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特開2025-97069中継装置、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097069
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】中継装置、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/46 20060101AFI20250623BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20250623BHJP
【FI】
H04L12/46 Z
H04L12/28 200Z
H04L12/28 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213135
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 雄爾
(72)【発明者】
【氏名】北川 和樹
(72)【発明者】
【氏名】芦邉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大武 生祥
(72)【発明者】
【氏名】栗山 奏
(72)【発明者】
【氏名】山崎 康広
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英樹
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033BA06
5K033DB12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新たな車載装置が車載ネットワークに接続された場合、当該車載装置に適した制御を行う中継装置、制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】車載システムにおいて、複数の車載装置の間の通信を中継する中継装置の制御回路110は、新規車載装置から受信したPDUからヘッダ情報を抽出する抽出部と、前記抽出部によって抽出された前記ヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて、前記新規車載装置に用いられる制御パターンを決定する決定部と、前記決定部によって決定された前記制御パターンによる制御処理を実行する制御部と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載装置の間の通信を中継する中継装置であって、
新規車載装置を接続するための通信ポートと、
前記通信ポートに接続された前記新規車載装置から前記通信ポートにおいて受信されたPDUからヘッダ情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部によって抽出された前記ヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて、前記新規車載装置に用いられる制御パターンを決定する決定部と、
前記決定部によって決定された前記制御パターンによる制御処理を実行する制御部と、
を備える、
中継装置。
【請求項2】
前記特定の領域は、送信元アドレスの内部領域であり、
前記送信元アドレスの内部領域には、前記制御パターンに対応するコードが格納されている、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記PDUは、イーサネットフレームである、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項4】
前記PDUは、IPパケットである、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項5】
前記PDUは、第1通信プロトコルにおいて用いられる第1PDUと、前記第1通信プロトコルが属するレイヤよりも上位のレイヤに属する第2通信プロトコルにおいて用いられる第2PDUとを含み、
前記ヘッダ情報は、前記第1PDUの第1ヘッダ情報と、前記第2PDUの第2ヘッダ情報とを含み、
前記特定の領域は、前記第1ヘッダにおける第1特定領域と、前記第2ヘッダにおける第2特定領域とを含む、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項6】
前記第1領域は、前記第1通信プロトコルの送信元アドレスの内部領域を含む、
請求項5に記載の中継装置。
【請求項7】
前記第2領域は、前記第2通信プロトコルの送信元アドレスの内部領域を含む、
請求項5に記載の中継装置。
【請求項8】
前記第1特定領域には、前記新規車載装置に用いられる第1制御パターンに対応する第1コードが格納されており、
前記第2特定領域には、前記新規車載装置に用いられる第2制御パターンに対応する第2コードが格納されており、
前記決定部は、前記第1特定領域に格納された前記第1コードに基づいて前記第1制御パターンを決定し、前記第2特定領域に格納された前記第2コードに基づいて前記第2制御パターンを決定し、
前記制御部は、決定された前記第1制御パターンによる第1制御処理と、決定された前記第2制御パターンによる第2制御処理とを実行する、
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項9】
前記決定部は、
前記第1コードと前記第1制御パターンとの対応関係を規定した第1テーブルにしたがって、前記第1特定領域に格納された前記第1コードに対応する前記第1制御パターンを決定し、
前記第2コードと前記第2制御パターンとの対応関係を規定した第2テーブルにしたがって、前記第2特定領域に格納された前記第2コードに対応する前記第2制御パターンを決定する、
請求項8に記載の中継装置。
【請求項10】
前記第1特定領域には、第1コードが格納されており、
前記第2特定領域には、第2コードが格納されており、
前記決定部は、前記第1特定領域に格納された前記第1コード及び前記第2特定領域に格納された前記第2コードに基づいて前記制御パターンを決定する、
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の中継装置。
【請求項11】
前記決定部は、
前記第1コードと前記第2コードとの組み合わせと前記制御パターンとの対応関係を規定したテーブルにしたがって、前記第1特定領域に格納された前記第1コードと前記第2特定領域に格納された前記第2コードとの組み合わせに対応する前記制御パターンを決定する、
請求項10に記載の中継装置。
【請求項12】
前記特定の領域は、前記ヘッダ情報におけるポート番号、宛先アドレス、プロトコル種別、及び応答時間の少なくとも1つの領域である、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項13】
複数の車載装置の間の通信を中継する中継装置によって用いられる制御方法であって、
通信ポートに接続された新規車載装置から前記通信ポートにおいて受信されたPDUからヘッダ情報を抽出するステップと、
抽出された前記ヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて、前記新規車載装置に用いられる制御パターンを決定するステップと、
決定された前記制御パターンによる制御処理を実行するステップと、
を含む、
制御方法。
【請求項14】
複数の車載装置の間の通信を中継する中継装置によって用いられる制御プログラムであって、
コンピュータに、
通信ポートに接続された新規車載装置から前記通信ポートにおいて受信されたPDUからヘッダ情報を抽出するステップと、
抽出された前記ヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて、前記新規車載装置に用いられる制御パターンを決定するステップと、
決定された前記制御パターンによる制御処理を実行するステップと、
を実行させるための、
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中継装置、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、エンジン、トランスミッション等を制御する制御系ECU(Electronic Control Unit)、ヘッドライト、パワーウインドウ等を制御するボディ系ECU、ナビゲーション装置、マルチメディア機器等の情報系ECU等、多種の車載装置が搭載される。各車載装置は、車載ネットワークに接続され、相互に通信することができる。
【0003】
