(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096896
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】動力変換装置
(51)【国際特許分類】
F16H 19/02 20060101AFI20250623BHJP
【FI】
F16H19/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212880
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】磯野 宏
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA09
3J062AB06
3J062AC07
3J062BA35
3J062CG03
3J062CG14
3J062CG84
(57)【要約】
【課題】入力部材に駆動力を伝達し易い動力変換装置を提供する。
【解決手段】リングギヤRGの半径r1は、第1遊星ギヤPG1の半径r2の2倍であり、第1遊星ギヤPG1と第2遊星ギヤPG2とが、キャリヤCRの回転軸心であるキャリヤ軸心X1回りに同速で同じ向きに公転するように構成され、軸方向視で、第1遊星ギヤPG1の回転軸心である第1遊星軸心X2と、第2遊星ギヤPG2の回転軸心である第2遊星軸心X3とが、キャリヤ軸心X1を挟んで反対側であって、キャリヤ軸心X1からの距離が同じとなる位置に配置され、軸方向視で、第1遊星軸心X2から第1遊星径方向Rp1に離間した第1入力軸心X4と、第2遊星軸心X3から第2遊星径方向Rp2に離間した第2入力軸心X5とが、キャリヤ軸心X1を挟んで反対側に位置するように、第1クランク部材2が第1遊星ギヤPG1に、第2クランク部材4が第2遊星ギヤPG2に連結されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された内歯車であるリングギヤ、前記リングギヤに噛み合う第1遊星ギヤ、前記第1遊星ギヤとは別軸上に配置された第2遊星ギヤ、並びに、前記第1遊星ギヤ及び前記第2遊星ギヤを回転自在に支持するキャリヤを備えた遊星歯車機構と、
前記第1遊星ギヤの回転軸心である第1遊星軸心に直交する第1遊星径方向に延在するように配置されると共に、前記第1遊星ギヤと一体的に回転するように連結された第1クランク部材と、
前記第1クランク部材に支持され、前記第1遊星軸心から前記第1遊星径方向に離間した第1入力軸心上に配置された第1入力部材と、
前記第2遊星ギヤの回転軸心である第2遊星軸心に直交する第2遊星径方向に延在するように配置されると共に、前記第2遊星ギヤと一体的に回転するように連結された第2クランク部材と、
前記第2クランク部材に支持され、前記第2遊星軸心から前記第2遊星径方向に離間した第2入力軸心上に配置された第2入力部材と、
前記第1遊星ギヤ及び前記第2遊星ギヤを除く、前記キャリヤに連動して回転する特定回転部材に連結された出力部材と、を備え、
前記リングギヤの半径は、前記第1遊星ギヤの半径の2倍であり、
前記キャリヤの回転軸心であるキャリヤ軸心に沿う方向を軸方向として、
前記第1遊星ギヤと前記第2遊星ギヤとが、前記キャリヤ軸心回りに互いに同速で同じ向きに公転するように構成され、
前記軸方向に沿う軸方向視で、前記第1遊星軸心と前記第2遊星軸心とが、前記キャリヤ軸心を挟んで互いに反対側であって、前記キャリヤ軸心からの距離が同じとなる位置に配置され、
前記軸方向視で、前記第1入力軸心と前記第2入力軸心とが、前記キャリヤ軸心を挟んで互いに反対側に位置するように、前記第1クランク部材が前記第1遊星ギヤに連結されていると共に、前記第2クランク部材が前記第2遊星ギヤに連結されている、動力変換装置。
【請求項2】
前記遊星歯車機構は、前記リングギヤとしての第1リングギヤに加えて、固定された内歯車である第2リングギヤを更に備え、
前記第2遊星ギヤは、前記第2リングギヤに噛み合い、
前記第2リングギヤの半径は、前記第2遊星ギヤの半径の2倍である、請求項1に記載の動力変換装置。
【請求項3】
前記遊星歯車機構は、前記第1遊星軸心上であって前記第1遊星ギヤとは前記軸方向の異なる位置に配置され、前記第1遊星ギヤと一体的に回転するように連結された第3遊星ギヤと、前記キャリヤ軸心上に配置されたサンギヤと、を更に備え、
前記第2遊星ギヤの半径と前記第3遊星ギヤの半径とが同じであり、
前記第2遊星ギヤと前記第3遊星ギヤとが、前記サンギヤに噛み合っている、請求項1に記載の動力変換装置。
【請求項4】
前記第1遊星軸心と前記第1入力軸心との前記第1遊星径方向の距離と、前記第2遊星軸心と前記第2入力軸心との前記第2遊星径方向の距離とが同じであり、
前記第1遊星ギヤの半径と、前記第1遊星軸心と前記第1入力軸心との前記第1遊星径方向の距離とが異なっている、請求項1から3のいずれか一項に記載の動力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復運動を回転運動に変換する動力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自転車等に搭載される動力変換装置が開示されている。特許文献1の動力変換装置では、人力による入力部材(85)の往復運動が、遊星歯車機構等を介して出力部材(1)の回転運動に変換される。なお、背景技術の説明において括弧内に示す符号は、特許文献1のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の動力変換装置では、入力部材(85)は、出力部材(1)の回転軸心からずれた位置において、曲線状の軌跡を描くように移動する(特許文献1の
図3参照)。そのため、上記の動力変換装置は、入力部材(85)に駆動力を伝達し難い構成となっていた。
【0005】
そこで、入力部材に駆動力を伝達し易い動力変換装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、動力変換装置の特徴構成は、
固定された内歯車であるリングギヤ、前記リングギヤに噛み合う第1遊星ギヤ、前記第1遊星ギヤとは別軸上に配置された第2遊星ギヤ、並びに、前記第1遊星ギヤ及び前記第2遊星ギヤを回転自在に支持するキャリヤを備えた遊星歯車機構と、
前記第1遊星ギヤの回転軸心である第1遊星軸心に直交する第1遊星径方向に延在するように配置されると共に、前記第1遊星ギヤと一体的に回転するように連結された第1クランク部材と、
前記第1クランク部材に支持され、前記第1遊星軸心から前記第1遊星径方向に離間した第1入力軸心上に配置された第1入力部材と、
