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特開2025-96125摺動部材、定着装置、及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096125
(43)【公開日】2025-06-26
(54)【発明の名称】摺動部材、定着装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20250619BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024137038
(22)【出願日】2024-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2023211368
(32)【優先日】2023-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大森 健司
(72)【発明者】
【氏名】吉川 亮平
(72)【発明者】
【氏名】永松 泰樹
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA23
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB05
2H033BB13
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB38
2H033BB39
2H033BE00
(57)【要約】
【課題】摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供すること。
【解決手段】摺動面の幅方向中央部に、複数の第1の溝が、前記第1の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、前記第1の溝と摺動方向とのなす角が45°以上90°以下であり、摺動部材を前記第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、前記第1の溝における、摺動方向下流側の前記第1の溝の壁面と前記摺動方向との成す角度Aが21°以上45°以下である摺動部材。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動面の幅方向中央部に、複数の第1の溝が、前記第1の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、
前記第1の溝と摺動方向とのなす角が45°以上90°以下であり、
摺動部材を前記第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、前記第1の溝における、摺動方向下流側の前記第1の溝の壁面と前記摺動方向との成す角度Aが21°以上45°以下である摺動部材。
【請求項2】
前記摺動部材を前記第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、前記第1の溝における、摺動方向上流側の前記第1の溝の壁面と前記摺動方向との成す角度Bが10°以上35°以下である請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
前記第1の溝として、摺動面の幅方向に沿った複数の溝が、摺動方向に間隔をもって設けられている請求項1に記載の摺動部材。
【請求項4】
前記摺動面の幅方向中央部に、複数の第2の溝が、前記第2の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、
前記第1の溝と前記第2の溝とのなす角度が45°以上90°以下である、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項5】
前記第1の溝は摺動方向と垂直方向に沿って連続的に設けられており、前記第2の溝は摺動方向に沿って断続的に設けられている請求項4に記載の摺動部材。
【請求項6】
前記第1の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少している請求項1に記載の摺動部材。
【請求項7】
前記第2の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少している請求項4に記載の摺動部材。
【請求項8】
前記角度Aが、23°以上40°以下である請求項1に記載の摺動部材。
【請求項9】
前記角度Bが、15°以上30°以下である請求項2に記載の摺動部材。
【請求項10】
前記角度Aと前記角度Bとの差は、絶対値で5°以上30°以下である請求項2に記載の摺動部材。
【請求項11】
前記角度Aと前記角度Bとの差は、絶対値で7°以上25°以下である請求項10に記載の摺動部材。
【請求項12】
第1回転体と、
前記第1回転体に接して配設された第2回転体と、
前記第2回転体の内周面に配設され、前記第2回転体の内周面から前記第2回転体を前記第1回転体へ押圧する押圧部材と、
前記第2回転体の内周面と前記押圧部材との間に介在する、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の摺動部材と、
前記第2回転体の内周面と前記摺動部材との間に介在する潤滑剤と、
を備える定着装置。
【請求項13】
像保持体と、
像保持体表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
現像剤を用いて前記潜像をトナー像に現像する現像装置と、
記録媒体に現像された前記トナー像を転写する転写装置と、
前記記録媒体上の前記トナー像を定着する、請求項12に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部材、定着装置、及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、「回転部材と、前記回転部材とともに回転するベルト部材と、前記ベルト部材を介して前記回転部材との間でニップ部を形成するニップ形成部材とを有し、前記ニップ部に用紙を通過させる定着装置において、前記ベルト部材と前記ニップ形成部材との間に介在させる摺動部材であって、前記摺動部材は、前記ベルト部材の内周面と摺動する側の面である摺動面に、前記ベルト部材の内周面と摺接する摺接面と、該摺接面よりも凹んだ溝である凹溝とを有し、前記凹溝は、前記摺接面に対して前記ベルト部材の摺動下流方向が浅くなる傾斜した傾斜面を溝底に有することを特徴とする定着装置用摺動部材。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-156529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、摺動面の幅方向中央部に、複数の第1の溝が、第1の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、第1の溝と摺動方向とのなす角度が45°以上90°以下であり、摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、複数の第1の溝における、摺動方向下流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Aが21°未満又は45°超えである摺動部材に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段は、下記態様を含む。
<1>
摺動面の幅方向中央部に、複数の第1の溝が、前記第1の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、
前記第1の溝と摺動方向とのなす角が45°以上90°以下であり、
摺動部材を前記第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、前記第1の溝における、摺動方向下流側の前記第1の溝の壁面と前記摺動方向との成す角度Aが21°以上45°以下である摺動部材。
