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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096051
(43)【公開日】2025-06-26
(54)【発明の名称】安全作業装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20250619BHJP
   F24F 13/28 20060101ALI20250619BHJP
   B01L 1/00 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F13/28
B01L1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212518
(22)【出願日】2023-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 健
【テーマコード(参考)】
3L058
4G057
【Fターム(参考)】
3L058BE08
3L058BF09
3L058BG05
4G057AA02
(57)【要約】
【課題】
安全作業装置で、前面シャッタを閉じた際に、薬剤や汚染物の作業空間への舞い上がりを抑制する。
【解決手段】
作業空間と、前記作業空間の前面に上下可動式の前面シャッタを有し、前記前面シャッタは、上側にずらした際に、前記前面シャッタの下に作業開口部を形成するものであり、前記作業空間からの排気を行う排気口と、前記排気口からの排気流路とを有する安全作業装置であって、前記前面シャッタを閉じた時に、前記前面シャッタ上部に筐体内開口が形成される安全作業装置。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業空間と、前記作業空間の前面に上下可動式の前面シャッタを有し、
前記前面シャッタは、上側にずらした際に、前記前面シャッタの下に作業開口部を形成するものであり、
前記作業空間からの排気を行う排気口と、前記排気口からの排気流路とを有する安全作業装置であって、
前記前面シャッタを閉じた時に、前記前面シャッタの上部に筐体内開口が形成される安全作業装置。
【請求項2】
請求項1記載の安全作業装置において、前記筐体内開口より上部に、上部開口を有する
安全作業装置。
【請求項3】
請求項2記載の安全作業装置において、前記前面シャッタを閉じたときに、前記上部開口、前記筐体内開口を通じて前記作業空間内に空気が流入する安全作業装置。
【請求項4】
請求項3記載の安全作業装置において、前記作業空間の上方に整流板を有する安全作業装置。
【請求項5】
請求項4記載の安全作業装置において、前記整流板の開口率が、前記前面シャッタの側で前記安全作業装置の背面側より高い安全作業装置。
【請求項6】
請求項4記載の安全作業装置において、前記整流板に位置付けられた照明を有する安全作業装置。
【請求項7】
請求項6記載の安全作業装置において、前記照明はLEDで、前記整流板に形成された穴に位置付けられて配置され、前記LEDが配置される穴は前記整流板に多数設けられた整流目的の穴より大きい安全作業装置。
【請求項8】
請求項4記載の安全作業装置において、前記整流板に位置付けられた静電気除去装置を有する安全作業装置。
【請求項9】
請求項8記載の安全作業装置において、前記静電気除去装置は、前記整流板で前記前面シャッタの側にずらして配置された安全作業装置。
【請求項10】
請求項9記載の安全作業装置において、前記静電気除去装置は、前記前面シャッタを閉じた際に動作する安全作業装置。
【請求項11】
請求項9記載の安全作業装置において、前記静電気除去装置は、針状電極と平面電極を有するイオナイザで、前記針状電極は、前記整流板の穴に位置付けられて配置され、前記針状電極の周辺を空気が流れるように構成されている安全作業装置。
【請求項12】
請求項4記載の安全作業装置において、前記整流板に位置付けられた照明と静電気除去装置を有し、前記静電気除去装置は前記照明より前面シャッタ側に配置される安全作業装置。
【請求項13】
請求項2記載の安全作業装置において、前記上部開口に対応して、下向きに開くダンパを有する安全作業装置。
【請求項14】