前記第2遊星ギヤの回転軸心である第2遊星軸心に直交する第2遊星径方向に延在するように配置されると共に、前記第2遊星ギヤと一体的に回転するように連結された第2クランク部材と、
前記第2クランク部材に支持され、前記第2遊星軸心から前記第2遊星径方向に離間した第2入力軸心上に配置された第2入力部材と、
前記第1遊星ギヤ及び前記第2遊星ギヤを除く、前記キャリヤに連動して回転する特定回転部材に連結された出力部材と、を備え、
前記リングギヤの半径は、前記第1遊星ギヤの半径の2倍であり、
前記キャリヤの回転軸心であるキャリヤ軸心に沿う方向を軸方向として、
前記第1遊星ギヤと前記第2遊星ギヤとが、前記キャリヤ軸心回りに互いに同速で同じ向きに公転するように構成され、
前記軸方向に沿う軸方向視で、前記第1遊星軸心と前記第2遊星軸心とが、前記キャリヤ軸心を挟んで互いに反対側であって、前記キャリヤ軸心からの距離が同じとなる位置に配置され、
前記軸方向視で、前記第1入力軸心と前記第2入力軸心とが、前記キャリヤ軸心を挟んで互いに反対側に位置するように、前記第1クランク部材が前記第1遊星ギヤに連結されていると共に、前記第2クランク部材が前記第2遊星ギヤに連結されている点にある。
【0007】
この特徴構成によれば、第1入力部材及び第2入力部材の往復運動に伴う第1入力軸心及び第2入力軸心のそれぞれの移動軌跡を、キャリヤ軸心を基準とした直線状又は楕円状とすることができる。また、第1入力軸心と第2入力軸心との位相差を180°又はそれに近い値とすることができる。したがって、第1入力軸心上に配置された第1入力部材、及び第2入力軸心上に配置された第2入力部材のそれぞれに、駆動力を伝達し易い動力変換装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1の実施形態に係る第1入力部材及び第2入力部材の往復運動を示す図
【
図3】第1の実施形態に係る第1入力部材及び第2入力部材の往復運動を示す図
【
図4】第1の実施形態に係る第1入力部材及び第2入力部材の往復運動を示す図
【
図5】第1の実施形態に係る第1入力部材及び第2入力部材の往復運動を示す図
【
図6】第1の実施形態に係る第1入力部材及び第2入力部材の往復運動を示す図
【
図7】第1の実施形態に係る動力変換装置を搭載した自転車を示す図
【
図9】第2の実施形態に係る第1入力部材及び第2入力部材の往復運動を示す図
【
図10】第2の実施形態に係る第1入力部材及び第2入力部材の往復運動を示す図
【
図11】第2の実施形態に係る第1入力部材及び第2入力部材の往復運動を示す図
【
図12】第2の実施形態に係る第1入力部材及び第2入力部材の往復運動を示す図
【
図13】第2の実施形態に係る第1入力部材及び第2入力部材の往復運動を示す図
【
図14】第2の実施形態に係る動力変換装置を搭載した自転車を示す図
【
図15】第3の実施形態に係る動力変換装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る動力変換装置100について、
図1から
図7を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、動力変換装置100は、遊星歯車機構1と、第1クランク部材2と、第1入力部材3と、第2クランク部材4と、第2入力部材5と、出力部材6と、を備えている。動力変換装置100は、第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動を、遊星歯車機構1により出力部材6の回転運動に変換する装置である。
【0011】
遊星歯車機構1は、リングギヤRGと、第1遊星ギヤPG1と、第2遊星ギヤPG2と、キャリヤCRと、を備えている。リングギヤRGは、回転不能に固定された内歯車である。第1遊星ギヤPG1は、リングギヤRGに噛み合っている。第2遊星ギヤPG2は、第1遊星ギヤPG1とは別軸上に配置されている。キャリヤCRは、第1遊星ギヤPG1及び第2遊星ギヤPG2を回転自在に支持している。
【0012】
以下の説明では、キャリヤCRの回転軸心であるキャリヤ軸心X1に沿う方向を「軸方向L」する。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。更に、キャリヤ軸心X1に直交する方向を「径方向R」とする。また、第1遊星ギヤPG1の回転軸心である第1遊星軸心X2に直交する方向を「第1遊星径方向Rp1」とする。そして、第2遊星ギヤPG2の回転軸心である第2遊星軸心X3に直交する方向を「第2遊星径方向Rp2」とする。
【0013】
第1遊星ギヤPG1と第2遊星ギヤPG2とは、キャリヤ軸心X1回りに互いに同速で同じ向きに回転(公転)するように構成されている。
【0014】
第1遊星ギヤPG1は、第1遊星軸心X2回りに回転(自転)するように構成されている。本実施形態では、第1遊星ギヤPG1は、第1遊星軸心X2を回転軸心とする軸部材である第1遊星軸PS1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1遊星軸PS1は、第1遊星ギヤPG1を軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、第1遊星軸PS1は、第1遊星ギヤPG1に対して軸方向Lの両側に分かれて配置された一対の第1遊星軸受B1を介して、キャリヤCRに対して回転自在に支持されている。
【0015】
第2遊星ギヤPG2は、第2遊星軸心X3回りに回転(自転)するように構成されている。本実施形態では、第2遊星ギヤPG2は、第2遊星軸心X3を回転軸心とする軸部材である第2遊星軸PS2と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2遊星軸PS2は、第2遊星ギヤPG2を軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、第2遊星軸PS2は、第2遊星ギヤPG2に対して軸方向Lの両側に分かれて配置された一対の第2遊星軸受B2を介して、キャリヤCRに対して回転自在に支持されている。
【0016】
本実施形態では、遊星歯車機構1は、リングギヤRGとしての第1リングギヤRG1に加えて、第2リングギヤRG2を更に備えている。
【0017】
第2リングギヤRG2は、回転不能に固定された内歯車である。第2リングギヤRG2は、第2遊星ギヤPG2に噛み合っている。本実施形態では、第2リングギヤRG2は、第1リングギヤRG1に対して軸方向第2側L2に配置されている。
【0018】
