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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096222
(43)【公開日】2025-06-26
(54)【発明の名称】有機化合物、および発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/048 20060101AFI20250619BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20250619BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20250619BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20250619BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20250619BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20250619BHJP
   H10K 101/10 20230101ALN20250619BHJP
【FI】
C07D491/048 CSP
H10K85/60
H10K50/12
C09K11/06 690
C07F7/10 V
H10K101:30
H10K101:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024217209
(22)【出願日】2024-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2023212446
(32)【優先日】2023-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】吉安 唯
(72)【発明者】
【氏名】木戸 裕允
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(72)【発明者】
【氏名】山内 諒
【テーマコード(参考)】
3K107
4H049
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB06
3K107BB07
3K107CC04
3K107CC07
3K107CC14
3K107CC21
3K107CC35
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD67
3K107DD68
3K107DD69
3K107FF13
3K107FF19
3K107FF20
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ72
4H049VR24
4H049VW01
(57)【要約】
【課題】新規の有機化合物および当該有機化合物を用いた発光デバイスを提供する。
【解決手段】ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格と、第1の置換基と、第2の置換基と、を有し、第1の置換基は、カルバゾール骨格を表し、第2の置換基は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、テトラフェニルシラン骨格、またはトリフェニレン骨格のいずれかを表し、第1の置換基は、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格のピリミジン環と結合し、第2の置換基は、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格のベンゼン環と結合する有機化合物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格と、第1の置換基と、第2の置換基と、を有し、
前記第1の置換基は、カルバゾール骨格を表し、
前記第2の置換基は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、テトラフェニルシラン骨格、またはトリフェニレン骨格のいずれかを表し、
前記第1の置換基は、前記ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位または前記ベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位と結合し、
前記第2の置換基は、前記ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位または前記ベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位と結合する有機化合物。
【請求項2】
一般式(G1)で表される有機化合物。
【化1】

(式中、R乃至Rは、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基を表し、R乃至R11は、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6乃至30のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至30のヘテロアリール基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Aは下記一般式(A-1)乃至一般式(A-5)で表される置換基のいずれかを表す。)
【化2】

(式中、R12乃至R57は、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6乃至30のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至30のヘテロアリール基を表す。)
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
最低三重項励起エネルギー(T)準位が2.95eV以下2.75eV以上である有機化合物。
【請求項4】
構造式(100)、構造式(101)、構造式(102)、または構造式(103)で表される有機化合物。
【化3】
【請求項5】
第1の電極、第2の電極、および前記第1の電極と前記第2の電極の間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および青色を呈する発光物質を有し、
前記第2の有機化合物は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格と、第1の置換基と、第2の置換基と、を有し、
前記第1の置換基は、カルバゾール骨格を表し、
前記第2の置換基は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、テトラフェニルシラン骨格、またはトリフェニレン骨格のいずれかを表し、
前記第1の置換基は、前記ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位と結合し、
前記第2の置換基は、前記ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位と結合している有機化合物であり、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と前記第2の有機化合物のLUMO準位との差の絶対値は、2.78eV以上2.85eV以下である発光デバイス。
【請求項6】
第1の電極、第2の電極、および前記第1の電極と前記第2の電極の間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物、一般式(G1)で表される第2の有機化合物、および青色を呈する発光物質を有し、
前記第1の有機化合物のHOMO準位と前記第2の有機化合物のLUMO準位との差の絶対値は、2.78eV以上2.85eV以下である発光デバイス。
【化4】

(式中、R乃至Rは、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6の置換もしくは無置換のシクロアルキル基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Aは下記一般式(A-1)乃至一般式(A-5)で表される置換基のいずれかを表す。)
【化5】

(式中、R12乃至R57は、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6乃至30のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至30のヘテロアリール基を表す。)
【請求項7】
構造式(100)、構造式(101)、構造式(102)、または構造式(103)で表される有機化合物を有する発光デバイス。
【化6】
【請求項8】
請求項6または請求項7において、前記第1の有機化合物と、前記第2の有機化合物は、励起錯体を生じる組み合わせである発光デバイス。
【請求項9】
請求項6または請求項7において、前記発光物質の発光スペクトルは、400nm以上490nm未満である発光デバイス。
【請求項10】
請求項6または請求項7において、前記発光物質は燐光発光材料である発光デバイス。
【請求項11】
請求項6または請求項7において、前記発光層は蛍光増感材料を有する発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、有機化合物、有機半導体素子、発光デバイス、フォトダイオードセンサ、ディスプレイモジュール、照明モジュール、表示装置、電子機器、照明装置および電子デバイスに関する。なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
一対の電極間に発光物質である有機化合物を有する発光デバイス(有機EL素子ともいう)は、薄型軽量・高速応答・低電圧駆動などの特性を有することから、これを適用したディスプレイに関する開発が進められている。この発光デバイスは、電圧が印加されると電極から注入された電子およびホールが再結合し、それによって発光物質が励起状態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。なお、励起状態の種類としては、一重項励起状態(S)と三重項励起状態(T)とがあり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。また、発光デバイスにおけるそれらの統計的な生成比率は、S:T=1:3であると考えられている。
【0003】
また、上記発光物質のうち、一重項励起状態におけるエネルギーを発光に変換することが可能な化合物は蛍光性化合物(蛍光材料)と呼ばれ、三重項励起状態におけるエネルギーを発光に変換することが可能な化合物は燐光性化合物(燐光材料)と呼ばれる。
【0004】
従って、上記の生成比率を根拠にした時、上記各発光物質を用いた発光デバイスにおける内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、蛍光材料を用いた場合は25%、燐光材料を用いた場合は75%となる。
【0005】
また、これらの発光デバイスは発光層を二次元に連続して形成することが可能であるため、面状に発光を得ることができる。これは、白熱電球、およびLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0006】
このような発光デバイスに関しては、その素子特性を向上させるために、物質開発、素子構造の改良等が行われている。例えば、特許文献1では、発光効率の高い発光素子を形成するために新規なアントラセン誘導体をホスト材料として用いた発光デバイス等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-76999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、新規の有機化合物を提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、発光デバイスに用いることのできる有機化合物を提供することを課題とする。また、本発明の一態様では、発光効率の高い発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、色純度の高い発光デバイスを提供することを目的とする。または、本発明の一態様では、信頼性の良好な発光デバイスを提供することを目的とする。または、消費電力の小さい表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することを目的とする。または、信頼性の高い表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することを目的とする。または、色純度の高い表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は上述の課題のうちいずれか一を解決すればよいものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格と、第1の置換基と、第2の置換基と、を有し、第1の置換基は、カルバゾール骨格を表し、第2の置換基は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、テトラフェニルシラン骨格、またはトリフェニレン骨格のいずれかを表し、第1の置換基は、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格のピリミジン環と結合し、第2の置換基は、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格のベンゼン環と結合する有機化合物である。
【0011】
また、本発明の一態様は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格と、第1の置換基と、第2の置換基と、を有し、第1の置換基は、カルバゾール骨格を表し、第2の置換基は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、テトラフェニルシラン骨格、またはトリフェニレン骨格のいずれかを表し、第1の置換基は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位と結合し、第2の置換基は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位と結合する有機化合物である。
【0012】
また、本発明の一態様は、一般式(G1)で表される有機化合物である。
【0013】
【化1】
【0014】
上記式中、R乃至Rは、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基を表し、R乃至R11は、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6乃至30のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至30のヘテロアリール基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Aは下記一般式(A-1)乃至一般式(A-5)で表される置換基のいずれかを表す。
【0015】
【化2】
【0016】
上記式中、R12乃至R57は、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6乃至30のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至30のヘテロアリール基を表す。
【0017】
上記有機化合物において、最低三重項励起エネルギー(T)準位が2.95eV以下2.75eV以上である。
【0018】
また、本発明の一態様は、構造式(100)、構造式(101)、構造式(102)、または構造式(103)で表される有機化合物である。
【0019】
【化3】
【0020】
また、本発明の一態様は、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極の間に発光層を有し、発光層は、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および青色を呈する発光物質を有し、第2の有機化合物は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格と、第1の置換基と、第2の置換基と、を有し、第1の置換基は、カルバゾール骨格を表し、第2の置換基は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、テトラフェニルシラン骨格、またはトリフェニレン骨格のいずれかを表し、第1の置換基は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位と結合し、第2の置換基は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位と結合している有機化合物であり、第1の有機化合物のHOMO準位と第2の有機化合物のLUMO準位との差の絶対値は、2.78eV以上2.85eV以下である発光デバイスである。
【0021】
また、本発明の一態様は、第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極の間に発光層を有し、発光層は、第1の有機化合物、一般式(G1)で表される第2の有機化合物、および青色を呈する発光物質を有し、第1の有機化合物のHOMO準位と第2の有機化合物のLUMO準位との差の絶対値は、2.78eV以上2.85eV以下である発光デバイスである。
【0022】
【化4】
【0023】
上記式中、R乃至Rは、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、炭素数3乃至6の置換もしくは無置換のシクロアルキル基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Aは下記一般式(A-1)乃至一般式(A-5)で表される置換基のいずれかを表す。
【0024】
【化5】
【0025】
上記式中、R12乃至R57は、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6乃至30のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至30のヘテロアリール基を表す。
【0026】
また、本発明の一態様は、構造式(100)、構造式(101)、構造式(102)、または構造式(103)で表される有機化合物を有する発光デバイスである。
【0027】
【化6】
【0028】
上記発光デバイスにおいて、第1の有機化合物と、第2の有機化合物は、励起錯体を生じることができる組み合わせである。
【0029】
上記発光デバイスにおいて、発光物質の発光スペクトルは、400nm以上490nm未満である発光デバイスである。
【0030】
上記発光デバイスにおいて、発光物質は燐光発光を得ることができる発光デバイスである。
【0031】
上記発光デバイスにおいて、発光層は蛍光増感材料を有する発光デバイスである。
【0032】
または、本発明の他の一態様は、上記いずれかに記載の発光デバイスを備えた表示装置である。
【0033】
または、本発明の他の一態様は、上記発光デバイスと、センサ、操作ボタン、スピーカ、または、マイクと、を有する電子機器である。
【0034】
または、本発明の他の一態様は、上記発光デバイスと、筐体と、を有する照明装置である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一態様により、新規の有機化合物を提供することができる。また、本発明の一態様により、発光デバイスに用いることのできる有機化合物を提供することができる。また、本発明の一態様では、発光効率の高い発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、色純度の高い発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様では、信頼性の良好な発光デバイスを提供することができる。または、消費電力の小さい表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することができる。または、信頼性の高い表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することができる。または、色純度の高い表示装置、電子機器および照明装置のいずれかを提供することができる。
【0036】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1(A)および図1(B)は、発光デバイスの模式図である。
図2図2(A)乃至図2(E)は、発光デバイスの構成を説明する図である。
図3図3(A)および図3(B)は発光装置の上面図および断面図である。
図4図4(A)乃至図4(D)は発光デバイスについて表す図である。
図5図5(A)乃至図5(E)は表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図6図6(A)および図6(B)は表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図7図7(A)乃至図7(D)は表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図8図8(A)乃至図8(C)は表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図9図9(A)乃至図9(C)は表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図10図10(A)乃至図10(C)は表示装置の作製方法の一例を示す断面図である。
図11図11(A)乃至図11(G)は、画素の構成例を示す上面図である。
図12図12(A)乃至図12(I)は、画素の構成例を示す上面図である。
図13図13(A)および図13(B)は、表示モジュールの構成例を示す斜視図である。
図14図14(A)および図14(B)は、表示装置の構成例を示す断面図である。
図15図15は表示装置の構成例を示す斜視図である。
図16図16は表示装置の構成例を示す断面図である。
図17図17は表示装置の構成例を示す断面図である。
図18図18(A)は表示装置の構成例を示す断面図、図18(B)および図18(C)は表示装置の構成を示す上面図である。
図19図19は表示装置の構成例を示す断面図である。
図20図20(A)は表示装置の構成例を示す断面図、図20(B)および乃至図20(C)は表示装置の構成を示す上面図である。
図21図21(A)乃至図21(D)は、電子機器の一例を示す図である。
図22図22(A)乃至図22(F)は、電子機器の一例を示す図である。
図23図23(A)乃至図23(G)は、電子機器の一例を示す図である。
図24図24は、有機化合物のH NMRスペクトルである。
図25図25は、有機化合物のトルエン溶液における吸収スペクトルと発光スペクトルを説明する図である。
図26図26は、有機化合物の薄膜における吸収スペクトルと発光スペクトルを説明する図である。
図27図27は、有機化合物のH NMRスペクトルである。
図28図28は、有機化合物のH NMRスペクトルである。
図29図29は、有機化合物のトルエン溶液における吸収スペクトルと発光スペクトルを説明する図である。
図30図30は、有機化合物の薄膜における吸収スペクトルと発光スペクトルを説明する図である。
図31図31は、有機化合物のH NMRスペクトルである。
図32図32は、有機化合物のトルエン溶液における吸収スペクトルと発光スペクトルを説明する図である。
図33図33は、有機化合物の薄膜における吸収スペクトルと発光スペクトルを説明する図である。
図34図34は、有機化合物のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを説明する図である。
図35図35は、有機化合物のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを説明する図である。
図36図36は、有機化合物のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを説明する図である。
図37図37は、有機化合物のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを説明する図である。
図38図38は、発光デバイスの構成を説明する図である。
図39図39は、発光デバイスの輝度-電流密度特性を説明する図である。
図40図40は、発光デバイスの輝度-電圧特性を説明する図である。
図41図41は、発光デバイスの電流効率-電流密度特性を説明する図である。
図42図42は、発光デバイスの電流密度-電圧特性を説明する図である。
図43図43は、発光デバイスの電力効率-電流密度特性を説明する図である。
図44図44は、発光デバイスの外部量子効率-電流密度特性を説明する図である。
図45図45は、発光デバイスのブルーインデックス-電流密度特性を説明する図である。
図46図46は、発光デバイスの発光スペクトルを説明する図である。
図47図47は、有機化合物の混合膜のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを説明する図である。
図48図48は、有機化合物の混合膜のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを説明する図である。
図49図49は、有機化合物の混合膜のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを説明する図である。
図50図50は、発光物質の吸収スペクトル及び発光スペクトルを説明する図である。
図51図51は、有機化合物のH NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0039】
なお、本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いることなく作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。
【0040】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である有機化合物について説明する。
【0041】
<有機化合物の例>
本発明の一態様である有機化合物は、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格と、第1の置換基と、第2の置換基と、を有し、第1の置換基は、カルバゾール骨格を表し、第2の置換基は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、テトラフェニルシラン骨格、またはトリフェニレン骨格のいずれかを表し、第1の置換基は、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格のピリミジン環と結合し、第2の置換基は、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格のベンゼン環と結合する有機化合物である。
【0042】
特に、ベンゾフロピリミジン骨格またはベンゾチエノピリミジン骨格は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格であることが好ましい。当該骨格は、高い三重項励起エネルギー準位(T準位)を持つ骨格であり、また電子輸送性が高い骨格であるため青色領域の発光デバイスに使用する材料として最適である。
【0043】
したがって、本発明の他の一態様である有機化合物は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格と、第1の置換基と、第2の置換基と、を有し、第1の置換基は、カルバゾール骨格を表し、第2の置換基は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、テトラフェニルシラン骨格、またはトリフェニレン骨格のいずれかを表し、第1の置換基は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位と結合し、第2の置換基は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位と結合する有機化合物である。
【0044】
なお、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位に、カルバゾール骨格を有することで、共役の広がりを抑えることができ、適切なLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital、最低空軌道ともいう)準位を保つことができる。また、高い三重項励起エネルギー準位(T準位)を維持しつつ、熱物性が向上し分子の安定性を良くすることができる。
【0045】
また、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位に、置換基を有することで、高い三重項励起エネルギー準位(T準位)を維持しつつ、熱物性が向上し分子の安定性を良くすることができる。
【0046】
また、本発明の一態様の有機化合物は、最低三重項励起エネルギー(T)準位が2.95eV以下2.75eV以上である。
【0047】
なお、有機化合物の最低三重項励起エネルギー(T)に関しては、燐光スペクトルにおけるピークの短波長側の傾きが最大となる値において接線を引き、その接線と横軸(波長)あるいはベースラインとの交点のエネルギーをT準位とすればよい(例えば、Daisaku TANAKA他,「Ultra High Efficiency Green Organic Light-Emitting Devices」,Japanese Journal of Applied Physics,Vol.46,No.1,2007,pp.L10-L12参照)。また、他の方法として、燐光スペクトルにおいて基底状態と励起状態の振動準位間におけるν=0→ν=0遷移(0→0帯)が明確に観測される場合、当該0→0帯を用いてT準位を算出することもできる。(Nicholas J. Turro,V.Ramamurthy,J.C. Scaiano著,「MODERN MOLECULAR PHOTOCHEMISTRY OF ORGANIC MOLECULES」,UNIVERSITY SCIENCE BOOKS,2010年2月10日発行,pp.204-208)。また、準位同士の比較を行う場合は、同じ方法で算出した準位での比較を行うものとする。
【0048】
なお、本明細書において、最低三重項励起エネルギー準位(T準位)は、石英基板上に試料を50nm成膜した薄膜を用い、測定温度10Kにて発光スペクトル(燐光スペクトル)を測定することで算出すればよい。測定は、顕微PL装置 LabRAM HR-PL ((株)堀場製作所)を用い、励起光としてHe-Cdレーザ(325nm)を用いるとよい。なお、発光端は、発光スペクトル(燐光スペクトル)の最も短波長に観測されるピーク(またはショルダーピーク)の短波長側の傾きが最大となる値において接線を引き、その接線と横軸(波長)あるいはベースラインとの交点から算出すればよい。
【0049】
≪有機化合物の例1≫
本発明の一態様は、一般式(G1)で表される有機化合物である。
【0050】
【化7】
【0051】
ただし、R乃至Rは、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基を表し、R乃至R11は、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6乃至30のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至30のヘテロアリール基を表し、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Aは下記一般式(A-1)乃至一般式(A-5)で表される置換基のいずれかを表す。
【0052】
【化8】
【0053】
ただし、R12乃至R57は、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6乃至30のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至30のヘテロアリール基を表す。
【0054】
炭素数1乃至6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基等を挙げることができる。
【0055】
炭素数3乃至6のシクロアルキル基の具体例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノナニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基を、また、架橋構造を有する炭素数4乃至10のシクロアルキル基としては、ビシクロブチル基、ノルアダマンチル基、アダマンチル基、ノルボルナニル基、テトラヒドロジシクロペンタジエニル基を挙げることができる。
【0056】
炭素数6乃至30のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基、スピロフルオレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基を挙げることができる。
【0057】
炭素数1乃至30のヘテロアリール基の具体例としては、例えば、トリアジン環、ピリミジン環、ピリジン環、フェナントロリン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾナフトフラン環、ベンゾナフトチオフェン環、インドロカルバゾール環、ベンゾフロカルバゾール環、ベンゾチエノカルバゾール環、インデノカルバゾール環、およびジベンゾカルバゾール環を有する基を挙げることができる。
【0058】
なお、一般式(G1)、および一般式(A-1)乃至一般式(A-5)において、水素は適宜、重水素に置き換えてもよい。
【0059】
<具体例>
次に、上記一般式(G1)で表される構成を有する、本発明の一態様である有機化合物の具体的な例を以下に示す。
【0060】
【化9】
【0061】
【化10】
【0062】
上記構造式(100)乃至(114)、および上記構造式(200)乃至(214)で表される有機化合物は、上記一般式(G1)で表される有機化合物の一例であるが、本発明の一態様の有機化合物は、これに限られない。
【0063】
<有機化合物の合成方法>
以下では、一般式(G1)で表される有機化合物の合成方法について説明する。該有機化合物の合成方法としては、種々の反応を適用することができる。
【0064】
【化11】
【0065】
なお、上記一般式(G1)で表される有機化合物は、下記合成スキーム(S-1)のように、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格を含むジハロゲン化合物(B1)と、カルバゾール化合物(B2)とを、反応させ、中間体(B3)とAのボロン酸化合物(B4)を反応させることにより、一般式(G1)で表される有機化合物を得ることができる。
【0066】
【化12】
【0067】
上記一般式(B1)において、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Y及びYはハロゲンを表す。また、R乃至Rは、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基を表し、R乃至R11は、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3乃至6のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数6乃至30のアリール基、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至30のヘテロアリール基を表し、Aは一般式(A-1)乃至一般式(A-5)で表される置換基のいずれかを表す。また、Qはボロン酸またはボロン酸エステルまたは環状トリオールボレート塩等を表す。また、環状トリオールボレート塩はリチウム塩の他に、カリウム塩、ナトリウム塩を用いても良い。
【0068】
【化13】
【0069】
上記合成スキーム(S-1)で表されるカップリング反応において用いることができるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライド、アリルパラジウム(II)クロリド(ダイマー)等が挙げられる。
【0070】
上記パラジウム触媒の配位子としては、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、(±)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、トリ(オルト-トリル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2,2-ジフェニル-1-メチル-1-シクロプロピル)ホスフィン等が挙げられる。
【0071】
上記合成スキーム(S-1)で表されるカップリング反応において用いることができる塩基としては、カリウム-tert-ブトキシド等の有機塩基、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸三カリウム等の無機塩基等が挙げられる。
【0072】
上記合成スキーム(S-1)で表されるカップリング反応において、用いることができる溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。ただし、用いることができる溶媒はこれらに限られるものでは無い。
【0073】
また、上記合成スキーム(S-1)において行う反応は、鈴木・宮浦反応または、ブッフバルト・ハートウィッグ反応に限られるものではなく、有機錫化合物を用いた右田・小杉・スティルカップリング反応、グリニヤール試薬を用いたカップリング反応、銅、又は銅化合物を用いたウルマン反応、求核置換反応等を用いることができる。
【0074】
また、上述の化合物(B1)と化合物(B2)と化合物(B4)は、様々な種類があり、合成可能である。
【0075】
本発明の一態様の有機化合物は以上のように合成することが可能であるが、本発明はこれに限定されることはなく、他の合成方法によって合成してもよい。
【0076】
本実施の形態は、他の実施の形態、および実施例と任意に組み合わせて用いることが可能である。
【0077】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で示した有機化合物を用いた発光デバイスの構成について説明する。
【0078】
有機EL素子(以下発光デバイスともいう)を表示素子として用いたディスプレイ(有機ELディスプレイ)が実用化されて久しい。当該ディスプレイには、フルカラー表示を実現するために、通常、赤、緑、青の少なくとも3つの色の光を呈する画素が備えられている。
【0079】
