(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096909
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】食品保存用積層シート、蓋体、包装容器、及び食品用保存袋
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20250623BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250623BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250623BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20250623BHJP
A23B 2/767 20250101ALI20250623BHJP
A23B 2/762 20250101ALI20250623BHJP
A23B 2/00 20250101ALI20250623BHJP
【FI】
B65D85/50 100
B65D65/40 D
B32B27/00 H
B32B27/18 F
A23L3/3535
A23L3/3526
A23L3/00 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212898
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小菅 康幸
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 丘雅
【テーマコード(参考)】
3E035
3E086
4B021
4F100
【Fターム(参考)】
3E035AA04
3E035AA05
3E035AA07
3E035BA08
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3E035BD02
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3E086CA23
3E086CA25
4B021LA14
4B021LA15
4B021MC01
4B021MK22
4B021MK24
4B021MP08
4F100AA01A
4F100AB33A
4F100AH02B
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4F100EH66A
4F100GB16
4F100GB23
4F100JD02A
4F100JL12C
(57)【要約】
【課題】保存する食品が抗菌成分を含有するシートに接触する必要がなく、空気中の菌を安定して抑制できる食品保存用積層シート、蓋体、包装容器、及び食品用保存袋を提供すること。
【解決手段】ガスバリア性を有する表面基材10と、イソチオシアン酸エステルを含有する揮発性薬剤含有層12と、揮発性薬剤を徐放可能な徐放性層14と、をこの順に含む、食品保存用積層シート1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性を有する表面基材と、
イソチオシアン酸エステルを含有する揮発性薬剤含有層と、
揮発性薬剤を徐放可能な徐放性層と、
をこの順に含む、食品保存用積層シート。
【請求項2】
前記徐放性層は、熱融着樹脂を含有する、
請求項1に記載の食品保存用積層シート。
【請求項3】
前記徐放性層は、ポリプロピレン又はポリエチレンを含有する、
請求項1又は2に記載の食品保存用積層シート。
【請求項4】
前記イソチオシアン酸エステルとして、アリルイソチオシアネートを含む、
請求項1又は2に記載の食品保存用積層シート。
【請求項5】
前記表面基材は、ガスバリア性を有する樹脂基材、又はガスバリア性を有する紙基材を含む、
請求項1又は2に記載の食品保存用積層シート。
【請求項6】
前記表面基材は、ガスバリア層と、前記ガスバリア層に積層された、樹脂基材又は紙基材とを含む、
請求項1又は2に記載の食品保存用積層シート。
【請求項7】
前記ガスバリア層は、無機材料蒸着層、金属箔層、及びガスバリア性樹脂を含有するガスバリア性樹脂層からなる群より選択される少なくとも1つを含む、
請求項6に記載の食品保存用積層シート。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の食品保存用積層シートを備える、蓋体。
【請求項9】
請求項8に記載の蓋体と、
開口部が形成され、食品を収容可能な容器本体と、を備え、
前記蓋体の前記徐放性層が、前記開口部の少なくとも一部を覆うように構成可能な、包装容器。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の食品保存用積層シートを含む袋形状の袋本体を備え、
前記袋本体は、前記徐放性層が内側表面に位置している、食品用保存袋。
【請求項11】
前記袋本体には、開口部が形成されており、
前記袋本体は、前記開口部を封止可能な封止部を更に備える、
請求項10に記載の食品用保存袋。
【請求項12】
袋形状の袋本体の内側表面の少なくとも一部に、請求項1又は2に記載の食品保存用積層シートが貼付された、
食品用保存袋。
【請求項13】
前記袋本体には、開口部が形成されており、
前記袋本体は、前記開口部を封止可能な封止部を更に備える、
請求項12に記載の食品用保存袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品保存用積層シート、蓋体、包装容器、及び食品用保存袋に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を保存する包装体として、製造後のプリンやヨーグルト等のデザート類を収納する食品容器や、製造後の菓子、畜産加工品、水産加工品、又は惣菜等を収納する袋体が使用されている。また、家庭、施設や飲食店等で食品を保存する包装体として、例えば、開閉自在なジッパー等が備えられた袋体が使用されている。しかし、一般的な環境で、食品を包装する場合に、空気中の菌により、食品にカビ等が発生し、問題となる可能性がある。
【0003】
カビの発生を防止するための物として、例えば、特許文献1には、ビニルエステル含量が10~40重量%のエチレン-ビニルエステル共重合体10~50重量%、タッキファイヤー20~50重量%、ワックス5~50重量%及びHLB値6以上のモノグリセリド1~10重量%からなる防カビ性ホットメルト接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているホットメルト接着剤を用いる場合、そのホットメルト接着剤は、抗菌成分が揮発する揮発性材料で構成されていない。このため、ホットメルト接着剤を用いた包装資材を使用して包装した食品に発生するカビを防止するためには、その食品が包装資材に接触する必要がある。よって、食品のカビの発生を防止することが難しいという問題がある。
【0006】
