(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096912
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】測定システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20250623BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20250623BHJP
B61K 9/08 20060101ALI20250623BHJP
B61B 13/06 20060101ALN20250623BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01B11/00 A
B61K9/08
B61B13/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212903
(22)【出願日】2023-12-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2025-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中村 允紀
(72)【発明者】
【氏名】山内 克哉
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA63
2F065CC35
2F065DD02
2F065FF04
2F065JJ05
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065LL14
2F065MM07
2F065QQ25
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でレールの摩耗や変形を測定する。
【解決手段】測定システムSは、重量物の搬送体4の進行方向Zに沿って設けられて車輪42が走行する上面113が形成された水平板部111を備えるレール1よりも下方に設けられ、レール1に向けて照射された光がレール1からの反射光に基づいてレール1の位置を測定する測定部3と、水平板部111の上方に設けられ、照射光Cを上面113に向けて反射して、上面113の第1反射光Dを測定部3に反射する反射部2と、第1反射光Dに基づく上面113の虚像の虚像位置Vと、上面113の下面114の第2反射光Eに基づく下面114の下面位置Qと、を取得する取得部521と、反射部2と測定部3との位置関係に基づいて虚像位置Vを補正した上面113の実際の上面位置R及び取得部が取得した下面位置Qを出力する出力部523と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を搬送する搬送体の進行方向に沿って設けられ前記搬送体の車輪が走行する走行面が形成された水平板部を備えるレールよりも下方に設けられ、前記レールに向けて光を照射すると共に、前記光が前記レールから反射した反射光に基づいて前記レールの位置を測定する測定部と、
前記水平板部よりも上方に設けられ、前記測定部から照射された前記光を前記走行面に向けて反射すると共に、前記走行面から反射した第1反射光を前記測定部に向けて反射する反射部と、
前記測定部が前記第1反射光に基づいて測定した前記走行面の虚像の第1位置と、前記測定部が前記水平板部の前記走行面とは反対側の反対面から反射した第2反射光に基づいて測定した前記反対面の第2位置と、を取得する取得部と、
前記反射部と前記測定部との位置関係に基づいて前記第1位置を補正して、前記走行面の実際の第3位置を算出する補正部と、
前記補正部が算出した前記第3位置及び前記取得部が取得した前記第2位置を出力する出力部と、
を有する測定システム。
【請求項2】
前記反射部は、前記走行面に前記光を反射可能であり、かつ前記走行面から反射した前記第1反射光を前記測定部に反射可能である角度で前記水平板部に対して傾斜している反射面を有する、
請求項1の測定システム。
【請求項3】
前記測定部は、前記反射部に対する前記光の入射角を変えながら前記第1位置を測定し、前記反対面に対する前記光の入射角を変えながら前記第2位置を測定する、
請求項2の測定システム。
【請求項4】
前記反射面は、前記進行方向から見て前記測定部と前記反射部とを通る第一直線に垂直な第二直線に対して鋭角で傾斜している、
請求項3の測定システム。
【請求項5】
前記測定部は、前記進行方向に垂直な平面における前記第1位置及び前記第2位置を測定する、
請求項1の測定システム。
【請求項6】
前記補正部は、前記第1位置を、前記平面における前記反射部の前記光を反射する反射面を通る直線に対して線対称の位置に対象変換することで前記第3位置を算出する、
請求項5の測定システム。
【請求項7】
前記補正部は、前記走行面の複数の前記第1位置の各々を表す座標を含む座標行列を前記対象変換するための回転行列と、前記座標行列とを乗算することで、前記走行面の複数の前記第3位置の各々を表す座標を算出する、
請求項6の測定システム。
【請求項8】
前記取得部は、鉛直方向に垂直な水平方向に対する前記測定部の傾斜角を取得し、
前記補正部は、前記第1位置を補正して前記第3位置を算出する前に、前記第1位置及び前記第2位置を前記傾斜角だけ回転移動させる、
請求項1に記載の測定システム。
【請求項9】
前記出力部は、取得された前記第2位置と算出された前記第3位置との実測距離と前記水平板部の基準厚みとの差を前記水平板部の摩耗量として出力する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項10】
前記出力部は、取得された前記第2位置及び前記水平板部の基準厚みにより定まる前記第3位置の基準位置と、算出された前記第3位置との距離を前記水平板部の変形量として出力する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項11】
前記測定部及び前記反射部を前記進行方向に沿って移動させる搬送部を有し、
前記測定部は、前記搬送部により前記進行方向に移動されながら、前記第1位置及び前記第2位置を測定する、
請求項1の測定システム。
【請求項12】
前記出力部は、前記進行方向に平行な平面における前記測定部の第4位置と、当該第4位置で前記測定部が測定した前記第1位置及び前記第2位置とを関連付けて出力する、
請求項11の測定システム。
【請求項13】
前記搬送部は、前記搬送体が前記重量物を搬送中に前記測定部及び前記反射部を前記進行方向に沿って移動させ、
前記測定部は、前記搬送体が前記重量物を搬送中に前記搬送部により前記進行方向に沿って移動されながら、前記第1位置及び前記第2位置を測定する、