新たなECUを車載ネットワークに追加することで、車両に新たな機能を追加することができる。特許文献1には、車載の統合ECUに追加ECUを新たに接続した場合における追加ECUの認証を行うシステムが開示されている。特許文献1に開示されたシステムでは、統合ECUが追加ECUの端末IDを追加ECUから受信し、受信した端末IDと統合ECUの車両側IDとを含む認証要求を車両外のサーバへ送信する。サーバは、受信した認証要求に含まれる車両側IDと端末IDとの組み合わせを、登録部に登録された車両側IDと端末IDとの組み合わせと照合し、追加ECUの認証レベルを決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-081939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新たな車載装置が車載ネットワークに接続された場合、当該車載装置に適した制御(例えば、電源制御、通信制御)が行われなければならない。特許文献1に開示されたシステムでは、サーバによる認証レベルが決定されなければ、追加ECUに適した制御を行うことができず、また、サーバによる認証には、追加ECUに割り当てられた端末IDが必要となる。すなわち、追加ECUは、統合ECUに接続された場合に、予め定められた仕様に則り、統合ECUからの要求に応じて端末IDを統合ECUに送信する機能を有していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る中継装置は、複数の車載装置の間の通信を中継する中継装置であって、新規車載装置を接続するための通信ポートと、前記通信ポートに接続された前記新規車載装置から前記通信ポートにおいて受信されたPDUからヘッダ情報を抽出する抽出部と、前記抽出部によって抽出された前記ヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて、前記新規車載装置に用いられる制御パターンを決定する決定部と、前記決定部によって決定された前記制御パターンによる制御処理を実行する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車載ネットワークにおいて使用される通信プロトコルに対応している車載装置に適した制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る車載システムの部分構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係る制御回路のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、イーサネットフレームのフォーマットを示す図である。
図4図4は、MACアドレスの特定制御仕様を説明するための図である。
図5図5は、第1実施形態に係るコートテーブルの一例を示す図である。
図6A図6Aは、ECUの電源制御パターンの第1例を示すグラフである。
図6B図6Bは、ECUの電源制御パターンの第2例を示すグラフである。
図7図7は、第1実施形態に係る第1中継ECUの機能の一例を示す機能ブロック図である。
図8図8は、第1実施形態に係る第1中継ECUにおける新規車載装置の制御動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、IPパケットのフォーマットを示す図である。
図10図10は、IPアドレスの特定制御仕様を説明するための図である。
図11図11は、第2実施形態に係るコートテーブルの一例を示す図である。
図12図12は、第4実施形態に係るコードテーブルの一例を示す図である。
図13図13は、第5実施形態に係るカメラと画像処理ECUとの間の通信の一例を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
【0010】
(1) 本実施形態に係る中継装置は、複数の車載装置の間の通信を中継する中継装置であって、新規車載装置を接続するための通信ポートと、前記通信ポートに接続された前記新規車載装置から前記通信ポートにおいて受信されたPDUからヘッダ情報を抽出する抽出部と、前記抽出部によって抽出された前記ヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて、前記新規車載装置に用いられる制御パターンを決定する決定部と、前記決定部によって決定された前記制御パターンによる制御処理を実行する制御部と、を備える。PDU(Protocol Data Unit)とは、通信プロトコルによって定義される、通信されるデータの最小単位であり、ヘッダとペイロードとを含む。上記構成により、車載ネットワークにおいて使用される通信プロトコルに準拠したPDUのヘッダ情報を用いて制御パターンを決定することができる。したがって、当該通信プロトコルに対応した車載装置に適した制御を行うことができる。
【0011】
(2) 上記(1)において、前記特定の領域は、送信元アドレスの内部領域であり、前記送信元アドレスの内部領域には、前記制御パターンに対応するコードが格納されていてもよい。これにより、PDUにおける送信元アドレスの内部領域にコードを格納することで、新規車載装置に対応した制御パターンを決定することができる。
【0012】
(3) 上記(1)又は(2)において、前記PDUは、イーサネットフレームであってもよい。これにより、イーサネットに対応した車載装置に本開示を容易に適用することができる。
【0013】
(4) 上記(1)又は(2)において、前記PDUは、IPパケットであってもよい。これにより、IP(Internet Protocol)に対応した車載装置に本開示を容易に適用することができる。
【0014】
(5) 上記(1)において、前記PDUは、第1通信プロトコルにおいて用いられる第1PDUと、前記第1通信プロトコルが属するレイヤよりも上位のレイヤに属する第2通信プロトコルにおいて用いられる第2PDUとを含み、前記ヘッダ情報は、前記第1PDUの第1ヘッダ情報と、前記第2PDUの第2ヘッダ情報とを含み、前記特定の領域は、前記第1ヘッダにおける第1特定領域と、前記第2ヘッダにおける第2特定領域とを含んでもよい。これにより、第1通信プロトコル及び第2通信プロトコルに対応した車載装置に本開示を容易に適用することができる。
【0015】
(6) 上記(5)において、前記第1領域は、前記第1通信プロトコルの送信元アドレスの内部領域を含んでもよい。これにより、第1PDUにおける送信元アドレスの内部領域に格納された情報に基づいて、制御パターンを決定することができる。
【0016】
(7) 上記(5)又は(6)において、前記第2領域は、前記第2通信プロトコルの送信元アドレスの内部領域を含んでもよい。これにより、第2PDUにおける送信元アドレスの内部領域に格納された情報に基づいて、制御パターンを決定することができる。
【0017】
(8) 上記(5)から(7)のいずれか1つにおいて、前記第1特定領域には、前記新規車載装置に用いられる第1制御パターンに対応する第1コードが格納されており、前記第2特定領域には、前記新規車載装置に用いられる第2制御パターンに対応する第2コードが格納されており、前記決定部は、前記第1特定領域に格納された前記第1コードに基づいて前記第1制御パターンを決定し、前記第2特定領域に格納された前記第2コードに基づいて前記第2制御パターンを決定し、前記制御部は、決定された前記第1制御パターンによる第1制御処理と、決定された前記第2制御パターンによる第2制御処理とを実行してもよい。これにより、新規車載装置に対応した第1制御パターンによる第1制御処理と、第2制御パターンによる第2制御処理のそれぞれを実行することができる。
【0018】
(9) 上記(8)において、前記決定部は、
前記第1コードと前記第1制御パターンとの対応関係を規定した第1テーブルにしたがって、前記第1特定領域に格納された前記第1コードに対応する前記第1制御パターンを決定し、前記第2コードと前記第2制御パターンとの対応関係を規定した第2テーブルにしたがって、前記第2特定領域に格納された前記第2コードに対応する前記第2制御パターンを決定してもよい。これにより、第1テーブル及び第2テーブルを用いて、第1コードに対応した第1制御パターン及び第2コードに対応した第2制御パターンのそれぞれを決定することができる。
【0019】
(10) 上記(5)から(7)のいずれか1つにおいて、前記第1特定領域には、第1コードが格納されており、前記第2特定領域には、第2コードが格納されており、前記決定部は、前記第1特定領域に格納された前記第1コード及び前記第2特定領域に格納された前記第2コードに基づいて前記制御パターンを決定してもよい。これにより、制御パターンの決定に第1コード及び第2コードを用いることができるため、多数の制御パターンを規定することができる。
【0020】
(11) 上記(10)において、前記決定部は、前記第1コードと前記第2コードとの組み合わせと前記制御パターンとの対応関係を規定したテーブルにしたがって、前記第1特定領域に格納された前記第1コードと前記第2特定領域に格納された前記第2コードとの組み合わせに対応する前記制御パターンを決定してもよい。これにより、テーブルを用いて、第1コード及び第2コードの組み合わせに対応した制御パターンを決定することができる。
【0021】
