(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096595
(43)【公開日】2025-06-26
(54)【発明の名称】発光装置および発光装置形成基板
(51)【国際特許分類】
H10H 20/825 20250101AFI20250619BHJP
H10H 20/813 20250101ALI20250619BHJP
H10H 20/814 20250101ALI20250619BHJP
H10H 20/815 20250101ALI20250619BHJP
H10H 20/831 20250101ALI20250619BHJP
H10H 29/30 20250101ALI20250619BHJP
【FI】
H10H20/825
H10H20/813
H10H20/814
H10H20/815
H10H20/831
H10H29/30
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2025067434
(22)【出願日】2025-04-16
(62)【分割の表示】P 2023552709の分割
【原出願日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2021164232
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】青木 逸
(72)【発明者】
【氏名】西村 眞澄
(72)【発明者】
【氏名】金城 拓海
(57)【要約】
【課題】非晶質ガラス基板などの大面積基板上に形成された窒化ガリウム膜を含み、光取り出し効率を向上した発光装置を提供すること。
【解決手段】発光装置は、第1の方向および第1の方向と交差する第2の方向にマトリクス状に配置された複数の画素を含み、前記複数の画素の各々は、非晶質基板と、非晶質基板の上の半透過反射層と、半透過反射層の上の第1の絶縁性配向層と、第1の絶縁性配向層の上の第1の半導体層と、第1の半導体層の上の発光層と、発光層の上の第2の半導体層と、第2の半導体層の上の電極層と、を含み、第1の半導体層、発光層、および第2の半導体層の各々は、窒化ガリウムを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質基板の上において、第1の方向および前記第1の方向と交差する第2の方向にマトリクス状に配置された複数の画素を含み、
前記複数の画素の各々は、
前記非晶質基板の上の半透過反射層と、
前記半透過反射層の上の第1の絶縁性配向層と、
前記第1の絶縁性配向層の上の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上の発光層と、
前記発光層の上の第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の上の電極層と、を含み、
前記第1の絶縁性配向層は、六方最密構造、面心立方構造、または六方最密構造もしくは面心立方構造に準ずる構造を有し、
前記第1の半導体層、前記発光層、および前記第2の半導体層の各々は、窒化ガリウムを含む、発光装置。
【請求項2】
非晶質基板の上において、第1の方向および前記第1の方向と交差する第2の方向にマトリクス状に配置された複数の画素を含み、
前記複数の画素の各々は、
前記非晶質基板の上の第1の絶縁性配向層と、
前記第1の絶縁性配向層の上の半透過反射層と、
前記半透過反射層の上の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上の発光層と、
前記発光層の上の第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の上の電極層と、を含み、
前記第1の絶縁性配向層は、六方最密構造、面心立方構造、または六方最密構造もしくは面心立方構造に準ずる構造を有し、
前記第1の半導体層、前記発光層、および前記第2の半導体層の各々は、窒化ガリウムを含む、発光装置。
【請求項3】
前記複数の画素の各々は、さらに、前記半透過反射層と前記第1の半導体層との間に第2の絶縁性配向層を含み、
前記第2の絶縁性指向層は、六方最密構造、面心立方構造、または六方最密構造もしくは面心立方構造に準ずる構造を有する、請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2の絶縁性配向層の膜厚は、前記第1の絶縁性配向層の膜厚よりも大きい、請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
非晶質基板の上において、第1の方向および前記第1の方向と交差する第2の方向にマトリクス状に配置された複数の画素を含み、
前記複数の画素の各々は、
前記非晶質基板の上の第1の絶縁性配向層と、
前記第1の絶縁性配向層の上の電極層と、
前記電極層の上の第1の半導体層と、
前記第1の半導体層の上の発光層と、
前記発光層の上の第2の半導体層と、
前記第2の半導体層の上の半透過反射層と、を含み、
前記第1の絶縁性配向層は、六方最密構造、面心立方構造、または六方最密構造もしくは面心立方構造に準ずる構造を有し、
前記第1の半導体層、前記発光層、および前記第2の半導体層の各々は、窒化ガリウムを含む、発光装置。
【請求項6】
前記複数の画素の各々は、さらに、前記半透過反射層の上に絶縁層を含む、請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記複数の画素の各々は、さらに、前記第1の半導体層と前記発光層との間に光学距離調整層を含み、
前記光学距離調整層は、窒化ガリウムを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1の絶縁性配向層は、窒化アルミニウムおよび酸化アルミニウムから選ばれた少なくとも1つを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記半透過反射層は、銀およびマグネシウムから選ばれた少なくとも1つを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記非晶質基板は、非晶質ガラス基板である、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置を複数含み、
