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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009648
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】全固体リチウム電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20250109BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20250109BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20250109BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M4/58
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149669
(22)【出願日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】112125178
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519051920
【氏名又は名称】台湾中油股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CPC Corporation,Taiwan
【住所又は居所原語表記】No.2,Zuonan Rd.,Nanzi Dist.,Kaohsiung City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100175064
【弁理士】
【氏名又は名称】相澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】劉世安
(72)【発明者】
【氏名】廖譽凱
(72)【発明者】
【氏名】胡淑芬
(72)【発明者】
【氏名】莫誠康
(72)【発明者】
【氏名】劉如熹
(72)【発明者】
【氏名】黄瑞雄
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029BJ13
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029HJ01
5H029HJ12
5H029HJ14
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CB12
5H050FA02
5H050FA04
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA12
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高エネルギー密度及び低危険性を有し、優れた循環寿命を備える固体リチウム電池を提供する。
【解決手段】全固体リチウム電池であって、前記全固体リチウム電池の陽極が固体リチウム金属を含み、前記全固体リチウム電池の固体電解質がリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物を含み、前記陽極と前記固体電解質との接合界面領域には、少なくとも窒化リチウム及びリチウム合金を含むことを特徴とする、全固体リチウム電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体リチウム電池であって、前記全固体リチウム電池の陽極が固体リチウム金属を含み、前記全固体リチウム電池の固体電解質がリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物を含み、前記陽極と前記固体電解質との接合界面領域には、少なくとも窒化リチウム及びリチウム合金を含むことを特徴とする、全固体リチウム電池。
【請求項2】
前記リチウム合金がリチウムガリウム合金であることを特徴とする請求項1に記載の全固体リチウム電池。
【請求項3】
前記全固体リチウム電池の陰極がリン酸鉄リチウムまたはその酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の全固体リチウム電池。
【請求項4】
全固体リチウム電池を製造する方法であって、
前記全固体リチウム電池の陽極の材料としてのリチウム金属と窒化金属とを混合させ加熱して、溶融状態のリチウム金属窒化物合金を形成する第一工程と、
前記全固体リチウム電池の固体電解質の材料としてのリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物を、前記溶融状態のリチウム金属窒化物合金の表面上に設置し、インサイチュ反応を発生させる第二工程と、
前記溶融状態のリチウム金属窒化物合金の温度を降下させることによって、前記溶融状態のリチウム金属窒化物合金と前記リチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物との接合界面領域に窒化リチウム及びリチウム合金が含有され、前記全固体リチウム電池の前記陽極と前記固体電解質との接合界面領域には、少なくとも窒化リチウム及びリチウム合金を含む第三工程と、を備えることを特徴とする、全固体リチウム電池の製造方法。