当該画素には、それぞれの発光色毎に発光デバイスが設けられ、Side by Side方式、いわゆる塗分け方式のディスプレイにおいては、各発光デバイスは、対応する画素の発光色に応じて異なる発光物質を有している。
【0080】
ここで、電流励起の有機ELデバイスにおいては、一重項励起状態と三重項励起状態の生成確率が1:3であり、一重項励起状態しか発光に用いることができない蛍光材料を用いた発光デバイスの内部量子効率の理論限界は25%であることが知られている。一方で、燐光材料は、項間交差により一重項励起状態を三重項励起状態に変換することができることから理論上100%の内部量子効率を示す発光デバイスを実現でき、蛍光材料と比較して発光効率の高い発光デバイスを得ることができる。
【0081】
また、発光層に発光物質を分散するための有機化合物(ホスト材料ともいう)を用いる場合、当該ホスト材料は、発光物質(ゲスト材料ともいう)の三重項励起エネルギー準位、および一重項励起エネルギー準位よりも高いエネルギーレベルの三重項励起エネルギー準位、および一重項励起エネルギー準位を各々有する物質である必要がある。一方で、青色の発光エネルギーは赤色または緑色よりも高いため、青色の発光物質を分散させるためのホスト材料は、三重項励起エネルギー準位、および一重項励起エネルギー準位が赤色または緑色のデバイスよりも高いことが求められる。従って、材料の選択の幅が狭く、良好な性能を有する材料を得ることが難しい。
【0082】
本発明の一態様は、発光物質として燐光材料を用い、ホスト材料として実施の形態1で説明した有機化合物を用いた発光デバイスを提供する。以下に本発明の一態様の発光デバイスの構成について説明する。
【0083】
<発光デバイスの構成例>
図1(A)は、本発明の一態様の発光デバイス10の断面模式図である。発光デバイス10は、一対の電極(第1の電極101及び第2の電極102)を有し、該一対の電極間に設けられた有機化合物層103を有する。有機化合物層103は、少なくとも発光層113を有する。
【0084】
また、図1(A)に示す有機化合物層103は、発光層113の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、及び電子注入層115等の機能層を有する。
【0085】
なお、本実施の形態においては、一対の電極のうち、第1の電極101を陽極として、第2の電極102を陰極として説明するが、発光デバイス10の構成としては、その限りではない。つまり、第1の電極101を陰極とし、第2の電極102を陽極とし、当該電極間の各層の積層を、逆の順番にしてもよい。すなわち、陽極側から、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、発光層113と、電子輸送層114と、電子注入層115と、が積層する順番とすればよい。
【0086】
なお、有機化合物層103の構成は、図1(A)に示す構成に限定されず、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、及び電子注入層115の中から選ばれた少なくとも一つを有する構成とすればよい。あるいは、有機化合物層103は、正孔または電子の注入障壁を低減する、正孔または電子の輸送性を向上する、正孔または電子の輸送性を阻害する、または電極による消光現象を抑制する、ことができる等の機能を有する機能層を有する構成としてもよい。なお、機能層はそれぞれ単層であっても、複数の層が積層された構成であってもよい。
【0087】
図1(B)は、図1(A)に示す発光層113の一例を示す断面模式図である。図1(B)に示す発光層113は、ホスト材料118(有機化合物118_1および有機化合物118_2)と、ゲスト材料119(発光物質)と、を有する。
【0088】
ゲスト材料119としては、発光性の有機化合物を用いればよく、該発光性の有機化合物としては、燐光を発することができる物質(以下、燐光性化合物ともいう)であると好適である。
【0089】
また、発光層113において、ホスト材料118が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料119は、ホスト材料118中に分散される。前述の通り、発光層113のホスト材料118(有機化合物118_1及び有機化合物118_2)の最低三重項励起エネルギー準位(T準位)は、発光層113のゲスト材料119のT準位よりも高いことが好ましい。
【0090】
具体的には、例えば青色を呈する燐光性化合物をゲスト材料119に用いる場合、少なくとも有機化合物118_1の最低三重項励起エネルギー準位(T準位)は、2.75eV以上2.95eV以下であるとよい。
【0091】
また、発光層113におけるホスト材料118(有機化合物118_1および有機化合物118_2)は、励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)を形成することが好ましい。なお、励起錯体は、2種以上の物質からなる励起状態であり、光励起の場合、励起状態となった一方の物質が基底状態である他方の物質と相互作用することによって形成される。
【0092】
具体的には、例えば青色を呈する燐光性化合物をゲスト材料119に用いた場合、有機化合物118_1のLUMO準位と、有機化合物118_2のHOMO準位との差の絶対値が2.70eV以下では、発光スペクトル(PLスペクトル)がゲスト材料119の吸収スペクトルと重畳する励起錯体を形成することは難しい。また、有機化合物118_1のLUMO準位が低すぎる場合、ゲスト材料119のHOMO準位と、有機化合物118_1のLUMO準位との間でエネルギーの小さい励起錯体が形成され、発光スペクトルがブロード化してしまう場合がある。
【0093】
そこで、有機化合物118_1とゲスト材料119との分子間相互作用を小さくすることで、シャープな発光スペクトルを得ることができる。
【0094】
したがって、有機化合物118_1の最低三重項励起エネルギー準位(T準位)は、2.75eV以上2.95eV以下であり、また、有機化合物118_1のLUMO準位と、有機化合物118_2のHOMO準位との差の絶対値が、2.75eV以上2.85eV以下、好ましくは2.78eV以上2.85eV以下となるような発光デバイスの構成とすることで、良好な青色を呈する発光デバイスを提供することができる。
【0095】
実施の形態1で説明した本発明の一態様である、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格と、第1の置換基と、第2の置換基と、を有し、第1の置換基は、カルバゾール骨格を表し、第2の置換基は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、テトラフェニルシラン骨格、またはトリフェニレン骨格のいずれかを表し、第1の置換基は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の4位と結合し、第2の置換基は、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位と結合する有機化合物は、有機化合物118_1として用いることができる。
【0096】
特に、一般式(G1)で表す有機化合物において、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の第2位を水素とすることで、有機化合物がかさ高くなることを抑制することができる。そのため、有機化合物118_2と相互作用しやすくなるため、励起錯体の形成が容易になる。
【0097】
また、一般式(G1)で表す有機化合物において、ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン骨格またはベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン骨格の8位に、置換基を有することで、高い三重項励起エネルギー準位(T準位)を維持しつつ、熱物性が向上し分子の安定性を良くすることができるため、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0098】
<発光デバイスの基本的な構造>
以下では、より詳細な発光デバイスの基本的な構造について、図2(A)乃至図2(E)を用いて説明する。図2(A)には、一対の電極間に発光層を含む有機化合物層(EL層ともいう)を有する構造(シングル構造)の発光デバイスを示す。具体的には、第1の電極101と第2の電極102との間に有機化合物層103が挟まれた構造を有する。
【0099】
また、図2(B)には、一対の電極間に複数(図2(B)では、2層)の有機化合物層(103a、103b)を有し、有機化合物層の間に電荷発生層106を有する積層構造(タンデム構造)の発光デバイスを示す。タンデム構造の発光デバイスは、電流量を変えることなく高効率な発光装置を実現することができる。
【0100】
電荷発生層106は、第1の電極101と第2の電極102の間に電位差を生じさせたときに、一方の有機化合物層(103aまたは103b)に電子を注入し、他方の有機化合物層(103bまたは103a)に正孔を注入する機能を有する。従って、図2(B)において、第1の電極101に、第2の電極102よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層106から有機化合物層103aに電子が注入され、有機化合物層103bに正孔が注入されることとなる。
【0101】
なお、電荷発生層106は、光の取り出し効率の点から、可視光に対して透光性を有する(具体的には、電荷発生層106に対する可視光の透過率が、40%以上)ことが好ましい。また、電荷発生層106は、第1の電極101および第2の電極102よりも低い導電率であっても機能する。
【0102】
また、図2(C)には、本発明の一態様である発光デバイスの有機化合物層103の積層構造を示す。但し、この場合、第1の電極101は陽極として、第2の電極102は陰極として機能するものとする。有機化合物層103は、第1の電極101上に、正孔(ホール)注入層111、正孔(ホール)輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115が順次積層された構造を有する。なお、発光層113は、発光色の異なる発光層を複数積層した構成であっても良い。例えば、赤色を呈する発光物質を含む発光層と、緑色を呈する発光物質を含む発光層と、青色を呈する発光物質を含む発光層とが積層、またはキャリア輸送性材料を有する層を介して積層された構造であっても良い。または、黄色を呈する発光する発光物質を含む発光層と、青色を呈する発光物質を含む発光層との組み合わせであっても良い。ただし、発光層113の積層構造は上記に限定されない。例えば、発光層113は、発光色の同じ発光層を複数積層した構成であっても良い。例えば、青色を呈する発光物質を含む第1の発光層と、青色を呈する発光物質を含む第2の発光層とが積層、またはキャリア輸送性材料を有する層を介して積層された構造であっても良い。発光色の同じ発光層を複数積層した構成の場合、単層の構成よりも信頼性を高めることができる場合がある。また、図2(B)に示すタンデム構造のように複数の発光層を有する場合であっても、各発光層が、陽極側から上記のように順次積層される構造とする。また、第1の電極101が陰極で、第2の電極102が陽極の場合は、有機化合物層103の積層順は逆になる。具体的には、陰極である第1の電極101上の111が、電子注入層、112が電子輸送層、113が発光層、114が正孔(ホール)輸送層、115が正孔(ホール)注入層、という構成を有する。
【0103】
有機化合物層(103、103a、103b)に含まれる発光層113は、それぞれ発光物質、および複数の物質を適宜組み合わせて有しており、所望の発光色を呈する蛍光発光、または燐光発光が得られる構成とすることができる。また、発光層113を発光色の異なる積層構造としてもよい。なお、この場合、積層された各発光層に用いる発光物質およびその他の物質は、それぞれ異なる材料を用いればよい。また、図2(B)に示す複数の有機化合物層(103a、103b)から、それぞれ異なる発光色が得られる構成としても良い。この場合も各発光層に用いる発光物質およびその他の物質を異なる材料とすればよい。
【0104】
また、本発明の一態様である発光デバイスにおいて、例えば、図2(C)に示す第1の電極101を反射電極とし、第2の電極102を半透過・半反射電極とし、微小光共振器(マイクロキャビティ)構造とすることにより、有機化合物層103に含まれる発光層113から得られる発光を両電極間で共振させ、第2の電極102から射出される発光を強めることができる。従って、高精細化を実現することが容易である。また、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることができる。
【0105】
なお、発光デバイスの第1の電極101が、反射性を有する導電性材料と透光性を有する導電性材料(透明導電膜)との積層構造からなる反射電極である場合、透明導電膜の膜厚を制御することにより光学調整を行うことができる。具体的には、発光層113から得られる光の波長λに対して、第1の電極101と、第2の電極102との電極間の光学距離(膜厚と屈折率の積)がmλ/2(ただし、mは1以上の整数)またはその近傍となるように調整することが好ましい。
【0106】
また、発光層113から得られる所望の光(波長:λ)を増幅させるために、第1の電極101から発光層113の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、第2の電極102から発光層113の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、をそれぞれ(2m’+1)λ/4(ただし、m’は1以上の整数)またはその近傍となるように調節するのが好ましい。なお、ここでいう発光領域とは、発光層113における正孔(ホール)と電子との再結合領域を示す。
【0107】
このような光学調整を行うことにより、発光層113から得られる特定の単色光のスペクトルを狭線化させ、色純度の良い発光を得ることができる。
【0108】
但し、上記の場合、第1の電極101と第2の電極102との光学距離は、厳密には第1の電極101における反射領域から第2の電極102における反射領域までの総厚ということができる。しかし、第1の電極101および第2の電極102における反射領域を厳密に決定することは困難であるため、第1の電極101と第2の電極102の任意の位置を反射領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。また、第1の電極101と、所望の光が得られる発光層との光学距離は、厳密には第1の電極101における反射領域と、所望の光が得られる発光層における発光領域との光学距離であるということができる。しかし、第1の電極101における反射領域、および所望の光が得られる発光層における発光領域を厳密に決定することは困難であるため、第1の電極101の任意の位置を反射領域、所望の光が得られる発光層の任意の位置を発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0109】
図2(D)に示す発光デバイスは、タンデム構造を有する発光デバイスである。タンデム構造とすることで、高輝度発光が可能な発光デバイスとすることができる。また、タンデム構造は、シングル構造と比べて、同じ輝度を得るために必要な電流を低減できるため、信頼性を高めることができる。また、消費電力を低減することができる。
【0110】
図2(E)に示す発光デバイスは、図2(B)に示したタンデム構造の発光デバイスの一例であり、図に示すように、3つの有機化合物層(103a、103b、103c)が電荷発生層(106a、106b)を挟んで積層される構造を有する。なお、3つの有機化合物層(103a、103b、103c)は、それぞれに発光層(113a、113b、113c)を有しており、各発光層の発光色は、自由に組み合わせることができる。例えば、発光層113aを青色、発光層113bを赤色、緑色、または黄色のいずれか、発光層113cを青色とすることができるが、発光層113aを赤色、発光層113bを青色、緑色、または黄色のいずれか、発光層113cを赤色とすることもできる。
【0111】
なお、上述した本発明の一態様である発光デバイスにおいて、第1の電極101と第2の電極102の少なくとも一方は、透光性を有する電極(透明電極、半透過・半反射電極など)とする。透光性を有する電極が透明電極の場合、透明電極の可視光の透過率は、40%以上とする。また、半透過・半反射電極の場合、半透過・半反射電極の可視光の反射率は、20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下とする。また、これらの電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0112】
また、上述した本発明の一態様である発光デバイスにおいて、第1の電極101と第2の電極102の一方が、反射性を有する電極(反射電極)である場合、反射性を有する電極の可視光の反射率は、40%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下とする。また、この電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0113】
<発光デバイスの具体的な構造>
次に、本発明の一態様である発光デバイスの具体的な構造について説明する。また、ここでは、タンデム構造を有する図2(D)を用いて説明する。なお、図2(A)および図2(C)に示すシングル構造の発光デバイスについても有機化合物層の構成については同様とする。また、図2(D)に示す発光デバイスがマイクロキャビティ構造を有する場合は、第1の電極101を反射電極として形成し、第2の電極102を半透過・半反射電極として形成する。従って、所望の電極材料を単数または複数用い、単層または積層して形成することができる。なお、第2の電極102は、有機化合物層103bを形成した後、適宜材料を選択して形成する。
【0114】
<発光デバイスの材料>
≪発光層≫
発光層(113、113a、113b)は、発光物質を含む層である。なお、発光層(113、113a、113b)に用いることができる発光物質としては、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色などの発光色を呈する物質を適宜用いることができる。また、発光層を複数有する場合には、各発光層に異なる発光物質を用いることにより異なる発光色を呈する構成(例えば、補色の関係にある発光色を組み合わせて得られる白色発光)とすることができる。さらに、一つの発光層が異なる発光物質を有する積層構造としてもよい。
【0115】
また、発光層(113、113a、113b)は、発光物質(ゲスト材料)に加えて、1種または複数種の有機化合物(ホスト材料等)を有していても良い。
【0116】
具体的に、発光層113として、実施の形態1の図1(B)を用いて説明した構造を用いることができる。発光層113中では、ホスト材料118が重量比で最も多く存在し、ゲスト材料119(燐光性化合物)は、ホスト材料118中に分散される。発光層113のホスト材料118(有機化合物118_1及び有機化合物118_2)のT準位は、発光層113のゲスト材料(ゲスト材料119)のT準位よりも高いことが好ましい。
【0117】
有機化合物118_1としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい材料(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香環骨格を有する化合物、及び亜鉛、またはアルミニウム系金属錯体などを用いることができる。π電子不足型複素芳香環骨格を有する化合物の例としては、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体などの化合物が挙げられる。亜鉛またはアルミニウム系金属錯体の例としては、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。
【0118】
具体的には、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、またはチアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、9-[4-(4,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzTAZ1)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び、6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、2-[3-(3,9’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzCzPDBq)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)などのジアジン骨格を有する複素環化合物、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)などのトリアジン骨格を有する複素環化合物、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。上述した複素環化合物の中でも、トリアジン骨格、ジアジン(ピリミジン、ピラジン、ピリダジン)骨格、またはピリジン骨格を有する複素環化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。また、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は、主に1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0119】
例えば、有機化合物118_1として、下記構造式(400)乃至構造式(415)で表される有機化合物を用いることができる。
【0120】
【化14】
【0121】
【化15】
【0122】
有機化合物118_2としては、有機化合物118_1と励起錯体を形成できる組み合わせが好ましい。具体的には、π電子過剰型複素芳香環骨格、または芳香族アミン骨格のようなドナー性の高い骨格を有することが好ましい。π電子過剰型複素芳香環骨格を有する化合物としては、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体などの複素芳香族化合物が挙げられる。この場合、有機化合物118_1と有機化合物118_2とで形成される励起錯体の発光ピークが、ゲスト材料119(燐光性化合物)の三重項MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)遷移の吸収帯、より具体的には、最も長波長に位置する吸収帯と重なるように、有機化合物118_1、有機化合物118_2、およびゲスト材料119(燐光性化合物)を選択することが好ましい。これにより、発光効率が飛躍的に向上した発光デバイスとすることができる。ただし、燐光性化合物に替えて熱活性化遅延蛍光材料を用いる場合においては、最も長波長に位置する吸収帯は一重項の吸収帯であることが好ましい。
【0123】
また、有機化合物118_2としては、以下の正孔輸送性材料を用いることができる。
【0124】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的には、芳香族アミン、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体などを用いることができる。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0125】
これら正孔輸送性の高い材料として、具体的には、芳香族アミン化合物としては、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス[4-ビス(3-メチルフェニル)アミノフェニル]-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0126】
また、カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0127】
また、カルバゾール誘導体としては、他に、4,4’-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0128】
また、芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14以上炭素数42以下である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0129】
なお、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル骨格を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0130】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、またはポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0131】
さらに、正孔輸送性の高い材料としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:m-MTDATA)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、N-(9,9-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:DPASF)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、N-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAFLP(2))、N-(9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-イル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-2-アミン(略称:PCAFLP(2)-02)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(9,9-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,9-ジフェニルカルバゾール-3-アミン(略称:PCASF)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-ジフェニルアミノフェニル)スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジアミン(略称:DPA2SF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。また、3-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フェナントレン(略称:PCPPn)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、9’-フェニル-9’H-9,3’:6’,9’’-ターカルバゾール(略称:PhCzGI)、2,8-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ジベンゾチオフェン(略称:Cz2DBT)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)、4-[3-(トリフェニレン-2-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp-II)等のアミン化合物、カルバゾール化合物、チオフェン化合物、フラン化合物、フルオレン化合物、トリフェニレン化合物、フェナントレン化合物等を用いることができる。上述した化合物の中でも、ピロール骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、芳香族アミン骨格を有する化合物は、安定で信頼性が良好であり好ましい。また、当該骨格を有する化合物は、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0132】
ゲスト材料119(燐光性化合物)としては、イリジウム、ロジウム、または白金系の有機金属錯体、あるいは金属錯体が挙げられ、中でも金属錯体としては、白金錯体が好ましい。また、含窒素ヘテロ環カルベンを有する白金錯体なども挙げられる。また、有機イリジウム錯体、例えばイリジウム系オルトメタル錯体を用いてもよい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾール配位子、1H-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミジン配位子、ピラジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。
【0133】
また、ゲスト材料119(燐光性化合物)としては、有機化合物118_1のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位より高いLUMO準位を有し、有機化合物118_2のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位より低いHOMO準位を有するよう、有機化合物118_1、有機化合物118_2、およびゲスト材料119(燐光性化合物)を選択することが好ましい。これにより、発光効率が高く、低い電圧で駆動する発光デバイスとすることができる。
【0134】
また、ゲスト材料119(燐光性化合物)としては、有機化合物118_1のLUMO準位より高いLUMO準位を有し、有機化合物118_2のHOMO準位より高いHOMO準位を有するよう、有機化合物118_1、有機化合物118_2、およびゲスト材料119(燐光性化合物)を選択することが好ましい。これにより、発光効率が高く、低い電圧で駆動する発光デバイスとすることができる。
【0135】
また、ゲスト材料119(燐光性化合物)としては、有機化合物118_1のLUMO準位と、ゲスト材料119(燐光性化合物)のHOMO準位と、のエネルギー差が、ゲスト材料119(燐光性化合物)の吸収スペクトルにおける吸収端のうち最も長波長に位置する吸収端から算出されるエネルギー以上であるよう、有機化合物118_1、およびゲスト材料119(燐光性化合物)を選択することが好ましい。これにより、発光効率が高く、低い電圧で駆動する発光デバイスとすることができる。
【0136】
なお、吸収スペクトルにおける最も長波長に位置する吸収端は、薄膜状態またはマトリクス材料中に対象の物質をドーピングした薄膜における対象物質の吸収スペクトルを測定し、直接遷移を仮定したTaucプロットから求めることができる。あるいは、対象物質の溶液の吸収スペクトルを測定し、吸収スペクトルの最も長波長に観測されるピークもしくはショルダーピークの長波長側の半値において接線を引き、その接線と横軸(波長)あるいはベースラインとの交点から吸収端を算出してもよい。溶液の溶媒としては、特に制限はないが、トルエンおよびクロロホルムなど、比較的極性の小さい溶媒が好ましい。
【0137】
なお、本明細書中で用いる、HOMO準位およびLUMO準位の値は、電気化学測定によって求めることができる。電気化学測定の代表例としては、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定、微分パルスボルタンメトリー(DPV)測定等が挙げられる。
【0138】
サイクリックボルタンメトリ(CV)測定において、HOMO準位およびLUMO準位の値(E)は、参照電極に対する作用電極の電位を変化させることで得られる酸化ピーク電位(Epa)、および還元ピーク電位(Epc)を元に、算出することができる。測定において、正方向の電位走査からHOMO準位を求め、負方向の電位走査からLUMO準位を求める。また、測定におけるスキャン速度は、0.1V/sとする。
【0139】
具体的なHOMO準位およびLUMO準位の算出手順を説明する。材料のサイクリックボルタモグラムより得られる、酸化ピーク電位(Epa)、および還元ピーク電位(Epc)から、標準酸化還元電位(E)(=(Epa+Epc)/2)を求め、参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギー(E)から減算することにより、HOMO準位およびLUMO準位の値(E)(=Ex-Eo)をそれぞれ求めることができる。
【0140】
なお、上記は可逆な酸化還元波が得られる場合を示すが、不可逆な酸化還元波が得られる場合は、HOMO準位の算出には、酸化ピーク電位(Epa)から一定の値(0.1eV)を減算した値を還元ピーク電位(Epc)と仮定し、標準酸化還元電位(E)を小数点以下1桁まで求める。また、LUMO準位の算出には、還元ピーク電位(Epc)に一定の値(0.1eV)を加算した値を酸化ピーク電位(Epa)と仮定し、標準酸化還元電位(E)を小数点以下1桁まで求める。
【0141】
青色または緑色の波長領域に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(mpptz-dmp))、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz))、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrptz-3b))、トリス[3-(5-ビフェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPr5btz))、のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz1-mp))、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Prptz1-Me))のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:Ir(iPrpim))、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(dmpimpt-Me))のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体、(2-{3-[3-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾイミダゾール-1-イル-2-イリデン-κC2]フェノキシ-κC2}-9-(4-tert-ブチル-2-ピリジニル-κN)カルバゾール-2,1-ジイル-κC1)白金(II)(略称:PtON-TBBI)などの有機白金錯体等が挙げられる。上述した中でも、4H-トリアゾール骨格、1H-トリアゾール骨格およびイミダゾール骨格のような含窒素五員複素環骨格を有する有機金属イリジウム錯体または有機白金錯体は、高い三重項励起エネルギーを有し、信頼性、または発光効率に優れるため、特に好ましい。
【0142】
また、緑色または黄色の波長領域に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm))、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm))、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tBuppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[4-(2-ノルボルニル)-6-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(nbppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(mpmppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(dmppm-dmp)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dppm)(acac))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-iPr)(acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq))、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、ビス(2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス{2-[4’-(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p-PF-ph)(acac))、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))など有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性、または発光効率に際だって優れるため、特に好ましい。
【0143】
また、黄色または赤色の波長領域に発光ピークを有する物質としては、例えば、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(5mdppm)(dibm))、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(5mdppm)(dpm))、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(d1npm)(dpm))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(dpm))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(piq))、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性、または発光効率に際だって優れるため、特に好ましい。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0144】
発光層113に含まれる発光物質としては、三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料であればよい。該三重項励起エネルギーを発光に変換できる材料としては、燐光性化合物の他に、熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料が挙げられる。したがって、燐光性化合物と記載した部分に関しては、熱活性化遅延蛍光材料と読み替えても構わない。なお、熱活性化遅延蛍光材料とは、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起状態から一重項励起状態へエネルギーを変換する機能を有する材料である。そのため、三重項励起状態をわずかな熱エネルギーによって一重項励起状態にアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態からの発光(蛍光)を効率よく呈することができる。また、熱活性化遅延蛍光が効率良く得られる条件としては、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位のエネルギー差が好ましくは0eVより大きく0.2eV以下、さらに好ましくは0eVより大きく0.1eV以下であることが挙げられる。