請求項11又は12に記載の測定システム。
【請求項14】
前記レールは、前記進行方向から見て前記反射部の左側に設けられた第一レールと、前記反射部の右側に設けられた第二レールとであり、
前記測定部は、前記第一レールの前記第1位置及び前記第2位置と、前記第二レールの前記第1位置及び前記第2位置と、を測定し、
前記補正部は、前記第一レールの前記第1位置を補正して前記第一レールの前記第3位置を算出し、前記第二レールの前記第1位置を補正して前記第二レールの前記第3位置を算出する、
請求項1の測定システム。
【請求項15】
前記反射部は、
前記第一レールの前記走行面に前記光を反射可能であり、かつ前記第一レールの前記走行面から反射した前記第1反射光を前記測定部に反射可能である角度で前記水平板部に対して傾斜している第一反射面と、
前記第二レールの前記走行面に前記光を反射可能であり、かつ前記第二レールの前記走行面から反射した前記第1反射光を前記測定部に反射可能である角度で前記水平板部に対して傾斜している第二反射面と、を有し、
前記第一反射面は、前記進行方向から見て前記測定部及び前記反射部を通る直線の左側に前記第一レールの前記走行面に対して鋭角で傾斜して設けられており、
前記第二反射面は、前記進行方向から見て前記測定部及び前記反射部を通る直線の右側に前記第二レールの前記走行面に対して鋭角で傾斜して設けられており、
前記第一反射面の一端と、前記第二反射面の一端とは、連結されている、
請求項14の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送体用のレールの形状を測定する測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送体が走行するレールであって、開口同士を向き合わせた横断面コ字形状の左右一対のレールの摩耗を測定する技術が知られている。特許文献1には、レールの下フランジの内面に向けて複数の鏡を介して光を照射する第1投光器及び内面からの反射光を複数の鏡を介して受光する第1カメラの画像を基準として、下フランジの外面に向けて複数の鏡を介して光を照射する第2投光器及び外面からの反射光を複数の鏡を介して受光する第2カメラの画像から第1カメラの画像までの下フランジの厚みと、基準の厚みとの差を摩耗量として算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、2つの投光器、2つのカメラ及び複数の鏡が、左右一対のレールの各々について必要であり、構成が複雑になっていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でレールの摩耗や変形を測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、重量物を搬送する搬送体の進行方向に沿って設けられ前記搬送体の車輪が走行する走行面が形成された水平板部を備えるレールよりも下方に設けられ、前記レールに向けて光を照射すると共に、前記光が前記レールから反射した反射光に基づいて前記レールの位置を測定する測定部と、前記水平板部よりも上方に設けられ、前記測定部から照射された前記光を前記走行面に向けて反射すると共に、前記走行面から反射した第1反射光を前記測定部に向けて反射する反射部と、前記測定部が前記第1反射光に基づいて測定した前記走行面の虚像の第1位置と、前記測定部が前記水平板部の前記走行面とは反対側の反対面から反射した第2反射光に基づいて測定した前記反対面の第2位置と、を取得する取得部と、前記反射部と前記測定部との位置関係に基づいて前記第1位置を補正して、前記走行面の実際の第3位置を算出する補正部と、前記補正部が算出した前記第3位置及び前記取得部が取得した前記第2位置を出力する出力部と、を有する測定システムを提供する。
【0007】
前記反射部は、前記走行面に前記光を反射可能であり、かつ前記走行面から反射した前記第1反射光を前記測定部に反射可能である角度で前記水平板部に対して傾斜している反射面を有してもよい。
【0008】
前記測定部は、前記反射部に対する前記光の入射角を変えながら前記第1位置を測定し、前記反対面に対する前記光の入射角を変えながら前記第2位置を測定してもよい。
【0009】
前記反射面は、前記進行方向から見て前記測定部と前記反射部とを通る第一直線に垂直な第二直線に対して鋭角で傾斜していてもよい。
【0010】
前記測定部は、前記進行方向に垂直な平面における前記第1位置及び前記第2位置を測定してもよい。
【0011】
前記補正部は、前記第1位置を、前記平面における前記反射部の前記光を反射する反射面を通る直線に対して線対称の位置に対象変換することで前記第3位置を算出してもよい。
【0012】
前記補正部は、前記走行面の複数の前記第1位置の各々を表す座標を含む座標行列を前記対象変換するための回転行列と、前記座標行列とを乗算することで、前記走行面の複数の前記第3位置の各々を表す座標を算出してもよい。
【0013】
前記取得部は、鉛直方向に垂直な水平方向に対する前記測定部の傾斜角を取得し、前記補正部は、前記第1位置を補正して前記第3位置を算出する前に、前記第1位置及び前記第2位置を前記傾斜角だけ回転移動させてもよい。
【0014】
前記出力部は、取得された前記第2位置と算出された前記第3位置との実測距離と前記水平板部の基準厚みとの差を前記水平板部の摩耗量として出力してもよい。
【0015】
前記出力部は、取得された前記第2位置及び前記水平板部の基準厚みにより定まる前記第3位置の基準位置と、算出された前記第3位置との距離を前記水平板部の変形量として出力してもよい。
【0016】
前記測定部及び前記反射部を前記進行方向に沿って移動させる搬送部を有し、前記測定部は、前記搬送部により前記進行方向に移動されながら、前記第1位置及び前記第2位置を測定してもよい。
【0017】
前記出力部は、前記進行方向に平行な平面における前記測定部の第4位置と、当該第4位置で前記測定部が測定した前記第1位置及び前記第2位置とを関連付けて出力してもよい。
【0018】
前記搬送部は、前記搬送体が前記重量物を搬送中に前記測定部及び前記反射部を前記進行方向に沿って移動させ、前記測定部は、前記搬送体が前記重量物を搬送中に前記搬送部により前記進行方向に沿って移動されながら、前記第1位置及び前記第2位置を測定してもよい。
【0019】
前記レールは、前記進行方向から見て前記反射部の左側に設けられた第一レールと、前記反射部の右側に設けられた第二レールとであり、前記測定部は、前記第一レールの前記第1位置及び前記第2位置と、前記第二レールの前記第1位置及び前記第2位置と、を測定し、前記補正部は、前記第一レールの前記第1位置を補正して前記第一レールの前記第3位置を算出し、前記第二レールの前記第1位置を補正して前記第二レールの前記第3位置を算出してもよい。
