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2025-96882水素貯蔵容器および水素吸蔵合金の投入方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096882
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】水素貯蔵容器および水素吸蔵合金の投入方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20250623BHJP
   F17C 11/00 20060101ALI20250623BHJP
【FI】
C01B3/00 A
F17C11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212852
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】519246238
【氏名又は名称】境川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 裕太
(72)【発明者】
【氏名】山根 俊博
(72)【発明者】
【氏名】下田 英介
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 成輝
(72)【発明者】
【氏名】西村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 悟志
【テーマコード(参考)】
3E172
4G140
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172CA14
3E172DA90
3E172EA10
3E172EA48
3E172EA49
3E172EB05
3E172EB17
3E172EB18
3E172FA01
3E172FA27
3E172KA02
4G140AA16
(57)【要約】
【課題】容器の内部における水素吸蔵合金の温度分布を均一化させ、水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させる。
【解決手段】水素吸蔵合金を収容する収容室30を有する筒状の容器本体10と、収容室30の内部において容器本体10の軸方向に沿って延び、水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管40と、を備え、容器本体10は、軸方向が水平方向に沿うように配置され、収容室30を上下方向に二等分し、上側の領域を第1領域30A、下側の領域を第2領域30Bとした際、第2領域30Bに配置される配管40の本数は、第1領域30Aに配置される配管40の本数よりも多いことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素吸蔵合金を収容する収容室を有する筒状の容器本体と、
前記収容室の内部において前記容器本体の軸方向に沿って延び、前記水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管と、
を備え、
前記容器本体は、軸方向が水平方向に沿うように配置され、
前記収容室を上下方向に二等分し、上側の領域を第1領域、下側の領域を第2領域とした際、
前記第2領域に配置される前記配管の本数は、前記第1領域に配置される前記配管の本数よりも多い、水素貯蔵容器。
【請求項2】
前記配管に当接する熱交換フィンをさらに備える、請求項1に記載の水素貯蔵容器。
【請求項3】
水素吸蔵合金を収容する収容室を有する筒状の容器本体と、
前記収容室の内部において前記容器本体の軸方向に沿って延び、前記水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管と、
前記配管に当接する熱交換フィンと、
を備え、
前記容器本体は、軸方向が水平方向に沿うように配置され、
前記収容室を上下方向に二等分し、上側の領域を第1領域、下側の領域を第2領域とした際、
前記第2領域における前記熱交換フィンの表面積の合計は、前記第1領域における前記熱交換フィンの表面積の合計よりも大きい、水素貯蔵容器。
【請求項4】
前記熱交換フィンは、プレートフィンまたはエロフィンである、請求項2または3に記載の水素貯蔵容器。
【請求項5】
前記容器本体の内部において、前記収容室の軸方向の両端には、隔壁により前記収容室と区画され、前記配管の端部が接続されている一対の流通室が設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の水素貯蔵容器。
【請求項6】
前記一対の流通室には、前記配管を流れる熱媒体を前記容器本体の外部から流入させる流入部と、前記配管を流れる熱媒体を前記容器本体の外部へ流出させる流出部と、が接続され、
前記流入部は、前記流出部よりも下側に設けられている、請求項5に記載の水素貯蔵容器。
【請求項7】
前記配管には、前記配管を流れる熱媒体を前記容器本体の外部から流入させる流入部と、前記配管を流れる熱媒体を前記容器本体の外部へ流出させる流出部と、が接続され、
前記配管は、前記流入部から前記流出部までの流路が一筆書き状に連続するように接続されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の水素貯蔵容器。
【請求項8】
前記容器本体の内部には、前記容器本体の内部に存在する水素を授受する吸放出板が設けられ、
前記吸放出板の長手方向は、前記容器本体の軸方向に沿って延びている、請求項1から3のいずれか1項に記載の水素貯蔵容器。
【請求項9】
水素吸蔵合金を収容する収容室を有する筒状の容器本体と、
前記収容室の内部において前記容器本体の軸方向に沿って延び、前記水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管と、
を備え、
前記容器本体は、軸方向が水平方向に沿うように配置され、
前記容器本体には、前記水素吸蔵合金を前記容器本体の内部へ充填するための充填口が複数設けられている、水素貯蔵容器。
【請求項10】
複数の前記充填口は、前記容器本体の軸方向において、互いに略等間隔に設けられている、請求項9に記載の水素貯蔵容器。
【請求項11】
前記容器本体は、円筒形状を有し、
前記容器本体の上面視において、前記容器本体の軸方向において隣り合う前記充填口同士の間の距離は、前記容器本体の内径未満である、請求項9または10に記載の水素貯蔵容器。
【請求項12】
前記容器本体は、円筒形状を有し、
複数の前記充填口のうち少なくとも1つは、開口方向が上下方向に対して周方向に沿って傾斜している、請求項9に記載の水素貯蔵容器。