本実施形態では、第1リングギヤRG1及び第2リングギヤRG2が、それらの軸方向Lの間に配置されたリングギヤ支持部RSに固定されている。リングギヤ支持部RSは、リングギヤ軸受B3を介して、径方向Rの外側からキャリヤCRを回転自在に支持している。本実施形態では、リングギヤ支持部RSは、第1リングギヤRG1及び第2リングギヤRG2から径方向Rの内側に向かって延在するように形成されている。そして、リングギヤ支持部RSに対して軸方向第1側L1に、第1遊星ギヤPG1及び第1遊星軸PS1が配置され、リングギヤ支持部RSに対して軸方向第2側L2に、第2遊星ギヤPG2及び第2遊星軸PS2が配置されている。
【0019】
リングギヤRG(第1リングギヤRG1)の半径r1は、第1遊星ギヤPG1の半径r2の2倍である(r1=r2×2)。そのため、第1遊星ギヤPG1は、キャリヤ軸心X1回りに1周する間に、第1遊星軸心X2回りに1回転する。つまり、第1遊星ギヤPG1の公転周期と自転周期とが等しい。なお、本願において「ギヤの半径」とは、そのギヤのピッチ円の半径を意味する。
【0020】
本実施形態では、第2リングギヤRG2の半径r3は、第2遊星ギヤPG2の半径r4の2倍である(r3=r4×2)。そのため、本実施形態では、第2遊星ギヤPG2は、キャリヤ軸心X1回りに1周する間に、第2遊星軸心X3回りに1回転する。つまり、本実施形態では、第2遊星ギヤPG2の公転周期と自転周期とが等しい。
【0021】
また、本実施形態では、第1リングギヤRG1と第2リングギヤRG2とは同径である(r1=r3)。そして、第1遊星ギヤPG1と第2遊星ギヤPG2とは同径である(r2=r4)。
【0022】
図1に示すように、第1クランク部材2は、第1遊星径方向Rp1に延在するように配置されている。第1クランク部材2は、第1遊星軸心X2と、当該第1遊星軸心X2から第1遊星径方向Rp1に離間した第1入力軸心X4とに亘って延在している。第1クランク部材2は、第1遊星ギヤPG1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1クランク部材2は、第1遊星軸PS1における第1遊星ギヤPG1よりも軸方向第1側L1の部分に対して、相対回転不能に連結されている。
【0023】
第1入力部材3は、動力変換装置100の外部から所定の駆動力が入力される部材である。第1入力部材3は、第1入力軸心X4上に配置されている。第1入力部材3は、第1クランク部材2に支持されている。本実施形態では、第1入力部材3は、第1クランク部材2から軸方向第1側L1に突出するように配置された軸部材である。そして、第1入力部材3は、第1クランク部材2と一体的に回転するように連結されている。
【0024】
第2クランク部材4は、第2遊星径方向Rp2に延在するように配置されている。第2クランク部材4は、第2遊星軸心X3と、当該第2遊星軸心X3から第2遊星径方向Rp2に離間した第2入力軸心X5とに亘って延在している。第2クランク部材4は、第2遊星ギヤPG2と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2クランク部材4は、第2遊星軸PS2における第2遊星ギヤPG2よりも軸方向第2側L2の部分に対して、相対回転不能に連結されている。
【0025】
第2入力部材5は、動力変換装置100の外部から所定の駆動力が入力される部材である。第2入力部材5は、第2入力軸心X5上に配置されている。第2入力部材5は、第2クランク部材4に支持されている。本実施形態では、第2入力部材5は、第2クランク部材4から軸方向第2側L2に突出するように配置された軸部材である。そして、第2入力部材5は、第2クランク部材4と一体的に回転するように連結されている。
【0026】
本実施形態では、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4との第1遊星径方向Rp1の距離d1と、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5との第2遊星径方向Rp2の距離d2とが同じである(d1=d2)。また、第1遊星ギヤPG1の半径r2と、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4との第1遊星径方向Rp1の距離d1とが同じである(r2=d1)。そして、第2遊星ギヤPG2の半径r4と、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5との第2遊星径方向Rp2の距離d2とが同じである(r4=d2)。
【0027】
また、本実施形態では、第1入力部材3には、後述する第1ペダルP1が相対回転自在に連結されている。そして、第2入力部材5には、後述する第2ペダルP2が相対回転自在に連結されている。
【0028】
出力部材6は、特定回転部材RTに連結されている。特定回転部材RTは、第1遊星ギヤPG1及び第2遊星ギヤPG2を除く回転部材であって、キャリヤCRに連動して回転する回転部材である。本実施形態では、特定回転部材RTは、キャリヤCRである。ここで、「連動して回転する」とは、同速で回転すること、及び所定の変速比で回転することを含み、回転方向は問わないものとする。
【0029】
ここで、
図2から
図6を参照して、本実施形態に係る第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動について説明する。なお、
図2から
図6において、1点鎖線で示す軌跡T1は、第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動に伴う、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5のそれぞれの移動軌跡である。また、2点鎖線で示す軌跡T2は、第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動に伴う、第1遊星軸心X2及び第2遊星軸心X3のそれぞれの移動軌跡である。
【0030】
上述の通り、第1遊星ギヤPG1と第2遊星ギヤPG2とは、キャリヤ軸心X1回りに公転する。そのため、第1遊星ギヤPG1の回転軸心である第1遊星軸心X2と、第2遊星ギヤPG2の回転軸心である第2遊星軸心X3との移動軌跡である軌跡T2は、軸方向Lに沿う軸方向視で、キャリヤ軸心X1を中心とする円状となる。
【0031】
なお、上述の通り、本実施形態では、第1リングギヤRG1と第2リングギヤRG2とが同径であり、第1遊星ギヤPG1と第2遊星ギヤPG2とが同径である。そのため、本実施形態では、第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動に伴う、第1遊星軸心X2の移動軌跡と第2遊星軸心X3の移動軌跡とは、軸方向Lに沿う軸方向視で互いに一致している。