前記非晶質基板は、前記複数の発光装置で共通する1つの基板である、発光装置形成基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、窒化ガリウムを含む発光装置に関する。また、本発明の一実施形態は、窒化ガリウムを含む発光装置が複数形成された発光装置形成基板に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)は、バンドギャップの大きい直接遷移半導体という特徴を有する。窒化ガリウムの特徴を利用し、窒化ガリウム膜を用いた発光ダイオード(LED)が既に実用化されている。LEDの窒化ガリウム膜は、一般的に、サファイア基板上に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)またはHVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)を用いて800℃~1000℃という高温で成膜されている。
【0003】
ところで、近年、次世代表示装置(または、次世代発光装置)として、回路基板の画素内に微小なLEDチップを実装した、いわゆるマイクロLED表示装置またはミニLED表示装置の開発が進められている。マイクロLED表示装置またはミニLED表示装置は、高効率、高輝度、および高信頼性を有する。このようなマイクロLED表示装置またはミニLED表示装置は、酸化物半導体または低温ポリシリコンなどを用いた薄膜トランジスタが形成されたバックプレーンに、LEDチップが転写されることによって製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、LEDチップの転写によるマイクロLED表示装置の製造方法は、製造コストが高く、安価にマイクロLED表示装置を製造することが難しい。一方、非晶質ガラス基板のような大面積基板上に、LEDを形成することができれば、製造コストを下げることができる。しかしながら、上述したように、窒化ガリウム膜はサファイア基板上に高温で成膜されるため、非晶質ガラス基板上に直接窒化ガリウム膜を形成することは難しい。
【0006】
また、非晶質ガラス基板上に直接窒化ガリウム膜を形成された場合であっても、窒化ガリウムは高屈折率材料であるため、光取り出し効率の向上が求められていた。
【0007】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、非晶質ガラス基板などの大面積基板上に形成された窒化ガリウム膜を含み、光取り出し効率が向上された発光装置を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一実施形態は、窒化ガリウム膜を含み、光取り出し効率が向上された発光装置が複数形成された発光装置形成基板を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る発光装置は、第1の方向および第1の方向と交差する第2の方向にマトリクス状に配置された複数の画素を含み、前記複数の画素の各々は、非晶質基板と、非晶質基板の上の半透過反射層と、半透過反射層の上の第1の絶縁性配向層と、第1の絶縁性配向層の上の第1の半導体層と、第1の半導体層の上の発光層と、発光層の上の第2の半導体層と、第2の半導体層の上の電極層と、を含み、第1の半導体層、発光層、および第2の半導体層の各々は、窒化ガリウムを含む。
【0009】
本発明の一実施形態に係る発光装置は、第1の方向および第1の方向と交差する第2の方向にマトリクス状に配置された複数の画素を含み、複数の画素の各々は、非晶質基板と、非晶質基板の上の第1の絶縁性配向層と、第1の絶縁性配向層の上の半透過反射層と、半透過反射層の上の第1の半導体層と、第1の半導体層の上の発光層と、発光層の上の第2の半導体層と、第2の半導体層の上の電極層と、を含み、第1の半導体層、発光層、および第2の半導体層の各々は、窒化ガリウムを含む。
【0010】
本発明の一実施形態に係る発光装置は、第1の方向および第1の方向と交差する第2の方向にマトリクス状に配置された複数の画素を含み、複数の画素の各々は、非晶質基板と、非晶質基板の上の第1の絶縁性配向層と、第1の絶縁性配向層の上の電極層と、電極層の上の第1の半導体層と、第1の半導体層の上の発光層と、発光層の上の第2の半導体層と、第2の半導体層の上の半透過反射層と、を含み、第1の半導体層、発光層、および第2の半導体層の各々は、窒化ガリウムを含む。
【0011】
本発明の一実施形態に係る発光装置形成基板は、上記発光装置を複数含み、非晶質基板は、複数の発光装置で共通する1つの基板である、
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発光装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る発光装置の画素の構成を示す模式的な断面図である。
【
図4A】本発明の一実施形態に係る発光装置の画素の構成を示す模式的な断面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態に係る発光装置の画素の構成を示す模式的な断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る発光装置の画素の構成を示す模式的な断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る発光装置の画素の構成を示す模式的な断面図である。
【
図10】
図3に示す領域のマイクロキャビティ構造において、色度(色度座標のy座標)の変化に対する電流効率を示すグラフである。
【
図11】
図5に示す領域のマイクロキャビティ構造において、色度(色度座標のy座標)の変化に対する電流効率を示すグラフである。
【
図12】
図7に示す領域のマイクロキャビティ構造において、色度(色度座標のy座標)の変化に対する電流効率を示すグラフである。
【
図13】マイクロキャビティ構造を有しない比較例の領域を示す模式的な断面図である。
【
図14】
図13に示す比較例の領域の構造において、色度(色度座標のy座標)の変化に対する電流効率を示すグラフである。
【
図15】本発明の一実施形態に係る発光装置形成基板の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施形態はあくまで一例にすぎず、当業者が、発明の主旨を保ちつつ適宜変更することによって容易に想到し得るものについても、当然に本発明の範囲に含まれる。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、または形状などが模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状などはあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0014】