【請求項13】
複数の前記充填口は、
前記充填口の開口方向が、上下方向に対して前記容器本体の周方向の一方側に傾斜する方向に沿うように設けられた第1充填口と、
前記充填口の開口方向が、上下方向に対して前記容器本体の周方向の他方側に傾斜する方向に沿うように設けられた第2充填口と、
を含み、
上下方向に対する前記第1充填口の開口方向の傾斜角度は、上下方向に対する前記第2充填口の開口方向の傾斜角度と略同一である、請求項12に記載の水素貯蔵容器。
【請求項14】
上下方向に対する前記開口方向の傾斜角度は、5°以上、30°以下である、請求項12または13に記載の水素貯蔵容器。
【請求項15】
水素吸蔵合金を収容する収容室を有する筒状の容器本体と、
前記収容室の内部において前記容器本体の軸方向に沿って延び、前記水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管と、
前記配管に当接する複数のプレートフィンと、
を備え、
前記容器本体は、軸方向が水平方向に沿うように配置され、
前記プレートフィンは、上下方向に沿って延びる平板形状を有し、
前記容器本体の軸方向の中央部における上下方向断面において、複数の前記プレートフィンは、水平方向に2mm以上の間隔を空けて配置されている、水素貯蔵容器。
【請求項16】
前記容器本体の軸方向の中央部における上下方向断面において、複数の前記プレートフィンは、水平方向に2mm以上、10mm以下の間隔を空けて配置されている、請求項15に記載の水素貯蔵容器。
【請求項17】
水素吸蔵合金を収容する収容室を有する筒状の容器本体と、
前記収容室の内部において前記容器本体の軸方向に沿って延び、前記水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管と、を備える水素貯蔵容器における水素吸蔵合金の投入方法であって、
前記容器本体に設けられた複数の投入口を通じて、前記水素吸蔵合金を前記容器本体の内部へ投入する工程と、
前記投入口に蓋材を溶接して、前記投入口を閉じる工程と、
を備え、
前記容器本体の上面視において、前記容器本体の中心位置を通り、前記容器本体の軸方向に沿って延びる仮想線に対して、複数の前記投入口は、線対称の位置に設けられている、水素吸蔵合金の投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素貯蔵容器および水素吸蔵合金の投入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素を安全かつ大容量で貯蔵できる手法として、水素吸蔵合金を収容した水素貯蔵容器が注目されている。この貯蔵方法は、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させることにより水素を水素貯蔵容器内に貯蔵し、水素吸蔵合金から水素を放出させることにより、水素を水素貯蔵容器から別の燃料タンク等に充填させる。
【0003】
水素吸蔵合金に水素を吸蔵する場合は発熱反応であり、水素吸蔵合金から水素を放出する場合は吸熱反応である。そのため、これらの反応を促進するためには、水素吸蔵合金を加熱または冷却する必要がある。特許文献1には、容器の内部に多数のプレートフィンが設けられた水素貯蔵容器が開示されている。多数のプレートフィンを設けることで、水素吸蔵合金を効率よく加熱、冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4420445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素吸蔵合金を使用した水素貯蔵容器において、水素の吸蔵量および放出量を増加させることは重要な課題である。水素の吸蔵量および放出量を増加させるためには、容器の内部における水素吸蔵合金の温度分布を均一化させ、水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させることが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である水素貯蔵容器は、水素吸蔵合金を収容する収容室を有する筒状の容器本体と、収容室の内部において容器本体の軸方向に沿って延び、水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管と、を備え、容器本体は、軸方向が水平方向に沿うように配置され、収容室を上下方向に二等分し、上側の領域を第1領域、下側の領域を第2領域とした際、第2領域に配置される配管の本数は、第1領域に配置される配管の本数よりも多いことを特徴とする。
【0007】
本発明の他の一態様である水素貯蔵容器は、水素吸蔵合金を収容する収容室を有する筒状の容器本体と、収容室の内部において容器本体の軸方向に沿って延び、水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管と、配管に当接する熱交換フィンと、を備え、容器本体は、軸方向が水平方向に沿うように配置され、収容室を上下方向に二等分し、上側の領域を第1領域、下側の領域を第2領域とした際、第2領域における熱交換フィンの表面積の合計は、第1領域における熱交換フィンの表面積の合計よりも大きいことを特徴とする。
【0008】
本発明の他の一態様である水素貯蔵容器は、水素吸蔵合金を収容する収容室を有する筒状の容器本体と、収容室の内部において容器本体の軸方向に沿って延び、水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管と、を備え、容器本体は、軸方向が水平方向に沿うように配置され、容器本体には、水素吸蔵合金を容器本体の内部へ充填するための充填口が複数設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の一態様である水素貯蔵容器は、水素吸蔵合金を収容する収容室を有する筒状の容器本体と、収容室の内部において容器本体の軸方向に沿って延び、水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管と、配管に当接する複数のプレートフィンと、を備え、容器本体は、軸方向が水平方向に沿うように配置され、プレートフィンは、上下方向に沿って延びる平板形状を有し、容器本体の軸方向の中央部における上下方向断面において、複数のプレートフィンは、水平方向に2mm以上の間隔を空けて配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様である水素吸蔵合金の投入方法は、水素吸蔵合金を収容する収容室を有する筒状の容器本体と、収容室の内部において容器本体の軸方向に沿って延び、水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管と、を備える水素貯蔵容器における水素吸蔵合金の投入方法であって、容器本体に設けられた複数の投入口を通じて、水素吸蔵合金を容器本体の内部へ投入する工程と、投入口に蓋材を溶接して、投入口を閉じる工程と、を備え、容器本体の上面視において、容器本体の中心位置を通り、容器本体の軸方向に沿って延びる仮想線に対して、複数の投入口は、線対称に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様である水素貯蔵容器によれば、容器の内部における水素吸蔵合金の温度分布を均一化させることができる。その結果、水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の水素貯蔵容器の軸方向断面図である。