<2>
前記摺動部材を前記第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、前記第1の溝における、摺動方向上流側の前記第1の溝の壁面と前記摺動方向との成す角度Bが10°以上35°以下である<1>に記載の摺動部材。
<3>
前記第1の溝として、摺動面の幅方向に沿った複数の溝が、摺動方向に間隔をもって設けられている<1>又は<2>に記載の摺動部材。
<4>
前記摺動面の幅方向中央部に、複数の第2の溝が、前記第2の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、
前記第1の溝と前記第2の溝とのなす角度が45°以上90°以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の摺動部材。
<5>
前記第1の溝は摺動方向と垂直方向に沿って連続的に設けられており、前記第2の溝は摺動方向に沿って断続的に設けられている<4>に記載の摺動部材。
<6>
前記第1の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少している<1>~<5>のいずれか1項に記載の摺動部材。
<7>
前記第2の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少している<4>に記載の摺動部材。
<8>
前記角度Aが、23°以上40°以下である<1>~<7>のいずれか1項に記載の摺動部材。
<9>
前記角度Bが、15°以上30°以下である<2>に記載の摺動部材。
<10>
前記角度Aと前記角度Bとの差は、絶対値で5°以上30°以下である<2>に記載の摺動部材。
<11>
前記角度Aと前記角度Bとの差は、絶対値で7°以上25°以下である<10>に記載の摺動部材。
<12>
第1回転体と、
前記第1回転体に接して配設された第2回転体と、
前記第2回転体の内周面に配設され、前記第2回転体の内周面から前記第2回転体を前記第1回転体へ押圧する押圧部材と、
前記第2回転体の内周面と前記押圧部材との間に介在する、<1>~<11>のいずれか1項に記載の摺動部材と、
前記第2回転体の内周面と前記摺動部材との間に介在する潤滑剤と、
を備える定着装置。
<13>
像保持体と、
像保持体表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
現像剤を用いて前記潜像をトナー像に現像する現像装置と、
記録媒体に現像された前記トナー像を転写する転写装置と、
前記記録媒体上の前記トナー像を定着する、<12>に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0006】
<1>、又は<3>に係る発明によれば、摺動面の幅方向中央部に、複数の第1の溝が、第1の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、第1の溝と摺動方向とのなす角度が45°以上90°以下であり、摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、第1の溝における、摺動方向下流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Aが21°未満又は45°超えである摺動部材に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供することである。
【0007】
<2>に係る発明によれば、摺動部材を前記第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、第1の溝における、摺動方向上流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Bが10°未満又は35°超えである場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
<4>に係る発明によれば、摺動面の幅方向中央部に、第1の溝とのなす角度が45°以上90°以下である複数の第2の溝が、前記第2の溝の幅方向に間隔をもって設けられていない場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
<5>に係る発明によれば、第1の溝が摺動方向と垂直方向に沿って連続的に設けられている場合、又は第2の溝が摺動方向に沿って断続的に設けられている場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
<6>に係る発明によれば、第1の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて変化しない場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
<7>に係る発明によれば、第2の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて変化しない場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
<8>に係る発明によれば、角度Aが、23°未満又は40°超えである場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
<9>に係る発明によれば、角度Bが、15°未満又は30°超えである場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
【0008】
<10>に係る発明によれば、角度Aと角度Bとの差が絶対値で5°未満又は30°超えである場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
<11>に係る発明によれば、角度Aと角度Bとの差が絶対値で7°未満又は25°超えである場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
【0009】
<12>、又は<13>に係る発明によれば、摺動面の幅方向中央部に、複数の第1の溝が、第1の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、第1の溝と摺動方向とのなす角度が45°以上90°以下であり、摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、複数の第1の溝における、摺動方向下流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Aが21°未満又は45°超えである摺動部材を適用した場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を備えた定着装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る定着装置の一例を示す概略図である。
図3】本実施形態に係る摺動部材の一例を示す概略平面図である。
図4】本実施形態に係る摺動部材の他の一例を示す概略平面図である。
図5】本実施形態に係る摺動部材の一例を示す概略断面図である。
図6】本実施形態に係る摺動部材の他の一例を示す概略平面図である。
図7】本実施形態に係る摺動部材の他の一例を示す概略平面図である。
図8】本実施形態に係る摺動部材の他の一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
各成分の量について言及する場合、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0013】
図面を参照しつつ、実施形態について説明する場合、実質的に同一の機能を有する部材には全図を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0014】
<摺動部材>
本実施形態に係る摺動部材は、摺動面の幅方向中央部に、複数の第1の溝が、第1の溝の幅方向に間隔をもって設けられている。