(12) 上記(1)において、前記特定の領域は、前記ヘッダ情報におけるポート番号、宛先アドレス、プロトコル種別、及び応答時間の少なくとも1つの領域であってもよい。これにより、PDUにおけるポート番号、宛先アドレス、プロトコル種別、及び応答時間の少なくとも1つの領域にコードを格納することで、新規車載装置に対応した制御パターンを決定することができる。
【0022】
(13) 本実施形態に係る制御方法は、複数の車載装置の間の通信を中継する中継装置によって用いられる制御方法であって、通信ポートに接続された新規車載装置から前記通信ポートにおいて受信されたPDUからヘッダ情報を抽出するステップと、抽出された前記ヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて、前記新規車載装置に用いられる制御パターンを決定するステップと、決定された前記制御パターンによる制御処理を実行するステップと、を含む。これにより、車載ネットワークにおいて使用される通信プロトコルに準拠したPDUのヘッダ情報を用いて制御パターンを決定することができる。したがって、当該通信プロトコルに対応した車載装置に適した制御を行うことができる。
【0023】
(14) 本実施形態に係る制御プログラムは、複数の車載装置の間の通信を中継する中継装置によって用いられる制御プログラムであって、コンピュータに、通信ポートに接続された新規車載装置から前記通信ポートにおいて受信されたPDUからヘッダ情報を抽出するステップと、抽出された前記ヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて、前記新規車載装置に用いられる制御パターンを決定するステップと、決定された前記制御パターンによる制御処理を実行するステップと、を実行させる。これにより、車載ネットワークにおいて使用される通信プロトコルに準拠したPDUのヘッダ情報を用いて制御パターンを決定することができる。したがって、当該通信プロトコルに対応した車載装置に適した制御を行うことができる。
【0024】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備える中継装置、中継装置において実行される特徴的なステップを含む制御方法、及び中継装置に特徴的な処理を実行させるための制御プログラムとして実現することができるだけでなく、前記中継装置を含む車載システムとして実現したり、前記中継装置の一部又は全部を半導体集積回路として実現したりすることができる。
【0025】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0026】
[1.第1実施形態]
[1-1.車載システム]
図1は、実施形態に係る車載システムの部分構成の一例を示すブロック図である。
【0027】
車載システム10は、車両に搭載される。車載システム10は、第1中継ECU100、第2中継ECU200、及びECU300を含む。
【0028】
第1中継ECU100と第2中継ECU200とは、通信線20Aを介して接続されている。第1中継ECU100及び第2中継ECU200を含む複数の中継ECUと、通信線20Aを含む複数の通信線によって車載ネットワークが構成される。第1実施形態に係る車載ネットワークは、スター型のネットワークトポロジを有するイーサネットネットワークであり(「Ethernet」は登録商標)、IP(Internet Protocol)ネットワークである。通信線20Aは、イーサネットケーブルである。ECU300は、第2中継ECU200に通信線を介して接続されている。
【0029】
第1中継ECU100は、「中継装置」の一例である。第1中継ECU100は、複数の通信ポート121A,121B,121C,121Dを含み、各通信ポート121A,121B,121C,121DにIPネットワークに対応した通信機器を接続することができる。
【0030】
例えば、第1中継ECU100には、新たなECU400Aを接続することができる。他の例では、第1中継ECU100には、新たなセンサ400Bを接続することができる。なお、本明細書において「車載装置」とは、車載ネットワークに接続される機器を意味し、ECU、センサ、及びアクチュエータが含まれる。つまり、ECU400A及びセンサ400Bは、「車載装置」の例である。
【0031】
ECU300,400Aは、車両の各部のハードウェアを個別に制御したり、車両の各部のハードウェアの状態を監視したり、車両に関する情報を処理したりする。ECU300,400Aのそれぞれは、制御系ECU、ボディ系ECU、情報系ECUとしての1又は複数の機能を有する。センサ400Bは、車両又は車両の周辺の状態又は物体を検知する。センサ400Bは、例えば、カメラ、レーダ、LiDAR(Light Detection And Ranging)、人感センサ、油圧センサ、温度センサ、車速センサ、エンジン(又はモータ)回転数センサ、アクセルペダルストロークセンサ、ブレーキペダルストロークセンサ、舵角センサ等である。
【0032】
図1の例では、ECU400Aは、通信線20Bを介して通信ポート121Bに接続される。センサ400Bは、通信線20Cを介して通信ポート121Cに接続される。
【0033】
第1実施形態では、第1中継ECU100は、通信の中継機能を有する。すなわち、第1中継ECU100は、通信回路120を含む。通信回路120は、通信ポート121A,121B,121C,121Dを含むスイッチである。例えば、通信回路120は、L2(レイヤ2)スイッチであり、他の例では、通信回路120は、L3(レイヤ3)スイッチである。
【0034】
第1中継ECU100は、接続された機器(第2中継ECU200、ECU400A、センサ400B)の間でイーサネットフレーム(以下、単に「フレーム」ともいう)を中継することができる。第2中継ECU200は、接続された機器(第1中継ECU100、ECU300)の間でフレームを中継することができる。なお、第1中継ECU100及び第2中継ECU200の少なくとも1つは、図示した以外の通信装置(例えば、中継装置、ECU、センサ)に接続されていてもよい。
【0035】
第1実施形態では、第1中継ECU100は、電源機能を有する。すなわち、第1中継ECU100は、電源回路130を含む。電源回路130は、電源ポート131A,131B,131C,131Dを含む。電源ポート131A,131B,131C,131Dには、給電対象の機器を接続することができる。図1の例では、電源ポート131Aには、電源線30Aを介して第2中継ECU200が接続され、電源ポート131Bには、電源線30Bを介してECU400Aが接続され、電源ポート131Cには、電源線30Cを介してセンサ400Bが接続されている。
【0036】
電源回路130は、車載の補機バッテリ(図示せず)に電源線を介して接続されている。電源ポート131Aは、補機バッテリに接続された直流バスにリレー132Aを介して接続されている。同様に、電源ポート131Bは、直流バスにリレー132Bを介して接続され、電源ポート131Cは、直流バスにリレー132Cを介して接続され、電源ポート131Dは、直流バスにリレー132Dを介して接続されている。電源回路130は、電源ポート131A,131B,131C,131Dに接続された機器(第2中継ECU200、ECU400A、センサ400B)に対して、リレー132A,132B,132C,132Dのそれぞれをオン/オフすることによって補機バッテリからの電力の供給/遮断を切り替えることができる。
【0037】
第1中継ECU100は、制御回路110をさらに含む。制御回路110は、通信回路120及び電源回路130を制御することができる。例えば、制御回路110は、通信回路120を介して、第2中継ECU200、ECU300、ECU400A、センサ400Bに指令を出力したり、第2中継ECU200、ECU300、ECU400A、センサ400Bから送信されたデータを受信することができてもよい。
【0038】
図2は、第1実施形態に係る制御回路のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0039】
制御回路110は、プロセッサ111と、不揮発性メモリ112と、揮発性メモリ113と、インタフェース(I/F)114とを含む。プロセッサ111は、不揮発性メモリ112と、揮発性メモリ113と、インタフェース(I/F)114とに、データを伝送するためのバス115を介して接続されている。
【0040】
揮発性メモリ113は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリである。不揮発性メモリ112は、例えばフラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の半導体メモリである。
【0041】
プロセッサ111は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。ただし、プロセッサ111は、CPUに限られない。プロセッサ111は、GPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。プロセッサ111は、コンピュータプログラムを実行可能に構成される。ただしプロセッサ111は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を一部に含んでもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを一部に含んでもよい。