図2】第1実施形態の水素貯蔵容器の軸方向の中央部における上下方向断面図である。
図3】第2実施形態の水素貯蔵容器の軸方向断面図である。
図4】第2実施形態の水素貯蔵容器の軸方向の中央部における上下方向断面図である。
図5】第3実施形態の水素貯蔵容器の軸方向断面図である。
図6】第4実施形態の水素貯蔵容器の軸方向断面図である。
図7】第5実施形態の水素貯蔵容器の上面図である。
図8】第5実施形態の水素貯蔵容器の軸方向の中央部における上下方向断面図である。
図9】第6実施形態の水素貯蔵容器の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る水素貯蔵容器の実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0014】
[第1実施形態]
水素吸蔵合金を使用した水素貯蔵容器において、水素の吸蔵量および放出量を増加させるためには、容器の内部における水素吸蔵合金の温度分布を均一化させ、水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させることが重要である。ここで、上記の通り、水素吸蔵合金が水素を放出する反応は吸熱反応であり、水素吸蔵合金が水素を吸蔵する反応は発熱反応である。そのため、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させる場合は水素吸蔵合金を冷却し、水素吸蔵合金から水素を放出させる場合は水素吸蔵合金を加熱する。
【0015】
水素吸蔵合金は、水素ガスの吸蔵・放出において体積が膨張または収縮し、その繰り返しによって微粉化する。微粉化した水素吸蔵合金は、容器の下部に堆積しやすいため、容器の下側領域における水素吸蔵合金の充填密度は、容器の上側領域における水素吸蔵合金の充填密度よりも大きくなる傾向がある。これにより、容器の下側領域では、体積当たりの水素の吸蔵量および放出量が大きくなり、水素の吸蔵・放出反応に伴う発熱・吸熱量も大きくなる。具体的には、容器の下側領域の温度は、水素吸蔵時には高温になり、水素放出時には低温になる。その結果、容器の下側領域において、水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させることが困難になり、水素の吸蔵量および放出量が低下してしまう。
【0016】
詳しくは後述するが、本実施形態の水素貯蔵容器は、容器内部に水素吸蔵合金を加熱・冷却する熱媒体が流通する配管を備える。そして、当該配管は、容器の上側領域に比べ、容器の下側領域に多く配置されている。これにより、容器の下側領域に存在する水素吸蔵合金と配管とが接触する面積が増加し、容器の下側領域に存在する水素吸蔵合金を効率よく加熱・冷却することができる。その結果、水素吸蔵合金の微粉化が生じ、容器の下側領域における水素吸蔵合金の充填密度が増加した場合であっても、容器の下側領域における水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させることができる。
【0017】
以下、図1および図2を参照しながら、第1実施形態の水素貯蔵容器1について説明する。図1は、本実施形態の水素貯蔵容器1の軸方向断面図であり、図2は、本実施形態の水素貯蔵容器1の軸方向の中央部における上下方向断面図である。
【0018】
図1に示すように、水素貯蔵容器1は、水素吸蔵合金(図示せず)を収容する収容室30を内部に有する容器本体10と、水素吸蔵合金を加熱および冷却する熱媒体が流通する複数の配管40とを備える。容器本体10は、軸方向が水平方向に沿うように配置され、配管40は、収容室30を横断するように容器本体10の軸方向、すなわち水平方向に沿って延びている。また、配管40には、複数の熱交換フィンが接合されている。本実施形態では、熱交換フィンとして、プレートフィン41が用いられている。なお、図1では、容器本体10の内部における配置関係を分かりやすくするために、後述の吸放出板50の図示を省略し、かつ実際の場合よりプレートフィン41の枚数を少なくして示している。また、図1および図2では、配管40およびプレートフィン41をハッチングして示している。
【0019】
容器本体10は、円筒形状を有する側壁11と、側壁11の軸方向一端の開口を塞ぐ第1蓋体12と、側壁11の軸方向他端の開口を塞ぐ第2蓋体13とを有する。第1蓋体12および第2蓋体13は、中央部が容器本体10の内部から軸方向外側に向かって膨らんだ形状を有する。
【0020】
なお、本実施形態では、側壁11の断面形状は円形であるが、これに限定されない。側壁11の断面形状は、例えば、多角形および楕円形としてもよい。また、側壁11、第1蓋体12、および第2蓋体13の壁厚およびサイズは、目的などに応じて、適宜選択することができる。また、側壁11、第1蓋体12、および第2蓋体13の材質は、例えば、ステンレス合金、アルミニウム合金など、水素脆化が生じない、または生じにくい材料を選択できる。
【0021】
側壁11と第1蓋体12との間には、第1隔壁14が設けられ、側壁11と第2蓋体13との間には、第2隔壁15が設けられている。これにより、容器本体10の内部には、側壁11、第1隔壁14、および第2隔壁15により区画された収容室30と、第1蓋体12および第1隔壁14により区画された第1流通室31と、第2蓋体13および第2隔壁15により区画された第2流通室32が形成されている。つまり、収容室30の軸方向一端には第1流通室31が設けられ、収容室30の軸方向他端には第2流通室32が設けられている。
【0022】
また、第1隔壁14および第2隔壁15には、配管40が貫通する貫通孔(図示せず)が複数設けられている。これにより、第1流通室31には、配管40の一端が接続され、第2流通室32には、配管40の他端が接続される。本実施形態では、第1流通室31と第2流通室32とは、略同一の大きさを有する。