請求項2記載の安全作業装置において、前記上部開口に対応して、上部プレフィルタを有する安全作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全キャビネットやドラフトチャンバーなどの安全作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前面にシャッタを備え、その内側の空気を排気することで、安全に作業を可能とする安全作業装置が知られている。その一例として、特許文献1には作業空間とシャッタを有し、作業空間内の空気を排気する安全キャビネットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-122816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の安全キャビネットは、作業時にはシャッタ下の開口部から空気が流入し、その流入した空気をファンにより外部に排気する。これにより、作業空間内に適切な空気の流れを形成することを実現している。しかし、シャッタを閉じた場合、作業空間内が過度に陰圧となり、予期せぬ強い風の流れが生じてしまう。例えばシャッタと作業台の間の微小な隙間からの高速での空気の流入や、シャッタ周囲の隙間からの空気の流入などである。これらの空気の流れは、作業空間内に残存する薬剤や汚染物質の巻き上がりに繋がり、作業空間の壁面を汚染するという機内汚染のリスクや、予期せぬルートでの機外漏出のリスクにつながる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、シャッタを閉じた際にも作業空間の過度な陰圧化を防止し、作業空間に層流を形成することを実現するものである。これにより、作業空間で取り扱う薬剤や汚染物の作業空間への舞い上がりを抑制し、機内汚染や機外漏洩を抑制することが実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための、本発明の安全作業装置の一例を挙げるならば、以下のようになる。
【0007】
作業空間と、前記作業空間の前面に上下可動式の前面シャッタを有し、前記前面シャッタは、上側にずらした際に、前記前面シャッタの下に作業開口部を形成するものであり、前記作業空間からの排気を行う排気口と、前記排気口からの排気流路とを有する安全作業装置であって、前記前面シャッタを閉じた時に、前記前面シャッタ上部に筐体内開口が形成される安全作業装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前面シャッタを閉じた場合でも、作業空間で取り扱う薬剤や汚染物の作業空間への舞い上がりを抑制し、機内汚染や機外漏洩を抑制することが実現する。
【0009】
本発明の更なる構成、効果は、以下明細書全文により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の一実施例での、前面シャッタを開けた状態での説明図である。
図1B】本発明の一実施例での、前面シャッタを閉めた状態での説明図である。
図2A】本発明の他の実施例での、前面シャッタを開けた状態での説明図である。
図2B】本発明の他の実施例での、前面シャッタを閉めた状態での説明図である。
図3】本発明の他の実施例の説明図である。
図4図3の要部の一実施例の説明図である。
図5】本発明の他の実施例の説明図である。
図6図6の要部の一実施例の説明図である。
図7】本発明の他の実施例の説明図である。
図8A図7の要部の一実施例の説明図である。
図8B図7の要部の一実施例の説明図である。
図9】本発明の他の実施例の説明図である。
図10】本発明の他の実施例の説明図である。
図11】本発明の他の実施例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
図1Aは、本発明の一実施例の安全作業装置での、前面シャッタを開けた際の説明図である。構造的な特徴を説明するため、模式断面図にて説明する。
【0012】
下部筐体1の上に作業台2が構成されている。背面には背面板3a、上側には上部筐体5を有する。前面には前面シャッタ4を有し、2、3a、5、4で囲まれた領域が作業空間となる。3bは背面筐体で、3aと3bで囲まれた空間が内部排気ダクト22となる。なお、図1Aでは、内部排気ダクト22として安全作業装置と一体化で排気経路3を構成している例を図示しているが、排気経路を別配管などの形で安全作業装置と別体で構成してもよい。
【0013】
50は、外部排気ダクトである。内部排気ダクト22と接続し、安全作業装置からの排気を外部に導くダクトである。51は排気ファンである。図1Aでは、安全作業装置と別体に構成しており、例えば実験室や工場の建物側に配置することもできる。むろん、安全作業装置側に設けることを排除するものではない。
