(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096923
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】圧接コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 4/2433 20180101AFI20250623BHJP
【FI】
H01R4/2433
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023212920
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100154900
【弁理士】
【氏名又は名称】関 京悟
(72)【発明者】
【氏名】芦部 健太
【テーマコード(参考)】
5E012
【Fターム(参考)】
5E012AA03
5E012AA05
5E012AA42
(57)【要約】
【課題】接触信頼性が高い圧接コネクタを提供することを課題とする。
【解決手段】圧接コネクタ1は、圧接端子3と捻り部材5を含む。圧接端子3は、基部10と、基部10から延びる一対の圧接片11と、を有する。一対の圧接片11の間に形成された電線圧入溝12に電線2を圧入することで、電線2の芯線7が一対の圧接片11と接触する。捻り部材5は、圧接端子3と嵌合することで、平面視で、線分Qの向きが変化するように電線2を捻る。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部から延びる一対の圧接片と、を有し、前記一対の圧接片の間に形成された溝に電線を圧入することで、前記電線の芯線が前記一対の圧接片と接触する、圧接端子と、
前記圧接端子と嵌合することで、前記圧接端子の前記溝に前記電線を圧入する圧入方向に沿って見て前記電線の前記芯線の長手方向が変化するように前記電線を捻る捻り部材と、
を含む、
圧接コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の圧接コネクタであって、
前記捻り部材は、前記電線の被覆に対して接触する一対の被覆接触片を有し、
前記一対の被覆接触片は、前記圧入方向に沿って見て、前記圧接端子を挟んで互いに反対側に配置され、且つ、前記電線を挟んで互いに反対側に配置されている、
圧接コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の圧接コネクタであって、
前記捻り部材は、前記一対の被覆接触片を連結すると共に前記圧接端子の前記溝に挿入される連結部を更に有する、
圧接コネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載の圧接コネクタであって、
前記捻り部材は、前記一対の圧接片が互いに近づくように前記一対の圧接片をそれぞれ押し込む、一対の押し込み部を有する、
圧接コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載の圧接コネクタであって、
前記一対の押し込み部は、前記一対の被覆接触片からそれぞれ突出するように形成されている、
圧接コネクタ。
【請求項6】
請求項5に記載の圧接コネクタであって、
前記圧入方向に沿って見ると、前記捻り部材が前記圧接端子に嵌合した状態で、前記一対の押し込み部は、前記電線から遠ざかるようにそれぞれ突出している、
圧接コネクタ。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の圧接コネクタであって、
前記一対の押し込み部、前記一対の被覆接触片、及び、前記連結部は、前記圧入方向に沿って見てS字又は逆S字を構成している、
圧接コネクタ。
【請求項8】
請求項7に記載の圧接コネクタであって、
前記一対の押し込み部の一方、前記一対の被覆接触片の一方、前記連結部、前記一対の被覆接触片の他方、前記一対の押し込み部の他方は、この記載順に連なっている、
圧接コネクタ。
【請求項9】
請求項1に記載の圧接コネクタであって、