【0145】
熱活性化遅延蛍光材料が、一種類の材料から構成される場合、例えば以下の材料を用いることができる。
【0146】
まず、フラーレンなどの誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtClOEP)等が挙げられる。
【0147】
また、一種の材料から構成される熱活性化遅延蛍光材料としては、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物も用いることができる。具体的には、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)等が挙げられる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、またはトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため、好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、チオフェン骨格、フラン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有することが、好ましい。なお、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、及び3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格、が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプター性が共に強く、一重項励起エネルギー準位と三重項励起エネルギー準位の差が小さくなるため、特に好ましい。
【0148】
例えば、発光物質として、下記構造式(500)乃至構造式(511)で表される有機化合物を用いることができる。
【0149】
【化16】
【0150】
なお、発光層113は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層113とする場合、第1の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。また、第1の発光層と第2の発光層とが有する発光物質は、同じ材料であっても異なる材料であってもよく、同じ色の発光を呈する機能を有する材料であっても、異なる発光色を呈する機能を有する材料であってもよい。2層の発光層に、互いに異なる発光色を呈する機能を有する発光物質をそれぞれ用いることで、複数の発光を同時に得ることができる。特に、2層の発光層が呈する発光により、白色になるよう、各発光層に用いる発光物質を選択すると好ましい。
【0151】
また、発光層113において、ホスト材料118およびゲスト材料119以外の材料を有していても良い。
【0152】
例えば、発光層にはさらに蛍光発光を呈する物質(蛍光発光物質)を用いることができる。この場合、発光層において燐光発光物質の励起エネルギーが蛍光発光物質に移動することで発光に至る。蛍光発光物質は、一重項励起状態から一重項基底状態への遷移が許容であるため励起寿命(発光寿命)が燐光発光物質より短い。そのため、発光層に蛍光発光物質をさらに用いることで、安定で信頼性の良好は発光デバイスを作製することができる。
【0153】
蛍光発光物質としては、例えば、ピレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタレン誘導体などが挙げられる。一重項励起エネルギー準位および三重項励起エネルギー準位が、燐光発光物質の三重項励起エネルギー準位より低い蛍光発光物質を用いることができる。
【0154】
具体例としては、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス(N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン)(略称:DPABPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン-3,10-ジアミン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。
【0155】
また、5,9-ジフェニル-5,9-ジアザ-13b-ボラナフト[3,2,1-de]アントラセン(略称:DABNA1)、9-[(1,1’-ジフェニル)-3-イル]-N,N,5,11-テトラフェニル-5,9-ジヒドロ-5,9-ジアザ-13b-ボラナフト(3,2,1-de)アントラセン-3-アミン(略称:DABNA2)、2,12-ジ(tert-ブチル)-5,9-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-N,N-ジフェニル-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン-7-アミン(略称:DPhA-tBu4DABNA)、2,12-ジ(tert-ブチル)-N,N,5,9-テトラ(4-tert-ブチルフェニル)-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン-7-アミン(略称:tBuDPhA-tBu4DABNA)、2,12-ジ(tert-ブチル)-5,9-ジ(4-tert-ブチルフェニル)-7-メチル-5H,9H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン(略称:Me-tBu4DABNA)、N7,N7,N13,N13,5,9,11,15-オクタフェニル-5H,9H,11H,15H-[1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl][1,4]ベンズアザボリノ[4’,3’,2’:4,5][1,4]ベンズアザボリノ[3,2-b]フェナザボリン-7,13-ジアミン(略称:ν-DABNA)、2-(4-tert-ブチルフェニル)ベンズ[5,6]インドロ[3,2,1-jk]ベンゾ[b]カルバゾール(略称:tBuPBibc)などの窒素とホウ素を含む縮合複素芳香族化合物、特にジアザ-ボラナフト-アントラセン骨格を有する化合物が発光スペクトルの幅が狭く、色純度の良好な青色発光を得られるため好適に用いることができる。
【0156】
また、これらの他、9,10,11-トリス[3,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]-2,5,15,18-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)インドロ[3,2,1-de]インドロ[3’,2’,1’:8,1][1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン(略称:BBCz-G)、9,11-ビス[3,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-9H-カルバゾール-9-イル]-2,5,15,18-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)インドロ[3,2,1-de]インドロ[3’,2’,1’:8,1][1,4]ベンズアザボリノ[2,3,4-kl]フェナザボリン(略称:BBCz-Y)などを好適に用いる事ができる。
【0157】
また、発光層に含まれる発光材料としては、熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料を用いることができる。熱活性化遅延蛍光材料としては、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物を用いることができる。具体例としては、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)等が挙げられる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、またはトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため、好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、チオフェン骨格、フラン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有することが、好ましい。なお、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、及び3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格、が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環のドナー性とπ電子不足型複素芳香環のアクセプタ性が共に強く、一重項励起エネルギー準位と三重項励起エネルギー準位の差が小さくなるため、特に好ましい。また、上述のジアザ-ボラナフト-アントラセン骨格を有する化合物は熱活性化遅延蛍光材料としての機能も有し、色純度の良好な青色発光を得られるため好適である。
【0158】
また、燐光発光物質に換えて、熱活性化遅延蛍光材料を用いても良い。熱活性化遅延蛍光材料は、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起状態から一重項励起状態へエネルギーを変換する機能を有する材料である。そのため、三重項励起状態をわずかな熱エネルギーによって一重項励起状態にアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態からの発光(蛍光)を効率よく呈することができる。また、熱活性化遅延蛍光が効率良く得られる条件としては、三重項励起エネルギー準位と一重項励起エネルギー準位のエネルギー差が好ましくは0eVより大きく0.2eV以下、さらに好ましくは0eVより大きく0.1eV以下であることが挙げられる。
【0159】
なお、発光層113は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の方法で形成することができる。また、上述した材料の他、量子ドットなどの無機化合物または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を有してもよい。
【0160】
≪正孔注入層≫
正孔注入層(111、111a、111b)は、陽極である第1の電極101および電荷発生層(106、106a、106b)から有機化合物層(103、103a、103b)に正孔(ホール)を注入する層であり、有機アクセプタ材料および正孔注入性の高い材料を含む層である。
【0161】
正孔注入層(111、111a、111b)は、一対の電極の一方(第1の電極101または第2の電極102)からのホール注入障壁を低減することでホール注入を促進する機能を有し、例えば遷移金属酸化物、フタロシアニン誘導体、あるいは芳香族アミンなどによって形成される。遷移金属酸化物としては、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物などが挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、フタロシアニン、または金属フタロシアニンなどが挙げられる。芳香族アミンとしてはベンジジン誘導体、またはフェニレンジアミン誘導体などが挙げられる。ポリチオフェン、またはポリアニリンなどの高分子化合物を用いることもでき、例えば自己ドープされたポリチオフェンであるポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸などがその代表例である。
【0162】
正孔注入層(111、111a、111b)として、正孔輸送性材料と、これに対して電子受容性を示す材料の複合材料を有する層を用いることもできる。あるいは、電子受容性を示す材料を含む層と正孔輸送性材料を含む層の積層を用いても良い。これらの材料間では定常状態、あるいは電界存在下において電荷の授受が可能である。電子受容性を示す材料としては、キノジメタン誘導体、クロラニル誘導体、またはヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプタを挙げることができる。具体的には、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)等の電子吸引基(ハロゲン基、またはシアノ基)を有する化合物である。また、遷移金属酸化物、例えば第4族から第8族金属の酸化物を用いることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどである。中でも酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0163】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的には、発光層113に用いることができる正孔輸送性材料として挙げた芳香族アミン、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体などを用いることができる。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0164】
≪正孔輸送層≫
正孔輸送層(112、112a、112b)は正孔輸送性材料を含む層であり、正孔注入層(111、111a、111b)の材料として例示した正孔輸送性材料を使用することができる。正孔輸送層(112、112a、112b)は正孔注入層(111、111a、111b)に注入された正孔を発光層(113、113a、113b)へ輸送する機能を有するため、正孔注入層(111、111a、111b)のHOMO準位と同じ、あるいは近いHOMO準位を有することが好ましい。
【0165】
また、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0166】
≪電子輸送層≫
電子輸送層(114、114a、114b)は、電子注入層(115、115a、115b)を経て一対の電極の他方(第1の電極101または第2の電極102)から注入された電子を発光層113へ輸送する機能を有する。電子輸送性材料としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香環骨格を有する化合物、または金属錯体などを用いることができる。具体的には、発光層113に用いることができる電子輸送性材料として挙げたキノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。また、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体などが挙げられる。また、1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質であることが好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層(114、114a、114b)は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0167】
また、電子輸送層(114、114a、114b)と発光層(113、113a、113b)との間に電子キャリアの移動を制御する層を設けても良い。これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層であって、電子キャリアの移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層を電子が突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0168】
≪電子注入層≫
電子注入層(115、115a、115b)は第2の電極102からの電子注入障壁を低減することで電子注入を促進する機能を有し、例えば第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩などを用いることができる。また、先に示す電子輸送性材料と、これに対して電子供与性を示す材料の複合材料を用いることもできる。電子供与性を示す材料としては、第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物などを挙げることができる。具体的には、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiO)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層115にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。また、電子注入層(115、115a、115b)に、電子輸送層(114、114a、114b)で用いることができる物質を用いても良い。
【0169】
また、電子注入層(115、115a、115b)に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114を構成する物質(金属錯体、または複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または希土類金属が好ましく、リチウム、ナトリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物、またはアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0170】
なお、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の方法で形成することができる。また、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層には、上述した材料の他、量子ドットなどの無機化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いてもよい。
【0171】
なお、量子ドットとしては、コロイド状量子ドット、合金型量子ドット、コア・シェル型量子ドット、コア型量子ドット、などを用いてもよい。また、2族と16族、13族と15族、13族と17族、11族と17族、または14族と15族の元素グループを含む量子ドットを用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子ドットを用いてもよい。
【0172】
≪一対の電極≫
第1の電極101及び第2の電極102は、発光デバイスの陽極または陰極としての機能を有する。第1の電極101及び第2の電極102は、金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物、または積層体などを用いて形成することができる。
【0173】
第1の電極101または第2の電極102の一方は、光を反射する機能を有する導電性材料により形成されると好ましい。該導電性材料としては、アルミニウム(Al)またはAlを含む合金等が挙げられる。Alを含む合金としては、AlとL(Lは、チタン(Ti)、ネオジム(Nd)、ニッケル(Ni)、及びランタン(La)の一つまたは複数を表す)とを含む合金等が挙げられ、例えばAlとTi、またはAlとNiとLaを含む合金等である。アルミニウムは、抵抗値が低く、光の反射率が高い。また、アルミニウムは、地殻における存在量が多く、安価であるため、アルミニウムを用いることによる発光デバイスの作製コストを低減することができる。また、銀(Ag)、またはAgとN(Nは、イットリウム(Y)、Nd、マグネシウム(Mg)、イッテルビウム(Yb)、Al、Ti、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、Ni、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、または金(Au)の一つまたは複数を表す)とを含む合金等を用いても良い。銀を含む合金としては、例えば、銀とパラジウムと銅を含む合金、銀と銅を含む合金、銀とマグネシウムを含む合金、銀とニッケルを含む合金、銀と金を含む合金、銀とイッテルビウムを含む合金等が挙げられる。その他、タングステン、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、銅、チタンなどの遷移金属を用いることができる。
【0174】
また、発光層から得られる発光は、第1の電極101及び第2の電極102の一方または双方を通して取り出される。したがって、第1の電極101及び第2の電極102の少なくとも一方は、光を透過する機能を有する導電性材料により形成されると好ましい。該導電性材料としては、可視光の透過率が40%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。
【0175】
また、第1の電極101及び第2の電極102は、光を透過する機能と、光を反射する機能と、を有する導電性材料により形成されても良い。該導電性材料としては、可視光の反射率が20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。例えば、導電性を有する金属、合金、導電性化合物などを1種又は複数種用いて形成することができる。具体的には、例えば、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITO)、珪素または酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)、酸化インジウム-酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、チタンを含有した酸化インジウム-錫酸化物、インジウム-チタン酸化物、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムなどの金属酸化物を用いることができる。また、光を透過する程度(好ましくは、1nm以上30nm以下の厚さ)の金属薄膜を用いることができる。金属としては、例えば、Agを用いることができる。また、合金としては、AgとAl、AgとMg、AgとAu、AgとYbなどの合金等を用いることができる。
【0176】
なお、本明細書等において、光を透過する機能を有する材料は、可視光を透過する機能を有し、且つ導電性を有する材料であればよく、例えば上記のようなITOに代表される酸化物導電体に加えて、酸化物半導体、または有機物を含む有機導電体を含む。有機物を含む有機導電体としては、例えば、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料等が挙げられる。また、グラフェンなどの無機炭素系材料を用いても良い。また、当該材料の抵抗率としては、好ましくは1×10Ω・cm以下、さらに好ましくは1×10Ω・cm以下である。
【0177】
また、上記の材料の複数を積層することによって第1の電極101及び第2の電極102の一方または双方を形成してもよい。
【0178】
また、光取り出し効率を向上させるため、光を透過する機能を有する電極と接して、該電極より屈折率の高い材料を形成してもよい。このような材料としては、可視光を透過する機能を有する材料であればよく、導電性を有する材料であっても有さない材料であってもよい。例えば、上記のような酸化物導電体に加えて、酸化物半導体、有機物が挙げられる。有機物としては、例えば、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、または電子注入層に例示した材料が挙げられる。また、無機炭素系材料、または光が透過する程度の金属薄膜も用いることができ、数nm乃至数十nmの層を複数積層させてもよい。
【0179】
第1の電極101または第2の電極102が陰極としての機能を有する場合には、仕事関数が小さい(3.8eV以下)材料を有することが好ましい。例えば、元素周期表の第1族又は第2族に属する元素(リチウム、ナトリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム等)、これら元素を含む合金(例えば、AgとMg、AlとLi)、ユーロピウム(Eu)、Yb等の希土類金属、これら希土類金属を含む合金、アルミニウム、銀を含む合金等を用いることができる。
【0180】
また、第1の電極101または第2の電極102を陽極として用いる場合、仕事関数の大きい(4.0eV以上)材料を用いることが好ましい。
【0181】
また、第1の電極101及び第2の電極102は、光を反射する機能を有する導電性材料と、光を透過する機能を有する導電性材料との積層としてもよい。その場合、第1の電極101及び第2の電極102は、各発光層からの所望の光を共振させ、その波長の光を強めることができるように、光学距離を調整する機能を有することができるため好ましい。
【0182】
第1の電極101及び第2の電極102の成膜方法は、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、塗布法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。
【0183】
≪電荷発生層≫
電荷発生層106は、第1の電極(陽極)101と第2の電極(陰極)102との間に電圧を印加したときに、有機化合物層103aに電子を注入し、有機化合物層103bに正孔を注入する機能を有する。なお、電荷発生層106は、正孔輸送性材料に電子受容体(アクセプタ)が添加された構成(P型層ともいう)であっても、電子輸送性材料に電子供与体(ドナー)が添加された構成(電子注入バッファ層ともいう)であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。さらに、P型層と電子注入バッファ層との間に電子リレー層が設けられていても良い。なお、上述した材料を用いて電荷発生層106を形成することにより、発光層を含む有機化合物層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0184】
電荷発生層106において、有機化合物である正孔輸送性材料に、電子受容体が添加された構成(P型層)とする場合、正孔輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子受容体としては、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。なお、上述したアクセプタ材料を用いても良い。また、P型層を構成する材料を混合してなる混合膜として用いても、それぞれの材料を含む単膜を積層しても良い。
【0185】
また、電荷発生層106において、電子輸送性材料に電子供与体が添加された構成(電子注入バッファ層)とする場合、電子輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第2族、第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム(LiO)、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0186】
電荷発生層106において、P型層と電子注入バッファ層との間に電子リレー層を設ける場合、電子リレー層は少なくとも電子輸送性を有する物質を含み、電子注入バッファ層とP型層との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。電子リレー層に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、P型層におけるアクセプタ性物質のLUMO準位と、電荷発生層106に接する電子輸送層に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層に用いられる電子輸送性を有する物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0187】
なお、図2(D)では、有機化合物層103が2層積層された構成を示したが、異なる発光層の間に電荷発生層を設けることにより3層以上の発光層を含む有機化合物層の積層構造としてもよい。
【0188】
≪キャップ層≫
なお、図2(A)乃至図2(E)では図示しないが、発光デバイスの第2の電極102上にキャップ層を設けてもよい。キャップ層には、例えば、屈折率の高い材料を用いることができる。キャップ層を第2の電極102上に設けることによって、第2の電極102から射出される光の取り出し効率を向上させることができる。
【0189】
キャップ層に用いることのできる材料の具体例として、5,5’-ジフェニル-2,2’-ジ-5H-[1]ベンゾチエノ[3,2-c]カルバゾール(略称:BisBTc)、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)等が挙げられる。また、実施の形態1で説明した有機化合物を用いることができる。
【0190】
≪基板≫
また、本発明の一態様に係る発光デバイスは、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に作製すればよい。基板上に作製する順番としては、第1の電極101側から順に積層しても、第2の電極102側から順に積層しても良い。
【0191】
なお、本発明の一態様に係る発光デバイスを形成できる基板としては、例えばガラス、石英、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボネート、またはポリアリレート、からなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム、無機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光デバイス、及び光学素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。あるいは、発光デバイス、及び光学素子を保護する機能を有するものであればよい。
【0192】
例えば、本明細書等においては、様々な基板を用いて発光デバイスを形成することができる。基板の種類は、特に限定されることはない。その基板の一例としては、半導体基板(例えばシリコン基板などの単結晶基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含むセルロースナノファイバ(CNF)、紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、またはエポキシなどの樹脂、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
【0193】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、発光デバイスを形成してもよい。または、基板と発光デバイスとの間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に発光デバイスを一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、耐熱性の劣る基板、または可撓性の基板にも発光デバイスを転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成、および基板上にポリイミド等の樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0194】
つまり、ある基板を用いて発光デバイスを形成し、その後、別の基板に発光デバイスを転置し、別の基板上に発光デバイスを配置してもよい。発光デバイスが転置される基板の一例としては、上述した基板に加え、セロファン基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、壊れにくい発光デバイス、耐熱性の高い発光デバイス、軽量化された発光デバイス、または薄型化された発光デバイスとすることができる。
【0195】
また、上述した基板上に、例えば電界効果トランジスタ(FET)を形成し、FETと電気的に接続された電極上に発光デバイスを作製してもよい。これにより、FETによって発光デバイスの駆動を制御するアクティブマトリクス型の表示装置を作製できる。
【0196】
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形態において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。つまり、本実施の形態および他の実施の形態では、様々な発明の態様が記載されているため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。例えば、本発明の一態様として、発光デバイスに適用した場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、発光デバイスに適用しなくてもよい。または、例えば、本発明の一態様では、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる機能を有するゲスト材料と、を有し、第1の有機化合物のLUMO準位は、第2の有機化合物のLUMO準位より低く、第1の有機化合物のHOMO準位は、第2の有機化合物のHOMO準位より低い場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様では、例えば、第1の有機化合物のLUMO準位は、第2の有機化合物のLUMO準位より低くなくてもよい。あるいは、第1の有機化合物のHOMO準位は、第2の有機化合物のHOMO準位より低くなくてもよい。または、例えば、本発明の一態様では、第1の有機化合物と第2の有機化合物とが、励起錯体を形成する場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様では、例えば、第1の有機化合物と第2の有機化合物とが、励起錯体を形成しなくてもよい。または、例えば、本発明の一態様では、ゲスト材料のLUMO準位は、第1の有機化合物のLUMO準位より高く、ゲスト材料のHOMO準位は、第2の有機化合物のHOMO準位より低い場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様では、例えば、ゲスト材料のLUMO準位は、第1の有機化合物のLUMO準位より高くなくても良い。あるいは、ゲスト材料のHOMO準位は、第2の有機化合物のHOMO準位より低くなくてもよい。
【0197】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0198】
(実施の形態3)
発光デバイス130は図3(A)および図3(B)に例示したように、絶縁層175上に複数形成された表示装置を構成する。本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について詳しく説明する。
【0199】
表示装置100は、複数の画素178がマトリクス状に配列された画素部177を有する。画素178は、副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bを有する。
【0200】
本明細書等において、例えば副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bに共通する事項を説明する場合には、副画素110と呼称して説明する場合がある。アルファベットで区別する他の構成要素についても、これらに共通する事項を説明する場合には、アルファベットを省略した符号を用いて説明する場合がある。
【0201】
副画素110Rは赤色の光を呈し、副画素110Gは緑色の光を呈し、副画素110Bは青色の光を呈する。これにより、画素部177に画像を表示することができる。なお、本実施の形態では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の副画素を例に挙げて説明するが、その他の色の副画素の組み合わせを用いてもよい。また、副画素は3つに限られず、4つ以上としてもよい。4つの副画素としては、例えば、R、G、B、白色(W)の4色の副画素、R、G、B、Yの4色の副画素、及び、R、G、B、赤外光(IR)の4つの副画素、等が挙げられる。
【0202】
本明細書等において、行方向をX方向、列方向をY方向という場合がある。X方向とY方向は交差し、例えば垂直に交差する。
【0203】
図3(A)では、異なる色の副画素がX方向に並べて配置されており、同じ色の副画素が、Y方向に並べて配置されている例を示す。なお、異なる色の副画素がY方向に並べて配置され、同じ色の副画素が、X方向に並べて配置されていてもよい。
【0204】
画素部177の外側には、接続部140が設けられ、領域141が設けられていてもよい。領域141は画素部177と接続部140の間に設けられる。領域141には、有機化合物層103が設けられる。また、接続部140には、導電層151Cが設けられる。
【0205】
図3(A)では、領域141、及び接続部140が画素部177の右側に位置する例を示すが、領域141、及び接続部140の位置は特に限定されない。また、領域141、及び接続部140は、単数であっても複数であってもよい。
【0206】
図3(B)は、図3(A)における一点鎖線A1-A2間の断面図の例である。図3(A)に示すように、表示装置100は、絶縁層171と、絶縁層171上の導電層172と、絶縁層171上、及び導電層172上の絶縁層173と、絶縁層173上の絶縁層174と、絶縁層174上の絶縁層175と、を有する。絶縁層171は、基板(図示せず)上に設けられる。絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173には、導電層172に達する開口が設けられ、当該開口を埋め込むようにプラグ176が設けられている。
【0207】
画素部177において、絶縁層175及びプラグ176上に、発光デバイス130が設けられる。また、発光デバイス130を覆うように、保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。また、隣り合う発光デバイス130の間には、無機絶縁層125と、無機絶縁層125上の絶縁層127と、が設けられていることが好ましい。
【0208】
図3(B)では、無機絶縁層125及び絶縁層127の断面が複数示されているが、表示装置100を上面から見た場合、無機絶縁層125及び絶縁層127は、それぞれ1つに繋がっていることが好ましい。つまり、絶縁層127は、第1の電極上に開口部を有する絶縁層であることが好ましい。
【0209】
図3(B)では、発光デバイス130として、発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bを示している。発光デバイス130R、発光デバイス130G、及び発光デバイス130Bは、互いに異なる発光色を呈するものとする。例えば、発光デバイス130Rは赤色の光を発することができ、発光デバイス130Gは緑色の光を発することができ、発光デバイス130Bは青色の光を発することができる。また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、又は発光デバイス130Bは、他の可視光又は赤外光を発してもよい。
【0210】