【0014】
図1Aは、前面シャッタ4が開いた状態、すなわち前面シャッタ4が上側に移動して開口を形成し、前面シャッタ4と作業台2の間に前面開口24が形成された状態である。このとき、排気ファン51による空気の排気により、排気ファンより安全装置側では陰圧となる。この結果、圧力差を解消するための空気の流れが生じる。これにより、外部からの空気は、前面開口24を通り、例えば空気の流れ30にて作業空間23を通る。その後、一例として、プレフィルタ20を通り、内部排気ダクト22内部に導入される。導入された空気は、一例として、HEPAフィルタ21を通過して、空気の流れ31にて、最終的に排気ファン51により排気される。
【0015】
次に、図1A図1Bを用い、本実施例の最大の特徴を説明する。
【0016】
図1Aおよび図1Bの両図に示すように、前面シャッタ4の前面上部には、前面筐体6が形成されている。そして、前面筐体6と上部筐体の間には、上部開口10が設けられている。
【0017】
図1Aの場合、すなわち前面シャッタ4が開状態となり図中上側に移動しているとき、前面シャッタ4は上部筐体5と重畳領域を有するように構成されている。このとき、上部開口10の存在は、前面シャッタ4と上部筐体5の重畳により、作業空間23と分離されている。
【0018】
図1Bの場合、すなわち前面シャッタ4が下に移動することで前面シャッタ4は閉状態となっている場合、前面開口24は消失し空気の流れ30は消失する。このとき、前面シャッタ4の下への移動の結果、前面シャッタ4と上部筐体5との重畳は解消している。これは、完全な解消でなくても、少なくとも一部で重畳が解消していればよい。この結果、前面シャッタ4と上部筐体5の間に、新たに筐体内開口12が形成される。それにより、上部開口10と筐体内開口12を経由して作業空間23に向けて新たな空気の流れ32が形成される。この新たな空気の流れ32はダウンフローを形成し、その後、空気の流れ33と、空気の流れ31を経由し、排気ファン51により外部へ排気されるようになる。
【0019】
このように、前面シャッタの移動により、前面シャッタの閉状態の際にダウンフローが自動的に形成され、また過度な陰圧の発生が防止できるため、薬剤や汚染物の作業空間への舞い上がりを抑制し、機内汚染や機外漏洩を抑制することが実現するという特徴的な効果を実現することができる。
【0020】
なお、追加で、作業空間の上部にファンや送風装置を設けることを排除するものではない。
【0021】
図1A図1Bを比較すると明らかなように、本発明の特徴は、前面シャッタの移動により、前面シャッタの上側に新たな開口を形成し、それにより作業空間内にダウンフローの形成を可能とする点にある。したがって、この新しい構成上の概念を充足する限りにおいて、種々の変形例や構成の違いは、全て本実施例の開示の範疇に含まれるものである。
【0022】
また、本発明の対象となる安全作業装置は、種々の装置に対し適用可能であるが、一例として、ドラフトチャンバーや安全キャビネット等に適用することが出来る。
【実施例0023】
本実施例は、基本的な構成は実施例1と同一である。本実施例と実施例1の違いは、整流板11を追加して備える点である。
【0024】
図2Aは、図1Aに対応する図である。違いは、整流板11を作業空間23の上側に有し、整流板11と作業台2の間が作業空間になる点である。そして、前面シャッタ4が上に移動しての開状態では、前面シャッタ4は、上部筐体5との間と同時に、整流板11との間でも重畳領域を有するように構成されている。
【0025】
次に、図2Bは、図2Bに対応する図である。前面シャッタ4が下に移動しての閉状態では、前面シャッタ4は、上部筐体5との間では重畳領域を解消するが、整流板11との間では依然として重畳領域を有するように構成されている。これにより、図1Aでの空気の流れ32は、整流板11を介して作業空間23に対して流れるようになる。このため、空気の流れ32に局所的に差が出すぎることを防ぐことが可能となるととともに、ダウンフローの風速が強化できるため、より薬剤や汚染物の作業空間への舞い上がりを抑制することが可能となる。
【0026】
整流板11の構成としては、種々の構成が適用可能であるが、例えばハニカムのような多角形形状の穴が金属や樹脂等に多数形成され、数十パーセント程度の開口率を形成された板状の構造物とすることが出来る。
【0027】
このとき、開口率が低すぎると気流抵抗が強くなり、かえってダウンフローが弱くなること、逆に、開口率が高すぎると、ダウンフローの整流効果が落ちることを鑑み、適正な範囲に開口率を設定することが望ましい。
