(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096051
(43)【公開日】2025-06-26
(54)【発明の名称】安全作業装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20250619BHJP
F24F 13/28 20060101ALI20250619BHJP
B01L 1/00 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F13/28
B01L1/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212518
(22)【出願日】2023-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 健
【テーマコード(参考)】
3L058
4G057
【Fターム(参考)】
3L058BE08
3L058BF09
3L058BG05
4G057AA02
(57)【要約】
【課題】
安全作業装置で、前面シャッタを閉じた際に、薬剤や汚染物の作業空間への舞い上がりを抑制する。
【解決手段】
作業空間と、前記作業空間の前面に上下可動式の前面シャッタを有し、前記前面シャッタは、上側にずらした際に、前記前面シャッタの下に作業開口部を形成するものであり、前記作業空間からの排気を行う排気口と、前記排気口からの排気流路とを有する安全作業装置であって、前記前面シャッタを閉じた時に、前記前面シャッタ上部に筐体内開口が形成される安全作業装置。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業空間と、前記作業空間の前面に上下可動式の前面シャッタを有し、
前記前面シャッタは、上側にずらした際に、前記前面シャッタの下に作業開口部を形成するものであり、
前記作業空間からの排気を行う排気口と、前記排気口からの排気流路とを有する安全作業装置であって、
前記前面シャッタを閉じた時に、前記前面シャッタの上部に筐体内開口が形成される安全作業装置。
【請求項2】
請求項1記載の安全作業装置において、前記筐体内開口より上部に、上部開口を有する
安全作業装置。
【請求項3】
請求項2記載の安全作業装置において、前記前面シャッタを閉じたときに、前記上部開口、前記筐体内開口を通じて前記作業空間内に空気が流入する安全作業装置。
【請求項4】
請求項3記載の安全作業装置において、前記作業空間の上方に整流板を有する安全作業装置。
【請求項5】
請求項4記載の安全作業装置において、前記整流板の開口率が、前記前面シャッタの側で前記安全作業装置の背面側より高い安全作業装置。
【請求項6】
請求項4記載の安全作業装置において、前記整流板に位置付けられた照明を有する安全作業装置。
【請求項7】
請求項6記載の安全作業装置において、前記照明はLEDで、前記整流板に形成された穴に位置付けられて配置され、前記LEDが配置される穴は前記整流板に多数設けられた整流目的の穴より大きい安全作業装置。
【請求項8】
請求項4記載の安全作業装置において、前記整流板に位置付けられた静電気除去装置を有する安全作業装置。
【請求項9】
請求項8記載の安全作業装置において、前記静電気除去装置は、前記整流板で前記前面シャッタの側にずらして配置された安全作業装置。
【請求項10】
請求項9記載の安全作業装置において、前記静電気除去装置は、前記前面シャッタを閉じた際に動作する安全作業装置。
【請求項11】
請求項9記載の安全作業装置において、前記静電気除去装置は、針状電極と平面電極を有するイオナイザで、前記針状電極は、前記整流板の穴に位置付けられて配置され、前記針状電極の周辺を空気が流れるように構成されている安全作業装置。
【請求項12】
請求項4記載の安全作業装置において、前記整流板に位置付けられた照明と静電気除去装置を有し、前記静電気除去装置は前記照明より前面シャッタ側に配置される安全作業装置。
【請求項13】
請求項2記載の安全作業装置において、前記上部開口に対応して、下向きに開くダンパを有する安全作業装置。
【請求項14】
請求項2記載の安全作業装置において、前記上部開口に対応して、上部プレフィルタを有する安全作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全キャビネットやドラフトチャンバーなどの安全作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前面にシャッタを備え、その内側の空気を排気することで、安全に作業を可能とする安全作業装置が知られている。その一例として、特許文献1には作業空間とシャッタを有し、作業空間内の空気を排気する安全キャビネットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の安全キャビネットは、作業時にはシャッタ下の開口部から空気が流入し、その流入した空気をファンにより外部に排気する。これにより、作業空間内に適切な空気の流れを形成することを実現している。しかし、シャッタを閉じた場合、作業空間内が過度に陰圧となり、予期せぬ強い風の流れが生じてしまう。例えばシャッタと作業台の間の微小な隙間からの高速での空気の流入や、シャッタ周囲の隙間からの空気の流入などである。これらの空気の流れは、作業空間内に残存する薬剤や汚染物質の巻き上がりに繋がり、作業空間の壁面を汚染するという機内汚染のリスクや、予期せぬルートでの機外漏出のリスクにつながる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、シャッタを閉じた際にも作業空間の過度な陰圧化を防止し、作業空間に層流を形成することを実現するものである。これにより、作業空間で取り扱う薬剤や汚染物の作業空間への舞い上がりを抑制し、機内汚染や機外漏洩を抑制することが実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための、本発明の安全作業装置の一例を挙げるならば、以下のようになる。
【0007】