【請求項5】
前記第一工程において、前記窒化金属が窒化ガリウムであることを特徴とする請求項4に記載の全固体リチウム電池の製造方法。
【請求項6】
前記第一工程において、前記窒化金属と前記リチウム金属との重量比率が、0.01:1~0.03:1であることを特徴とする請求項4に記載の全固体リチウム電池の製造方法。
【請求項7】
前記第一工程において、加熱の温度が、350~500℃であることを特徴とする請求項4に記載の全固体リチウム電池の製造方法。
【請求項8】
前記第一工程において、加熱の温度が、400~450℃であることを特徴とする請求項7に記載の全固体リチウム電池の製造方法。
【請求項9】
前記第二工程において、インサイチュ反応が、10~20分で行われることを特徴とする請求項7に記載の全固体リチウム電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体リチウム電池及びその製造方法に関し、特に、固体リチウム金属とリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物とを含み、固体リチウム金属とリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物との接合界面領域には、窒化リチウム及びリチウム合金を含む、全固体リチウム電池及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の発展は自動車産業の主流のトレンドとなっており、電気自動車は液体リチウム電池をエネルギー源として使用している。しかしながら、従来の液体リチウム電池はエネルギー密度が低く、高温環境での発火や爆発のリスクが存在する。
【0003】
従来の液体リチウム電池の低エネルギー密度と安全性のリスクを克服するため、現在は全固体リチウム電池の開発が進んでいる。全固体リチウム電池は高エネルギー密度であり、発火や爆発のリスクもないが、循環寿命が短いという問題がある。循環寿命とは、電池の電量が100%から放電して0%になり、再び0%から100%に充電されるまでの総回数を指す。電池の循環寿命が短いということは、電池の充放電が少ない回数しか行えないことを意味する。そのため、全固体リチウム電池の循環寿命を向上させる製造方法を提供することが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、本発明の目的は、固体リチウム電池の循環寿命が短いという問題を解決できる固体リチウム電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が従来の技術問題を解決するために用いる技術手段は、全固体リチウム電池であって、前記全固体リチウム電池の陽極が固体リチウム金属を含み、前記全固体リチウム電池の固体電解質がリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物を含み、前記陽極と前記固体電解質との接合界面領域には、少なくとも窒化リチウム及びリチウム合金を含むことを特徴とする、全固体リチウム電池を提供する。
【0006】
本発明の1つの実施例では、前記リチウム合金がリチウムガリウム合金であることを特徴とする全固体リチウム電池を提供する。
【0007】
本発明の1つの実施例では、前記全固体リチウム電池の陰極がリン酸鉄リチウムまたはその酸化物であることを特徴とする全固体リチウム電池を提供する。
【0008】
また、本発明が従来の技術問題を解決するために用いるもう1つの技術手段は、全固体リチウム電池を製造する方法であって、前記全固体リチウム電池の陽極の材料としてのリチウム金属と窒化金属とを混合させ加熱して、溶融状態のリチウム金属窒化物合金を形成する第一工程と、前記全固体リチウム電池の固体電解質の材料としてのリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物を、前記溶融状態のリチウム金属窒化物合金の表面上に設置し、インサイチュ反応を発生させる第二工程と、前記溶融状態のリチウム金属窒化物合金の温度を降下させることによって、前記溶融状態のリチウム金属窒化物合金と前記リチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物との接合界面領域に窒化リチウム及びリチウム合金が含有され、前記全固体リチウム電池の前記陽極と前記固体電解質との接合界面領域には、少なくとも窒化リチウム及びリチウム合金を含む第三工程と、を備えることを特徴とする、固体リチウム電池の製造方法を提供する。
【0009】
これにより、前記溶融状態のリチウム金属窒化物合金(以下、Li-Ga-Nで表示される)とリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物(以下、LLZTOで表示される)とを、固体形態に形成するように温度を降下させ、固体形態のLi-Ga-NとLLZTOとが緊密に接合される物理形態に形成されることで、固体電解質層及び陽極層から構成されるLi-Ga-N/LLZTO材料を獲得し、更に、陰極層と結合させて、全固体リチウム電池を獲得する。
【0010】