本明細書において「αはA、BまたはCを含む」、「αはA、BおよびCのいずれかを含む」、「αはA、BおよびCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0015】
本明細書において、説明の便宜上、「上」または「上方」もしくは「下」または「下方」という語句を用いて説明するが、原則として、構造物が形成される基板を基準とし、基板から構造物に向かう方向を「上」または「上方」とする。逆に、構造物から基板に向かう方向を「下」または「下方」とする。したがって、基板上の構造物という表現において、基板と向き合う方向の構造物の面が構造物の下面となり、その反対側の面が構造物の上面となる。また、基板上の構造物という表現においては、基板と構造物との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と構造物との間に他の部材が配置されていてもよい。さらに、「上」または「上方」もしくは「下」または「下方」の語句は、複数の層が積層された構造における積層順を意味するものであり、平面視において重畳する位置関係になくてもよい。
【0016】
本明細書において、各構成に付記される「第1」、「第2」、または「第3」などの文字は、各構成を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限り、それ以上の意味を有さない。
【0017】
本明細書および図面において、同一または類似する複数の構成を総じて表記する際には同一の符号を用い、これらの複数の構成のそれぞれを区別して表記する際には、大文字のアルファベットを添えて表記する場合がある。また、1つの構成中のある部分を区別して表記する際には、ハイフンと小文字のアルファベットを用いる場合がある。
【0018】
以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0019】
<第1実施形態>
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る発光装置100の構成について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る発光装置100の構成を示す概略図である。発光装置100は、非晶質基板110上に画素部100Pおよび端子部100Tが形成されている。画素部100Pは非晶質基板110の中央部に形成され、端子部100Tは非晶質基板110の端部に形成されている。画素部100Pは、第1の方向および第1の方向と直交する(交差する)第2の方向に配置された複数の画素100-pxを含む。詳細は後述するが、複数の画素100-pxの各々には発光ダイオード(LED)が非晶質基板110上に形成されている。端子部100Tは、複数の端子100-tを含む。複数の端子100-tの各々には、電源供給線が接続され、画素100-px内のLEDに電圧を印加する(電流を供給する)ことができる。なお、詳細は図示しないが、画素100-pxに薄膜トランジスタを設け、薄膜トランジスタによってLEDの発光を制御することもできる。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に係る発光装置100の画素100-pxの構成を示す模式的な断面図である。また、
図3は、
図2の領域300を示す模式的な断面図である。
図2に示すように、画素100-pxは、非晶質基板110、半透過反射層120、絶縁性配向層130、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、第1の電極層170、および第2の電極層180を含む。すなわち、画素100-pxには、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、第1の電極層170、および第2の電極層180を含むLEDが設けられている。画素100-pxに含まれるLEDは、発光層150の一方の面側に第1の電極層170および第2の電極層180が設けられた、いわゆる水平電極構造を有する。画素100-pxでは、発光層150から出射された光は、非晶質基板110を透過して取り出される。
【0022】
半透過反射層120は、非晶質基板110上に設けられている。半透過反射層120は、複数の画素100-pxに共通して設けられていてもよい。
【0023】
絶縁性配向層130は、半透過反射層120上に設けられている。絶縁性配向層130は、複数の画素100-pxに共通して設けられていてもよい。
【0024】
第1の半導体層140、発光層150、および第2の半導体層160は、この順に、絶縁性配向層130上に設けられている。第1の半導体層140は、複数の画素100-pxに共通して設けられていてもよい。発光層150および第2の半導体層160の各々は、画素100-px内に島状に設けられている。すなわち、第1の半導体層140は、発光層150および第2の半導体層160の各々によって覆われない領域を含む。
【0025】
第1の電極層170は、第1の半導体層140上に設けられている。具体的には、第1の電極層170は、発光層150および第2の半導体層160の各々によって覆われない領域に設けられている。第2の電極層180は、第2の半導体層160上に設けられている。第1の電極層170および第2の電極層180の各々は、画素100-px内に島状に設けられている。すなわち、第1の電極層170と第2の電極層180とは、電気的に分離されている。
【0026】
図示しないが、発光層150および第2の半導体層160を覆うように、第1の半導体層140、発光層150、および第2の半導体層160上に絶縁層が設けられてもよい。この場合、絶縁層には開口部が設けられる。第1の電極層170は、第1の半導体層140が露出された絶縁層の開口部を覆うように設けられ、第2の電極層180は、第2の半導体層160が露出された絶縁層の開口部を覆うように設けられる。また、この場合、第1の電極層170および第2の電極層180の少なくとも一方が、画素100-px内に島状に設けられていればよい。第1の電極層170および第2の電極層180の他方は、画素100-px内に島状に設けられていてもよく、第1の方向または第2の方向に延在し、第1の方向または第2の方向に配列された複数の画素100-pxに共通して設けられていてもよい。この場合も、第1の電極層170と第2の電極層180とは、電気的に分離されている。