【0032】
図2から
図6に示すように、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1遊星軸心X2と第2遊星軸心X3とが、キャリヤ軸心X1を挟んで互いに反対側であって、キャリヤ軸心X1からの距離が同じとなる位置に配置されている。本実施形態では、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1遊星軸心X2とキャリヤ軸心X1と第2遊星軸心X3とが一直線上に並ぶように配置されている。つまり、本実施形態では、第1遊星軸心X2と第2遊星軸心X3とが、180°の位相差で配置されている。
【0033】
図2から
図6に示すように、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4と第2入力軸心X5とが、キャリヤ軸心X1を挟んで互いに反対側に位置するように、第1クランク部材2が第1遊星ギヤPG1に連結されていると共に、第2クランク部材4が第2遊星ギヤPG2に連結されている。本実施形態では、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4とを通る直線に沿う方向、つまり、第1クランク部材2の延在方向と、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5とを通る直線に沿う方向、つまり、第2クランク部材4の延在方向とが、互いに平行となるように配置されている。
【0034】
上述の通り、本実施形態では、第1遊星ギヤPG1の半径r2と、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4との第1遊星径方向Rp1の距離d1とが同じであり、第2遊星ギヤPG2の半径r4と、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5との第2遊星径方向Rp2の距離d2とが同じである。そのため、本実施形態では、第1入力軸心X4と第2入力軸心X5との移動軌跡である軌跡T1は、軸方向Lに沿う軸方向視で、キャリヤ軸心X1を通る直線状となる。
【0035】
なお、上述の通り、本実施形態では、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4との第1遊星径方向Rp1の距離d1と、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5との第2遊星径方向Rp2の距離d2とが同じである。そして、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4とキャリヤ軸心X1と第2入力軸心X5とが一直線上に並ぶように配置されている。そのため、本実施形態では、第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動に伴う、第1入力軸心X4の移動軌跡と第2入力軸心X5の移動軌跡とは、軸方向Lに沿う軸方向視で互いに一致する。
【0036】
図2に示す例では、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4が第1遊星軸心X2に対してキャリヤ軸心X1とは反対側に位置していると共に、第2入力軸心X5が第2遊星軸心X3に対してキャリヤ軸心X1とは反対側に位置している。そして、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4と第1遊星軸心X2とキャリヤ軸心X1と第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5とが一直線上に並んでいる。このとき、円状の軌跡T2に基づいて、第1遊星軸心X2の位相を0°とし、第2遊星軸心X3の位相を180°とする。
【0037】
図3に示す例では、第1遊星軸心X2及び第2遊星軸心X3が、
図2に示す状態からキャリヤ軸心X1を中心として時計回りに45°回転している。つまり、第1遊星軸心X2の位相が45°であり、第2遊星軸心X3の位相が225°である。このとき、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5は、
図2に示す状態よりもキャリヤ軸心X1に近付いている。
【0038】
図4に示す例では、第1遊星軸心X2及び第2遊星軸心X3が、
図3に示す状態からキャリヤ軸心X1を中心として時計回りに45°回転している。つまり、第1遊星軸心X2の位相が90°であり、第2遊星軸心X3の位相が270°である。このとき、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5が、キャリヤ軸心X1上に位置している。
【0039】
図5に示す例では、第1遊星軸心X2及び第2遊星軸心X3が、
図4に示す状態からキャリヤ軸心X1を中心として時計回りに45°回転している。つまり、第1遊星軸心X2の位相が135°であり、第2遊星軸心X3の位相が315°である。このとき、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5は、
図4に示す状態よりもキャリヤ軸心X1から離間している。
【0040】
図6に示す例では、第1遊星軸心X2及び第2遊星軸心X3が、
図5に示す状態からキャリヤ軸心X1を中心として時計回りに45°回転している。つまり、第1遊星軸心X2の位相が180°であり、第2遊星軸心X3の位相が0°である。このとき、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4が第1遊星軸心X2に対してキャリヤ軸心X1とは反対側に位置していると共に、第2入力軸心X5が第2遊星軸心X3に対してキャリヤ軸心X1とは反対側に位置している。そして、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4と第1遊星軸心X2とキャリヤ軸心X1と第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5とが一直線上に並んでいる。
【0041】
なお、これ以降における第1遊星軸心X2の位相が0°となるまでの過程の説明は省略するが、上記の通り、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5が直線状の軌跡T1を描くように、第1入力部材3及び第2入力部材5が往復運動を行う。
【0042】