【0023】
第1蓋体12の下端側には、配管40を流れる熱媒体を容器本体10の外部から流入させる流入部16が設けられている。これにより、第1流通室31には、流入部16より流入した熱媒体が収容される。また、第2蓋体13の上端側には、配管40を流れる熱媒体を容器本体10の外部へ流出させる流出部17が設けられている。これにより、流入部16を介して第1流通室31に流入した熱媒体は、配管40を通って第2流通室32へ流通される。そして、第2流通室32へ流入した熱媒体は、流出部17を介して容器本体10の外部へ放出される。第1流通室31および第2流通室32を介して熱媒体を流通させることにより、配管40同士を直接接続することなく、全ての配管40に熱媒体を流通させることが可能になる。そのため、部品数を削減することができ、低コストで水素貯蔵容器1を作製することができる。
【0024】
本実施形態では、第1蓋体12の下端側に1つの流入部16が設けられ、第2蓋体13の上端側に1つの流出部17が設けられている。なお、流入部16および流出部17の数および配置はこれに限定されない。例えば、第1蓋体12に複数の流入部16を設け、第2蓋体13に複数の流出部17を設けてもよい。
【0025】
側壁11の上部には、水素吸蔵合金を容器本体10の内部へ充填するための充填口18が2つ設けられている。充填口18には蓋部19がそれぞれ設けられており、水素吸蔵合金を容器本体10の内部へ充填した後、例えば、フランジ接合により充填口18を蓋部19で塞ぐことにより、容器本体10の内部の密閉が確保される。
【0026】
また、側壁11の上部には、吸蔵時において、水素を容器本体10の内部へ流入させ、放出時において、水素を容器本体10の外部へ流出させる水素流通部20が設けられている。水素流通部20は、例えば、水素製造装置(図示せず)等と接続される。これにより、上記水素製造装置で製造した水素を、容器本体10の内部へ流入させることができる。また、水素流通部20は、例えば、燃料電池(図示せず)や燃料電池に水素を供給する燃料タンク(図示せず)へつながる配管と接続される。これにより、水素流通部20を介して流出した水素を、燃料電池に供給したり、燃料タンクに充填したりすることができる。なお、水素流通部20の個数や配置は、容器本体10の大きさ等により適宜設定可能である。
【0027】
配管40は、収容室30の内部において容器本体10の軸方向に沿って延び、熱媒体が流通する中空部材である。本実施形態では、全ての配管40が同一の形状を有する。配管40は、熱伝導性の高い材料で構成されている。配管40は、第1隔壁14および第2隔壁15に設けられた貫通孔を貫通することにより、固定されており、一端が第1流通室31に接続し、他端が第2流通室32に接続している。収容室30を横断するように配管40を配置し、配管40に熱媒体を流通させることで、収容室30に収容されている水素吸蔵合金を、効率よく加熱または冷却することができる。
【0028】
図1および図2に示すように、収容室30を上下方向に二等分する仮想線αよりも上側の領域を第1領域30Aとし、仮想線αよりも下側の領域を第2領域30Bとする。なお、仮想線αは、収容室30の上端と下端とを結ぶ直線の上下方向長さを二等分する仮想線である。この際、配管40は、第2領域30Bに配置される配管40の本数が、第1領域30Aに配置される配管40の本数よりも多くなるように配置されている。これにより、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金と配管40とが接する面積が大きくなり、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金を効率よく加熱・冷却することができる。その結果、水素吸蔵合金の微粉化が生じ、第2領域30Bにおける水素吸蔵合金の充填密度が増加した場合であっても、第2領域30Bにおける水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させることができる。ここで、第1領域30Aまたは第2領域30Bに配置される配管40とは、配管40全体が第1領域30Aまたは第2領域30Bに配置される配管40を意味し、第1領域30Aおよび第2領域30Bに跨って配置される配管40は除く。
【0029】
なお、収容室30の全域にわたって配管40の本数を増加させた場合、すなわち、第1領域30Aおよび第2領域30Bともに配管40の本数を増加させた場合、収容室30を占める配管40の容積が増加してしまい、収容室30の内部に収容できる水素吸蔵合金の量が減少してしまう。その結果、水素の吸蔵・放出反応に寄与する水素吸蔵合金の量が減少し、水素の吸蔵量および放出量が低下する。つまり、第2領域30Bにおいてのみ配管40の本数を増加せることで、収容室30の内部に収容できる水素吸蔵合金の量を確保しつつ、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金を効率よく加熱・冷却することができる。
【0030】
第2領域30Bに配置される配管40の本数(P30B)は、第1領域30Aに配置される配管40の本数(P30A)よりも大きければよいが、第1領域30Aに配置される配管40の本数(P30A)に対する、第2領域30Bに配置される配管40の本数(P30B)の比率(P30B/P30A)は、1.25以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。(P30B/P30A)を1.25以上とすることで、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金と配管40とが接する面積がより大きくなり、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金をより効率よく加熱・冷却することができる。なお、第1領域30Aおよび第2領域30Bにおける配管40の本数は、容器本体10の大きさ、水素吸蔵合金の種類等に応じて適宜設定可能である。本実施形態では、配管40は、第1領域30Aに36本配置され、第2領域30Bに66本配置されている。
【0031】
配管40の内部を流通する熱媒体としては、例えば、水またはブライン等を用いることができる。
【0032】
配管40には、熱交換フィンとして、複数のプレートフィン41が接合されている。プレートフィン41は、上下方向に延びる平板形状を有する。プレートフィン41は、貫通孔(図示せず)を有し、当該貫通孔に配管40が貫通することにより、配管40に対して固定されている。
【0033】