【0027】
続いて、各構成の材料について説明する。
【0028】
非晶質基板110は、発光装置100の基材(支持基板)である。詳細は後述するが、発光装置100では、第1の半導体層140、発光層150、および第2の半導体層160の各々がスパッタリング成膜を用いて非晶質基板110上に形成される。そのため、非晶質基板110は、例えば、比較的低温である400℃程度の耐熱性を有すればよい。非晶質基板110として、例えば、非晶質ガラス基板を用いることができる。また、非晶質基板110の代わりに、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、またはフッ素樹脂基板などの樹脂基板を用いることもできる。このような非晶質ガラス基板または樹脂基板は、大面積化が可能な基板である。また、非晶質基板110の代わりに、多結晶基板を用いることもできる。多結晶基板は、窒化ガリウム膜の一般的な成膜で用いられるサファイア基板よりも大面積化が可能であり、非晶質ガラス基板または樹脂基板と同様に、発光装置100の基材として用いることができる。なお、非晶質基板には、LEDを制御するための薄膜トランジスタが設けられていてもよい。
【0029】
非晶質基板110についてさらに詳細に説明すると、非晶質基板110は、熱膨張係数が低く、歪み点が高く、表面の平坦性が高いことが好ましい。例えば、非晶質基板110は、熱膨張係数が50×10-7/℃より小さく、歪み点が600℃以上であることが好ましい。なお、非晶質基板110は、400℃程度の耐熱性があればよく、サファイア基板のような1000℃以上の耐熱性が要求されるものではない。非晶質基板110が非晶質ガラス基板である場合、上述した特性を満たす非晶質基板110として、例えば、アルミノホウケイ酸ガラス、アルミノシリケートガラスで形成されるガラス基板を用いることができる。このようなガラス基板は、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネセンス(有機EL)ディスプレイに使用されており、マザーガラスと呼ばれる大面積ガラス基板が市場に提供されている。また、非晶質基板110は、ナトリウム(Na)のようなアルカリ金属の含有量が0.1%以下であることが好ましい。
【0030】
図示しないが、非晶質基板110上に、下地層が設けられていてもよい。下地層は、非晶質基板110からの不純物または外部からの不純物(例えば、水分またはナトリウム(Na)など)の拡散を防止することができる。下地層として、例えば、窒化シリコン(SiNx)膜などを用いることができる。また、下地層として、例えば、酸化シリコン(SiOx)膜と窒化シリコン(SiNx)膜との積層膜を用いることもできる。
【0031】
半透過反射層120は、発光層150から出射された光または第2の電極層180によって反射された光を透過し、または反射することができる。すなわち、画素100-pxは、半透過反射層120と第2の電極層180との間で反射を繰り返すマイクロキャビティ構造を有する領域300を含む。これにより、発光装置100の光取り出し効率が向上する。また、発光装置100では、色度変化による光取り出し効率の変化が小さい。半透過反射層120として、例えば、銀(Ag)もしくはマグネシウム(Mg)などの金属、またはそれらの合金を用いることができる。これらの金属または合金は、発光層150から出射された光または第2の電極層180によって反射された光を透過することができる膜厚を有する。例えば、半透過反射層120の膜厚は、1nm以上50nm以下であり、好ましくは5nm以上30nm以下である。
【0032】
絶縁性配向層130は、絶縁性配向層130上に形成される第1の半導体層140の結晶性を向上させることができる。具体的には、絶縁性配向層130は、第1の半導体層140がc軸配向性を有するように制御することができる。「層がc軸配向性を有する」とは、層が有する結晶構造のc軸が、被形成面に対して略垂直な方向に配向していることをいう。絶縁性配向層130として、六方最密構造、面心立方構造、またはそれらに準ずる構造を有する絶縁性材料を用いることができる。ここで、六方最密構造または面心立方構造に準ずる構造とは、a軸およびb軸に対してc軸が90°とならない結晶構造を含むものである。六方最密構造またはそれに準ずる構造を有する絶縁性材料を用いた絶縁性配向層130は、非晶質基板110に対して(0001)方向、すなわち、c軸方向に配向している(以下、六方最密構造の(0001)配向という。)。また、面心立方構造またはそれに準ずる構造を有する材料を用いた絶縁性配向層130は、非晶質基板110に対して(111)方向に配向している(以下、面心立方構造の(111)配向という。)。絶縁性配向層130が、六方最密構造の(0001)配向または面心立方構造の(111)配向を有することにより、絶縁性配向層130上に成膜される膜のc軸方向への結晶成長が促進され、絶縁性配向層130上の第1の半導体層140がc軸配向性を有する。絶縁性配向層130として、例えば、窒化アルミニウム(AlNx)、酸化アルミニウム(AlOx)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、BiLaTiO、SrFeO、BiFeO、BaFeO、ZnFeO、PMnN-PZT、または生体アパタイト(BAp)などを用いることができる。なお、絶縁性配向層130は、スパッタリングまたはCVDなどの任意の方法(装置)を用いて成膜することができる。
【0033】
絶縁性配向層130上の第1の半導体層140の結晶性は、絶縁性配向層130の表面状態の影響を受ける。そのため、絶縁性配向層130は、凹凸が少なく、平滑な表面を有することが好ましい。例えば、絶縁性配向層130の表面の算術平均粗さ(Ra)は、2.3nmよりも小さいことが好ましい。また、絶縁性配向層130の表面の二乗平均平方根粗さ(Rq)は、2.9nmよりも小さいことが好ましい。絶縁性配向層130の表面粗さが当該条件である場合、第1の半導体層140は、より結晶性の高いc軸配向性を有する。なお、絶縁性配向層130の膜厚は、50nm以上であることが好ましい。
【0034】