なお、上述の通り、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4と第2入力軸心X5とが、キャリヤ軸心X1を挟んで互いに反対側に位置するように、第1クランク部材2が第1遊星ギヤPG1に連結されていると共に、第2クランク部材4が第2遊星ギヤPG2に連結されている。ここで、本実施形態では、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5がキャリヤ軸心X1上を通るように、軌跡T1が描かれる。そのため、本願において「軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4と第2入力軸心X5とが、キャリヤ軸心X1を挟んで互いに反対側に位置する」とは、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5の少なくとも一方がキャリヤ軸心X1上を通る軌跡T1を描くように配置されていることを含むものとする。
【0043】
図7に示すように、本実施形態では、動力変換装置100は、自転車Bに搭載されている。そのため、本実施形態では、動力変換装置100は、自転車Bの運転者の操作による第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動を出力部材6の回転運動に変換して出力する。
図7に示す例では、動力変換装置100は、軌跡T1が水平方向に対して傾斜し、自転車Bの後方(
図7における右側)に向かうに従って上方に向かうように配置されている。
【0044】
自転車Bは、上記の第1ペダルP1及び第2ペダルP2に加えて、シートSと、ハンドルHと、フレームFと、駆動輪W1と、従動輪W2と、伝達機構Tと、を備えている。
【0045】
第1ペダルP1及び第2ペダルP2は、運転者が足で踏み込むための部材である。シートSは、運転者が着座するための部材である。ハンドルHは、運転者が把持するための部材である。フレームFは、シートS、ハンドルH、駆動輪W1、従動輪W2、及び動力変換装置100を支持する部材である。フレームFには、リングギヤ固定部材RFを介して、動力変換装置100における遊星歯車機構1のリングギヤRGが固定されている。
【0046】
駆動輪W1は、運転者の操作に連動して回転するように構成されている。従動輪W2は、フレームFに対して回転自在に支持されている。本実施形態では、駆動輪W1が後輪であり、従動輪W2が前輪である。
【0047】
伝達機構Tは、動力変換装置100の出力部材6の回転を駆動輪W1へ伝達するように構成されている。本実施形態では、伝達機構Tは、第1スプロケットSP1と、第2スプロケットSP2と、第3スプロケットSP3と、第4スプロケットSP4と、第1チェーンCH1と、第2チェーンCH2と、を備えている。
【0048】
第1スプロケットSP1は、キャリヤ軸心X1上に配置されている。本実施形態では、第1スプロケットSP1は、特定回転部材RTとしてのキャリヤCRと一体的に回転するように連結されている(
図1参照)。つまり、本実施形態では、第1スプロケットSP1は、出力部材6として機能する。
【0049】
第1チェーンCH1は、第1スプロケットSP1と第2スプロケットSP2とに巻き掛けられている。そのため、第2スプロケットSP2は、第1スプロケットSP1に従動して回転する。
図7に示す例では、第2スプロケットSP2は、第1スプロケットSP1よりも小径に形成されている。
【0050】
第3スプロケットSP3は、第2スプロケットSP2と同軸上に配置されている。第3スプロケットSP3は、第2スプロケットSP2と一体的に回転するように連結されている。
図7に示す例では、第3スプロケットSP3は、第2スプロケットSP2よりも大径に形成されている。
【0051】
第2チェーンCH2は、第3スプロケットSP3と第4スプロケットSP4とに巻き掛けられている。第4スプロケットSP4は、駆動輪W1と同軸上に配置されている。
図7に示す例では、第4スプロケットSP4は、第3スプロケットSP3よりも小径に形成されている。
【0052】
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る動力変換装置100について、
図8から
図14を参照して説明する。本実施形態では、第1クランク部材2及び第2クランク部材4の構成が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0053】
図8に示すように、本実施形態では、第1遊星ギヤPG1の半径r2と、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4との第1遊星径方向Rp1の距離d1とが異なっている(r2≠d1)。そして、第2遊星ギヤPG2の半径r4と、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5との第2遊星径方向Rp2の距離d2とが異なっている(r4≠d2)。
図8に示す例では、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4との第1遊星径方向Rp1の距離d1が、第1遊星ギヤPG1の半径r2よりも大きい(r2<d1)。そして、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5との第2遊星径方向Rp2の距離d2が、第2遊星ギヤPG2の半径r4よりも大きい(r4<d2)。なお、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4との第1遊星径方向Rp1の距離d1と、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5との第2遊星径方向Rp2の距離d2とが同じである(d1=d2)。
【0054】
ここで、
図9から
図13を参照して、本実施形態に係る第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動について説明する。なお、
図9から
図13において、1点鎖線で示す軌跡T1は、第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動に伴う、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5のそれぞれの移動軌跡である。また、2点鎖線で示す軌跡T2は、第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動に伴う、第1遊星軸心X2及び第2遊星軸心X3のそれぞれの移動軌跡である。
