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  • 特開-ベアスタンガン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009590
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ベアスタンガン
(51)【国際特許分類】
   A01M 27/00 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A01M27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023117888
(22)【出願日】2023-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】512138138
【氏名又は名称】池田 豊
(72)【発明者】
【氏名】池田 豊
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BB09
2B121BB31
2B121DA04
2B121EA21
2B121FA02
(57)【要約】
【課題】 解決しようとする課題は、熊にスタンガンを使用する際に障害となる、安全距離が確保できない点と、電極を素早く体深部に突き刺すことが困難な点であり、安全距離を確保し、電極を素早く体深部に突き刺すことが容易なスタンガンを提供することを課題とする。
【解決手段】 最長で槍程度の長さに伸長する多段階に伸縮する棒の先端に、電動モーターを駆動して高速回転するドリル刃が電極になっている、スタンガンを装着したことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒の先端に装着したスタンガンの電極を、電動モーターを駆動して高速回転するドリル刃とする機能を設けたことを特徴とする熊撃退棒。
【請求項2】
多段階に伸縮する棒が最大伸長時に標準的な槍の長さ(1.8メートル以上)まで伸長する機能を設けたことを特徴とする請求項1の熊撃退棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最長で槍程度の長さに伸長する多段階に伸縮する棒の先端に、電動モーターを駆動して高速回転するドリル刃が電極になっているスタンガンを装着した熊撃退棒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熊は極地や寒冷地に生息する大型獣であり、防寒対策として厚い毛皮や皮下脂肪を備えていて、体表面は強靭で弾力に富んでいる。そのため、刀剣や槍のような対人用の刃物では太刀打ちできず刃が立たない。熊に刃物で立ち向かって、確実な致命傷を与えることは困難であり、中途半端な傷を負わせると却って凶暴化する。その結果、古来からの先人の知恵により、熊から身を守る手段として刃物は使用しないという伝統がある。この伝統は、現在の熊対策に受け継がれている。
現在の標準的な熊対策は、鈴やラジオなどの音響で人間の存在を顕示し、熊に早期警戒を促して退去させる。接近して来たら、ゆっくりと後ずさりする。更に接近して来たら、忌避スプレーを噴霧する。最後は地面に伏せて防御姿勢を取る…という方法である。また火薬を使用した轟音玉なども使用される。これらの器具に共通した特徴は、熊に自主的な退去を促すことを目的としていて、熊が襲撃に転じた場合は対処できないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-130161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これは、次のような欠点があった。
人間が熊と遭遇した現場では、熊は退去と襲撃の二つの選択肢があるのに対し、人間は退去しかない。熊は人間を襲撃するか否か、更に捕食するか否かの決定権を持っている。熊が現場を掌握し、支配し、生殺与奪の権限を行使する強い立場にある。人間は熊に襲撃を思い留まるよう促し、襲撃する方針を固めた場合は、撤回するよう促す。言語を理解できない熊に、口頭で退去命令や命乞いをする。あくまでも熊の自主的な退去を期待し、望み、願い、祈り、運を天に任せる…という熊対策が、有史以来、連綿と続いている。