プレートフィン41は、容器本体10の軸方向にわたって略等間隔で配置されている。そして、収容室30において、水素吸蔵合金は、プレートフィン41と当接するように、プレートフィン41同士の間の隙間に配置される。これにより、水素吸蔵合金は、配管40に加えて、プレートフィン41を介して加熱・冷却される。換言すると、プレートフィン41を設けることにより、水素吸蔵合金を効率よく加熱・冷却することができる。容器本体10の軸方向におけるプレートフィン41同士の間隔は、水素吸蔵合金の粒径等により適宜設定可能であるが、例えば、1.0mm以上、10mm以下である。
【0034】
プレートフィン41の厚み、枚数、間隔、およびサイズは、適宜設定することができる。プレートフィン41の枚数を増やしたり、プレートフィン41のサイズを大きくしたりすることにより、水素吸蔵合金とプレートフィン41との接触面積が増加し、収容室30に収容された水素吸蔵合金を効率よく加熱・冷却することができる。また、プレートフィン41の材質は、熱伝導率が高いものであれば特に限定されず、例えば、アルミニウム合金が挙げられる。
【0035】
図2に示すように、収容室30の内部には、容器本体10の内部に存在する水素を授受する2枚の吸放出板50が設けられている。吸放出板50は、中空構造を有する枠体51と、枠体51の内部に設けられたフィルター材52とを有する。吸放出板50は、吸放出板50の長手方向が、容器本体10の軸方向に沿って延びるように配置されている。
【0036】
枠体51は、例えば、容器本体10の内壁に設けられた係止部(図示せず)と係合することにより、容器本体10の内部に設置される。枠体51は、吸放出板50の厚み方向に直交する側面にメッシュ層が形成されており、当該側面を介して水素を透過する構造を有する。これにより、枠体51の外部に存在する水素は、枠体51の側面を通じて、枠体51の内部へ流入する。また、枠体51の内部へ流入した水素は、枠体51の側面を通じて、枠体51の外部へ流出する。
【0037】
フィルター材52は、水素を透過させつつ、水素吸蔵合金の透過を抑制する機能を有する。ここで、容器本体10の内部においては、流通する水素につられて水素吸蔵合金が舞い上がる場合がある。そして、例えば、水素放出時において、水素が水素流通部20(図1参照)を通じて容器本体10の外部へ流出する際、水素吸蔵合金もつられて水素流通部20へ侵入する場合がある。水素吸蔵合金が水素流通部20に侵入すると、水素流通部20が目詰まりを起こしてしまう。本実施形態のように枠体51の内部にフィルター材52を設けることで、水素吸蔵合金が流通する水素につられて移動することが抑制される。その結果、水素吸蔵合金による水素流通部20の目詰まりが生じることを抑制できる。フィルターとしては、例えば、グラスウール、多孔質の焼結金属、および多孔質の無機膜を用いることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、2枚の吸放出板50を収容室30の内部に設けているが、吸放出板50の枚数は、1枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。また、収容室30の内部には、吸放出板50を設けていなくてもよい。
【0039】
[第2実施形態]
図3および図4を参照しながら、第2実施形態である水素貯蔵容器1Aについて説明する。図3は、本実施形態の水素貯蔵容器1Aの軸方向断面図であり、図4は、本実施形態の水素貯蔵容器1Aの軸方向の中央部における上下方向断面図である。なお、図3では、容器本体10の内部における配置関係を分かりやすくするために、吸放出板50の図示を省略し、かつ実際の場合より後述のエロフィン42の枚数を少なくして示している。また、図3および図4では、配管40およびエロフィン42をハッチングして示している。以下では、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を用いて重複する説明を省略し、主に第1実施形態との相違点を説明する。
【0040】
図3に示すように、本実施形態の容器本体10は、第1蓋体12および第2蓋体13を有していない。そして、一部の配管40の端部には流入部16および流出部17がそれぞれ接続され、流入部16から流出部17までの流路が一筆書き状に連続するように配管40同士の端部が接続部43を介して接続されている。
【0041】
この際、流入部16は、配管40のうち最も下側に配置される配管40に接続されることが好ましい。これにより、熱媒体は、容器本体10の下側の配管40を流通した後に、容器本体10の上側の配管40を流通する。
【0042】
ここで、水素吸蔵合金が水素を放出する反応は吸熱反応であり、水素吸蔵合金が水素を吸蔵する反応は発熱反応である。よって、配管40の内部を流通する熱媒体は、流出部17側にいくにつれて水素吸蔵合金との熱交換量が増加し、水素放出時においては、流出部17側にいくにつれて温度が低下し、水素吸蔵時においては、流出部17側にいくにつれて温度が上昇する。
【0043】
そして、上記の通り、微粉化した水素吸蔵合金は、容器本体10の下部に堆積しやすく、容器本体10の下側領域における水素吸蔵合金の充填密度は増加しやすい。よって、容器本体10の下側での水素の吸蔵・放出反応が、容器本体10の上側での水素の吸蔵・放出反応に比べて顕著となる。本実施形態のように、熱媒体を容器本体10の下側から上側へ向かって配管40の内部を流通させることにより、容器本体10の下側に存在する水素吸蔵合金を効率よく加熱・冷却することができ、水素の吸蔵量および放出量を増加させることができる。
【0044】
また、図4に示すように、配管40は、第2領域30Bに配置される配管40の本数が、第1領域30Aに配置される配管40の本数よりも多くなるように配置されている。これにより、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金と配管40とが接する面積が大きくなり、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金を効率よく加熱・冷却することができる。本実施形態では、配管40は、第1領域30Aに12本配置され、第2領域30Bに14本配置されている。
【0045】
本実施形態では、配管40に熱交換フィンとしてエロフィン42が接合されている。エロフィン42は、第1実施形態のプレートフィン41と同様に熱伝導性の高い材料で構成されている。エロフィン42は、容器本体10の軸方向にわたって所定の間隔を空けて配置されている。容器本体10の軸方向におけるエロフィン42同士の間隔は、例えば、1.0mm以上、10mm以下である。収容室30内部の水素吸蔵合金は、エロフィン42を介して、加熱・冷却される。
【0046】
[第3実施形態]