【0055】
上述の通り、本実施形態では、第1遊星ギヤPG1の半径r2と、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4との第1遊星径方向Rp1の距離d1とが異なり、第2遊星ギヤPG2の半径r4と、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5との第2遊星径方向Rp2の距離d2とが異なっている。そのため、本実施形態では、第1入力軸心X4と第2入力軸心X5との移動軌跡である軌跡T1は、軸方向Lに沿う軸方向視で、キャリヤ軸心X1を中心とする楕円状となる。
【0056】
なお、上述の通り、本実施形態では、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4との第1遊星径方向Rp1の距離d1と、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5との第2遊星径方向Rp2の距離d2とが同じである。そして、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4とキャリヤ軸心X1と第2入力軸心X5とが一直線上に並ぶように配置されている。そのため、本実施形態では、第1入力部材3及び第2入力部材5の往復運動に伴う、第1入力軸心X4の移動軌跡と第2入力軸心X5の移動軌跡とは、軸方向Lに沿う軸方向視で互いに一致する。
【0057】
図9に示す例では、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4が第1遊星軸心X2に対してキャリヤ軸心X1とは反対側に位置していると共に、第2入力軸心X5が第2遊星軸心X3に対してキャリヤ軸心X1とは反対側に位置している。そして、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4と第1遊星軸心X2とキャリヤ軸心X1と第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5とが一直線上に並んでいる。このとき、円状の軌跡T2に基づいて、第1遊星軸心X2の位相を0°とし、第2遊星軸心X3の位相を180°とする。
【0058】
図10に示す例では、第1遊星軸心X2及び第2遊星軸心X3が、
図9に示す状態からキャリヤ軸心X1を中心として時計回りに45°回転している。つまり、第1遊星軸心X2の位相が45°であり、第2遊星軸心X3の位相が225°である。このとき、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5は、
図9に示す状態からキャリヤ軸心X1を中心として反時計回りに回転している。
【0059】
図11に示す例では、第1遊星軸心X2及び第2遊星軸心X3が、
図10に示す状態からキャリヤ軸心X1を中心として時計回りに45°回転している。つまり、第1遊星軸心X2の位相が90°であり、第2遊星軸心X3の位相が270°である。このとき、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5が、第1遊星軸心X2とキャリヤ軸心X1と第2遊星軸心X3とを通る直線上に位置している。つまり、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4がキャリヤ軸心X1と第2遊星軸心X3との間に位置すると共に、第2入力軸心X5がキャリヤ軸心X1と第1遊星軸心X2との間に位置するように、第1遊星軸心X2と第2入力軸心X5とキャリヤ軸心X1と第1入力軸心X4と第2遊星軸心X3とが一直線上に並んでいる。
【0060】
図12に示す例では、第1遊星軸心X2及び第2遊星軸心X3が、
図11に示す状態からキャリヤ軸心X1を中心として時計回りに45°回転している。つまり、第1遊星軸心X2の位相が135°であり、第2遊星軸心X3の位相が315°である。このとき、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5は、
図11に示す状態からキャリヤ軸心X1を中心として反時計回りに回転している。
【0061】
図13に示す例では、第1遊星軸心X2及び第2遊星軸心X3が、
図12に示す状態からキャリヤ軸心X1を中心として時計回りに45°回転している。つまり、第1遊星軸心X2の位相が180°であり、第2遊星軸心X3の位相が0°である。このとき、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4が第1遊星軸心X2に対してキャリヤ軸心X1とは反対側に位置していると共に、第2入力軸心X5が第2遊星軸心X3に対してキャリヤ軸心X1とは反対側に位置している。そして、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4と第1遊星軸心X2とキャリヤ軸心X1と第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5とが一直線上に並んでいる。
【0062】
なお、これ以降における第1遊星軸心X2の位相が0°となるまでの過程の説明は省略するが、上記の通り、第1入力軸心X4及び第2入力軸心X5が楕円状の軌跡T1を描くように、第1入力部材3及び第2入力部材5が往復運動を行う。
【0063】
図14に示すように、本実施形態では、動力変換装置100が搭載された自転車Bの構成が、上記第1の実施形態のものと異なっている。具体的には、本実施形態では、自転車Bは、発電機Gと、モータ(図示を省略)と、を更に備えている。そして、伝達機構Tが、動力変換装置100の出力部材6の回転を発電機Gへ伝達するように構成されている。
【0064】
本実施形態では、伝達機構Tは、第2スプロケットSP2、第3スプロケットSP3、第4スプロケットSP4、第1チェーンCH1、及び第2チェーンCH2の代わりに、第5スプロケットSP5と、第3チェーンCH3と、を備えている。
【0065】
第5スプロケットSP5は、発電機Gのロータと一体的に回転するように連結されている。第3チェーンCH3は、第1スプロケットSP1と第5スプロケットSP5とに巻き掛けられている。
図14に示す例では、第5スプロケットSP5は、第1スプロケットSP1よりも小径に形成されている。
【0066】
発電機Gは、伝達機構Tを介して伝達される駆動力により発電を行って、蓄電装置(図示を省略)に蓄電するように構成されている。モータは、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、駆動輪W1を駆動させる。
