(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097021
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】ハーネス接続部構造
(51)【国際特許分類】
H01R 12/70 20110101AFI20250623BHJP
H01R 4/70 20060101ALI20250623BHJP
【FI】
H01R12/70
H01R4/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213069
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】伊東 宏明
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AA21
5E223AB01
5E223AB74
5E223BA01
5E223BA03
5E223BA06
5E223BB14
5E223CB15
5E223EA02
(57)【要約】
【課題】ワイヤーハーネス自体の大型化及び重量化を招くことなくワイヤーハーネスの接続部における放熱効率を向上することができるハーネス接続部構造を提供する。
【解決手段】ハーネス接続部構造1は、ワイヤーハーネス3の導体11と端子15とを接続する接続部5と、接続部5を収容する筐体7と、筐体7の内部に配設され、冷却水Wが流れる冷却水配管9と、を備えている。筐体7の内部は、絶縁性を持つ絶縁油41によって満たされている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネスの導体と端子とを接続する接続部と、
前記接続部を収容する筐体と、
前記筐体の内部に配設され、冷却水が流れる冷却水配管と、を備え、
前記筐体の内部には、絶縁油が封入されている、
ハーネス接続部構造。
【請求項2】
前記絶縁油は、前記筐体の内部において前記接続部と前記冷却水配管との両方に接触しており、前記接続部と前記冷却水配管との間で熱交換を行うように構成される、請求項1に記載のハーネス接続部構造。
【請求項3】
前記冷却水配管は、途中で折り曲げられてU字状に形成された管本体を有して構成されている、請求項1又は2に記載のハーネス接続部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネス接続部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車等の車両に搭載されたバッテリーに車両外部から電力を供給(充電)するために、充電コネクタ及び充電インレットを含む充電システムが利用されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されている充電インレットは、ハウジングと、ハウジングに保持された複数の電源端子とを含み、各電源端子はピン及びブロックを含む。電源ケーブル(ワイヤーハーネス)が充電インレットからバッテリーパックまで延びており、この電源ケーブルは電源端子のブロックに機械的に結合され且つ電気的に接続される。冷却チューブ(冷却水配管)が充電インレットからヒートシンクまで延びており、この冷却チューブは電源端子のブロックのポート内に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両では、車両の電動化に伴ってワイヤーハーネスにはより大きな電流が流れるようになっており、この大電流化に伴い、特にワイヤーハーネスの導体と端子とを接続する接続部において発生する熱が増加し得る。このため、熱伝導、自然空冷、及び冷却水配管を用いた冷却による放熱では十分でない場合には、ワイヤーハーネスの接続部における発熱を抑制するためにワイヤーハーネスを構成する部品を大型化する必要があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、ワイヤーハーネス自体の大型化及び重量化を招くことなくワイヤーハーネスの接続部における放熱効率を向上することができるハーネス接続部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るハーネス接続部構造は、ワイヤーハーネスの導体と端子とを接続する接続部と、接続部を収容する筐体と、筐体の内部に配設され、冷却水が流れる冷却水配管と、を備え、筐体の内部には、絶縁油が封入されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワイヤーハーネス自体の大型化及び重量化を招くことなくワイヤーハーネスの接続部における放熱効率を向上することができるハーネス接続部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係るハーネス接続部構造の一例を示す概略的な斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るハーネス接続部構造の一例を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本実施形態に係るハーネス接続部構造について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
図1及び
図2に示すハーネス接続部構造1は、車両に搭載されるバッテリーを充電する際に用いられる充電コネクタ又は車両に設置される充電インレット等に適用することが可能である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、ハーネス接続部構造1は、電源回路(図示せず)からの電力等を供給するためのワイヤーハーネス3の接続部5と、筐体7と、冷却水配管9とを備える。
【0012】
ワイヤーハーネス3は、複数本(本実施形態では2本)用いられ、導電性材料から構成される導体11を有している。この導体11は、例えば銅又はアルミニウム等の金属材料から構成されている。本実施形態では、導体11は板状導体(バスバー)により構成されているが、これに限定はされず、導体11が一般的な電線導体により構成されていてもよい。
【0013】