本発明の一態様の表示装置は、例えば発光デバイスが形成されている基板とは反対方向に光を射出する上面射出型(トップエミッション型)とすることができる。なお、本発明の一態様の表示装置は、下面射出型(ボトムエミッション型)であってもよい。
【0211】
発光デバイス130が有する発光物質としては、例えば、蛍光を発する物質(蛍光材料)、燐光を発する物質(燐光材料)、及び、熱活性化遅延蛍光を示す物質(熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料)などの有機化合物または有機金属錯体が挙げられる。また、量子ドットなどの無機化合物であってもよい。
【0212】
発光デバイス130Rは、実施の形態1に示したような構成を有する。導電層151Rと導電層152Rとからなる第1の電極(画素電極)と、第1の電極上の有機化合物層103Rと、有機化合物層103R上の共通層104と、共通層上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。なお、共通層104は、設けられていても設けられていなくても構わないが、設けられていることが加工時の有機化合物層103Rへのダメージを低減できることから好ましい。共通層104が設けられている場合、共通層104は、電子注入層であることが好ましい。また、共通層104が設けられている場合、有機化合物層103Rと共通層104との積層構造が、実施の形態2における有機化合物層103に相当する。
【0213】
発光デバイス130Gは、実施の形態1に示したような構成を有する。導電層151Gと導電層152Gとからなる第1の電極(画素電極)と、第1の電極上の有機化合物層103Gと、有機化合物層103G上の共通層104と、共通層上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。なお、共通層104は、設けられていても設けられていなくても構わないが、設けられていることが加工時の有機化合物層103Gへのダメージを低減できることから好ましい。共通層104が設けられている場合、共通層104は、電子注入層であることが好ましい。また、共通層104が設けられている場合、有機化合物層103Gと共通層104との積層構造が、実施の形態2における有機化合物層103に相当する。
【0214】
発光デバイス130Bは、実施の形態1に示したような構成を有する。導電層151Bと導電層152Bとからなる第1の電極(画素電極)と、第1の電極上の有機化合物層103Bと、有機化合物層103B上の共通層104と、共通層上の第2の電極(共通電極)102と、を有する。なお、共通層104は、設けられていても設けられていなくても構わないが、設けられていることが加工時の有機化合物層103Bへのダメージを低減できることから好ましい。共通層104が設けられている場合、共通層104は、電子注入層であることが好ましい。また、共通層104が設けられている場合、有機化合物層103Bと共通層104との積層構造が、実施の形態2における有機化合物層103に相当する。
【0215】
発光デバイスが有する画素電極と共通電極のうち、一方は陽極として機能し、他方は陰極として機能する。以下では、特に断りが無い場合は、画素電極が陽極として機能し、共通電極が陰極として機能するものとして説明する。
【0216】
有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bは、副画素または、発光色毎に島状に独立している。有機化合物層103を発光デバイス130ごとに島状に設けることで、高精細な表示装置においても隣接する発光デバイス130間のリーク電流を抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。特に、低輝度における電流効率の高い表示装置を実現できる。
【0217】
島状の有機化合物層103は、EL膜を成膜し、当該EL膜をリソグラフィ法を用いて加工することにより形成する。
【0218】
また、本発明の一態様の表示装置では、発光デバイスの第1の電極(画素電極)を、積層構成とすることが好ましい。例えば、図3(B)に示す例では、発光デバイス130の第1の電極を、導電層151と、導電層152と、の積層構成としている。例えば、表示装置100をトップエミッション型とし、発光デバイス130の画素電極が陽極として機能する場合、導電層151は可視光に対する反射率が高い層とし、導電層152は例えば可視光の透過性を有し、且つ仕事関数が大きい層とすることが好ましい。表示装置100がトップエミッション型である場合、画素電極の可視光に対する反射率が高いほど、有機化合物層103が発する光の取り出し効率を高くすることができる。また、画素電極が陽極として機能する場合、画素電極の仕事関数が大きいほど、有機化合物層103への正孔の注入が容易となる。以上より、発光デバイス130の画素電極を、可視光に対する反射率が高い導電層151と、仕事関数が大きい導電層152と、の積層構成とすることにより、発光デバイス130を、光取り出し効率が高く、且つ駆動電圧の低い発光デバイスとすることができる。
【0219】
導電層151を、可視光に対する反射率が高い層とする場合、導電層151の可視光に対する反射率は、例えば40%以上100%以下、70%以上100%以下とすることが好ましい。また、導電層152は、可視光の透過性を有する電極とする場合、可視光に対する透過率を例えば40%以上とすることが好ましい。
【0220】
ここで、画素電極を複数の層からなる積層構成とする場合、例えば当該複数の層間の反応により、画素電極が変質してしまう場合がある。例えば、画素電極の形成後に形成した膜を、ウェットエッチング法により除去する場合、薬液が画素電極と接触することにより、ガルバニック腐食が発生することがある。
【0221】
そこで、本実施の形態の表示装置100では、導電層151および導電層152の側面に絶縁層156を形成する。これにより、例えば導電層151と、導電層152と、を有する画素電極の形成後に形成した膜を、ウェットエッチング法により除去する場合であっても、薬液が導電層151に接触することを抑制できる。従って、例えば画素電極へのガルバニック腐食の発生を抑制できる。よって、表示装置100は、歩留まりが高い方法で作製できるため、低価格の表示装置とすることができる。また、表示装置100に不良が発生することを抑制できるため、表示装置100は信頼性が高い表示装置とすることができる。
【0222】
導電層151として、例えば金属材料を用いることができる。具体的には、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)等の金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。
【0223】
導電層152として、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、及びシリコンの中から選ばれるいずれか一又は複数を有する酸化物を用いることができる。例えば、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、酸化チタン、ガリウムを含むインジウム亜鉛酸化物、アルミニウムを含むインジウム亜鉛酸化物、シリコンを含むインジウム錫酸化物、及びシリコンを含むインジウム亜鉛酸化物等のいずれか一又は複数を含む導電性酸化物を用いることが好ましい。特に、シリコンを含むインジウム錫酸化物は仕事関数が大きい、例えば仕事関数が4.0eV以上であるため、導電層152として好適に用いることができる。
【0224】
導電層151は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよく、導電層152は、異なる材料を有する複数の層の積層構成であってもよい。この場合、導電層151が、導電性酸化物等の導電層152に用いることができる材料を用いた層を有してもよく、また、導電層152が、金属材料等の導電層151に用いることができる材料を用いた層を有してもよい。例えば、導電層151が2層以上の積層構成である場合は、導電層152と接する層は、導電層152に用いることができる材料を用いた層とすることができる。
【0225】
なお、絶縁層156の端部は、テーパ形状を有していてもよい。具体的には、絶縁層156の端部がテーパ角90°未満のテーパ形状を有することで、絶縁層156の側面に沿って設けられる構造物の被覆性を高めることができる。
【0226】
図4(A)においては、導電層151が異なる材料を含む複数の層の積層構造である場合の図を示している。図4(A)に示すように、導電層151は、導電層151aと、導電層151a上の導電層151bと、導電層151b上の導電層151cと、を有する構成である。つまり、図4(A)に示す導電層151は、3層積層構成である。このように、導電層151が複数の層の積層構成である場合は、導電層151を構成する層のうち少なくとも1つの層の可視光に対する反射率を、導電層152の可視光に対する反射率より高くすればよい。
【0227】
図4(A)に示す例では、導電層151bが、導電層151aと導電層151cにより挟まれる構成である。導電層151a、及び導電層151cには、導電層151bより変質しにくい材料を用いることが好ましい。例えば、導電層151aには、絶縁層175と接することによるマイグレーションの発生が、導電層151bより起こりにくい材料を用いることができる。また、導電層151cには、導電層151bより酸化しにくく、さらに酸化物の電気抵抗率が、導電層151bに用いる材料の酸化物より低い材料を用いることができる。
【0228】
以上より、導電層151bを、導電層151aと導電層151cで挟む構成とすることで、導電層151bの材料選択の幅を広げることができる。これにより、例えば導電層151bを、導電層151a及び導電層151cのうち少なくとも一方より、可視光に対する反射率が高い層とすることができる。例えば、導電層151bとしてアルミニウムを用いることができる。なお、導電層151bには、アルミニウムを含む合金を用いてもよい。また、導電層151aとして、可視光に対する反射率がアルミニウムと比較すると低いが、絶縁層175と接してもアルミニウムよりマイグレーションが発生しにくい材料であるチタンを用いることができる。さらに、導電層151cとして、可視光に対する反射率がアルミニウムと比較すると低いが、アルミニウムより酸化しにくく、また酸化物の電気抵抗率が酸化アルミニウムの電気抵抗率より低い材料であるチタンを用いることができる。
【0229】
また、導電層151cとして、銀、又は銀を含む合金を用いてもよい。銀は、可視光に対する反射率がチタンより高いという特性を有する。さらに、銀は、アルミニウムより酸化しにくく、また酸化銀の電気抵抗率は酸化アルミニウムの電気抵抗率より低いという特性を有する。以上により、導電層151cとして銀、又は銀を含む合金を用いると、導電層151の可視光に対する反射率を好適に高くしつつ、導電層151bの酸化による画素電極の電気抵抗の上昇を抑制できる。ここで、銀を含む合金として、例えば銀とパラジウムと銅の合金(Ag-Pd-Cu、APCとも記す)を適用できる。なお、導電層151cとして銀、又は銀を含む合金を用い、導電層151bとしてアルミニウムを用いると、導電層151cの可視光に対する反射率を、導電層151bの可視光に対する反射率より高くすることができる。ここで、導電層151bとして銀、又は銀を含む合金を用いてもよい。また、導電層151aに銀、又は銀を含む合金を用いてもよい。
【0230】
一方、チタンを用いた膜は、銀を用いた膜よりエッチングによる加工性に優れる。よって、導電層151cとしてチタンを用いることにより、導電層151cを容易に形成できる。なお、アルミニウムを用いた膜も、銀を用いた膜よりエッチングによる加工性に優れる。
【0231】
以上のように、導電層151を複数の層の積層構造とすることにより、表示装置の特性を向上させることができる。例えば、表示装置100を、光取り出し効率が高く、且つ信頼性が高い表示装置とすることができる。
【0232】
ここで、発光デバイス130にマイクロキャビティ構造が適用されている場合は、導電層151cとして、可視光に対する反射率が高い材料である銀、又は銀を含む合金を用いると、表示装置100の光取り出し効率を好適に高めることができる。
【0233】
前述のように、導電層151の側面は、テーパ形状を有することが好ましい。具体的には、導電層151の側面は、テーパ角90°未満のテーパ形状を有することが好ましい。例えば、図4(A)に示す構成の導電層151では、導電層151a、導電層151b、及び導電層151cのうち少なくとも1つの側面がテーパ形状を有することが好ましい。
【0234】
図4(A)に示す導電層151は、リソグラフィ法を用いて形成できる。具体的には、まず、導電層151aとなる導電膜と、導電層151bとなる導電膜と、導電層151cとなる導電膜と、を順に成膜する。次に、導電層151cとなる導電膜上にレジストマスクを形成する。その後、レジストマスクと重ならない領域の導電膜を、例えばエッチング法を用いて除去する。ここで、側面がテーパ形状を有さないように、つまり側面が垂直となるように導電層151を形成する場合と比較して、レジストマスクが後退(縮小)しやすい条件で導電膜を加工することにより、導電層151の側面をテーパ形状とすることができる。
【0235】
ここで、レジストマスクが後退(縮小)しやすい条件で導電膜を加工すると、導電膜が水平方向に加工されやすくなる場合がある。つまり、側面が垂直となるように導電層151を形成する場合より、エッチングの等方性が高くなる場合がある。
【0236】
また、導電層151を異なる材料からなる複数の層の積層構成とした場合、当該複数の層間で水平方向の加工のされやすさが異なる場合がある。例えば、導電層151aと、導電層151bと、導電層151cと、の間で水平方向の加工のされやすさが異なることがある。
【0237】
この場合、導電膜を加工後図4(A)に示すように、導電層151bの側面が、導電層151a、及び導電層151cの側面より内側に位置し、突出部を形成する場合がある。これにより、導電層152の導電層151に対する被覆性が低下し、導電層152の段切れが発生する恐れがある。
【0238】
そこで、図4(A)のように絶縁層156を設けることが好ましい。図4(A)では、導電層151bの側面と重なる領域を有するように、導電層151a上に絶縁層156が設けられる例を示している。これにより、突出部に起因した導電層152の段切れまたは薄膜化の発生を抑制できるため、接続不良または駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0239】
なお、図4(A)においては、導電層151bの側面が絶縁層156に全て覆われる構造を図示したが、導電層151bの側面の一部が絶縁層156に覆われなくてもよい。以降に示す構成の画素電極においても、同様に導電層151bの側面の一部が絶縁層156に覆われなくてもよい。
【0240】
導電層151が図4(A)に示す構成である場合、導電層152は、導電層151a、導電層151b、導電層151c、及び絶縁層156を覆い、且つ導電層151a、導電層151b、及び導電層151cと電気的に接続されるように設けられる。これにより、例えば導電層152の形成後に成膜した膜をウェットエッチング法により除去する場合であっても、薬液が導電層151a、導電層151b、及び導電層151cのいずれにも接触しないようにすることができる。よって、導電層151a、導電層151b、及び導電層151cのいずれにおいても、腐食の発生を抑制できる。よって、表示装置100は、歩留まりが高い方法で作製できる。また、不良の発生を抑制し、表示装置100は信頼性が高い表示装置とすることができる。
【0241】
ここで、図4(A)に示すように、絶縁層156は、湾曲面を有することが好ましい。これにより、例えば絶縁層156の側面が垂直(Z方向に平行)である場合より、絶縁層156を覆う導電層152における段切れの発生を抑制できる。また、絶縁層156が、側面にテーパ形状、具体的にはテーパ角が90°未満のテーパ形状を有する場合であっても、例えば絶縁層156の側面が垂直である場合より、絶縁層156を覆う導電層152における段切れの発生を抑制できる。以上より、表示装置100を、歩留まりが高い方法で作製できる。また、不良の発生を抑制し、表示装置100は信頼性が高い表示装置とすることができる。
【0242】
なお、図4(A)では、導電層151bの側面が、導電層151aの側面、及び導電層151cの側面より内側に位置する構成を示しているが、本発明の一態様はこれに限らない。例えば、導電層151bの側面が、導電層151aの側面より外側に位置してもよい。また、導電層151bの側面が、導電層151cの側面より外側に位置してもよい。
【0243】
図4(B)乃至図4(D)は第1の電極101のその他の構成を示している。図4(B)は、図4(A)の第1の電極101において、絶縁層156が導電層151bの側面だけでなく、導電層151a、導電層151bおよび導電層151cの側面を覆っている構成である。
【0244】
図4(C)は図4(A)の第1の電極101において、絶縁層156が設けられていない構成である。
【0245】
図4(D)は図4(A)の第1の電極101において、導電層151が積層構造を有しておらず、導電層152が積層構造を有している構成である。
【0246】
導電層152aは、導電層152bに対する密着性が、例えば絶縁層175より高い層とする。導電層152aとして、例えばインジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、及びシリコンの中から選ばれるいずれか一又は複数を有する酸化物を用いることができる。例えば、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛、酸化チタン、インジウムチタン酸化物、チタン酸亜鉛、アルミニウム亜鉛酸化物、ガリウムを含むインジウム亜鉛酸化物、アルミニウムを含むインジウム亜鉛酸化物、シリコンを含むインジウムスズ酸化物、及びシリコンを含むインジウム亜鉛酸化物等のいずれか一又は複数を含む導電性酸化物を用いることが好ましい。以上により、導電層152bの膜剥がれを抑制することができる。また、導電層152bを絶縁層175と接しない構成とすることができる。
【0247】
導電層152bは、可視光に対する反射率(例えば400nm以上750nm未満の範囲内の所定の波長の光に対する反射率)が、導電層151、導電層152a、及び導電層152cより高い層とする。導電層152bの可視光に対する反射率は、例えば70%以上100%以下とすることができ、好ましくは80%以上100%以下であり、より好ましくは90%以上100%以下である。また、導電層152bとして、例えばアルミニウムより可視光に対する反射率が高い材料を用いることができる。具体的には、導電層152bとして、例えば銀、又は銀を含む合金を用いることができる。銀を含む合金として、例えば銀、パラジウム、及び銅の合金(APC)が挙げられる。以上により、表示装置100を、光取り出し効率が高い表示装置とすることができる。なお、導電層152bとして、銀以外の金属を用いてもよい。
【0248】
導電層152cは、導電層151及び導電層152を陽極として機能させる場合、仕事関数が大きい層とすることが好ましい。導電層152cは、例えば、導電層152bより仕事関数が大きい層とする。導電層152cとして、例えば導電層152aに用いることができる材料と同様の材料を用いることができる。例えば、導電層152aと導電層152cに同一種の材料を用いる構成とすることができる。例えば、導電層152aにインジウムスズ酸化物を用いる場合は、導電層152cにもインジウムスズ酸化物を用いることができる。
【0249】
なお、導電層151及び導電層152を陰極として機能させる場合、導電層152cは仕事関数が小さい層とすることが好ましい。導電層152cは、例えば、導電層152bより仕事関数が小さい層とする。
【0250】
また、導電層152cは、可視光に対する透過率(例えば400nm以上750nm未満の範囲内の所定の波長の光に対する透過率)が高い層とすることが好ましい。例えば、導電層152cの可視光に対する透過率は、導電層151、及び導電層152bの可視光に対する透過率より高いことが好ましい。例えば、導電層152cの可視光に対する透過率は、60%以上100%以下とすることができ、好ましくは70%以上100%以下であり、より好ましくは80%以上100%以下である。以上により、有機化合物層103が発する光のうち、導電層152cに吸収される光を少なくすることができる。また、前述のように、導電層152c下の導電層152bは、可視光に対する反射率が高い層とすることができる。よって、表示装置100を、光取り出し効率が高い表示装置とすることができる。
【0251】
続いて図3(A)に示す構成を有する表示装置100の作製方法例を図5乃至図10を用いて説明する。表示装置100の有する発光デバイスは、有機層が、水を用いた処理を含む作製工程によって形成される。本発明の一態様の表示装置の有する発光デバイスの有機層に、本発明の一態様の有機化合物を用いることで、水を用いた処理を含む作製方法によって作製した場合であっても、当該有機化合物を含む層が溶解する、当該有機化合物を用いた層へ薬液が浸透するなどの問題を防ぎ、良好な特性の発光デバイスを提供することができる。
【0252】
[作製方法例]
表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、又はALD法等を用いて形成できる。CVD法としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、及び、熱CVD法等がある。また、熱CVD法のひとつに、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法がある。
【0253】
また、表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、及び、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、又はナイフコート等の湿式の成膜方法により形成できる。
【0254】
特に、発光デバイスの作製には、蒸着法等の真空プロセス、及び、スピンコート法、インクジェット法等の溶液プロセスを用いることができる。蒸着法としては、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法等の物理蒸着法(PVD法)、及び、化学蒸着法(CVD法)等が挙げられる。特に有機化合物層に含まれる機能層(正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、発光層、電子ブロック層、電子輸送層、及び電子注入層等)については、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、又は、マイクロコンタクト法等)等の方法により形成できる。
【0255】
また、表示装置を構成する薄膜を加工する際には、例えばリソグラフィ法を用いて加工できる。又は、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法等により薄膜を加工してもよい。また、メタルマスク等の遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0256】
リソグラフィ法としては、例えばフォトリソグラフィ法を用いることができる。フォトリソグラフィ法としては、代表的には以下の2つの方法がある。1つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、例えばエッチングにより当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう1つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0257】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、又はこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線、KrFレーザ光、又はArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-violet)光、又はX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線又は電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビーム等のビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0258】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、又はサンドブラスト法等を用いることができる。
【0259】
まず、図5(A)に示すように、基板(図示せず)上に絶縁層171を形成する。続いて、絶縁層171上に導電層172、及び導電層179を形成し、導電層172、及び導電層179を覆うように絶縁層171上に絶縁層173を形成する。続いて、絶縁層173上に絶縁層174を形成し、絶縁層174上に絶縁層175を形成する。
【0260】
基板としては、少なくとも後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する基板を用いることができる。基板として、絶縁性基板を用いる場合には、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、又は有機樹脂基板等を用いることができる。また、シリコン又は炭化シリコン等を材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板等の半導体基板を用いることができる。
【0261】
続いて、図5(A)に示すように、絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173に、導電層172に達する開口を形成する。続いて、当該開口を埋め込むように、プラグ176を形成する。
【0262】
続いて、図5(A)に示すように、プラグ176上、及び絶縁層175上に、後に導電層151R、導電層151G、導電層151B、及び導電層151Cとなる導電膜151fを形成する。導電膜151fの形成には、例えば、スパッタリング法又は真空蒸着法を用いることができる。また、導電膜151fとして、例えば金属材料を用いることができる。
【0263】
続いて、図5(A)に示すように、導電膜151f上に、後に導電層152R、導電層152G、導電層152B、及び導電層152Cとなる導電膜152fを形成する。導電膜152fの形成には、例えば、スパッタリング法又は真空蒸着法を用いることができる。また、導電膜152fとして、例えば導電性酸化物を用いることができる。又は、導電膜152fとして、金属材料を用いる膜と、当該膜上の導電性酸化物を用いる膜と、の積層構成を適用できる。例えば、導電膜152fとして、チタン、銀、又は銀を含む合金を用いる膜と、当該膜上の導電性酸化物を用いる膜と、の積層構成を適用できる。
【0264】
また、導電膜152fの形成には、ALD法を用いることができる。この場合、導電膜152fとして、インジウム、錫、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、及びシリコンの中から選ばれるいずれか一又は複数を有する酸化物を用いることができる。この場合、プリカーサ(一般的には、前駆体、又は金属プリカーサ等と呼ばれる場合がある)の導入、当該プリカーサのパージ、酸化剤(一般的には、反応剤、リアクタント、又は非金属プリカーサ等と呼ばれる場合がある)の導入、及び当該酸化剤のパージを1サイクルとして、当該サイクルを繰り返し行うことにより導電膜152fを形成できる。ここで、インジウム錫酸化物等、複数種の金属が含まれる酸化物膜を導電膜152fとして形成する場合、プリカーサの種類ごとにサイクル数を異ならせることにより、金属の組成を制御できる。
【0265】
例えば、導電膜152fとしてインジウム錫酸化物膜を成膜する場合、インジウムを含むプリカーサの導入後、当該プリカーサをパージし酸化剤を導入してIn-O膜を形成し、次に錫を含むプリカーサの導入後、当該プリカーサをパージし酸化剤を導入してSn-O膜を形成する。ここで、In-O膜形成のサイクル数を、Sn-O膜形成のサイクル数より多くすることにより、導電膜152fに含まれるInの原子数を、Snの原子数より多くすることができる。
【0266】
また、例えば導電膜152fとして酸化亜鉛膜を成膜する場合、Zn-O膜を上記の手順で形成する。また、例えば導電膜152fとしてアルミニウム亜鉛酸化物膜を成膜する場合、Zn-O膜、及びAl-O膜をそれぞれ上記の手順で形成する。また、例えば導電膜152fとして酸化チタン膜を成膜する場合、Ti-O膜を上記の手順で形成する。また、例えば導電膜152fとしてシリコンを含むインジウム錫酸化物膜を成膜する場合、In-O膜、Sn-O膜、及びSi-O膜を上記の手順で形成する。また、例えばガリウムを含む酸化亜鉛膜を成膜する場合、Ga-O膜、及びZn-O膜を上記の手順で形成する。
【0267】
インジウムを含むプリカーサとして、例えばトリエチルインジウム、トリメチルインジウム、又は[1,1,1-トリメチル-N-(トリメチルシリル)アミド]-インジウムを用いることができる。錫を含むプリカーサとして、例えば塩化錫、又はテトラキス(ジメチルアミド)錫を用いることができる。亜鉛を含むプリカーサとして、例えばジエチル亜鉛、又はジメチル亜鉛を用いることができる。ガリウムを含むプリカーサとして、例えばトリエチルガリウムを用いることができる。チタンを含むプリカーサとして、例えば塩化チタン、テトラキス(ジメチルアミド)チタン、又はチタン酸テトライソプロピルを用いることができる。アルミニウムを含むプリカーサとして、例えば塩化アルミニウム、又はトリメチルアルミニウムを用いることができる。シリコンを含むプリカーサとして、トリシリルアミン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン、又はビス(エチルメチルアミノ)シランを用いることができる。また、酸化剤として、水蒸気、酸素プラズマ、又はオゾンガスを用いることができる。
【0268】
続いて、図5(A)に示すように、導電膜151fおよび導電膜152f上にレジストマスク191を形成する。レジストマスク191は、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0269】
続いて、図5(B)に示すように、例えばレジストマスク191と重ならない領域の導電膜151fおよび導電膜152fを、例えばエッチング法、具体的には例えばドライエッチング法を用いて除去し、導電層151と、導電層152と、を有する画素電極を形成する。なお、導電膜151fが、例えばインジウム錫酸化物等の導電性酸化物を用いた層を含む場合は、当該層はウェットエッチング法を用いて除去してもよい。これにより、導電層151および導電層152が形成される。なお、例えば導電膜151fの一部をドライエッチング法により除去する場合、絶縁層175の導電層151と重ならない領域に凹部が形成される場合がある。
【0270】
なお、リソグラフィ法を用いて導電膜152fを加工し、導電層152R、導電層152G、導電層152B、及び導電層152Cを形成したあと、導電層152R、導電層152G、導電層152B、及び導電層152Cをマスクとして、導電膜151fを加工してもよい。具体的には、例えばレジストマスクの形成後、エッチング法により導電膜152fの一部を除去する。導電膜152fは、例えばウェットエッチング法により除去できる。なお、導電膜152fを、ドライエッチング法により除去してもよい。その後、導電膜151fを、ウェットエッチング法により除去するとよい。
【0271】
ここで、導電層152の疎水化処理を行うことが好ましい。疎水化処理では、処理対象となる表面を親水性から疎水性にすること、又は、処理対象となる表面の疎水性を高めることができる。導電層152の疎水化処理を行うことで、導電層152と、後の工程で形成される有機化合物層103と、の密着性を高め、膜剥がれを抑制できる。なお、疎水化処理は行わなくてもよい。
【0272】
続いて、図5(C)に示すように、レジストマスク191を除去する。レジストマスク191は、例えば、酸素プラズマを用いたアッシングにより除去できる。又は、酸素ガスと、CF、C、SF、CHF、Cl、HO、BCl、又はHe等の第18族元素と、を用いてもよい。又は、ウェットエッチングにより、レジストマスク191を除去してもよい。
【0273】
続いて、図5(D)に示すように、導電層151Rおよび導電層152R上、導電層151Gおよび導電層152G上、導電層151Bおよび導電層152B上、導電層151Cおよび導電層152C上、及び絶縁層175上に、後に絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cとなる絶縁膜156fを形成する。絶縁膜156fの形成には、例えばCVD法、ALD法、スパッタリング法、又は真空蒸着法を用いることができる。
【0274】
絶縁膜156fには、無機材料を用いることができる。絶縁膜156fには、例えば、酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、又は窒化酸化絶縁膜等の無機絶縁膜を用いることができる。例えば、絶縁膜156fとして、シリコンを含む酸化絶縁膜、窒化絶縁膜、酸化窒化絶縁膜、又は窒化酸化絶縁膜等を用いることができる。例えば、絶縁膜156fとして、酸化窒化シリコンを用いることができる。
【0275】
続いて、図5(E)に示すように、絶縁膜156fを加工することにより、絶縁層156R、絶縁層156G、絶縁層156B、及び絶縁層156Cを形成する。例えば、絶縁膜156fの上面に対し、略均一にエッチングを施すことにより、絶縁層156を形成できる。このように均一にエッチングして平坦化することをエッチバック処理ともいう。なお、絶縁層156を、リソグラフィ法を用いて形成してもよい。
【0276】
続いて、図6(A)に示すように、後に有機化合物層103Rとなる有機化合物膜103Rfを、導電層152R上、導電層152G上、導電層152B上、絶縁層156R上、絶縁層156G上、絶縁層156B上、及び絶縁層175上に形成する。
【0277】
図6(A)に示すように、導電層152C上には、有機化合物膜103Rfを形成していない。例えば、成膜エリアを規定するためのマスク(ファインメタルマスクと区別して、エリアマスク、又はラフメタルマスク等ともいう)を用いることで、有機化合物膜103Rfを所望の領域にのみ成膜できる。エリアマスクを用いた成膜工程と、レジストマスクを用いた加工工程と、を採用することで、比較的簡単なプロセスにて発光デバイスを作製できる。
【0278】
有機化合物膜103Rfは、例えば、蒸着法、具体的には真空蒸着法により形成できる。また、有機化合物膜103Rfは、転写法、印刷法、インクジェット法、又は塗布法等の方法で形成してもよい。
【0279】
続いて、図6(A)に示すように、有機化合物膜103Rf上、導電層152C上、及び絶縁層175上に、後に犠牲層158Rとなる犠牲膜158Rfと、後にマスク層159Rとなるマスク膜159Rfと、を順に形成する。
【0280】
なお、本実施の形態では、犠牲膜158Rfとマスク膜159Rfの2層構造でマスク膜を形成する例を示すが、マスク膜は単層構造であってもよく、3層以上の積層構造であってもよい。
【0281】
有機化合物膜103Rf上に犠牲層を設けることで、表示装置の作製工程中に有機化合物膜103Rfが受けるダメージを低減し、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0282】
犠牲膜158Rfには、有機化合物膜103Rfの加工条件に対する耐性の高い膜、具体的には、有機化合物膜103Rfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。マスク膜159Rfには、犠牲膜158Rfとのエッチングの選択比が大きい膜を用いる。
【0283】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfは、有機化合物膜103Rfの耐熱温度よりも低い温度で形成する。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfを形成する際の基板温度としては、それぞれ、代表的には、200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
【0284】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、ウェットエッチング法により除去できる膜を用いることが好ましい。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの加工時に、有機化合物膜103Rfに加わるダメージを低減できる。
【0285】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの形成には、例えば、スパッタリング法、ALD法(熱ALD法、PEALD法)、CVD法、真空蒸着法を用いることができる。また、前述の湿式の成膜方法を用いて形成してもよい。
【0286】
なお、有機化合物膜103Rf上に接して形成される犠牲膜158Rfは、マスク膜159Rfよりも、有機化合物膜103Rfへのダメージが少ない形成方法を用いて形成されることが好ましい。例えば、スパッタリング法よりも、ALD法又は真空蒸着法を用いて、犠牲膜158Rfを形成することが好ましい。
【0287】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、それぞれ、例えば、金属膜、合金膜、金属酸化物膜、半導体膜、有機絶縁膜、及び、無機絶縁膜等のうち一種又は複数種を用いることができる。
【0288】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、例えば、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、チタン、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、及びタンタル等の金属材料、又は該金属材料を含む合金材料を用いることができる。特に、アルミニウム又は銀等の低融点材料を用いることが好ましい。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの一方又は双方に紫外線を遮蔽することが可能な金属材料を用いることで、有機化合物膜103Rfに紫外線が照射されることを抑制でき、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できるため、好ましい。
【0289】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、In-Ga-Zn酸化物、酸化インジウム、In-Zn酸化物、In-Sn酸化物、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物)、シリコンを含むインジウムスズ酸化物等の金属酸化物を用いることができる。
【0290】
なお、上記ガリウムに代えて元素M(Mは、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムから選ばれた一種又は複数種)を用いてもよい。
【0291】