【0067】
3.第3の実施形態
以下では、第3の実施形態に係る動力変換装置100について、
図15を参照して説明する。本実施形態では、遊星歯車機構1の構成が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0068】
図15に示すように、本実施形態では、遊星歯車機構1は、第3遊星ギヤPG3と、サンギヤSGと、を更に備えている。なお、本実施形態では、遊星歯車機構1は、第2リングギヤRG2を備えていない。
【0069】
第3遊星ギヤPG3は、第1遊星軸心X2上であって第1遊星ギヤPG1とは軸方向Lの異なる位置に配置されている。第3遊星ギヤPG3は、第1遊星ギヤPG1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第3遊星ギヤPG3は、第1遊星ギヤPG1に対して軸方向第2側L2に配置されている。そして、第3遊星ギヤPG3は、第1遊星軸PS1と一体的に回転するように連結されている。
【0070】
本実施形態では、第1遊星軸PS1は、第1遊星ギヤPG1及び第3遊星ギヤPG3を軸方向Lに貫通するように配置されている。そして、第1遊星軸PS1は、第1遊星ギヤPG1に対して軸方向第1側L1と、第3遊星ギヤPG3に対して軸方向第2側L2とに分かれて配置された一対の第1遊星軸受B1を介して、キャリヤCRに対して回転自在に支持されている。
【0071】
サンギヤSGは、キャリヤ軸心X1上に配置されている。サンギヤSGは、第2遊星ギヤPG2及び第3遊星ギヤPG3に噛み合っている。本実施形態では、サンギヤSGは、当該サンギヤSGに対して径方向Rの内側に配置されたサンギヤ軸受B6を介して、キャリヤCRに対して回転自在に支持されている。
【0072】
本実施形態では、第2遊星ギヤPG2の半径r4と第3遊星ギヤPG3の半径r5とが同じである。つまり、第2遊星ギヤPG2と第3遊星ギヤPG3とが同径である。また、第2遊星ギヤPG2の半径r4及び第3遊星ギヤPG3の半径r5のそれぞれは、第1遊星ギヤPG1の半径r2よりも小さい。つまり、第2遊星ギヤPG2及び第3遊星ギヤPG3のそれぞれは、第1遊星ギヤPG1よりも小径である。
【0073】
本実施形態では、リングギヤRGは、第1リングギヤ支持部RS1及び第2リングギヤ支持部RS2に固定されている。第1リングギヤ支持部RS1は、リングギヤRGに対して軸方向第1側L1に配置されている。第1リングギヤ支持部RS1は、第1リングギヤ軸受B4を介して、径方向Rの外側からキャリヤCRを回転自在に支持している。第2リングギヤ支持部RS2は、リングギヤRGに対して軸方向第2側L2に配置されている。第2リングギヤ支持部RS2は、第2リングギヤ軸受B5を介して、径方向Rの外側からキャリヤCRを回転自在に支持している。
【0074】
本実施形態では、軸方向第1側L1の第1遊星軸受B1と、軸方向第1側L1の第2遊星軸受B2と、第1リングギヤ軸受B4とは、それらの軸方向Lの配置領域が互いに重なるように配置されている。また、軸方向第2側L2の第1遊星軸受B1と、軸方向第2側L2の第2遊星軸受B2と、第2リングギヤ軸受B5とは、それらの軸方向Lの配置領域が互いに重なるように配置されている。これにより、遊星歯車機構1の軸方向Lの寸法を小さく抑えることができ、延いては動力変換装置100の軸方向Lの小型化を図ることができる。
【0075】
4.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、第1入力部材3が第1クランク部材2に固定された軸部材であり、第2入力部材5が第2クランク部材4に固定された軸部材である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1入力部材3としての軸部材及び第2入力部材5としての軸部材が設けられず、第1クランク部材2の一部が第1入力部材3として機能すると共に、第2クランク部材4の一部が第2入力部材5として機能する構成としても良い。
【0076】
(2)上記の実施形態では、第1遊星軸心X2と第2遊星軸心X3とが180°の位相差で配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1遊星軸心X2と第2遊星軸心X3とが180°とは異なる位相差で配置されていても良い。
【0077】
(3)上記の実施形態では、軌跡T1において、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4と第1遊星軸心X2とキャリヤ軸心X1と第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5とが一直線上に並ぶ位相が存在する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、軌跡T1において、軸方向Lに沿う軸方向視で、第1入力軸心X4と第1遊星軸心X2とキャリヤ軸心X1と第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5とが一直線上に並ぶ位相が存在しない構成としても良い。
【0078】
(4)上記の実施形態では、第1遊星軸心X2と第1入力軸心X4とを通る直線に沿う方向(第1クランク部材2の延在方向)と、第2遊星軸心X3と第2入力軸心X5とを通る直線に沿う方向(第2クランク部材4の延在方向)とが、互いに平行となるように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1クランク部材2の延在方向と第2クランク部材4の延在方向とが互いに交差するように配置されていても良い。
【0079】
(5)上記の実施形態では、第1リングギヤRG1と第2リングギヤRG2とが同径である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1リングギヤRG1と第2リングギヤRG2とが異なる径であっても良い。
【0080】
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0081】
5.本実施形態のまとめ
以下では、上記において説明した動力変換装置(100)の概要について説明する。
【0082】
動力変換装置(100)は、
固定された内歯車であるリングギヤ(RG)、前記リングギヤ(RG)に噛み合う第1遊星ギヤ(PG1)、前記第1遊星ギヤ(PG1)とは別軸上に配置された第2遊星ギヤ(PG2)、並びに、前記第1遊星ギヤ(PG1)及び前記第2遊星ギヤ(PG2)を回転自在に支持するキャリヤ(CR)を備えた遊星歯車機構(1)と、