【0020】
前記反射部は、前記第一レールの前記走行面に前記光を反射可能であり、かつ前記第一レールの前記走行面から反射した前記第1反射光を前記測定部に反射可能である角度で前記水平板部に対して傾斜している第一反射面と、前記第二レールの前記走行面に前記光を反射可能であり、かつ前記第二レールの前記走行面から反射した前記第1反射光を前記測定部に反射可能である角度で前記水平板部に対して傾斜している第二反射面と、を有し、前記第一反射面は、前記進行方向から見て前記測定部及び前記反射部を通る直線の左側に前記第一レールの前記走行面に対して鋭角で傾斜して設けられており、前記第二反射面は、前記進行方向から見て前記測定部及び前記反射部を通る直線の右側に前記第二レールの前記走行面に対して鋭角で傾斜して設けられており、前記第一反射面の一端と、前記第二反射面の一端とは、連結されていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易な構成でレールの摩耗や変形を測定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】搬送システムの概要を説明するための図である。
【
図4】測定システムの構成を説明するための図である。
【
図5】進行方向に対して垂直な水平方向から測定システムを見た模式図である。
【
図6】虚像位置、下面位置及び上面位置を説明するための図である。
【
図7】位置を測定する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[搬送システムUの概要]
図1は、搬送システムUの概要を説明するための図である。搬送システムUは、例えば自動車の組立工場に設置されている。搬送システムUは、組立工場の床から所定の高さに設けられて、エンジンなどの重量物を搬送する。搬送システムUは、例えば組立工場で作業する作業者よりも高い位置に設けられている。
【0024】
搬送システムUは、搬送体4と、第一レールである左レール11と、第二レールである右レール12とを有する。搬送体4は、エンジンなどの重量物を搬送する。搬送体4は、筐体41、車輪421、車輪422及びシャフト43を有する。筐体41は、重量物を搬送するためのシャーシである。車輪421は左レール11を走行し、車輪422は右レール12を走行する。車輪421及び車輪422は、シャフト43で連結されている。シャフト43は、筐体41を貫通して設けられている。
【0025】
搬送体4は、左レール11及び右レール12よりも上方に設けられたパワーレール(不図示)に設けられたチェーンが備えるサイドリングプッシャーに押されて移動する。具体的には、搬送体4の筐体41に設けられたホールドパックドック(不図示)にサイドリングプッシャーが引っかかることにより、搬送体4の筐体41とチェーンが連結される。そして、搬送体4は、チェーンの回転によるサイドリングプッシャーの移動に連動して、チェーンの移動方向に搬送される。
【0026】
左レール11及び右レール12は、搬送体4の進行方向Zに沿って設けられている。左レール11は、進行方向Zから見て搬送体4の左側に設けられている。右レール12は、進行方向Zから見て搬送体4の右側に設けられている。
【0027】
左レール11は、水平板部111、壁部112及び上部板部115を備える。左レール11は、進行方向Zから見て右側が開いたコの字型形状である。壁部112の下端は、鉛直方向Yに垂直な水平方向Xにおける水平板部111の二つの端部のうちの搬送体4から遠い端部に連結されている。上部板部115は、壁部112の上端に連結されている。水平板部111の上面113が、搬送体4の車輪421が走行する走行面を成している。水平板部111の下面114が、水平板部111の上面113とは反対側の反対面を成している。
【0028】
右レール12は、搬送体4の進行方向Zから見て、搬送体4を挟んで左レール11の反対側に、左レール11と左右対称になるように設けられている。右レール12は、左レール11と同様に、水平板部121、壁部122及び上部板部115を備える。右レール12は、進行方向Zから見て左側が開いたコの字型形状になるように設けられている。水平板部121には、車輪422が走行する上面123と、上面123の反対側の下面124とが形成されている。
【0029】
左レール11の上面113は、重量物を支持する搬送体4の車輪421が走行することにより摩耗する。
図2は、レール1の摩耗を説明するための図である。水平板部111の上面113は、上面113を車輪421が走行することにより摩耗する。同様に、水平板部121の上面123は、上面123を車輪422が走行することにより摩耗する。凹みMは、摩耗により生じている。そして、上面113の摩耗量Aが大きくなると、水平板部111の厚みが小さくなるので水平板部111の強度が低下する。水平板部111の強度が低下すると、搬送体4が搬送する重量物の加重により水平板部111が変形する。
【0030】
図3は、水平板部111の変形を説明するための図である。
図3に示すように、水平板部111の壁部112に連結されていない端部から鉛直方向Yの下向きに垂れ下がるように水平板部111全体が変形する。水平板部111全体が変形して変形量Bが所定の許容量を超えて大きくなるほど上面113が傾くと、搬送体4が適切に搬送されなくなったり、搬送体4の車輪421が左レール11の水平板部111から脱輪して搬送体4がレール1から落下したりしてしまう。そのため、搬送システムUの管理者は、自身よりも高い位置にあるレール1の摩耗量Aを測定したり、変形量Bを目視で確認したりするために、工場の生産を停止して確認作業を行う必要があった。これにより、管理者の作業工数が増大したり、工場の生産性が低下したりしてしまっていた。
【0031】
そこで、測定システムSは、搬送体4の走行中に、上面113及び下面114に照射光Cを照射することで上面113及び下面114の位置を測定して、摩耗量Aや変形量Bを算出する。以下、
図4及び
図5を用いて測定システムSの構成を説明する。
図4は、測定システムSの構成を説明するための図である。
図5は、進行方向Zに対して垂直な水平方向Xから、左レール11が見えるように測定システムSを見た模式図である。測定システムSは、反射部2、測定部3、測定装置5及び搬送部7を有する。
【0032】
搬送部7は、筐体71及び車輪72を有する。筐体71には、反射部2、測定部3及び測定装置5が設置されている。測定部3は、鉛直方向Yにおいてレール1よりも下方になるように筐体71の内側に設けられている。反射部2は、左レール11と右レール12の間、かつ水平板部111よりも上方になるように筐体71に設けられている。具体的には、反射部2は、筐体71から鉛直方向Yの上向きに延びた支柱により支持されて、水平板部111よりも上方かつ上部板部115よりも下方に設けられている。測定部3及び反射部2は、測定部3が搬送部7に設置されている設置面が水平方向Xと平行である場合に、測定部3と反射部2の中心を通る第一直線61が水平方向Xと平行な直線に垂直になるように設置されている。測定装置5は、筐体71の内側に収容されている。