また、犠牲膜およびマスク膜として、光、特に紫外線に対して遮光性を有する材料を含む膜を用いることが好ましい。遮光性を有する材料としては、紫外線に対して遮光性のある金属、絶縁体、半導体、及び半金属等、様々な材料を用いることができるが、当該犠牲膜およびマスク膜の一部又は全部は、後の工程で除去するため、エッチングによる加工が可能である膜であることが好ましく、特に加工性が良好であることが好ましい。
【0292】
犠牲膜およびマスク膜としては、例えば、シリコン又はゲルマニウム等の半導体材料は、半導体の製造プロセスと親和性が高いため好ましい。又は、上記半導体材料の酸化物又は窒化物を用いることができる。又は、炭素等の非金属材料、又はその化合物を用いることができる。又は、チタン、タンタル、タングステン、クロム、アルミニウム等の金属、又はこれらの一以上を含む合金が挙げられる。又は、酸化チタンもしくは酸化クロム等の上記金属を含む酸化物、又は窒化チタン、窒化クロム、もしくは窒化タンタル等の窒化物を用いることができる。
【0293】
犠牲膜およびマスク膜に、紫外線に対して遮光性を有する材料を含む膜を用いることで、例えば露光工程で有機化合物層に紫外線が照射されることを抑制できる。有機化合物層が紫外線によってダメージを受けることを抑制することで、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0294】
なお、紫外線に対して遮光性を有する材料を含む膜は、後述する無機絶縁膜125fの材料として用いても、同様の効果を奏する。
【0295】
また、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとしては、それぞれ、各種無機絶縁膜を用いることができる。特に、酸化絶縁膜は、窒化絶縁膜に比べて有機化合物膜103Rfとの密着性が高く好ましい。例えば、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコン等の無機絶縁材料を用いることができる。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfとして、例えば、ALD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成できる。ALD法を用いることで、下地(特に有機化合物層)へのダメージを低減できるため好ましい。
【0296】
例えば、犠牲膜158Rfとして、ALD法を用いて形成した無機絶縁膜(例えば、酸化アルミニウム膜)を用い、マスク膜159Rfとして、スパッタリング法を用いて形成した無機膜(例えば、In-Ga-Zn酸化物膜、アルミニウム膜、又はタングステン膜)を用いることができる。
【0297】
なお、犠牲膜158Rfと、後に形成する無機絶縁層125との双方に、同じ無機絶縁膜を用いることができる。例えば、犠牲膜158Rfと無機絶縁層125との双方に、ALD法を用いて形成した酸化アルミニウム膜を用いることができる。ここで、犠牲膜158Rfと、無機絶縁層125とで、同じ成膜条件を適用してもよく、互いに異なる成膜条件を適用してもよい。例えば、犠牲膜158Rfを、無機絶縁層125と同様の条件で成膜することで、犠牲膜158Rfを、水及び酸素の少なくとも一方に対するバリア性の高い絶縁層とすることができる。一方で、犠牲膜158Rfは後の工程で大部分又は全部を除去する層であるため、加工が容易であることが好ましい。このため、犠牲膜158Rfは、無機絶縁層125と比べて、成膜時の基板温度が低い条件で成膜することが好ましい。
【0298】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの一方又は双方に、有機材料を用いてもよい。例えば、有機材料として、少なくとも有機化合物膜103Rfの最上部に位置する膜に対して化学的に安定な溶媒に、溶解しうる材料を用いてもよい。特に、水又はアルコールに溶解する材料を好適に用いることができる。このような材料の成膜の際には、水又はアルコール等の溶媒に溶解させた状態で、湿式の成膜方法で塗布した後に、溶媒を蒸発させるための加熱処理を行うことが好ましい。このとき、減圧雰囲気下での加熱処理を行うことで、低温且つ短時間で溶媒を除去できるため、有機化合物膜103Rfへの熱的なダメージを低減でき、好ましい。
【0299】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfには、それぞれ、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、プルラン、水溶性のセルロース、アルコール可溶性のポリアミド樹脂、又は、パーフルオロポリマー等のフッ素樹脂等の有機樹脂を用いてもよい。
【0300】
例えば、犠牲膜158Rfとして、蒸着法又は上記湿式の成膜方法のいずれかを用いて形成した有機膜(例えば、PVA膜)を用い、マスク膜159Rfとして、スパッタリング法を用いて形成した無機膜(例えば、窒化シリコン膜)を用いることができる。
【0301】
続いて、図6(A)に示すように、マスク膜159Rf上にレジストマスク190Rを形成する。レジストマスク190Rは、感光性材料(フォトレジスト)を塗布し、露光及び現像を行うことで形成できる。
【0302】
レジストマスク190Rは、ポジ型のレジスト材料及びネガ型のレジスト材料のどちらを用いて作製してもよい。
【0303】
レジストマスク190Rは、導電層152Rと重なる位置に設ける。レジストマスク190Rは、導電層152Cと重なる位置にも設けることが好ましい。これにより、導電層152Cが表示装置の作製工程中にダメージを受けることを抑制できる。なお、導電層152C上にレジストマスク190Rを設けなくてもよい。また、レジストマスク190Rは、図6(A)のB1-B2間の断面図に示すように、有機化合物膜103Rfの端部から導電層152Cの端部(有機化合物膜103Rf側の端部)までを覆うように設けることが好ましい。
【0304】
続いて、図6(B)に示すように、レジストマスク190Rを用いて、マスク膜159Rfの一部を除去し、マスク層159Rを形成する。マスク層159Rは、導電層152R上と、導電層152C上と、に残存する。その後、レジストマスク190Rを除去する。続いて、マスク層159Rをマスク(ハードマスクともいう)に用いて、犠牲膜158Rfの一部を除去し、犠牲層158Rを形成する。
【0305】
犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfは、それぞれ、ウェットエッチング法又はドライエッチング法により加工できる。犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの加工は、等方性エッチングにより行うことが好ましい。
【0306】
ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfの加工時に、有機化合物膜103Rfに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチング法を用いる場合、例えば、現像液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)、希フッ酸、シュウ酸、リン酸、酢酸、硝酸、又はこれらの混合液体を用いた薬液等を用いることが好ましい。
【0307】
マスク膜159Rfの加工においては、有機化合物膜103Rfが露出しないため、犠牲膜158Rfの加工よりも、加工方法の選択の幅は広い。具体的には、マスク膜159Rfの加工の際に、エッチングガスに酸素を含むガスを用いた場合でも、有機化合物膜103Rfの劣化をより抑制できる。
【0308】
また、犠牲膜158Rfの加工においてドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できる。ドライエッチング法を用いる場合、例えば、CF、C、SF、CHF、Cl、HO、BCl、又はHe等の第18族元素を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。
【0309】
例えば、犠牲膜158Rfとして、ALD法を用いて形成した酸化アルミニウム膜を用いる場合、CHFとHe、又は、CHFとHeとCHを用いて、ドライエッチング法により犠牲膜158Rfの一部を除去できる。また、マスク膜159Rfとして、スパッタリング法を用いて形成したIn-Ga-Zn酸化物膜を用いる場合、希釈リン酸を用いて、ウェットエッチング法によりマスク膜159Rfの一部を除去できる。又は、CHとArを用いて、ドライエッチング法によりマスク膜159Rfの一部を除去してもよい。又は、希釈リン酸を用いて、ウェットエッチング法によりマスク膜159Rfの一部を除去できる。また、マスク膜159Rfとして、スパッタリング法を用いて形成したタングステン膜を用いる場合、SF、CFとO、又はCFとClとOを用いて、ドライエッチング法によりマスク膜159Rfの一部を除去できる。
【0310】
レジストマスク190Rは、レジストマスク191と同様の方法で除去できる。例えば、酸素プラズマを用いたアッシングにより除去できる。又は、酸素ガスと、CF、C、SF、CHF、Cl、HO、BCl、又はHe等の第18族元素と、を用いてもよい。又は、ウェットエッチングにより、レジストマスク190Rを除去してもよい。このとき、犠牲膜158Rfが最表面に位置し、有機化合物膜103Rfは露出していないため、レジストマスク190Rの除去工程において、有機化合物膜103Rfにダメージが入ることを抑制できる。また、レジストマスク190Rの除去方法の選択の幅を広げることができる。
【0311】
続いて、図6(B)に示すように、有機化合物膜103Rfを加工して、有機化合物層103Rを形成する。例えば、マスク層159R及び犠牲層158Rをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Rfの一部を除去し、有機化合物層103Rを形成する。
【0312】
これにより、図6(B)に示すように、導電層152R上に、有機化合物層103R、犠牲層158R、及び、マスク層159Rの積層構造が残存する。また、導電層152G及び導電層152Bは露出する。
【0313】
図6(B)では、有機化合物層103Rの端部が、導電層152Rの端部よりも内側に位置する例を示す。当該構成とすることで、画素の微細化が可能となり、高精細なディスプレイを作成することができる。なお、図6(B)では図示していないが、上記エッチング処理によって、絶縁層175の有機化合物層103Rと重畳しない領域に凹部が形成される場合がある。
【0314】
前述のように、レジストマスク190Rは、一点鎖線B1-B2間において、有機化合物層103Rの端部から導電層152Cの端部(有機化合物層103R側の端部)までを覆うように設けることが好ましい。これにより、図6(B)に示すように、犠牲層158R、及びマスク層159Rが、一点鎖線B1-B2間において、有機化合物層103Rの端部から導電層152Cの端部(有機化合物層103R側の端部)までを覆うように設けられる。よって、例えば一点鎖線B1-B2間において、絶縁層175が露出することを抑制できる。これにより、絶縁層175、絶縁層174、及び絶縁層173の一部がエッチング等により除去され、導電層179が露出することを防ぐことができる。このため、導電層179が、意図せず、他の導電層と電気的に接続されることを抑制できる。例えば、導電層179と、後の工程で形成する共通電極155との間のショートを抑制できる。
【0315】
有機化合物膜103Rfの加工は、異方性エッチングにより行うことが好ましい。特に、異方性のドライエッチングが好ましい。又は、ウェットエッチングを用いてもよい。
【0316】
ドライエッチング法を用いる場合は、エッチングガスに酸素を含むガスを用いないことで、有機化合物膜103Rfの劣化を抑制できる。
【0317】
また、エッチングガスに酸素を含むガスを用いてもよい。エッチングガスが酸素を含むことで、エッチングの速度を速めることができる。したがって、エッチング速度を十分な速さに維持しつつ、低パワーの条件でエッチングを行うことができる。このため、有機化合物膜103Rfに与えるダメージを抑制できる。さらに、エッチング時に生じる反応生成物の付着等の不具合を抑制できる。
【0318】
ドライエッチング法を用いる場合、例えば、H、CF、C、SF、CHF、Cl、HO、BCl、又はHe、Ar等の第18族元素のうち、一種以上を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。又は、これらの一種以上と、酸素を含むガスをエッチングガスに用いることが好ましい。又は、酸素ガスをエッチングガスに用いてもよい。具体的には、例えば、HとArを含むガス、又は、CFとHeを含むガスをエッチングガスに用いることができる。また、例えば、CF、He、及び酸素を含むガスをエッチングガスに用いることができる。また、例えば、HとArを含むガス、及び酸素を含むガスをエッチングガスに用いることができる。
【0319】
以上のように、本発明の一態様では、マスク膜159Rf上にレジストマスク190Rを形成し、レジストマスク190Rを用いて、マスク膜159Rfの一部を除去することにより、マスク層159Rを形成する。その後、マスク層159Rをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Rfの一部を除去することにより、有機化合物層103Rを形成する。よって、リソグラフィ法を用いて有機化合物膜103Rfを加工することにより、有機化合物層103Rが形成されるということができる。なお、レジストマスク190Rを用いて、有機化合物膜103Rfの一部を除去してもよい。その後、レジストマスク190Rを除去してもよい。
【0320】
次に、例えば導電層152Gの疎水化処理を行うことが好ましい。有機化合物膜103Rfの加工時に、例えば導電層152Gの表面状態が親水性に変化する場合がある。例えば導電層152Gの疎水化処理を行うことで、例えば導電層152Gと後の工程で形成される層(ここでは有機化合物層103G)との密着性を高め、膜剥がれを抑制できる。なお、疎水化処理は行わなくてもよい。
【0321】
続いて、図7(A)に示すように、後に有機化合物層103Gとなる有機化合物膜103Gfを、導電層152G上、導電層152B上、絶縁層156R上、絶縁層156G上、絶縁層156B上、マスク層159R上、及び絶縁層175上に形成する。
【0322】
有機化合物膜103Gfは、有機化合物膜103Rfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、有機化合物膜103Gfは、有機化合物膜103Rfと同様の構成とすることができる。
【0323】
続いて、図7(A)に示すように、有機化合物膜103Gf上、及びマスク層159R上に、後に犠牲層158Gとなる犠牲膜158Gfと、後にマスク層159Gとなるマスク膜159Gfと、を順に形成する。その後、レジストマスク190Gを形成する。犠牲膜158Gf及びマスク膜159Gfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Gの材料及び形成方法は、レジストマスク190Rに適用できる条件と同様である。
【0324】
レジストマスク190Gは、導電層152Gと重なる位置に設ける。
【0325】
続いて、図7(B)に示すように、レジストマスク190Gを用いて、マスク膜159Gfの一部を除去し、マスク層159Gを形成する。マスク層159Gは、導電層152G上に残存する。その後、レジストマスク190Gを除去する。続いて、マスク層159Gをマスクに用いて、犠牲膜158Gfの一部を除去し、犠牲層158Gを形成する。続いて、有機化合物膜103Gfを加工して、有機化合物層103Gを形成する。例えば、マスク層159G及び犠牲層158Gをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Gfの一部を除去し、有機化合物層103Gを形成する。
【0326】
これにより、図7(B)に示すように、導電層152G上に、有機化合物層103G、犠牲層158G、及び、マスク層159Gの積層構造が残存する。また、マスク層159R及び導電層152Bは露出する。
【0327】
次に、例えば導電層152Bの疎水化処理を行うことが好ましい。有機化合物膜103Gfの加工時に、例えば導電層152Bの表面状態が親水性に変化する場合がある。例えば導電層152Bの疎水化処理を行うことで、例えば導電層152Bと後の工程で形成される層(ここでは有機化合物層103B)との密着性を高め、膜剥がれを抑制できる。なお、疎水化処理は行わなくてもよい。
【0328】
続いて、図7(C)に示すように、後に有機化合物層103Bとなる有機化合物膜103Bfを、導電層152B上、マスク層159R上、絶縁層156R上、絶縁層156G上、絶縁層156B上、マスク層159G上、及び絶縁層175上に形成する。
【0329】
有機化合物膜103Bfは、有機化合物膜103Rfの形成に用いることができる方法と同様の方法で形成できる。また、有機化合物膜103Bfは、有機化合物膜103Rfと同様の構成とすることができる。
【0330】
続いて、図7(C)に示すように、有機化合物膜103Bf上、及びマスク層159R上に、後に犠牲層158Bとなる犠牲膜158Bfと、後にマスク層159Bとなるマスク膜159Bfと、を順に形成する。その後、レジストマスク190Bを形成する。犠牲膜158Bf及びマスク膜159Bfの材料及び形成方法は、犠牲膜158Rf及びマスク膜159Rfに適用できる条件と同様である。レジストマスク190Bの材料及び形成方法は、レジストマスク190Rに適用できる条件と同様である。
【0331】
レジストマスク190Bは、導電層152Bと重なる位置に設ける。
【0332】
続いて、図7(D)に示すように、レジストマスク190Bを用いて、マスク膜159Bfの一部を除去し、マスク層159Bを形成する。マスク層159Bは、導電層152B上に残存する。その後、レジストマスク190Bを除去する。続いて、マスク層159Bをマスクに用いて、犠牲膜158Bfの一部を除去し、犠牲層158Bを形成する。続いて、有機化合物膜103Bfを加工して、有機化合物層103Bを形成する。例えば、マスク層159B及び犠牲層158Bをハードマスクに用いて、有機化合物膜103Bfの一部を除去し、有機化合物層103Bを形成する。
【0333】
これにより、図7(D)に示すように、導電層152B上に、有機化合物層103B、犠牲層158B、及び、マスク層159Bの積層構造が残存する。また、マスク層159R、及びマスク層159Gは露出する。
【0334】
なお、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103Bの側面は、それぞれ、被形成面に対して垂直又は概略垂直であることが好ましい。例えば、被形成面と、これらの側面との成す角度を、60度以上90度以下とすることが好ましい。
【0335】
上記のように、リソグラフィ法を用いて形成した有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bのうち隣接する2つの間の距離は、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、又は、1μm以下にまで狭めることができる。ここで、当該距離とは、例えば、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bのうち、隣接する2つの対向する端部の間の距離で規定できる。このように、島状の有機化合物層の間の距離を狭めることで、高い精細度と、大きな開口率を有する表示装置を提供できる。また、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離も、狭めることができ、例えば10μm以下、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下とすることができる。なお、隣り合う発光デバイス間における第1の電極同士の距離は2μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0336】
続いて、図8(A)に示すように、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bを除去することが好ましい。後の工程によっては、犠牲層158R、犠牲層158G、犠牲層158B、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bが表示装置に残存する場合がある。この段階でマスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bを除去することで、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bが表示装置に残存することを抑制できる。例えば、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bに導電材料を用いる場合、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bを事前に除去しておくことで、残存したマスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bによるリーク電流の発生、及び、容量の形成等を抑制できる。
【0337】
なお、本実施の形態では、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bを除去する場合を例に挙げて説明するが、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bは除去しなくてもよい。例えば、マスク層159R、マスク層159G、及びマスク層159Bが、前述の、紫外線に対して遮光性を有する材料を含む場合は、除去せずに次の工程に進むことで、有機化合物層を紫外線から保護でき、好ましい。
【0338】
マスク層の除去工程には、マスク膜の加工工程と同様の方法を用いることができる。特に、ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、マスク層を除去する際に、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。
【0339】
また、マスク層を、水又はアルコール等の溶媒に溶解させることで除去してもよい。アルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、又はグリセリン等が挙げられる。
【0340】
マスク層を除去した後に、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに含まれる水、並びに有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103B表面に吸着する水を除去するため、乾燥処理を行ってもよい。例えば、不活性ガス雰囲気又は減圧雰囲気下における加熱処理を行うことができる。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下の温度で行うことができる。減圧雰囲気とすることで、より低温で乾燥が可能であるため好ましい。
【0341】
続いて、図8(B)に示すように、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103B、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを覆うように、後に無機絶縁層125となる無機絶縁膜125fを形成する。
【0342】
後述するように、無機絶縁膜125fの上面に接して、後に絶縁層127となる絶縁膜127fが形成される。このため、無機絶縁膜125fの上面は、当該絶縁膜に用いる材料(例えば、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物)に対して親和性が高いことが好ましい。当該親和性を向上させるため、表面処理を行って無機絶縁膜125fの上面を疎水化すること(又は疎水性を高めること)が好ましい。例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等のシリル化剤を用いて処理を行うことが好ましい。このように無機絶縁膜125fの上面を疎水化することにより、絶縁膜127fを密着性良く形成できる。なお、表面処理としては、前述の疎水化処理を行ってもよい。
【0343】
続いて、図8(C)に示すように、無機絶縁膜125f上に、後に絶縁層127となる絶縁膜127fを形成する。
【0344】
無機絶縁膜125f及び絶縁膜127fは、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bへのダメージが少ない形成方法で成膜されることが好ましい。特に、無機絶縁膜125fは、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bの側面に接して形成されるため、絶縁膜127fよりも、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bへのダメージが少ない形成方法で成膜されることが好ましい。
【0345】
また、無機絶縁膜125f及び絶縁膜127fは、それぞれ、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bの耐熱温度よりも低い温度で形成する。また、無機絶縁膜125fは成膜する際の基板温度を高くすることで、膜厚が薄くても、不純物濃度が低く、水及び酸素の少なくとも一方に対するバリア性の高い膜とすることができる。
【0346】
無機絶縁膜125f及び絶縁膜127fを形成する際の基板温度としては、それぞれ、60℃以上、80℃以上、100℃以上、又は、120℃以上、かつ、200℃以下、180℃以下、160℃以下、150℃以下、又は140℃以下であることが好ましい。
【0347】
無機絶縁膜125fとしては、上記の基板温度の範囲で、3nm以上、5nm以上、又は、10nm以上、かつ、200nm以下、150nm以下、100nm以下、又は、50nm以下の厚さの絶縁膜を形成することが好ましい。
【0348】
無機絶縁膜125fは、例えば、ALD法を用いて形成することが好ましい。ALD法を用いることで、成膜ダメージを小さくすることができ、また、被覆性の高い膜を成膜可能なため好ましい。無機絶縁膜125fとしては、例えば、ALD法を用いて、酸化アルミニウム膜を形成することが好ましい。
【0349】
そのほか、無機絶縁膜125fは、ALD法よりも成膜速度が速いスパッタリング法、CVD法、又は、PECVD法を用いて形成してもよい。これにより、信頼性の高い表示装置を生産性高く作製できる。
【0350】
絶縁膜127fは、前述の湿式の成膜方法を用いて形成することが好ましい。絶縁膜127fは、例えば、スピンコートにより、感光性材料を用いて形成することが好ましく、より具体的には、アクリル樹脂を含む感光性の樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。
【0351】
絶縁膜127fは、例えば、重合体、酸発生剤、及び溶媒を有する樹脂組成物を用いて形成することが好ましい。重合体は、1種又は複数種の単量体を用いて形成され、1種又は複数種の構造単位(構成単位ともいう)が規則的又は不規則に繰り返された構造を有する。酸発生剤としては、光の照射により酸を発生する化合物、及び、加熱により酸を発生する化合物の一方又は双方を用いることができる。樹脂組成物は、さらに、感光剤、増感剤、触媒、接着助剤、界面活性剤、酸化防止剤のうち一つ又は複数を有していてもよい。
【0352】
また、絶縁膜127fの形成後に加熱処理(プリベークともいう)を行うことが好ましい。当該加熱処理は、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び、有機化合物層103Bの耐熱温度よりも低い温度で行う。加熱処理の際の基板温度としては、50℃以上200℃以下が好ましく、60℃以上150℃以下がより好ましく、70℃以上120℃以下がさらに好ましい。これにより、絶縁膜127f中に含まれる溶媒を除去できる。
【0353】
続いて、露光を行って、絶縁膜127fの一部に、可視光線又は紫外線を感光させる。ここで、絶縁膜127fにアクリル樹脂を含むポジ型の感光性の樹脂組成物を用いる場合、後の工程で絶縁層127を形成しない領域に可視光線又は紫外線を照射する。絶縁層127は、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bのいずれか2つに挟まれる領域、及び、導電層152Cの周囲に形成される。このため、導電層152R上、導電層152G上、導電層152B上、及び、導電層152C上に、可視光線又は紫外線を照射する。なお、絶縁膜127fにネガ型の感光性材料を用いる場合、絶縁層127が形成される領域に可視光線又は紫外線を照射する。
【0354】
絶縁膜127fへの露光領域によって、後に形成する絶縁層127の幅を制御できる。本実施の形態では、絶縁層127が導電層151の上面と重なる部分を有するように加工する。
【0355】
露光に用いる光は、i線(波長365nm)を含むことが好ましい。また、露光に用いる光は、g線(波長436nm)、及びh線(波長405nm)の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0356】
ここで、犠牲層158(犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158B)、及び無機絶縁膜125fの一方又は双方として、酸素に対するバリア絶縁層(例えば、酸化アルミニウム膜等)を設けることで、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに酸素が拡散することを低減できる。有機化合物層は、光(可視光線又は紫外線)が照射されると、当該有機化合物層に含まれる有機化合物が励起状態となり、雰囲気中に含まれる酸素との反応が促進される場合がある。より具体的には、酸素を有する雰囲気下において、光(可視光線又は紫外線)が有機化合物層に照射されると当該有機化合物層が有する有機化合物に酸素が結合する可能性がある。犠牲層158及び無機絶縁膜125fを島状の有機化合物層上に設けることによって、当該有機化合物層に含まれる有機化合物に雰囲気中の酸素が結合することを低減できる。
【0357】
続いて、図9(A)に示すように、現像を行って、絶縁膜127fの露光させた領域を除去し、絶縁層127aを形成する。絶縁層127aは、導電層152R、導電層152G、及び導電層152Bのいずれか2つに挟まれる領域と、導電層152Cを囲う領域に形成される。ここで、絶縁膜127fにアクリル樹脂を用いる場合、現像液として、アルカリ性の溶液を用いることができ、例えば、TMAHを用いることができる。
【0358】
続いて、現像時の残渣(いわゆるスカム)を除去してもよい。例えば、酸素プラズマを用いたアッシングを行うことで、残渣を除去できる。
【0359】
なお、絶縁層127aの表面の高さを調整するために、エッチングを行ってもよい。絶縁層127aは、例えば、酸素プラズマを用いたアッシングにより加工してもよい。また、絶縁膜127fとして非感光性の材料を用いる場合においても、例えば当該アッシングにより、絶縁膜127fの表面の高さを調整できる。
【0360】
続いて、図9(B)に示すように、絶縁層127aをマスクとして、エッチング処理を行って、無機絶縁膜125fの一部を除去し、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの一部の膜厚を薄くする。これにより、絶縁層127aの下に、無機絶縁層125が形成される。また、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの膜厚が薄い部分の表面が露出する。なお、以下では、絶縁層127aをマスクに用いたエッチング処理を、第1のエッチング処理ということがある。
【0361】
第1のエッチング処理は、ドライエッチング又はウェットエッチングによって行うことができる。なお、無機絶縁膜125fを、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bと同様の材料を用いて成膜していた場合、第1のエッチング処理を一括で行うことができるため、好ましい。
【0362】
側面がテーパ形状である絶縁層127aをマスクとしてエッチングを行うことで、無機絶縁層125の側面、及び犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの側面上端部を比較的容易にテーパ形状にすることができる。
【0363】
ドライエッチングを行う場合、塩素系のガスを用いることが好ましい。塩素系ガスとしては、Cl、BCl、SiCl、及びCCl等を、単独又は2以上のガスを混合して用いることができる。また、上記塩素系ガスに、酸素ガス、水素ガス、ヘリウムガス、及びアルゴンガス等を、単独又は2以上のガスを混合して、適宜添加できる。ドライエッチングを用いることにより、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの膜厚が薄い領域を、良好な面内均一性で形成できる。
【0364】
ドライエッチング装置としては、高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。又は、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。平行平板型電極を有する容量結合型プラズマエッチング装置は、平行平板型電極の一方の電極に高周波電圧を印加する構成でもよい。又は平行平板型電極の一方の電極に複数の異なった高周波電圧を印加する構成でもよい。又は平行平板型電極それぞれに同じ周波数の高周波電圧を印加する構成でもよい。又は平行平板型電極それぞれに周波数の異なる高周波電圧を印加する構成でもよい。
【0365】
また、ドライエッチングを行う場合、ドライエッチングで生じた副生成物等が、絶縁層127aの上面及び側面等に堆積する場合がある。このため、エッチングガスに含まれる成分、無機絶縁膜125fに含まれる成分、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bに含まれる成分等が、表示装置完成後の絶縁層127に含まれる場合がある。
【0366】
また、第1のエッチング処理をウェットエッチングで行うことが好ましい。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。例えば、ウェットエッチングは、アルカリ溶液を用いて行うことができる。例えば、酸化アルミニウム膜のウェットエッチングには、アルカリ溶液であるTMAHを用いることができる。この場合、パドル方式でウェットエッチングを行うことができる。なお、無機絶縁膜125fを、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bと同様の材料を用いて成膜していた場合、上記エッチング処理を一括で行うことができるため、好ましい。
【0367】
第1のエッチング処理では、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態でエッチング処理を停止する。このように、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103B上に、対応する犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを残存させておくことで、後の工程の処理で、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bが損傷することを防ぐことができる。
【0368】
続いて、基板全体に露光を行い、可視光線又は紫外線を絶縁層127aに照射することが好ましい。当該露光のエネルギー密度は、0mJ/cmより大きく、800mJ/cm以下とすることが好ましく、0mJ/cmより大きく、500mJ/cm以下とすることがより好ましい。現像後にこのような露光を行うことで、絶縁層127aの透明度を向上させることができる場合がある。また、後の工程における、絶縁層127aをテーパ形状に変形させる加熱処理に必要とされる基板温度を低下させることができる場合がある。
【0369】
ここで、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bとして、酸素に対するバリア絶縁層(例えば、酸化アルミニウム膜等)が存在することで、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに酸素が拡散することを低減できる。有機化合物層は、光(可視光線又は紫外線)が照射されると、当該有機化合物層に含まれる有機化合物が励起状態となり、雰囲気中に含まれる酸素との反応が促進される場合がある。より具体的には、酸素を有する雰囲気下において、光(可視光線又は紫外線)が有機化合物層に照射されると当該有機化合物層が有する有機化合物に酸素が結合する可能性がある。犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを島状の有機化合物層上に設けることによって、当該有機化合物層に含まれる有機化合物に雰囲気中の酸素が結合することを低減できる。
【0370】
続いて、加熱処理(ポストベークともいう)を行う。加熱処理を行うことで、絶縁層127aを、側面にテーパ形状を有する絶縁層127に変形させることができる(図9(C))。当該加熱処理は、有機化合物層の耐熱温度よりも低い温度で行う。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上130℃以下の温度で行うことができる。加熱雰囲気は、大気雰囲気であってもよく、不活性ガス雰囲気であってもよい。また、加熱雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、減圧雰囲気であってもよい。本工程の加熱処理は、絶縁膜127fの形成後の加熱処理(プリベーク)よりも、基板温度を高くすることが好ましい。これにより、絶縁層127と無機絶縁層125との密着性を向上させ、絶縁層127の耐食性も向上させることができる。
【0371】
第1のエッチング処理にて、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを完全に除去せず、膜厚が薄くなった状態の犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bを残存させておくことで、当該加熱処理において、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bがダメージを受けて劣化することを防ぐことができる。したがって、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0372】
なお、絶縁層127の材料、並びに、ポストベークの温度、時間、及び雰囲気によっては、絶縁層127の側面に凹曲面形状が形成される場合がある。例えば、ポストベークの条件で、温度が高い、又は、時間が長いほど、絶縁層127の形状が変化しやすく、凹曲面形状が形成される場合がある。
【0373】