本発明の1つの実施例では、前記第一工程において、前記窒化金属と前記リチウム金属との重量比率が、0.01:1~0.03:1であることを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の1つの実施例では、前記第一工程において、加熱の温度が、400~450℃であることを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の1つの実施例では、前記第二工程において、インサイチュ反応が、10~20分で行われることを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に用いる技術手段に係る全固体リチウム電池は、高エネルギー密度及び低危険性を有し、優れる循環寿命を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】は本発明に係る1つの実施例における全固体リチウム電池の電気化学インピーダンス分光法の結果を示す図である。
図2】は本発明に係る1つの実施例における全固体リチウム電池の電圧の傾向を示す図である。
図3】は本発明に係る1つの実施例における全固体リチウム電池の二次イオン質量分析の結果を示す図である。
図4】は本発明に係る1つの実施例における全固体リチウム電池の電気化学循環を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図4により、本発明の実施形態について説明するが、その説明は本発明の実施形態を制限するものではなく、本発明の1つの実施例である。
【0016】
本発明に係る1つの実施例の全固体リチウム電池によれば、その特徴として、前記全固体リチウム電池の陽極が固体リチウム金属を含み、前記全固体リチウム電池の固体電解質がリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物を含み、前記陽極と前記固体電解質との接合界面領域には、少なくとも窒化リチウム及びリチウム合金を含む。
【0017】
本発明に係る1つの実施例の全固体リチウム電池において、前記リチウム合金がリチウムガリウム合金である。
【0018】
本発明に係る1つの実施例の全固体リチウム電池において、前記全固体リチウム電池の陰極がリン酸鉄リチウムまたはその酸化物である。
【0019】
発明に係る1つの実施例の全固体リチウム電池の製造方法によれば、その特徴として、前記全固体リチウム電池の陽極の材料としてのリチウム金属と窒化金属とを混合させ加熱して、溶融状態のリチウム金属窒化物合金を形成する第一工程と、前記全固体リチウム電池の固体電解質の材料としてのリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物を、前記溶融状態のリチウム金属窒化物合金の表面上に設置し、インサイチュ反応を発生させる第二工程と、前記溶融状態のリチウム金属窒化物合金の温度を降下させることによって、前記溶融状態のリチウム金属窒化物合金と前記リチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物との接合界面領域に窒化リチウム及びリチウム合金が含有され、前記全固体リチウム電池の前記陽極と前記固体電解質との接合界面領域には、少なくとも窒化リチウム及びリチウム合金を含む第三工程と、を備える。
【0020】
本発明に係る1つの実施例の全固体リチウム電池の製造方法において、前記第一工程における前記窒化金属が窒化ガリウムである。
【0021】
本発明に係る1つの実施例の全固体リチウム電池の製造方法において、前記第一工程における前記窒化金属と前記リチウム金属との重量比率が、0.01:1~0.03:1である。
【0022】
本発明に係る1つの実施例の全固体リチウム電池の製造方法において、前記第一工程における加熱の温度が、350~500℃である。
【0023】
本発明に係る1つの実施例の全固体リチウム電池の製造方法において、前記第一工程における加熱の温度が、400~450℃である。
【0024】
本発明に係る1つの実施例の全固体リチウム電池の製造方法において、前記第二工程におけるインサイチュ反応が、10~20分で行われる。
【0025】
本実施例において、先ず、窒化ガリウム0.02gとリチウム金属1gとを測りとる。即ち、窒化ガリウムとリチウム金属との重量比率が、0.02:1であり、窒化ガリウムとリチウム金属との重量比率が、0.01:1~0.03:1の範囲内で調整することが好ましい。また、製造の都合により、窒化ガリウムとリチウム金属との重量比率を任意で調整することもできる。前述の窒化ガリウムとリチウム金属とをステンレスプレートに置き、そのステンレスプレートを窒素雰囲気が充満されるオーブンに置いて450℃までに加熱する。オーブンに窒素雰囲気が充満されることで、窒化ガリウムの窒素原子の離脱を避けることができる。
【0026】
窒化ガリウムとリチウム金属との加熱の温度が、350~500℃の範囲内にすることができ、400~450℃の範囲内範囲内にすることが好ましい。これにより、窒化ガリウムとリチウム金属とが、溶融状態の窒化ガリウム及び溶融状態のリチウム金属に形成するように加熱される。
【0027】
次に、溶融状態の窒化ガリウムと溶融状態のリチウム金属とを均一に混合させることで溶融状態のリチウム/窒化ガリウム合金を形成する。
