(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097076
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20250623BHJP
【FI】
C12M1/34 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213143
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 薫
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】安部 大智
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB01
4B029FA11
4B029FA12
4B029GB06
(57)【要約】
【課題】センシングの精度の低下を抑制できる検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、複数の光センサが二次元的に配置された検出領域を有するセンサパネルと、光を発する光源と、検出領域と光源との間に被検出体を介在させるよう被検出体を設置可能に設けられた部材と、複数の光センサの出力に基づいた処理を行う制御回路と、を備え、部材は、被検出体が設置される透光領域と、透光領域の外周側に設けられた遮光領域と、を有し、検出領域は、透光領域及び遮光領域の両方と重なるよう配置され、制御回路は、透光領域と重なる光センサの出力と遮光領域と重なる光センサの出力との差分を得る。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光センサが二次元的に配置された検出領域を有するセンサパネルと、
光を発する光源と、
前記検出領域と前記光源との間に被検出体を介在させるよう前記被検出体を設置可能に設けられた部材と、
複数の前記光センサの出力に基づいた処理を行う制御回路と、を備え、
前記部材は、前記被検出体が設置される透光領域と、前記透光領域の外周側に設けられた遮光領域と、を有し、
前記検出領域は、前記透光領域及び前記遮光領域の両方と重なるよう配置され、
前記制御回路は、前記透光領域と重なる前記光センサの出力と前記遮光領域と重なる前記光センサの出力との差分を得る、
検出装置。
【請求項2】
前記光センサはフォトダイオードを有する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出領域は、
複数の前記光センサが行列状に配置され、
複数の部分領域を有し、
前記制御回路は、前記透光領域と重なる前記光センサの出力と前記遮光領域と重なる前記光センサの出力との差分を前記部分領域毎に得る、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記検出領域は、複数の前記光センサが行列状に配置され、
前記制御回路は、前記透光領域と重なる前記光センサの出力と前記遮光領域と重なる前記光センサの出力との差分を前記光センサの行毎に得る、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項5】
前記透光領域と前記遮光領域との間の境界領域と重なる前記光センサの出力は前記差分を得るのに用いられない、
請求項1又は2に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物組織や微生物を培養対象とした培養環境の状態を光学センサで検出可能にした検出装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような検出装置による培養環境のセンシングは、培養対象の培養進行に伴って光学センサで検出される光の明るさが減少する傾向が現れることに基づいている。このため、外部のノイズ等によって光学センサの出力に誤差が生じると、センシングの精度が低下する。このようなセンシングの精度の低下を抑制できる検出装置が求められていた。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、センシングの精度の低下を抑制できる検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による検出装置は、複数の光センサが二次元的に配置された検出領域を有するセンサパネルと、光を発する光源と、前記検出領域と前記光源との間に被検出体を介在させるよう前記被検出体を設置可能に設けられた部材と、複数の前記光センサの出力に基づいた処理を行う制御回路と、を備え、前記部材は、前記被検出体が設置される透光領域と、前記透光領域の外周側に設けられた遮光領域と、を有し、前記検出領域は、前記透光領域及び前記遮光領域の両方と重なるよう配置され、前記制御回路は、前記透光領域と重なる前記光センサの出力と前記遮光領域と重なる前記光センサの出力との差分を得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、検出装置の主要構成を示す図である。
【
図2】