続いて、図10(A)に示すように、絶縁層127をマスクとして、エッチング処理を行って、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの一部を除去する。なお、無機絶縁層125の一部も除去される場合がある。これにより、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bそれぞれに開口が形成され、有機化合物層103R、有機化合物層103G、有機化合物層103B、及び導電層152Cの上面が露出する。なお、以下では、絶縁層127をマスクに用いたエッチング処理を、第2のエッチング処理ということがある。
【0374】
無機絶縁層125の端部は絶縁層127で覆われている。また、図10(A)では、犠牲層158Gの端部の一部(具体的には、第1のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分)を絶縁層127が覆い、第2のエッチング処理により形成されたテーパ形状の部分は露出している例を示す。
【0375】
第1のエッチング処理を行わず、ポストベーク後に、一括で無機絶縁層125とマスク層のエッチング処理を行うと、サイドエッチングにより、絶縁層127の端部の下の無機絶縁層125及びマスク層が消失し、空洞が形成される場合がある。当該空洞によって、共通電極155を形成する面に凹凸が生じ、共通電極155に段切れが生じやすくなる。第1のエッチング処理で無機絶縁層125及びマスク層がサイドエッチングされて空洞が生じても、その後にポストベークを行うことで、絶縁層127が当該空洞を埋めることができる。その後、第2のエッチング処理ではより厚さが薄くなったマスク層をエッチングするため、サイドエッチングされる量が少なく、空洞が形成されにくくなり、空洞が形成されるとしても極めて小さくできる。このため、共通電極155を形成する面をより平坦にできる。
【0376】
なお、絶縁層127は、犠牲層158Gの端部全体を覆っていてもよい。例えば、絶縁層127の端部が垂れて、犠牲層158Gの端部を覆う場合がある。また、例えば、絶縁層127の端部が、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bの少なくとも一つの上面に接する場合がある。前述の通り、現像後の絶縁層127aに露光を行わない場合には、絶縁層127の形状が変化しやすいことがある。
【0377】
第2のエッチング処理はウェットエッチングで行う。ウェットエッチング法を用いることで、ドライエッチング法を用いる場合に比べて、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bに加わるダメージを低減できる。ウェットエッチングは、例えばTMAH等のアルカリ溶液を用いて行うことができる。
【0378】
一方、ウェットエッチング法を用いて第2のエッチング処理を行う場合、例えば有機化合物層103と他の層との密着性の問題により、有機化合物層103と犠牲層158の間、有機化合物層103と無機絶縁層125の間、及び有機化合物層103と絶縁層175の界面に隙間が空いていると、第2のエッチング処理で用いる薬液が当該隙間に侵入し、薬液が画素電極と接触する場合がある。ここで、導電層151と導電層152の両方に薬液が接触すると、導電層151と導電層152のうち、自然電位が低い導電層がガルバニック腐食により腐食する場合がある。例えば、導電層151としてアルミニウムを用い、導電層152としてインジウム錫酸化物を用いると、導電層152が腐食する場合がある。以上より、表示装置の歩留まりが低下する場合がある。また、表示装置の信頼性が低下する場合がある。
【0379】
前述のように、導電層151の側面と重なる領域を有するように絶縁層156を形成し、導電層151の側面、および導電層152の側面を覆うように絶縁層156を形成することで、無機絶縁層125の段切れを防ぐことができるため、例えば第2のエッチング処理において薬液が導電層151などの下層構造に接触することを防ぐことができる。これにより、画素電極の腐食を防ぐことができる。
【0380】
上記のように、絶縁層127、無機絶縁層125、犠牲層158R、犠牲層158G、及び、犠牲層158Bを設けることにより、各発光デバイス間において、共通電極155に、分断された箇所に起因する接続不良、及び局所的に膜厚が薄い箇所に起因する電気抵抗の上昇が発生することを抑制できる。これにより、本発明の一態様の表示装置は、表示品位を向上させることができる。
【0381】
また、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bの一部を露出した後、さらに加熱処理を行う。当該加熱処理により、各有機化合物層に含まれる水、各有機化合物層表面に吸着する水等を除去することができる。また、当該加熱処理により、絶縁層127の形状が変化することがある。具体的には、絶縁層127が、無機絶縁層125の端部、犠牲層158R、犠牲層158G、及び犠牲層158Bの端部、及び、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bの上面のうち、少なくとも一つを覆うように広がることがある。
【0382】
当該加熱処理の温度が低すぎると、各有機化合物層に含まれる水、各有機化合物層表面に吸着する水等を十分に除去することができない。また、当該加熱処理の温度が高すぎると、有機化合物層103の劣化、および、絶縁層127の形状の過剰な変化が起きる可能性がある。従って、加熱処理は、有機化合物層103から水が脱離する温度より高く、有機化合物層103に含まれる有機化合物のガラス転移温度より低い温度が好ましく、有機化合物層103の上面に含まれる有機化合物のガラス転移温度より低い温度が好ましい。具体的には、基板温度として80℃以上130℃以下、好ましくは90℃以上120℃以下、より好ましくは100℃以上120℃以下、さらに好ましくは100℃以上110℃以下の温度で行うことが好ましい。加熱雰囲気は、大気雰囲気であってもよく、不活性ガス雰囲気であってもよい。また、加熱雰囲気は、大気圧雰囲気であってもよく、減圧雰囲気であってもよいが、有機化合物層103から脱離した水が再吸着しないためには減圧雰囲気が好ましい。
【0383】
当該加熱処理により、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び有機化合物層103Bの劣化、および、絶縁層127の形状の過剰な変化を起こすことなく、各有機化合物層に含まれる水、各有機化合物層表面に吸着する水等を十分除去することができる。これによって、発光デバイスの特性の低下を防ぐことができる。
【0384】
続いて、図10(B)に示すように、有機化合物層103R上、有機化合物層103G上、有機化合物層103B上、導電層152C上、及び絶縁層127上に共通層104および共通電極155を形成する。共通層104および共通電極155は、スパッタリング法、又は真空蒸着法等の方法で形成できる。蒸着法により共通層104を形成し、スパッタリング法により共通電極155を形成してもよい。
【0385】
続いて、図10(C)に示すように、共通電極155上に保護層131を形成する。保護層131は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、又はALD法等の方法で形成できる。
【0386】
続いて、樹脂層122を用いて、保護層131上に、基板120を貼り合わせることで、表示装置を作製できる。前述のように、本発明の一態様の表示装置の作製方法では、導電層151の側面と導電層152の側面とに絶縁層156を設ける。これにより、表示装置の歩留まりを高め、また不良の発生を抑制できる。
【0387】
以上のように、本発明の一態様の表示装置の作製方法では、島状の有機化合物層103R、島状の有機化合物層103G、及び島状の有機化合物層103Bは、ファインメタルマスクを用いて形成されるのではなく、膜を一面に成膜した後に加工することで形成されるため、島状の層を均一の厚さで形成できる。そして、高精細な表示装置又は高開口率の表示装置を実現できる。また、精細度又は開口率が高く、副画素間の距離が極めて短くても、隣接する副画素において、有機化合物層103R、有機化合物層103G、及び、有機化合物層103Bが互いに接することを抑制できる。したがって、副画素間にリーク電流が発生することを抑制できる。これにより、クロストークを防ぐことができ、コントラストの極めて高い表示装置を実現できる。また、リソグラフィ法を用いて作製されたタンデム型の発光デバイスを有する表示装置であっても、良好な特性の表示装置を提供することができる。
【0388】
本実施の形態の構成は、他の実施の形態の構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0389】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光装置について図11(A)乃至図11(G)、及び図12(A)乃至図12(I)を用いて説明する。
【0390】
[画素のレイアウト]
本実施の形態では、主に、図3(A)とは異なる画素レイアウトについて説明する。副画素の配列に特に限定はなく、様々な方法を適用できる。副画素の配列としては、例えば、ストライプ配列、Sストライプ配列、マトリクス配列、デルタ配列、ベイヤー配列、及びペンタイル配列が挙げられる。
【0391】
本実施の形態で図に示す副画素の上面形状は、発光領域の上面形状に相当する。
【0392】
なお、副画素の上面形状としては、例えば、三角形、四角形(長方形、正方形を含む)、五角形等の多角形、これら多角形の角が丸い形状、楕円形、又は円形等が挙げられる。
【0393】
また、副画素を構成する回路レイアウトは、図に示す副画素の範囲に限定されず、その外側に配置されていてもよい。
【0394】
図11(A)に示す画素178には、Sストライプ配列が適用されている。図11(A)に示す画素178は、副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bの、3つの副画素から構成される。
【0395】
図11(B)に示す画素178は、角が丸い略台形または略三角形を有する副画素110Rと、角が丸い略台形または略三角形を有する副画素110Gと、角が丸い略四角形又は略六角形の上面形状を有する副画素110Bと、を有する。また、副画素110Rは、副画素110Gよりも発光面積が広い。このように、各副画素の形状及びサイズはそれぞれ独立に決定できる。例えば、信頼性の高い発光デバイスを有する副画素ほど、サイズを小さくすることができる。
【0396】
図11(C)に示す画素124a、及び画素124bには、ペンタイル配列が適用されている。図11(C)では、副画素110R及び副画素110Gを有する画素124aと、副画素110G及び副画素110Bを有する画素124bと、が交互に配置されている例を示す。
【0397】
図11(D)乃至図11(F)に示す画素124a、及び画素124bは、デルタ配列が適用されている。画素124aは上の行(1行目)に、2つの副画素(副画素110R、及び副画素110G)を有し、下の行(2行目)に、1つの副画素(副画素110B)を有する。画素124bは上の行(1行目)に、1つの副画素(副画素110B)を有し、下の行(2行目)に、2つの副画素(副画素110R、及び副画素110G)を有する。
【0398】
図11(D)は、各副画素が、角が丸い略四角形の上面形状を有する例であり、図11(E)は、各副画素が、円形の上面形状を有する例であり、図11(F)は、各副画素が、角が丸い略六角形の上面形状を有する例である。
【0399】
図11(F)では、各副画素が、密に配列した六角形の領域の内側に配置されている。各副画素は、その1つの副画素に着目したとき、6つの副画素に囲まれるように、配置されている。また、同じ色の光を呈する副画素が隣り合わないように設けられている。例えば、副画素110Rに着目したとき、これを囲むように3つの副画素110Gと3つの副画素110Bが、交互に配置されるように、それぞれの副画素が設けられている。
【0400】
図11(G)は、各色の副画素がジグザグに配置されている例である。具体的には、上面視において、行方向に並ぶ2つの副画素(例えば、副画素110Rと副画素110G、又は、副画素110Gと副画素110B)の上辺の位置がずれている。
【0401】
図11(A)乃至図11(G)に示す各画素において、例えば、副画素110Rを赤色の光を呈する副画素Rとし、副画素110Gを緑色の光を呈する副画素Gとし、副画素110Bを青色の光を呈する副画素Bとすることが好ましい。なお、副画素の構成はこれに限定されず、副画素が呈する色とその並び順は適宜決定できる。例えば、副画素110Gを赤色の光を呈する副画素Rとし、副画素110Rを緑色の光を呈する副画素Gとしてもよい。
【0402】
フォトリソグラフィ法では、加工するパターンが微細になるほど、光の回折の影響を無視できなくなるため、露光によりフォトマスクのパターンを転写する際に忠実性が損なわれ、レジストマスクを所望の形状に加工することが困難になる。そのため、フォトマスクのパターンが矩形であっても、角が丸まったパターンが形成されやすい。したがって、副画素の上面形状が、多角形の角が丸い形状、楕円形、又は円形等になることがある。
【0403】
さらに、本発明の一態様の発光装置の作製方法では、レジストマスクを用いて有機化合物層を島状に加工する。有機化合物層上に形成したレジスト膜は、有機化合物層の耐熱温度よりも低い温度で硬化する必要がある。そのため、有機化合物層の材料の耐熱温度及びレジスト材料の硬化温度によっては、レジスト膜の硬化が不十分になる場合がある。硬化が不十分なレジスト膜は、加工時に所望の形状から離れた形状をとることがある。その結果、有機化合物層の上面形状が、多角形の角が丸い形状、楕円形、又は円形等になることがある。例えば、上面形状が正方形のレジストマスクを形成しようとした場合に、円形の上面形状のレジストマスクが形成され、有機化合物層の上面形状が円形になることがある。
【0404】
なお、有機化合物層の上面形状を所望の形状とするために、設計パターンと、転写パターンとが、一致するように、あらかじめマスクパターンを補正する技術(OPC(Optical Proximity Correction:光近接効果補正)技術)を用いてもよい。具体的には、OPC技術では、例えばマスクパターン上の図形コーナー部に補正用のパターンを追加する。
【0405】
図12(A)乃至図12(I)に示すように、画素は副画素を4種類有する構成とすることができる。
【0406】
図12(A)乃至図12(C)に示す画素178は、ストライプ配列が適用されている。
【0407】
図12(A)は、各副画素が、長方形の上面形状を有する例であり、図12(B)は、各副画素が、2つの半円と長方形をつなげた上面形状を有する例であり、図12(C)は、各副画素が、楕円形の上面形状を有する例である。
【0408】
図12(D)乃至図12(F)に示す画素178は、マトリクス配列が適用されている。
【0409】
図12(D)は、各副画素が、正方形の上面形状を有する例であり、図12(E)は、各副画素が、角が丸い略正方形の上面形状を有する例であり、図12(F)は、各副画素が、円形の上面形状を有する例である。
【0410】
図12(G)及び図12(H)では、1つの画素178が、2行3列で構成されている例を示す。
【0411】
図12(G)に示す画素178は、上の行(1行目)に、3つの副画素(副画素110R、副画素110G、及び副画素110B)を有し、下の行(2行目)に、1つの副画素(副画素110W)を有する。言い換えると、画素178は、左の列(1列目)に、副画素110Rを有し、中央の列(2列目)に副画素110Gを有し、右の列(3列目)に副画素110Bを有し、さらに、この3列にわたって、副画素110Wを有する。
【0412】
図12(H)に示す画素178は、上の行(1行目)に、3つの副画素(副画素110R、副画素110G、及び副画素110B)を有し、下の行(2行目)に、3つの副画素110Wを有する。言い換えると、画素178は、左の列(1列目)に、副画素110R及び副画素110Wを有し、中央の列(2列目)に副画素110G及び副画素110Wを有し、右の列(3列目)に副画素110B及び副画素110Wを有する。図12(H)に示すように、上の行と下の行との副画素の配置を揃える構成とすることで、例えば製造プロセスで生じうるゴミを効率よく除去することが可能となる。したがって、表示品位の高い発光装置を提供できる。
【0413】
図12(G)及び図12(H)に示す画素178では、副画素110R、副画素110G、及び副画素110Bのレイアウトがストライプ配列となるため、表示品位を高めることができる。
【0414】
図12(I)では、1つの画素178が、3行2列で構成されている例を示す。
【0415】
図12(I)に示す画素178は、上の行(1行目)に、副画素110Rを有し、中央の行(2行目)に、副画素110Gを有し、1行目から2行目にわたって副画素110Bを有し、下の行(3行目)に、1つの副画素(副画素110W)を有する。言い換えると、画素178は、左の列(1列目)に、副画素110R、及び副画素110Gを有し、右の列(2列目)に副画素110Bを有し、さらに、この2列にわたって、副画素110Wを有する。
【0416】
図12(I)に示す画素178では、副画素110R、副画素110G、及び副画素110BのレイアウトがいわゆるSストライプ配列となるため、表示品位を高めることができる。
【0417】
図12(A)乃至図12(I)に示す画素178は、副画素110R、副画素110G、副画素110B、及び副画素110Wの、4つの副画素から構成される。例えば、副画素110Rを赤色の光を呈する副画素とし、副画素110Gを緑色の光を呈する副画素とし、副画素110Bを青色の光を呈する副画素とし、副画素110Wを白色の光を呈する副画素とすることができる。なお、副画素110R、副画素110G、副画素110B、及び副画素110Wのうち少なくとも1つを、シアンの光を呈する副画素、マゼンタの光を呈する副画素、黄色の光を呈する副画素、又は近赤外光を呈する副画素としてもよい。
【0418】
以上のように、本発明の一態様の発光装置は、発光デバイスを有する副画素からなる構成の画素について、様々なレイアウトを適用できる。
【0419】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0420】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について説明する。
【0421】
本実施の形態の表示装置は、高精細な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、腕時計型、および、ブレスレット型等の情報端末機(ウェアラブル機器)の表示部、並びに、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)等のVR向け機器、および、メガネ型のAR向け機器等の頭部に装着可能なウェアラブル機器の表示部に用いることができる。
【0422】
また、本実施の形態の表示装置は、高解像度の表示装置又は大型な表示装置とすることができる。したがって、本実施の形態の表示装置は、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、および、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、および、音響再生装置の表示部に用いることができる。
【0423】
[表示モジュール]
図13(A)に、表示モジュール280の斜視図を示す。表示モジュール280は、表示装置100Aと、FPC290と、を有する。なお、表示モジュール280が有する表示装置は表示装置100Aに限られず、後述する表示装置100B乃至表示装置100Eのいずれかであってもよい。
【0424】
表示モジュール280は、基板291および基板292を有する。表示モジュール280は、表示部281を有する。表示部281は、表示モジュール280における画像を表示する領域であり、後述する画素部284に設けられる各画素からの光を視認できる領域である。
【0425】
図13(B)に、基板291側の構成を模式的に示した斜視図を示している。基板291上には、回路部282と、回路部282上の画素回路部283と、画素回路部283上の画素部284と、が積層されている。また、基板291上の画素部284と重ならない部分に、FPC290と接続するための端子部285が設けられている。端子部285と回路部282とは、複数の配線により構成される配線部286により電気的に接続されている。
【0426】
画素部284は、周期的に配列した複数の画素284aを有する。図13(B)の右側に、1つの画素284aの拡大図を示している。画素284aには、先の実施の形態で説明した各種構成を適用できる。
【0427】
画素回路部283は、周期的に配列した複数の画素回路283aを有する。
【0428】
1つの画素回路283aは、1つの画素284aが有する複数の素子の駆動を制御する回路である。
【0429】
回路部282は、画素回路部283の各画素回路283aを駆動する回路を有する。例えば、ゲート線駆動回路、および、ソース線駆動回路の一方又は双方を有することが好ましい。このほか、演算回路、メモリ回路、および電源回路等の少なくとも一つを有していてもよい。
【0430】
FPC290は、外部から回路部282にビデオ信号又は電源電位等を供給するための配線として機能する。また、FPC290上にICが実装されていてもよい。
【0431】
表示モジュール280は、画素部284の下側に画素回路部283および回路部282の一方又は双方が積層された構成とすることができるため、表示部281の開口率(有効表示面積比)を極めて高くすることができる。
【0432】
このような表示モジュール280は、極めて高精細であることから、HMD等のVR向け機器又はメガネ型のAR向け機器に好適に用いることができる。例えば、レンズを通して表示モジュール280の表示部を視認する構成の場合であっても、表示モジュール280は極めて高精細な表示部281を有するためにレンズで表示部を拡大しても画素が視認されず、没入感の高い表示を行うことができる。また、表示モジュール280はこれに限られず、比較的小型の表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。
【0433】
[表示装置100A]
図14(A)に示す表示装置100Aは、基板301、発光デバイス130R、発光デバイス130G、発光デバイス130B、容量240、および、トランジスタ310を有する。
【0434】
基板301は、図13(A)および図13(B)における基板291に相当する。トランジスタ310は、基板301にチャネル形成領域を有するトランジスタである。基板301としては、例えば単結晶シリコン基板等の半導体基板を用いることができる。トランジスタ310は、基板301の一部、導電層311、低抵抗領域312、絶縁層313、および、絶縁層314を有する。導電層311は、ゲート電極として機能する。絶縁層313は、基板301と導電層311の間に位置し、ゲート絶縁層として機能する。低抵抗領域312は、基板301に不純物がドープされた領域であり、ソース又はドレインとして機能する。絶縁層314は、導電層311の側面を覆って設けられる。
【0435】
また、基板301に埋め込まれるように、隣接する2つのトランジスタ310の間に素子分離層315が設けられている。
【0436】
また、トランジスタ310を覆って絶縁層261が設けられ、絶縁層261上に容量240が設けられている。
【0437】
容量240は、導電層241と、導電層245と、これらの間に位置する絶縁層243を有する。導電層241は、容量240の一方の電極として機能し、導電層245は、容量240の他方の電極として機能し、絶縁層243は、容量240の誘電体として機能する。
【0438】
導電層241は絶縁層261上に設けられ、絶縁層254に埋め込まれている。導電層241は、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。絶縁層243は導電層241を覆って設けられる。導電層245は、絶縁層243を介して導電層241と重なる領域に設けられている。
【0439】
容量240を覆って、絶縁層255が設けられ、絶縁層255上に絶縁層174が設けられ、絶縁層174上に絶縁層175が設けられている。絶縁層175上に発光デバイス130R、発光デバイス130G、および、発光デバイス130Bが設けられている。隣り合う発光デバイスの間の領域には、絶縁物が設けられる。
【0440】
導電層151Rの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151Gの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Gが設けられ、導電層151Bの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Bが設けられる。また、導電層151Rおよび絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられ、導電層151Gおよび絶縁層156Gを覆うように導電層152Gが設けられ、導電層151Bおよび絶縁層156Bを覆うように導電層152Bが設けられる。有機化合物層103R上には、犠牲層158Rが位置し、有機化合物層103G上には、犠牲層158Gが位置し、有機化合物層103B上には、犠牲層158Bが位置する。
【0441】
導電層151R、導電層151G、および導電層151Bは、絶縁層243、絶縁層255、絶縁層174、および絶縁層175に埋め込まれたプラグ256、絶縁層254に埋め込まれた導電層241、および、絶縁層261に埋め込まれたプラグ271によってトランジスタ310のソース又はドレインの一方と電気的に接続されている。プラグには各種導電材料を用いることができる。
【0442】
また、発光デバイス130R、発光デバイス130G、および、発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131上には、樹脂層122によって基板120が貼り合わされている。発光デバイス130から基板120までの構成要素についての詳細は、実施の形態4を参照できる。基板120は、図13(A)における基板292に相当する。
【0443】
図14(B)は、図14(A)に示す表示装置100Aの変形例である。図14(B)に示す表示装置は、着色層132R、着色層132G、および着色層132Bを有し、発光デバイス130が着色層132R、着色層132G、および着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。図14(B)に示す表示装置において、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。
【0444】
[表示装置100B]
図15に、表示装置100Bの斜視図を示し、図16に、表示装置100Cの断面図を示す。
【0445】
表示装置100Bは、基板352と基板351とが貼り合わされた構成を有する。図15では、基板352を破線で示している。
【0446】
表示装置100Bは、画素部177、接続部140、回路356、および配線355等を有する。図15では表示装置100BにIC354およびFPC353が実装されている例を示している。このため、図15に示す構成は、表示装置100Bと、IC(集積回路)と、FPCと、を有する表示モジュールということもできる。ここで、表示装置の基板に、FPC等のコネクタが取り付けられたもの、又は当該基板にICが実装されたものを、表示モジュールと呼ぶ。
【0447】
接続部140は、画素部177の外側に設けられる。接続部140は、単数であっても複数であってもよい。接続部140は、発光デバイスの共通電極と、導電層とが電気的に接続されており、共通電極に電位を供給できる。
【0448】
回路356としては、例えば走査線駆動回路を用いることができる。
【0449】
配線355は、画素部177および回路356に信号および電力を供給する機能を有する。当該信号および電力は、FPC353を介して外部から、又はIC354から配線355に入力される。
【0450】
図15では、COG(Chip On Glass)方式又はCOF(Chip on Film)方式等により、基板351にIC354が設けられている例を示す。IC354は、例えば走査線駆動回路又は信号線駆動回路等を有するICを適用できる。なお、表示装置100Bおよび表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、例えばCOF方式により、FPCに実装してもよい。
【0451】
図16に、図15における表示装置100Bの、FPC353を含む領域の一部、回路356の一部、画素部177の一部、接続部140の一部、および、端部を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を表示装置100Cとして示す。
【0452】
[表示装置100C]
図16に示す表示装置100Cは、基板351と基板352の間に、トランジスタ201、トランジスタ205、赤色の光を発する発光デバイス130R、緑色の光を発する発光デバイス130G、および、青色の光を発する発光デバイス130B等を有する。
【0453】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、および発光デバイス130Bの詳細は実施の形態4を参照できる。
【0454】
発光デバイス130Rは、導電層224Rと、導電層224R上の導電層151Rと、導電層151R上の導電層152Rと、を有する。発光デバイス130Gは、導電層224Gと、導電層224G上の導電層151Gと、導電層151G上の導電層152Gと、を有する。発光デバイス130Bは、導電層224Bと、導電層224B上の導電層151Bと、導電層151B上の導電層152Bと、を有する。
【0455】
導電層224Rは、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ205が有する導電層222bと接続されている。導電層224Rの端部よりも外側に導電層151Rの端部が位置している。導電層151Rの側面と接する領域を有するように絶縁層156Rが設けられ、導電層151Rおよび絶縁層156Rを覆うように導電層152Rが設けられる。
【0456】
発光デバイス130Gにおける導電層224G、導電層151G、導電層152G、絶縁層156G、および発光デバイス130Bにおける導電層224B、導電層151B、導電層152B、絶縁層156Bについては、発光デバイス130Rにおける導電層224R、導電層151R、導電層152R、絶縁層156Rと同様であるため詳細な説明は省略する。
【0457】
導電層224R、導電層224G、および導電層224Bには、絶縁層214に設けられた開口を覆うように凹部が形成される。当該凹部には、層128が埋め込まれている。
【0458】
層128は、導電層224R、導電層224G、および導電層224Bの凹部を埋め、平坦化する機能を有する。導電層224R、導電層224G、および導電層224Bおよび層128上には、導電層224R、導電層224G、および導電層224Bと電気的に接続される導電層151R、導電層151G、および導電層151Bが設けられている。したがって、導電層224R、導電層224G、および導電層224Bの凹部と重なる領域も発光領域として使用でき、画素の開口率を高めることができる。
【0459】
層128は、絶縁層であってもよく、導電層であってもよい。層128には、各種無機絶縁材料、有機絶縁材料、および導電材料を適宜用いることができる。特に、層128は、絶縁材料を用いて形成されることが好ましく、有機絶縁材料を用いて形成されることが特に好ましい。層128には、例えば前述の絶縁層127に用いることができる有機絶縁材料を適用できる。
【0460】
発光デバイス130R、発光デバイス130G、および発光デバイス130B上には保護層131が設けられている。保護層131と基板352は接着層142を介して接着されている。基板352には、遮光層157が設けられている。発光デバイス130の封止には、固体封止構造又は中空封止構造等が適用できる。図16では、基板352と基板351との間の空間が、接着層142で充填されており、固体封止構造が適用されている。又は、当該空間を不活性ガス(窒素又はアルゴン等)で充填し、中空封止構造を適用してもよい。このとき、接着層142は、発光デバイスと重ならないように設けられていてもよい。また、当該空間を、枠状に設けられた接着層142とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0461】
図16では、接続部140が、導電層224R、導電層224G、および導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層224Cと、導電層151R、導電層151G、および導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層151Cと、導電層152R、導電層152G、および導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電層152Cと、を有する例を示している。また、図16では、導電層151Cの側面と重なる領域を有するように絶縁層156Cが設けられる例を示している。
【0462】
表示装置100Cは、トップエミッション型である。発光デバイスが発する光は、基板352側に射出される。基板352には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。画素電極は可視光を反射する材料を含み、対向電極(共通電極155)は可視光を透過する材料を含む。
【0463】
基板351上には、絶縁層211、絶縁層213、絶縁層215、および絶縁層214がこの順で設けられている。絶縁層211は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層213は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層215は、トランジスタを覆って設けられる。絶縁層214は、トランジスタを覆って設けられ、平坦化層としての機能を有する。なお、ゲート絶縁層の数およびトランジスタを覆う絶縁層の数は限定されず、それぞれ単層であっても2層以上であってもよい。
【0464】
絶縁層211、絶縁層213、および絶縁層215としては、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。
【0465】
平坦化層として機能する絶縁層214には、有機絶縁層が好適である。
【0466】
トランジスタ201およびトランジスタ205は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、ソースおよびドレインとして機能する導電層222aおよび導電層222b、半導体層231、ゲート絶縁層として機能する絶縁層213、並びに、ゲートとして機能する導電層223を有する。
【0467】
基板351の、基板352が重ならない領域には、接続部204が設けられている。接続部204では、トランジスタ201のソース電極またはドレイン電極が導電層166および接続層242を介してFPC353と電気的に接続されている。導電層166は、導電層224R、導電層224G、および導電層224Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層151R、導電層151G、および導電層151Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、導電層152R、導電層152G、および導電層152Bと同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、の積層構造である例を示す。接続部204の上面では、導電層166が露出している。これにより、接続部204とFPC353とを接続層242を介して電気的に接続できる。
【0468】
基板352の基板351側の面には、遮光層157を設けることが好ましい。遮光層157は、隣り合う発光デバイスの間、接続部140、および、回路356等に設けることができる。また、基板352の外側には各種光学部材を配置できる。
【0469】
基板351および基板352としては、それぞれ、基板120に用いることができる材料を適用できる。
【0470】
接着層142としては、樹脂層122に用いることができる材料を適用できる。
【0471】
接続層242としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、又は異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)等を用いることができる。
【0472】
[表示装置100D]
図17に示す表示装置100Dは、ボトムエミッション型の表示装置である点で、図16に示す表示装置100Cと主に相違する。
【0473】
発光デバイスが発する光は、基板351側に射出される。基板351には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。一方、基板352に用いる材料の透光性は問わない。
【0474】
基板351とトランジスタ201との間、基板351とトランジスタ205との間には、遮光層317を形成することが好ましい。図17では、基板351上に遮光層317が設けられ、遮光層317上に絶縁層153が設けられ、絶縁層153上にトランジスタ201、205などが設けられている例を示す。
【0475】
発光デバイス130Rは、導電層112Rと、導電層112R上の導電層126Rと、導電層126R上の導電層129Rと、を有する。
【0476】
発光デバイス130Bは、導電層112Bと、導電層112B上の導電層126Bと、導電層126B上の導電層129Bと、を有する。
【0477】
導電層112R、112B、126R、126B、129R、129Bには、それぞれ、可視光に対する透過性が高い材料を用いる。第2の電極102には可視光を反射する材料を用いることが好ましい。
【0478】
なお、図17では、発光デバイス130Gを図示していないが、発光デバイス130Gも設けられている。
【0479】
また、図17などでは、層128の上面が平坦部を有する例を示すが、層128の形状は、特に限定されない。
【0480】
[表示装置100D2]
図18(A)に示す表示装置100D2は、図17に示す表示装置100Dとは異なるボトムエミッション型の表示装置の一例である。表示装置100D2は、有機樹脂層180を有する点で、表示装置100Dと相違する。なお、図中、図17と同じ構成要素の符号は省略している場合があり、その詳細は図17の記載を参酌するとよい。
【0481】
また、図18(B)は、副画素110(副画素110R、副画素110G、副画素110B、副画素110W)を有する画素178(画素178a、および画素178b)の上面レイアウトを、図18(C)は、画素178が有する副画素110Rおよび副画素110Gが形成される領域における有機樹脂層180の上面図を示す。なお、遮光層317と遮光層317との間は、副画素110Rの発光領域における幅110Rwである。
【0482】
図18(A)に示すように、有機樹脂層180は、絶縁層214上に設けられる。図18(A)の一点鎖線で囲む領域、および図18(C)に示すように、有機樹脂層180は、少なくとも副画素が形成される領域に、曲面を有する凹部181(凹部181a、凹部181b)を有する。なお、凹部181は凹部181cのように発光領域外に設けられていてもよい。凹部181cを設けることで、遮光層317と重畳する領域で生じた発光または遮光層317と重畳する領域に進行した光が屈折し、発光領域から取り出すことができるため、発光効率を向上させることができる。
【0483】