第1の溝と摺動方向とのなす角度が45°以上90°以下である。
そして、摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、第1の溝における、摺動方向下流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Aは、21°以上45°以下である。
なお、「第1の溝に垂直方向」とは、第一の溝の長手方向に対して垂直する方向を示す。
【0015】
本実施形態に係る摺動部材は、上記構成により、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材となる。その理由は、次の通り推測される。
【0016】
従来、摺動部材では、摺動面に、幅方向に沿った又は傾斜した複数の溝を、溝の幅方向に間隔をもって複数の溝を設ける技術が知られている。溝を設けると、潤滑剤が溝に溜まることで、摺動部材の摺動面と被摺動面との接触部に潤滑剤が安定して供給され、摺動抵抗が低減する。
しかし、近年、さらなる摺動抵抗の低減に加え、低摺動抵抗の維持が要求されている。
【0017】
それに対して、本実施形態に係る摺動部材では、摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、複数の第1の溝における、摺動方向下流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Aを21°以上45°以下とする。
角度Aを上記範囲とすることで、溝を設けることによる被摺動面との摩擦係数の上昇を抑えつつ、さらに溝に溜まる潤滑剤が摺動部材の摺動面と被摺動面との接触部に安定して供給される。
【0018】
以上から、本実施形態に係る摺動部材は、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材となると推測される。
【0019】
以下、本実施形態に係る摺動部材の詳細について説明する。
【0020】
(溝)
本実施形態に係る摺動部材は、例えば、摺動面の幅方向中央部に、第1の溝として、摺動部材の幅方向に沿った複数の溝が、摺動方向に間隔をもって設けられている(図3参照)。
【0021】
摺動面の幅方向中央部とは、摺動部材の幅方向の両縁から中心に向かった長さが、各々、摺動面の幅の18%である領域を摺動面の幅方向両端部とし、当該両端部に挟まれた領域を示す。
【0022】
摺動面の幅方向に沿った複数の第1の溝は、摺動面の幅方向中央部に設けられていればよい。
具体的には、摺動面の幅方向に沿った複数の第1の溝は、摺動面の幅方向の中央部及び両端部に設けられていてもよいし(図3参照)、摺動面の幅方向中央部のみに設けられていてもよい(図4参照)。
なお、摺動面の幅方向に沿った複数の第1の溝が、摺動面の幅方向中央部のみに設けられている場合、摺動面の幅方向両端部には、幅方向中央部の第1の溝に連結した傾斜溝を設けることがよい(図4参照)。傾斜溝は、当該連結部が摺動方向の上流側となるように、幅方向に傾斜して設けることがよい(図4参照)。傾斜溝を設けることで、摺動面の幅方向中央部から両端部に潤滑剤が逃げ難くなり、低摺動抵抗の維持性が高まる。
【0023】
ここで、図3及び図4中、SSは摺動面、TAは第1の溝、TCは傾斜溝、Cは摺動面の幅方向中央部、Eは摺動面の幅方向両端部、矢印SDは摺動方向を示す。
【0024】
摺動部材を第1の溝に垂直方向(図3の態様では摺動方向)かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、複数の第1の溝における、摺動方向下流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Aは、21°以上45°以下である。角度Aは、23°以上40°以下が好ましく、25°以上30°以下がより好ましい。
角度Aが21°未満であると、第1の溝に滞留した潤滑剤が摺動面と被摺動面との接触部に供給され難くなり、摺動抵抗が上昇する。
角度Aが45°超えであると、被摺動面との摩擦係数が上昇し、摺動抵抗が上昇する。
【0025】
摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、複数の第1の溝における、摺動方向上流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Bは、10°以上35°以下が好ましく、15°以上30°以下がより好ましく、12°以上25°以下がさら好ましい。
角度Bが35°以上であると、第1の溝に滞留した潤滑剤が摺動面と被摺動面との接触部に供給され易くなり、摺動抵抗が低減し、低摺動抵抗の維持性も向上する。
角度Bが10°以下であると、被摺動面との摩擦係数が上昇し難く、摺動抵抗が低減し、低摺動抵抗の維持性も向上する。
【0026】
角度Aと角度Bとの差は、低摺動抵抗、及び低摺動抵抗の維持性の向上の観点から、絶対値で、5°以上30°以下が好ましく、7°以上25°以下がより好ましく、10°以上20°以下がさらに好ましい。
【0027】
摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、第1の溝の深さは、低摺動抵抗、及び低摺動抵抗の維持性の向上の観点から、15μm以上45μm以下が好ましく、20μm以上40μm以下がより好ましく、25μm以上38μm以下がさらに好ましい。
摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、第1の溝の幅は、低摺動抵抗、及び低摺動抵抗の維持性の向上の観点から、70μm以上190μm以下が好ましく、85μm以上180μm以下がより好ましく、100μm以上170μm以下がさらに好ましい。
摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、第1の溝のピッチ(つまり第1の溝の間隔)は、低摺動抵抗、及び低摺動抵抗の維持性の向上の観点から、200μm以上900μm以下が好ましく、300μm以上700μm以下がより好ましく、400μm以上500μm以下がさらに好ましい。
【0028】
ここで、摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したときの、角度A、角度B、第1の溝の深さ、第1の溝の幅及び第1の溝のピッチは、次の通り定義される(図5参照)。
【0029】
角度Aとは、第1の溝の深さの1/3の位置における摺動方向下流側の第1の溝の壁面と接する接線と、摺動方向との成す角度(具体的には鋭角)を意味する。
角度Bとは、第1の溝の深さの1/3の位置における摺動方向上流側の第1の溝の壁面と接する接線と、摺動方向との成す角度(具体的には鋭角)を意味する。
第1の溝の深さとは、隣り合う第1の溝間の摺動面に相当する基準線から、最も深い第1の溝の底点までの長さを意味する。なお、基準線は、隣り合う第1の溝間の摺動面中心における摺動部材の厚さを10点測定した算術平均値となる線とする。
第1の溝の幅とは、隣り合う第1の溝間の摺動面に相当する基準線と交差する溝の縁間の長さを意味する。
第1の溝のピッチとは、隣り合う第1の溝における、最も深い第1の溝の底点の間の長さを意味する。
【0030】
そして、角度A、角度B、第1の溝の深さ、第1の溝の幅及び第1の溝のピッチは、各々、10点を測定した算術平均値とする。
【0031】
ここで、図5中の符号は、次の事項を示す。
SS:摺動面
TA :第1の溝
A :角度A
B :角度B
D :第1の溝の深さ
W :第1の溝の幅
P :第1の溝のピッチ
SD:摺動方向
T1:第1の溝の深さの1/3の位置における摺動方向下流側の第1の溝の壁面
R1:第1の溝の深さの1/3の位置における摺動方向下流側の第1の溝の壁面と接する接線
T2:第1の溝の深さの1/3の位置における摺動方向上流側の第1の溝の壁面
R2:第1の溝の深さの1/3の位置における摺動方向上流側の第1の溝の壁面と接する接線
R3:隣り合う第1の溝間の摺動面中心
R :隣り合う第1の溝間の摺動面に相当する基準線
【0032】