このように、保存する食品が抗菌成分を含有するシートに接触する必要がなく、空気中の菌を安定して抑制できる食品保存用積層シートはいまだ開発されておらず、この点について改善の余地があるのが実情である。
【0007】
本発明は、上述した実情等に鑑みてなされたものであり、保存する食品が抗菌成分を含有するシートに接触する必要がなく、空気中の菌を安定して抑制できる食品保存用積層シート、蓋体、包装容器、及び食品用保存袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、ガスバリア性を有する表面基材と、イソチオシアン酸エステルを含有する揮発性薬剤含有層と、揮発性薬剤を徐放可能な徐放性層と、をこの順に含む、食品保存用積層シートとすることに知見を得て、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
(1)
ガスバリア性を有する表面基材と、イソチオシアン酸エステルを含有する揮発性薬剤含有層と、揮発性薬剤を徐放可能な徐放性層と、をこの順に含む、食品保存用積層シートである。
(2)
前記徐放性層は、熱融着樹脂を含有する、(1)に記載の食品保存用積層シートである。
(3)
前記徐放性層は、ポリプロピレン又はポリエチレンを含有する、(1)又は(2)に記載の食品保存用積層シートである。
(4)
前記イソチオシアン酸エステルとして、アリルイソチオシアネートを含む、(1)又は(2)に記載の食品保存用積層シートである。
(5)
前記表面基材は、ガスバリア性を有する樹脂基材、又はガスバリア性を有する紙基材を含む、(1)又は(2)に記載の食品保存用積層シートである。
(6)
前記表面基材は、ガスバリア層と、前記ガスバリア層に積層された、樹脂基材又は紙基材とを含む、(1)又は(2)に記載の食品保存用積層シートである。
(7)
前記ガスバリア層は、無機材料蒸着層、金属箔層、及びガスバリア性樹脂を含有するガスバリア性樹脂層からなる群より選択される少なくとも1つを含む、(6)に記載の食品保存用積層シートである。
(8)
(1)又は(2)に記載の食品保存用積層シートを備える、蓋体である。
(9)
(8)に記載の蓋体と、開口部が形成され、食品を収容可能な容器本体と、を備え、前記蓋体の前記徐放性層が、前記開口部の少なくとも一部を覆うように構成可能な、包装容器である。
(10)
(1)又は(2)に記載の食品保存用積層シートを含む袋形状の袋本体を備え、前記袋本体は、前記徐放性層が内側表面に位置している、食品用保存袋である。
(11)
前記袋本体には、開口部が形成されており、前記袋本体は、前記開口部を封止可能な封止部を更に備える、(10)に記載の食品用保存袋である。
(12)
袋形状の袋本体の内側表面の少なくとも一部に、(1)又は(2)に記載の食品保存用積層シートが貼付された、食品用保存袋である。
(13)
前記袋本体には、開口部が形成されており、前記袋本体は、前記開口部を開閉自在に封止可能な封止部を更に備える、(12)に記載の食品用保存袋である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保存する食品が抗菌成分を含有するシートに接触する必要がなく、空気中の菌を安定して抑制できる食品保存用積層シート、蓋体、包装容器、及び食品用保存袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る食品保存用積層シートの第1の実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る食品保存用積層シートの第2の実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る食品保存用積層シートの第3の実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る包装容器の一態様を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る食品保存用袋の第1の態様を示す概念図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る食品保存用袋の第2の態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0014】
そして、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
また、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0016】
1.食品保存用積層シート
【0017】
図1は、本実施形態に係る食品保存用積層シートの第1の実施形態の断面図である。
【0018】
第1の実施形態に係る食品保存用積層シート1は、ガスバリア性を有する表面基材10、イソチオシアン酸エステルを含有する揮発性薬剤含有層12と、揮発性薬剤を徐放可能な徐放性層14と、をこの順に含む、食品保存用積層シート1である。イソチオシアン酸エステルは、空気中の菌の発生及び増殖を抑制することができる揮発性薬剤である。なお、特に断りがない限り、本明細書中の「シート」という用語には「フィルム」等と呼ばれるものも包含する。同様に、本明細書中の「フィルム」という用語には「シート」等と呼ばれるものも包含する。
【0019】
食品保存用積層シート1が、ガスバリア性を有する表面基材10と、イソチオシアン酸エステルを含有する揮発性薬剤含有層12と、揮発性薬剤を徐放可能な徐放性層14と、をこの順に含むことにより、空気中の菌の発生及び増殖を安定して抑制することができるため、保存する食品が食品保存用積層シート1に接触しなくても、食品におけるカビの発生を防止することができる。なお、第1の実施形態に係る食品保存用積層シート1は、表面基材10、揮発性薬剤含有層12、及び徐放性層14を、この順で含んでいればよく、必ずしもこれら3層の構成に限定するものではない。例えば、必要に応じて、各層の間に、別の層を配置した4層以上の構成にしてもよいことはいうまでもない。
【0020】
さらに、第1の実施形態に係る食品保存用積層シート1は、後述する包装容器4(
図4及び
図5参照)及び食品用保存袋7、8(
図6及び
図7参照)において、食品保存用積層シート1の徐放性層14が、収納された食品に面するように備えられることにより、空気中の菌の発生及び増殖をより一層安定して抑制することができ、食品におけるカビの発生を一層効果的に防止することもできる。
【0021】
以下、食品保存用積層シート1の各構成部材について説明する。
【0022】
(表面基材10)
【0023】
ガスバリア性を有する表面基材10は、揮発性薬剤の24時間当たりの放出速度が0.05g/m2以下であることが好ましい。そして、ガスバリア性を有する表面基材10は、揮発性薬剤を徐放しない非徐放性層であることがより更に好ましい。ガスバリア性を有する表面基材10が、上述した揮発性薬剤の24時間当たりの放出速度を有することにより、揮発性薬剤が表面基材10から徐放されることを一層効果的に防止できる。その結果、これを用いた包装容器及び食品用保存袋等において、揮発性薬剤を、食品に面する方向に配置した徐放性層14から、包装容器及び食品用保存袋の内部の空気中に一層効果的に徐放することができる。