【0033】
筐体71は、搬送体4に連結されている。車輪72は、上面113を走行する車輪である。車輪72は、筐体71に連結部73で接続されている。車輪72は、連結部73に対して回転自由である。
【0034】
搬送部7は、搬送体4の移動に連動して移動する。搬送部7は、搬送体4が移動する場合に、搬送体4の移動に連動して筐体71に設置された反射部2、測定部3及び測定装置5を進行方向Zに沿って移動させる。例えば、搬送部7は、搬送体4が重量物を搬送中に反射部2と測定部3と測定装置5を進行方向Zに沿って移動させる。具体的には、搬送部7は、重量物を搬送中の搬送体4に連結されて、当該搬送体4の移動に連動して移動することで、筐体71に設置された反射部2と測定部3と測定装置5を進行方向Zに沿って移動させる。
【0035】
搬送部7は、レール1の曲がり度合いに対応する追従機構を有している。追従機構は、レール1の曲がり度合いに応じて、測定部3及び反射部2を通る第一直線61が左レール11と右レール12の中点を通るように測定部3及び反射部2を移動させる。追従機構は公知の技術を利用できるので説明を割愛する。これにより、搬送部7は、曲率が大きいレール1を通過する際にも、測定部3から照射される照射光Cが左レール11及び右レール12に照射されるようにできる。
【0036】
測定部3は、搬送部7により進行方向Zに移動されながら、照射光Cを物体に照射して、物体からの反射光に基づいて物体の表面の位置を測定する。具体的には、測定部3は、搬送体4が重量物を搬送中に搬送部7により進行方向Zに沿って移動されながら、照射光Cをレール1及び反射部2に照射して、レール1及び反射部2からの反射光に基づいてレール1の表面の位置を測定する。測定部3は、例えば2次元レーザ変位計であるが、これに限定するものではない。測定部3の測定間隔は、搬送部7の速度に応じて設定される。測定部3の測定間隔は、搬送部7の速度が速いほど基準時間よりも短い時間に設定される。基準時間は、例えば100ミリ秒である。
【0037】
測定部3は、照射部31、受光部32及び計算部33を有する。照射部31は、照射光Cを照射する。照射光Cは、例えば波長405ナノメートル、出力4.8ミリワット(mW)の青色半導体レーザであるが、これに限定するものではない。
図4及び
図5において、照射光Cの光路を実線矢印で示し、照射光Cが物体で反射された反射光を点線矢印で示す。受光部32は、照射光Cが物体で反射した反射光を受光する。計算部33は、照射部31を制御して物体に照射光Cを照射させる。計算部33は、受光部32が受光した物体からの反射光に基づいて物体の位置を算出する。具体的には、計算部33は、照射光Cの照射角、照射光Cが物体で反射した反射光の入射角に基づいて、測定部3に対する物体の相対位置を測定する。
【0038】
計算部33は、レール1に向けて照射光Cを照射部31に照射させるとともに、照射光Cがレール1から反射した反射光に基づいてレール1の位置を測定する。例えば、計算部33は、照射部31を制御して、左レール11の水平板部111の下面114に照射光Cを照射させる。受光部32は、照射光Cが下面114で反射した第2反射光Eを受光する。計算部33は、受光部32が受光した下面114で反射した第2反射光Eに基づいて、下面114の下面位置Qである第2位置を測定する。下面位置Qは、測定部3に対する下面114の相対位置である。具体的には、計算部33は、下面114に対する照射光Cの入射角を変えさせながら下面114で反射した第2反射光Eに基づいて下面位置Qを測定する。
【0039】
計算部33は、照射部31を制御して、反射部2に照射光Cを照射させる。例えば、計算部33は、照射部31を制御して、反射部2に対する照射光Cの入射角を変えさせながら反射部2に照射光Cを照射させる。
【0040】
反射部2は、照射光Cを反射する左反射面21及び右反射面22を有する。左反射面21は、光を反射する第一反射面が形成されている。右反射面22は、光を反射する第二反射面が形成されている。左反射面21及び右反射面22は、例えばガラスの表面に銀メッキした鏡であるが、これに限定するものではない。反射部2は、進行方向Zから見て二等辺三角形である。言い換えると、反射部2をXY平面で切断した断面は、二等辺三角形である。反射部2は、2つの斜辺の各々が測定部3に向かう向きに設けられている。反射部2の2つの斜辺が連結する頂点は、測定部3に対向している。
【0041】
左反射面21と右反射面22は連結されている。具体的には、左反射面21の一端と、右反射面22の一端とは、連結されている。より具体的には、左反射面21の一端と、右反射面22の一端とは、反射部2の中心と測定部3を通る直線上で連結されている。
【0042】
左反射面21は、進行方向Zから見て測定部3及び反射部2を通る第一直線61の左側に設けられている。言い換えると、左反射面21は、反射部2の2つの斜辺のうちの第一直線61の左側の斜辺に設けられている。
【0043】
左反射面21は、左RAIL11の上面113に光を反射可能である。左反射面21は、左レール11の上面113から反射した第1反射光Dを測定部3に反射可能である角度θで水平板部111に対して傾斜している。具体的には、左反射面21は、第一直線61に垂直な第二直線62に対して鋭角で傾斜している。第二直線62と左反射面21を通る直線のなす角の角度θは、0度より大きく90度より小さい。望ましくは、角度θは、15度以上45度以下である。角度θの具体的な値は30度であるが、これに限定するものではない。角度θは、上面113の幅及び測定部3と反射部2と上面113の位置関係に基づいて適宜定めればよい。
【0044】
右反射面22は、進行方向Zから見て第一直線61の右側に設けられている。言い換えると、右反射面22は、反射部2の2つの斜辺のうちの第一直線61の右側の斜辺に設けられている。右反射面22は、右レール12の上面113に光を反射可能である。左反射面21は、右レール12の上面113から反射した第1反射光Dを測定部3に反射可能である角度θで水平板部121に対して傾斜している。具体的には、右反射面22は、第二直線62に対して鋭角で傾斜している。第二直線62と右反射面22を通る直線のなす角の角度θは、第二直線62と左反射面21を通る直線のなす角の角度θと同様である。
【0045】