【0028】
溶融状態のリチウム/窒化ガリウム合金が、そのまま後続の全固体リチウム電池の製造工程に使用でき、又は、保存のため、溶融状態のリチウム/窒化ガリウム合金を室温になるように温度を下げて固体状態のリチウム/窒化ガリウム合金を形成し、使用する際に、450℃に再加熱して溶融状態のリチウム/窒化ガリウム合金を形成することもできる。
【0029】
この後、リチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物を提供する。本実施例において、LLZTOは、以下の方法で製造する。まず、水酸化リチウム、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタルを用意し、その前駆体においての重量比率(g)が6.00:32.99:7.27:3.73である。リチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物において、酸化リチウム、酸化ランタン、酸化ジルコニウム及び酸化タンタルが、原子モル比で提供され、リチウム:ランタン:ジルコニウム:タンタル=7.425:3:1.75:0.25である。
【0030】
次に、前述の酸化リチウム、酸化ランタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタルを、ボールミル(Retsch. PM100)の中に置き、濃度99.99%のイソプロパノール100mlを前記ボールミルの缶に加え、300rpm/minの回転数でボールミルを12時間行い前述の材料を均一に混合させ懸濁液になる。
【0031】
最後に、前述の懸濁液を前記ボールミルから取り出し、酸化アルミニウムの坩堝内に70℃で12時間の加熱乾燥を行い、さらに900℃で12時間の焼結を行うことで、立方晶のLLZTOを50g製造し、その分子式は、Li6.75LaZr1.75Ta0.2512である。
【0032】
入手された立方晶のLLZTOを前記ボールミルの中に入れて、300rpm/minの回転数でボールミルを12時間行うことで、LLZTOの粉を製造する。
【0033】
前記LLZTOの粉を、直径12mmの錠形状の金型に充填し、前記錠形状の金型に対して、20tの1min継続の圧力を与えて、型離れの後、直径12mm且つ厚さ3mmのLLZTOの原加工錠を獲得する。
【0034】
獲得された原加工錠を酸化アルミニウムの坩堝内に置き、原加工錠の2倍重量のLLZTOの粉で原加工錠の表面を覆い、該当原加工錠が置かれる坩堝に蓋を載せ、この坩堝をもう1つの大坩堝に置き、蓋を載せる。大坩堝を900℃に加熱し、原加工錠を900℃の環境で4時間の焼結反応を行ってから、さらに1100℃に加熱し、原加工錠を1100℃の環境で12時間の焼結反応を行うことで、LLZTOの固体形態の電解質錠を獲得する。
【0035】
前記LLZTOの固体形態の電解質錠を、加熱されて溶融状態になるリチウム/窒化ガリウム合金の表面上に置け、450℃の環境で、15minのインサイチュ反応を行う。
【0036】
インサイチュ反応の時間は、10~20minの範囲内ができ、13~17minの範囲内が好ましい。
【0037】
インサイチュ反応の温度、即ち、溶融状態のリチウム/窒化ガリウム合金は、350~500℃の範囲内ができ、400~450℃の範囲内が好ましい。
【0038】
上述の条件でインサイチュ反応を行い、リチウム/窒化ガリウム合金(以下、Li-Ga-Nで表示される)とLLZTOの固体形態の電解質錠との間に接合界面が形成される。即ち、Li-Ga-N合金がリチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物の固体形態の電解質錠の表面に陽極層が形成される。
【0039】
最後に、溶融状態のLi-Ga-N合金の温度を下げて固体形態のLi-Ga-N合金を形成し、固体形態のLi-Ga-NとLLZTOとが緊密に接合される物理形態に形成し、これによって、固体形態の電解質層及び陽極層からなるLi-Ga-N/LLZTO材料を獲得し、更に、陰極層と結合して全固体リチウム電池になる。
【0040】
本実施例に係るLi-Ga-N/LLZTO材料は、表面が、溶融状態のLiとGaNを加熱し分解してLiNとLi-Ga合金を形成し、両者がLi-Ga-NとLLZTOとの間の界面安定性を維持でき、リチウム金属の樹枝状晶の形成(即ち、リチウム金属のデンドライトの析出)を抑える作用を有する。これによって、リチウム電池中の樹枝状晶の形成による低安全性や短循環寿命、作動不良などのリスクが避けられる。
【0041】
[全固体リチウム電池の電気化学インピーダンス分光法]
【0042】
まず、既存のリチウム/リチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物/リチウムの全固体対称(即ち、陰極にも陽極にもリチウム金属が含まれる)のリチウム電池(以下、Li/LLZTO/Li電池で表示される)を製造し、本実施例のLi-Ga-N/LLZTO材料を利用して異なるリチウム-窒化ガリウムのドープ比率を有するリチウム-窒化ガリウム//リチウムランタンジルコニウムタンタル酸化物/リチウム-窒化ガリウムの全固体対称(即ち、陰極にも陽極にもリチウム-窒化ガリウム材料が含まれるが含まれる)のリチウム電池(以下、Li-Ga-N/LLZTO/Li-Ga-N電池で表示される)を製造する。また、この分析において、Li/LLZTO/Li電池が対照組とされ、1wt%のLi-Ga-N/LLZTO/Li-Ga-N電池が実験組1とされ、3wt%のLi-Ga-N/LLZTO/Li-Ga-N電池が実験組2とされ、5wt%のLi-Ga-N/LLZTO/Li-Ga-N電池が実験組3とされ、7wt%のLi-Ga-N/LLZTO/Li-Ga-N電池が実験組4とされる。