【0028】
望ましい一例としては、ステンレス等の板状の構造物に、平面的に多数の穴をあけたパンチング板として構成し、開口率を20~40%程度、より望ましくは20~30%程度とすることが望ましい。
【0029】
また整流板11の開口率としては、製造の容易さの観点からは、平面的に全面で均一であることが望ましい。
【0030】
一方、前面シャッタ4の近傍でのダウンフローを強化するという観点からは、整流板11の開口率を、前面シャッタ4側で、背面板3a側より高くすることが望ましい。ただしその際も、作業空間23内での乱流の発生等を回避する目的で、開口率は20~40%の間で変えることがより望ましい。
【0031】
整流板の構成は、上記に限定するものではない。少なくとも一部が開口された板状構造体である限り、本実施例の開示の範疇に含むものである。
【実施例0032】
本実施例は、実施例2に対し、追加の構成要素を付加したものであり、実施例1及び2で説明の構成要素を有することを前提とするものである。
【0033】
図3は、図2Bを元にした説明図である。図3図2Bとの違いは、照明15を有する点にある。この照明15は、下向きに光を放ち、作業空間を照らす目的のものである。そのため、照明の個数を減らす目的で、例えば中央近辺に設けられることが望ましい。
【0034】
図4は、図3の照明15の、一例の要部説明図である。整流板11には開口部が多数形成されている。そして、整流板11の一部に、整流板11の多数の開口部よりも、さらに大きいサイズの開口が形成されている。整流板11の多数の開口のサイズを図中でW1とすれば、それより大きなW2の開口という意味である。このW2の開口に対応して、照明15が配置される。図4では、照明15を構成するデバイスのうち、LEDの発光デバイス部分15aがW2の間に収まるように配置されている。
【0035】
これにより、照明15からの光が整流板11で遮光されることを回避できるようになるため、照明15の光の利用効率を向上することが実現する。15bは、基板や放熱手段である。LEDを駆動するためのプリント基板や、放熱のためのヒートシンク等が相当する。15bを介して、15aに電源を供給し、LEDから光が下向きに照射されることとなる。
【0036】
図3に開示のように、整流板11があっても作業空間内への照明が可能となり、さらに図4の構成で整流板に対して照明15を設置することで、照明15の光利用効率を有効に活用できる。また整流板11がステンレスのような金属製の際には、照明15で発生する熱の拡散を迅速にするための補助ヒートシンクの役割を整流板11に兼ねさせることも可能となる。このとき、整流板11が大きいサイズであるため、照明15にとっては強力な放熱手段を具備したこととなり、照明15の寿命の向上も実現することが出来る。
【実施例0037】
本実施例は、実施例2に対し、追加の構成要素を付加したものであり、実施例1及び2で説明の構成要素を有することを前提とするものである。
【0038】
図5は、図2Bを元にした説明図である。図5図2Bとの違いは、静電気除去装置16を有する点にある。この静電気除去装置16は、整流板11に位置付けて配置されている。これは、仮に静電気除去装置16が整流板11よりも上側に配置されていた場合には、整流板11の存在が静電気除去装置16による静電気除去の性能を低下させることにつながるためである。
【0039】
図6は、本実施例での静電気除去装置16の、一実施例の要部説明図であり、イオナイザを用いた例の一実施形態である。
【0040】
整流板11に設けられた開口に位置付けて、静電気除去装置16が設置されている。図6では、静電気除去装置16として、イオン発生装置の一例を用いた例を説明している。16aは針状電極、16bは平面上電極で、この16aと16bの間に高電圧放電を行うことでイオンを発生する、いわゆるイオナイザの例である。16cは針状電極16aの支持体である。16aには絶縁被覆された配線16dを介して、16bには絶縁被覆された配線16eを介して、極性の異なる高電圧が印加される。
【0041】
実際の高電圧は高電圧発生回路より供給されるが、それは一般的な内容のため、詳細の記載は省略する。なお、必要なのは高電圧であり、電流自体は限りなく0に近いものとなるため、長時間放電を継続させることが可能となる。なお、極性の異なる高電圧、の意味には片方の極性が0あるいはGNDである場合も含まれるものである。さらに、極性は、一定ではなく、途中で異なるように電源装置を構成すると、プラスとマイナスの両方の静電気に対して除電効果を実現できるため、より望ましいものとなる。