ここで、本実施形態に係る摺動部材において、第1の溝の態様は、上記態様に限られない。
第1の溝は、摺動方向に傾斜していてもよい(図6参照)。具体的には、第1の溝と摺動方向とのなす角度が45°以上90°以下であればよい。
なお、「第1の溝と摺動方向とのなす角」とは、第1の溝の長手方向と摺動方向とのなす鋭角である。
図6中の符号は、次の事項を示す。ただし、これら以外の符号は図3に示す符号と同じである。
D1:第1の溝の長手方向
θ1:第1の溝と摺動方向とのなす角度
【0033】
本実施形態に係る摺動部材において、第1の溝に加え、摺動面の幅方向中央部に、第1の溝の溝に交差する複数の第2の溝が、第2の溝の幅方向に間隔をもって設けられていてもよい(図7図8参照)。
摺動部材は、固体同士の摺動により摩擦粉が生じ、第1の溝に堆積し易い。それに対して、第2の溝を設けることで、摩耗紛が第1の溝から排出され易くなる。そのため、低摺動抵抗の維持性が高まる。
第2の溝は、第1の溝の同じ好適な範囲の、第1の溝の深さ、第1の溝の幅及び第1の溝のピッチであることが好ましい。
第1の溝と第2の溝とのなす角度(図7及び図8中、θ2参照)は、45°以上90°以下が好ましい。
「第1の溝と第2の溝とのなす角度」とは、第1の溝の長手方向と第2の溝の長手方向とのなす鋭角を示す。
【0034】
ここで、図7に示す溝の態様は、摺動方向と垂直方向に沿って連続的に設けられた第1の溝と、摺動方向に沿って連続的に設けられた第2の溝と、を設けた態様を示している。
図7に示す溝の態様では、固体同士の摺動により生じる摩耗紛が排出され易くなる。そのため、低摺動抵抗の維持性が高まる。
図7に示す溝の態様では、第1の溝と摺動方向とのなす角度が90°、第1の溝と第2の溝とのなす角度が90°である。
【0035】
図8に示す溝の態様は、摺動方向と垂直方向に沿って連続的に設けられた第1の溝と、摺動方向に沿って断続的に設けられた第2の溝と、を設けた態様を示している。
図8に示す溝の態様では、潤滑剤が第1の溝から摺動面と被摺動面との接触部に供給されやすくなると共に、摩耗紛の排出経路も確保されている。そのため、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性が向上し易くなる。
図8に示す溝の態様では、第1の溝を境に隣り合う第2の溝が溝幅方向に段違いに設けられている。具体的には、隣り合う第1の溝間に設けられる第2の溝が梯子状に設けている。つまり、第1の溝及び第2の溝で囲まれた摺動面領域が千鳥状に配列するように、第1の溝及び第2の溝が設けられている。
図8に示す溝の態様では、第1の溝と摺動方向とのなす角度が90°、第1の溝と第2の溝とのなす角度が90°である。
また、第1の溝を境に一方側の第2の溝のピッチ(図8中、P1参照)、及び第1の溝を境に他方側の第2の溝のピッチ(図8中、P2参照)は、上記第1の溝のピッチと同じ範囲が好ましい。
第1の溝を境に隣り合う第2の溝の段違い長さ(図7及び図8中、P3参照)は、0.1mm以上0.4mm以下が好ましく、0.2mm以上0.25mm以下がより好ましい。
【0036】
図7図8中の符号は、次の事項を示す。ただし、これら以外の符号は図3に示す符号と同じである。
D1:第1の溝の長手方向
D2:第2の溝の長手方向
θ1:第1の溝と摺動方向とのなす角度
θ2:第1の溝と第2の溝とのなす角度
P1:第1の溝を境に一方側の第2の溝のピッチ
P2:第1の溝を境に他方側の第2の溝のピッチ
P3:第1の溝を境に隣り合う第2の溝の段違い長さ
TB:第2の溝
【0037】
第1の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少していることが好ましい。
第2の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少していることが好ましい。
第1の溝及び第2の溝の少なくとも一方の断面積が減少していることにより、潤滑剤が摺動面に入り易くなる。そのため、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性が向上し易くなる。
【0038】
ここで、「溝の断面積」は、摺動部材を溝の長手方向に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断したときの断面積である。
「溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少している」とは、下記(1)及び(2)のいずれかを意味する。
(1)一つの溝において、摺動方向下流側の溝の断面積が、摺動方向上流側の溝の断面積よりも小さいこと。
(2)複数の溝において、摺動方向下流側に位置する溝の断面積が、摺動方向上流側に位置する溝の断面積よりも小さいこと。
【0039】
具体的には、被摺動面と接触する摺動面における、摺動方向下流側端部での溝の断面積Bが、摺動方向上流側端部での溝の断面積Aよりも小さいことが好ましい。
溝の断面積Bに対する溝の断面積Aの比(A/B)は、1以上9以下が好ましく、2以上4以下がより好ましい。
【0040】
各溝の断面積を調整するには、溝の深さを調整することが好ましい。
具体的には、摺動方向上流側端部での各溝の断面積は、700μm以上4300μm以下が好ましい。摺動方向上流側端部での各溝の深さは、20μm以上45μm以下が好ましい。
摺動方向下流側端部での各溝の断面積は、175μm以上1430μm以下が好ましい。摺動方向下流側端部での各溝の深さは、5μm以上45μm以下が好ましい。
【0041】
なお、溝が摺動方向の上流側端部又は下流側端部に位置しない場合、各溝の断面積及び深さは、摺動方向の上流側端部又は下流側端部に最も近い各溝の断面積及び深さとする。
【0042】
摺動面に溝を設ける方法としては、プレス成形等の周知の方法を採用する。
【0043】
次に、本実施形態に係る摺動部材の構成について、詳細に説明する。
本実施形態に係る摺動シートは、摺動面が耐熱熱可塑性樹脂を含んで構成されることが好ましい。
具体的には、本実施形態に係る摺動シートは、耐熱熱可塑性樹脂を含む樹脂基材層の単層体で構成されている。
ただし、摺動シートは、樹脂基材層と、樹脂基材層の摺動面とは反対側に設けられる、その他の層との積層体であってもよい。
【0044】
耐熱熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニルサルフォン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリフェニルサルホン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、耐熱熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、及びポリフェニルサルフォン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂が好ましく、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、及びポリフェニレンスルフィド樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂がより好ましい。
これら樹脂(特に、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、及びポリフェニレンスルフィド樹脂)は、耐摩耗性が高く、高靭性であり、高弾性率であるため、好ましい。
【0046】
摺動面を構成する樹脂基材層には、摺動面の摺動抵抗を低減する目的で、炭素繊維、カーボンナノチューブ、シロキサン基を有する樹脂粒子(熱硬化シリコーン樹脂粒子、シリコーンオイルガム、シリコーンエラストマー、シロキサン変性ポリエーテルイミド等の粒子)等の周知の添加剤を含んでもよい。
摺動面を構成する樹脂基材層には、その他、導電剤、機械的強度向上のためのフィラー、熱劣化を防止するための酸化防止剤、界面活性剤、耐熱老化防止剤等の成分を含んでもよい。
【0047】
<定着装置/画像形成装置>
