(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025096980
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】多孔質材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 1/08 20060101AFI20250623BHJP
B22F 1/12 20220101ALI20250623BHJP
B22F 3/08 20060101ALI20250623BHJP
B22F 7/02 20060101ALI20250623BHJP
B22F 3/11 20060101ALN20250623BHJP
【FI】
C22C1/08 D
B22F1/12
B22F3/08
B22F7/02
B22F3/11 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213014
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】西脇 淳人
(72)【発明者】
【氏名】富永 耕治
(72)【発明者】
【氏名】和田 直之
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018AA03
4K018AA07
4K018AA10
4K018AA14
4K018AA19
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4K018BA03
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4K018BA09
4K018BA10
4K018BA13
4K018BA17
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC12
4K018CA41
4K018JA01
4K018KA22
4K018KA70
(57)【要約】
【課題】熱処理による硬度低下を回避することができる、多孔質材の製造方法、及びそれによって得られる多孔質材を提供すること。
【解決手段】金属材料を含む原料粉末と、支持粉末との混合粉末を、上記金属材料の再結晶温度未満の温度で圧縮固化することと、圧縮固化された上記混合粉末を溶媒に接触させて、上記支持粉末を溶解除去することと、を含む、多孔質材の製造方法。本開示の多孔質材の製造方法によれば、金属材料を含む多孔質材であって、上記多孔質材の金属骨格部の硬度が、上記金属骨格部を構成する原料としての上記金属材料の硬度以上である、金属材料が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材の製造方法であって、前記方法は、
金属材料を含む原料粉末と、支持粉末との混合粉末を、前記金属材料の再結晶温度未満の温度で圧縮固化することと、
圧縮固化された前記混合粉末を溶媒に接触させて、前記支持粉末を溶解除去することと、を含む、多孔質材の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮固化が爆発圧搾法により行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属材料は、純金属、合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの金属材料を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属材料は、2種以上の金属材料を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記原料粉末は、無機化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記支持粉末は、水溶性塩を含み、前記溶媒は水を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
第1の混合粉末から形成される層と、第1の混合粉末とは異なる組成を有する第2の混合粉末から形成される層とを積層した状態で、前記圧縮固化を行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
金属材料を含む多孔質材であって、前記多孔質材の金属骨格部の硬度が、前記金属骨格部を構成する原料としての前記金属材料の硬度以上である、多孔質材。
【請求項9】
前記金属材料は、純金属、合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの金属材料を含む、請求項8に記載の多孔質材。
【請求項10】
前記金属材料は、2種以上の金属材料を含み、前記多孔質材の金属骨格部の硬度が、前記金属骨格部を構成する原料としての前記金属材料の硬度以上である、請求項8又は9に記載の多孔質材。
【請求項11】
前記多孔質材は、無機化合物を更に含み、前記多孔質材の金属骨格部の硬度が、前記金属骨格部を構成する原料としての前記金属材料の硬度以上である、請求項8又は9に記載の多孔質材。
【請求項12】
前記多孔質材は、金属骨格部の構造及び/又は組成が異なる2種類以上の多孔質層を有する、請求項8又は9に記載の多孔質材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多孔質材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質材は、多くの空孔を有しており、通気性や比表面積の大きさから、フィルターや触媒、熱交換器、医療用人工骨・インプラント、電極材、緩衝材、及び消音材等さまざまな分野で利用されている。