図5を参照しながら、第3実施形態である水素貯蔵容器1Bについて説明する。図5は、本実施形態の水素貯蔵容器1Bの軸方向断面図である。なお、図5では、容器本体10の内部における配置関係を分かりやすくするために、吸放出板50の図示を省略し、かつ実際の場合よりプレートフィン41の枚数を少なくして示している。また、図5では、配管40およびプレートフィン41をハッチングして示している。以下では、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を用いて重複する説明を省略し、主に第1実施形態との相違点を説明する。
【0047】
図5に示すように、本実施形態の容器本体10の構成は、第1実施形態の容器本体10の構成と同様である。一方、本実施形態では、第1領域30Aおよび第2領域30Bに配置される配管40の本数は、それぞれ同じな点で第1実施形態と異なる。
【0048】
本実施形態では、プレートフィン41の枚数が、容器本体10の上側に比べ、下側で多くなっている。より詳細には、容器本体10の軸方向におけるプレートフィン41同士の間隔が、容器本体10の下側では容器本体10の上側よりも小さくなっている。これにより、第2領域30Bにおけるプレートフィン41の表面積の合計を、第1領域30Aにおけるプレートフィン41の表面積の合計よりも大きくできる。上記の通り、水素吸蔵合金は、プレートフィン41を介して加熱・冷却される。よって、第2領域30Bにおけるプレートフィン41の表面積の合計を、第1領域30Aにおけるプレートフィン41の表面積の合計よりも大きくすることで、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金とプレートフィン41とが接する面積が大きくなり、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金を効率よく加熱・冷却することができる。その結果、水素吸蔵合金の微粉化が生じ、第2領域30Bにおける水素吸蔵合金の充填密度が増加した場合であっても、第2領域30Bにおける水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させることができる。
【0049】
第2領域30Bにおけるプレートフィン41の表面積(S30B)は、第1領域30Aにおけるプレートフィン41の表面積(S30A)よりも大きければよいが、第1領域30Aにおけるプレートフィン41の表面積(S30A)に対する、第2領域30Bにおけるプレートフィン41の表面積(S30B)の比率(S30B/S30A)は、1.25以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。(S30B/S30A)を1.25以上とすることで、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金とプレートフィン41とが接する面積が大きくなり、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金をより効率よく加熱・冷却することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、容器本体10の軸方向におけるプレートフィン41同士の間隔を変えることで、各領域におけるプレートフィン41の表面積を変えているが、各領域におけるプレートフィン41の表面積を変える方法としては、これに限定されない。例えば、プレートフィン41の1枚当たりの面積を変える、すなわち、第2領域30Bに面積が大きいプレートフィン41を配置することで、各領域におけるプレートフィン41の表面積を変えてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、第1領域30Aおよび第2領域30Bに配置される配管40の本数は、それぞれ同じであるが、第1実施形態と同様に、第2領域30Bに配置される配管40の本数は、第1領域30Aに配置される配管40の本数よりも多くてもよい。第2領域30Bに配置される配管40の本数を、第1領域30Aに配置される配管40の本数よりも多くしつつ、第2領域30Bにおけるプレートフィン41の表面積の合計を、第1領域30Aにおけるプレートフィン41の表面積の合計よりも大きくすることで、第2領域30Bに存在する水素吸蔵合金をより効率よく加熱・冷却することができる。
【0052】
[第4実施形態]
図6を参照しながら、第4実施形態である水素貯蔵容器1Cについて説明する。図6は、本実施形態の水素貯蔵容器1Cの軸方向断面図である。なお、図6では、容器本体10の内部における配置関係を分かりやすくするために、吸放出板50の図示を省略し、かつ実際の場合よりプレートフィン41の枚数を少なくして示している。また、図6では、配管40およびプレートフィン41をハッチングして示している。以下では、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を用いて重複する説明を省略し、主に第1実施形態との相違点を説明する。
【0053】
図6に示すように、本実施形態の水素貯蔵容器1Cは、流出部17が第1蓋体12の上端側に接続されている点で、第1実施形態と異なる。また、詳しくは後述するが、本実施形態の水素貯蔵容器1Cは、第1流通室31の内部に仕切り部61,62が設けられており、第2流通室32の内部に仕切り部63が設けられている点で第1実施形態と異なる。
【0054】
図6に示すように、容器本体10は、第1実施形態と同様に、円筒状の側壁11と、側壁11の軸方向一端の開口を塞ぐ第1蓋体12と、側壁11の軸方向他端の開口を塞ぐ第2蓋体13とを有する。そして、容器本体10の内部には、側壁11、第1隔壁14、および第2隔壁15により区画された収容室30と、第1蓋体12および第1隔壁14により区画された第1流通室31と、第2蓋体13および第2隔壁15により区画された第2流通室32が形成されている。
【0055】
図6に示すように、本実施形態では、第1流通室31に2つの仕切り部61,62が設けられており、第2流通室32に1つの仕切り部63が設けられている。仕切り部61,62,63は、いずれも水平方向に延びる平板形状を有する。
【0056】
仕切り部61は、第1流通室31の内部において、収容室30の上下方向の中央部よりも下側の位置に設けられている。また、仕切り部62は、収容室30の上下方向の中央部よりも上側の位置に設けられている。これにより、第1流通室31は、第1流通室31Aと、第1流通室31Bと、第1流通室31Cとに区画されている。より詳細には、第1流通室31は、第1蓋体12、第1隔壁14、および仕切り部61により区画された第1流通室31Aと、第1蓋体12、第1隔壁14、仕切り部61、および仕切り部62により区画された第1流通室31Bと、第1蓋体12、第1隔壁14、および仕切り部62により区画された第1流通室31Cとにより構成される。