第1の半導体層140および第2の半導体層160の一方は、電子を輸送し、発光層150に電子を注入する。すなわち、第1の半導体層140および第2の半導体層160の一方は、n型半導体層である。n型半導体層として、例えば、シリコン(Si)をドープした窒化ガリウム膜などを用いることができる。第1の半導体層140および第2の半導体層160の他方は、正孔を輸送し、発光層150に正孔を注入する。すなわち、第1の半導体層140および第2の半導体層160の他方は、p型半導体層である。p型半導体層として、例えば、マグネシウム(Mg)をドープした窒化ガリウム膜などを用いることができる。シリコンまたはマグネシウムをドープした窒化ガリウム膜は、スパッタリングを用いて成膜することができる。
【0035】
発光層150は、注入された電子と正孔とを再結合し、発光する。発光層150は、多重量子井戸構造を有する。発光層150として、例えば、窒化インジウムガリウム(InGaN)膜と窒化ガリウム膜とが交互に積層された積層膜などを用いることができる。窒化インジウムガリウム膜または窒化ガリウム膜は、スパッタリングを用いて成膜することができる。
【0036】
ここで、絶縁性配向層130上の、スパッタリングを用いた窒化ガリウム膜の成膜方法について説明する。
【0037】
真空チャンバ内に、窒化ガリウムターゲットと対向して、絶縁性配向層130が形成された非晶質基板110を配置する。窒化ガリウムターゲットにおける窒化ガリウムの組成比は、窒素に対するガリウムが0.7以上2以下であることが好ましい。また、真空チャンバには、スパッタリングガス(アルゴンまたはクリプトンなど)とは別に、窒素を供給することができる。その場合、窒化ガリウムターゲットの窒化ガリウムの組成比は、窒素よりもガリウムが多いことが好ましい。例えば、窒素は、窒素ラジカル供給源を用いて供給することができる。スパッタリング電源は、DC電源、RF電源、またはパルスDC電源のいずれであってもよい。
【0038】
真空チャンバ内の非晶質基板110は、加熱されてもよい。例えば、非晶質基板110は、室温から600℃未満で加熱することができる。好ましくは100℃以上400℃以下がより好ましい。この温度であれば、MOCVDまたはHVPEの成膜温度よりも低く、サファイア基板よりも耐熱性の低い非晶質基板110に対しても適用することができる。
【0039】
真空チャンバ内を十分排気した後、スパッタリングガスを供給する。また、所定の圧力で非晶質基板110と窒化ガリウムターゲットとの間に電圧を印加してプラズマを生成し、窒化ガリウム膜を成膜する。
【0040】
以上、スパッタリングによる窒化ガリウム膜の成膜方法について説明したが、スパッタリングの構成または条件は適宜変更することができる。また、窒化ガリウムターゲットではなく、シリコンをドープした窒化ガリウムターゲットまたはマグネシウムをドープした窒化ガリウムターゲットを用いれば、n型半導体膜またはp型半導体膜を成膜することができる。また、窒化インジウムガリウムターゲットおよび窒化ガリウムターゲットを用いれば、窒化インジウムガリウム膜と窒化ガリウム膜とが交互に積層された積層膜を成膜することができる。
【0041】
発光装置100では、第1の半導体層140、発光層150、および第2の半導体層160の各々が、窒化ガリウムを含む。第1の半導体層140の窒化ガリウム膜は、絶縁性配向層130上に直接成膜されるが、発光層150および第2の半導体層160の各々の窒化ガリウム膜は、絶縁性配向層130上に直接成膜されない。しかしながら、絶縁性配向層130上の第1の半導体層140が結晶性の高いc軸配向性を有するため、第1の半導体層140が絶縁性配向層130と同様の機能を有する。そのため、第1の半導体層140上に成膜される窒化ガリウム膜のc軸方向への結晶成長が促進され、第1の半導体層140上の発光層150がc軸配向性を有する。同様に、発光層150上の第2の半導体層160もc軸配向性を有する。
【0042】
第1の電極層170および第2の電極層180の一方は、n型電極であり、第1の電極層170および第2の電極層180の他方は、p型電極である。第1の電極層170および第2の電極層180の電極の極性は、第1の半導体層140および第2の半導体層160に応じて決定される。n型電極として、例えば、銀(Ag)もしくはインジウム(In)などの金属、またはこれらの合金を用いることができる。p型電極として、例えば、パラジウム(Pd)もしくは金(Au)などの金属、またはこれらの合金を用いることができる。これらの金属または合金は、発光層150から出射された光または半透過反射層120によって反射された光を透過しない膜厚を有する。
【0043】
なお、図示しないが、必要に応じて、LEDを覆うように、保護層を設けることもできる。保護層として、窒化シリコン膜を用いることができる。また、保護層として、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜を用いることもできる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る発光装置100は、マイクロキャビティ構造を有する領域300を含む。そのため、発光装置100では、光取り出し効率が向上し、色度変化による光取り出し効率の変化が小さい。また、発光装置100では、非晶質基板110を用いてLEDが形成されるため、発光装置100の製造コストを抑制することができる。
【0045】
<第2実施形態>
図4A~
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る発光装置100の別の構成について説明する。なお、以下では、上述した構成と同様の構成については、その構成の説明を省略する場合がある。
【0046】
図4Aおよび
図4Bは、それぞれ、本発明の一実施形態に係る発光装置100の画素100A1-pxおよび画素100A2-pxの構成を示す模式的な断面図である。また、
図5は、
図4Aまたは
図4Bの領域300Aを示す模式的な断面図である。
図4Aに示すように、画素100A1-pxは、非晶質基板110、絶縁性配向層130A、半透過反射層120A、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、第1の電極層170、および第2の電極層180を含む。すなわち、画素100A1-pxには、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、第1の電極層170、および第2の電極層180を含むLEDが設けられている。画素100A1-pxに含まれるLEDは、発光層150の一方の面側に第1の電極層170および第2の電極層180が設けられた、いわゆる水平電極構造を有する。画素100A1-pxでは、発光層150から出射された光は、非晶質基板110を透過して取り出される。