【0003】
一般的に使用される金属材料で形成された多孔質材は、めっき法や、鋳造法、発泡法、燃焼合成法、及び粉末焼結法などの、熱処理過程を経る手法で作製される。しかしながら、多孔質材を構成する金属材料の再結晶温度以上の熱負荷による硬度低下、並びに金属材料の融点以上の熱負荷による相変態及び合金層の形成など、金属材料の素材特性が変わることで、硬度、引張強度、耐力、及び疲労強度などの機械的特性を著しく低下させる恐れがあった。一般に、多孔質体の硬度が十分でない場合、機械的特性の低下を招く恐れがあり、高い機械的特性が要求される分野に用いる事が困難である。特に、合金、金属の混合物、及び金属と無機化合物とを混合した複合材料では、熱処理による機械的特性低下の傾向が顕著となる。そのため、熱影響を考慮して、金属、金属混合物、及び複合材料等を選定する必要があり、使用できる材料が限定されてしまう。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2015-74820号公報)では、発泡樹脂の骨格表面を導電処理し、ニッケルめっきとスズめっきを施した後、樹脂部を熱分解除去することで多孔質材を作製する方法が記載されている。しかし、この方法では、樹脂部の熱分解除去に1000℃もの高温加熱が必要であり、ニッケルの再結晶温度を超えるため硬度が著しく低下する恐れがある。また、めっきが可能な金属種に限定される手法であるため、使用できる金属材料が限定される。また、めっき液を循環させる必要があるため、数百μm以上の空孔径しか形成できない。さらに、樹脂部の熱分解除去によって環境負荷が増す。
【0005】
特許文献2(特開2016-83813号公報)、特許文献3(特開2011-42873号公報)では、塩化ナトリウム粉末とアルミニウム粉末にチタン粉末や炭化ケイ素粉末などを混ぜた混合粉末を加圧焼成後、水洗にて塩化ナトリウムを除去して多孔質材を作製する方法が記載されている。しかし、この方法では、焼結による熱負荷によって、アルミニウム部の再結晶温度を超えるため硬度が低下する問題がある。さらに、塩化ナトリウムの融点(810℃)より低い温度で焼結できるアルミニウムなどの金属材料を必須成分としているため、使用できる金属材料が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-74820号公報
【特許文献2】特開2016-83813号公報
【特許文献3】特開2011-42873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、熱処理による硬度低下を回避することができる、多孔質材の製造方法、及びそれによって得られる多孔質材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、金属材料の原料粉末と支持粉末との混合粉末を圧縮固化し、その後支持粉末を溶解除去することで、上記課題を解決できることを見いだした。本開示の実施形態の例を以下の項目[1]~[12]に列記する。
[1]
多孔質材の製造方法であって、上記方法は、
金属材料を含む原料粉末と、支持粉末との混合粉末を、上記金属材料の再結晶温度未満の温度で圧縮固化することと、
圧縮固化された上記混合粉末を溶媒に接触させて、上記支持粉末を溶解除去することと、を含む、多孔質材の製造方法。
[2]
上記圧縮固化が爆発圧搾法により行われる、項目1に記載の方法。
[3]
上記金属材料は、純金属、合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの金属材料を含む、項目1又は2に記載の方法。
[4]
上記金属材料は、2種以上の金属材料を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
[5]
上記原料粉末は、無機化合物を更に含む、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
[6]
上記支持粉末は、水溶性塩を含み、上記溶媒は水を含む、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[7]
第1の混合粉末から形成される層と、第1の混合粉末とは異なる組成を有する第2の混合粉末から形成される層とを積層した状態で、上記圧縮固化を行う、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[8]
金属材料を含む多孔質材であって、上記多孔質材の金属骨格部の硬度が、上記金属骨格部を構成する原料としての上記金属材料の硬度以上である、多孔質材。
[9]
上記金属材料は、純金属、合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの金属材料を含む、項目8に記載の多孔質材。
[10]
上記金属材料は、2種以上の金属材料を含み、上記多孔質材の金属骨格部の硬度が、上記金属骨格部を構成する原料としての上記金属材料の硬度以上である、項目8又は9に記載の多孔質材。
[11]
上記多孔質材は、無機化合物を更に含み、上記多孔質材の金属骨格部の硬度が、上記金属骨格部を構成する原料としての上記金属材料の硬度以上である、項目8~10のいずれか一項に記載の多孔質材。
[12]