本実施形態に係る定着装置は、1回転体と、第1回転体に接して配設された第2回転体と、2回転体の内周面に配設され、第2回転体の内周面から第2回転体を第1回転体へ押圧する押圧部材と、第2回転体の内周面と押圧部材との間に介在する摺動部材と、第2回転体の内周面と摺動部材との間に介在する潤滑剤と、を備える。
そして、本実施形態に係る定着装置は、摺動部材として、上記本実施形態に係る摺動部材を適用する。
【0048】
本実施形態に係る画像形成装置は、
像保持体と、
像保持体表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
現像剤を用いて前記潜像をトナー像に現像する現像装置と、
記録媒体に現像された前記トナー像を転写する転写装置と、
記録媒体上の前記トナー像を定着する定着装置と、
を備える。
そして、本実施形態に係る画像形成装置は、定着装置として、上記本実施形態に係る定着装置が適用される。
【0049】
以下、本実施形態に係る定着装置及び画像形成装置の一例について、図面を参照しつつ説明する。
【0050】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。図2は、本実施形態に係る定着装置の一例を示す概略図である。
【0051】
(画像形成装置の構成)
本実施形態に係る画像形成装置100は、図1に示すように、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4のプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10K(画像形成ユニットの一例)を備えている。これらのプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10Kは、中間転写ベルト20の外周面に沿って互いに離間して並設されている。なお、これらプロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能となっている。
【0052】
各プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10Kの上方(図1中)には、中間転写体としての中間転写ベルト20がその外周面を各プロセスカートリッジに対して対向するように設けられている。中間転写ベルト20は、互いに離間して配置された駆動ローラ22及び中間転写ベルト20内周面に接する支持ローラ24に巻回されて張力を付与されつつ配設され、第1プロセスカートリッジ10Yから第4プロセスカートリッジ10Kに向う方向に無端走行されるようになっている。
【0053】
なお、支持ローラ24は、不図示のバネ等の弾性部材により駆動ローラ22から離れる方向に押し付けされており、両者の間に巻回された中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の外周面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置20aが備えられている。
【0054】
第1乃至第4プロセスカートリッジ10Y、10M、10C、10Kは、略同一の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1プロセスカートリッジ10Yについて代表して説明する。尚、第1プロセスカートリッジ10Yと同一の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した同一参照符号を付すことにより、第2乃至第4プロセスカートリッジ10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0055】
第1プロセスカートリッジ10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を所定の電位に帯電させる帯電ローラ(帯電装置の一例)2Y、現像剤に含む帯電したトナーを静電潜像に供給して静電潜像を現像する現像装置4Y、及び1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置6Yが順に配設されている。これらはハウジング11Y(筐体)内に一体的に構成されている。第1プロセスカートリッジ10M乃至10Yも同様に、各部材がハウジング11M乃至11Y(筐体)内に一体的に構成されている。
【0056】
そして、第1プロセスカートリッジ10Yと共に、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写装置の一例)、及び帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電潜像を形成する露光装置3が配置され、画像形成部を構成している。
なお、帯電ローラ2Yと露光装置3とが潜像形成装置の一例に該当する。
【0057】
なお、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0058】
(定着装置の構成)
定着装置28は、図2に示すように、加熱ロール30(第1回転体の一例)及び加圧ベルト40(第2回転体の一例)が備えられており、加熱ロール30及び加圧ベルト40が対向して設けられている。加圧ベルト40は、その周内部に配置された押圧パッド50(押圧部材の一例)により加熱ロール30に押圧され、圧接して接触部が形成されつつ、ベルト走行ガイド52に沿ってガイドされ、加熱ロール30からの駆動力を受けることで従動する。
加圧ベルト40と押圧パッド50との間には、摺動シート60(摺動部材の一例)が介在している。そして、摺動シート60と加圧ベルト40の内周面との間には、潤滑剤62(潤滑剤の一例)が介在している。なお、潤滑剤62は、例えば、ベルト走行ガイド52の一部に設けられた潤滑剤供給部材64により加圧ベルト40の内周面に供給され、摺動シート60と加圧ベルト40の内周面との間に介在する。
ここで、図2中、Tはトナー像を示す。
【0059】
-加熱ロール30(第1回転体の一例)-
加熱ロール30は、例えば、内部にハロゲンランプ等の加熱源31を有する金属製の中空芯金属コア30aに弾性体層30b及び離型層30cが順次形成されて構成されている。
【0060】
金属コア30aは、例えば、アルミニウムやステンレス等の金属製の円筒状体で構成さ
れる。弾性体層30bは、例えば、HTVシリコーンゴムやフッ素ゴム等(JIS-Aのゴム硬度45度程度、ゴム硬度は、Teclock社製のスプリングタイプのA型硬度計により、JIS K6301に準拠して、荷重1,000gfを付加して計測したもの)を2mm以上5mm以下程度の厚さで構成される。離型層30cは、例えば、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フッ素樹脂等が20μm以上50μm以下の厚さで構成される。無論、これらに限られず、従来公知の材料により構成してもよい。
【0061】
加熱ロール30は、定着ロールは図示しない駆動源によって速度を調整、例えば260mm/secの周速で回転駆動される。加熱ロール30の外径は一般に例えば25mm以上80mm以下程度である。
【0062】
加熱ロール30の表面温度は、表面に接触する不図示の温度センサーで検出され、表面温度が例えば175℃となるように、不図示の制御回路によって制御される。
【0063】
-加圧ベルト40(第2回転体の一例)-
加圧ベルト40は、内周面が、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリフェニルサルホン樹脂等を含んで構成されている。
【0064】
樹脂基材層には、樹脂以外に、その他成分を含んでもよい。その他成分としては、例えば、導電剤、機械的強度向上のためのフィラー、熱劣化を防止するための酸化防止剤、界面活性剤、耐熱老化防止剤等が挙げられる。
【0065】
ここで、第一回転体が加熱ロールであり、第二回転体が加圧ベルトである例を挙げたが、第一回転体が加圧ロールであり、第二回転体が加熱ベルトである態様も含まれる。
第一回転体が加圧ロールである場合の加圧ロールの構成は、上述した加熱ロール30の構成と同様であることが好ましい。