【0057】
仕切り部63は、第2流通室32の内部において、収容室30の上下方向の中央部よりも下側の位置に設けられており、第2流通室32を2つの空間に分離するように設けられている。よって、第2流通室32は、仕切り部63により、第2流通室32の下部空間を構成する第2流通室32Aと、第2流通室32の上部空間を構成する第2流通室32Bとに区画される。
【0058】
上記のように、第1流通室31には、配管40の一端が接続されている。よって、第1流通室31Aには、配管40の端部うち、容器本体10を上下方向に二等分した際に下側の領域に配置される配管40の端部が接続される。そして、第1流通室31Cには、配管40の端部うち、容器本体10を上下方向に二等分した際に上側の領域に配置される配管40の端部が接続される。
【0059】
また、同様に、第2流通室32には、配管40の他端が接続されている。よって、第2流通室32Aには、配管40の端部うち、容器本体10を上下方向に二等分した際に下側の領域に配置される配管40の端部が接続される。
【0060】
図6に示すように、第1蓋体12の下端側、すなわち第1蓋体12のうち第1流通室31Aを区画する部分には、配管40を流れる熱媒体を容器本体10の外部から流入させる流入部16が設けられている。これにより、第1流通室31Aには、流入部16が接続されている。また、第1蓋体12の上端側、すなわち第1蓋体12のうち第1流通室31Cを区画する部分には、配管40を流れる熱媒体を容器本体10の外部へ流出させる流出部17が設けられている。これにより、第1流通室31Cには、流出部17が接続されている。
【0061】
ここで、熱媒体の流路について説明する。熱媒体は、流入部16を介して第1流通室31Aに流入し、収容される。第1流通室31Aに収容された熱媒体は、配管40を通って第2流通室32Aへ流通される。そして、第2流通室32Aへ流入した熱媒体は、配管40を通って第1流通室31Bへ流通され、第1流通室31Bへ流入した熱媒体は、配管40を通って第2流通室32Bへ流通される。そして、第2流通室32Bへ流入した熱媒体は、配管40を通って第1流通室31Cへ流通され、流出部17を介して容器本体10の外部へ流出される。つまり、熱媒体は、容器本体10の下側の配管40を流通した後に、容器本体10の上側の配管40を流通する。
【0062】
本発明者らの検討の結果、図1に示すように、第1流通室31および第2流通室32に仕切り部61,62,63を設けず、第2流通室32に流出部17を接続させた場合、水素吸蔵時において、収容室30の下側領域に配置される水素吸蔵合金の温度が、収容室30の上側領域に配置される水素吸蔵合金の温度よりも高くなる場合があることが判明した。これは、仕切り部61,62,63を設けない場合、容器本体10の下側領域に配置される配管40を流通する熱媒体の流速が、容器本体10の上側領域に配置される配管40を流通する熱媒体の流速よりも小さくなるためと推測される。熱媒体の流速が小さくなると、配管40を流通する熱媒体の流量が減少し、熱媒体と水素吸蔵合金との熱交換量が小さくなる。その結果、水素吸蔵時において、収容室30の下側領域に配置される水素吸蔵合金を十分に冷却することが困難となり、水素の吸蔵反応を効率的に進行させることができず、水素の吸蔵量が減少してしまう場合がある。
【0063】
一方、本実施形態のように、第1流通室31および第2流通室32に仕切り部61,62,63をそれぞれ設けることにより、熱媒体は、容器本体10の下側領域に配置される配管40を流通した後に、容器本体10の上側領域に配置される配管40を流通する。これにより、熱媒体と水素吸蔵合金との熱交換量を増加させることができる。その結果、水素吸蔵時において、収容室30の下側領域に配置される水素吸蔵合金を十分に冷却することが容易になり、水素の吸蔵反応を効率的に進行させることができ、水素の吸蔵量を増加させることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、第1流通室31に2つの仕切り部61,62が設けられ、第2流通室32に1つの仕切り部63が設けられているが、仕切り部の構成はこれに限定されない。例えば、第1流通室31に3つ以上の仕切り部を設けてもよいし、第2流通室32に2つ以上の仕切り部を設けてもよい。また、第2流通室32には、仕切り部を設けなくてもよい。また、本実施形態では、流出部17は、第1蓋体12の上端側に設けられているが、これに限定されない。流出部17は、例えば、第2蓋体13に設けられていてもよい。すなわち、第2流通室32に流出部17が接続されていてもよい。
【0065】
[第5実施形態]
図7および図8を参照しながら、第5実施形態である水素貯蔵容器1Dについて説明する。図7は、本実施形態の水素貯蔵容器1Dの上面図であり、図8は、本実施形態の水素貯蔵容器1Dの軸方向の中央部における上下方向断面図である。以下では、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を用いて重複する説明を省略し、主に第1実施形態との相違点を説明する。
【0066】
本発明者らの検討の結果、容器本体10の内部において、水素吸蔵合金の分布のムラが生じていると、水素の吸蔵・放出量が低下してしまうことが明らかとなった。水素吸蔵合金の分布のムラが生じている場合、水素吸蔵合金の密度の高い領域において、水素の吸蔵・放出反応が集中して起こりやすくなる。そのため、水素吸蔵時においては当該領域の温度が他の領域に比べて高くなり、水素放出時においては当該領域の温度が他の領域に比べて低くなる。その結果、水素吸蔵合金の密度の高い領域において、水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させることが困難になり、全体としての水素の吸蔵量および放出量が低下する。つまり、水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させるためには、容器本体10の内部における水素吸蔵合金の分布のムラを抑制し、水素吸蔵・放出時の容器本体10の内部における水素吸蔵合金の温度分布を均一化させることが重要である。
【0067】
図7に示すように、本実施形態の水素貯蔵容器1Dは、水素吸蔵合金を容器本体10の内部へ充填するための充填口18が6つ設けられている。各充填口18は、蓋部19により封止される。複数の充填口18を設けることで、水素吸蔵合金の充填時において、容器本体10の内部において水素吸蔵合金が一か所に集中せず、分散される。その結果、容器本体10の内部における水素吸蔵合金の温度分布を均一化させることができる。