左反射面21に向けて照射された照射光Cは、左反射面21に反射されて上面113に入射する。上面113に入射した照射光Cは、上面113で反射する。上面113で反射した第1反射光Dは、左反射面21に入射する。左反射面21に入射した第1反射光Dは、左反射面21に反射されて受光部32に入射する。このように、左反射面21が設けられていることで、下面114を挟んで測定部3の反対側の上面113にも照射光Cが入射する。言い換えると、左反射面21が設けられていることにより、照射光Cは、左反射面21が設けられていない場合には照射光Cが到達しない上面113に対しても照射され、上面113からの第1反射光Dが受光部32に入射するようになる。
【0046】
受光部32は、照射光Cがレール1で反射した反射光を受光する(
図5を参照)。受光部32は、照射光Cが反射部2を介して上面113で反射した第1反射光Dを受光する。なお、
図5においては、照射光Cの光路と反射光の光路をわかりやすくするため、照射角をZY平面上で変化させているが、実際には、照射光Cの照射角は、XY平面上において変化する(
図4を参照)。計算部33は、上面113及び反射部2で反射した第1反射光Dに基づいて進行方向Zに垂直なXY平面における上面113の虚像位置Vである第1位置を測定する。
【0047】
図6は、虚像位置V、下面位置Q及び上面位置Rを説明するための図である。
図6において照射部31の照射口の位置を原点とする。
図6の横軸は、水平方向Xにおける原点からの距離を示す。縦軸は鉛直方向Yにおける原点からの距離を示す。
【0048】
下面114の下面位置Qについて説明する。計算部33は、受光部32に入射した反射光が、物体から直接反射した反射光であることを前提に、反射光に基づいて物体の位置を測定している。そのため、下面114の下面位置Qは、測定部3に対する下面114の実際の相対位置である。
【0049】
一方、上面113の上面位置Rには、反射部2の左反射面21で反射した照射光Cが照射され、上面位置Rで反射した第1反射光Dは、反射部2で反射されて受光部32に入射する。受光部32に入射する第1反射光Dの角度と光路長は、上面113の虚像の位置からの反射光と同一である。そのため、計算部33は、第1反射光Dに基づいての上面113の虚像の虚像位置Vを測定してしまう。
【0050】
そこで、測定装置5は、測定した虚像位置Vを補正して上面位置Rを算出する。以下、測定装置5の具体的な構成を説明する(
図4を参照)。測定装置5は、記憶部51及び制御部52を有するコンピュータである。コンピュータは、ノートPC、デスクトップPC又はタブレットPCであるが、これに限定するものではない。
【0051】
記憶部51は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部51は、制御部52が実行するプログラムを記憶する。
【0052】
制御部52は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部52は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部521、補正部522及び出力部523としての機能を実現する。
【0053】
取得部521は、虚像位置V及び下面位置Qを取得する。例えば、取得部521は、虚像位置Vが測定される毎に測定された虚像位置Vを示す座標を取得する。虚像位置Vを示す座標は、XY平面上の座標である。具体的には、取得部521は、上面113の複数の虚像位置Vの各々を表す座標を含む第一座標行列を取得する。第一座標行列は、XY平面上に表すと直線VL1に近似できる(
図6を参照)。なお、左レール11の上面113が
図2のように凹みMが生じるほど摩耗している場合、第一座標行列は、直線に近似できないが、説明を簡単にするため、第一座標行列が直線VL1に近似できるものとして説明する。
【0054】
取得部521は、下面位置Qが測定される毎に下面位置Qを示す座標を取得する。下面位置Qを示す座標は、XY平面上の座標である。具体的には、取得部521は、下面114の複数の下面位置Qの各々の座標を含む第二座標行列を取得する。第二座標行列は、XY平面上に表すと直線QL1に近似できる(
図6を参照)。
【0055】
取得部521は、測定部3が虚像位置V及び下面位置Qを測定した際の、進行方向Zに平行なYZ平面における測定部3の第4位置を取得する。第4位置を取得する方法は公知の技術が利用できる。例えば、取得部521は、GPS(Global Positioning System)受信機を含み、GPSの人工衛星から送信される電波を受信し、測定部3が虚像位置V及び下面位置Qを測定した際のGPS受信機の位置を示す座標を第4位置として取得する。取得部521は、虚像位置V又は下面位置Qを取得した際のGPS受信機の位置を示す座標を第4位置として取得してもよい。
【0056】
補正部522は、虚像位置Vを補正して、上面113の実際の上面位置Rである第3位置を算出する。例えば、補正部522は、反射部2と測定部3の位置関係に基づいて虚像位置Vを補正して、上面位置Rを算出する。測定部3に対する反射部2の左反射面21の相対位置は、左反射面21が上面113に対して照射光Cを反射できない状態にして測定されており、記憶部51に記憶されている。測定部3に対する反射部2の左反射面21の相対位置は、例えば左反射面21に不透明のフィルムを張り付けた状態で測定されている。
【0057】
補正部522は、上面113からの第1反射光Dに基づく虚像位置Vを、反射部2の左反射面21を通る第三直線E1に対して線対称の位置に対称変換する。具体的には、補正部522は、上面113からの第1反射光Dに基づく虚像位置Vを対象変換するための回転行列と、第一座標行列とを乗算することで、第三座標行列を算出する。回転行列は、第一座標行列を第三直線E1に対して対象変換するための行列である。第三座標行列は、上面113の複数の上面位置Rの各々を表す座標を含む行列である。また、補正部522は、XY平面における左反射面21への照射光Cの入射点Pを基点に、入射点P及び虚像位置Vを通る直線と第三直線E1とのなす角の2倍の角度だけ虚像位置Vを左回りに回転移動させて上面位置Rを算出してもよい。
【0058】
第三座標行列は、XY平面上に表すと直線RL1に近似できる(
図6を参照)。このように、補正部522は、上面113の虚像の虚像位置Vを第三直線E1に対して対象変換することにより、上面113の実際の上面位置Rを算出できる。
【0059】
補正部522は、上面123の虚像位置Vについても、上面113と同様に補正して、上面123の上面位置Rを算出する。補正部522は、上面123の複数の下面位置Qの各々を表す座標を含む第三座標行列を第四直線E2に対して対象変換するための回転行列と、当該座標行列を乗算することで、上面123の実際の上面位置Rを表す座標を含む第四座標行列を算出する。また、補正部522は、XY平面における右反射面22への照射光Cの入射点を基点に、入射点及び虚像位置Vを通る直線と第四直線E2とのなす角の2倍の角度だけ虚像位置Vを右回りに回転移動させて上面123の上面位置Rを算出してもよい。