上記多孔質材は、金属骨格部の構造及び/又は組成が異なる2種類以上の多孔質層を有する、項目8~11のいずれか一項に記載の多孔質材。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、熱処理による硬度低下を回避することができる、多孔質材の製造方法、及びそれによって得られる多孔質材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、円筒収束法(単管)で衝撃波を粉末に作用させる装置の例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、円筒収束法(二重管)で衝撃波を粉末に作用させる装置の例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、一軸圧縮法で衝撃波を粉末に作用させる装置の例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施例2の多孔質材の外観写真である。
【
図5】
図5は、実施例2の純Niから構成される多孔質材の断面である。
【
図6】
図6は、実施例3の純Wから構成される多孔質材の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態を詳細に説明するが、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態の各数値範囲における上限値および下限値は、任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。
【0012】
《多孔質材の製造方法》
本開示の多孔質材の製造方法は、金属材料を含む原料粉末と、支持粉末との混合粉末を、金属材料の再結晶温度未満の温度で圧縮固化することと、圧縮固化された混合粉末から支持粉末を除去することとを含む。支持粉末を除去することは、圧縮固化された混合粉末を溶媒に接触させて、支持粉末を溶解除去することにより行うことができる。本開示において、「多孔質材」とは、多くの空隙を含む材料のことである。本開示の方法によれば、金属材料の再結晶温度未満の温度で圧縮固化するため、熱処理による金属材料の硬度低下を回避することができる。また、熱処理による影響を考慮する必要がなく、めっき又は加圧焼成等の使用可能な金属が限られる従来の方法と比較して、多孔質材の材料選択の余地が幅広い。よって、本開示によれば、幅広い種類の金属を用いて、純金属の単体、合金、2種類以上の純金属及び/又は合金の混合物、純金属又は合金と無機化合物との複合材料などの様々な組み合わせでであっても、金属骨格部の硬度が、原料としての金属材料の硬度以上である多孔質材が提供される。更に、樹脂部の熱分解除去等を含む従来の方法と比較して、環境負荷を低減することが可能である。
【0013】
〈原料粉末〉
原料粉末は金属材料を含む。金属材料は、純金属、合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの金属材料を含むことが好ましい。純金属とは、限定されないが、周期表の第1族~第14族、好ましくは第3族~13族に属する金属である。金属として、具体的には、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、亜鉛、金、銀、及びタングステン等が挙げられ、例えば、特許文献2及び3等でも多孔質体の金属として用いられているアルミニウムのほか、ニッケル、及びタングステンなどの、高融点金属で一般的に多孔質化が難しい材料であっても使用することができる。合金は、二種以上の上記金属の組み合わせ、例えば、上記で挙げた鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、亜鉛、金、銀、又はタングステン等を主成分とした合金であることが好ましい。「主成分」とは、合金の金属組成において最も重量割合の大きい金属をいう。合金として、具体的には、例えば、ステンレス鋼、黄銅(真鍮)、白銅、青銅、ハンダ、ジュラルミン、及びニクロム等が挙げられ、高い機械的性質及び耐食性などを有することから、ステンレス鋼が好ましい。ステンレス鋼の多孔質材は、メタルサポート型SOFC(固体酸化物形燃料電池)のメタルサポート材(金属支持体)として使用できる可能性がある。純金属及び合金は、純粋な又は高純度の純金属及び合金に限定されず、不純物をある程度含有する純金属及び合金を使用することもできる。不純物は、他の金属元素であっても、炭素、リン及び硫黄等の非金属元素であってもよい。
【0014】
金属材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の金属材料を含んでもよい。例えば、金属材料は、2種以上の純金属、2種以上の合金、又は1種以上の純金属と1種以上の合金との組み合わせを含んでもよい。純金属と合金との組み合わせとしては、例えば、純アルミニウムとステンレス鋼が挙げられる。金属材料が硬度の低いアルミニウムと硬度の高いステンレス鋼を含有する場合であっても、両材料の硬度を高めることができる。金属材料が2種以上の金属材料を含む場合、それらの混合割合は特に限定されない。
【0015】
金属材料は粉末の形態であり、その平均粒径は、限定されないが、好ましくは0.1μm~1000μmである。金属材料の平均粒径の上限値は、例えば800μm以下、500μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、又は50μm以下であってよい。これらの上限値と組み合わせることのできる下限値は、例えば0.5μm以上、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上である。金属材料の粒度分布は、500μm以下の粉末が30%以上含有されていることが好ましく、250μm以下の粉末が30%以上含有されていることがより好ましい。粒径が500μmより大きい粉末の割合が30%以下であれば支持粉末及び無機化合物と均質に混合し易く、より均質な多孔質材を得ることができる。