【0047】
また、
図4Bに示すように、画素100A2-pxは、非晶質基板110、絶縁性配向層130A、半透過反射層120A、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、および第2の電極層180を含む。詳細は後述するが、半透過反射層120Aは、LEDの電極として機能することができる。そのため、画素100A2-pxには、半透過反射層120A、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、および第2の電極層180を含むLEDが設けられている。画素100A2-pxに含まれるLEDは、発光層150の一方の面側に電極として機能する半透過反射層120Aが設けられ、発光層150の他方の面側に第2の電極層180が設けられた、いわゆる垂直電極構造を有する。画素100A2-pxでは、発光層150から出射された光は、非晶質基板110を透過して取り出される。
【0048】
なお、画素100A1-pxおよび画素100A2-pxは、いずれも半透過反射層120Aと第2の電極層180との間で反射を繰り返すマイクロキャビティ構造を有する領域300Aを含む。
【0049】
画素100A1-pxおよび画素100A2-pxの各々では、絶縁性配向層130Aは、非晶質基板110上に設けられている。半透過反射層120Aは、絶縁性配向層130A上に設けられている。第1の半導体層140は、半透過反射層120A上に設けられている。すなわち、第1の半導体層140は、絶縁性配向層130Aに接して設けられていない。しかしながら、半透過反射層120Aの膜厚は、光が透過することができる程に小さく、絶縁性配向層130Aは、半透過反射層120Aを介して第1の半導体層140の結晶性を制御することができる。したがって、半透過反射層120A上に設けられた第1の半導体層140は、結晶性の高いc軸配向性を有する。
【0050】
また、画素100A2-pxでは、半透過反射層120AをLEDの電極として利用することができる。半透過反射層120Aの抵抗が大きい場合には、半透過反射層120Aは、インジウムスズ酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電性酸化物を含んでいてもよい。すなわち、半透過反射層120Aの少なくとも一部に、金属または合金と透明導電性酸化物との積層膜が設けられていてもよい。これにより、半透過反射層120Aの抵抗を小さくすることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る発光装置100は、マイクロキャビティ構造を有する領域300Aを含む。そのため、発光装置100では、光取り出し効率が向上し、色度変化による光取り出し効率の変化が小さい。また、発光装置100では、非晶質基板110を用いてLEDが形成されるため、発光装置100の製造コストを抑制することができる。
【0052】
<第3実施形態>
図6および
図7を参照して、本発明の一実施形態に係る発光装置100の別の構成について説明する。なお、以下では、上述した構成と同様の構成については、その構成の説明を省略する場合がある。
【0053】
図6は、本発明の一実施形態に係る発光装置100の画素100B-pxの構成を示す模式的な断面図である。
図6に示すように、画素100B-pxは、非晶質基板110、第1の絶縁性配向層130B-1、半透過反射層120B、第2の絶縁性配向層130B-2、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、第1の電極層170、および第2の電極層180を含む。すなわち、画素100B-pxには、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、第1の電極層170、および第2の電極層180を含むLEDが設けられている。画素100B-pxに含まれるLEDは、発光層150の一方の面側に第1の電極層170および第2の電極層180が設けられた、いわゆる水平電極構造を有する。画素100B-pxでは、発光層150から出射された光は、非晶質基板110を透過して取り出される。
【0054】
なお、画素100B-pxは、半透過反射層120Bと第2の電極層180との間で反射を繰り返すマイクロキャビティ構造を有する領域300Bを含む。
【0055】
画素100B-pxでは、第1の絶縁性配向層130B-1は、非晶質基板110上に設けられている。半透過反射層120Bは、第1の絶縁性配向層130B-1上に設けられている。第2の絶縁性配向層130B-2は、半透過反射層120B上に設けられている。第1の半導体層140は、第2の絶縁性配向層130B-2上に設けられている。半透過反射層120B上に第1の半導体層140を設けた場合、第1の半導体層140のc軸配向性が十分でない場合がある。その場合、第1の半導体層140上に第2の絶縁性配向層130B-2を設ける。これにより、第2の絶縁性配向層130B-2が、第1の半導体層140の結晶性を制御することができるため、第1の半導体層140は、結晶性の高いc軸配向性を有する。また、第2の絶縁性配向層130B-2は、半透過反射層120Bと第2の電極層180との間に位置するため、第2の絶縁性配向層130B-2の膜厚により、マイクロキャビティ構造の光学距離を調整することもできる。例えば、第2の絶縁性配向層130B-2の膜厚は、第1の絶縁性配向層130B-1の膜厚よりも大きくすることができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る発光装置100は、マイクロキャビティ構造を有する領域300Bを含む。そのため、発光装置100では、光取り出し効率が向上し、色度変化による光取り出し効率の変化が小さい。また、発光装置100では、非晶質基板110を用いてLEDが形成されるため、発光装置100の製造コストを抑制することができる。
<第4実施形態>
図8および
図9を参照して、本発明の一実施形態に係る発光装置100の別の構成について説明する。なお、以下では、上述した構成と同様の構成については、その構成の説明を省略する場合がある。
【0057】
図8は、本発明の一実施形態に係る発光装置100の画素100C-pxの構成を示す模式的な断面図である。