【0024】
なお、ガスバリア性を有する表面基材10における揮発性薬剤の24時間当たりの放出速度は、イソチオシアン酸エステルを含有する揮発性薬剤含有層12の両側にガスバリア性を有する表面基材10を積層した積層体サンプルを作成し、大気中に放置し、24時間後に重量を測定し、重量減少値を放出速度(g/m2)として算出することができる。
【0025】
上述したガスバリア性を有する表面基材10の構成としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができるが、例えば、
(1)自身がガスバリア性を有する表面基材10(例えば、
図1参照)、
(2)ガスバリア層202と、ガスバリア層202に積層された、基材(樹脂基材又は紙基材)200とを含む表面基材20(例えば、後述する
図2参照)、
等の構成が挙げられる。(1)の場合は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1の単層の表面基材10が例示され、(2)の場合は、後述する第2の実施形態の食品保存用積層シート2の複数層の表面基材20が例示される。
【0026】
表面基材10が、(1)自身がガスバリア性を有する表面基材10である場合の態様としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができる。表面基材10の具体例としては、例えば、ガスバリア性を有する樹脂基材、ガスバリア性を有する紙基材等が挙げられる。
【0027】
表面基材10の好適例としては、ガスバリア性を有する樹脂基材又はガスバリア性を有する紙基材を含むことが好ましい。表面基材10は、揮発性薬剤の24時間当たりの放出速度が、0.05g/m2以下であることが好ましい。また、表面基材10は、揮発性薬剤を徐放しない、非徐放性を有することがより更に好ましい。
【0028】
ガスバリア性を有する樹脂基材の場合の樹脂としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂フィルム等が挙げられる。これらの中でも、加工性や軽量性や寸法安定性の観点、及び、揮発性薬剤の徐放を効果的に抑制するという観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0029】
ガスバリア性を有する紙基材の場合の紙基材の種類としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができるが、例えば、セロファン等が挙げられる。
【0030】
表面基材10が、(1)自身がガスバリア性を有する表面基材10である場合の、表面基材10の厚さは、特に限定されないが、いずれも、1~300μmであることが好ましい。その下限は、より好ましくは10μm以上であり、更に好ましくは15μm以上である。その上限は、より好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは50μm以下である。
【0031】
上述した樹脂基材及び紙基材以外にも、自身がガスバリア性を有する表面基材10としては、例えば、アルミ等の金属箔材料を用いることもできる。
【0032】
表面基材10は、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。多層の場合には、上述した(2)の態様等も包含されることはいうまでもない((2)の態様については、
図2において後述する)。
【0033】
上述した表面基材10には、必要に応じて、印字層等を備えることが好ましい。また、必要に応じて、填料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等を含有することが好ましい。
【0034】
(揮発性薬剤含有層12)
【0035】
第1の実施形態に係る食品保存用積層シート1は、イソチオシアン酸エステルを含有する揮発性薬剤含有層12を含む。イソチオシアン酸エステルは揮発性の薬剤であり、空気中の菌の発生及び増殖を抑制し、食品のカビの発生を防止する抗菌作用を有する。揮発性薬剤含有層12は、イソチオシアン酸エステルを混練した樹脂材料で形成されることが好ましい。混練する樹脂材料としては、イソチオシアン酸エステルと混練可能で、イソチオシアン酸エステルから揮発するガスに対し、透過性を有するものが好ましい。このような樹脂材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
イソチオシアン酸エステルとしては、例えば、アリルイソチオシアネート、イソチオシアン酸メチル、イソチオシアン酸エチル、イソチオシアン酸イソブチル、イソチオシアン酸n-ブチル、イソチオシアン酸フェニル、イソチオシアン酸ベンジル等が挙げられる。中でも、抗菌性の観点からは、アリルイソチオシアネートを含むことが好ましい。アリルイソチオシアネートは、ワサビやからしの含有成分であり、人体への安全性が高いという観点から、食品用の抗菌成分として、より好適に使用することができる。イソチオシアン酸エステル類は1種単独であっても2種以上併用してもよい。
【0037】
イソチオシアン酸エステルとして、アリルイソチオシアネートを使用する場合、その含有量は、揮発性薬剤含有層12において、0.01~20g/m2であることが好ましい。その下限は、より好ましくは0.1g/m2以上である。また、その上限は、より好ましくは5g/m2以下である。アリルイソチオシアネートの含有量が上記範囲であることにより、アリルイソチオシアネートが有する抗菌成分により、空気中の菌の発生及び増殖を一層効果的に抑制することができ、保存した食品にカビが発生することを一層効果的に防止でき、その結果、食品を一層長持ちさせることが可能になる。また、上述した上限以下であることにより、食品へのアリルイソチオシアネートの着臭を一層効果的に防止でき、食品の風味を損なうことを一層効果的に抑制できる。
【0038】
揮発性薬剤含有層12の厚さは、特に限定されないが、1~300μmであることが好ましい。その下限は、より好ましくは5μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。その上限は、より好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは50μm以下である。
【0039】
揮発性薬剤含有層12は更に粘着剤を含有することが好ましい。粘着剤を含有する揮発性薬剤含有層12は、粘着剤と、上述した樹脂材料等と、アリルイソチオシアネートを混練することにより構成される揮発性薬剤含有層12であることが好ましい。揮発性薬剤含有層12が粘着剤を含有することにより、揮発性薬剤含有層12を、表面基材10及び/又は徐放性層14と一層容易に積層することができる。また、食品保存用積層シート1の全体の厚みが厚くなりすぎることを効果的に防止することができる。
【0040】