【0060】
上面123の虚像を表す第三座標行列は、直線VL2に近似できる(
図6を参照)。上面123の実際の位置を表す第四座標行列は、XY平面上に表すと直線RL2に近似できる(
図6を参照)。このように、補正部522は、左レール11の上面113及び右レール12の上面123の両方の実際の位置を算出できる。
【0061】
出力部523は、補正部522が算出した上面位置R及び取得部521が取得した下面位置Qを外部装置6に出力する。外部装置6は、例えば情報を表示するディスプレイや情報処理装置(サーバ)である。出力部523は、例えば上面位置R及び下面位置Qに第4位置を関連付けたデータテーブルをディスプレイに表示させる。また、出力部523は、第4位置と、当該第4位置で測定部3が測定した虚像位置Vを補正することで算出された上面位置R及び下面位置Qとを関連付けたデータテーブルを情報処理装置に送信する。このようにすることで、搬送システムUの管理者は、レール1の複数の位置の各々における水平板部111の現在の上面位置R及び下面位置Qを把握できる。これにより、管理者は、レール1の複数の位置の各々における水平板部111の摩耗量Aや変形量Bを計算できるようになる。
【0062】
(摩耗量Aを出力する処理)
出力部523は、水平板部111の摩耗量Aを出力してもよい。この場合、出力部523は、取得された下面位置Qと算出された上面位置Rとの実測距離と水平板部111の基準厚みとの差を算出する。水平板部111の基準厚みは、記憶部51に記憶されている。水平板部111の基準厚みは、左レール11の仕様により定められている。出力部523は、例えば、下面114を表す第二座標行列の複数の下面位置Qの各々と、各下面位置Qに対応する上面位置Rの差を算出する。より具体的には、出力部523は、第二座標行列の複数の下面位置Q及び第三座標行列の複数の上面位置Rの各々について、X座標が同一の下面位置Q及び上面位置RのY座標の差を算出する。
【0063】
出力部523は、算出した差を水平板部111の摩耗量Aとして出力する。出力部523は、複数の差の統計量を摩耗量Aとして出力する。例えば、出力部523は、複数の差の平均値を摩耗量Aとして算出する。出力部523は、複数の差のうちの最大値を摩耗量Aとして算出してもよい。出力部523は、摩耗量Aに、摩耗量Aに対応する下面位置Q及び上面位置Rが算出された第4位置を関連付けてサーバに送信する。これにより、搬送システムUの管理者は、上面位置Rと下面位置Qの差を計算することなくレール1の複数の位置の各々の水平板部111の現在の摩耗量Aを把握できるようになり、水平板部111を管理しやすくなる。
【0064】
(変形量Bを出力する処理)
出力部523は、水平板部111の変形量Bを出力してもよい。この場合、出力部523は、取得された下面位置Q及び水平板部111の基準厚みにより定まる上面位置Rの基準位置を算出する。例えば、出力部523は、取得された下面位置Qから基準厚みだけ鉛直方向上方の位置を、上面位置Rの基準位置として算出する。具体的には、出力部523は、下面114の2つの端部のうちの壁部112が連結されている端部の下面位置Qから基準厚みだけ鉛直方向上方の位置を、上面113の上面位置Rの基準位置として算出する。
【0065】
出力部523は、上面位置Rの基準位置と、算出された上面位置Rとの距離を算出する。具体的には、出力部523は、上面位置Rの基準位置と、算出された上面位置Rとの距離を算出する。そして、出力部523は、算出した距離を水平板部111の変形量Bとして出力する。例えば、出力部523は、複数の距離の統計量を変形量Bとして出力する。具体的には、出力部523は、複数の距離のうちの最大値を変形量Bとして、変形量Bが算出された第4位置に関連付けて出力する。これにより、搬送システムUの管理者は、レール1の複数の位置の各々の水平板部111の現在の変形量Bを把握できるようになり、水平板部111を管理しやすくなる。なお、出力部523は、水平板部111の摩耗量A及び変形量Bの出力方法と同様の方法で水平板部121の摩耗量A及び変形量Bを出力できる。
【0066】
(測定部3の傾きを補正する処理)
ところで、上述した補正部522の処理は、第一直線61が水平方向Xに対して垂直である場合に水平板部111の虚像の虚像位置Vを水平板部111の実際の上面位置Rに移動する。しかし、水平板部111が摩耗したり変形したりすると、水平方向Xに対して測定部3が傾斜する場合がある。水平方向Xに対して測定部3が傾斜して第一直線61が水平方向Xに対して垂直でない場合、上述した補正部522の処理は、虚像位置Vを水平板部111の実際の上面位置Rと異なる位置に移動させてしまう。そこで、測定システムSは、水平方向Xに対して測定部3が傾斜している場合、虚像位置V及び下面位置Qを傾斜に応じて回転移動させる。以下、虚像位置V及び下面位置Qを傾斜に応じて回転させる処理を説明する。
【0067】
取得部521は、水平方向Xに対する測定部3の傾斜角を取得する。例えば、取得部521は、測定部3が取得した下面位置Qを表す直線と、水平方向Xとのなす角を傾斜角として取得する。具体的には、取得部521は、複数の下面位置Qの各々の近似直線である直線QL1と、水平方向Xに平行な直線とのなす角を傾斜角として取得する。なお、取得部521は、水平方向Xに対する角度を検出する角度センサを有し、角度センサが検出した水平方向Xに対する角度を測定部3の傾斜角として取得してもよい。
【0068】
補正部522は、測定部3の傾斜角に基づいて虚像位置V及び下面位置Qを移動させる。例えば、補正部522は、照射部31から照射光Cが照射される照射点である原点に対して虚像位置V及び下面位置Qを傾斜角だけ左回りに回転させる。具体的には、補正部522は、第一座標行列及び第二座標行列の各々に、XY平面上の点を原点に対して傾斜角だけ左回りに回転させるための回転行列を乗算することで虚像位置V及び下面位置Qを移動させる。移動後の虚像位置V及び下面位置Qは、第一直線61が水平方向Xに対して垂直である場合に測定された虚像位置V及び下面位置Qに一致する。これにより、測定システムSは、水平方向Xに対して測定部3が傾いていたとしても、測定部3の傾きを補正して実際の下面位置Q及び上面位置Rを測定できる。
【0069】