そして、熊が退去せずに襲撃するオプションを選択する原因は、冬眠明けか否か、空腹か否か、子連れか否か、発情期か否か、また、遭遇場面での恐怖、驚愕、興奮、イライラなど、熊のストレスと感情に左右され、これらが複合して、判断、意思決定、行動のプロセスに作用する。つまり、人間は「熊の気分に命を委ねている」ことになる。このような不確実かつ不安定な熊対策は、動物界の頂点に君臨する万物の霊長であり、あまたの動物を奴隷化・家畜化して支配・管理している人間として、あまり名誉なことではない。
熊対策がこのような現状に陥っている原因は、熊の襲撃を強制的かつ確実に阻止できる対処方法が、稀有な例外を除いて、現在のところ確立されていないからである。
例えば、山野で軍事行動中の兵士は、仕事道具として自動小銃、手榴弾、グレネードランチャーといった武器を携行しているから、熊の襲撃を強制的に阻止できる。森林伐採中の作業員も、チェーンソーを所持しているから同様である。カモ猟中のハンターは、威力の弱い一般的な12番径のショットガンとはいえ、それなりに阻止できる。こうした極めて特異な例外を除けば、圧倒的大多数の人間は、熊の襲撃に対して全く無力である。
人間が、鈴やラジオなどで熊に自主的な退去を促す現在の熊対策は、もし、熊が自主的に退去せず、襲撃する方針を固めた場合は、人間はそれに対処できない。最終的には熊を相手に素手で闘わざるを得ない破目になる。当然ながら人間が倒されて、場合によっては捕食される。さらに人間を捕食対象とすることを学習した熊は、いわゆる「人喰い熊」となって、深刻な二次被害を引き起こす。これが社会的な課題である。
今後とも、国土の開発によって熊の生息域は縮小するから、人間が熊と遭遇する機会は増加する。熊に自主的な退去を促すだけの熊対策から、たとえ襲撃されても迎撃できる熊対策へと転換することが、人間と熊の生活圏の棲み分け、共存共生を推進する。
現在の熊対策で、熊の襲撃を強制的に阻止しようと試みる唯一の器具は、スタンガンである。しかし、熊にスタンガンを使用する場合は、二つの課題がある。第1は、熊は人間と違って、危険なので接近できないことである。第2は、熊は人間と違って、深い剛毛と厚く強靭な皮膚に被われているため、体表面で放電しても十分な効果が得られないことである。たとえ、電極を鋭い刃物にしたとしても、熊に刃物は通用しない。電極を素早く体深部に突き刺すためには、一定の力を要し、その力を作用させる時間を要し、その時間は熊が静止していることを要する。さらに、体表面での放電は中途半端なダメージを与えるから、凶暴化を助長する。これが技術的な課題である。
【0005】
解決しようとする課題は、熊にスタンガンを使用する際に障害となる、安全距離が確保できない点と、電極を素早く体深部に突き刺すことが困難な点であり、安全距離を確保し、電極を素早く体深部に突き刺すことが容易なスタンガンを提供することを課題とする。
本発明は、以上のような欠点をなくすためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
「熊に刃物は通用しない」という古来からの先人の知恵により、熊から身を守る手段として刃物は使用しないという伝統があるといっても、その先人はおそらく機械工学や電気工学の知識の無い者だから、刃物は刃物でも電動式ドリル刃のような刃物の威力を知らずに教訓を残している。スタンガンの高電圧放電についても同様である。文明の利器を上手に工夫した刃物は、熊に十分通用するというコンセプトを出発点とする。
次に、人間が熊対策で用いる適正かつ有効な護身器具の5条件を示す。
(1)護身器具は、最悪の事態を想定して、殺傷能力を備えたものでなければならない。その理由は、熊に退去を促すだけの器具は、熊が退去せずに襲いかかって来た場合、対処できないからである。熊が殺意を持って殺傷能力のある鈎爪や牙を使うのだから、応戦する側も、未必の殺意を持って殺傷能力のある器具を使わなければ互角に渡り合えない。