図8に示すように、画素100C-pxは、非晶質基板110、絶縁性配向層130C、導電性配向層170C、第1の半導体層140、光学距離調整層190C、発光層150、第2の半導体層160、半透過反射層120C、および絶縁層200Cを含む。導電性配向層170Cおよび半透過反射層120Cは、それぞれ、LEDの第1の電極および第2の電極として機能することができる。そのため、画素100C-pxには、第1の電極層としての導電性配向層170C、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、および第2の電極層としての半透過反射層120Cを含むLEDが設けられている。画素100C-pxに含まれるLEDは、発光層150の一方の面側に第1の電極層として機能する導電性配向層170Cが設けられ、発光層150の他方の面側に第2の電極層として機能する半透過反射層120Cが設けられた、いわゆる垂直電極構造を有する。画素100C-pxでは、発光層150から出射された光は、絶縁層200Cを透過して取り出される。
【0058】
導電性配向層170Cは、導電性配向層170C上に形成される第1の半導体層140の結晶性を向上させることができる。導電性配向層170Cとして、例えば、チタン(Ti)、窒化チタン(TiNx)、酸化チタン(TiOx)、グラフェン、酸化亜鉛(ZnO)、二ホウ化マグネシウム(MgB2)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、セリウム(Ce)、イッテルビウム(Yb)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、鉛(Pb)、アクチニウム(Ac)、トリウム(Th)、BiLaTiO、SrFeO、BiFeO、BaFeO、ZnFeO、またはPMnN-PZTなどを用いることができる。なお、導電性配向層170Cは、スパッタリングまたはCVDなどの任意の方法(装置)を用いて成膜することができる。
【0059】
絶縁性配向層130Cは、非晶質基板110上に設けられている。導電性配向層170Cは、絶縁性配向層130C上に設けられている。第1の半導体層140は、導電性配向層170C上に設けられている。光学距離調整層190Cは、第1の半導体層140上に設けられている。発光層150は、光学距離調整層190C上に設けられている。第2の半導体層160は、発光層150上に設けられている。半透過反射層120Cは、第2の半導体層160上に設けられている。絶縁層200Cは、半透過反射層120C上に設けられている。
【0060】
絶縁性配向層130C、導電性配向層170C、第1の半導体層140、光学距離調整層190C、発光層150、第2の半導体層160、半透過反射層120C、および絶縁層200Cの各々は、複数の画素100C-pxに共通して設けられていてもよい。また、図示しないが、導電性配向層170Cが、画素100C-px内に島状に設けられ、半透過反射層120Cが、複数の画素100C-pxに共通して設けられていてもよい。また、図示しないが、導電性配向層170Cが、第1の方向に延在し、第1の方向に配列された複数の画素100C-pxに共通して設けられ、半透過反射層120Cが、第2の方向に延在し、第2の方向に配列された複数の画素100C-pxに共通して設けられていてもよい。
【0061】
光学距離調整層190Cは、マイクロキャビティ構造の光学距離を調整することができる。具体的には、取り出される光の波長が長くなるにつれて、光学距離調整層190Cの膜厚を大きくする。光学距離調整層190Cとして、例えば、窒化ガリウムを用いることができ、第1の半導体層140の材料と同じ材料であることが好ましい。その場合、光学距離調整層190Cは、第1の半導体層140の一部ということができる。そのため、第1の半導体層140の膜厚を変化させ、マイクロキャビティ構造の光学距離を調整することができる。
【0062】
なお、図示しないが、光学距離調整層190Cは、導電性配向層170Cと第1の半導体層140との間に設けられていてもよい。
【0063】
絶縁層200Cは、半透過反射層120Cから絶縁層200Cに入射された光を外部へ出射することができる。発光装置100の光取り出し効率を向上するため、絶縁層200Cは、屈折率が高いことが好ましい。絶縁層200Cとして、例えば、窒化アルミニウム(AlN)などを用いることができる。なお、絶縁層200Cは、スパッタリングまたはCVDなどの任意の方法(装置)を用いて成膜することができる。
【0064】
なお、図示しないが、絶縁層200Cの表面には凹凸が設けられていてもよい。これにより、発光装置100の光取り出し効率をさらに向上することができる。
【0065】
画素100C-pxでは、第1の半導体層140は、絶縁性配向層130Cに接して設けられていないが、導電性配向層170Cに接して設けられている。そのため、第1の半導体層140は、結晶性の高いc軸配向性を有する。しかも、絶縁性配向層130C上に設けられている導電性配向層170Cは、絶縁性配向層130Cの影響が反映された結晶性を有しており、そのような導電性配向層170C上に設けられた第1の半導体層140は、絶縁性配向層130Cの影響を受ける。したがって、絶縁性配向層130Cおよび導電性配向層170C上に形成される第1の半導体層140は、さらに結晶性の高いc軸配向性を有する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る発光装置100は、マイクロキャビティ構造を有する領域300Cを含む。そのため、発光装置100では、光取り出し効率が向上し、色度変化による光取り出し効率の変化が小さい。また、発光装置100では、非晶質基板110を用いてLEDが形成されるため、発光装置100の製造コストを抑制することができる。
【0067】
<実施例>
第1実施形態~第3実施形態に係る発光装置100の領域300~300Bのマイクロキャビティ構造について、電流効率および電流効率の色度変化のシミュレーションを行った。シミュレーションは、Setfos(Fluxim社製)を用いて行われた。また、シミュレーションでは、絶縁性配向層の膜厚を変化させ、それ以外の膜厚は固定値とした。
【0068】
[1.実施例1]
図10は、
図3に示す領域300のマイクロキャビティ構造において、色度(色度座標のy座標)の変化に対する電流効率を示すグラフである。