【0016】
原料粉末は、金属材料に加えて、無機化合物を更に含んでもよい。原料粉末が、金属材料に加えて、無機化合物を更に含む場合、多孔質材を様々な用途に使用しうる。例えば、触媒や、SOFCの燃料極(Ni+YSZの混合物など)として使用しうる。また、例えばガラス成分を含む場合など、無機化合物が固化助剤として働くことが期待できるという利点がある。無機化合物としては、常温で固体の無機化合物であれば特に限定されず、好ましくは、金属又は非金属の、酸化物、窒化物、炭化物、及びホウ化物等の無機材料が挙げられる。無機化合物として、具体的には、例えば、SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、TiN、SiC、及びWC等が挙げられ、上述した観点から、Al2O3、及びYSZが好ましい。無機化合物は、1種を単独で用いてもよく、もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
無機化合物は粉末の形態であり、その平均粒径は、限定されないが、好ましくは0.1μm~1000μmである。無機化合物の平均粒径の上限値は、例えば800μm以下、500μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、又は50μm以下であってよい。これらの上限値と組み合わせることのできる下限値は、例えば0.5μm以上、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上である。無機化合物の粒度分布は、500μm以下の粉末が30%以上含有されていることが好ましく、250μm以下の粉末が30%以上含有されていることがより好ましい。粒径が500μmより大きい粉末の割合が30%以下であれば、支持粉末及び金属粉末と均質に混合し易く、より均質な多孔質材を得ることができる。
【0018】
原料粉末が、金属材料に加えて、無機化合物を更に含む場合、無機化合物の混合割合は、上記原料粉末の合計体積を100体積%として、好ましくは0体積%超90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、更に好ましくは70体積%以下、より更に好ましくは60体積%以下、特に好ましくは50体積%以下、40体積%以下、30体積%以下、20体積%以下、又は10体積%以下であってもよい。これらの上限値と組み合わせることのできる下限値は、好ましくは1体積%以上、より好ましくは5体積%以上、更に好ましくは10体積%以上である。
【0019】
〈支持粉末〉
支持粉末は、常温で固体であり、溶媒(水または有機溶剤)に容易に溶ける材料(以下、「溶解性材料」ともいう。)であれば特に制限はない。溶解性材料としては、好ましくは、水溶性塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウムアルミニウム(ミョウバン)、及び硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0020】
支持粉末は粉末の形態であり、その平均粒径は、限定されないが、好ましくは0.1μm~1000μmである。支持粉末の平均粒径の上限値は、例えば800μm以下、500μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、又は50μm以下であってよい。これらの上限値と組み合わせることのできる下限値は、例えば0.5μm以上、1μm以上、5μm以上、又は10μm以上である。支持粉末の平均粒径を調整することにより、多孔質材の空孔径を調整することができる。
【0021】
〈混合粉末〉
混合粉末は、上記で説明した原料粉末及び支持粉末を含む。原料粉末と支持粉末の混合割合は、限定されないが、例えば、混合粉末の合計体積を100体積%として、原料粉末を10体積%~90体積%、支持粉末を10体積%~90体積%とすることができる。原料粉末の混合割合の上限値は、例えば、80体積%以下、70体積%以下、60体積%以下、50体積%以下、40体積%以下、30体積%以下、又は20体積%以下であってよく、これらの上限値と組み合わせることのできる下限値は、例えば、20体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、又は80体積%以上であってよい。支持粉末の混合割合の上限値は、例えば、80体積%以下、70体積%以下、60体積%以下、50体積%以下、40体積%以下、30体積%以下、又は20体積%以下であってよく、これらの上限値と組み合わせることのできる下限値は、例えば、20体積%以上、30体積%以上、40体積%以上、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上、又は80体積%以上であってよい。原料粉末と支持粉末の混合割合を調整することにより、多孔質材の空孔率を調整することができる。
【0022】
混合粉末は、1種の混合粉末を単独で用いてもよく、又は、異なる組成を有する2種以上の混合粉末を組み合わせて用いてもよい。例えば、第1の混合粉末から形成される層と、当該第1の混合粉末とは異なる組成を有する第2の混合粉末から形成される層とを積層した状態で、圧縮固化を行うことができる。すなわち、異なる組成を有する2種以上の混合粉末を、同一治具内に順に投入し、層状とした後に一緒に圧搾することで、複数種の多孔質材を一体化した状態で圧縮固化することができる(以下、「一括成形」ともいう。)。一括成形によって、異なる多孔質材を別々に成形して積層させることなく、構造及び/又は組成が異なる2種類以上の多孔質層を有する多孔質材を容易に得ることができる。なお、混合粉末の組成とは、原料粉末及び支持粉末の材料種、材料の混合割合、平均粒径、及び粒度分布等のパラメータを包含する。多孔質層の構造及び/又は組成とは、当該多孔質層の空孔率、及び空孔径等、並びに、当該多孔質層を構成する金属材料及び任意の無機化合物の材料種、含有割合、及び分布等を包含する。