図2は、検出領域及び配線領域の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、光センサの回路構成を示す回路図である。
【
図4】
図4は、検出システムの構成例を模式的に示す模式図である。
【
図5】
図5は、1つの検出装置と外部の構成との関係を示す概略図である。
【
図6】
図6は、検出装置の主要構成と被検出体との位置関係を示す概略図である。
【
図7】
図7は、センサパネルからの光が照射される対象を平面視点で示す概略図である。
【
図8】
図8は、検出領域の出力と、被検出体上に形成された培地におけるコロニーの成長を伴う時間経過と、の関係の一例を示す概略的なグラフである。
【
図9】
図9は、透光領域と遮光領域との区別に係る仕組みを示す概略図である。
【
図10】
図10は、検出装置で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、検出領域のブロック数及びマルチプレクサの入力数について、一例を示す概略図である。
【
図12】
図12は、ブロックとマルチプレクサの入力との組み合わせによる個別検出フローの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、変形例1の検出装置で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、変形例2の検出装置で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、検出装置1の主要構成を示す図である。検出装置1は、センサパネル10と、光源パネル20と、制御回路30と、を備える。検出装置1のセンサパネル10と光源パネル20とは制御回路30に接続される。
【0010】
センサパネル10は、基板11上に検出領域SA(
図2参照)が設けられている。また、基板11上には、リセット回路13、走査回路14及び配線領域VAが実装されている。検出領域SA上の構成、リセット回路13及び走査回路14は、配線領域VAを介して検出回路15と接続されている。
【0011】
光源パネル20は、検出領域SAに光を照射する発光領域LAを有する。光源パネル20は、基板21上に光源22が設けられている。光源22は、例えばLED(Light Emitting Diode)のような発光素子を有し、発光領域LA内に配置される。
図1に示す例では、複数の光源22が、基板21上にマトリクス状に配置されている。
【0012】
光源パネル20には、光源駆動回路23が設けられている。光源駆動回路23は、制御回路30の制御下で、複数の光源22の各々の点灯の有無及び点灯時の輝度制御を行う。複数の光源22は、個別に発光制御可能に設けられてもよいし、一括で発光するよう設けられてもよい。
【0013】
制御回路30は、検出装置1の動作に関する各種の処理を行う。具体的には、制御回路30は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)のように、複数の機能を実装可能な回路である。制御回路30は、配線部19を介して検出回路15と接続され、検出回路15からの出力を得る。また、制御回路30は、配線部29を介して光源駆動回路23と接続され、光源22の点灯パターンの決定等、光源22の点灯に関する処理を行う。
【0014】
また、制御回路30は、差分値の算出と、当該差分値に基づいた判定処理と、を行う。係る差分値の算出及び判定処理については後述する。
【0015】
なお、図示しないが、検出装置1には、検出回路15を介して伝送される光センサWA(
図2参照)からの出力を制御回路30による演算処理で取り扱えるようにするアナログ/デジタル変換回路、制御回路30の演算処理で生じるデジタル信号をセンサパネル10及び光源パネル20の動作制御に利用可能とするためのデジタル/アナログ変換回路等を具備する。これらの回路は、例えば一部又は全部が制御回路30に含まれていてもよいし、配線部19、配線部29として設けられたフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)に実装された回路が奏する機能であってもよいし、他の方法で検出装置1に実装されてもよい。
【0016】
図2は、検出領域SA及び配線領域VAの構成例を示す図である。検出領域SAには複数の光センサWA(
図3)が設けられている。実施形態では、
図2に示すように、複数の光センサWAが第1方向Dx及び第2方向Dyに沿って行列状に配置されている。第1方向Dxと第2方向Dyとは直交する。また、以下の説明で第3方向Dzと記載した場合、第1方向Dx及び第2方向Dyに直交する方向をさす。
【0017】
リセット回路13は、リセット信号伝送線51,52,・・・,5nと接続されている。以下、リセット信号伝送線5と記載した場合、リセット信号伝送線51,52,・・・,5nのいずれかをさす。リセット信号伝送線5は、第1方向Dxに沿う配線である。
図2に示す例では、n本のリセット信号伝送線5が、第2方向Dyに並ぶ。nは、2以上の自然数である。係るn本のリセット信号伝送線5は、第1方向Dxの一端側で、リセット回路13と接続されている。
【0018】