作業空間と、前記作業空間の前面に上下可動式の前面シャッタを有し、前記前面シャッタは、上側にずらした際に、前記前面シャッタの下に作業開口部を形成するものであり、前記作業空間からの排気を行う排気口と、前記排気口からの排気流路とを有する安全作業装置であって、前記前面シャッタを閉じた時に、前記前面シャッタ上部に筐体内開口が形成される安全作業装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前面シャッタを閉じた場合でも、作業空間で取り扱う薬剤や汚染物の作業空間への舞い上がりを抑制し、機内汚染や機外漏洩を抑制することが実現する。
【0009】
本発明の更なる構成、効果は、以下明細書全文により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の一実施例での、前面シャッタを開けた状態での説明図である。
【
図1B】本発明の一実施例での、前面シャッタを閉めた状態での説明図である。
【
図2A】本発明の他の実施例での、前面シャッタを開けた状態での説明図である。
【
図2B】本発明の他の実施例での、前面シャッタを閉めた状態での説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0011】
図1Aは、本発明の一実施例の安全作業装置での、前面シャッタを開けた際の説明図である。構造的な特徴を説明するため、模式断面図にて説明する。
【0012】
下部筐体1の上に作業台2が構成されている。背面には背面板3a、上側には上部筐体5を有する。前面には前面シャッタ4を有し、2、3a、5、4で囲まれた領域が作業空間となる。3bは背面筐体で、3aと3bで囲まれた空間が内部排気ダクト22となる。なお、
図1Aでは、内部排気ダクト22として安全作業装置と一体化で排気経路3を構成している例を図示しているが、排気経路を別配管などの形で安全作業装置と別体で構成してもよい。
【0013】
50は、外部排気ダクトである。内部排気ダクト22と接続し、安全作業装置からの排気を外部に導くダクトである。51は排気ファンである。
図1Aでは、安全作業装置と別体に構成しており、例えば実験室や工場の建物側に配置することもできる。むろん、安全作業装置側に設けることを排除するものではない。
【0014】
図1Aは、前面シャッタ4が開いた状態、すなわち前面シャッタ4が上側に移動して開口を形成し、前面シャッタ4と作業台2の間に前面開口24が形成された状態である。このとき、排気ファン51による空気の排気により、排気ファンより安全装置側では陰圧となる。この結果、圧力差を解消するための空気の流れが生じる。これにより、外部からの空気は、前面開口24を通り、例えば空気の流れ30にて作業空間23を通る。その後、一例として、プレフィルタ20を通り、内部排気ダクト22内部に導入される。導入された空気は、一例として、HEPAフィルタ21を通過して、空気の流れ31にて、最終的に排気ファン51により排気される。
【0015】
次に、
図1Aと
図1Bを用い、本実施例の最大の特徴を説明する。
【0016】
図1Aおよび
図1Bの両図に示すように、前面シャッタ4の前面上部には、前面筐体6が形成されている。そして、前面筐体6と上部筐体の間には、上部開口10が設けられている。
【0017】
図1Aの場合、すなわち前面シャッタ4が開状態となり図中上側に移動しているとき、前面シャッタ4は上部筐体5と重畳領域を有するように構成されている。このとき、上部開口10の存在は、前面シャッタ4と上部筐体5の重畳により、作業空間23と分離されている。
【0018】
図1Bの場合、すなわち前面シャッタ4が下に移動することで前面シャッタ4は閉状態となっている場合、前面開口24は消失し空気の流れ30は消失する。このとき、前面シャッタ4の下への移動の結果、前面シャッタ4と上部筐体5との重畳は解消している。これは、完全な解消でなくても、少なくとも一部で重畳が解消していればよい。この結果、前面シャッタ4と上部筐体5の間に、新たに筐体内開口12が形成される。それにより、上部開口10と筐体内開口12を経由して作業空間23に向けて新たな空気の流れ32が形成される。この新たな空気の流れ32はダウンフローを形成し、その後、空気の流れ33と、空気の流れ31を経由し、排気ファン51により外部へ排気されるようになる。
【0019】
このように、前面シャッタの移動により、前面シャッタの閉状態の際にダウンフローが自動的に形成され、また過度な陰圧の発生が防止できるため、薬剤や汚染物の作業空間への舞い上がりを抑制し、機内汚染や機外漏洩を抑制することが実現するという特徴的な効果を実現することができる。
【0020】
なお、追加で、作業空間の上部にファンや送風装置を設けることを排除するものではない。
【0021】
図1Aと
図1Bを比較すると明らかなように、本発明の特徴は、前面シャッタの移動により、前面シャッタの上側に新たな開口を形成し、それにより作業空間内にダウンフローの形成を可能とする点にある。したがって、この新しい構成上の概念を充足する限りにおいて、種々の変形例や構成の違いは、全て本実施例の開示の範疇に含まれるものである。
【0022】
また、本発明の対象となる安全作業装置は、種々の装置に対し適用可能であるが、一例として、ドラフトチャンバーや安全キャビネット等に適用することが出来る。
整流板11の構成としては、種々の構成が適用可能であるが、例えばハニカムのような多角形形状の穴が金属や樹脂等に多数形成され、数十パーセント程度の開口率を形成された板状の構造物とすることが出来る。
このとき、開口率が低すぎると気流抵抗が強くなり、かえってダウンフローが弱くなること、逆に、開口率が高すぎると、ダウンフローの整流効果が落ちることを鑑み、適正な範囲に開口率を設定することが望ましい。
望ましい一例としては、ステンレス等の板状の構造物に、平面的に多数の穴をあけたパンチング板として構成し、開口率を20~40%程度、より望ましくは20~30%程度とすることが望ましい。
一方、前面シャッタ4の近傍でのダウンフローを強化するという観点からは、整流板11の開口率を、前面シャッタ4側で、背面板3a側より高くすることが望ましい。ただしその際も、作業空間23内での乱流の発生等を回避する目的で、開口率は20~40%の間で変えることがより望ましい。