【0023】
〈圧縮固化〉
圧縮固化では、上記で説明した混合粉末を、金属材料の再結晶温度未満の温度で圧縮固化する。これによって、熱処理による金属材料の硬度低下を回避することができ、多孔質材の材料選択の余地が幅広く、また、環境負荷を低減することが可能である。再結晶温度とは、純金属又は合金が、JIS G 0201において定義される再結晶を起こす温度である。この温度は、純金属及び合金の純度、組成、結晶内の塑性ひずみの程度、及び過熱の時間などによって著しい影響を受け、金属材料の物理的性質が変化する。例えば、JIS H 4000のA1100-H112の再結晶温度は約180℃であり、JIS H 4551のNW2200の再結晶温度は約600℃であり、JIS G 4305のSUS304Lの再結晶温度は約530℃である。圧縮固化の温度の上限値は、再結晶温度未満の温度であれば限定されないが、好ましくは、150℃以下、又は100℃以下とすることができる。これらの上限値と組み合わせることのできる圧縮固化の温度の下限値は、圧縮固化することができれば限定されないが、好ましくは、40℃以上、70℃以上、又は90℃以上とすることができる。
【0024】
圧縮固化の方法としては、金属材料の再結晶温度未満の温度で混合粉末を所定の形状に圧縮して成形することができれば特に限定されない。圧縮固化の方法として、好ましくは、爆発圧搾法が挙げられる。爆発圧搾法とは、爆薬による衝撃波を用いて瞬間的に圧縮固化する方法で、一般に利用される円筒収束法、一軸圧縮法等が利用できる。円柱状、円筒状の圧縮体を得たい場合は円筒収束法、板状の圧縮体を得たい場合は一軸圧縮法を選択する。また、筒状の圧縮体を得る場合には、中心にコア材をいれた円筒収束法を用いることができる。なお、爆発圧搾法は、爆薬のエネルギーを活用しており、瞬間的な熱影響はあると想定されるが、その影響は限定的であり、圧搾体全体において再結晶化に至るものではない。
【0025】
爆薬とは、爆轟波を発生する火薬類である。爆薬としては、具体的には、硝酸アンモニウム;硝酸エステル類、例えばPETN(ペンタエリスリトールテトラナイトレート)、及びニトログリセリン;ニトロ化合物、例えばTNT(トリニトロトルエン);並びにニトラミン、例えばシクロトリメチレントリニトラミン、及びシクロテトラメチレンテトラニトラミンなどが挙げられる。爆薬は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、又はその他爆薬成分若しくは爆薬以外の成分を混合したものを用いてもよい。
【0026】
金属粉末を強固に固化させるために、爆速としては、1,500~8,000m/sであることが好ましく、2,000~5,000m/sであることがより好ましい。その爆速は、金属粉末の特性と圧縮法により適宜選択される。
【0027】
衝撃波を用いて圧縮固化する場合、液体を媒体とした衝撃波で圧縮固形化することができる。好ましくは液体として水を用いる。水を媒体とする衝撃波(以下、水中衝撃波という)を用いた場合、衝撃波の圧力それ自体が持続する時間は、空気を媒体とする場合と比較して長い。また、水を媒体とする場合、空気を媒体とする場合よりも温度を低く(金属材料の再結晶温度未満に)保つことが極めて容易である。
【0028】
以下、衝撃波を用いて粉末を圧縮固化する方法の例について、図を用いて説明する。本開示は、これらの具体例によって何ら技術的範囲が限定されるものではない。
図1は、円筒収束法で衝撃波を粉末に作用させる装置の例を示す模式図である。
図1において、粉末充填用金属製パイプ1の中に圧搾用の混合粉末2が充填されている。粉末充填用金属製パイプ1の両端は金属製プラグ3により封じられている。粉末充填用金属製パイプ1は、樹脂製底板8上に縦向きに載置され、上端の金属製プラグ3の上部にバッファー4をセットした状態で、樹脂製パイプ5で覆われている。バッファー4は、起爆点直下に位置する粉末充填用金属製パイプ1の上部に最初に爆轟圧力が到達することによりパイプ1が折れることを防止し、パイプ1の半径方向に均一な圧力がかかるよう誘導するなどの役割がある。粉末充填用金属製パイプ1と樹脂製パイプ5との間の空間には、爆薬6が装填されている。爆薬6の上部には雷管7が設置されており、雷管7により爆薬6を起爆すると、混合粉末2は、爆薬6の発する衝撃波によって半径方向に圧縮される。
【0029】
図2は、円筒収束法で衝撃波を粉末に作用させる装置の例を示す模式図である。
図1の装置の粉末充填用金属製パイプ1を金属製飛翔パイプ9で覆って二重管構造としていること以外は、
図1の装置と同様である。一般的に、爆薬よりも高い密度の物質(金属製飛翔パイプ9)を高速で飛翔及び衝突させることから、
図1の装置よりも高圧力で圧縮することが可能である。また、二重管の間に水を充填することにより、水を媒体として圧縮固形化することが可能である。
【0030】
図3は、一軸圧縮法で衝撃波を粉末に作用させる装置の例を示す模式図である。
図3において、圧搾用の混合粉末2は、金属製治具11の底面に敷設され、混合粉末2上には金属製治具10が載置されている。金属製治具11内の金属製治具10上には爆薬6が直接配置されている。爆薬6を装填した容器を金属製治具10上に配置してもよい。爆薬6の上部には雷管7が設置されており、起爆部7により爆薬6を起爆すると、混合粉末2は、爆薬6の発する衝撃波によって下部方向に圧縮される。
【0031】