凹部181はマトリクス状に複数形成されていてもよい。凹部181aと凹部181bは接して設けられていても、間に平面を有していてもよい。
【0484】
また、図18では、当該凹部の上面形状を六角形(図18(C))、断面形状を半円形(図18(A))として示したが、必要に応じて他の形状としてもよい。例えば、当該凹部の上面形状を、三角形、四角形(長方形、正方形を含む)、五角形等の多角形、これら多角形の角が丸い形状、楕円形、又は円形等の形状としてもよい。
【0485】
有機樹脂層180としては、有機材料を有する絶縁層を用いることができる。例えば、有機樹脂層180として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、およびこれら樹脂の前駆体等を適用することができる。また、有機樹脂層180として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、プルラン、水溶性のセルロース、またはアルコール可溶性のポリアミド樹脂などの有機材料を用いてもよい。
【0486】
また、有機樹脂層180として、感光性の樹脂を用いることができる。感光性の樹脂としてはフォトレジストを用いてもよい。感光性の樹脂は、ポジ型の材料、またはネガ型の材料を用いることができる。
【0487】
有機樹脂層180は、可視光を吸収する材料を含んでいてもよい。例えば、有機樹脂層180自体が可視光を吸収する材料により構成されていてもよいし、有機樹脂層180が、可視光を吸収する顔料を含んでいてもよい。有機樹脂層180としては、例えば、赤色、青色、または緑色の光を透過し、他の光を吸収するカラーフィルタとして用いることのできる樹脂、またはカーボンブラックを顔料として含み、ブラックマトリクスとして機能する樹脂などを用いることができる。
【0488】
また、有機樹脂層180上に、第1の電極101(第1の電極101Rおよび第1の電極101W)、第1の電極101上に有機化合物層103を有する。第1の電極101、および有機化合物層103の端部は絶縁層127で覆われていてもよい。
【0489】
また、有機樹脂層180上に形成される、第1の電極101は、有機樹脂層180の凹部に沿って凹部を有する。さらに、第1の電極101上に形成された有機化合物層103は、第1の電極101の凹部に沿って凹部を有する。さらに、有機化合物層103上に形成された共通層104は、有機化合物層103の凹部に沿って凹部を有する。さらに、共通層104上に形成された第2の電極102は、共通層104の凹部に沿って凹部を有する。すなわち、有機樹脂層180、第1の電極101、有機化合物層103、共通層104、および第2の電極102の凹部は互いに重なる構造を有する。
【0490】
また、有機化合物層103および絶縁層127上に共通層104、共通層104上に第2の電極102を有する。第2の電極102上に保護層131を設け、接着層142を介して基板352と貼り合わせた構造とする。
【0491】
なお、図18(A)では、発光デバイス130Gおよび発光デバイス130Bを図示していないが、発光デバイス130Gおよび発光デバイス130Bも設けられている。
【0492】
以上のような有機樹脂層180を有する本発明の一態様の発光装置は、実施の形態1で説明したように有機化合物層103に一般式(G1)として示した有機化合物を含むことから、有機樹脂層180の効果と本願の有機化合物を用いた有機半導体デバイスの一体不可分の効果により、高い発光効率の有機半導体デバイスを提供できるため、信頼性が良好で、駆動電圧が低く、低消費電力な有機半導体デバイスを提供することができる。
【0493】
[表示装置100E]
図19に示す表示装置100Eは、図16に示す表示装置100Cの変形例であり、着色層132R、着色層132G、および着色層132Bを有する点で、表示装置100Cと主に相違する。
【0494】
表示装置100Eにおいて、発光デバイス130は、着色層132R、着色層132G、および着色層132Bのうち一つと重なる領域を有する。着色層132R、着色層132G、および着色層132Bは、基板352の基板351側の面に設けることができる。着色層132Rの端部、着色層132Gの端部、および着色層132Bの端部は、遮光層157と重ねることができる。
【0495】
表示装置100Eにおいて、発光デバイス130は、例えば白色光を発することができる。また、例えば着色層132Rは赤色の光を透過し、着色層132Gは緑色の光を透過し、着色層132Bは青色の光を透過できる。なお、表示装置100Eは、保護層131と接着層142の間に着色層132R、着色層132G、および着色層132Bを設ける構成としてもよい。
【0496】
[表示装置100E2]
図20(A)に示す表示装置100E2は、図19に示す表示装置100Eの変形例であり、着色層132R、着色層132G、および着色層132B上に、マイクロレンズ182を有する。なお、図中、図19と同じ構成要素の符号は省略している場合があり、その詳細は図19の記載を参酌するとよい。
【0497】
また、図20(B)は、副画素110(副画素110R、副画素110G、副画素110B)を有する画素178(画素178a、および画素178b)の上面レイアウトを、図20(C)は、画素178が有する副画素110Rおよび副画素110Gが形成される領域におけるマイクロレンズ182の上面図を示す。なお、共通電極155と有機化合物層103が接する領域は、副画素110Gの発光領域における幅110Gwである。
【0498】
図20(A)に示す表示装置100E2は、保護層131上に平坦化膜143を設け、平坦化膜143上に着色層132R、着色層132G、および着色層132Bを設ける。着色層132R、着色層132G、および着色層132Bを覆うように、平坦化膜144を設ける。平坦化膜144上に、マイクロレンズ182を設ける。
【0499】
なお、マイクロレンズ182は、図20(C)に示すように、副画素が形成される領域に、副画素毎に設けるとよい。
【0500】
なお、図20(C)では、マイクロレンズ182の上面形状を六角形で示したが、必要に応じて他の形状としてもよい。例えば、マイクロレンズ182の上面形状を、三角形、四角形(長方形、正方形を含む)、五角形等の多角形、これら多角形の角が丸い形状、楕円形、又は円形等が挙げられる。
【0501】
マイクロレンズ182は、有機樹脂層180と同様の材料を用いて形成することができる。
【0502】
以上のようなマイクロレンズ182を有する本発明の一態様の発光装置は、実施の形態1で説明したように有機化合物層103に一般式(G1)として示した有機化合物を含むことから、マイクロレンズ182の効果と本願の有機化合物を用いた有機半導体デバイスの一体不可分の効果により、高い発光効率の有機半導体デバイスを提供できるため、信頼性が良好で、駆動電圧が低く、低消費電力なモバイル用途のディスプレイに最適な有機半導体デバイスを提供することができる。
【0503】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0504】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について説明する。
【0505】
本実施の形態の電子機器は、表示部に本発明の一態様の発光装置を有する。本発明の一態様の発光装置は信頼性が高く、また高精細化及び高解像度化が容易である。したがって、様々な電子機器の表示部に用いることができる。
【0506】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用等のモニタ、デジタルサイネージ、パチンコ機等の大型ゲーム機等の比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、等が挙げられる。
【0507】
特に、本発明の一態様の発光装置は、精細度を高めることが可能なため、比較的小さな表示部を有する電子機器に好適に用いることができる。このような電子機器としては、例えば、腕時計型及びブレスレット型の情報端末機(ウェアラブル機器)、並びに、ヘッドマウントディスプレイ等のVR向け機器、メガネ型のAR向け機器、及び、MR(Mixed Reality)向け機器等、頭部に装着可能なウェアラブル機器等が挙げられる。
【0508】
本発明の一態様の発光装置は、HD(画素数1280×720)、FHD(画素数1920×1080)、WQHD(画素数2560×1440)、WQXGA(画素数2560×1600)、4K(画素数3840×2160)、8K(画素数7680×4320)といった極めて高い解像度を有していることが好ましい。特に4K、8K、又はそれ以上の解像度とすることが好ましい。また、本発明の一態様の発光装置における画素密度(精細度)は、100ppi以上が好ましく、300ppi以上が好ましく、500ppi以上がより好ましく、1000ppi以上がより好ましく、2000ppi以上がより好ましく、3000ppi以上がより好ましく、5000ppi以上がより好ましく、7000ppi以上がさらに好ましい。このように高い解像度及び高い精細度の一方又は双方を有する発光装置を用いることで、臨場感及び奥行き感等をより高めることが可能となる。また、本発明の一態様の発光装置の画面比率(アスペクト比)については、特に限定はない。例えば、発光装置は、1:1(正方形)、4:3、16:9、及び16:10等様々な画面比率に対応できる。
【0509】
本実施の形態の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0510】
本実施の形態の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像等)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻等を表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出す機能等を有することができる。
【0511】
図21(A)乃至図21(D)を用いて、頭部に装着可能なウェアラブル機器の一例を説明する。これらウェアラブル機器は、ARのコンテンツを表示する機能、VRのコンテンツを表示する機能、SR(Substitutional Reality)のコンテンツを表示する機能、MRのコンテンツを表示する機能のうち少なくとも一つを有する。電子機器が、AR、VR、SR、及びMR等の少なくとも一つのコンテンツを表示する機能を有することで、使用者の没入感を高めることが可能となる。
【0512】
図21(A)に示す電子機器700A、及び、図21(B)に示す電子機器700Bは、それぞれ、一対の表示パネル751と、一対の筐体721と、通信部(図示しない)と、一対の装着部723と、制御部(図示しない)と、撮像部(図示しない)と、一対の光学部材753と、フレーム757と、一対の鼻パッド758と、を有する。
【0513】
表示パネル751には、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0514】
電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、光学部材753の表示領域756に、表示パネル751で表示した画像を投影できる。光学部材753は透光性を有するため、使用者は光学部材753を通して視認される透過像に重ねて、表示領域に表示された画像を見ることができる。したがって、電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、AR表示が可能な電子機器である。
【0515】
電子機器700A、及び、電子機器700Bには、撮像部として、前方を撮像することのできるカメラが設けられていてもよい。また、電子機器700A、及び、電子機器700Bは、それぞれ、ジャイロセンサ等の加速度センサを備えることで、使用者の頭部の向きを検知して、その向きに応じた画像を表示領域756に表示することもできる。
【0516】
通信部は無線通信機を有し、当該無線通信機により例えば映像信号を供給できる。なお、無線通信機に代えて、又は無線通信機に加えて、映像信号及び電源電位が供給されるケーブルを接続可能なコネクタを備えていてもよい。
【0517】
また、電子機器700A、及び、電子機器700Bには、バッテリが設けられており、無線及び有線の一方又は双方によって充電できる。
【0518】
筐体721には、タッチセンサモジュールが設けられていてもよい。タッチセンサモジュールは、筐体721の外側の面がタッチされることを検出する機能を有する。タッチセンサモジュールにより、使用者のタップ操作又はスライド操作等を検出し、様々な処理を実行できる。例えば、タップ操作によって動画の一時停止又は再開等の処理を実行することが可能となり、スライド操作により、早送り又は早戻しの処理を実行すること等が可能となる。また、2つの筐体721のそれぞれにタッチセンサモジュールを設けることで、操作の幅を広げることができる。
【0519】
タッチセンサモジュールとしては、様々なタッチセンサを適用できる。例えば、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、表面弾性波方式、又は光学方式等、種々の方式を採用できる。特に、静電容量方式又は光学方式のセンサを、タッチセンサモジュールに適用することが好ましい。
【0520】
光学方式のタッチセンサを用いる場合には、受光素子として、光電変換デバイス(光電変換素子ともいう)を用いることができる。光電変換デバイスの活性層には、無機半導体及び有機半導体の一方又は双方を用いることができる。
【0521】
図21(C)に示す電子機器800A、及び、図21(D)に示す電子機器800Bは、それぞれ、一対の表示部820と、筐体821と、通信部822と、一対の装着部823と、制御部824と、一対の撮像部825と、一対のレンズ832と、を有する。
【0522】
表示部820には、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0523】
表示部820は、筐体821の内部の、レンズ832を通して視認できる位置に設けられる。また、一対の表示部820に異なる画像を表示させることで、視差を用いた3次元表示を行うこともできる。
【0524】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、VR向けの電子機器ということができる。電子機器800A又は電子機器800Bを装着した使用者は、レンズ832を通して、表示部820に表示される画像を視認できる。
【0525】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、レンズ832及び表示部820が、使用者の目の位置に応じて最適な位置となるように、これらの左右の位置を調整可能な機構を有していることが好ましい。また、レンズ832と表示部820との距離を変えることで、ピントを調整する機構を有していることが好ましい。
【0526】
装着部823により、使用者は電子機器800A又は電子機器800Bを頭部に装着できる。なお、例えば図21(C)においては、メガネのつる(テンプル等ともいう)のような形状として例示しているがこれに限定されない。装着部823は、使用者が装着できればよく、例えば、ヘルメット型又はバンド型の形状としてもよい。
【0527】
撮像部825は、外部の情報を取得する機能を有する。撮像部825が取得したデータは、表示部820に出力できる。撮像部825には、イメージセンサを用いることができる。また、望遠、及び広角等の複数の画角に対応可能なように複数のカメラを設けてもよい。
【0528】
なお、ここでは撮像部825を有する例を示したが、対象物の距離を測定することのできる測距センサ(以下、検知部ともよぶ)を設ければよい。すなわち、撮像部825は、検知部の一態様である。検知部としては、例えばイメージセンサ、又は、ライダー(LIDAR:Light Detection and Ranging)等の距離画像センサを用いることができる。カメラによって得られた画像と、距離画像センサによって得られた画像とを用いることにより、より多くの情報を取得し、より高精度なジェスチャー操作を可能とすることができる。
【0529】
電子機器800Aは、骨伝導イヤフォンとして機能する振動機構を有していてもよい。例えば、表示部820、筐体821、及び装着部823のいずれか一又は複数に、当該振動機構を有する構成を適用できる。これにより、別途、ヘッドフォン、イヤフォン、又はスピーカ等の音響機器を必要とせず、電子機器800Aを装着しただけで映像と音声を楽しむことができる。
【0530】
電子機器800A、及び、電子機器800Bは、それぞれ、入力端子を有していてもよい。入力端子には映像出力機器等からの映像信号、及び、電子機器内に設けられるバッテリを充電するための電力等を供給するケーブルを接続できる。
【0531】
本発明の一態様の電子機器は、イヤフォン750と無線通信を行う機能を有していてもよい。イヤフォン750は、通信部(図示しない)を有し、無線通信機能を有する。イヤフォン750は、無線通信機能により、電子機器から情報(例えば音声データ)を受信できる。例えば、図21(A)に示す電子機器700Aは、無線通信機能によって、イヤフォン750に情報を送信する機能を有する。また、例えば、図21(C)に示す電子機器800Aは、無線通信機能によって、イヤフォン750に情報を送信する機能を有する。
【0532】
また、電子機器がイヤフォン部を有していてもよい。図21(B)に示す電子機器700Bは、イヤフォン部727を有する。例えば、イヤフォン部727と制御部とは、互いに有線接続されている構成とすることができる。イヤフォン部727と制御部とをつなぐ配線の一部は、筐体721又は装着部723の内部に配置されていてもよい。
【0533】
同様に、図21(D)に示す電子機器800Bは、イヤフォン部827を有する。例えば、イヤフォン部827と制御部824とは、互いに有線接続されている構成とすることができる。イヤフォン部827と制御部824とをつなぐ配線の一部は、筐体821又は装着部823の内部に配置されていてもよい。また、イヤフォン部827と装着部823とがマグネットを有していてもよい。これにより、イヤフォン部827を装着部823に磁力によって固定でき、収納が容易となり好ましい。
【0534】
なお、電子機器は、イヤフォン又はヘッドフォン等を接続できる音声出力端子を有していてもよい。また、電子機器は、音声入力端子及び音声入力機構の一方又は双方を有していてもよい。音声入力機構としては、例えば、マイク等の集音装置を用いることができる。電子機器が音声入力機構を有することで、電子機器に、いわゆるヘッドセットとしての機能を付与してもよい。
【0535】
このように、本発明の一態様の電子機器としては、メガネ型(電子機器700A、及び、電子機器700B等)と、ゴーグル型(電子機器800A、及び、電子機器800B等)と、のどちらも好適である。
【0536】
また、本発明の一態様の電子機器は、有線又は無線によって、イヤフォンに情報を送信できる。
【0537】
図22(A)に示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0538】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、及び光源6508等を有する。表示部6502はタッチパネル機能を備える。
【0539】
表示部6502に、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0540】
図22(B)は、筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0541】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、及びバッテリ6518等が配置されている。
【0542】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が接着層(図示しない)により固定されている。
【0543】
表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されており、当該折り返された部分にFPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。FPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0544】
表示パネル6511には本発明の一態様の発光装置を適用できる。このため、極めて軽量な電子機器を実現できる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリ6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、画素部の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0545】
図22(C)にテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7171に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7173により筐体7171を支持した構成を示している。
【0546】
表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0547】
図22(C)に示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7171が備える操作スイッチ、及び、別体のリモコン操作機7151により行うことができる。又は、表示部7000にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7000に触れることでテレビジョン装置7100を操作してもよい。リモコン操作機7151は、当該リモコン操作機7151から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7151が備える操作キー又はタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7000に表示される映像を操作できる。
【0548】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機及びモデム等を備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者同士等)の情報通信を行うことも可能である。
【0549】
図22(D)に、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、及び外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0550】
表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0551】
図22(E)及び図22(F)に、デジタルサイネージの一例を示す。
【0552】
図22(E)に示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0553】
図22(F)は円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0554】
図22(E)及び図22(F)において、表示部7000に、本発明の一態様の発光装置を適用できる。したがって信頼性が高い電子機器とすることができる。
【0555】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0556】
表示部7000にタッチパネルを適用することで、表示部7000に画像又は動画を表示するだけでなく、使用者が直感的に操作でき、好ましい。また、路線情報もしくは交通情報等の情報を提供するための用途に用いる場合には、直感的な操作によるユーザビリティを高めることができる。
【0557】
また、図22(E)及び図22(F)に示すように、デジタルサイネージ7300又はデジタルサイネージ7400は、使用者が所持するスマートフォン等の情報端末機7311又は情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7000に表示される広告の情報を、情報端末機7311又は情報端末機7411の画面に表示させることができる。また、情報端末機7311又は情報端末機7411を操作することで、表示部7000の表示を切り替えることができる。
【0558】
また、デジタルサイネージ7300又はデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311又は情報端末機7411の画面を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数の使用者が同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0559】
図23(A)乃至図23(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0560】
図23(A)乃至図23(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像等)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻等を表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して処理する機能、等を有することができる。なお、電子機器の機能はこれらに限られず、様々な機能を有することができる。電子機器は、複数の表示部を有していてもよい。また、電子機器にカメラ等を設け、静止画又は動画を撮影し、記録媒体(外部又はカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0561】
図23(A)乃至図23(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0562】
図23(A)は、携帯情報端末9171を示す斜視図である。携帯情報端末9171は、例えばスマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9171は、スピーカ9003、接続端子9006、又はセンサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9171は、文字及び画像情報をその複数の面に表示できる。図23(A)では3つのアイコン9050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することもできる。情報9051の一例としては、電子メール、SNS、電話等の着信の通知、電子メール又はSNS等の題名、送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、電波強度等がある。又は、情報9051が表示されている位置にはアイコン9050等を表示してもよい。
【0563】
図23(B)は、携帯情報端末9172を示す斜視図である。携帯情報端末9172は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9172を収納した状態で、携帯情報端末9172の上方から観察できる位置に表示された情報9053を確認することもできる。使用者は、携帯情報端末9172をポケットから取り出すことなく表示を確認し、例えば電話を受けるか否かを判断できる。
【0564】
図23(C)は、タブレット端末9173を示す斜視図である。タブレット端末9173は、一例として、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲーム等の種々のアプリケーションの実行が可能である。タブレット端末9173は、筐体9000の正面に表示部9001、カメラ9002、マイクロフォン9008、スピーカ9003を有し、筐体9000の左側面には操作用のボタンとしての操作キー9005、底面には接続端子9006を有する。
【0565】
図23(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えばスマートウォッチ(登録商標)として用いることができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うこと、及び、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0566】
図23(E)乃至図23(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、図23(E)は携帯情報端末9201を展開した状態、図23(G)は折り畳んだ状態、図23(F)は図23(E)と図23(G)の一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。例えば、表示部9001は、曲率半径0.1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0567】
本実施の形態は、他の実施の形態、又は実施例と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0568】
[合成例1]
本合成例では、構造式(100)で表される有機化合物である、4,8-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8Cz2Bfpm)の合成方法について具体的に説明する。
【0569】
【化17】
【0570】
<ステップ1:4,8Cz2Bfpmの合成>
まず、200mLの三口フラスコに、4,8-ジクロロ[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンを2.4g(10mmol)、9H-カルバゾールを3.7g(22mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(略称:tBuONa)を1.9g(20mmol)、ジ-tert-ブチル(2,2-ジフェニル-1-メチル-1-シクロプロピル)ホスフィン(略称:cBRIDP)を0.14g(0.34mmol)入れた。この混合物へ、メシチレン100mLを加え、当該混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。続いて、当該混合物にアリルパラジウム(II)クロリド(ダイマー)を62mg(0.17mmol)加え、窒素気流下にて140℃で31.5時間加熱撹拌した。撹拌後、この混合物にトルエンを加え、セライトを通して吸引ろ過し、濾液を得た。得られた濾液を濃縮して固体を得た。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)で精製した。得られた固体を、トルエン/エタノールで再結晶し、淡黄色固体を2.8g、収率56%で得た。得られた固体2.7gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。圧力3.3Pa、アルゴン流量15mL/minの条件で、260℃で加熱して行った。昇華精製後、淡黄色固体を2.5g、回収率91%で得た。ステップ1の合成スキームを下記(a-1)に示す。
【0571】
【化18】
【0572】
<有機化合物の特性>
上記ステップ1で得られた淡黄色固体の重水素化クロロホルム(略称:CDCl)溶液の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。また、核磁気共鳴分光法(H NMR)のチャートを図24に示す。この結果から、本合成例において、上述の構造式(100)で表される本発明の一態様である4,8Cz2Bfpmが得られたことがわかった。
【0573】
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.31-7.55(m,10H),7.86-7.94(m,4H),8.17-8.21(m,4H),8.56(d,J1=1.2Hz,1H),9.31(s,1H).
【0574】
<発光スペクトルおよび吸収スペクトル測定>
次に、4,8Cz2Bfpmのトルエン溶液の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを測定した結果を図25に示す。また、薄膜の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを図26に示す。なお、固体薄膜は石英基板上に真空蒸着法にて作製した。また、横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。
【0575】
固体薄膜は石英基板上に真空蒸着法にて作製した。トルエン溶液の吸収スペクトルは、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V-770DS)を用いて測定し、トルエンのみを石英セルに入れて測定したスペクトルを差し引いて示した。また、薄膜の吸収スペクトルは、分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製 分光光度計U4100)を用いた。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)日本分光製 FP-8600)を用いた。
【0576】
図25より、4,8Cz2Bfpmのトルエン溶液は352nm、344nm、328nm、286nmに吸収ピークが見られ、発光波長のピークは431nm(励起波長355nm)であった。また、図26より、4,8Cz2Bfpmの薄膜は、348nm、284nmに吸収ピークが見られ、発光波長のピークは448nm(励起波長345nm)に見られた。
【実施例0577】
[合成例2]
本合成例では、構造式(101)で表される有機化合物である、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8PSi-4CzBfpm)の合成方法について具体的に説明する。
【0578】
【化19】
【0579】
<ステップ1:4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-クロロ-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンの合成>
まず、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-クロロ-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンを、ステップ1にて合成した。ステップ1は以下の手順にて行った。
【0580】
300mLの三口フラスコに4,8-ジクロロ-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンを6.4g(27mmol)、9H-カルバゾールを4.5g(27mmol)、りん酸三カリウムを5.7g(27mmol)入れた。当該混合物へ、ジメチルスルホキシド(略称:DMSO)135mLを加え、窒素気流下にて90℃で6時間加熱撹拌した。撹拌後、この混合物に水を加え、吸引ろ過し、固体を回収した。得られた固体にトルエンを加え、加熱撹拌後、固体を回収し、淡茶色固体を7.5g、収率75%で得た。ステップ1の合成スキームを下記(b-1)に示す。
【0581】
【化20】
【0582】
上記ステップ1で得られた淡茶色固体の重水素化クロロホルム(略称:CDCl)溶液の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。また、核磁気共鳴分光法(H NMR)のチャートを図27に示す。この結果から、本合成例において、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-クロロ-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンが得られたことがわかった。
【0583】
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.39-7.52(m,4H),7.59(d,J1=8.7Hz,1H),7.68(dd,J1=8.7Hz,J2=1.8Hz,1H),7.81(d,J1=8.1Hz,2H),8.15(d,J1=7.5Hz,2H),8.31(d,J1=2.1Hz,1H),9.28(s,1H).
【0584】
<ステップ2:8PSi-4CzBfpmの合成>
次に、ステップ1で得られた4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-クロロ-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンを用いて、8PSi-4CzBfpmを合成した。ステップ2は以下の手順にて行った。
【0585】
200mLの三口フラスコに、ステップ1で得られた1.7g(4.5mmol)の4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-クロロ-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンと、2.3g(4.9mmol)の2-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン、96mg(0.27mmol)のジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、2.9g(13mmol)のリン酸三カリウム、1.0g(13mmol)のtert-ブタノール(略称:tBuOH)を入れた。この混合物に、40mLのジエチレングリコールジメチルエーテル(略称:Diglyme)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に30mg(0.13mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、窒素気流下、120℃で6時間攪拌した。撹拌後、この混合物に水を加え、吸引濾過し、固体を回収した。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン、次いでトルエン:酢酸エチル=50:1)で精製した。得られた固体を酢酸エチルで再結晶し、白色固体を2.3g、収率77%で得た。得られた固体2.3gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。圧力3.6Pa、アルゴン流量15mL/minの条件で、290℃で加熱して行った。昇華精製後、白色固体を2.2g、回収率94%で得た。ステップ2の合成スキームを下記(b-2)に示す。
【0586】
【化21】
【0587】
<有機化合物の特性>
上記ステップ2で得られた白色固体の重水素化クロロホルム(略称:CDCl)溶液の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。また、核磁気共鳴分光法(H NMR)のチャートを図28に示す。この結果から、本合成例において、上述の構造式(101)で表される本発明の一態様である8PSi-4CzBfpmが得られたことがわかった。
【0588】
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.39-7.68(m,22H),7.76-7.90(m,5H),8.15(d,J1=7.5Hz,2H),8.47(d,J1=1.5Hz,1H),9.27(s,1H).