第二回転体が加熱ベルトである場合の加熱ベルトの構成は、上述した加圧ベルト40の構成と同様であることが好ましい。
特に、第二回転体が加熱ベルトである場合には、加熱ベルトの内周面を構成する樹脂基材層の単層体であってもよいし、加熱ベルトの内周面を構成する樹脂基材層と樹脂基材層上に設けられた弾性層と弾性層上に設けられた離型層とを有する積層体、又は加熱ベルトの内周面を構成する樹脂基材層と樹脂基材層上に設けられた離型層とを有する積層体、又は加熱ベルトの内周面を構成する樹脂基材層上に金属層とその上に弾性層を設け、弾性層の上に離型層を設けた積層体であってもよい
【0066】
弾性層について説明する。
弾性層は、耐熱性弾性材料を含んで構成される。
耐熱性弾性材料としては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
シリコーンゴムとしては、例えば、RTV(Room Temperature V
ulcanizing)シリコーンゴム、HTV(High Temperature Vulcanizing)シリコーンゴム、液状シリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム等が挙げられる。
フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン/プロピレン系ゴ
ム、四フッ化エチレン/パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、フォスファゼン系ゴム、フルオロポリエーテル等が挙げられる。
【0067】
弾性層は、その他成分を含んでもよい。その他成分としては、例えば、充填材、導電剤、軟化剤(パラフィン系等)、加工助剤(ステアリン酸等)、老化防止剤(アミン系等)、加硫剤(硫黄、金属酸化物、過酸化物等)、機能性充填材(アルミナ等)等が挙げられる。
【0068】
離型層について説明する。
離型層は、例えば、耐熱性離型材料を含む。
耐熱性離型材料としては、フッ素ゴム、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性離型材料としては、フッ素樹脂が好ましい。フッ素樹脂として具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);テトラフルオロエチレン-パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロプロピルビニルエーテル共重合体等のテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。さらに、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
これらの中でも、特に耐熱性、機械特性等の面から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及び、テトラフルオロエチレン-パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)等のテトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が好適に用いられる。
離型層の厚さは、好ましくは5μm~100μm、より好ましくは10μm~30μmに設定される。
【0069】
-押圧パッド50(押圧部材の一例)-
押圧パッド50は、記録媒体Pの進行方向に沿って、異なる硬度の2つの押圧部51a、51bを有する。押圧パッド50における記録媒体P突入側の押圧部51aをゴム状弾性部材から構成させ、記録媒体P排出側の押圧部51bを金属等の硬い圧力付与部材から構成させ、接触領域の圧力を記録媒体P突入側より記録媒体P排出側が高くさせている。押圧部51a、51bは、ホルダ51cにより支持され、摺動シート60(摺動部材の一例)を介して加圧ベルト40内周面から加熱ロール30を押圧している。
【0070】
-摺動シート60(摺動部材の一例)-
摺動シート60は、本実施形態に係る摺動部材が適用される。
【0071】
-潤滑剤62(潤滑剤の一例)-
潤滑剤62としては、例えば、フッ素オイル、シリコーンオイル、固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース等が挙げられる。
フッ素オイルとしては、例えば、パーフルオロポリエーテルオイル、変性パーフルオロポリエーテルオイル等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩添加ジメチルシリコーンオイル、ヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、有機金属塩およびヒンダードアミン添加ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、有機金属塩添加アミノ変性シリコーンオイル、ヒンダードアミン添加アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、スルホン酸変性シリコーンオイル等が挙げられる。
合成潤滑油グリースとしては、例えば、シリコーングリース(すなわち、上記シリコーンオイルを含むグリース)、フッ素グリース(すなわち、上記フッ素オイルを含むグリース)等が挙げられる。
【0072】
潤滑剤62は、オイル以外に、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、グリース(シリコングリース等)、熱伝導剤、酸化防止剤、界面活性剤、シリコーン粒子、有機金属塩、ヒンダードアミン等が挙げられる。
【0073】
(画像形成装置の画像形成動作)
以下、本実施形態に係る画像形成装置の画像形成動作について説明する。なお、第1プロセスカートリッジ10Yにおいてイエロー画像を形成する動作を代表して、画像形成動作について説明する。
【0074】
まず、画像形成動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が例えば-600V以上-800V以下程度の電位に帯電される。
【0075】
感光体1Yは、例えば導電性の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、例えば通常は高抵抗であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0076】
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(トナー像)化される。
【0077】
現像装置4Y内には、例えば、イエロートナー及びキャリアを含む現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有している。感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にのみイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が1次転写位置へ搬送される。
【0078】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1プロセスカートリッジ10Yでは制御部(図示せず)によって+10μA程度に定電流制御されている。
【0079】
また、第2プロセスカートリッジ10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも同様に制御されている。
【0080】
こうして、第1プロセスカートリッジ10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4プロセスカートリッジ10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が同様に重ねられて多重転写される。
【0081】