前記圧接端子は、端子側ロック部を有し、
前記捻り部材は、部材側ロック部を有し、
前記捻り部材を前記圧接端子に嵌合した状態で、前記圧入方向において前記端子側ロック部と前記部材側ロック部がこの記載順に並ぶことにより前記捻り部材と前記圧接端子との嵌合状態がロックされる、
圧接コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧接コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、本願の
図12に示すように、一対の圧接刃100の間に電線101が圧入される圧接端子102と、一対の圧接刃100が互いに近づくように一対の圧接刃100を押し込む筒状の挟圧部材103と、を備えた圧接コネクタ104を開示している。具体的には、圧接端子102の一対の圧接刃100を挟圧部材103の嵌合空間105に嵌合させると、一対の圧接刃100の間の溝106に電線101が圧入される。これにより、電線101の被覆107が一対の圧接刃100によって切断される。この切断により、電線101の芯線108が露出し、露出した芯線108が一対の圧接刃100に接触するようになっている。また、上記嵌合に伴い、一対の圧接刃100が挟圧部材103によって互いに近づくように押し込まれることで溝106が狭まり、この結果、電線101の芯線108に形成された酸化被膜が除去されるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、接触信頼性の観点から改善の余地が残されている。
【0005】
本発明の目的は、接触信頼性が高い圧接コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
基部と、前記基部から延びる一対の圧接片と、を有し、前記一対の圧接片の間に形成された溝に電線を圧入することで、前記電線の芯線が前記一対の圧接片と接触する、圧接端子と、前記圧接端子と嵌合することで、前記圧接端子の前記溝に前記電線を圧入する圧入方向に沿って見て前記電線の前記芯線の長手方向が変化するように前記電線を捻る捻り部材と、を含む、圧接コネクタが提供される。
前記捻り部材は、前記電線の被覆に対して接触する一対の被覆接触片を有し、前記一対の被覆接触片は、前記圧入方向に沿って見て、前記圧接端子を挟んで互いに反対側に配置され、且つ、前記電線を挟んで互いに反対側に配置されてもよい。
前記捻り部材は、前記一対の被覆接触片を連結すると共に前記圧接端子の前記溝に挿入される連結部を更に有してもよい。
前記捻り部材は、前記一対の圧接片が互いに近づくように前記一対の圧接片をそれぞれ押し込む、一対の押し込み部を有してもよい。
前記一対の押し込み部は、前記一対の被覆接触片からそれぞれ突出するように形成されてもよい。
前記圧入方向に沿って見ると、前記捻り部材が前記圧接端子に嵌合した状態で、前記一対の押し込み部は、前記電線から遠ざかるようにそれぞれ突出してもよい。
前記一対の押し込み部、前記一対の被覆接触片、及び、前記連結部は、前記圧入方向に沿って見てS字又は逆S字を構成してもよい。
前記一対の押し込み部の一方、前記一対の被覆接触片の一方、前記連結部、前記一対の被覆接触片の他方、前記一対の押し込み部の他方は、この記載順に連なってもよい。
前記圧接端子は、端子側ロック部を有し、前記捻り部材は、部材側ロック部を有し、前記捻り部材を前記圧接端子に嵌合した状態で、前記圧入方向において前記端子側ロック部と前記部材側ロック部がこの記載順に並ぶことにより前記捻り部材と前記圧接端子との嵌合状態がロックされてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接触信頼性が高い圧接コネクタが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】圧接コネクタの嵌合前の状態を示す斜視図である。
【
図2】圧接端子に電線を圧入する前の状態を示す正面図である。
【
図3】圧接端子に電線を圧入した状態を示す正面図である。
【
図4】圧接コネクタの嵌合状態を示す斜視図である。
