリンダ51の第3室R3に非圧縮性流体である作動油が充填される。また、油圧連結管53も、非圧縮性流体である作動油が充填される。つまり、油圧ユニット31の第2室R2と、水冷ユニット32の第3室R3と、油圧連結管53とに作動油が隙間なく充填される。一方、水冷ユニット32は、シリンダ51の第4室R4に冷却水が充填される。
【0030】
熱交換器33は、原子炉格納容器11の内部に配置される。熱交換器33は、原子炉格納容器11の内部で、油圧ユニット31より上方に配置されることが好ましい。熱交換器33は、容器61と、ノズル62とを有する。水冷ユニット32と熱交換器33は、水冷連結管63により連結される。水冷連結管63は、湾曲した形状をなし、一端部が水冷ユニット32のシリンダ51の下部に連結され、第4室R4に連通する。水冷連結管63は、他端部が熱交換器33の容器61の下部に連結され、内部に連通する。ノズル62は、一端部が熱交換器33の容器61の上部に連結され、他端部が原子炉格納容器11の外部に開放される。
【0031】
すなわち、水冷ユニット32と熱交換器33は、原子炉格納容器11における格納容器本体13の壁部を挟んで、原子炉格納容器11の内部と外部に配置される。水冷連結管63は、格納容器本体13の壁部を貫通し、一端部が水冷ユニット32の下部に配置される第4室R4に連通され、他端部が容器61の下部に連通される。
【0032】
そして、熱交換器33は、容器61に冷却水が充填される。また、水冷連結管63も、冷却水が充填される。つまり、水冷ユニット32の第4室R4と、熱交換器33の容器61の内部と、水冷連結管63とに冷却水が隙間なく充填される。一方、ノズル62は、格納容器本体13の壁部を貫通し、一端部が熱交換器33の容器61の上部に連通され、他端部が原子炉格納容器11の外部に開口する。
【0033】
なお、油圧ユニット31と水冷ユニット32を縦型配置としたが、横型配置としたり、傾斜配置としたりしてもよい。また、熱交換器33を上方に配置したが、下方や原子炉15の近傍などに配置してもよい。さらに、1つの原子炉格納容器11に対して複数の原子炉格納容器の冷却装置30を設けることが好ましい。
【0034】
<原子炉格納容器の冷却方法>
図3は、原子炉格納容器の冷却装置の作用を表す概略図である。
【0035】
図1および
図2に示すように、原子力設備10にて、例えば、シビアアクシデントが発生し、原子炉格納容器11の内部の圧力や温度が上昇する事象が想定される。このとき、原子炉格納容器11の内部の温度が上昇すると、空気が膨張して圧力も上昇し、上昇した空気の圧力が油圧ユニット31における連通管43の開放弁44に作用する。そして、原子炉格納容器11の内部の圧力が所定圧力になると、開放弁(ラプチャーディスク)44が破裂することで、開放される。
【0036】
開放弁44が開放されると、原子炉格納容器11の内部の高圧の空気が連通管43および開放弁44を通って第1室R1に流入し、ピストン42を押圧する。すると、
図1および
図3に示すように、油圧ユニット31は、ピストン42が下方に移動することで、第1室R1が拡大して第2室R2が縮小され、第2室R2の作動油が油圧連結管53を通って水冷ユニット32に送られる。
【0037】
水冷ユニット32は、作動油が油圧連結管53を通って第3室R3に供給されると、ピストン52が押圧される。すると、水冷ユニット32は、ピストン52が下方に移動することで、第3室R3が拡大して第4室R4が縮小され、第4室R4の冷却水が水冷連結管63を通って熱交換器33に送られる。
【0038】
熱交換器33は、冷却水が水冷連結管63を通って容器61の内部に送られる。熱交換器33は、容器61の内部の冷却水と、原子炉格納容器11の内部の高温高圧の空気との間で熱交換する。すなわち、熱交換器33は、容器61の内部の冷却水により原子炉格納容器11の内部の高温高圧の空気を冷却する。熱交換器33は、原子炉格納容器11の内部の高温高圧の空気を冷却して加熱された容器61の内部の冷却水(または、水蒸気)がノズル62から原子炉格納容器11の外部に放出される。
【0039】
原子炉格納容器11の内部の空気が高温高圧であるとき、油圧ユニット31および水冷ユニット32が作動し続けることで、冷却水が熱交換器33に継続して送られる。そのため、熱交換器33は、冷却水の不足が抑制され、容器61に継続して冷却水が送られることで、原子炉格納容器11の内部の空気を適切に冷却することができる。
【0040】
そして、原子炉格納容器11の内部の空気の温度が低下し、圧力も低下すると、熱交換器33は、冷却水による原子炉格納容器11の内部の空気の冷却を終了する。ここで、原子炉格納容器11の内部の空気の温度と圧力が低下すると、空気が収縮して圧力が低下する。すると、油圧ユニット31は、第1室R1の空気が原子炉格納容器11の内部に吸引され、ピストン42が上方に移動し、第1室R1が縮小して第2室R2が拡大する。すると、油圧ユニット31は、油圧連結管53を通して水冷ユニット32の作動油を吸引する。
【0041】
水冷ユニット32は、第3室R3の作動油が油圧ユニット31の第2室R2に吸引され、ピストン52が上方に移動し、第3室R3が縮小して第4室R4が拡大する。すると、水冷ユニット32は、水冷連結管63を通して熱交換器33の冷却水を吸引する。熱交換器33は、容器61の内部の冷却水が水冷ユニット32の第4室R4に吸引され、容器61の内部が負圧となることから、ノズル62を通して原子炉格納容器11の外の空気を吸引する。そして、油圧ユニット31と水冷ユニット32と熱交換器33は、元の状態に戻る。なお、必要に応じて、水冷ユニット32や熱交換器33の冷却水を補充する。この場合、例えば、熱交換器33のノズル62に冷却水補充ライン71の一端部を連結し、冷却水補充ライン71の他端部にポンプ装置(ポンプ車など)72を介して冷却水タンク(海など)73を連結することが好ましい。