第1乃至第4プロセスカートリッジを通して全ての色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内周面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写装置の一例)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録媒体Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20との間に給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録媒体Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録媒体P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、定電圧で制御されている。
なお、中間転写ベルト20、1次転写ローラ5Y及び2次転写ローラ26が転写装置の一例に該当する。
【0082】
この後、記録媒体Pは定着装置28へ送り込まれ、矢印方向に回転駆動される加熱ロール30と、加圧ベルト40とが圧接し形成された接触領域に挿通される。この際、記録媒体Pの未定着のトナー像が形成された面と、加熱ロール30の表面とが、向き合うように記録媒体Pが挿通される。この接触領域を記録媒体Pが通過した際に、熱及び圧力が記録媒体Pに加えられることにより、未定着のトナー像が、記録媒体Pに定着される。定着後の記録媒体は接触領域を通過後、加熱ロール30から剥離され、定着装置28から排出される。
【0083】
このようにして定着処理が成され、記録媒体P上へ永久定着される。カラー画像の定着が完了した記録媒体Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【実施例0084】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0085】
<実施例1~22、比較例1~3>
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂(Victrex450G(Victrex社製))を二軸押出溶融混練機(二軸溶融混練押出機L/D60(パーカーコーポレーション(株)製))で380℃加熱にて溶融し、溶融されたPEEK樹脂100質量部中に、未変性の熱硬化シリコーン樹脂粒子(信越化学工業(株)製)「KMP590」、平均粒径=2μm)10質量部を当該混練機のサイドからサイドフィーダーを用いて供給し、溶融混練し、混練された溶融物を水槽中に入れて冷却固化、目的とするサイズにカットし、シリコーン樹脂粒子の配合された混合樹脂ペレットを得た。
得られた混合樹脂ペレットを一軸押出装置に投入し、溶融された混合樹脂を380℃に加熱されたTダイ金型(溶融吐出間隙200μm)からシート状に押出し、190℃の冷却ロールに巻き付けて冷却し、該冷却シートを250℃に加熱した金型ロールと耐熱性シリコーンゴムロールの間を40Mpa圧力にて、金型ロール表面の形状を付与して、シート長手方向に間隔をもって、幅方向に沿った複数の溝をシート幅方向の中央部及び両端部に形成したシートを得た。そして、凹凸シートを所定のサイズにカットした。
このようにして、摺動方向に間隔をもって、幅方向に沿った複数の溝が摺動面の幅方向の中央部及び両端部に付与された面を摺動面とする摺動シートを得た。
なお、溝の形状は、摺動シートを摺動方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、V字状で、かつ表1に示す寸法とした。
そして、金型ロールの表面形状により溝の形状を変更し、各例の摺動シートを得た。
【0086】
<比較例3:ガラスクロスにフッ素樹脂を含浸させた摺動シート)
ガラスクロスにPTFE樹脂分散液を浸みこませて、150℃にて乾燥させた後に、380℃にて加熱焼成して冷却して得られる、中興化成工業(株)製のフッ素樹脂(製品名FGF400)含浸ガラスクロスシートを、摺動シートとした。
【0087】
なお、表1中の表記は、次の事項を示す。
角度A:摺動シートを摺動方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、第1の溝における、摺動方向下流側の溝の壁面と摺動方向との成す角度
角度B:摺動シートを摺動方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、第1の溝における、摺動方向上流側の溝の壁面と摺動方向との成す角度
【0088】
ここで、実施例20~22では、次の通り、第1の溝及び第2の溝を設けた。
・摺動方向下流側端部及び摺動方向上流側端部に位置する第1の溝の幅及び断面積が、表1に示す値となり、かつ摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少するように、第1の溝を設けた。
・一つの第2の溝の幅及び断面積が、摺動方向下流側端部及び摺動方向上流側端部で表1に示す値となり、かつ摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少するように、第2の溝を設けた。
【0089】
実施例20~21において、表1に示す第2の溝のピッチは、第1の溝を境に一方側の第2の溝のピッチ(図8中「P1」参照)及び第1の溝を境に他方側の第2の溝のピッチ(図8中「P2」参照)に該当し、第1の溝を境に隣り合う第2の溝の段違い長さは、表1に示す第1の溝のピッチの1/2の寸法とした。
【0090】
<評価>
各例の摺動シートを、富士フイルムビジネスイノベーション(株)製の画像形成装置「Revoria Press EC1100」の定着装置に装着した。
この画像形成装置により、次の評価を実施した。
【0091】
(初期摺動抵抗)
次の通り、画像形成装置における、摺動シートと定着部材との摺動部の摩擦係数を測定した。本測定は、定着装置に用紙を通紙する前(つまり画像形成を実施する前)に実施した。
定着装置の駆動ロールである加熱ロールを駆動するモーターの電流値を測定した。あらかじめモーター電流値と摩擦係数の関係の検量線を引き、検量線に基づいて、電流値から摩擦係数を算出した。
そして、目標摩擦係数を0.08とし、次の評価基準で評価した。
A++:摩擦係数が、目標摩擦係数の60%未満
A+:摩擦係数が、目標摩擦係数の70%未満
A:摩擦係数が、目標摩擦係数の80%未満
B+:摩擦係数が、目標摩擦係数の80%以上90%以下
B:摩擦係数が、目標摩擦係数の90%以上100%以下
C:摩擦係数が、目標摩擦係数の100%超え120%以下
D:摩擦係数が、目標摩擦係数の120超え140%以下
E:摩擦係数が、目標摩擦係数の140%超え
【0092】
(摺動抵抗維持性)
画像形成装置により画像形成を実施し、定着装置に1200000枚の用紙を通紙した。その後、「初期摺動抵抗」の評価と同様に、画像形成装置における、摺動シートと定着部材との摺動部の摩擦係数を測定した。そして、次の評価基準で評価した。
A++:摩擦係数が、上記目標摩擦係数(=0.08)の40%以下
A+:摩擦係数が、上記目標摩擦係数(=0.08)の50%以下
A:摩擦係数が、上記目標摩擦係数(=0.08)の60%以下
B+:摩擦係数が、上記目標摩擦係数(=0.08)の60%超え70%未満
B:摩擦係数が、上記目標摩擦係数(=0.08)の70%超え80%未満
C:摩擦係数が、上記目標摩擦係数(=0.08)の80%以上100%未満
D:摩擦係数が、上記目標摩擦係数(=0.08)の100%以上120%以下
E:摩擦係数が、上記目標摩擦係数(=0.08)の120%超え
【0093】
【表1】
【0094】
上記結果から、本実施例の摺動シートは、比較例の摺動シートに比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れることがわかる。
【0095】
本実施形態は、下記態様を含む。
(((1)))
摺動面の幅方向中央部に、複数の第1の溝が、前記第1の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、