【0042】
不揮発性メモリ112には、コンピュータプログラムである制御プログラム140及び制御プログラム140の実行に使用されるコードテーブル150が格納される。制御プログラム140は、フラッシュメモリ、ROM、CD-ROMなどの記録媒体に記憶させることができる。プロセッサ111は、制御プログラム140によって、新規のECU400A又はセンサ400Bに関する制御を実行することができる。
【0043】
インタフェース114は、入出力インタフェースを含む。具体的には、制御回路110のインタフェース114は、通信回路120及び電源回路130に接続されている。プロセッサ111は、インタフェース114に接続された通信回路120及び電源回路130を制御することができる。
【0044】
図1に戻る。例えば、第1中継ECU100は、フレームの中継機能及び電源機能だけでなく、車両に搭載されたハードウェアを制御したり、ハードウェアの状態を監視したりする機能を有してもよい。すなわち、第1中継ECU100は、制御系ECU、ボディ系ECU、情報系ECUとしての1又は複数の機能を有してもよい。
【0045】
第2中継ECU200は、第1中継ECU100及びECU300のそれぞれに通信線を介して接続されている。第2中継ECU200は、例えば、L2スイッチ又はL3スイッチの機能を有する。第2中継ECU200は、その他の機能、例えば、制御系ECU、ボディ系ECU、情報系ECUとしての1又は複数の機能を有してもよい。第2中継ECU200は、車両全体を統括制御するECU、又は、車両の一部分を統括制御するECUであってもよい。
【0046】
ECU300、ECU400A、センサ400B、第1中継ECU100、第2中継ECU200のそれぞれは、インターネットプロトコル(IP)を用いた通信を行うことができる。すなわち、ECU300、ECU400A、センサ400B、第1中継ECU100、第2中継ECU200のそれぞれは、IPパケットを収容したイーサネットフレームを送受信することができる。
【0047】
[1-2.PDU]
イーサネットプロトコルのPDUであるフレームについて説明する。第1実施形態では、イーサネットフレームが車載装置に関する制御処理のパターン(制御パターン)の決定に用いられる。図3は、イーサネットフレームのフォーマットを示す図である。イーサネットフレームには、ヘッダ領域と、ペイロード領域とが含まれる。
【0048】
ヘッダ領域には、宛先MACアドレスの領域(フィールド)と、送信元MACアドレスの領域と、タイプコードの領域とが含まれる。
【0049】
宛先MACアドレスの領域には、通信相手となる機器のMACアドレスが格納される(ユニキャストの場合)。マルチキャストフレームの場合には宛先MACアドレス領域にマルチキャストアドレスが格納され、ブロードキャストフレームの場合には宛先MACアドレス領域にブロードキャストアドレスが格納される。
【0050】
送信元MACアドレスの領域には、イーサネットフレームを送信する機器のMACアドレスが格納される。すなわち、ECU400Aがイーサネットフレームの送信元である場合は送信元MACアドレス領域にECU400AのMACアドレスが格納される。センサ400Bがイーサネットフレームの送信元である場合は送信元MACアドレス領域にセンサ400BのMACアドレスが格納される。
【0051】
タイプコードの領域には、イーサネットの上位プロトコルの識別コードが格納される。タイプコードの領域には、イーサネットフレームの長さが格納されることもある。
【0052】
ペイロード領域には、送信対象のデータが格納される。第1実施形態においては、ペイロード領域にIPパケットが格納される。
【0053】
イーサネットフレームの末尾(ペイロード領域の後)は、FCS(Frame Check Sequence)の領域である。FCS領域には、エラー検出のためのコードが格納される。
【0054】
[1-3.MACアドレス]
イーサネット通信を行う通信機器(ノード)のそれぞれには、ユニークなMACアドレスが割り当てられるが、車載ネットワークに接続された車載装置のMACアドレスは、車載ネットワークから外部ネットワーク(インターネット等)へは漏出しない。第1実施形態では、車載装置に割り当てられるMACアドレスは、一般的なMACアドレスの仕様とは異なる仕様によって定められる。以下、車載システム10において用いられるMACアドレスの仕様(又はIPアドレスの仕様)を「特定制御仕様」という。
【0055】
図4は、MACアドレスの特定制御仕様を説明するための図である。MAC(Media Access Control)アドレスは、第1オクテット、第2オクテット、第3オクテット、第4オクテット、第5オクテット、及び第6オクテットの6つのオクテットによって構成される。
【0056】
一般的な仕様では、上位3オクテット(第1オクテット、第2オクテット、第3オクテット)はベンダーID部であるが、特定制御仕様ではベンダーID部に限られず、任意に設定可能である。
【0057】
第4オクテット及び第5オクテットは、制御コードが格納される。制御コードは、車載装置のための制御パターンに対応づけられたコードである。制御コードについては後述する。
【0058】
第6オクテットは、ノードの識別子が格納されるである。すなわち、第6オクテットは、車載システム10においてユニークなIDが格納される。車載システム10では、MACアドレスの第6オクテットによって、ノードが識別される。
【0059】
[1-4.コードテーブル]
図5は、第1実施形態に係るコートテーブルの一例を示す図である。
【0060】
第1実施形態では、コードテーブル150は、MACアドレスに含まれる制御コードによって車載装置の電源制御パターンを決定するために用いられる。コードテーブル150は、ビット位置と、車両状態と、電源制御パターンとが対応づけられている。
【0061】
コードテーブル150におけるビット位置は、MACアドレスにおいて制御コードが格納される第4オクテット及び第5オクテット(16ビット)におけるビット位置を示している。ビット位置は、「1」から「16」まで定義されている。ビット位置「1」は、第4オクテット及び第5オクテットにおける最下位ビットである。ビット位置「2」は、最下位より1つ上の(2番目の)ビットであり、ビット位置「3」は、最下位より2つ上の(3番目の)ビットである。すなわち、第4オクテット及び第5オクテットの下位ビットから上位ビットへ向けて順番に、対応するビット位置の数字が大きくなる。
【0062】
車両状態は、車両の電源状態、ユーザの乗車に関する状態、車両の走行に関する状態等の種々の状態を含む。例えば、車両状態には、電源状態としてIG(イグニッション) ON状態及びIG OFF状態、乗車に関する状態としてユーザ乗車状態及びユーザ非乗車状態、走行に関する状態として停車状態及び走行状態が含まれる。ここで、IG ON状態とは、車両が走行可能な電源状態であり、IG OFF状態とは、車両が走行不可能な電源状態である。
【0063】
第1実施形態では、車両状態に応じて、車載装置の電源制御パターンを切り替える。図6A及び図6Bは、ECUの電源制御パターンの例を示すグラフである。図6A及び図6Bにおいて、縦軸は電源制御用のリレーのオン/オフの状態を示し、横軸は時間を示している。例えば、車両がユーザ非乗車状態である場合において、キーフォブを保持するユーザが車両に近づき、ユーザの顔認証が成功したときにドアロックを解除することを考える。この場合、キーフォブから送信される認証信号を受信するスマートエントリECUを稼働中とし、ユーザの接近を検知(認証情報の受信)したときに、ユーザを撮像するためのカメラ及び顔認証処理を行う画像処理ECUを起動することとする。このような動作を行うためには、図6Aに示すように、車両がユーザ非乗車状態である場合において、スマートエントリECUに対応するリレーをオン状態とし、ドアロックが解除されたタイミングでリレーをオフ状態に切り替える。さらに、図6Bに示すように、車両がユーザ非乗車状態である場合において、カメラ及び画像処理ECUのそれぞれに対応するリレーをオフ状態とし、ユーザの接近が検知されたタイミングで各リレーをオン状態に切り替え、さらに、ドアロックが解除されたタイミングで各リレーをオフ状態に切り替える。このように、車載装置を動作させる必要があるときにのみ車載装置に電力を供給し、車載装置を動作させる必要がないときには車載装置への電力供給を停止することにより、電力消費を低減し、補機バッテリの消耗を抑制することができる。上述したスマートエントリECU、カメラ、及び画像処理ECUは、車両状態がユーザ乗車状態である場合には、上記のリレーを全てオフ状態にし、電力供給を停止する。
【0064】
[1-5.第1中継ECUの機能]
図7は、第1実施形態に係る第1中継ECUの機能の一例を示す機能ブロック図である。
【0065】
第1中継ECU100のプロセッサ111が制御プログラム140を実行することにより、取得部141と、抽出部142と、判定部143と、決定部144と、制御部145との各機能が実現される。