衝撃波を大きくすることによって、圧縮固化後の混合粉末の相対密度を90~99%にすることが好ましい。ここで、相対密度は、対象とする混合粉末が間隙体積を完全に埋めるように圧縮されたと仮定したときの密度を基準(100%)として、圧縮固化後の混合粉末の実際の密度を%で表したものであり、次式で表される。
相対密度=(実際の密度)÷(基準の密度)×100
【0032】
〈支持粉末の除去〉
圧縮固化された混合粉末(以下、「圧搾体」ともいう。)を溶媒に接触させて、支持粉末を溶解除去することにより、支持粉末が散在していた箇所に空孔が形成され、多孔質材が得られる。再結晶温度以上の熱負荷がないことにより、得られる多孔質材の金属骨格部の硬度を、当該金属骨格部を構成する原料(圧縮固化前の原料)としての金属材料の硬度以上にすることができる。
【0033】
支持粉末を溶解除去する方法としては、限定されないが、圧搾体を溶媒に浸漬して支持粉末を溶出させる方法が挙げられる。必要に応じ、溶媒を加熱する、溶媒を流動させる、圧搾体を揺動する等、物理的な刺激を加えてもよい。処理中の温度は金属材料の再結晶温度を超えることはなく、支持粉末を除去する際の温度の上限値は、好ましくは、200℃以下、150℃以下、又は100℃以下とすることができる。これらの上限値と組み合わせることのできる下限値は、好ましくは、40℃以上、70℃以上、又は90℃以上とすることができる。
【0034】
〈実施形態の例〉
本開示の好ましい実施形態の例を説明する。
図1又は
図2の装置を用い、金属材料(例えばニッケル粉末)からなる原料粉末と支持粉末(例えばNaCl粉末)とを混合した圧搾用の混合粉末2を、粉末充填用金属製パイプ1に自然充填する。混合粉末2は、必要に応じて予備圧縮をすることもできる。次に爆発圧搾法によって高圧力の衝撃波で瞬間的に混合粉末2を圧縮する。爆発圧搾法における温度は約80℃程度であり、金属材料(ニッケル)の再結晶温度に到達することはない。粉末充填用金属製パイプ1内から圧縮された圧搾体を取り出し、圧搾体を水洗する。このとき、支持粉末(NaCl粉末)が水に溶解し、除去されるため、支持粉末が散在していた箇所に空孔が形成され、多孔質材を得ることができる。さらに、金属材料が圧縮されていること、及び再結晶温度以上の熱負荷がないことにより、得られた多孔質材の金属骨格部の硬度は、当該金属骨格部を構成する原料としての金属材料(ニッケル)の硬度以上にすることができる。
【0035】
《多孔質材》
本開示の多孔質材は、金属材料を含む多孔質材であって、多孔質材の金属骨格部の硬度が、当該金属骨格部を構成する原料としての金属材料の硬度以上である。金属骨格部とは、金属材料から構成される多孔質材の構造部分を意味する。多孔質材が、金属材料に加えて無機化合物を含む場合は、金属骨格部とは、その構造内の金属材料から構成される部分を意味する。本開示の多孔質材は、上述した本開示の多孔質材の製造方法によって得ることができる。
【0036】
〈硬度〉
硬度は、JIS Z 2244のビッカース硬さ試験-試験方法、JIS Z 2255の極微小負荷硬さ試験方法に従い求められる値である。多孔質材の金属骨格部の硬度は、原料としての金属材料の硬度を基準として、好ましくは1.05倍以上、より好ましくは1.1倍以上、更に好ましくは1.15倍以上、より更に好ましくは1.2倍以上、特に好ましくは1.3倍以上、1.4倍以上、又は1.5倍以上とすることができる。これらの下限値と組み合わせられる多孔質材の金属骨格部の硬度の上限値としては、限定されないが、原料としての金属材料の硬度を基準として、例えば3倍以下、2.5倍以下、又は2倍以下とすることができる。例えば、選択する金属材料がタングステンやモリブデンのように硬く高融点の金属であっても、金属骨格部の硬度は、原料としてのタングステン及びモリブデンの硬度に比べて、1.05倍以上の硬度であってよい。
【0037】
〈材料〉
多孔質材に含まれる金属材料は、純金属、合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つの金属材料を含むことが好ましい。金属材料の種類についての詳細は、上述したとおりである。金属材料は、2種以上の金属材料を含み、多孔質材の金属骨格部のうち、各金属材料に対応する部分の硬度が、当該金属骨格部を構成する原料としての各金属材料の硬度以上であることがより好ましい。多孔質材は、金属材料に加えて無機化合物を更に含んでもよい。無機化合物の種類についての詳細は、上述したとおりである。多孔質材が金属材料に加えて無機化合物を更に含む場合、多孔質材の金属骨格部のうち、各金属材料に対応する部分の硬度が、当該金属骨格部を構成する原料としての各金属材料の硬度以上であることがより好ましい。
【0038】
〈空孔率〉
多孔質材の空孔率は、好ましくは5%以上95%以下、より好ましくは15%以上85%以下、更に好ましくは20%以上80%以下である。空孔率が5%以上では、支持粉末を除去することが容易であり、空孔率が95%以下では、多孔質材が十分な機械的強度を得ることができる。空孔率は、原料粉末と支持粉末との混合割合を調整することにより、調整することができる。
【0039】
〈空孔径〉
多孔質材の空孔径は、好ましくは0.1μm以上3000μm以下である。空孔径の上限値は、例えば、2000μm以下、1500μm以下、1000μm以下、800μm以下、500μm以下、250μm以下、又は200μm以下である。空孔径の下限値は、例えば、0.5μm以上、又は1μm以上である。空孔径が0.1μm以上では、支持粉末を除去することが容易であり、空孔径が3000μm以下では、多孔質材が十分な機械的強度を得ることができる。空孔径は、支持粉末の平均粒径、及び粒度分を調整することにより、調整することができる。
【0040】
〈積層構造〉