【
図6】圧接コネクタの嵌合状態を示す斜視図である。
【
図7】圧接コネクタの嵌合状態を示す平面図である。
【
図8】圧接端子に電線を圧入した状態を示す平面断面図である。
【
図9】圧接コネクタの嵌合状態を示す平面断面図である。
【
図10】圧接端子が応力緩和により変形したときの圧接コネクタの部分平面図である。
【
図11】圧接端子が応力緩和により変形したときの圧接コネクタの平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
図1には、圧接コネクタ1と電線2の斜視図を示している。
図1に示すように、圧接コネクタ1は、圧接端子3と、圧接端子3を保持する圧接端子側ハウジング4と、捻り部材5と、捻り部材5を保持する捻り部材側ハウジング6と、を含む。
図1において、圧接端子側ハウジング4及び捻り部材側ハウジング6は二点鎖線で示している。圧接端子3及び捻り部材5は、典型的には圧入又はインサート成形により圧接端子側ハウジング4及び捻り部材側ハウジング6にそれぞれ保持されている。圧接端子3及び捻り部材5は、典型的には銅又は銅合金などの金属薄板をプレス加工することにより形成されている。圧接端子側ハウジング4及び捻り部材側ハウジング6は、典型的にはPBT(Polybutylene terephthalate)、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、ナイロン樹脂、LCP(Liquid Crystal Polymer、登録商標)などの絶縁樹脂を射出成形することにより形成されている。圧接端子側ハウジング4と捻り部材側ハウジング6は省略することができる。
【0011】
<電線2>
電線2は、芯線7と、芯線7を覆う絶縁性の被覆8と、から構成されている。芯線7は、典型的には銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金などの撚り線で構成されている。
【0012】
<圧接端子3>
図2及び
図3には、電線2を圧接端子3に圧入する様子を示している。
図1から
図3に示すように、圧接端子3は、典型的には、平板状に形成されている。圧接端子3は、圧接端子側ハウジング4に保持される基部10と、基部10から延びる一対の圧接片11と、を有する。
【0013】
一対の圧接片11は、基部10から同じ方向に延びている。一対の圧接片11は、互いに離れて配置されている。従って、一対の圧接片11の間には、電線圧入溝12が形成される。
図2及び
図3に示すように、電線圧入溝12に図示しない治具を用いて電線2を圧入することで、電線2の被覆8が一対の圧接片11によって切断されて芯線7が露出し、露出した芯線7が一対の圧接片11と電気的に接触する。このとき、
図3に示すように、芯線7は電線圧入溝12に圧入されることで一対の圧接片11が対向する方向で潰される。
図3において、芯線7は潰されても依然として撚り線であるものの、便宜的に単線のように描いていることに留意されたい。電線2が圧接端子3に圧入された状態で、電線2は、圧接端子3の板厚方向に延びている。
【0014】
ここで、
図1から
図3を参照して、電線方向、幅方向、上下方向を定義する。電線方向、幅方向、上下方向は、互いに直交している。電線方向は、圧接端子3に圧入された電線2の長手方向である。電線2の長手方向は圧接端子3の板厚方向に一致するので、電線方向は、圧接端子3の板厚方向とも言える。幅方向は、一対の圧接片11が対向する方向である。幅方向は、幅方向内方及び幅方向外方を含む。幅方向内方は、一対の圧接片11から電線圧入溝12を見る方向である。幅方向外方は、電線圧入溝12から一対の圧接片11を見る方向である。上下方向は、電線2を圧接端子3に圧入する圧入方向としての下方と、その反対の上方と、を含む。なお、電線方向、幅方向、上下方向は、説明の便宜のために定義した方向に過ぎず、これらの用語によって圧接コネクタ1の使用時における姿勢を限定解釈してはならない。
【0015】
引き続き
図2を参照して、圧接端子3を説明する。