揮発性薬剤含有層12に必要に応じて含有される粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、合成ゴム系ホットメルト粘着剤、天然ゴム等のゴム系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニルアルキルエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。合成ゴム系ホットメルト粘着剤としては、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)、スチレン-イソプレン共重合体(SI)、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体(SEP)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)及びこれらの混合物(例えば、ポリプロピレンとエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)の混合物等)等の熱可塑性エラストマー系接着剤;イソプレンゴム、ポリブテンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム等の合成ゴム等を主成分とするものが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。このような粘着剤を選択することにより、揮発性薬剤含有層12を形成する際に、イソチオシアン酸エステルを粘着剤と混合して用いることができるため、有機溶媒に粘着剤を溶かす必要がなくなる。
【0041】
(徐放性層14)
【0042】
第1の実施形態に係る食品保存用積層シート1は、揮発性薬剤を徐放可能な徐放性層14を含む。徐放性層14は、揮発性薬剤の抗菌成分を徐放可能な性質を有する材料を含有する層であれば、特に限定されないが、熱融着樹脂を含有することが好ましい。熱融着樹脂を含有することにより、徐放性層14を介して、他の部材をより容易に封止(例えば、ヒートシール等)することができる。封止可能であることで、保存の密封性を向上させることができる。
【0043】
また、徐放性層14は、揮発性薬剤の24時間当たりの放出速度が表面基材10の放出速度よりも大きいことが好ましい。例えば、徐放性層14は、揮発性薬剤の24時間当たりの放出速度が0.05~20g/m2であることが好ましい。揮発性薬剤の放出速度が上述の範囲であることにより、揮発性薬剤の抗菌成分を空気中に一層効果的に徐放することができ、一方で、抗菌成分による食品への着臭を一層効果的に防止することができる。
【0044】
なお、徐放性層14における揮発性薬剤の24時間当たりの放出速度は、イソチオシアン酸エステルを含有する揮発性薬剤含有層12の両側に徐放性層14を積層した積層体サンプルを作成し、大気中に放置し、24時間後に重量を測定し、重量減少値を放出速度(g/m2)として算出することができる。
【0045】
徐放性層14を構成する熱融着樹脂としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができるが、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。これらの中でも、ポリプロピレン又はポリエチレンを含有することが好ましい。ポリプロピレン又はポリエチレンを含有することにより、揮発性薬剤の抗菌成分を一層効果的に徐放することができる。
【0046】
徐放性層14は、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
【0047】
なお、徐放性層14の厚さは、特に限定されないが、食品を保存した包装容器4内又は食品用保存袋7、8内等において所望の抗菌効果を発揮するために、徐放性層14からの抗菌成分の単位時間当たりの放出量や、使用する包装容器や袋体の容量等を考慮して、設定することが好ましい。例えば、徐放性層14の厚さは、1~200μmであることが好ましい。その下限は、より好ましくは5μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。その上限は、より好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは50μm以下である。
【0048】
上述した徐放性層14には、必要に応じて、印字層等を備えることが好ましい。
【0049】
図2は、本実施形態に係る食品保存用積層シートの第2の実施形態を示す断面図である。
【0050】
第2の実施形態に係る食品保存用積層シート2は、上記した(2)の態様の一例である。すなわち、食品保存用積層シート2は、表面基材20が、ガスバリア層202と、ガスバリア層202に積層された、基材200とを含む態様である。この基材200は、樹脂基材又は紙基材であることが好ましい(以下、「基材(樹脂基材又は紙基材)200」等と総称することがある)。ここでは第1の実施形態との相違点を中心に説明を行うが、所望の効果が得られる範囲内であれば、第1の実施形態において説明した部材や構成等を、第2の実施形態においても適宜採用することができることはいうまでもない。
【0051】
例えば、徐放性層24は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1において使用可能な徐放性層14として説明された構成及び材料を使用することができる。よって、食品保存用積層シート2の徐放性層24は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1と同様の徐放性層24であってもよい。
【0052】
そして、揮発性薬剤含有層22は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1において使用可能な揮発性薬剤含有層12として説明された構成及び材料を使用することができる。よって、食品保存用積層シート2の揮発性薬剤含有層22は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1と同様の揮発性薬剤含有層22であってもよい。
【0053】
その他の任意の層についても、第1の実施形態において説明した層構成及び材料を使用することができる。
【0054】
(ガスバリア層202)
【0055】
食品保存用積層シート2の表面基材20を構成するガスバリア層202は、揮発性薬剤の24時間当たりの放出速度が0.05g/m2以下であることが好ましい。そして、ガスバリア層202は、揮発性薬剤を徐放しない、非徐放性層であることがより更に好ましい。これにより、ガスバリア層202が揮発性薬剤の徐放をより効果的に抑制できるため、表面基材20から揮発性薬剤が空気中に徐放されることを、一層効果的に防止することができる。なお、上述の効果を一層高めるために、ガスバリア層202は、基材(樹脂基材又は紙基材)200と、揮発性薬剤含有層22との間に配置されることが好ましい。
【0056】