【0042】
図6では16aから16eを中空に形成した図となっているが、実際には、固定の目的でプラスチック等の絶縁体で形成された固定部材を介して整流板11に配置される。
【0043】
図6の構成のように、整流板11の開口に対応付けて静電気除去装置16を配置し、また整流板11の開口を維持するように配置されているため、図2Bの空気の流れ32により、静電気除去装置16で発生したイオンがダウンフローによって作業空間内に導入されることになる。
【0044】
図5に戻り、静電気除去装置16の位置は、特には限定しないが、より望ましくは、図5に開示のように、中央より前面シャッタ4側にずらして配置することが望ましい。これは、前面シャッタ4の内側には、静電気によりゴミや汚染物質等の付着が生じるリスクが高いためである。
【0045】
なぜなら、作業空間を形成する他の辺は、金属製として静電気の帯電を抑制することが可能であるが、前面シャッタ4は透明であることが要求されることから、ガラスやプラスチック等の絶縁体で構成されることになるためである。このため、静電気除去装置16を前面シャッタ4側にずらして配置し、前面シャッタ4の内側に重点的にイオンが照射されるようにすることで、静電気の除去の必要性が高い場所に対して効率的に静電気除去を行うことが可能となり、静電気除去装置の個数を必要最小限に抑えることが出来るからである。
【0046】
静電気除去装置16は、前面シャッタ4の開状態、すなわち作業時には動作することはなく、一方、前面シャッタ4の閉状態では動作するように構成することが望ましい。これは、静電気除去装置16の動作を、前面シャッタ4の位置や状態と連動させるためのセンサやスイッチ等を設けることで実現できる。
【0047】
一例として、図7は、前面シャッタ4の位置に対応したスイッチ手段を設けた例である。17がスイッチであり、17aは前面シャッタと一体化して移動する可動接点、17bは前面筐体6に固定された固定接点である。その動作を、図8Aおよび図8Bを用いて説明する。
【0048】
図8Aは、前面シャッタ4が閉状態であり、静電気除去装置16に高電圧が供給されていることを示す説明図である。可動接点17aと固定接点17bは接触し両者間は導通状態となる。これにより、固定接点17bに供給される電圧が18aとして静電気除去装置16に供給される。
【0049】
図8Bは、前面シャッタ4が開状態であり、静電気除去装置16に高電圧が供給されていないことを示す説明図である。可動接点17aは前面シャッタ4が上側に移動することにより、同時に上側に移動する。これにより、固定接点17bとの間で離間し、両者は非導通状態となる。これにより、静電気除去装置16への電圧供給は遮断される。
【0050】
図8の例はあくまで一例であり、前面シャッタの開あるいは閉の状態に連動したセンサやスイッチを用いて静電気除去装置16への高電圧供給を制御する場合は、他の実現手段を用いていても本実施例の範疇に含むものである。
【0051】
また、センサやスイッチ動作時には通電を連続する形でなく、追加してリミットスイッチのような、あらかじめ設定された時間で通電が停止するような構成を用いることで、前面シャッタ4の閉鎖直後、例えば作業終了直後の一定時間のみ除電するような構成も実現することが出来る。
【実施例0052】
図9に、本実施例での図3もしくは図5に相当する図を示す。本実施例は、実施例3および実施例4の構成を同時に持つものであり、照明15と静電気除去装置16を同時に有する例である。図9に示すように、照明15と静電気除去装置16の位置関係は、静電気除去装置16が照明15より前面シャッタ4側に位置付けられて構成されることが望ましい。理由は、実施例3および実施例4にて説明した理由を同時に達成するためである。
【実施例0053】
図10は、図9を元にした説明図である。
【0054】
本実施例は、実施例1から実施例5のいずれかで開示の発明に付加的に用いられるものである。本実施例では、上部開口10に対応して、ダンパを設けたことを特徴とする。
【0055】
ダンパの一例として、図10では、蓋18とバネ19の組み合わせでダンパを構成している。これが上部開口10に対応して設けられている。
【0056】
前面シャッタ4が閉まった状態、すなわち閉状態では、排気ファン51による排気により、作業空間内の圧力が低下する。この圧力と、大気圧の差により、上部開口10では下向きの圧力が発生する。ここで、上部開口10に対応して、下向き開口のダンパを設けることで、大気圧の方が大きいため、気圧差による力でダンパは下向きに開き、上部開口10から空気が導入されることになる。このとき、ダンパは圧力差による動作のため、そのばね力は弱く設定することが必要である。