図2に示すように、電線圧入溝12は、上方に向かって広がるように形成されている。具体的には、電線圧入溝12は、電線収容部13及び電線案内部14を含む。電線収容部13及び電線案内部14は、この記載順で上方に向かって並んでいる。電線収容部13は、圧接端子3に圧入された電線2を収容する。電線案内部14は、電線2を電線収容部13に案内する。従って、電線収容部13は、上方に向かって僅かに広がるように形成されているのに対し、電線案内部14は、上方に向かって大きく広がるように形成されている。
【0016】
圧接端子3は、一対の端子側ロック部15を更に有する。一対の端子側ロック部15は、一対の圧接片11の根本から幅方向外方にそれぞれ突出するように形成されている。
【0017】
以下、説明の便宜上、一対の圧接片11を第1圧接片16及び第2圧接片17と称する場合がある。また、一対の端子側ロック部15を第1端子側ロック部18及び第2端子側ロック部19と称する場合がある。
図2に示すように、第1圧接片16と第1端子側ロック部18は、電線圧入溝12から見て一側に配置されており、第2圧接片17及び第2端子側ロック部19は、電線圧入溝12から見て他側に配置されている。
【0018】
<捻り部材5>
図1に戻り、捻り部材5は、電線2の芯線7と圧接端子3との接触信頼性を向上するのに用いられる。
図4は、電線2が圧入された圧接端子3に捻り部材5を嵌合した状態を示している。
図1及び
図4に示すように、捻り部材5は、圧接端子3に向かって相対的に下方に移動することにより、圧接端子3に嵌合される。そして、捻り部材5が圧接端子3に嵌合することで、電線2の芯線7と圧接端子3との接触信頼性が向上する。このように、捻り部材5を圧接端子3に嵌合した状態で、捻り部材5の圧接端子3に対する姿勢は一義的に決まる。従って、以下で捻り部材5を説明するに際し、圧接端子3の説明時に定義した電線方向、幅方向、上下方向をそのまま使用する。
【0019】
図5は、捻り部材5の斜視図を示している。
図6は、圧接端子3に嵌合した捻り部材5の斜視図を示している。ただし、
図6では、説明の便宜上、電線2を描いていない。
図7は、圧接端子3に嵌合した捻り部材5の平面図を示している。ただし、
図7では、説明の便宜上、電線2を二点鎖線で簡略化して描いている。
【0020】
図5から
図7に示すように、捻り部材5は、平面視でS字に形成されている。具体的には、捻り部材5は、一対の被覆接触片20、一対の押し込み部21、連結部22、一対の部材側ロック部23を含む。
【0021】
図5に示すように、一対の被覆接触片20は、上下方向に延びている。一対の被覆接触片20は、幅方向で互いに離れている。一対の被覆接触片20の板厚方向は、電線方向に一致している。一対の被覆接触片20は、電線方向において若干ずれている。ここで、
図5及び
図6を参照して、第1電線方向及び第2電線方向を定義する。第1電線方向及び第2電線方向は、何れも電線方向に平行な方向であって、互いに反対向きの方向である。従って、第1電線方向及び第2電線方向は、第1電線方角(Orientation)及び第2電線方角とも言える。一対の被覆接触片20は、第1被覆接触片30及び第2被覆接触片31を含む。捻り部材5を幅方向に沿って観察すると、第1被覆接触片30と第2被覆接触片31は第2電線方向に沿ってこの記載順で配置されている。従って、捻り部材5を幅方向に沿って観察すると、第2電線方向は、第1被覆接触片30から第2被覆接触片31を見る方向とも言える。一対の被覆接触片20は、連結部22を介して互いに連結されている。詳しくは、連結部22は、一対の被覆接触片20の上端を互いに連結している。従って、捻り部材5は、幅方向で一対の被覆接触片20によって区画され、上下方向において連結部22によって区画され、下方に開口する電線収容溝32を有する。電線収容溝32は、下方に向かって緩やかに広がるように形成されている。
図6及び
図7に示すように、第1被覆接触片30及び第2被覆接触片31は、第1圧接片16及び第2圧接片17に対してそれぞれ電線方向で対向している。
【0022】