多孔質材は、構造及び/又は組成が異なる2種類以上の多孔質層を有していてもよい。このような積層構造は、上述したように、第1の混合粉末から形成される層と、第1の混合粉末とは異なる組成を有する第2の混合粉末から形成される層とを積層した状態で圧縮固化を行うことにより得ることができる。
【実施例0041】
以下、本開示の実施例及び比較例を示すが、本開示はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
【0042】
《測定及び評価方法》
〈平均粒径、粒度分布〉
平均粒度、粒度分布の測定は、JIS Z 8825の粒子径解析-レーザ回折・散乱法、JIS Z 8815のふるい分け試験方法通則に従い実施した。また、ふるい分けにて所定の粒径範囲内に調整した粉末では、そのふるい分けした範囲を粉末の粒径範囲とした。
【0043】
〈空孔率〉
空孔率の測定は、JIS R 1634のファインセラミックスの焼結体密度・開気孔率の測定方法に記載の開気孔率測定方法に従い実施した。空孔率が80%を超える場合は、5mm立方体サイズに多孔質材を加工し、乾燥状態の重量と真密度から空孔率を算出した。計算方法は以下のとおりである。
空孔率(vol%)=(乾燥重量÷見かけ体積)÷真密度×100
【0044】
〈空孔径〉
空孔径は、電子顕微鏡(SEM)で測定した。具体的には、得られた多孔質材を切断し、断面を電子顕微鏡で観察。空孔部分の長さを10点以上測定し、その範囲を空孔径とした。
【0045】
〈硬度〉
硬度の測定は、JIS Z 2244のビッカース硬さ試験-試験方法、JIS Z 2255の極微小負荷硬さ試験方法に従い実施した。金属骨格部がマイクロビッカース硬さ試験機で適用できないほど極微小領域である場合、ナノインデンテーション試験機を用いた。硬度測定の結果、多孔質材の金属骨格部の硬度が、原料として金属材料の硬度以上であれば評価を〇、素材強度未満であれば評価を×とした。
【0046】
《実施例及び比較例》
〈実施例1〉
金属粉末として純アルミニウム(Al)粉末(平均粒径:約3μm)、支持粉末として塩化ナトリウム(NaCl)粉末(ふるい分け粒径:250~800μm)を用いた。Al粉末とNaCl粉末を体積比率でAl粉末:50vol%、NaCl粉末:50vol%で混合し、粉末充填用金属製パイプ2内へ自然充填した。爆速2500m/sの爆薬を用いて、
図1の方法で圧縮し、圧搾体を作製した。得られた圧搾体を水に浸漬し、NaClを溶出させ多孔質化することにより、Al多孔質材を得た。
【0047】
次に、作製したAl多孔質材をJIS R 1634に従い空孔率を測定した結果、空孔率は52%であった。Al多孔質材の断面を、電子顕微鏡(SEM)を用いて、空孔径を測定した結果、200~800μmであった。JIS Z 2244に従いAl多孔質材のAl部の硬度を測定した結果、Al素材の硬度の1.5倍の硬度と高い硬度を有していた。
【0048】
〈実施例2〉
金属粉末として純ニッケル(Ni)粉末(平均粒径:約3μm)、支持粉末として塩化ナトリウム(NaCl)粉末(平均粒径:約20μm)を用いた。Ni粉末とNaCl粉末を体積比率でNi粉末:30vol%、NaCl粉末:70vol%で混合し、金属製治具11へ自然充填した。爆速3500m/sの爆薬を用いて、
図3の方法で圧縮し、圧搾体を作製した。得られた圧搾体を水に浸漬し、NaClを溶出させ多孔質化することにより、Ni多孔質材を得た。
【0049】
次に、作製したNi多孔質材をJIS R 1634に従い空孔率を測定した結果、空孔率は69%であった。Ni多孔質材の断面を電子顕微鏡(SEM)を用いて、空孔径を測定した結果、1~100μmであった。JIS Z 2244に従いNi多孔質材のNi部の硬度を測定した結果、Ni素材の硬度の1.7倍の硬度と高い硬度を有していた。
【0050】
〈実施例3〉
金属粉末として純タングステン(W)粉末(平均粒径:約5μm)、支持粉末として塩化ナトリウム(NaCl)粉末(ふるい分け粒径:<150μm)を用いた。W粉末とNaCl粉末を体積比率でW粉末:60vol%、NaCl粉末:40vol%で混合し、粉末充填用金属製パイプ2内へ自然充填した。爆速2500m/sの爆薬を用いて、
図2の方法で圧縮し、圧搾体を作製した。得られた圧搾体を水に浸漬し、NaClを溶出させ多孔質化することにより、W多孔質材を得た。
【0051】
次に、作製したW多孔質材をJIS R 1634に従い空孔率を測定した結果、空孔率は43%であった。W多孔質材の断面を電子顕微鏡(SEM)を用いて、空孔径を測定した結果、10~150μmであった。JIS Z 2244に従いW多孔質材のW部の硬度を測定した結果、W素材の硬度の1.2倍の硬度と高い硬度を有していた。
【0052】
〈実施例4〉
金属粉末として純アルミニウム(Al)粉末(ふるい分け粒径:<150μm)とSUS316L粉末(ふるい分け粒径:<150μm)の混合物を用い、支持粉末として塩化ナトリウム(NaCl)粉末(ふるい分け粒径:250~800μm)を用いた。Al粉末、SUS316L粉末、NaCl粉末それぞれの体積比率は、Al粉末:5vol%、SUS316L:20vol%、NaCl粉末:75vol%で混合し、金属製治具11へ自然充填した。爆速2500m/sの爆薬を用いて、
図3の方法で圧縮し、圧搾体を作製した。得られた圧搾体を水に浸漬し、NaClを溶出させ多孔質化することにより、(Al+SUS316L)混合多孔質材を得た。
【0053】
次に、作製した(Al+SUS316L)混合多孔質材をJIS R 1634に従い空孔率を測定した結果、空孔率は72%であった。(Al+SUS316L)混合多孔質材の断面を電子顕微鏡(SEM)を用いて、空孔径を測定した結果、200~800μmであった。JIS Z 2244に従い(Al+SUS316L)混合多孔質材のAl部とSUS316L部の硬度を測定した結果、Al部はAl素材の硬度の1.5倍、SUS316L部はSUS316L素材の硬度の1.2倍の硬度とそれぞれ高い硬度を有していた。