【0066】
第1実施形態において、車載ネットワークに接続された新規車載装置は、当該新規車載装置のMACアドレスが送信元MACアドレスに指定されたイーサネットフレームを送信する。図1の例では、新規車載装置はECU400A及びセンサ400Bである。ECU400Aから送信されるイーサネットフレームでは、送信元MACアドレスの領域にECU400AのMACアドレスが格納される。センサ400Bから送信されるイーサネットフレームでは、送信元MACアドレスの領域にセンサ400BのMACアドレスが格納される。第1中継ECU100に接続された新規車載装置から送信されたイーサネットフレームは、第1中継ECU100における通信ポートによって受信される。例えば、ECU400Aから送信されたイーサネットフレームは、通信ポート121Bによって受信される。センサ400Bから送信されたイーサネットフレームは、通信ポート121Cによって受信される。取得部141は、通信ポートによって受信されたイーサネットフレームを取得する。
【0067】
抽出部142は、取得部141によって取得されたイーサネットフレームから、ヘッダ情報を抽出する。第1実施形態においては、ヘッダ情報は送信元MACアドレスである。
【0068】
判定部143は、抽出部142によって抽出されたヘッダ情報が、制御パターンの決定のためのヘッダ情報の仕様である特定制御仕様に適合しているか否かを判定する。具体的な一例では、判定部143は、抽出部142によって抽出された送信元MACアドレスが、特定制御仕様に適合しているか否かを判定する。
【0069】
例えば、MACアドレスの第1オクテット、第2オクテット、及び第3オクテットの少なくとも一部に、特定制御仕様を示すコードを格納してもよい。一例では、第2オクテットが特定制御仕様の判定に用いられる領域であり、特定制御仕様のコードは16進数表記において「FF」(2進数表記において「11111111」)である。すなわち、判定部143は、送信元MACアドレスの第2オクテットに「FF」が格納されていれば、特定制御仕様に適合していると判定し、送信元MACアドレスの第2オクテットに「FF」が格納されていなければ、特定制御仕様に適合していないと判定する。
【0070】
決定部144は、抽出部142によって抽出されたヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて、新規車載装置に用いられる制御パターンを決定する。例えば、決定部144は、抽出部142によって抽出されたヘッダ情報が判定部143によって特定制御仕様に適合していると判定された場合に、ヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて制御パターンを決定する。
【0071】
具体的な一例では、ヘッダ情報における特定の領域は、送信元MACアドレスにおける第4オクテット及び第5オクテットの領域である。決定部144は、送信元MACアドレスにおける第4オクテット及び第5オクテットに含まれ得る制御コードをコードテーブル150と照合し、制御コードに対応する電源制御パターンを決定する。
【0072】
例えば、決定部144は、第4オクテット及び第5オクテットに格納された制御コードにおいて「1」であるビット位置を特定し、コードテーブル150において特定されたビット位置に対応する電源制御パターンを決定することができる。例えば、ECU400AのMACアドレスが16進数表記で「A0:FF:D5:00:05:B3」である場合、制御コードは2進数表記で「00000000000000101」である。すなわち、制御コードのビット位置「1」と「3」との値が「1」である。図5に示す例では、ビット位置「1」には車両状態「ユーザ非乗車」及び電源制御パターン「P1」が対応しており、ビット位置「3」には車両状態「停車」及び電源制御パターン「P3」が対応している。したがって、決定部144は、ECU400A(のMACアドレス「A0:FF:D5:00:05:B3」)に対して、車両状態「ユーザ非乗車」における電源制御パターン「P1」及び車両状態「停車」における電源制御パターン「P3」を決定する。
【0073】
制御部145は、決定部144によって決定された制御パターンによる制御処理を実行する。例えば、コードテーブル150におけるP1,P2,P3,P4,…は、電源制御パターンを示すコード(以下、「制御パターンコード」という)である。例えば、制御プログラム140には、制御パターンコード毎に制御プログラムコードが含まれている。制御部145は、制御パターンコードに対応する制御プログラムコードを読み出し、読み出した制御プログラムコードを実行することにより、決定された電源制御パターンにしたがった制御処理を実行する。さらに具体的には、電源制御パターンにしたがった制御処理は、リレーのオン/オフ制御により実現される。制御部145は、新規車載装置が接続された電源ポートに対応するリレーを、電源制御パターンにしたがってオン/オフ制御することで、新規車載装置の電源制御を行う。
【0074】
例えば、ヘッダ情報が特定制御仕様に適合していない場合、制御部145は、予め定められた制御パターンによって制御処理を実行することができる。予め定められた制御パターンは、全ての車載装置に対応した汎用の制御パターンである。例えば、汎用の電源制御パターンは、IG ON状態において車載装置に電力を供給し(リレーをオンにする)、IG OFF状態において車載装置への電力供給を停止する(リレーをオフにする)パターンである。
【0075】
[1-6.第1中継ECUの動作]
次に、第1中継ECU100の新規車載装置の制御動作について説明する。図8は、第1実施形態に係る第1中継ECUにおける新規車載装置の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【0076】
車載装置を増設する場合、第1中継ECU100の通信ポート及び電源ポートに新規車載装置が接続される。新規車載装置は、第1中継ECU100に接続されると、新規車載装置のMACアドレスを送信元MACアドレスとして指定されたイーサネットフレームを送信する。新規車載装置から送信されたイーサネットフレーム(PDU)は、第1中継ECU100のプロセッサ111が通信ポートを介して受信する(ステップS101)。
【0077】
プロセッサ111は、受信したイーサネットフレームから送信元MACアドレス(ヘッダ情報)を抽出する(ステップS102)。
【0078】
プロセッサ111は、送信元MACアドレスの第2オクテットを参照し、抽出したMACアドレスが特定制御仕様に適合するか否かを判定する(ステップS103)。
【0079】
MACアドレスが特定制御仕様に適合していない場合(ステップS103においてNO)、プロセッサ111は、汎用の電源制御パターンによる制御処理を実行する(ステップS104)。
【0080】
MACアドレスが特定制御仕様に適合している場合(ステップS103においてYES)、プロセッサ111は、MACアドレスの第4オクテット及び第5オクテットに格納された制御コードを特定する(ステップS105)。
【0081】
次にプロセッサ111は、特定した制御コードをコードテーブル150に照合し、制御コードに対応した電源制御パターン(制御パターンコード)を決定する(ステップS106)。
【0082】
プロセッサ111は、決定された電源制御パターンにしたがってリレーを制御する制御処理を実行する(ステップS107)。以上で、新規車載装置の制御動作が終了する。
【0083】
[2.第2実施形態]
第2実施形態に係る車載システムの構成は、第1実施形態に係る車載システム10の構成と同一であるので説明を省略する。
【0084】
第2実施形態では、IPのPDUであるIPパケットのヘッダに格納されたIPアドレスに基づいて制御パターンを決定する。
【0085】
[2-1.PDU]
IPのPDUであるIPパケットについて説明する。図9は、IPパケットのフォーマットを示す図である。IPパケットには、ヘッダ領域と、ペイロード領域とが含まれる。
【0086】
ヘッダ領域には、バージョン領域と、ヘッダ長領域と、ToS領域と、パケット長領域と、ID領域と、フラグ領域と、フラグメントオフセット領域と、TTL領域と、プロトコル番号領域と、ヘッダチェックサム領域と、送信元IPアドレス領域と、宛先IPアドレス領域と、オプション領域とが含まれる。
【0087】
バージョン領域には、IPのバージョンが格納される。ヘッダ長領域には、ヘッダ領域の長さ(サイズ)が格納される。ToS領域には、IPパケットのタイプを示す情報であるToS(Type of Service)が格納される。ToSは、優先制御、帯域制御、輻輳制御等のQoS(Quality of Service)に関する制御に用いられる。パケット長領域には、IPパケットの長さ(サイズ)が格納される。ID領域には、IPパケットの識別子が格納される。フラグ領域には、IPパケットのフラグメンテーション(分割)の制御に用いられるフラグが格納される。フラグメントオフセット領域には、フラグメントの元のIPパケットにおける位置を示す情報(オフセット)が格納される。TTLフィールドには、IPパケットの寿命情報であるTTL(Time To Live)が格納される。プロトコル番号領域には、上位のトランスポート層で使用されるプロトコルの番号が格納される。TCPのプロトコル番号は「6」であり、UDPのプロトコル番号は「17」である。ヘッダチェックサム領域には、ヘッダの整合性チェック用の情報であるチェックサムが格納される。