一対の押し込み部21は、それぞれ、一対の被覆接触片20の上端から電線方向に突出するように形成されている。一対の押し込み部21は、第1押し込み部33と第2押し込み部34を含む。
【0023】
図6及び
図7に示すように、第1押し込み部33は、第1被覆接触片30の幅方向外方における端部の上端から第2電線方向に突出している。
図7に示すように、第1押し込み部33は、第2電線方向に向かうにつれて幅方向外方に向かうように、電線方向に対して若干傾斜するように突出している。従って、第1押し込み部33は、電線2から遠ざかるように突出していると言及できる。
【0024】
図6及び
図7に示すように、第2押し込み部34は、第2被覆接触片31の幅方向外方における端部の上端から第1電線方向に突出している。
図7に示すように、第2押し込み部34は、第1電線方向に向かうにつれて幅方向外方に向かうように、電線方向に対して若干傾斜するように突出している。従って、第2押し込み部34は、電線2から遠ざかるように突出していると言及できる。
【0025】
従って、
図7に示すように、一対の被覆接触片20、一対の押し込み部21、連結部22は、前述したように平面視でS字を構成している。そして、第1押し込み部33、第1被覆接触片30、連結部22、第2被覆接触片31、第2押し込み部34は、この記載順に連なっている。
【0026】
引き続き
図7に示すように、捻り部材5が圧接端子3に嵌合した状態で、一対の押し込み部21は、一対の圧接片11に対して幅方向で対向している。具体的には、第1押し込み部33及び第2押し込み部34は、第1圧接片16及び第2圧接片17の幅方向外方にそれぞれ配置されている。そして、捻り部材5が圧接端子3に嵌合した状態で、第1押し込み部33及び第2押し込み部34は、第1圧接片16及び第2圧接片17に対して幅方向でそれぞれ接触している。捻り部材5が圧接端子3に嵌合した状態で、第1押し込み部33及び第2押し込み部34は、捻り部材5の弾性復元力により、第1圧接片16及び第2圧接片17が互いに近づくように第1圧接片16及び第2圧接片17をそれぞれ幅方向で押し込む。換言すれば、第1押し込み部33及び第2押し込み部34は、捻り部材5の弾性復元力により、第1圧接片16及び第2圧接片17を幅方向内方に押し込む。この押し込みにより、電線2の芯線7の一対の圧接片11に対する接触圧が高められる。
【0027】
図5及び
図6を参照して、一対の部材側ロック部23は、それぞれ、一対の被覆接触片20の下端から電線方向に突出するように形成されている。一対の部材側ロック部23は、第1部材側ロック部38と第2部材側ロック部39を含む。第1部材側ロック部38は、第1被覆接触片30の幅方向外方における端部の下端から第2電線方向に突出している。第2部材側ロック部39は、第2被覆接触片31の幅方向外方における端部の下端から第1電線方向に突出している。
【0028】
図6に示すように、捻り部材5が圧接端子3に嵌合した状態で、第1部材側ロック部38は第1端子側ロック部18と上下方向で対向しており、第1端子側ロック部18の下方に位置している。同様に、第2部材側ロック部39は、第2端子側ロック部19と上下方向で対向しており、第2端子側ロック部19の下方に位置している。これにより、捻り部材5が圧接端子3に嵌合した状態で、捻り部材5を圧接端子3に対して相対的に上方に移動することが規制されるので、捻り部材5と圧接端子3との嵌合状態がロックされるようになっている。
【0029】
<圧入状態>
次に、圧接端子3に電線2を圧入することについて詳細に説明する。
図2及び
図3に示すように電線2を圧接端子3の電線圧入溝12に圧入すると、
図3及び
図8に示すように電線2が幅方向において圧縮される。このとき、
図8に示すように、電線2の被覆8は一対の圧接片11との接触によって切断され、この切断に伴って電線2の芯線7が幅方向において露出する。この結果、露出した芯線7は、一対の圧接片11に対して、ある程度の接触圧を伴って電気的に接触することになる。
【0030】
<嵌合状態>
次に、圧接端子3に捻り部材5を嵌合することについて詳細に説明する。
図1及び