【0054】
〈実施例5〉
金属粉末として純ニッケル(Ni)粉末(ふるい分け粒径:<50μm)とAl
2O
3粉末(ふるい分け粒径:<10μm)の混合物を用い、支持粉末として塩化ナトリウム(NaCl)粉末(ふるい分け粒径:250~800μm)を用いた。Ni粉末、Al
2O
3粉末、NaCl粉末それぞれの体積比率は、Ni粉末:70vol%、Al
2O
3:15vol%、NaCl粉末:15vol%で混合し、金属製治具11へ自然充填した。爆速2500m/sの爆薬を用いて、
図3の方法で圧縮し、圧搾体を作製した。次に、得られた圧搾体を水に浸漬し、NaClを溶出させ多孔質化することにより、(Ni+Al
2O
3)混合多孔質材を得た。
【0055】
次に、作製した(Ni+Al2O3)混合多孔質材をJIS R 1634に従い空孔率を測定した結果、空孔率は13%であった。(Ni+Al2O3)混合多孔質材の断面を電子顕微鏡(SEM)を用いて、空孔径を測定した結果、200~800μmであった。JIS Z 2244に従い(Ni+Al2O3)混合多孔質材のNi部の硬度を測定した結果、Ni素材の硬度の1.5倍の硬度と高い硬度を有していた。
【0056】
〈実施例6〉
金属粉末としてSUS316L粉末(ふるい分け粒径:<150μm)、支持粉末として塩化ナトリウム(NaCl)粉末(ふるい分け粒径:100~150μm)を用いた。SUS316L粉末とNaCl粉末のそれぞれの体積比率は、SUS316L粉末:60vol%、NaCl粉末:40vol%で混合し、金属製治具11へ自然充填し、第一層目とした。
【0057】
次に、金属粉末として純ニッケル(Ni)粉末(ふるい分け粒径:約50μm)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉末(平均粒径:約3μm)の混合物を用い、支持粉末として塩化ナトリウム(NaCl)粉末(ふるい分け粒径:100~150μm)を用いた。それぞれ体積比率で、Ni粉末:30vol%、YSZ:30vol%、NaCl粉末:40vol%で混合し、金属製治具11の第一層目の上部へ自然充填し、第二層目とした。
【0058】
次に、爆速3500m/sの爆薬を用いて、
図3の方法で圧縮し、圧搾体を作製した。得られた圧搾体を水に浸漬し、NaClを溶出させ多孔質化することにより、(Ni+YSZ/SUS316L)混合積層多孔質材を得た。
【0059】
次に、作製した(Ni+YSZ/SUS316L)混合積層多孔質材をJIS R 1634に従い空孔率を測定した結果、空孔率は42%であった。(Ni+YSZ/SUS316L)混合積層多孔質材の断面を電子顕微鏡(SEM)を用いて、空孔径を測定した結果、100~150μmであった。JIS Z 2244に従い(Ni+YSZ/SUS316L)混合積層多孔質材のNi部とSUS316L部の硬度を測定した結果、Ni部はNi素材の硬度の1.7倍、SUS316L部はSUS316L素材の硬度の1.2倍の硬度と高い硬度を有していた。
【0060】
〈比較例1〉
金属粉末として純アルミニウム(Al)粉末(平均粒径:約3μm)、支持粉末として塩化ナトリウム(NaCl)粉末(ふるい分け粒径:250~800μm)を用いた。Al粉末とNaCl粉末を体積比率でAl粉末:50vol%、NaCl粉末:50vol%で混合し、ハンドプレス機を用いて予備圧搾体を作製した。(Al+NaCl)予備圧搾体を650℃で熱処理し、(Al+NaCl)焼結体を作製した。(Al+NaCl)焼結体を水に浸漬し、NaClを溶出させ多孔質化することにより、Al焼結多孔質材を得た。
【0061】
次に、作製したAl焼結多孔質材をJIS R 1634に従い空孔率を測定した結果、空孔率は51%であった。Al多孔質材の断面を電子顕微鏡(SEM)を用いて、空孔径を測定した結果、200~800μmであった。JIS Z 2244に従いAl焼結多孔質材のAl部の硬度を測定した結果、Al素材の硬度の0.8倍と硬度が低下していた。
【0062】
〈比較例2〉
金属粉末として純ニッケル(Ni)粉末(平均粒径:約3μm)、支持粉末として塩化ナトリウム(NaCl)粉末(平均粒径:約20μm)を用いた。Ni粉末とNaCl粉末を体積比率でNi粉末:30vol%、NaCl粉末:70vol%で混合し、ハンドプレス機を用いて予備圧搾体を作製した。次に、(Ni+NaCl)予備圧搾体を780℃で熱処理したが、Niの焼結温度より低かったため、良好な焼結体が得られなかった。更に、(Ni+NaCl)予備圧搾体を900℃で熱処理したが、NaClの溶融が見られ、良好な焼結体が得られなかった。
【0063】
【0064】
図4は、実施例2の多孔質材の外観写真である。
図5は、実施例2のNiから構成される多孔質材の断面である。
図6は、実施例3のWから構成される多孔質材の断面である。
本開示の多孔質材の製造方法によれば、熱処理による硬度低下を回避することができるため、幅広い金属種を用いて、純金属の単体、合金、2種類以上の純金属及び/又は合金の混合物、純金属又は合金と無機化合物との複合材料などの様々な組み合わせで、得られる多孔質材の金属骨格部の硬度を、原料の硬度以上に高めることができる。また、本開示の多孔質材の製造方法は、環境負荷が低いため、産業上極めて有用である。本開示の多孔質材は、構造体の軽量化、フィルター、触媒、熱交換器、医療用人工骨・インプラント、電極材、緩衝材、及び消音材等に適用可能性がある。尚、本開示の適用可能性はこれらに限定されるものではない。