ガスバリア層202の具体例としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができるが、例えば、無機材料蒸着層、金属酸化物蒸着層、金属箔層、及びガスバリア性樹脂を含有するガスバリア性樹脂層からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0057】
無機材料蒸着層としては、例えば、アルミ蒸着層等が挙げられる。無機材料蒸着層は、基材(樹脂基材又は紙基材)200の少なくとも一方の表面に無機材料を蒸着させて構成することができる。
【0058】
金属酸化物蒸着層としては、例えば、酸化アルミニウム層、酸化ケイ素層、酸化マグネシウム層等が挙げられる。金属酸化物蒸着層は、基材(樹脂基材又は紙基材)200の少なくとも一方の表面に金属酸化物を蒸着させて構成することができる。
【0059】
金属箔層としては、例えば、アルミ箔等によって構成された層が挙げられる。金属箔層を基材(樹脂基材又は紙基材)200に積層する方法は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができる。
【0060】
ガスバリア性樹脂層のガスバリア性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。ガスバリア性樹脂を、基材(樹脂基材又は紙基材)200に積層する方法は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができる。
【0061】
ガスバリア層202は、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
【0062】
ガスバリア層202の厚さは、特に限定されない。
【0063】
(基材(樹脂基材又は紙基材)200)
【0064】
上述した基材(樹脂基材又は紙基材)200の材料及び構成は、本実施形態の効果が得られる範囲内であれば、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができる。
【0065】
樹脂基材としては、例えば、樹脂フィルム等が挙げられる。樹脂フィルムの具体例としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂フィルム等が挙げられる。これらの中でも、揮発性薬剤の徐放を一層効果的に抑制するという観点において、ポリエステルのフィルム(ポリエステル系フィルム)が好ましく、ポリエチレンテレフタレートのフィルム(ポリエチレンテレフタレート系フィルム)がより好ましい。
【0066】
紙基材としては、特に限定されず、用途に応じて適宜選択して使用することができるが、例えば、紙、合成紙、不織布等が挙げられる。
【0067】
基材(樹脂基材又は紙基材)200は、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
【0068】
基材(樹脂基材又は紙基材)200の厚さは、特に限定されないが、いずれも、1~300μmであることが好ましい。その下限は、より好ましくは10μm以上であり、更に好ましくは15μm以上である。その上限は、より好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは50μm以下である。
【0069】
上述した表面基材20には、必要に応じて、印字層等を備えることが好ましい。また、上述した表面基材20には、必要に応じて、填料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等を含有することが好ましい。
【0070】
図3は、本実施形態に係る食品保存用積層シートの第3の実施形態を示す断面図である。
【0071】
第3の実施形態に係る食品保存用積層シート3は、揮発性薬剤含有層32と表面基材30との間に、更に粘着剤層36を備える態様の一例である。ここでは第1の実施形態及び第2の実施形態との相違点を中心に説明を行うが、所望の効果が得られる範囲内であれば、第1の実施形態及び第2の実施形態において説明した部材や構成等を、第3の実施形態においても適宜採用することができることはいうまでもない。
【0072】
例えば、徐放性層34は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1において使用可能な徐放性層14及び第2の実施形態の食品保存用積層シート2において使用可能な徐放性層24として説明された構成及び材料を使用することができる。よって、食品保存用積層シート3の徐放性層34は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1と同様の徐放性層34であってもよい。
【0073】
揮発性薬剤含有層32は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1において使用可能な揮発性薬剤含有層12及び第2の実施形態の食品保存用積層シート2において使用可能な揮発性薬剤含有層22として説明された構成及び材料を使用することができる。よって、食品保存用積層シート3の揮発性薬剤含有層32は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1と同様の揮発性薬剤含有層32であってもよい。
【0074】
揮発性薬剤含有層32は、粘着剤層36を備えることが好ましい。また、このとき、揮発性薬剤含有層32は粘着剤を含有しない(0質量%)ことが更に好ましい。特に、揮発性薬剤含有層32におけるアリルイソチオシアネートの含有量が、0.01g/m2を超えて20g/m2以下である場合に、揮発性薬剤含有層32が粘着剤層36を備えると、上述した効果が一層向上することが期待できる。
【0075】
表面基材30は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1において使用可能な表面基材10及び第2の実施形態の食品保存用積層シート2において使用可能な表面基材20として説明された構成及び材料を使用することができる。よって、食品保存用積層シート3の表面基材30は、第1の実施形態の食品保存用積層シート1のようにガスバリア性を有する表面基材10のような構成であってもよいし、第2の実施形態の食品保存用積層シート2のように、ガスバリア層202と、ガスバリア層202に積層された、基材200とを含む表面基材20のような構成であってもよい。
【0076】
このように、表面基材30は、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
【0077】
(粘着剤層36)
【0078】
粘着剤層36の材料としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニルアルキルエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びフッ素系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの中でも、アクリル系粘着剤を含有することが好ましい。