図4に示すように、圧接端子3に捻り部材5を嵌合するには、圧接端子3と捻り部材5が上下方向に対向した状態で、捻り部材5を圧接端子3に向かって相対的に下方に変位させる。このとき、
図9に示すように、捻り部材5の一対の被覆接触片20が平面視で、圧接端子3を挟んで互いに反対側に配置され、且つ、電線2を挟んで互いに反対側に配置されるように、平面視における圧接端子3と捻り部材5の嵌合位置関係に留意する。
【0031】
上記の嵌合位置関係を維持したまま、更に、捻り部材5を圧接端子3に向かって相対的に下方に変位させると、第1に、
図6に示すように、第1部材側ロック部38及び第2部材側ロック部39が第1端子側ロック部18及び第2端子側ロック部19をそれぞれ乗り越えて、捻り部材5が圧接端子3に嵌合する。具体的には、第1部材側ロック部38が第1端子側ロック部18と接触することで第1部材側ロック部38が第1被覆接触片30の捻じれ変形を伴って幅方向外方に弾性変位し、第1部材側ロック部38が第1端子側ロック部18を乗り越えると、第1被覆接触片30の弾性復元力によって第1部材側ロック部38が幅方向内方に弾性復帰する。これにより、第1端子側ロック部18と第1部材側ロック部38が下方に向かってこの記載順に並び、第1端子側ロック部18と第1部材側ロック部38が上下方向で対向する位置関係となる。第2部材側ロック部39及び第2端子側ロック部19についても同様である。捻り部材5が圧接端子3に嵌合するとは、第1端子側ロック部18、第2端子側ロック部19、第1部材側ロック部38、第2部材側ロック部39の上述した位置関係が成立したことを意味する。そして、この位置関係により、捻り部材5を圧接端子3に対して相対的に上方に変位させることが規制され、もって、圧接端子3と捻り部材5の嵌合状態がロックされる。
【0032】
第2に、
図4に示すように、捻り部材5の連結部22が電線2に対して上下方向で対向する。これにより、圧接端子3に圧入された電線2が上方に抜けることがない。なお、
図4に示す嵌合状態において、典型的には、捻り部材5の連結部22は電線2の被覆8に対して上下方向で接触していない。しかしながら、上記嵌合状態において、捻り部材5の連結部22は電線2の被覆8に対して上下方向で接触してもよい。
【0033】
第3に、
図7に示すように、一対の圧接片11が一対の押し込み部21と幅方向でそれぞれ接触することで、一対の圧接片11には幅方向内方を向く力が作用する。これにより、電線2の芯線7の一対の圧接片11に対する接触圧が増大し、電線2の芯線7と圧接端子3との接触信頼性が向上する。なお、このとき、一対の押し込み部21が一対の被覆接触片20や連結部22の弾性変形を伴って若干幅方向外方に弾性変位することにより、製造時における寸法誤差をある程度吸収することができる。従って、一対の圧接片11が一対の押し込み部21と幅方向でそれぞれ接触したときに、一対の圧接片11に作用する幅方向内方への力が過大となることがなく、芯線7の損傷を防止することができる。
【0034】
そして、第4に、
図9に示すように、第1被覆接触片30及び第2被覆接触片31が電線2の被覆8に対して幅方向内方に向かって押し付けられる。ここで、第1被覆接触片30及び第2被覆接触片31は、前述したように、
図9の平面視において圧接端子3を挟んで反対側に配置され、且つ、電線2を挟んで反対側に配置されている。従って、上記のように第1被覆接触片30及び第2被覆接触片31が電線2の被覆8に対して幅方向内方に向かって押し付けられることで、電線2には偶力が作用する。この結果、電線2は、平面視で、圧接端子3の電線圧入溝12の近傍領域Pにおいて局所的に反時計回りに捻られることになる。ここで、近傍領域Pにおける電線2の長手方向を線分Qで示している。
図9に示すように、線分Qは、平面視で電線方向に対して反時計回りに傾斜している。この傾斜により、電線2の芯線7の第1圧接片16に対する接触圧は局所的に極端に大きくなる。同様に、この傾斜により、電線2の芯線7の第2圧接片17に対する接触圧は局所的に極端に大きくなる。この結果、電線2の芯線7の圧接端子3に対する接触圧の最大値が嵌合前と比較して増大するので、電線2と圧接端子3との高い接触信頼性が実現される。