前記第1の溝と摺動方向とのなす角が45°以上90°以下であり、
摺動部材を前記第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、前記第1の溝における、摺動方向下流側の前記第1の溝の壁面と前記摺動方向との成す角度Aが21°以上45°以下である摺動部材。
(((2)))
前記摺動部材を前記第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、前記第1の溝における、摺動方向上流側の前記第1の溝の壁面と前記摺動方向との成す角度Bが10°以上35°以下である(((1)))に記載の摺動部材。
(((3)))
前記第1の溝として、摺動面の幅方向に沿った複数の溝が、摺動方向に間隔をもって設けられている(((1)))又は(((2)))に記載の摺動部材。
(((4)))
前記摺動面の幅方向中央部に、複数の第2の溝が、前記第2の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、
前記第1の溝と前記第2の溝とのなす角度が45°以上90°以下である、(((1)))~(((3)))のいずれか1項に記載の摺動部材。
(((5)))
前記第1の溝は摺動方向と直交方向に沿って断続的に設けられており、前記第2の溝は摺動方向に沿って連続的に設けられている(((4)))に記載の摺動部材。
(((6)))
前記第1の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少している(((1)))~(((5)))のいずれか1項に記載の摺動部材。
(((7)))
前記第2の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて次第に減少している(((4)))に記載の摺動部材。
(((8)))
前記角度Aが、23°以上40°以下である(((1)))~(((7)))のいずれか1項に記載の摺動部材。
(((9)))
前記角度Bが、15°以上30°以下である(((2)))に記載の摺動部材。
(((10)))
前記角度Aと前記角度Bとの差は、絶対値で5°以上30°以下である(((2)))に記載の摺動部材。
(((11)))
前記角度Aと前記角度Bとの差は、絶対値で7°以上25°以下である(((10)))に記載の摺動部材。
(((12)))
第1回転体と、
前記第1回転体に接して配設された第2回転体と、
前記第2回転体の内周面に配設され、前記第2回転体の内周面から前記第2回転体を前記第1回転体へ押圧する押圧部材と、
前記第2回転体の内周面と前記押圧部材との間に介在する、(((1)))~(((11)))のいずれか1項に記載の摺動部材と、
前記第2回転体の内周面と前記摺動部材との間に介在する潤滑剤と、
を備える定着装置。
(((13)))
像保持体と、
像保持体表面に潜像を形成する潜像形成装置と、
現像剤を用いて前記潜像をトナー像に現像する現像装置と、
記録媒体に現像された前記トナー像を転写する転写装置と、
前記記録媒体上の前記トナー像を定着する、(((12)))に記載の定着装置と、
を備える画像形成装置。
【0096】
上記態様の効果は、次の通りである。
(((1)))、又は(((3)))に係る発明によれば、摺動面の幅方向中央部に、複数の第1の溝が、第1の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、第1の溝と摺動方向とのなす角度が45°以上90°以下であり、摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、第1の溝における、摺動方向下流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Aが21°未満又は45°超えである摺動部材に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供することである。
【0097】
(((2)))に係る発明によれば、摺動部材を前記第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、第1の溝における、摺動方向上流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Bが10°未満又は35°超えである場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
(((4)))に係る発明によれば、摺動面の幅方向中央部に、第1の溝とのなす角度が45°以上90°以下である複数の第2の溝が、前記第2の溝の幅方向に間隔をもって設けられていない場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
(((5)))に係る発明によれば、第1の溝が摺動方向と垂直方向に沿って連続的に設けられている場合、又は第2の溝が摺動方向に沿って断続的に設けられている場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
(((6)))に係る発明によれば、第1の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて変化しない場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
(((7)))に係る発明によれば、第2の溝の断面積は、摺動方向上流側から摺動方向下流側に向けて変化しない場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
(((8)))に係る発明によれば、角度Aが、23°未満又は40°超えである場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
(((9)))に係る発明によれば、角度Bが、15°未満又は30°超えである場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
【0098】
(((10)))に係る発明によれば、角度Aと角度Bとの差が絶対値で5°未満又は30°超えである場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
(((11)))に係る発明によれば、角度Aと角度Bとの差が絶対値で7°未満又は25°超えである場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を提供できる。
【0099】
(((12)))、又は(((13)))に係る発明によれば、摺動面の幅方向中央部に、複数の第1の溝が、第1の溝の幅方向に間隔をもって設けられ、第1の溝と摺動方向とのなす角度が45°以上90°以下であり、摺動部材を第1の溝に垂直方向かつ厚み方向に沿って切断した切断面を観察したとき、複数の第1の溝における、摺動方向下流側の第1の溝の壁面と摺動方向との成す角度Aが21°未満又は45°超えである摺動部材を適用した場合に比べ、低摺動抵抗、かつ低摺動抵抗の維持性に優れた摺動部材を備えた定着装置が提供される。
【符号の説明】
【0100】
1Y、1M、1C、1K 感光体
2Y、2M、2C、2K 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置
4Y、4M、4C、4K 現像装置
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置
10Y、10M、10C、10K プロセスカートリッジ
20 中間転写ベルト
20a 中間転写体クリーニング装置
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ
28 定着装置
30 加熱ロール
40 加圧ベルト
50 押圧パッド
52 ベルト走行ガイド
60 摺動シート
62 潤滑剤
64 潤滑剤供給部材
100 画像形成装置
P 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8