【0088】
送信元IPアドレス領域には、IPパケットを送信する機器のIPアドレスが格納される。すなわち、ECU400AがIPパケットの送信元である場合は送信元IPアドレス領域にECU400AのIPアドレスが格納される。センサ400BがIPパケットの送信元である場合は送信元IPアドレス領域にセンサ400BのIPアドレスが格納される。
【0089】
宛先IPアドレス領域には、通信相手となる機器のIPアドレスが格納される(ユニキャストの場合)。マルチキャストパケットの場合には宛先IPアドレス領域にマルチキャストアドレスが格納され、ブロードキャストパケットの場合には宛先IPアドレス領域にブロードキャストアドレスが格納される。
【0090】
[2-2.IPアドレス]
IPによる通信を行う通信機器(ノード)のそれぞれには、ユニークなIPアドレスが割り当てられるが、車載ネットワークに接続された車載装置のIPアドレスは、ゲートウェイ(ルータ)として機能し、車載装置と外部ネットワークの通信機器との間での通信を中継する外部通信装置(図示せず)を超えない。ここで、外部通信装置は、例えばTCU(Telematics Control Unit)であり、車載ネットワークと、外部ネットワーク(例えば、第5世代移動通信システムネットワーク)のそれぞれに接続されている。具体的な一例では、車載装置に割り当てられるIPアドレスは、プライベートIPアドレスである。
【0091】
第2実施形態では、車載装置に割り当てられるIPアドレスは、特定の仕様(特定制御仕様)によって定められる。
【0092】
図10は、IPアドレスの特定制御仕様を説明するための図である。IP(Internet Protocol)アドレスは、第1オクテット、第2オクテット、第3オクテット、及び第4オクテットの4つのオクテットによって構成される。
【0093】
クラスCのプライベートIPアドレスの一般的な仕様では、10進数表記で第1オクテットが「192」、第2オクテットが「168」であるが、特定制御仕様ではこれに限られず、任意に設定可能である。
【0094】
第3オクテットは、制御コードが格納される。
【0095】
第4オクテットは、ノードの識別子が格納されるである。すなわち、第4オクテットは、車載システム10においてユニークなIDが格納される。車載システム10では、IPアドレスの第4オクテットによって、ノードが識別される。
【0096】
[2-3.コードテーブル]
図11は、第2実施形態に係るコートテーブルの一例を示す図である。
【0097】
第2実施形態では、コードテーブル150は、IPアドレスに含まれる制御コードによって車載装置の通信制御パターンを決定するために用いられる。コードテーブル150は、ビット位置と、車両状態と、制御パターンとが対応づけられている。
【0098】
コードテーブル150におけるビット位置は、IPアドレスにおいて制御コードが格納される第3オクテット(8ビット)におけるビット位置を示している。ビット位置は、「1」から「8」まで定義されている。ビット位置「1」は、第3オクテットにおける最下位ビットである。ビット位置「2」は、最下位より1つ上の(2番目の)ビットであり、ビット位置「3」は、最下位より2つ上の(3番目の)ビットである。すなわち、第3オクテットの下位ビットから上位ビットへ向けて順番に、対応するビット位置の数字が大きくなる。
【0099】
車両状態については、第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0100】
第2実施形態では、車両状態に応じて、車載装置の通信制御パターンを切り替える。例えば、自動運転を実行することが可能な運転支援ECUには、高度なセキュリティが求められる。このため、車両が走行状態である場合において、自動運転実行中の運転支援ECUには外部ネットワークからのパケットを中継しないことを考える。この場合の第1中継ECU100による通信制御パターンの一例は、自動運転を実行していない間、運転支援ECUへ全てのIPパケットを中継し、自動運転を開始した後は、運転支援ECUへ外部ネットワークからのIPパケットを中継せず、当該IPパケットを破棄する。
【0101】
[2-4.第1中継ECUの機能]
図7を参照し、第2実施形態に係る第1中継ECU100の機能について説明する。
【0102】
第2実施形態において、車載ネットワークに接続された新規車載装置は、当該新規車載装置のIPアドレスが送信元IPアドレスに指定されたIPパケットを送信する。図1の例では、新規車載装置はECU400A及びセンサ400Bである。ECU400Aから送信されるIPパケットでは、送信元IPアドレスの領域にECU400AのIPアドレスが格納される。センサ400Bから送信されるIPパケットでは、送信元IPアドレスの領域にセンサ400BのIPアドレスが格納される。第1中継ECU100に接続された新規車載装置から送信されたIPパケットは、第1中継ECU100における通信ポートによって受信される。例えば、ECU400Aから送信されたIPパケットは、通信ポート121Bによって受信される。センサ400Bから送信されたIPパケットは、通信ポート121Cによって受信される。取得部141は、通信ポートによって受信されたIPパケットを取得する。
【0103】
抽出部142は、取得部141によって取得されたIPパケットから、ヘッダ情報を抽出する。第2実施形態においては、ヘッダ情報は送信元IPアドレスである。
【0104】
判定部143は、抽出部142によって抽出されたヘッダ情報が、制御パターンの決定のためのヘッダ情報の仕様である特定制御仕様に適合しているか否かを判定する。具体的な一例では、判定部143は、抽出部142によって抽出された送信元IPアドレスが、特定制御仕様に適合しているか否かを判定する。
【0105】
例えば、IPアドレスの第1オクテット及び第2オクテットの少なくとも一部に、特定制御仕様を示すコードを格納してもよい。一例では、第2オクテットが特定制御仕様の判定に用いられる領域であり、特定制御仕様のコードは10進数表記において「255」(2進数表記において「11111111」)である。すなわち、判定部143は、送信元IPアドレスの第2オクテットに「255」が格納されていれば、特定制御仕様に適合していると判定し、送信元MACアドレスの第2オクテットに「255」が格納されていなければ、特定制御仕様に適合していないと判定する。
【0106】
例えば、決定部144は、抽出部142によって抽出されたヘッダ情報が判定部143によって特定制御仕様に適合していると判定された場合に、ヘッダ情報における特定の領域の情報に基づいて制御パターンを決定する。
【0107】
具体的な一例では、ヘッダ情報における特定の領域は、送信元IPアドレスにおける第3オクテットの領域である。決定部144は、送信元IPアドレスにおける第3オクテットに含まれ得る制御コードをコードテーブル150と照合し、制御コードに対応する通信制御パターンを決定する。
【0108】
例えば、決定部144は、第3に格納された制御コードにおいて「1」であるビット位置を特定し、コードテーブル150において特定されたビット位置に対応する通信制御パターンを決定することができる。例えば、ECU400AのMACアドレスが16進数表記で「192.255.50:100」である場合、制御コードは2進数表記で「00110010」である。すなわち、制御コードのビット位置「2」と「5」と「6」との値が「1」である。図5に示す例では、ビット位置「2」には車両状態「走行」及び通信制御パターン「R2」が対応している。図示していないが、ビット位置「5」には車両状態「停車」及び通信制御パターン「R5」が対応し、ビット位置「6」には車両状態「IG OFF」及び通信制御パターン「R6」が対応しているとする。この場合、決定部144は、ECU400A(のIPアドレス「192.255.50.100」)に対して、車両状態「走行」における通信制御パターン「R2」、車両状態「停車」における通信制御パターン「R5」、及び車両状態「IG OFF」における通信制御パターン「R6」を決定する。
【0109】
制御部145は、決定部144によって決定された制御パターンによる制御処理を実行する。例えば、コードテーブル150におけるR1,R2,R3,R4,…は、通信制御パターンを示す制御パターンコードである。制御部145は、制御パターンコードに対応する制御プログラムコードを読み出し、読み出した制御プログラムコードを実行することにより、決定された通信制御パターンにしたがった制御処理を実行する。さらに具体的には、通信制御パターンにしたがった制御処理は、通信回路120におけるパケット中継制御により実現される。
【0110】