【0068】
複数の充填口18は、容器本体10の軸方向において、互いに略等間隔に設けられていることが好ましい。この場合、容器本体10の内部において、水素吸蔵合金をより均一に配置することが容易になる。
【0069】
充填口18の数は、容器本体10の軸方向長さおよび内径等により適宜設定可能である。充填口18は、容器本体10の上面視において、容器本体10の軸方向において隣り合う充填口18同士の間隔が、容器本体10の内径未満となる位置に設けられることが好ましい。隣り合う充填口18同士の間隔が容器本体10の内径を超えると、容器本体10の内部において、水素吸蔵合金が配置されにくい箇所が生じてしまう場合がある。
【0070】
図8に示すように、充填口18は、充填口18の開口方向が、上下方向に対して容器本体10の周方向に傾斜する方向に沿うように設けられている。充填口18の開口方向を上下方向に対して容器本体10の周方向に沿って傾斜させることで、水素吸蔵合金の充填時において、水素吸蔵合金が容器本体10の内部の配管40や熱交換フィンに阻害されにくくなる。その結果、容器本体10の内部において、水素吸蔵合金がより分散されて配置される。
【0071】
上下方向に対する充填口18の開口方向の傾斜角度は、5°以上、30°以下であることが好ましい。傾斜角度が30°を超えると、水素吸蔵合金を容器本体10の上側まで充填することが困難になる場合がある。
【0072】
本実施形態では、充填口18は、上下方向に対して容器本体10の周方向の一方側に傾斜する方向に沿うように設けられた第1充填口18A,18B,18Cと、充填口18の開口方向が上下方向に対して容器本体10の周方向の他方側に傾斜する方向に沿うように設けられた第2充填口18D,18E,18Fとを含む。そして、第1充填口18Aと第2充填口18Dとは容器本体10の周方向において略同一直線上に設けられ、第1充填口18Bと第2充填口18Eとは容器本体10の周方向において略同一直線上に設けられ、第1充填口18Cと第2充填口18Fとは容器本体10の周方向において略同一直線上に設けられている。充填口18が第1充填口18A,18B,18Cと、第2充填口18D,18E,18Fとを含むことで、容器本体10の内部の全体に水素吸蔵合金を分散させることが容易になる。
【0073】
図8に示すように、配管40には、複数のプレートフィン41が接合されている。プレートフィン41は、上下方向に沿って延びる平板形状を有する。そして、上下方向断面において、水平方向に隣り合うプレートフィン41は互いに当接せず、間隔(D)を空けて配置されている。この際、プレートフィン41は、当該間隔(D)は2mm以上となるように配置されていることが好ましい。プレートフィン41同士の間隔(D)を2mm以上とすることで、水素吸蔵合金を充填口18から容器本体10の内部へ投入した際、水素吸蔵合金が、プレートフィン41同士の間の隙間を通じて容器本体10の下部へ充填される。換言すると、当該間隔(D)が2mm未満の場合、水素吸蔵合金を充填口18から容器本体10の内部へ投入した際、水素吸蔵合金が、プレートフィン41に阻害され、容器本体10の下部まで到達しない場合がある。その結果、容器本体10の内部において水素吸蔵合金の分布のムラが生じてしまう。当該間隔(D)の上限値は、プレートフィン41と水素吸蔵合金とが接する面積を確保し、水素吸蔵合金を効率よく加熱・冷却する観点から、例えば、10mmである。よって、上下方向断面において、水平方向に隣り合うプレートフィン41同士の間隔(D)は、2mm以上、10mm以下であることが好ましい。
【0074】
[第6実施形態]
図9を参照しながら、第6実施形態である水素貯蔵容器1E、および水素貯蔵容器1Eにおける水素吸蔵合金の投入方法について説明する。図9は、本実施形態の水素貯蔵容器1Eの上面図であって、後述する溶接工程前の状態における水素貯蔵容器1Eの上面図である。以下では、第1実施形態と共通する構成については同じ符号を用いて重複する説明を省略し、主に第1実施形態との相違点を説明する。
【0075】
上記の通り、水素の吸蔵・放出反応を効率的に進行させるためには、容器本体10の内部における水素吸蔵合金の分布を均一化させ、水素吸蔵・放出時の容器本体10の内部における水素吸蔵合金の温度分布を均一化させることが重要である。詳しくは後述するが、本実施形態の水素貯蔵容器1Eの上面には、2つの充填口18に加えて、水素吸蔵合金を容器本体10の内部へ充填するための複数の投入口21が設けられている。複数の投入口21を設けることで、容器本体10の内部において水素吸蔵合金の分布をより均一化させることができる。
【0076】
水素貯蔵容器1Eにおける水素吸蔵合金の投入方法は、投入口21を通じて、水素吸蔵合金を容器本体10の内部へ投入する投入工程と、投入口21に蓋材(図示せず)を溶接して、投入口21を閉じる溶接工程と、とを含む。なお、投入工程では、各投入口21からそれぞれ順番に水素吸蔵合金を容器本体10の内部へ投入してもよいし、5つの投入口21から同時に水素吸蔵合金を容器本体10の内部へ投入してもよい。また、溶接工程における溶接方法は、投入口21を閉じ、収容室30の内部を密封することが可能であれば特に限定されず、例えば、レーザー溶接が挙げられる。また、投入口21に溶接される蓋材の材料は、容器本体10と同様に、ステンレス合金、アルミニウム合金など、水素脆化が生じない、または生じにくい材料である。
【0077】
ここで、図9に示すように、5つの投入口21は、容器本体10の上面視において、容器本体10の中心位置を通り容器本体10の軸方向に沿って延びる仮想線βに対して、線対称に設けられている。複数の投入口21を仮想線βに対して線対称に設けることで、容器本体10の内部において水素吸蔵合金の分布をより均一化させることができる。なお、投入口21の数は、容器本体10の軸方向長さおよび内径等により適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0078】
1,1A,1B,1C,1D,1E 水素貯蔵容器、10 容器本体、11 側壁、12 第1蓋体、13 第2蓋体、14 第1隔壁、15 第2隔壁、16 流入部、17 流出部、18 充填口、18A,18B,18C 第1充填口、18D,18E,18F 第2充填口、19 蓋部、20 水素流通部、21 投入口、30 収容室、30A 第1領域、30B 第2領域、31 第1流通室、32 第2流通室、40 配管、41 プレートフィン(熱交換フィン)、42 エロフィン(熱交換フィン)、43 接続部、50 吸放出板、51 枠体、52 フィルター材、61,62,63 仕切り部、α,β 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9