【0079】
粘着剤層36は、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
【0080】
粘着剤層36の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましい。その下限は、より好ましくは5μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。その上限は、より好ましくは50μm以下であり、更に好ましくは25μm以下である。
【0081】
上述した粘着剤層36は、必要に応じて、填料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等を含有することが好ましい。
【0082】
その他の任意の層についても、第1の実施形態及び第2の実施形態において説明した層構成及び材料を使用することができる。
【0083】
2.食品保存用積層シートの製造方法
【0084】
上述の食品保存用積層シート1、2、3の製造方法としては、ガスバリア性を有する表面基材10、20、30と、イソチオシアン酸エステルを含有する揮発性薬剤含有層12、22、32と、揮発性薬剤を徐放可能な徐放性層14、24、34と、をこの順に形成できればよく、特に限定されない。好適例の一つとしては、例えば、食品保存用積層シート1、2、3は、ドライラミネーションや共押出し、押出ラミネーション等の公知の手段によって各層を積層する方法が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0085】
3.食品保存用積層シートの用途
【0086】
本実施形態に係る食品保存用積層シート1、2、3は、食品保存用の包装容器、食品用保存袋等の部材として使用することができる。その態様は、包装容器及び保存袋の形状や用途等に応じて、蓋体として使用したり、本体として使用したり、形態を改変して使用することができるであろう。
【0087】
図4は、本実施形態に係る包装容器の一態様を示す斜視図である。
図5は、
図4のX-X´線に沿う断面模式図である。
【0088】
本実施形態に係る包装容器4(以下、単に「容器4」と言うこともある)は、容器本体5と蓋体6によって構成される。本実施形態に係る包装容器4は、蓋体6と、開口部54が形成され、食品を収容可能な容器本体5と、を備え、蓋体6の徐放性層14が、開口部54の少なくとも一部を覆うように構成可能な、包装容器4であることが好ましい。さらに、包装容器4は、容器4内に食品を保存して、密閉した状態で保存できることが好ましい。
【0089】
なお、
図4は、容器本体5の開口部54を蓋体6で蓋をした状態を示す。そして、
図4及び
図5では、説明の便宜上、開口部54を誇張して図示しており、包装容器4全体に対する開口部54の大きさ及びその比率は模式的に描画したものであり、必ずしもこれに限定されないことはいうまでもない。
【0090】
(蓋体6)
【0091】
本実施形態に係る蓋体6は、食品保存用積層シート1を備える、蓋体6であることが好ましい。蓋体6の形状は、特に限定されず、用途に合わせて選択することが好ましい。蓋体6の平面視形状としては、例えば、略円形、略楕円形、略三角形、略角丸三角形、略正方形、略長方形、略角丸四角形、略多角形、略角丸多角形等が挙げられる。
【0092】
蓋体6は、その徐放性層14が容器本体5の開口部54全体を覆うことがより好ましい。そして、徐放性層14が開口部54全体を覆い、容器本体5の開口部54を密封可能であることが更に好ましい。容器本体5の開口部54を密封することにより、揮発性薬剤の抗菌成分を外部に拡散することなく、包装容器4の内部に一層効率的に徐放することができ、包装容器4内部の菌の発生及び増殖を一層効果的に抑制することができる。
【0093】
上述した開口部54の密着性の観点から、蓋体6は、徐放性層14が熱融着樹脂を含有することが好ましい。また、開口部54への封止性を高める観点から、蓋体6は、徐放性層14の表面の縁部(又は縁部の近傍)であり、容器本体5のフランジ部52に接触する部分に、熱融着接着剤層が設けられていてもよい。熱融着接着剤層としては、特に限定されない。蓋体6を、その徐放性層14を容器本体5の開口部54に向けて当接した状態で、容器本体5が備えるフランジ部52に、加圧・加熱することにより、熱融着することができる。これにより、容器本体5の開口部54が効率的に密封され、その結果、収納部56に収納された食品のカビの発生を一層効果的に防止できる。
【0094】
なお、ここでは一例として、第1の実施形態である食品保存用積層シート1を用いた場合を例にして説明しているが、第2の実施形態である食品保存用積層シート2や、第3の実施形態である食品保存用積層シート3であってもよい。食品保存用積層シート2、3を使用する場合も、上述した構成をとり得ることはいうまでもない。
【0095】
(容器本体5)
【0096】
容器本体5は、
図4及び
図5に示すように、例えば、その平面視形状が略円形をなす有底筒状体であり、有底筒状をなすことで形成される凹部が収納部56を構成し、この収納部56に食品が収納されることが好ましい。また、収納部56の上端における開口部54の縁部には、蓋体6が熱融着樹脂層(ヒートシール層)等により接合されるフランジ部52を有していることが好ましい。容器本体5の平面視形状は、特に限定されず、用途に合わせて選択することが好ましい。容器本体5の平面視形状としては、例えば、略円形、略楕円形、略三角形、略角丸三角形、略正方形、略長方形、略角丸四角形、略多角形、略角丸多角形等が挙げられる。
【0097】
容器本体5の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の樹脂材料や、板紙を基材としてその両面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層が形成された積層体等が挙げられる。これらの容器本体5の材質は、ガスバリア性を有するものであることが好ましく、気体を徐放しない非徐放性であることがより好ましい。
【0098】
このような包装容器4を用いた食品の包装方法としては、例えば、食品の製造工場等において食品が製造されたときに、この包装容器4に保存(好ましくは密封保存)されてパッケージする包装方法等が挙げられる。かかる包装方法は、高い抗菌作用を発揮できるため、包装された食品の雑菌の発生及び増殖を長時間抑制でき、かつ、食品の鮮度も維持することが期待できる。よって、出荷後にトラック等での長時間輸送、店頭陳列、及び宅配といった場合に、包装容器4が使用されることが好ましい。
【0099】
包装容器4に包装される食品は、特に限定されず、発酵食品、菓子、畜産加工品、水産加工品、惣菜等が挙げられる。また、包装容器4は、高い抗菌作用が期待できるため、例えば、一般的にカビやすいと考えられるパンや餅等の保存にも使用できる。
【0100】