例えば、ヘッダ情報が特定制御仕様に適合していない場合、制御部145は、汎用の制御パターンによって制御処理を実行することができる。例えば、汎用の通信制御パターンは、IG ON状態において車載装置を送信元とするIPパケット及び車載装置を宛先とするIPパケットの全てを中継するパターンである。
【0111】
[2-5.第1中継ECUの動作]
図8を参照し、第2実施形態に係る第1中継ECU100の新規車載装置の制御動作について説明する。
【0112】
車載装置を増設する場合、第1中継ECU100の通信ポート及び電源ポートに新規車載装置が接続される。新規車載装置は、第1中継ECU100に接続されると、新規車載装置のIPアドレスを送信元IPアドレスとして指定されたIPパケットを送信する。新規車載装置から送信されたIPパケット(PDU)は、第1中継ECU100のプロセッサ111が通信ポートを介して受信する(ステップS101)。
【0113】
プロセッサ111は、受信したIPパケットから送信元IPアドレス(ヘッダ情報)を抽出する(ステップS102)。
【0114】
プロセッサ111は、送信元IPアドレスの第2オクテットを参照し、抽出したIPアドレスが特定制御仕様に適合するか否かを判定する(ステップS103)。
【0115】
IPアドレスが特定制御仕様に適合していない場合(ステップS103においてNO)、プロセッサ111は、汎用の通信制御パターンによる制御処理を実行する(ステップS104)。
【0116】
IPアドレスが特定制御仕様に適合している場合(ステップS103においてYES)、プロセッサ111は、IPアドレスの第3オクテットに格納された制御コードを特定する(ステップS105)。
【0117】
次にプロセッサ111は、特定した制御コードをコードテーブル150に照合し、制御コードに対応した通信制御パターン(制御パターンコード)を決定する(ステップS106)。
【0118】
プロセッサ111は、決定された通信制御パターンにしたがってパケット中継を制御する制御処理を実行する(ステップS107)。以上で、新規車載装置の制御動作が終了する。
【0119】
[3.第3実施形態]
第3実施形態では、MACアドレスに基づいて第1制御パターンを決定し、IPアドレスに基づいて第2制御パターンを決定する。
【0120】
具体的な一例では、第1中継ECU100の不揮発性メモリ112に、第1実施形態で説明したコードテーブル150(以下、「第1テーブル150A」ともいう)と、第2実施形態で説明したコードテーブル150(以下、「第2テーブル150B」ともいう)が記憶されている。
【0121】
図7を参照する。第3実施形態において、車載ネットワークに接続された新規車載装置は、当該新規車載装置のIPアドレスが送信元IPアドレスに指定されたIPパケットが収容され、当該新規車載装置のMACアドレスが送信元MACアドレスに指定されたイーサネットフレームを送信する。図1の例では、新規車載装置はECU400A及びセンサ400Bである。ECU400Aから送信されるイーサネットフレームでは、当該イーサネットフレームに収容されるIPパケットの送信元IPアドレスの領域にECU400AのIPアドレスが格納され、当該イーサネットフレームの送信元MACアドレスの領域にECU400AのMACアドレスが格納される。センサ400Bから送信されるイーサネットフレームでは、当該イーサネットフレームに収容されるIPパケットの送信元IPアドレスの領域にセンサ400BのIPアドレスが格納され、当該イーサネットフレームの送信元MACアドレスの領域にセンサ400BのMACアドレスが格納される。第1中継ECU100に接続された新規車載装置から送信されたイーサネットフレームは、第1中継ECU100における通信ポートによって受信される。例えば、ECU400Aから送信されたイーサネットフレームは、通信ポート121Bによって受信される。センサ400Bから送信されたイーサネットフレームは、通信ポート121Cによって受信される。取得部141は、通信ポートによって受信されたイーサネットフレームを取得する。
【0122】
第3実施形態では、イーサネットフレームは「第1PDU」に相当し、イーサネットフレームに収容されるIPパケットは「第2PDU」に相当する。送信元MACアドレスは「第1ヘッダ情報」に相当し、送信元IPアドレスは「第2ヘッダ情報」に相当する。
【0123】
抽出部142は、取得部141によって取得されたイーサネットフレームから、第1ヘッダ情報及び第2ヘッダ情報を抽出する。
【0124】
判定部143は、抽出部142によって抽出された第1ヘッダ情報及び第2ヘッダ情報のそれぞれが、制御パターンの決定のためのヘッダ情報の仕様である特定制御仕様に適合しているか否かを判定する。具体的な一例では、判定部143は、抽出部142によって抽出された送信元MACアドレスがMACアドレスの特定制御仕様に適合しているか否かを判定し、送信元IPアドレスがIPアドレスの特定制御仕様に適合しているか否かを判定する。
【0125】
例えば、決定部144は、抽出部142によって抽出された第1ヘッダ情報が判定部143によって特定制御仕様に適合していると判定された場合に、第1ヘッダ情報における特定領域(第1特定領域)の情報に基づいて第1制御パターンを決定する。決定部144は、抽出部142によって抽出された第2ヘッダ情報が判定部143によって特定制御仕様に適合していると判定された場合に、第2ヘッダ情報における特定領域(第2特定領域)の情報に基づいて第2制御パターンを決定する。すなわち、決定部144は、イーサネットフレームにおける送信元MACアドレスの第4オクテット及び第5オクテットに格納された制御コード(第1制御コード)を第1テーブル150Aと照合し、第1制御コードに対応する電源制御パターンを決定する。決定部144は、イーサネットフレームに収容されたIPパケットおける送信元IPアドレスの第3オクテットに格納された制御コード(第2制御コード)を第2テーブル150Bと照合し、第2制御コードに対応する通信制御パターンを決定する。
【0126】
制御部145は、決定部144によって決定された第1制御パターン及び第2制御パターンによる制御処理を実行する。すなわち、制御部145は、決定部144によって決定された電源制御パターンにしたがって、新規車載装置が接続された電源ポートに対応するリレーをオン/オフ制御する(第1制御処理)。制御部145は、決定部144によって決定された通信制御パターンにしたがって、通信回路120におけるパケット中継制御を行う(第2制御処理)。
【0127】
例えば、第1ヘッダ情報が特定制御仕様に適合していない場合、制御部145は、汎用の電源制御パターンによってリレーをオン/オフ制御する。第2ヘッダ情報が特定制御仕様に適合していない場合、制御部145は、汎用の通信制御パターンによってパケットの中継制御を行う。
【0128】
[4.第4実施形態]
第4実施形態では、MACアドレス及びIPアドレスに基づいて制御パターンを決定する。
【0129】
具体的な一例では、MACアドレスに格納された第1制御コードとIPアドレスに格納された第2制御コードとを組み合わせ、組み合わされた第1制御コード及び第2制御コードを用いて制御パターンを決定する。第1中継ECU100の不揮発性メモリ112に格納されたコードテーブル150には、第1制御コードと第2制御コードとの組み合わせと制御パターンとの対応関係が規定されている。
【0130】
図12は、第4実施形態に係るコードテーブルの一例を示す図である。
【0131】
第3実施形態に係るコードテーブル150は、MAC用テーブル151と、IP用テーブル152と、統合テーブル153とを含む。
【0132】
MAC用テーブル151は、MACアドレスに含まれる第1制御コードのビット位置と、第1キーとが対応づけられている。第1キーは、統合テーブル153において制御パターンを検索するための情報である。図12の例では、第1制御コードのビット位置「1」に対応して第1キー「KA1」が対応づけられている。第1制御コードのビット位置「2」に対応して第1キー「KA2」が対応づけられている。第1制御コードのビット位置「3」に対応して第1キー「KA3」が対応づけられている。第1制御コードのビット位置「4」に対応して第1キー「KA4」が対応づけられている。
【0133】
IP用テーブル152は、IPアドレスに含まれる第2制御コードのビット位置と、第2キーとが対応づけられている。第2キーは、統合テーブル153において制御パターンを検索するための情報である。図12の例では、第2制御コードのビット位置「1」に対応して第2キー「KB1」が対応づけられている。第2制御コードのビット位置「2」に対応して第2キー「KB2」が対応づけられている。第2制御コードのビット位置「3」に対応して第2キー「KB3」が対応づけられている。第2制御コードのビット位置「4」に対応して第2キー「KB4」が対応づけられている。
【0134】