(2)護身器具は、アウトファイトに適したものでなければならない。間合(対戦距離)は大きく取るべきである。人間が熊を相手にインファイト(接近戦)することは自殺行為である。剣の長さでは不十分で、槍の長さが適している。槍は熊の手が届かない位置から一方的に攻撃が加えられる。一般に、剣と槍が闘えば、技量が同等であれば槍が3倍有利とされている。心理的な余裕は恐怖心を克服して、冷静かつ的確な対処を可能にする。
(3)護身器具は、邪魔にならず携行に便利でなければならない。山に入る目的は「熊から身を守る」ことではない。目的は業務(林業、測量、学術調査、下刈り、除草、除雪、施設設備の保守点検など)、あるいはプライベート(登山、トレッキング、ハイキング、キャンプ、釣り、山菜採り、紅葉見物など)である。護身器具は、熊の生息域を常時職場としている、作業員が用いる業務用の器具は重厚長大であっても構わないが、一般個人用の器具は可能な限り小型軽量でコンパクトな形状とすべきである。
(4)護身器具は、法令の範囲で使用できるものでなければならない。例えば、38口径以上の拳銃は、熊被害ゼロを実現できる、理想的かつ完璧な技術的要素を備えているが、社会的制限によって利活用は禁止されている。
(5)護身器具は、操作が簡単で、習熟を要さず、誰でも使用できるものでなければならない。使用者の年齢、性別、体格、体力、戦闘能力、メンタル、および器具との相性とは無関係な汎用性が求められる。
【0007】
本発明は、通常は小型軽量なバトンまたはスティック状で、最長で槍程度の長さに伸長する多段階に伸縮する棒の先端に、電動モーターで高速回転する、1対の細長い着脱式のドリル刃が電極になっているスタンガンを装着したことを最も主要な特徴とする。
本発明は、以上の構成よりなる熊撃退棒である。
【発明の効果】
【0008】
次に、本発明のイノベーションまたはエポックメーキングとなり得る10項目を示す。
(1)熊が襲いかかって来たとき、強制的に撃退できる。
(2)熊の攻撃が届かない離れた安全な位置から、一方的に攻撃できる。
(3)小型軽量、コンパクトな形状で、邪魔にならずに持ち運びできる。
(4)一般市民に許容される範囲の、技術的要素で構成できる。
(5)老若男女を問わず、誰でも手軽に使用できる
(6)熊の生息域に立ち入る際に、心理的な不安や恐怖を軽減できる。
(7)熊の襲撃による、痛ましい人身事故を減少できる。
(8)熊に、人間に立ち向かうと危険だと学習させることができる。
(9)猟銃を発砲できない市街地で、熊を捕獲・駆除できる。
(10)人間が、動物界の支配者としての名誉を回復できる。
【0009】
熊が全く手の届かない離れた位置から一方的に攻撃が加えられ、1対の電極が高速回転する細長いドリル刃になっているスタンガンは、ドリル刃の鋼材に刻まれた螺旋状の切り刃と逃げ溝が、熊の体組織を高速で掘削しながら突き刺さるため、深い剛毛、弾力のある皮膚、分厚い皮下脂肪、硬い骨を簡単に貫通して、軽く押し当てただけで、吸い込まれるように深く突き刺さり、瞬時に体深部に到達して、高電圧の放電効果が最大化されることで、スタンタン本来の威力を発揮できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の斜視図である。(実施例1)
図2】本発明の斜視図である。(実施例2)
図3】本発明の実施説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、熊を主とする獰猛な野生獣と遭遇した際に、避難を補助する護身器具である。基本構造は、多段階に伸縮する棒と、その先端に装着したスタンガンにより構成される。これらが一体となることで、画期的な威力を発揮する。何世紀にも渡って熊に怯えて生きてきた人間に、福音をもたらす可能性がある。
伸縮する棒は、「槍のように長くなる」ところが主な特徴である。スタンガンは、「電極がドリルになっている」ところが最も主要な特徴である。
【0012】
棒は、多段階に伸縮し、収縮時はグリップの付いたバトンまたはステッキのような形状である。各段階の連結部分にロック機構があり、好みの長さに固定できる。最大伸長時は一般的な槍の長さ(6尺~12尺程度)とし、軽量で衝撃に強く折れ難い素材を用いる。