【0057】
なお、図示していないが、前面シャッタの開状態、すなわち前面シャッタが上に移動した状態では、図1Aに示すように、作業空間23と上部開口10の間では空間が分離されるため、ダンパには圧力がかからない状態となるため、ばね19の力により蓋18が閉まることとなる。
【0058】
このダンパは、特に長期休暇や点検作業等で、排気ファン51が長期間停止されるような際に、自動で上部開口10を閉じるが可能となるため、その際のゴミ等の安全作業装置内部への侵入を抑制することが可能となる。
【実施例0059】
図11は、図2Bに対応した説明図である。図2Bとの違いは、上部プレフィルタ25を有する点にある。これにより、上部開口10からの空気は、上部プレフィルタ25を通過してから大気の流れ32として作業空間23に流れるようになる。このため、前面シャッタ4の閉状態で、ゴミ等の安全作業装置内部への侵入を抑制することが可能となる。
【0060】
本発明での上述の各実施例は、単独あるいは組み合わせて用いることが可能である。それらの場合も、本実施例の発明の範疇に含みものである。
【0061】
また上記各実施例で詳述の技術思想を適用する限り、変形例や多少の構成上の際も、本発明の範疇に含むものである。
【0062】
本明細書で開示の発明は、例えば、その一例は以下のようになる。
<その1>
作業空間と、前記作業空間の前面に上下可動式の前面シャッタを有し、
前記前面シャッタは、上側にずらした際に、前記前面シャッタの下に作業開口部を形成するものであり、
前記作業空間からの排気を行う排気口と、前記排気口からの排気流路とを有する安全作業装置であって、
前記前面シャッタを閉じた時に、前記前面シャッタの上部に筐体内開口が形成される安全作業装置。
<その2>
<その1>記載の安全作業装置において、前記筐体内開口より上部に、上部開口を有する安全作業装置。
<その3>
<その2>記載の安全作業装置において、前記前面シャッタを閉じたときに、前記上部開口、前記筐体内開口を通じて前記作業空間内に空気が流入する安全作業装置。
<その4>
<その3>記載の安全作業装置において、前記作業空間の上方に整流板を有する安全作業装置。
<その5>
<その4>記載の安全作業装置において、
前記整流板の開口率が、前記前面シャッタの側で前記安全作業装置の背面側より高い安全作業装置。
<その6>
<その4>記載の安全作業装置において、前記整流板に位置付けられた照明を有する安全作業装置。
<その7>
<その6>記載の安全作業装置において、前記照明はLEDで、前記整流板に形成された穴に位置付けられて配置され、前記LEDが配置される穴は前記整流板に多数設けられた整流目的の穴より大きい安全作業装置。
<その8>
<その4>記載の安全作業装置において、前記整流板に位置付けられた静電気除去装置を有する安全作業装置。
<その9>
<その8>記載の安全作業装置において、前記静電気除去装置は、前記整流板で前記前面シャッタの側にずらして配置された安全作業装置。
<その10>
<その9>記載の安全作業装置において、前記静電気除去装置は、前記前面シャッタを閉じた際に動作する安全作業装置。
<その11>
<その9>記載の安全作業装置において、前記静電気除去装置は、針状電極と平面電極を有するイオナイザで、前記針状電極は、前記整流板の穴に位置付けられて配置され、前記針状電極の周辺を空気が流れるように構成されている安全作業装置。
<その12>
<その4>記載の安全作業装置において、
前記整流板に位置付けられた照明と静電気除去装置を有し、前記静電気除去装置は前記照明より前面シャッタ側に配置される安全作業装置。
<その13>
<その2>記載の安全作業装置において、前記上部開口に対応して、下向きに開くダンパを有する安全作業装置。
<その14>
<その2>記載の安全作業装置において、前記上部開口に対応して、上部プレフィルタを有する安全作業装置。
【符号の説明】
【0063】
1:下部筐体
2:作業台
3a:背面板
4:前面シャッタ
5:上部筐体
6:前面筐体
10:上部開口
11:整流板
12:筐体内開口
15:照明
16:静電気除去装置
20:プレフィルタ
21:HEPAフィルタ
22:内部排気ダクト
23:作業空間
24:前面開口
25:上部プレフィルタ
30、31、32、33:空気の流れ
50:外部排気ダクト
51:排気ファン
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11