前記第1遊星ギヤ(PG1)の回転軸心である第1遊星軸心(X2)に直交する第1遊星径方向(Rp1)に延在するように配置されると共に、前記第1遊星ギヤ(PG1)と一体的に回転するように連結された第1クランク部材(2)と、
前記第1クランク部材(2)に支持され、前記第1遊星軸心(X2)から前記第1遊星径方向(Rp1)に離間した第1入力軸心(X4)上に配置された第1入力部材(3)と、
前記第2遊星ギヤ(PG2)の回転軸心である第2遊星軸心(X3)に直交する第2遊星径方向(Rp2)に延在するように配置されると共に、前記第2遊星ギヤ(PG2)と一体的に回転するように連結された第2クランク部材(4)と、
前記第2クランク部材(4)に支持され、前記第2遊星軸心(X3)から前記第2遊星径方向(Rp2)に離間した第2入力軸心(X5)上に配置された第2入力部材(5)と、
前記第1遊星ギヤ(PG1)及び前記第2遊星ギヤ(PG2)を除く、前記キャリヤ(CR)に連動して回転する特定回転部材(RT)に連結された出力部材(6)と、を備え、
前記リングギヤ(RG)の半径(r1)は、前記第1遊星ギヤ(PG1)の半径(r2)の2倍であり、
前記キャリヤ(CR)の回転軸心であるキャリヤ軸心(X1)に沿う方向を軸方向(L)として、
前記第1遊星ギヤ(PG1)と前記第2遊星ギヤ(PG2)とが、前記キャリヤ軸心(X1)回りに互いに同速で同じ向きに公転するように構成され、
前記軸方向(L)に沿う軸方向視で、前記第1遊星軸心(X2)と前記第2遊星軸心(X3)とが、前記キャリヤ軸心(X1)を挟んで互いに反対側であって、前記キャリヤ軸心(X1)からの距離が同じとなる位置に配置され、
前記軸方向視で、前記第1入力軸心(X4)と前記第2入力軸心(X5)とが、前記キャリヤ軸心(X1)を挟んで互いに反対側に位置するように、前記第1クランク部材(2)が前記第1遊星ギヤ(PG1)に連結されていると共に、前記第2クランク部材(4)が前記第2遊星ギヤ(PG2)に連結されている。
【0083】
この構成によれば、第1入力部材(3)及び第2入力部材(5)の往復運動に伴う第1入力軸心(X4)及び第2入力軸心(X5)のそれぞれの移動軌跡(T1)を、キャリヤ軸心(X1)を基準とした直線状又は楕円状とすることができる。また、第1入力軸心(X4)と第2入力軸心(X5)との位相差を180°又はそれに近い値とすることができる。したがって、第1入力軸心(X4)上に配置された第1入力部材(3)、及び第2入力軸心(X5)上に配置された第2入力部材(5)のそれぞれに、駆動力を伝達し易い動力変換装置(100)を実現することができる。
【0084】
ここで、前記遊星歯車機構(1)は、前記リングギヤ(RG)としての第1リングギヤ(RG1)に加えて、固定された内歯車である第2リングギヤ(RG2)を更に備え、
前記第2遊星ギヤ(PG2)は、前記第2リングギヤ(RG2)に噛み合い、
前記第2リングギヤ(RG2)の半径(r3)は、前記第2遊星ギヤ(PG2)の半径(r4)の2倍であると好適である。
【0085】
この構成によれば、第1クランク部材(2)からキャリヤ(CR)までの駆動力の伝達構造と、第2クランク部材(4)からキャリヤ(CR)までの駆動力の伝達構造とを類似のものとし易い。したがって、動力変換装置(100)を簡素な構成とし易い。
また、本構成によれば、第1リングギヤ(RG1)の半径(r1)と第2リングギヤ(RG2)の半径(r3)を同じにした場合には、第1リングギヤ(RG1)及び第1遊星ギヤ(PG1)と、第2リングギヤ(RG2)及び第2遊星ギヤ(PG2)とで部品の共通化を図ることができるため、部品の種類数の低減を図り易い。
【0086】
また、前記遊星歯車機構(1)は、前記第1遊星軸心(X2)上であって前記第1遊星ギヤ(PG1)とは前記軸方向(L)の異なる位置に配置され、前記第1遊星ギヤ(PG1)と一体的に回転するように連結された第3遊星ギヤ(PG3)と、前記キャリヤ軸心(X1)上に配置されたサンギヤ(SG)と、を更に備え、
前記第2遊星ギヤ(PG2)の半径(r4)と前記第3遊星ギヤ(PG3)の半径(r5)とが同じであり、
前記第2遊星ギヤ(PG2)と前記第3遊星ギヤ(PG3)とが、前記サンギヤ(SG)に噛み合っていると好適である。
【0087】
この構成によれば、第1遊星ギヤ(PG1)と第2遊星ギヤ(PG2)とが同速で同じ向きに回転する構成を適切に実現することができる。
【0088】
また、前記第1遊星軸心(X2)と前記第1入力軸心(X4)との前記第1遊星径方向(Rp1)の距離(d1)と、前記第2遊星軸心(X3)と前記第2入力軸心(X5)との前記第2遊星径方向(Rp2)の距離(d2)とが同じであり、
前記第1遊星ギヤ(PG1)の半径(r2)と、前記第1遊星軸心(X2)と前記第1入力軸心(X4)との前記第1遊星径方向(Rp1)の距離(d1)とが異なっていると好適である。
【0089】
この構成によれば、第1入力部材(3)及び第2入力部材(5)の往復運動に伴う第1入力軸心(X4)及び第2入力軸心(X5)のそれぞれの移動軌跡(T1)を、キャリヤ軸心(X1)を中心とした楕円状とすることができる。
また、本構成によれば、第1遊星軸心(X2)と第1入力軸心(X4)との第1遊星径方向(Rp1)の距離(d1)を第1遊星ギヤ(PG1)の半径(r2)よりも大きくした場合には、その分、第1入力部材(3)及び第2入力部材(5)の往復運動のストロークを大きく確保し易くなる。そのため、遊星歯車機構(1)の小型化を図り易い。
また、本構成によれば、第1遊星軸心(X2)と第1入力軸心(X4)との第1遊星径方向(Rp1)の距離(d1)を第1遊星ギヤ(PG1)の半径(r2)よりも小さくした場合には、第1入力部材(3)及び第2入力部材(5)の往復運動に伴う第1入力軸心(X4)及び第2入力軸心(X5)のそれぞれの回転の向き(楕円状に移動する向き)と、キャリヤ(CR)の回転の向きとを同じにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示に係る技術は、往復運動を回転運動に変換する動力変換装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
100:動力変換装置、1:遊星歯車機構、RG:リングギヤ、RG1:第1リングギヤ、RG2:第2リングギヤ、PG1:第1遊星ギヤ、PG2:第2遊星ギヤ、PG3:第3遊星ギヤ、CR:キャリヤ、SG:サンギヤ、2:第1クランク部材、3:第1入力部材、4:第2クランク部材、5:第2入力部材、6:出力部材、RT:特定回転部材、X1:キャリヤ軸心、X2:第1遊星軸心、X3:第2遊星軸心、X4:第1入力軸心、X5:第2入力軸心、L:軸方向、Rp1:第1遊星径方向、Rp2:第2遊星径方向