【0035】
<応力緩和時>
次に、圧接端子3の応力緩和時について説明する。
図8及び
図9に示すように圧接端子3に電線2が圧入された状態で、一対の圧接片11には幅方向外方を向く応力が生じている。従って、一対の圧接片11が抱える応力が緩和されるように、一対の圧接片11は幅方向外方へ徐々に変位しようとする。この現象は、応力緩和現象と呼ばれ、特に圧接端子3が高温下に晒されたとき顕著に出現する。このように一対の圧接片11が幅方向外方へ変位すると、電線2の芯線7の一対の圧接片11に対する接触圧が低下する問題が生じ、電線2と圧接端子3との接触信頼性が損なわれる虞がある。ここで、
図7に示すように、一対の圧接片11が応力緩和によって幅方向外方へ変位することは、一対の圧接片11が幅方向において一対の押し込み部21と接触することを介して、捻り部材5の剛性により一定程度防止される。
【0036】
これに加えて、本実施形態の圧接コネクタ1では、一対の圧接片11が応力緩和により幅方向外方へ変位することで電線2の芯線7の一対の圧接片11に対する接触圧が低下する問題が別のアプローチにより緩和される。具体的には、
図10に示すように、平面視で、第2押し込み部34が電線方向に対して傾斜している。詳しくは、平面視で、第2押し込み部34は、電線2から離れるように第1電線方向に突出している。従って、第2圧接片17が応力緩和により幅方向外方へ変位すると、第2押し込み部34が第2圧接片17に対して滑って第2電線方向へ変位するようになる。この結果、
図11に示すように、第2被覆接触片31は第2押し込み部34と共に平面視で反時計回りに回転する。同様に、第1被覆接触片30は、第1押し込み部33と共に平面視で反時計回りに回転する。この回転により、近傍領域Pにおいて電線2は更に反時計回りに回転する。この電線2の局所的な回転により、電線2の芯線7の一対の圧接片11に対する接触圧は増大する。この結果、一対の圧接片11が応力緩和により幅方向外方へ変位しても、電線2の芯線7の圧接端子3に対する接触圧の最大値が変位前と比較して大幅に低下することがないので、電線2と圧接端子3との高い接触信頼性を維持することができる。
【0037】
以上に、本開示の実施形態を説明した。上記実施形態は以下の特徴を有する。
【0038】
即ち、
図1に示すように、圧接コネクタ1は、圧接端子3と捻り部材5を含む。圧接端子3は、基部10と、基部10から延びる一対の圧接片11と、を有する。
図2及び
図3に示すように、一対の圧接片11の間に形成された電線圧入溝12(溝)に電線2を圧入することで、電線2の芯線7が一対の圧接片11と接触する。
図9に示すように、捻り部材5は、圧接端子3と嵌合することで、平面視で(圧接端子3の電線圧入溝12に電線2を圧入する圧入方向に沿って見て)、線分Qの向き(近傍領域Pにおける電線2の芯線7の長手方向)が変化するように電線2を捻る。以上の構成によれば、電線2の芯線7の一対の圧接片11に対する接触圧が高まるので、接触信頼性の高い圧接コネクタ1が実現される。
【0039】
図9に示すように、また、捻り部材5は、電線2の被覆8に対して接触する一対の被覆接触片20を有する。一対の被覆接触片20は、平面視で、圧接端子3を挟んで互いに反対側に配置され、且つ、電線2を挟んで互いに反対側に配置されている。以上の構成によれば、一対の被覆接触片20が電線2の被覆8に対して接触することで、電線2を捻る偶力が電線2に作用する。従って、捻り部材5を簡素な構成で実現できる。
【0040】
また、捻り部材5は、一対の被覆接触片20を連結すると共に圧接端子3の電線圧入溝12に挿入される連結部22を更に有する。以上の構成によれば、電線2が電線圧入溝12から上方に引き抜かれることを防止できる。
【0041】
また、
図7に示すように、捻り部材5は、一対の圧接片11が互いに近づくように一対の圧接片11をそれぞれ押し込む、一対の押し込み部21を有する。以上の構成によれば、電線2の芯線7の一対の圧接片11に対する接触圧が更に高まる。
【0042】
また、