【0042】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る原子炉格納容器の冷却装置は、原子炉格納容器11の内部に配置され、シリンダ41の内部のピストン42により第1室R1と第2室R2が仕切られ、第1室R1が原子炉格納容器11の内部に連通し、第2室R2に作動油が充填される油圧ユニット31と、原子炉格納容器11の外部に配置され、シリンダ51の内部のピストン52により第3室R3と第4室R4が仕切られ、第3室R3が油圧連結管53を介して油圧ユニット31の第2室R2に連結され、第4室R4に冷却水が充填される水冷ユニット32と、原子炉格納容器11の内部に配置され、一端部が水冷連結管63を介して水冷ユニット32の第4室R4に連結され、他端部が原子炉格納容器11の外部に開放される熱交換器33とを備える。
【0043】
第1の態様に係る原子炉格納容器の冷却装置によれば、原子炉格納容器11の内部の圧力や温度が上昇すると、空気が膨張して圧力も上昇し、上昇した空気の圧力が連通管43から油圧ユニット31の第1室R1に作用し、ピストン42を移動させる。すると、第2室R2の作動油が油圧連結管53を通って水冷ユニット32に第3室R3に供給され、ピストン52を移動させる。すると、第4室R4の冷却水が水冷連結管63を通って熱交換器33に送られる。熱交換器33は、水冷ユニット32から送られた冷却水と原子炉格納容器11の内部の高温高圧の空気との間で熱交換し、原子炉格納容器11の内部の高温高圧の空気を冷却する。その結果、原子力設備10における電源が喪失した場合であっても、原子炉格納容器11を早期に冷却することができる。
【0044】
また、第1の態様に係る原子炉格納容器の冷却装置によれば、原子炉格納容器11の内部の空気は、原子炉格納容器11の内部に配置された油圧ユニット31の第1室R1までしか流れず、油圧ユニット31と水冷ユニット32は、第2室R2と第3室R3と水冷連結管63の内部で隔離され、原子炉格納容器11の外部の配置された水冷ユニット32の第4室R4と水冷連結管63と熱交換器33に充填された冷却水は、原子炉格納容器11の内部の空気と直接接触することはなく、原子炉格納容器11の内部の空気の汚染された場合であっても、汚染された空気が原子炉格納容器11の外部に漏洩することが抑制される。
【0045】
第2の態様に係る原子炉格納容器の冷却装置は、第1の態様に係る原子炉格納容器の冷却装置であって、さらに、油圧ユニット31と水冷ユニット32は、原子炉格納容器11の壁部を挟んで内部と外部に縦型配置され、油圧連結管53は、格納容器本体13の壁部を貫通し、一端部が油圧ユニット31の下部に配置される第2室R2に連結され、他端部が水冷ユニット32の上部に配置される第3室R3に連結される。これにより、油圧ユニット31と水冷ユニット32を原子炉格納容器11の内部で効率良く配置することができる。
【0046】
第3の態様に係る原子炉格納容器の冷却装置は、第1の態様または第2の態様に係る原子炉格納容器の冷却装置であって、さらに、熱交換器33は、油圧ユニット31より上方に配置される。これにより、高温高圧となりやすい原子炉格納容器11の上部の空気を積極的に冷却することができる。
【0047】
第4の態様に係る原子炉格納容器の冷却装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る原子炉格納容器の冷却装置であって、さらに、油圧ユニット31は、一端部が第1室R1に連結されて他端部が原子炉格納容器11の内部に開口する連通管43と、連通管43に原子炉格納容器11の内部の圧力に応じて開放する開放弁44が設けられる。これにより、原子炉格納容器11の内部の圧力が所定圧力に到達するまで、油圧ユニット31が作動することはなく、所定圧力の空気により開放弁44を開放して第1室R1に作用させることで、作動油を介して冷却水を適切に熱交換器33に供給することで、原子炉格納容器11の空気を効率良く冷却することができる。
【0048】
第5の態様に係る原子炉格納容器の冷却装置は、第4の態様に係る原子炉格納容器の冷却装置であって、さらに、開放弁44は、ラプチャーディスクを有する。これにより、開放弁44の構造の簡素化を図ることができる。
【0049】
第6の態様に係る原子力設備は、原子炉格納容器11と、原子炉格納容器11の内部に配置される原子炉15と、原子炉格納容器の冷却装置30とを備える。これにより、原子炉格納容器の冷却装置30は、原子力設備10における電源が喪失した場合であっても、原子炉格納容器11を早期に冷却することができ、安全性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 原子力設備
11 原子炉格納容器
12 基礎部
13 格納容器本体
14 構造物
15 原子炉
16 空間部
17 蒸気発生器
18 冷却水配管
19 キャビティ
20 冷却水ピット
21 冷却水噴射装置
22 冷却水経路
23 冷却水ポンプ
24 原子炉容器
25 炉心
30 原子炉格納容器の冷却装置
31 油圧ユニット
32 水冷ユニット
33 熱交換器
41 シリンダ
42 ピストン
43 連通管
44 開放弁
51 シリンダ
52 ピストン
53 油圧連結管
61 容器
62 ノズル
63 水冷連結管
71 冷却水補充ライン
72 ポンプ装置
73 冷却水タンク
R1 第1室
R2 第2室
R3 第3室
R4 第4室