ところで、平面上の回転移動は、順番を変えてもよい。つまり、測定システムSは、虚像位置Vを第三直線E1に対して対象変換(回転移動)した後に、対象変換された上面位置R及び下面位置Qを回転移動して傾きを補正してもよい。具体的には、補正部522は、虚像位置Vを第三直線E1に対して対称変換するための回転行列を第一座標行列に乗算して第三座標行列を算出した後、第三座標行列及び第二座標行列の各々に、XY平面上の点を傾斜角だけ回転させるための回転行列を乗算する。また、補正部522は、XY平面における右反射面22への照射光Cの入射点を基点に入射点及び虚像位置Vを通る直線と第四直線E2とのなす角の2倍の角度だけ虚像位置Vを右回りに回転移動させて上面位置Rを算出した後、原点に対して上面位置R及び下面位置Qを傾斜角だけ左回りに回転させてもよい。このようにすることでも、測定システムSは、測定部3の傾きを補正して実際の下面位置Q及び上面位置Rを出力できる。
【0070】
[水平板部111の表面の位置を測定する処理]
図7は、位置を測定する処理の一例を示すフローチャートである。水平板部111の表面の位置を測定する処理は、反射部2及び測定部3が進行方向Zに沿って移動している場合に実行される。
【0071】
測定部3は、左レール11に向けて照射光Cを照射する(ステップS1)。具体的には、測定部3は、反射部2に対する照射光Cの入射角を変えながら反射部2に照射光Cを照射し、下面114に対する照射光Cの入射角を変えながら下面114に照射光Cを照射する。
【0072】
測定部3は、左レール11からの反射光に基づいて水平板部111の表面の位置を測定する(ステップS2)。例えば、測定部3は、照射光Cの反射光に応じた表面の位置を取得する。具体的には、測定部3は、照射光Cが上面113で反射した場合、上面113及び反射部2で反射した第1反射光Dに基づいて上面113の虚像の虚像位置Vを測定する。また、測定部3は、照射光Cが下面114で反射した場合、下面114からの第2反射光Eに基づいて下面114の下面位置Qを測定する。
【0073】
取得部521は、測定部3が測定した虚像位置V又は下面位置Qを取得する(ステップS3)。具体的には、取得部521は、測定部3が虚像位置Vを測定した場合には虚像位置Vを取得し、測定部3が下面位置Qを測定した場合には下面位置Qを取得する。また、取得部521は、虚像位置V又は下面位置Qを測定部3が測定した際の第4位置を取得する。
【0074】
補正部522は、測定部3が測定した位置が虚像位置Vか否かを判定する(ステップS4)。補正部522は、測定部3が測定した位置が、XY平面上の所定の範囲に含まれている場合(ステップS4でYes)、測定部3が測定した位置が虚像位置Vであると判定する。所定の範囲は、虚像位置Vが測定され得る範囲であり、測定部3と反射部2と上面113との位置関係に応じて定まる。補正部522は、測定部3が測定した位置が所定の範囲外の場合(ステップS4でNo)、測定部3が測定した位置が下面位置Qであると判定する。
【0075】
補正部522は、測定部3が測定した位置が虚像位置Vである場合、虚像位置Vを補正して上面位置Rを算出する(ステップS5)。具体的には、補正部522は、虚像位置Vを第三直線E1に対して対称変換することで上面位置Rを算出する。具体的には、補正部522は、XY平面における左反射面21を通る第三直線E1と、水平方向Xとのなす角の2倍の角度だけ虚像位置Vを回転移動させて上面位置Rを算出する。より具体的には、補正部522は、XY平面における左反射面21への照射光Cの入射点を基点に、第三直線E1と入射点P及び虚像位置Vを通る直線とのなす角の2倍の角度だけ虚像位置Vを左回りに回転移動させて上面位置Rを算出する。
【0076】
出力部523は、取得された下面位置Qに対応する上面位置Rが算出されているか否かを判定する(ステップS6)。例えば、出力部523は、下面位置QのX座標に一致するX座標の上面位置Rが算出されている場合(ステップS6でYes)、下面位置Qに対応する上面位置Rが算出されていると判定する。出力部523は、下面位置QのX座標に一致するX座標の上面位置Rが算出されていない場合(ステップS6でNo)、ステップS1に戻る。
【0077】
出力部523は、下面位置Qに対応する上面位置Rが算出されている場合、水平板部111の摩耗量Aを出力する(ステップS7)。具体的には、出力部523は、下面位置QのY座標と当該下面位置Qに対応する上面位置RのY座標の距離を摩耗量Aとして出力する。出力部523は、摩耗量Aと第4位置を関連付けて測定装置5に出力する。
【0078】
取得部521は、反射部2及び測定部3が停止したか否かを判定する(ステップS8)。例えば、取得部521は、反射部2及び測定部3を移動させる搬送部7に設置された速度センサが検出した速度に基づいて反射部2及び測定部3が停止したか否かを判定する。取得部521は、速度センサが検出した速度が所定値(例えばゼロ)以下の場合(ステップS8でYes)、反射部2及び測定部3が停止したと判定して位置を測定する処理を終了する。取得部521は、速度センサが検出した速度が所定値よりも大きい場合(ステップS8でNo)、反射部2及び測定部3が移動中であると判定し、ステップS1に戻る。
【0079】
位置を測定する処理は、反射部2及び測定部3が移動中に実行され、反射部2及び測定部3が停止すると終了する。また、位置を測定する処理は、停止中の反射部2及び測定部3が移動を開始すると再度実行される。
【0080】
[測定システムSの効果]
以上説明したとおり、測定システムSは、搬送体4の進行方向Zに沿って設けられ車輪42が走行する上面113が形成された水平板部111を備えるレール1よりも下方に設けられ、レール1に向けて照射光Cを照射すると共に、照射光Cがレール1から反射した反射光に基づいてレール1の位置を測定する測定部3と、水平板部111よりも上方に設けられ、照射光Cを上面113に向けて反射するとともに、上面113からの第1反射光Dを測定部3に反射する反射部2と、第1反射光Dに基づく上面113の虚像の虚像位置Vと、上面113の下面114からの第2反射光Eに基づいて測定した下面114の下面位置Qと、を取得する取得部521と、反射部2と測定部3との位置関係に基づいて虚像位置Vを補正した上面113の実際の上面位置R及び下面位置Qを出力する出力部523と、を有する。
【0081】
測定システムSは、反射部2を有することにより、下面114を挟んで測定部3の反対側の上面113にも照射光Cを照射できる。具体的には、反射部2に入射した照射光Cは、反射部2に反射されて上面113に入射する。上面113で反射した第1反射光Dは、反射部2に入射して、反射部2に反射されて受光部32に入射する。このように、反射部2が設けられていることで、測定システムSは、下面114だけでなく、下面114を挟んで測定部3の反対側の上面113にも照射光Cを照射できる。
【0082】