発酵食品としては、食品が菌(乳酸菌、酵母菌等)の働きにより発酵し、この菌が発酵食品において生きているため、発酵が継続しているものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ヨーグルト、チーズ、漬物、味噌、麹、キムチ、ピクルス等が挙げられるが、中でも、ヨーグルト、チーズ、漬物等であることが好ましい。なお、発酵食品を包装容器4に保存した場合には、必要に応じて、包装容器4の少なくとも一部に、発酵食品から発生する二酸化炭素を外部に排出するための微細な開口部(不図示)を有することが好ましい。
【0101】
菓子としては、特に限定されるものではないが、例えば、プリン、ゼリー等のデザート菓子、スポンジケーキ類、タルト・タルトレット類、ドライフルーツ等の砂糖漬け類、チョコレート類、ビスケット類、スナック類の洋菓子が挙げられる。また、特に限定されるものではないが、だんご、饅頭等の練り物又は蒸し物、羊羹、焼き菓子、揚げ菓子、豆菓子等の和菓子が挙げられる。中でも、本実施形態に係る包装容器4に収納し、保存される食品は、デザート菓子、スポンジケーキ類、羊羹等であることが好ましい。
【0102】
畜産加工品としては、特に限定されないがハム、ソーセージ、及びベーコン等の非加熱食肉製品、乾燥食肉製品又は加熱食肉製品、生餃子、生シュウマイ、及びハンバーグ等の食肉加工品等が挙げられる。
【0103】
水産加工品としては、特に限定されないが、例えば、かまぼこ、はんぺん等の練り製品、燻製鮭等の燻製加工品、塩辛製品、佃煮製品、味付けいくら、味付け数の子等の調味加工品が挙げられる。
【0104】
惣菜としては、特に限定されないが、サラダ等の非加熱の惣菜、煮物、焼き物、蒸し物等の加熱後に包装される惣菜、密封包装した後に加熱調理する惣菜等が挙げられる。
【0105】
上述した食品を、本実施形態にかかる包装容器4に収納し保存することにより、蓋体6から収納部56に徐放される揮発性薬剤の抗菌成分により、保存する食品が抗菌成分を含有する蓋体6に接触しなくても、その食品のカビの発生を一層効果的に防止することができる。また、包装容器4は、蓋体6の徐放性層14が、容器本体5の開口部54の少なくとも一部を覆うように構成されることが好ましく、開口部54全体を覆うように構成されることがより好ましい。これにより、ガスバリア性を有する表面基材10が容器本体5の開口部54とは反対側の外側に向けて配置されるため、包装容器4を一層効果的に密封することができ、且つ揮発性薬剤の抗菌成分が包装容器4の外部に漏れることを一層効果的に防止できる。よって、揮発性成分を包装容器4の内部に一層効果的に徐放することができる。その結果、包装容器4内の空気中に存在する菌の発生及び増殖を抑制し、保存した食品をより一層長持ちさせることができる。
【0106】
(食品用保存袋7、8)
【0107】
図6は、本実施形態に係る食品保存用袋の第1の態様を示す概念図である。
【0108】
第1の態様に係る食品用保存袋7は、食品保存用積層シート1を含む袋形状の袋本体70を備え、袋本体70は、徐放性層14が内側表面に位置していることが好ましい。本実施形態に係る袋本体70は、開口部74が形成され、食品を収容可能な収納部76を備え、袋本体70の徐放性層14は、袋本体70の内側表面の少なくとも一部に位置するように構成可能な、食品用保存袋7であることが好ましい。また、袋本体70の徐放性層14は、収納部76の内側表面全体に位置するように構成可能であることがより好ましく、袋本体70の内側表面全体に位置するように構成可能であることが更に好ましい。さらに、食品用保存袋7は、袋本体70内に食品を保存して、密閉した状態で保存できることが好ましい。
【0109】
なお、
図6は、袋本体70の開口部74よりも内側に、開閉自在な封止部72を備えた状態を示すが、開閉自在な封止部72を備えることは必須ではない。そして、
図6の袋本体70を平面視したときの形状は、必ずしもこれに限定されないことはいうまでもない。例えば、袋本体70の底部分には、内側に折り込まれた部分、いわゆるガセットが形成されてもよい。
【0110】
本実施形態に係る食品用保存袋7は、少なくとも一部が食品保存用積層シート1により構成されていることが好ましく、袋本体70の全体が食品保存用積層シート1により構成されていることがより好ましい。このとき、徐放性層14が内側表面に位置していることが好ましい。即ち、本実施形態に係る食品用保存袋7は、食品保存用積層シート1の徐放性層14が袋の内側表面に位置する状態で製袋された食品用保存袋7であることがより更に好ましい。
【0111】
食品用保存袋7に用いられる食品保存用積層シート1の徐放性層14は、例えば、加圧・加熱することにより、熱融着することができる。これにより、袋本体70をより容易に製袋及び封止することができる。また、製袋及び/又は封止時における袋本体70の材料同士の密着性を高める観点から、徐放性層14の少なくとも一部に熱融着接着剤層が設けられていてもよい。熱融着接着剤層としては、特に限定されない。製袋及び封止方法は特に限定されず、従来公知の方法で実施することができる。
【0112】
そして、袋本体70には、開口部74が形成されており、袋本体70は、開口部74を封止可能な封止部(不図示)を更に備えることが好ましい。封止部は、例えば、徐放性層14や、徐放性層14の少なくとも一部に設けられた熱融着接着剤層等により、熱融着されて形成されていることが好ましい(不図示)。このような食品用保存袋7の収納部76に食品を入れ、開口部74を熱融着で封止することにより、揮発性薬剤の抗菌成分を外部に拡散することなく、袋の内部に一層効率的に徐放することができる。その結果、食品用保存袋7内部の菌の発生及び増殖を一層効果的に抑制することができ、収納された食品を一層長期的に保存することができる。
【0113】
また、封止部は、開口部74付近(開口部74よりも内側)に備えられた開閉自在な封止部72であることも好ましい。開閉自在な封止部72としては、例えばジッパー等が挙げられる。開閉自在な封止部72を備えることにより、一度開封した食品であっても、一層長期的に保存することができる。なお、食品用保存袋7が開閉自在な封止部72を備える場合には、食品を収納する収納部76が食品保存用積層シート1で構成されていることが好ましい。さらに、食品用保存袋7は、開口部74よりも内側に開閉自在な封止部72を備え、開口部74が、上述した熱融着等により更に封止されていることも好ましい。
【0114】
袋本体70の少なくとも一部が、食品保存用積層シート1以外の材質で構成されている場合は、その材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の樹脂材料や、板紙を基材としてその両面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層が形成された積層体等が挙げられる。これらの材質は、ガスバリア性を有するものであることが好ましく、気体を徐放しない非徐放性であることがより好ましい。
【0115】