【0589】
<発光スペクトルおよび吸収スペクトル測定>
次に、8PSi-4CzBfpmのトルエン溶液の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを測定した結果を図29に示す。また、薄膜の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを図30に示す。なお、固体薄膜は石英基板上に真空蒸着法にて作製した。また、横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。
【0590】
トルエン溶液の吸収スペクトルは、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V-770DS)を用いて測定し、トルエンのみを石英セルに入れて測定したスペクトルを差し引いて示した。また、薄膜の吸収スペクトルは、分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製 分光光度計U4100)を用いた。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)日本分光製 FP-8600)を用いた。
【0591】
図29より、8PSi-4CzBfpmのトルエン溶液は354nm、282nmに吸収ピークが見られ、発光波長のピークは420nm(励起波長355nm)であった。また、図30より、8PSi-4CzBfpmの薄膜は、349nm、269nmに吸収ピークが見られ、発光波長のピークは424nm(励起波長350nm)に見られた。
【実施例0592】
[合成例3]
本合成例では、構造式(102)で表される有機化合物である、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-(ジベンゾフラン-2-イル)-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8DBf-4CzBfpm)の合成方法について具体的に説明する。
【0593】
【化22】
【0594】
<ステップ1:8DBf-4CzBfpmの合成>
本ステップでは、合成例2のステップ1で得られた4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-クロロ-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンを用いて、8DBf-4CzBfpmを合成した。ステップ1は以下の手順にて行った。
【0595】
200mLの三口フラスコに、合成例2のステップ1で得られた1.7g(4.5mmol)の4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-クロロ-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンと、2.3g(4.9mmol)の2-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン、96mg(0.27mmol)のジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、2.9g(13mmol)のリン酸三カリウム、1.0g(13mmol)のtert-ブタノール(略称:tBuOH)を入れた。この混合物に、40mLのジエチレングリコールジメチルエーテル(略称:Diglyme)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に30mg(0.13mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、窒素気流下、120℃で6時間攪拌した。撹拌後、この混合物に水を加え、吸引濾過し、固体を回収した。この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン、次いでトルエン:酢酸エチル=50:1)で精製した。得られた固体を酢酸エチルで再結晶し、白色固体を2.3g、収率77%で得た。得られた固体2.3gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。圧力3.6Pa、アルゴン流量15mL/minの条件で、290℃で加熱して行った。昇華精製後、白色固体を2.2g、回収率94%で得た。ステップ1の合成スキームを下記(c-1)に示す。
【0596】
【化23】
【0597】
<有機化合物の特性>
上記ステップ2で得られた白色固体の重水素化クロロホルム(略称:CDCl)溶液の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。また、核磁気共鳴分光法(H NMR)のチャートを図31に示す。この結果から、本合成例において、上述の構造式(102)で表される本発明の一態様である8DBf-4CzBfpmが得られたことがわかった。
【0598】
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.38-7.54(m,6H),7.62-7.82(m,4H),7.86(d,J1=7.8Hz,2H),8.03-8.07(m,2H),8.17(d,J1=7.2Hz,2H),8.28(d,J1=1.5Hz,1H),8.63(d,J1=1.5Hz,1H),9.31(s,1H).
【0599】
<発光スペクトルおよび吸収スペクトル測定>
次に、8DBf-4CzBfpmのトルエン溶液の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを測定した結果を図32に示す。また、薄膜の吸収スペクトルおよび発光スペクトルを図33に示す。なお、固体薄膜は石英基板上に真空蒸着法にて作製した。また、横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。
【0600】
トルエン溶液の吸収スペクトルは、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V-770DS)を用いて測定し、トルエンのみを石英セルに入れて測定したスペクトルを差し引いて示した。また、薄膜の吸収スペクトルは、分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製 分光光度計U4100)を用いた。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)日本分光製 FP-8600)を用いた。
【0601】
図32より、8DBf-4CzBfpmのトルエン溶液は350nm、316nm、286nmに吸収ピークが見られ、発光波長のピークは421nm(励起波長349nm)であった。また、図33より、8DBf-4CzBfpmの薄膜は、354nm、316nm、286nmに吸収ピークが見られ、発光波長のピークは431nm(励起波長350nm)に見られた。
【実施例0602】
本実施例では、構造式(100)で表される有機化合物である、4,8-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8Cz2Bfpm)、構造式(101)で表される有機化合物である、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8PSi-4CzBfpm)、および構造式(102)で表される有機化合物である、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-(ジベンゾフラン-2-イル)-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8DBf-4CzBfpm)の発光スペクトル(燐光スペクトル)を測定することで、最低三重項励起エネルギー準位(T準位)算出した。
【0603】
また、比較例として4,8-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mCzP2Bfpm)、の発光スペクトル(燐光スペクトル)を測定し、最低三重項励起エネルギー準位(T準位)算出した。
【0604】
本実施例で用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
【0605】
【化24】
【0606】
<PLスペクトルの測定結果およびT準位の算出>
最低三重項励起エネルギー準位(T準位)は、石英基板上に試料を50nm成膜した薄膜を用い、測定温度10Kにて発光スペクトル(燐光スペクトル)を測定することで算出した。測定は、顕微PL装置 LabRAM HR-PL ((株)堀場製作所)を用い、励起光としてHe-Cdレーザ(325nm)を用いた。なお、発光スペクトル(燐光スペクトル)の最も短波長に観測されるピーク(またはショルダーピーク)の短波長側の傾きが最大となる値において接線を引き、その接線と横軸(波長)あるいはベースラインとの交点から発光端を算出した。
【0607】
図34に4,8Cz2Bfpmの測定結果、図35に8PSi-4CzBfpmの測定結果、図36に8DBf-4CzBfpmの測定結果、および図37に4,8mCzP2Bfpmの測定結果を示す。なお、図34乃至図37は、縦軸が強度(Intensity)、横軸が波長(Wave length)である。
【0608】
また、算出した各有機化合物のT準位は、4,8Cz2Bfpmが2.82eV、8PSi-4CzBfpmが2.90eV、8DBf-4CzBfpmが2.88eV、および4,8mCzP2Bfpmが2.71eV、であった。算出した各有機化合物のT準位を下表にまとめる。
【0609】
【表1】
【0610】
上記表より、本発明の一態様の有機化合物である4,8Cz2Bfpm、8PSi-4CzBfpm、および8DBf-4CzBfpmのT準位は2.95eV以下2.75eV以上であることが分かった。一方、比較例である4,8mCzP2BfpmのT準位は、2.75eV以下であることが分かった。
【0611】
したがって、本発明の一態様の有機化合物は、高い三重項励起エネルギー準位(T準位)を持つため、青色領域の発光デバイスにホスト材料として使用した場合、ゲスト材料の材料選択の自由度を向上させることができる。
【実施例0612】
本実施例では、本発明の一態様である有機化合物を用いた発光デバイス5A、発光デバイス5B、および発光デバイス5Cと、比較用の有機化合物を用いた比較用の発光デバイス5Dを作製し、特性を測定した。
【0613】
発光デバイス5A乃至発光デバイス5Dに用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
【0614】
【化25】
【0615】
なお、各デバイスは、図38に示すように、ガラス基板900上に形成された第1の電極901上に、正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914および電子注入層915が順次積層され、電子注入層915上に第2の電極902が積層された構造を有する。
【0616】
<発光デバイス5Aの作製方法>
ガラス基板900上に透明電極として、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により70nmの膜厚で成膜して第1の電極901を形成した。なお、電極面積は4mm(2mm×2mm)とした。
【0617】
次に、基板上に発光デバイスを形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した。その後、1×10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った。その後、30℃以下まで自然冷却させた。
【0618】
次に、第1の電極901が形成された面が下方となるように、第1の電極901が形成された基板を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、第1の電極上に、N-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)と、分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)と、をPCBBiF:OCHD-003=1:0.03(重量比)となるように10nm共蒸着し、正孔注入層911を形成した。
【0619】
次に、正孔注入層911上に、PCBBiFを膜厚30nmとなるように蒸着し、続いて、9-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-3,9’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PSiCzCz)を膜厚5nmとなるように蒸着して、正孔輸送層912を形成した。
【0620】
次に、正孔輸送層912上に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、4,8-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8Cz2Bfpm)と、PSiCzCzと、(2-{3-[3-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾイミダゾール-1-イル-2-イリデン-κC2]フェノキシ-κC2}-9-(4-tert-ブチル-2-ピリジニル-κN)カルバゾール-2,1-ジイル-κC1)白金(II)(略称:PtON-TBBI)と、を4,8Cz2Bfpm:PSiCzCz:PtON-TBBI=0.45:0.45:0.10(重量比)で、膜厚35nmになるよう共蒸着し、発光層913を形成した。
【0621】
次に、発光層913上に、2-フェニル-4,6-ビス[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-1,3,5-トリアジン(略称:mSiTrz)を膜厚5nmになるよう蒸着し、続いて、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)を膜厚20nmとなるよう共蒸着して、電子輸送層914を形成した。
【0622】
次に、電子輸送層914上に、フッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmとなるように蒸着して、電子注入層915を形成した。
【0623】
次に、電子注入層上に、アルミニウム(Al)を膜厚200nmになるよう蒸着し、第2の電極を形成した。
【0624】
<発光デバイス5Bの作製方法>
続いて、発光デバイス5Bの作製方法を説明する。
【0625】
発光デバイス5Bは、発光層913の構成が発光デバイス5Aと異なる。つまり、発光デバイス5Bは、抵抗加熱を用いた蒸着法により、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8PSi-4CzBfpm)と、PSiCzCzと、PtON-TBBIと、を8PSi-4CzBfpm:PSiCzCz:PtON-TBBI=0.60:0.30:0.10(重量比)で、膜厚35nmになるよう共蒸着し、発光層913を形成した。
【0626】
なお、他の構成は発光デバイス5Aと同様にして作製した。
【0627】
<発光デバイス5Cの作製方法>
続いて、発光デバイス5Cの作製方法を説明する。
【0628】
発光デバイス5Cは、発光層913の構成が発光デバイス5Aと異なる。つまり、発光デバイス5Cは、抵抗加熱を用いた蒸着法により、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-(ジベンゾフラン-2-イル)-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8DBf-4CzBfpm)と、PSiCzCzと、PtON-TBBIと、を8DBf-4CzBfpm:PSiCzCz:PtON-TBBI=0.45:0.45:0.10(重量比)で、膜厚35nmになるよう共蒸着し、発光層913を形成した。
【0629】
なお、他の構成は発光デバイス5Aと同様にして作製した。
【0630】
<発光デバイス5Dの作製方法>
続いて、発光デバイス5Dの作製方法を説明する。
【0631】
発光デバイス5Dは、発光層913の構成が発光デバイス5Aと異なる。つまり、発光デバイス5Dは、抵抗加熱を用いた蒸着法により、9,9’-{6-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}ビス(9H-カルバゾール)(略称:SiTrzCz2)と、PSiCzCzと、PtON-TBBIと、をSiTrzCz2:PSiCzCz:PtON-TBBI=0.45:0.45:0.10(重量比)で、膜厚35nmになるよう共蒸着し、発光層913を形成した。
【0632】
なお、他の構成は発光デバイス5Aと同様にして作製した。
【0633】
上記発光デバイス5A乃至発光デバイス5Dの素子構造を以下の表にまとめる。なお、表中の5Xで示す発光層の構成は別途表に示した。
【0634】
【表2】
【0635】
【表3】
【0636】
<発光デバイス特性>
上記発光デバイスを、窒素雰囲気のグローブボックス内において、デバイスが大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、デバイスの特性について測定を行った。
【0637】
各発光デバイスの輝度-電流密度特性を図39に、輝度-電圧特性を図40に、電流効率-電流密度特性を図41に、電流密度-電圧特性を図42に、電力効率-電流密度特性を図43に、外部量子効率-電流密度特性を図44に、ブルーインデックス-電流密度特性を図45に、電界発光スペクトルを図46に示す。
【0638】
なお、ブルーインデックス(BI)とは、電流効率(cd/A)をさらにCIE(x,y)色度のy値で割った値であり、青色発光の発光特性を表す指標の一つである。青色発光は、色度y値が小さいほど色純度の高い発光となる傾向にある。色度y値が小さく色純度の高い青色発光を用いることで、ディスプレイにおいて広い色度範囲の青色を表現することが可能となり、ディスプレイにおいて白色を表現するために必要な青色の輝度が低下することから、ディスプレイの消費電力を低減する効果が得られる。そのため、青色純度の指標の一つとなる色度y値を考慮した電流効率であるBIが青色発光の効率を表す手段として用いられる場合があり、BIが高い発光デバイスほどディスプレイに用いられる青色発光デバイスとして効率が良好であるということができる。
【0639】
また、発光デバイスの輝度1000cd/mにおける主要な特性を下表に示す。なお、輝度、CIE色度、発光スペクトルの測定には分光放射計(トプコン社製、SR-UL1R)を用いた。また、外部量子効率は、分光放射計を用いて測定した輝度と発光スペクトルを用い、配光特性がランバーシアン型であると仮定し算出した。
【0640】
また、図46より、各発光デバイスにおけるピーク波長、および半値全幅FWHM(nm)を示した。
【0641】
【表4】
【0642】
図39乃至図46、および上記表より、発光デバイス5A乃至発光デバイス5Cは、良好な青色発光する発光デバイスであることが分かった。発光デバイス5B、発光デバイス5Cは半値全幅が40nm以下のシャープな発光スペクトルを得ることができた。したがって、発光デバイス5Bは、例えば、微小共振器構造(マイクロキャビティ)を構成するデバイスに用いた場合、光取り出しの波長を発光材料の発光スペクトルのピークに合わせることにより、高効率、かつ色純度の高い青色発光を呈するデバイスを提供することができる。
【0643】
<PLスペクトルの測定>
ここで、発光デバイス5A乃至発光デバイス5Cの発光層に用いた4,8Cz2Bfpm、8PSi-4CzBfpm、8DBf-4CzBfpm、およびPSiCzCzの各単膜のPLスペクトル(室温)を測定した。また、4,8Cz2Bfpm、8PSi-4CzBfpm、および8DBf-4CzBfpmと、PSiCzCzとを混合した混合膜のPLスペクトル(室温)を測定した。
【0644】
なお、室温(例えば290Kから300K程度(17℃から27℃)、好ましくは298K(25℃)付近)におけるフォトルミネッセンス(PL)スペクトルは、光励起された分子が一重項励起状態から基底状態に戻る際に放出される発光を観測しており、これは蛍光スペクトルにあたる。
【0645】
また、蛍光スペクトルの測定には蛍光光度計FP-8600DS(日本分光(株)製)を用いた。
【0646】
各混合膜のPLスペクトルの測定は、全て石英基板上に形成した膜厚50nmの薄膜状態で行った。なお、各混合膜の混合比は、下記表となるように共蒸着した。
【0647】
【表5】
【0648】
図47に、発光デバイス5Aに用いた4,8Cz2BfpmとPSiCzCzとの混合膜を、フォトルミネッセンス(PL)スペクトルの測定結果(室温)を示した。また、参考値として、4,8Cz2Bfpm単膜、およびPSiCzCz単膜のフォトルミネッセンス(PL)スペクトル測定結果(室温)を併記した。
【0649】
図47より、4,8Cz2BfpmとPSiCzCzとの混合膜の発光スペクトルは、4,8Cz2Bfpm単膜、およびPSiCzCz単膜のそれぞれの発光スペクトルと異なる、長波長にシフトした発光スペクトルを示すことが分かった。つまり、4,8Cz2BfpmとPSiCzCzとは、室温下で、励起錯体を形成する組み合わせであることが分かった。
【0650】
図48に、発光デバイス5Bに用いた8PSi-4CzBfpmとPSiCzCzとの混合膜を、フォトルミネッセンス(PL)スペクトルの測定結果(室温)を示した。また、参考値として8PSi-4CzBfpm単膜、およびPSiCzCz単膜のフォトルミネッセンス(PL)スペクトル測定結果(室温)を併記した。
【0651】
図48より、8PSi-4CzBfpmとPSiCzCzとの混合膜の発光スペクトルは、8PSi-4CzBfpm単膜、およびPSiCzCz単膜のそれぞれの発光スペクトルと異なる、長波長にシフトした発光スペクトルを示すことが分かった。つまり、8PSi-4CzBfpmとPSiCzCzとは、室温下で、励起錯体を形成する組み合わせであることが分かった。
【0652】
図49に、発光デバイス5Cに用いた8DBf-4CzBfpmとPSiCzCzとの混合膜を、フォトルミネッセンス(PL)スペクトルの測定結果(室温)を示した。また、参考値として8DBf-4CzBfpm単膜、およびPSiCzCz単膜のフォトルミネッセンス(PL)スペクトル測定結果(室温)を併記した。
【0653】
図49より、8DBf-4CzBfpmとPSiCzCzとの混合膜の発光スペクトルは、8DBf-4CzBfpm単膜、およびPSiCzCz単膜のそれぞれの発光スペクトルと異なる、長波長にシフトした発光スペクトルを示すことが分かった。つまり、8DBf-4CzBfpmとPSiCzCzとは、室温下で、励起錯体を形成する組み合わせであることが分かった。
【0654】
また、図50に、発光物質であるPtON-TBBIのジクロロメタン溶液中(0.010mmol/L)における吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す。
【0655】
上記結果より、発光デバイス5A、発光デバイス5B、および発光デバイス5Cの発光層において、PSiCzCzと、混合した4,8Cz2Bfpm、8PSi-4CzBfpm、または8DBf-4CzBfpmとは、励起錯体を形成する組み合わせである。図47乃至図49に示す励起錯体のフォトルミネッセンス(PL)スペクトルと、図50に示す発光物質(PtON-TBBI)の吸収スペクトルとは重なりを有しているため、励起錯体の励起エネルギーと、発光物質との励起エネルギーが近いことで発光デバイスの駆動電圧を低減することができる。
【0656】
<各準位の測定とΔEの算出>
また、ここで、PSiCzCzのHOMO準位、および4,8Cz2Bfpm、8PSi-4CzBfpm、8DBf-4CzBfpm、またはSiTrzCz2のLUMO準位を、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定で算出した。
【0657】
測定には電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。なお、測定に用いた各有機化合物の溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)を用いた。測定では、参照電極に対する作用電極の電位を適切な範囲で変化させて各々酸化ピーク電位、及び還元ピーク電位を得た。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC-3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。また、参照電極のレドックスポテンシャルが-4.94eVであることが見積もられているため、この数値と得られたピーク電位から、各有機化合物のHOMO準位及びLUMO準位を算出した。
【0658】
その結果、4,8Cz2BfpmのLUMO準位は-2.94eV、8PSi-4CzBfpmのLUMO準位は-2.87eV、8DBf-4CzBfpmのLUMO準位は-2.87eV、およびSiTrzCz2のLUMO準位は-2.98eV、であった。また、PSiCzCzのHOMO準位は-5.7eVであった。また、4,8Cz2Bfpm、8PSi-4CzBfpm、8DBf-4CzBfpm、またはSiTrzCz2のLUMO準位と、PSiCzCzのHOMO準位の差の絶対値(|ΔE|)を算出した。下記表に一覧で示す。
【0659】
【表6】
【0660】
第2のホスト材料のHOMO準位と、第1のホスト材料のLUMO準位との差が2.70eV以下では、励起錯体が形成した場合でも、励起錯体の発光スペクトルが青色のドーパントの吸収スペクトルと重畳しない場合がある。
【0661】
したがって、PSiCzCzなどの第2のホスト材料のHOMO準位と、第1のホスト材料である本発明の一態様である有機化合物のLUMO準位との差の絶対値が、2.75eV以上2.85eV以下、好ましくは2.78eV以上2.85eV以下であり、かつ、ホスト材料のT準位がPtON-TBBIなどのゲスト材料のT準位よりも高い発光デバイスの構成とすることで、励起錯体から発光物質へ効率よくエネルギー移動が生じるため、良好な青色を呈する発光デバイスを提供することができる。
【0662】
つまり、本発明の一態様である有機化合物を発光デバイスに用いることで、高効率のデバイスを提供することができることが確認できた。
【0663】
また、比較用の発光デバイス5Dよりも、発光デバイス5A、発光デバイス5B、および発光デバイス5Cは半値全幅が44nm以下のシャープな発光スペクトルを得ることができたのは、ホスト材料として用いた本発明の一態様である有機化合物(4,8Cz2Bfpm、8PSi-4CzBfpm、または8DBf-4CzBfpm)と、ゲスト材料として用いたPtON-TBBIとの間で分子間相互作用が小さいためである。これは、比較用のホスト材料であるSiTrzCz2のLUMO準位が低いことに起因する。つまり、PtON-TBBIのHOMO準位と、SiTrzCz2のLUMO準位との間でエネルギーの小さい励起錯体を形成してしまったことにより、発光スペクトルがブロード化したためである。
【0664】
したがって、本発明の一態様である有機化合物のLUMO準位が、-2.80eV以下-2.97eV以上、好ましくは-2.80eV以下-2.87eV以上となるような発光デバイスの構成とすることで、良好な青色を呈する発光デバイスを提供することができる。
【0665】
上記より、本発明の一態様である有機化合物を発光デバイスに用いることで、発光スペクトルを狭線化し、色純度の高い青色発光を得ることができる。色純度の高い青色発光は、広い範囲の青色を表現することが可能であり、青色を表現するための必要輝度が低下することから消費電力の低減効果が得ることができる。
【0666】
従って、本発明の一態様である有機化合物を用いることで良好な特性の発光デバイスを作製することが可能であることが分かった。
【実施例0667】
[合成例4]
本合成例では、構造式(103)で表される有機化合物である、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-(トリフェニレン-2-イル)-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8Tp-4CzBfpm)の合成方法について具体的に説明する。
【0668】
【化26】
【0669】
<ステップ1:8Tp-4CzBfpmの合成>
まず、200mL三口フラスコに2.0g(5.3mmol)の4-(9H-カルバゾール-9-イル)-8-クロロ-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンと、2.2g(8.0mmol)の2-トリフェニレンボロン酸、0.12g(0.32mmol)のジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン、3.4g(16mmol)のリン酸三カリウム、1.2g(16mmol)のtert-ブタノール(略称:tBuOH)を入れた。この混合物に、55mLのジエチレングリコールジメチルエーテル(略称:Diglyme)を加えた。この混合物を減圧しながら攪拌することで脱気した。この混合物に57mg(0.16mmol)の酢酸パラジウム(II)を加え、窒素気流下、120℃で11時間攪拌した。撹拌後、この混合物に水を加え、吸引濾過し、固体を回収した。次に、この固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン:ヘキサン=1:3、次いでトルエン)で精製した。得られた固体をトルエンで再結晶し、淡黄色固体を1.9g、収率62%で得た。得られた固体1.8gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。圧力3.7Pa、アルゴン流量15mL/minの条件で、300℃で加熱して行った。昇華精製後、淡黄色固体を1.6g、回収率90%で得た。ステップ1の合成スキームを下記(d-1)に示す。
【0670】
【化27】
【0671】
<有機化合物の特性>
上記ステップ1で得られた淡黄色固体の重水素化クロロホルム(略称:CDCl)溶液の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。また、核磁気共鳴分光法(H NMR)のチャートを図51に示す。この結果から、本合成例において、上述の構造式(103)で表される本発明の一態様である8Tp-4CzBfpmが得られたことがわかった。
【0672】
H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.43(td,J1=7.8Hz,J2=1.2Hz,2H),7.52(td,J1=6.9Hz,J2=1.2Hz,2H),7.67-7.75(m,4H),7.79(d,J1=8.4Hz,1H),7.88(d,J1=8.1Hz,2H),8.00(dd,J1=8.7Hz,J2=1.8Hz,1H),8.15-8.19(m,3H),8.67-8.82(m,6H),8.97(d,J1=1.8Hz,1H),9.32(s,1H).
【符号の説明】
【0673】
10:発光デバイス、100:表示装置、100A:表示装置、100B:表示装置、100C:表示装置、100D:表示装置、100E:表示装置、101:第1の電極、101W:第1の電極、102:第2の電極、103:有機化合物層、103a:有機化合物層、103B:有機化合物層、103b:有機化合物層、103Bf:有機化合物膜、103G:有機化合物層、103Gf:有機化合物膜、103R:有機化合物層、103Rf:有機化合物膜、104:共通層、106:電荷発生層、106a:電荷発生層、106b:電荷発生層、110:副画素、110B:副画素、110G:副画素、110Gw:幅、110R:副画素、110Rw:幅、110W:副画素、111:正孔注入層、112:正孔輸送層、112B:導電層、112R:導電層、113:発光層、113a:発光層、113b:発光層、113c:発光層、114:電子輸送層、115:電子注入層、118:ホスト材料、118_1:有機化合物、118_2:有機化合物、119:ゲスト材料、120:基板、122:樹脂層、124a:画素、124b:画素、125:無機絶縁層、125f:無機絶縁膜、126B:導電層、126R:導電層、127:絶縁層、127a:絶縁層、127f:絶縁膜、128:層、129B:導電層、129R:導電層、130:発光デバイス、130B:発光デバイス、130G:発光デバイス、130R:発光デバイス、131:保護層、132B:着色層、132G:着色層、132R:着色層、140:接続部、141:領域、142:接着層、143:平坦化膜、144:平坦化膜、151:導電層、151a:導電層、151B:導電層、151b:導電層、151C:導電層、151c:導電層、151f:導電膜、151G:導電層、151R:導電層、152:導電層、152a:導電層、152B:導電層、152b:導電層、152C:導電層、152c:導電層、152f:導電膜、152G:導電層、152R:導電層、153:絶縁層、155:共通電極、156:絶縁層、156B:絶縁層、156C:絶縁層、156f:絶縁膜、156G:絶縁層、156R:絶縁層、157:遮光層、158:犠牲層、158B:犠牲層、158Bf:犠牲膜、158G:犠牲層、158Gf:犠牲膜、158R:犠牲層、158Rf:犠牲膜、159B:マスク層、159Bf:マスク膜、159G:マスク層、159Gf:マスク膜、159R:マスク層、159Rf:マスク膜、166:導電層、171:絶縁層、172:導電層、173:絶縁層、174:絶縁層、175:絶縁層、176:プラグ、177:画素部、178:画素、178a:画素、178b:画素、179:導電層、180:有機樹脂層、181:凹部、181a:凹部、181b:凹部、181c:凹部、182:マイクロレンズ、190B:レジストマスク、190G:レジストマスク、190R:レジストマスク、191:レジストマスク、201:トランジスタ、204:接続部、205:トランジスタ、211:絶縁層、213:絶縁層、214:絶縁層、215:絶縁層、221:導電層、222a:導電層、222b:導電層、223:導電層、224B:導電層、224C:導電層、224G:導電層、224R:導電層、231:半導体層、240:容量、241:導電層、242:接続層、243:絶縁層、245:導電層、254:絶縁層、255:絶縁層、256:プラグ、261:絶縁層、271:プラグ、280:表示モジュール、281:表示部、282:回路部、283:画素回路部、283a:画素回路、284:画素部、284a:画素、285:端子部、286:配線部、290:FPC、291:基板、292:基板、301:基板、310:トランジスタ、311:導電層、312:低抵抗領域、313:絶縁層、314:絶縁層、315:素子分離層、317:遮光層、351:基板、352:基板、353:FPC、354:IC、355:配線、356:回路、700A:電子機器、700B:電子機器、721:筐体、723:装着部、727:イヤフォン部、750:イヤフォン、751:表示パネル、753:光学部材、756:表示領域、757:フレーム、758:鼻パッド、800A:電子機器、800B:電子機器、820:表示部、821:筐体、822:通信部、823:装着部、824:制御部、825:撮像部、827:イヤフォン部、832:レンズ、900:ガラス基板、901:第1の電極、902:第2の電極、911:正孔注入層、912:正孔輸送層、913:発光層、914:電子輸送層、915:電子注入層、6500:電子機器、6501:筐体、6502:表示部、6503:電源ボタン、6504:ボタン、6505:スピーカ、6506:マイク、6507:カメラ、6508:光源、6510:保護部材、6511:表示パネル、6512:光学部材、6513:タッチセンサパネル、6515:FPC、6516:IC、6517:プリント基板、6518:バッテリ、7000:表示部、7100:テレビジョン装置、7151:リモコン操作機、7171:筐体、7173:スタンド、7200:ノート型パーソナルコンピュータ、7211:筐体、7212:キーボード、7213:ポインティングデバイス、7214:外部接続ポート、7300:デジタルサイネージ、7301:筐体、7303:スピーカ、7311:情報端末機、7400:デジタルサイネージ、7401:柱、7411:情報端末機、9000:筐体、9001:表示部、9002:カメラ、9003:スピーカ、9005:操作キー、9006:接続端子、9007:センサ、9008:マイクロフォン、9050:アイコン、9051:情報、9052:情報、9053:情報、9054:情報、9055:ヒンジ、9171:携帯情報端末、9172:携帯情報端末、9173:タブレット端末、9200:携帯情報端末、9201:携帯情報端末
図1
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