スタンガンは、可能な限り小型、軽量とする。形状は筒型が適している。出力はできるだけ大きく、承認限度とする。
電極は、単に細長く尖っているだけでは不十分である。熊特有の皮膚を突き破るには、一定の力と時間を必要とする。電極は近接して2本あるから力は分散して半減する。熊が動いて突き刺すのに手間取ると、体表面で放電して、中途半端なダメージを受けて凶暴化する。破壊的な腕力で器具を振り払おうとする。スタンガンは精密機器だから強い衝撃で破損する。また、針が胸骨や肋骨に当たれば先に進まない。骨内での放電は効果が薄い。このような理由で、電極はモーターを駆動して高速回転するドリル刃とする。
電源は、充電式バッテリーまたは電池を使用する。容量よりも小型軽量化を優先する。容量が小さいと連続使用時間が短縮するが、特に問題はない。その理由は、事態の進展は▲1▼熊が逃げる。▲2▼熊が倒れる。▲3▼人間が逃げる。▲4▼人間が倒れる。の4パターンしかないのだから、連続使用時間内には、必ずいずれかに決着しているからである。
モーター回転軸は、歯車機構で機械的に2本のシャフトに分岐すると共に、モーター側を電気的に絶縁する。2本のシャフトは、先端がドリル刃を支持する円筒になっていて軸と共に回転する。当該シャフトをスタンガン本体先端に導くために、2本のパイプが本体を貫通していてる。ドリル刃は、本体先端の着脱用の受穴から円筒に連結され、固定機構で固定される。本体先端にある2本の電極からドリル刃を含む回転系に集電装置(パンタグラフ)を接触させることで、ドリル刃自体が電極になる。
放電スイッチは、グリップに設けると棒の伸縮率に比例して配線が複雑化するから本体に設ける。対象に押し当てた反動で自動的に押されるタイプを選択する。電極は棒状で、スタンガン内部に収納され、ロックを外すとバネ機構で突き出す。安全装置を解除してから押すと放電する。熊には威嚇放電は無意味だから、電極の先端が体表面に接した位置に調整する。体表面では気絶しないが、一瞬だけ動きが止まるので、その間隙に深く刺す。
ドリル刃は、着脱式で各種形状があり、対戦相手(獣の種類)に合わせて使い分ける。
スタンガンの電源は、専用の電池、あるいはドリルの電源の一部を変換して供給する。
スタンガン、バッテリー、モーター、ドリルの機械電気機構に関する説明は省略する。
【0013】
熊と遭遇した際に、従来の護身器具を用いて、襲撃を思い留まるよう促したにもかかわらず、拒否された場合に、襲撃を強制的に阻止できる護身器具を、あまり邪魔にならずに携行できる、体積、重量、形状で実現した。
【0014】
本発明を使用するときは、▲1▼熊の生息地に到着したらドリル刃を装着する。▲2▼熊を発見したら棒を伸長する。▲3▼熊が接近したらスイッチを入れる。▲4▼熊が襲撃したら突き刺す。
応戦が開始したら、威嚇して退去を促すことは止めて、速やかに倒すことに専念する。攻撃は、月の輪を的にして突き刺す。月の輪のないヒグマは胸を狙うのが定石であるが、必ずしも定石にこだわらず、現場の状況に合わせて臨機応変に応戦する。上腕で棒や器具を振り払われるリスクを想定して、最初に上腕の可動域から離れた部位を攻撃する技法も間違ってはいない。熊が気絶するなど無力化したら、直ぐに戦意回復しないように放電を続ける。ただし、過度に放電すると心室細動を起こすから、動物保護の観点からほどほどに切り上げる。もし心臓に刺さった場合は、放電は過剰攻撃になるから直ぐに引き抜く。
【実施例0015】
(アタッチメント型)伸縮棒の先端にネジ穴を設け、電源部、モーター部、スタンガンが一体となったドリル付スタンガンを、底面部にネジ穴に適合するネジの付いたホルダーに収納し、棒の先端に装着する。(シングルハンド向)
【実施例0016】
(内蔵型)伸縮棒の先端の最内筒に、電源部、モーター部、スタンガンが一体となったドリル付スタンガンを収納し、最外筒をグリップとする。(ダブルハンド向)
【産業上の利用可能性】
【0017】
皮膚が厚く強靭な大型獣を緊急制圧または捕獲する際に、麻酔銃の代替として簡便かつ安価に利用できる。
【符号の説明】
【0018】
1 スタンガン
2 ドリル刃
3 スイッチ
4 モーター
5 バッテリー
6 ホルダー
7 伸縮棒
8 グリップ
9 ドリル刃ケース
図1
図2
図3