図3に示す領域300のシミュレーションにおいて、非晶質基板110、半透過反射層120、絶縁性配向層130、および第2の電極層180は、それぞれ、ガラス、マグネシウム銀(MgAg)、窒化アルミニウム(AlN)、および銀(Ag)のパラメータを用いた。第1の半導体層140、発光層150、および第2の半導体層160は、いずれも、窒化ガリウム(GaN)のパラメータを用いた。また、非晶質基板110、半透過反射層120、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、第2の電極層180の膜厚は、それぞれ、0.5mm、15nm、10nm、20nm、20nm、および100nmとした。また、発光層150の発光スペクトルは、波長460nmをピークとする正規分布とした。
【0069】
[2.実施例2]
図11は、
図5に示す領域300Aのマイクロキャビティ構造において、色度(色度座標のy座標)の変化に対する電流効率を示すグラフである。
図5に示す領域300Aのシミュレーションにおいて、非晶質基板110、絶縁性配向層130A、半透過反射層120A、および第2の電極層180は、それぞれ、ガラス、窒化アルミニウム(AlN)、マグネシウム銀(MgAg)、および銀(Ag)のパラメータを用いた。第1の半導体層140、発光層150、および第2の半導体層160は、いずれも、窒化ガリウム(GaN)のパラメータを用いた。また、非晶質基板110、半透過反射層120A、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、第2の電極層180の膜厚は、それぞれ、0.5mm、15nm、10nm、20nm、20nm、および100nmとした。また、発光層150の発光スペクトルは、波長460nmをピークとする正規分布とした。
【0070】
[3.実施例3]
図12は、
図7に示す領域300Bのマイクロキャビティ構造において、色度(色度座標のy座標)の変化に対する電流効率を示すグラフである。
図7に示す領域300Bのシミュレーションにおいて、非晶質基板110、第1の絶縁性配向層130B-1、半透過反射層120B、第2の絶縁性配向層130B-2、および第2の電極層180は、それぞれ、ガラス、窒化アルミニウム(AlN)、マグネシウム銀(MgAg)、窒化アルミニウム(AlN)、および銀(Ag)のパラメータを用いた。第1の半導体層140、発光層150、および第2の半導体層160は、いずれも、窒化ガリウム(GaN)のパラメータを用いた。また、非晶質基板110、第1の絶縁性配向層130B-1、半透過反射層120A、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、第2の電極層180の膜厚は、それぞれ、0.5mm、60nm、15nm、10nm、20nm、20nm、および100nmとした。また、発光層150の発光スペクトルは、波長460nmをピークとする正規分布とした。
【0071】
[4.比較例]
図13は、マイクロキャビティ構造を有しない比較例の領域500を示す模式的な断面図である。領域500では、非晶質基板110上に、絶縁性配向層130、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、および第2の電極層180が順に設けられている。比較例の領域500では、発光層150から出射された光は、非晶質基板110を透過して取り出される。
【0072】
また、
図14は、
図13に示す比較例の領域500の構造において、色度(色度座標のy座標)の変化に対する電流効率を示すグラフである。
図13に示す領域500のシミュレーションにおいて、非晶質基板110、絶縁性配向層130および第2の電極層180は、それぞれ、ガラス、窒化アルミニウム(AlN)および銀(Ag)のパラメータを用いた。第1の半導体層140、発光層150、および第2の半導体層160は、いずれも、窒化ガリウム(GaN)のパラメータを用いた。また、非晶質基板110、第1の半導体層140、発光層150、第2の半導体層160、第2の電極層180の膜厚は、それぞれ、0.5mm、10nm、20nm、20nm、および100nmとした。また、発光層150の発光スペクトルは、波長460nmをピークとする正規分布とした。
【0073】
[5.結果]
シミュレーションの結果を実施例1~実施例3と比較例とで比較した。シミュレーションの結果を表1および表2に示す。具体的には、表1は、CIE-y(色度座標のy座標)=0.04の電流効率(η0.04)およびCIE-y=0.05の電流効率(η0.05)から、CIE-y=0.04に対するCIE-y=0.05の電流効率の変化率((η0.05-η0.04)/η0.04×100)を示す。また、表2は、比較例の電流効率で規格化した実施例の差分の割合((η(実施例)-η(比較例))/η(比較例)×100)を示す。表1より、比較例に比べて、実施例1~実施例3は、色度変化における電流効率の変化が小さいことがわかった。また、表2より、比較例に比べて、実施例1~実施例3は、電流効率が向上することがわかった。したがって、マイクロキャビティ構造を有する実施例1~実施例3では、光取り出し効率が向上し、色度変化による光取り出し効率の変化が小さくなる。
【0074】
【0075】
【0076】
<第5実施形態>
図15を参照して、本発明の一実施形態に係る発光装置形成基板10について説明する。
【0077】
図15は、本発明の一実施形態に係る発光装置形成基板10の構成を示す概略図である。発光装置形成基板10は、複数の発光装置100を含む。すなわち、発光装置形成基板10では、1つの非晶質基板110を用いて複数の発光装置100が製造される。非晶質基板110は、いわゆる大面積基板である。発光装置形成基板10では、大面積基板を用いて複数の発光装置100を一度に製造することができるため、発光装置100の製造コストを抑制することができる。
【0078】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0079】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0080】
10:発光装置形成基板、
100:発光装置、 100P:画素部、 100-px、100A1-px、100A2-px、100B-px、100C-px:画素、 100T:端子部、 100-t:端子、 110:非晶質基板、 120、120A、120B、120C:半透過反射層、 130、130A、130B-1、130B-2、130C:絶縁性配向層、 140:第1の半導体層、 150:発光層、 160:第2の半導体層、 170:第1の電極層、 170C:導電性配向層、 180:第2の電極層、 190C:光学距離調整層、 200C:絶縁層、 300、300A、300B、300C:領域、 500:領域