このような食品用保存袋7を用いた食品の包装方法としては、例えば、食品の製造工場等において食品が製造されたときに、この食品用保存袋7に保存(好ましくは密封保存)されてパッケージする包装方法等が挙げられる。かかる包装方法は、高い抗菌作用を発揮できるため、包装された食品の雑菌の発生及び増殖を長時間抑制でき、かつ、食品の鮮度も維持することが期待できる。よって、出荷後にトラック等での長時間輸送、店頭陳列、及び宅配といった場合に、食品用保存袋7が使用されることが好ましい。また、開閉自在な封止部72を有する食品用保存袋7の場合は、家庭や各種施設等において、食品の保存、調理、加温及び/又は冷凍のために使用されることも好ましい。
【0116】
食品用保存袋7に包装される食品は、特に限定されず、例えば、包装容器4に保存することが好ましい食品と同様の、発酵食品、菓子、畜産加工品、水産加工品、惣菜、パンや餅等が挙げられる。
【0117】
なお、ここでは一例として、第1の実施形態である食品保存用積層シート1を用いた場合を例にして説明をしているが、第2の実施形態である食品保存用積層シート2や、第3の実施形態である食品保存用積層シート3であってもよい。食品保存用積層シート2、3を使用する場合も、上述した構成をとり得ることはいうまでもない。
【0118】
図7は、本実施形態に係る食品保存用袋の第2の態様を示す概念図である。
【0119】
本実施形態に係る食品用保存袋8は、袋形状の袋本体80の内側表面の少なくとも一部に、食品保存用積層シート88が貼付されていることが好ましい。本実施形態に係る袋本体80は、開口部84が形成され、食品を収容可能な収納部86と、を備え、袋本体80の内側表面の少なくとも一部に食品保存用積層シート88が貼付されていることが好ましい。さらに、食品用保存袋8は、袋本体80内に食品を保存して、密閉した状態で保存できることが好ましい。これにより、食品用保存袋8の内部に揮発性薬剤含有層12の抗菌成分をより効果的に徐放することができる。
【0120】
なお、
図7は、袋本体80の開口部84よりも内側に、開閉自在な封止部82を備えた状態を示すが、開閉自在な封止部82を備えることは必須ではない。そして、
図7の袋本体80を平面視したときの形状は、必ずしもこれに限定されないことはいうまでもない。例えば、食品用保存袋8の底部分には、内側に折り込まれた部分、いわゆるガセットが形成されてもよい。
【0121】
貼付された食品保存用積層シート88として、第1の実施形態である食品保存用積層シート1を用いた場合を例にして説明する。本実施形態に係る食品用保存袋8は、貼付された食品保存用積層シート1の表面基材10が袋本体80の内側表面に面し、徐放性層14が食品側に面するように配置されることが好ましい。また、食品保存用積層シート1は、例えば、表面基材10の少なくとも一部に接着剤または粘着剤を介して袋本体80の内側表面に貼着されることが好ましい。これにより、食品用保存袋8の内部に揮発性薬剤含有層12の抗菌成分をより効果的に徐放することができる。接着剤または粘着剤としては、特に限定されない。
【0122】
袋本体80の内側表面に貼付される食品保存用積層シート1の面積は特に限定されないが、食品用保存袋8内部での抗菌効果を一層効果的に発揮するために、袋本体80の容量と抗菌成分の放出速度を考慮して、食品保存用積層シート1の面積を設定することが好ましい。
【0123】
袋本体80は特に限定されず、従来公知の袋体を用いることができる。袋本体80の材質も特に限定されずない。なお、抗菌効果を一層効果的に発揮するためには、これらの袋本体80の材質は、ガスバリア性を有するものであることが好ましく、気体を徐放しない非徐放性であることがより好ましい。
【0124】
また、袋本体80には、開口部84が形成されており、袋本体80は、開口部84を封止可能な封止部を更に備えることが好ましい。封止部の形成方法は特に限定されないが、例えば、袋本体80が熱融着されて形成されることが好ましい(不図示)。また、開口部84の少なくとも一部に、熱融着接着剤層が設けられて、熱融着により封止部が形成されることも好ましい(不図示)。食品保存用積層シート1が内部に貼付された食品用保存袋8の収納部86に食品を入れ、開口部84を封止することにより、揮発性薬剤の抗菌成分を外部に拡散することなく、食品用保存袋8の内部に一層効率的に徐放することができる。その結果、食品用保存袋8内部の菌の発生及び増殖を一層効果的に抑制することができ、収納された食品を一層長期的に保存することができる。
【0125】
封止部は、開口部84付近(開口部84よりも内側)に備えられた開閉自在な封止部82であることも好ましい。開閉自在な封止部82としては、例えばジッパー等が挙げられる。開閉自在な封止部82を備えることにより、一度開封した食品であっても、一層長期的に保存することができる。そして、食品用保存袋8は、開口部84よりも内側に開閉自在な封止部82を備え、開口部84が、上述した熱融着等により更に封止されていることも好ましい。
【0126】
このような食品用保存袋8を用いた食品の包装方法としては、上述の食品用保存袋の第1の態様で説明された方法が挙げられる。
【0127】
食品用保存袋8に包装される食品は、特に限定されず、例えば、上述の包装容器4に保存することが好ましい食品として説明された、発酵食品、菓子、畜産加工品、水産加工品、惣菜、パンや餅等が挙げられる。
【0128】
なお、ここでは一例として、第1の実施形態である食品保存用積層シート1を用いた場合を例にして説明をしているが、第2の実施形態である食品保存用積層シート2や、第3の実施形態である食品保存用積層シート3であってもよい。食品保存用積層シート2、3を使用する場合も、上述した構成をとり得ることはいうまでもない。
【0129】
以上説明したように、本実施形態に係る食品保存用積層シート1、2、3は、例えば、発酵食品、菓子、畜産加工品、水産加工品、惣菜、パンや餅等を含む食品に対する包装容器4の蓋体6や食品用保存袋7、8として好適に使用できる。本実施形態に係る食品保存用積層シート1、2、3は、食品を包装するときに用いられる包装資材の材料として好適に使用でき、本実施形態に係る食品保存用積層シート1、2、3を備える、蓋体6として好適に用いることができる。そして、蓋体6と、開口部54が形成され、食品を収容可能な容器本体5と、を備え、蓋体6の徐放性層14が開口部54の少なくとも一部を覆うように構成可能な、包装容器4として好適に用いることができる。また、食品保存用積層シート1、2、3を含む袋形状の袋本体70であり、徐放性層14が内側表面に位置している、食品用保存袋7として好適に用いることができる。さらに、袋形状の袋本体80の内側表面の少なくとも一部に、本実施形態に係る食品保存用積層シート1、2、3が貼付された、食品用保存袋8として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0130】
1、2、3、88…食品保存用積層シート
4…包装容器
5…容器本体
6…蓋体
7、8…食品用保存袋
10、20、30…表面基材
12、22、32…揮発性薬剤含有層
14、24、34…徐放性層
36…粘着剤層
52…フランジ部
54、74、84…開口部
56、76、86…収納部
70、80…袋本体
72、82…封止部
200…基材(樹脂基材又は紙基材)
202…ガスバリア層