また、ワイヤーハーネス3は、後述する筐体本体部21に形成された貫通孔21aに挿通されている。そして、ワイヤーハーネス3は、ワイヤーハーネス3の外周と貫通孔21aの内周との間に隙間が生じないように、例えば、接着、溶着、嵌め込み等により筐体本体部21に対して取り付けられている。
【0014】
接続部5は、ワイヤーハーネス3の導体11と端子15とを接続する。具体的には、ワイヤーハーネス3(導体11)の端部にはそれぞれ、ボルト13等の固定部材を用いて端子15が固定(接続)されている。この端子15は、例えば銅又はアルミニウム等の金属材料から構成されている。
【0015】
筐体7は、合成樹脂材料から構成されていてもよく、例えばアルミダイキャスト等の金属材料から構成されていてもよい。この筐体7は、筐体本体部21と、筐体本体部21に着脱可能に取り付けられた蓋部23とを有している。筐体本体部21と蓋部23との間には、パッキン25等のシール部材が配置されていてもよい。筐体本体部21と蓋部23とに囲まれた空間(すなわち、筐体7の内部)には、前述の接続部5と冷却水配管9とが配設されて収容されている。
【0016】
また、筐体本体部21における蓋部23が対向する端面部には、筒状に形成された筒部27が一体に形成されている。本実施形態では、筒部27は円筒状に形成されているが、これに限定はされず、筒部27が角筒状に形成されていてもよい。筒部27により囲まれた空間(すなわち、筒部27の内方)には、端子15における相手端子(図示せず)が電気的に接続される電気接続部17が配設されて収容されており、筒部27の内周と端子15の外周との間には、ゴム栓29等のシール部材が配置される。
【0017】
冷却水配管9は、例えばステンレス管等の金属管により構成される。この冷却水配管9は、ラジエーター等の冷却装置(図示せず)に連結されており、冷却水Wが冷却水配管9と冷却装置との間を循環する。本実施形態の冷却水配管9は、管本体31の中間部33が同一平面内で折り曲げられて(すなわち、向きが反転させられて)U字状に形成されており、その管本体31の両端部35,35が筐体7(筐体本体部21)を貫通して外部に突出されている。すなわち、筐体7の内部に配設される冷却水配管9は、U字管状に形成されている。
【0018】
この冷却水配管9は、筐体本体部21に形成された貫通孔21bに挿通されている。そして、冷却水配管9は、冷却水配管9の外周と貫通孔21bの内周との間に隙間が生じないように、例えば、接着、溶着、嵌め込み等により筐体本体部21に対して取り付けられている。
【0019】
そして、ハーネス接続部構造1を構成する充電コネクタ又は充電インレット等の筐体7の内部は、高い絶縁性を持つ絶縁油41によって満たされて封入されている。しかしながら、筐体7の内部が絶縁油41によって完全に満たされている必要はなく、接続部5及び冷却水配管9の全部が浸かる高さまで絶縁油41が充填されていればよい。この絶縁油41は、高い絶縁性を持ち、大電流に対しても十分な絶縁性を有している。そして、筐体7の内部に封入された絶縁油41は、筐体7の内部において接続部5と冷却水配管9との両方に接触しており、接続部5と冷却水配管9との間で熱交換を行うように構成される。
【0020】
すなわち、本実施形態に係るハーネス接続部構造1においては、絶縁油41を介して接続部5(導体11及び端子15)において発生するジュール熱を冷却水配管9の内部を流れる冷却水Wに移動させる。また、絶縁油41は筐体7の内部において対流(自然対流)することにより、接続部5(導体11及び端子15)と冷却水配管9との間で熱を移動させる熱交換が行われる。接続部5の全部が絶縁油41に浸かっているため、接続部5(導体11及び端子15)の形状に関わらず外表面の隅々から熱を絶縁油41に伝えることができ、ワイヤーハーネス3の接続部5における放熱効率が向上し得る。
【0021】
このように、本実施形態の態様に係るハーネス接続部構造1は、ワイヤーハーネス3の導体11と端子15とを接続する接続部5と、接続部5を収容する筐体7と、筐体7の内部に配設され、冷却水Wが流れる冷却水配管9とを備える。筐体7の内部には、絶縁油41が封入されている。
【0022】
本実施形態では、筐体7の内部に絶縁油41が封入されていることにより、絶縁油41を介して接続部5(導体11及び端子15)において発生するジュール熱を冷却水配管9の内部を流れる冷却水Wに移動させることができる。また、絶縁油41が筐体7の内部において対流(自然対流)することにより、接続部5(導体11及び端子15)から冷却水配管9へと効率よく熱を伝えることができる。
【0023】
以上、本実施形態によれば、ワイヤーハーネス3自体の大型化及び重量化を招くことなくワイヤーハーネス3の接続部5における放熱効率を向上することができるハーネス接続部構造1を提供することができる。
【0024】
ハーネス接続部構造1において、絶縁油41は、筐体7の内部において接続部5と冷却水配管9との両方に接触しており、接続部5と冷却水配管9との間で熱交換を行うように構成されていてもよい。
【0025】
液体である絶縁油41は複雑な形状をしている端子15にも隙間なく接触するため、端子15において発生した熱を端子15の外表面全体から、端子15の外表面に接する絶縁油41に効率よく伝えることができる。また、絶縁油41が筐体7の内部において対流(自然対流)することにより、絶縁油41に接する端子15の外表面全体から冷却水配管9へと効率よく熱を伝えることができる。
【0026】
ハーネス接続部構造1において、冷却水配管9は、途中で折り曲げられてU字状に形成された管本体31を有して構成されていてもよい。
【0027】
本実施形態では、筐体7の内部に配設される冷却水配管9が、U字管状に形成されている。冷却水配管9(管本体31)を直管状に形成した場合と比較して、冷却水配管9の内部を流れる冷却水Wの流路を長くすることができ、熱を絶縁油41から冷却水配管9の内部を流れる冷却水Wへとより効率よく熱を伝えることができる。
【0028】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 ハーネス接続部構造
3 ワイヤーハーネス
5 接続部
7 筐体
9 冷却水配管
11 導体
15 端子
31 管本体
41 絶縁油
W 冷却水