図7に示すように、一対の押し込み部21は、一対の被覆接触片20からそれぞれ突出するように形成されている。以上の構成によれば、一対の被覆接触片20の弾性変形を伴うことで一対の押し込み部21が互いから遠ざかることができるので、電線2の芯線7の一対の圧接片11に対する接触圧が過度に高まることを防止できる。
【0043】
また、
図10に示すように、平面視で、捻り部材5が圧接端子3に嵌合した状態で、一対の押し込み部21は、電線2から遠ざかるようにそれぞれ突出している。以上の構成によれば、一対の圧接片11が応力緩和により互いから遠ざかると、一対の押し込み部21が一対の圧接片11に対してそれぞれ滑り、
図11に示す平面視で、一対の被覆接触片20が一対の圧接片11から離れるように連結部22を中心として回転する。この回転により、一対の被覆接触片20が電線2の被覆8に対して接触することで発生する偶力が増大する。従って、以上の構成によれば、一対の圧接片11が応力緩和により互いから遠ざかっても、電線2の芯線7の一対の圧接片11に対する接触圧を確保することができる。
【0044】
また、
図7に示すように、一対の押し込み部21、一対の被覆接触片20、及び、連結部22は、圧入方向に沿って見てS字を構成している。以上の構成によれば、捻り部材5を簡素な構成で実現できる。
【0045】
また、
図7に示すように、一対の押し込み部21の一方としての第1押し込み部33、一対の被覆接触片20の一方としての第1被覆接触片30、連結部22、一対の被覆接触片20の他方としての第2被覆接触片31、一対の押し込み部21の他方としての第2押し込み部34は、この記載順に連なっている。
【0046】
また、
図6に示すように、圧接端子3は、一対の端子側ロック部15を有する。捻り部材5は、一対の部材側ロック部23を有する。捻り部材5を圧接端子3に嵌合した状態で、下方において一対の端子側ロック部15と一対の部材側ロック部23がこの記載順にそれぞれ並ぶことにより捻り部材5と圧接端子3との嵌合状態がロックされる。以上の構成によれば、捻り部材5と圧接端子3との嵌合状態を安定的に維持できる。
【0047】
上記実施形態は、例えば、以下のように変更できる。
【0048】
例えば、
図9において、一対の被覆接触片20は、電線2の被覆8を切断して電線2の芯線7に直接接触してもよい。
【0049】
図6において、一対の端子側ロック部15のうち一方を省略してもよい。同様に、一対の部材側ロック部23のうち一方を省略してもよい。一対の端子側ロック部15と一対の部材側ロック部23をすべて省略してもよい。
【0050】
図7に示すように、上記実施形態において捻り部材5は平面視でS字を構成している。しかしながら、捻り部材5は平面視で逆S字を構成してもよい。この場合、
図9及び
図11に示す近傍領域Pにおいて、電線2は平面視で時計回りに回転することになる。
【0051】
なお、圧接コネクタ1(IDC Connector)とは、電線2の被覆8を除去することなく電線2を圧接端子3(IDC:Insulation Displacement Contact)に押し込むと、電線2の被覆8が局所的に切断されて電線2の芯線7が圧接端子3と導通するコネクタである。圧接端子3とは、電線2の被覆8を局所的に切断することにより電線2の芯線7に電気的に接触可能な端子である。
【符号の説明】
【0052】
1 圧接コネクタ
2 電線
3 圧接端子
4 圧接端子側ハウジング
5 捻り部材
6 捻り部材側ハウジング
7 芯線
8 被覆
10 基部
11 圧接片
12 電線圧入溝(溝)
13 電線収容部
14 電線案内部
15 端子側ロック部
16 第1圧接片
17 第2圧接片
18 第1端子側ロック部(端子側ロック部)
19 第2端子側ロック部(端子側ロック部)
20 被覆接触片
21 押し込み部
22 連結部
23 部材側ロック部
30 第1被覆接触片(被覆接触片)
31 第2被覆接触片(被覆接触片)
32 電線収容溝
33 第1押し込み部(押し込み部)
34 第2押し込み部(押し込み部)
38 第1部材側ロック部(部材側ロック部)
39 第2部材側ロック部(部材側ロック部)
P 近傍領域
Q 線分