反射部2と測定部3との位置関係は、測定システムSを構成する際に決定されるので、測定システムSは、反射部2と測定部3との位置関係に基づいて、第1反射光Dに基づく虚像位置Vを補正することで、上面113の実際の上面位置Rを算出できる。つまり、測定システムSは、一の測定部3及び一の反射部2という簡易な構成でレール1の水平板部111の上面113の虚像位置Vと、下面114の下面位置Qを測定することができる。その結果、管理者は、水平板部111の摩耗や変形を測定できるようになる。
【0083】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0084】
1 レール
2 反射部
3 測定部
4 搬送体
5 測定装置
6 外部装置
7 搬送部
11 左レール
12 右レール
21 左反射面
22 右反射面
31 照射部
32 受光部
33 計算部
41 筐体
42 車輪
43 シャフト
51 記憶部
52 制御部
61 第一直線
62 第二直線
71 筐体
72 車輪
73 連結部
111 水平板部
112 壁部
113 上面
114 下面
115 上部板部
121 水平板部
122 壁部
123 上面
124 下面
421 車輪
422 車輪
521 取得部
522 補正部
523 出力部
S 測定システム
U 搬送システム
【手続補正書】
【提出日】2024-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量物を搬送する搬送体の進行方向に沿って設けられ前記搬送体の車輪が走行する走行面が形成された水平板部を備えるレールよりも下方に設けられ、前記レールに向けて光を照射すると共に、前記光が前記レールから反射した反射光に基づいて前記レールの位置を測定する測定部と、
前記水平板部よりも上方に設けられ、前記測定部から照射された前記光を前記走行面に向けて反射すると共に、前記走行面から反射した第1反射光を前記測定部に向けて反射する反射部と、
前記測定部が前記第1反射光に基づいて測定した前記走行面の虚像の第1位置と、前記測定部が前記水平板部の前記走行面とは反対側の反対面から反射した第2反射光に基づいて測定した前記反対面の第2位置と、を取得する取得部と、
前記反射部と前記測定部との位置関係に基づいて前記第1位置を補正して、前記走行面の実際の第3位置を算出する補正部と、
前記補正部が算出した前記第3位置及び前記取得部が取得した前記第2位置を出力する出力部と、
を有し、
前記取得部は、鉛直方向に垂直な水平方向に対する前記測定部の角度を検出する角度センサが検出した前記角度を前記測定部の傾斜角として取得し、
前記補正部は、前記第1位置を補正して前記第3位置を算出する前に、前記測定部から前記光が照射される照射点である原点に対して前記第1位置及び前記第2位置を前記傾斜角だけ回転移動させる、
する測定システム。
【請求項2】
前記反射部は、前記走行面に前記光を反射可能であり、かつ前記走行面から反射した前記第1反射光を前記測定部に反射可能である角度で前記水平板部に対して傾斜している反射面を有する、
請求項1の測定システム。
【請求項3】
前記測定部は、前記反射部に対する前記光の入射角を変えながら前記第1位置を測定し、前記反対面に対する前記光の入射角を変えながら前記第2位置を測定する、
請求項2の測定システム。
【請求項4】
前記反射面は、前記進行方向から見て前記測定部と前記反射部とを通る第一直線に垂直な第二直線に対して鋭角で傾斜している、
請求項3の測定システム。
【請求項5】
前記測定部は、前記進行方向に垂直な平面における前記第1位置及び前記第2位置を測定する、
請求項1の測定システム。
【請求項6】
前記補正部は、前記第1位置を、前記平面における前記反射部の前記光を反射する反射面を通る直線に対して線対称の位置に対象変換することで前記第3位置を算出する、
請求項5の測定システム。
【請求項7】
前記補正部は、前記走行面の複数の前記第1位置の各々を表す座標を含む座標行列を前記対象変換するための回転行列と、前記座標行列とを乗算することで、前記走行面の複数の前記第3位置の各々を表す座標を算出する、
請求項6の測定システム。
【請求項8】
前記出力部は、取得された前記第2位置と算出された前記第3位置との実測距離と前記水平板部の基準厚みとの差を前記水平板部の摩耗量として出力する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項9】
前記出力部は、取得された前記第2位置及び前記水平板部の基準厚みにより定まる前記第3位置の基準位置と、算出された前記第3位置との距離を前記水平板部の変形量として出力する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項10】
前記測定部及び前記反射部を前記進行方向に沿って移動させる搬送部を有し、
前記測定部は、前記搬送部により前記進行方向に移動されながら、前記第1位置及び前記第2位置を測定する、
請求項1の測定システム。
【請求項11】
前記出力部は、前記進行方向に平行な平面における前記測定部の第4位置と、当該第4位置で前記測定部が測定した前記第1位置及び前記第2位置とを関連付けて出力する、
請求項10の測定システム。
【請求項12】
前記搬送部は、前記搬送体が前記重量物を搬送中に前記測定部及び前記反射部を前記進行方向に沿って移動させ、
前記測定部は、前記搬送体が前記重量物を搬送中に前記搬送部により前記進行方向に沿って移動されながら、前記第1位置及び前記第2位置を測定する、
請求項10又は11に記載の測定システム。
【請求項13】
前記レールは、前記進行方向から見て前記反射部の左側に設けられた第一レールと、前記反射部の右側に設けられた第二レールとであり、
前記測定部は、前記第一レールの前記第1位置及び前記第2位置と、前記第二レールの前記第1位置及び前記第2位置と、を測定し、
前記補正部は、前記第一レールの前記第1位置を補正して前記第一レールの前記第3位置を算出し、前記第二レールの前記第1位置を補正して前記第二レールの前記第3位置を算出する、
請求項1の測定システム。
【請求項14】
前記反射部は、
前記第一レールの前記走行面に前記光を反射可能であり、かつ前記第一レールの前記走行面から反射した前記第1反射光を前記測定部に反射可能である角度で前記水平板部に対して傾斜している第一反射面と、
前記第二レールの前記走行面に前記光を反射可能であり、かつ前記第二レールの前記走行面から反射した前記第1反射光を前記測定部に反射可能である角度で前記水平板部に対して傾斜している第二反射面と、を有し、
前記第一反射面は、前記進行方向から見て前記測定部及び前記反射部を通る直線の左側に前記第一レールの前記走行面に対して鋭角で傾斜して設けられており、
前記第二反射面は、前記進行方向から見て前記測定部及び前記反射部を通る直線の右側に前記第二レールの前記走行面に対して鋭角で傾斜して設けられており、
前記第一反射面の一端と、前記第二反射面の一端とは、連結されている、
請求項13の測定システム。