【0043】
次に、電気化学インピーダンス分光法(Electrochemical impedance spectroscopy,EIS)分析計PGSTAT30(Autolab社製)を使用して、EIS分析計の陰陽極でそれぞれ対照組及び実験組1~4の電池の陰陽極に接続し交流インピーダンステストを行う。EIS分析計の交流電周波数範囲は1M~0.1Hzに設定し、即ち、分析の周波数は1M~0.1Hzに設定する。これによって、対照組及び実験組1~3の電気化学インピーダンス分光法について分析を行い、その界面のインピーダンスの分析結果を図1と表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
図1及び表1に示すように、実験組1は、1番低い21(ohm cm)界面インピーダンスを備え、一方、対照組の界面インピーダンスは589(ohm cm)であり、即ち、実験組1の界面インピーダンスが対照組の1/28である。また、実験組2~4も、従来の固体電池より遥かに低い界面インピーダンスを備えるので、異なる窒化ガリウムがインピーダンス降下の効果を有することが証明される。
【0046】
固体電池の界面インピーダンスが高ければ高いほど、固体電解質と電極界面との間に十分な接触が取り辛くなるので、固体電池の充電及び放電の時のエネルギー損失が増加し、高速の充電及び放電が実現し難い。上述のテストによれば、本実施例に係る全固体リチウム電池は、従来の全固体電池と比べて、より良いエネルギー伝送効率を有し高速の充電及び放電が実現できる。
【0047】
[全固体リチウム電池の電圧傾向テスト]
【0048】
このテストにおいて、充電放電測定機BAT-750B(AcuTech社製)を使用して固体電池の陰陽極を接続して、正負定電流0.1mA/cmで前述のLi-Ga-N/LLZTO/Li-Ga-N電池の電圧傾向をテストし、1サイクルの正負定電流の循環を1時間に設定し、1000時間の定電流循環を継続行うことで、この間のLi-Ga-N/LLZTO/Li-Ga-N電池の電圧傾向をテストする。テストの結果が図2に示される。
【0049】
図2に示すように、1000時間のテストにおいて、Li-Ga-N/LLZTO/Li-Ga-N電池の電圧は、主に、固定の範囲に維持する。上述の結果によれば、Li-Ga-N/LLZTO/Li-Ga-N電池が1000時間の定電流循環を行った後も、Li-Ga-N/LLZTO/Li-Ga-N電池がショートになれずに電圧が一定に維持する。
【0050】
[全固体リチウム電池の充放電循環テスト]
【0051】
このテストにおいて、本実施例に係るLi-Ga-N/LLZTO材料とリン酸鉄リチウム(Lithium iron phosphate,LFP)陰極とを組立てLi-Ga-N/LLZTO/LFP電池を製造する。Li-Ga-N/LLZTO/LFP電池を充電放電測定機BAT-750B(AcuTech社製)に接続させ、室温の環境においてレート0・1Cで充放電循環を行う。このテストの結果が図3図4に示される。
【0052】
図3図4に示すように、Li-Ga-N/LLZTO/LFP電池は、初回の充放電循環テストを行う際に、その放電電容量が150mAh/gであり(図3)、クーロン効率、即ち、電池の放電容量と充電容量のパーセンテージが96.8%であり(図4)、Li-Ga-N/LLZTO/LFP電池は、100サイクルの充放電循環の後、その放電電容量が139mAh/gであり(図4)、クーロン効率が91.4%である(図4)。上述のテストにより、本実施例に係る全固体リチウム電池は、100サイクルの充放電循環の後、その放電電容量やクーロン効率が、初回放電のときに近似する放電電容量やクーロン効率を維持できる。
【0053】
上述のように、本発明に係る全固体リチウム電池は、陽極であるLi-Ga-Nと固体電解質であるLLZTOとの間の緊密接触界面によって、界面の安定性を向上でき、全固体リチウム電池の循環寿命が向上される。また、前述の分析やテストから、本発明に係る全固体リチウム電池は、低界面インピーダンスを有し、従来の全固体電池と比べて、より良いエネルギー伝送効率を有し高速の充電及び放電が実現できる。また、本発明に係る全固体リチウム電池は、1000時間の定電流循環を行った後も、ショートになれずに電圧が一定に維持する。本発明に係る全固体リチウム電池は、LiN及びLiGa合金を有し、両者がLi-Ga-NとLLZTOとの間の界面安定性を維持でき、リチウム金属の樹枝状晶の形成を抑える作用を有する。なお、本発明に係る全固体リチウム電池は、100サイクルの充放電循環の後、その放電電容量やクーロン効率が、初回放電のときに近似する放電電容量やクーロン効率が維持できる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4