統合テーブル153は、第1キー及び第2キーの組み合わせと、マッチタイプ(完全一致、部分一致)と、制御パターンとが対応づけられている。図12の例では、第1キー「KA1」及び第2キー「KB1」と、マッチタイプ「部分一致」と、制御パターンコード「P1」とが対応づけられている。第1キー「KA1」、第2キー「KB1」及び「KB2」と、マッチタイプ「完全一致」と、制御パターンコード「R2」とが対応づけられている。第1キー「KA3」、第2キー「KB2」及び「KB3」と、マッチタイプ「完全一致」と、制御パターンコード「R3」とが対応づけられている。第1キー「KA1」、「KA3」、第2キー「KB2」及び「KB3」と、マッチタイプ「完全一致」と、制御パターンコード「R4」とが対応づけられている。
【0135】
例えば、MACアドレスの第1制御コードが「0000000000000101」であり、IPアドレスの第2制御コードが「00000110」である場合、図12の例では、MAC用テーブル151から第1キー「KA1」及び「KA3」が取得され、IP用テーブル152から第2キー「KB2」及び「KB3」が取得される。取得された第1キー及び第2キーの組み合わせには、「KA3」、「KB2」、及び「KB3」が含まれているため、統合テーブル153において制御パターンコード「R3」が特定される。さらに、第1キー及び第2キーの組み合わせには、「KA1」、「KA3」、「KB2」、及び「KB3」が含まれているため、統合テーブル153において制御パターンコード「P4」が特定される。
【0136】
図7を参照する。第4実施形態において、車載ネットワークに接続された新規車載装置は、当該新規車載装置のIPアドレスが送信元IPアドレスに指定されたIPパケットが収容され、当該新規車載装置のMACアドレスが送信元MACアドレスに指定されたイーサネットフレームを送信する。第1中継ECU100に接続された新規車載装置から送信されたイーサネットフレームは、第1中継ECU100における通信ポートによって受信される。取得部141は、通信ポートによって受信されたイーサネットフレームを取得する。
【0137】
第4実施形態では、イーサネットフレームは「第1PDU」に相当し、イーサネットフレームに収容されるIPパケットは「第2PDU」に相当する。送信元MACアドレスは「第1ヘッダ情報」に相当し、送信元IPアドレスは「第2ヘッダ情報」に相当する。
【0138】
抽出部142は、取得部141によって取得されたイーサネットフレームから、第1ヘッダ情報及び第2ヘッダ情報を抽出する。
【0139】
判定部143は、抽出部142によって抽出された第1ヘッダ情報及び第2ヘッダ情報のそれぞれが、制御パターンの決定のためのヘッダ情報の仕様である特定制御仕様に適合しているか否かを判定する。判定部143の機能は、第3実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0140】
例えば、決定部144は、抽出部142によって抽出された第1ヘッダ情報及び第2ヘッダ情報のそれぞれが判定部143によって特定制御仕様に適合していると判定された場合に、第1ヘッダ情報における特定領域(第1特定領域)に格納された第1制御コード及び第2ヘッダ情報における特定領域(第2特定領域)に格納された第2制御コードの組み合わせに基づいて制御パターンを決定する。すなわち、決定部144は、イーサネットフレームにおける送信元MACアドレスの第4オクテット及び第5オクテットに格納された第1制御コードをMAC用テーブル151と照合し、第1制御コードに対応する第1キーを特定する。決定部144は、イーサネットフレームに収容されたIPパケットおける送信元IPアドレスの第3オクテットに格納された第2制御コードをIP用テーブル152と照合し、第2キーを特定する。決定部144は、特定された第1キー及び第2キーの組み合わせを統合テーブル153と照合し、制御パターンを決定する。
【0141】
制御部145は、決定部144によって決定された制御パターンによる制御処理を実行する。
【0142】
例えば、第1ヘッダ情報及び第2ヘッダ情報の少なくとも1つが特定制御仕様に適合していない場合、制御部145は、汎用の制御パターンによって制御処理を実行する。
【0143】
[5.第5実施形態]
第5実施形態では、新規車載装置から送信されたPDUにおける送信元アドレス以外のヘッダ情報を用いて新規車載装置に関する制御パターンを決定する。
【0144】
図1において、ECU400Aが画像処理ECUであり、センサ400Bがカメラであるとする。以下、第5実施形態において、ECU400Aを「画像処理ECU400A」といい、センサ400Bを「カメラ400B」という。
【0145】
カメラ400Bから画像処理ECU400Aへは、カメラ400Bによって取得された撮像画像が送信される。カメラ400Bは画像(動画像)を撮像し、RTSP(Real Time Streaming Protocol)及びRTP(Real-time Transport Protocol)を用いて画像(音声を含む)を送信する。画像処理ECU400Aは、RTSP及びRTPを用いて、カメラ400Bから送信された画像を受信する。
【0146】
図13は、第5実施形態に係るカメラと画像処理ECUとの間の通信の一例を説明するためのシーケンス図である。
【0147】
画像処理ECU400Aは、RTSPで規定されているDESCRIBEを送信し、画像(コンテンツ)のフォーマットの通知を要求する(ステップS201)。DESCRIBEのIPパケットは、第1中継ECU100によって中継され、カメラ400Bへ伝送される。
【0148】
カメラ400Bは、DESCRIBEに応答し、画像のフォーマットを通知する(ステップS202)。フォーマット情報を含むIPパケットは、第1中継ECU100によって中継され、画像処理ECU400Aへ伝送される。
【0149】
画像処理ECU400Aは、RTSPで規定されているSETUPによって、画像のストリーム送信に関する設定情報を送信する(ステップS203)。設定情報は、例えば、画像の送信に用いられるプロトコル、ポート番号を含む。SETUPのIPパケットは、第1中継ECU100によって中継され、カメラ400Bへ伝送される。
【0150】
カメラ400Bは、SETUPへの応答メッセージを送信する(ステップS204)。応答のIPパケットは、第1中継ECU100によって中継され、画像処理ECU400Aへ伝送される。
【0151】
画像処理ECU400Aは、RTSPで規定されているPLAYを送信し、動画の送信開始を要求する(ステップS205)。PLAYのIPパケットは、第1中継ECU100によって中継され、カメラ400Bへ伝送される。
【0152】
カメラ400Bは、PLAYへの応答メッセージを送信する(ステップS206)。応答のIPパケットは、第1中継ECU100によって中継され、画像処理ECU400Aへ伝送される。
【0153】
カメラ400Bは、画像を送信する(ステップS207)。画像は、SETUPで通知されたプロトコル、例えばRTPによって送信される。画像を収容したIPパケットは、第1中継ECU100によって中継され、画像処理ECU400Aへ伝送される。
【0154】
上記のような画像処理ECU400A及びカメラ400Bの間の通信において、第1中継ECU100は、中継するIPパケットのヘッダを参照する。例えば、画像処理ECU400Aからカメラ400Bへ送信されるIPパケットのヘッダには、宛先IPアドレスとしてカメラ400BのIPアドレスが指定され、通信プロトコル種別(プロトコル番号)としてRTSPが指定され、送信元ポート番号が指定されている。第1中継ECU100の抽出部142は、IPパケットからヘッダ情報として宛先IPアドレス、通信プロトコル種別、及び送信元ポート番号を抽出する。
【0155】
コードテーブル150には、宛先IPアドレス、通信プロトコル種別、及び送信元ポート番号に対応した制御パターンコードが対応づけられている。決定部144は、抽出された宛先IPアドレス、通信プロトコル種別、及び送信元ポート番号に基づいて、制御パターンコードを決定する。
【0156】
[6.変形例]
上述した各実施形態では、制御パターンとして電源制御パターン及び通信制御パターンを説明した。しかし、制御パターンは、車載装置に関する制御パターンであれば、電源制御パターン及び通信制御パターンには限られない。
【0157】
[7.補記]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0158】
10 車載システム
20A,20B,20C 通信線
30A,30B,30C 電源線
100 第1中継ECU
110 制御回路
111 プロセッサ
112 不揮発性メモリ
113 揮発性メモリ
114 インタフェース(I/F)
115 バス
120 通信回路
121A,121B,121C,121D 通信ポート
130 電源回路
131A,131B,131C,131D 電源ポート
132A,132B,132C,132D リレー
140 制御プログラム
141 取得部
142 抽出部
143 判定部
144 決定部
145 制御部
150 コードテーブル
150A 第1テーブル
150B 第2テーブル
151 MAC用テーブル
152 IP用テーブル
153 統合テーブル
200 第2中継ECU
300 ECU
400A ECU(画像処理ECU)
400B センサ(カメラ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13