走査回路14は、走査線61,62,・・・,6nと接続されている。以下、走査線6と記載した場合、走査線61,62,・・・,6nのいずれかをさす。走査線6は、第1方向Dxに沿う配線である。
図2に示す例では、n本の走査線6が、第2方向Dyに並ぶ。係るn本の走査線6は、第1方向Dxの他端側で、走査回路14と接続されている。
【0019】
図2に示すように、リセット信号伝送線5と走査線6とは、検出領域SA内で第2方向Dyに交互に並ぶ。なお、
図1及び
図2で例示するリセット回路13と走査回路14は、検出領域SAを挟んで対向する位置に配置されているが、リセット回路13と走査回路14のレイアウトはこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0020】
また、検出領域SA内には、信号線71,72,・・・,7mが設けられている。以下、信号線7と記載した場合、信号線71,72,・・・,7mのいずれかをさす。信号線7は、第2方向Dyに沿う配線である。
【0021】
図2に示す例では、m本の信号線7が、第1方向Dxに並ぶ。mは、2以上の自然数である。係るm本の信号線7はそれぞれ、第2方向Dyの一端側で、マルチプレクサ40が有する複数のスイッチのいずれか(例えば、スイッチSW1、スイッチSW2、スイッチSW3又はスイッチSW4)と接続されている。
【0022】
マルチプレクサ40は、配線領域VA内に設けられる。マルチプレクサ40は、複数のスイッチを有する。
図2に示す例では、当該複数のスイッチとして、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4が示されている。1つのマルチプレクサ40が有する複数のスイッチは、それぞれ異なるタイミングでON(導通状態)になる。1つのマルチプレクサ40が有する複数のスイッチのうち、1つのスイッチがON(導通状態)である期間、他のスイッチはOFF(非導通状態)である。マルチプレクサ40の数は、信号線7の数(m)に応じる。スイッチの数をpとすると、マルチプレクサ40の数は、m/pあれば足りる。マルチプレクサ40が複数ある場合、複数のマルチプレクサ40はそれぞれ、個別の配線401,402,・・・,40pを介して検出回路15と接続される。
【0023】
なお、マルチプレクサ40を介した信号線7と検出回路15との接続はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、配線領域VA内で信号線7を個別に検出回路15と直結させてもよい。配線領域VA内で、リセット回路13は、配線131を介して検出回路15と接続される。配線領域VA内で、走査回路14は、配線141を介して検出回路15と接続される。
【0024】
検出回路15は、光センサWAに設けられるPD82(
図3参照)による光の検出に係り、リセット回路13及び走査回路14の動作タイミングを制御する。また、検出回路15には、光センサWAからの出力が入力される。検出回路15は、光センサWAから入力された信号を制御回路30に解釈可能なデータに変換して制御回路30に出力する。なお、実施形態の検出回路15は、MCU(Micro Controller Unit)である。
【0025】
図3は、光センサWAの回路構成を示す回路図である。なお、
図3における第1方向Dx、第2方向Dyは、リセット信号伝送線5、走査線6、信号線7の方向と対応しているに過ぎず、光センサWA内の回路構成の相対的位置関係を厳密に示すものでない。
【0026】
図3に示すように、光センサWA内には、スイッチング素子81、PD82、トランジスタ素子83及びスイッチング素子85が設けられている。PD82は、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)である。スイッチング素子81,85及びトランジスタ素子は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0027】
スイッチング素子81のゲートは、リセット信号伝送線5と接続される。スイッチング素子81のソース又はドレインの一方には、リセット電位VResetが与えられている。スイッチング素子81のソース又はドレインの他方には、PD82のカソード及びトランジスタ素子83のゲートが接続されている。以下、接続部CPと記載した場合、当該他方、PD82のカソード及びトランジスタ素子83のゲートが接続されている箇所をさす。また、PD82のアノード側からは基準電位VCOMが与えられている。リセット電位VResetと基準電位VCOMとの電位差は予め定められているが、リセット電位VReset及び基準電位VCOMの電位は可変であってよい。尚、リセット電位VResetは、基準電位VCOMよりも高い電位である。
【0028】
ソースフォロアとして機能するトランジスタ素子83のドレインには、出力源電位VPP2が与えられている。トランジスタ素子83のソースには、スイッチング素子85のソース又はドレインの一方が接続されている。スイッチング素子85のソース又はドレインの他方は、信号線7と接続されている。スイッチング素子85のゲートは、走査線6と接続されている。
【0029】
リセット電位VReset及び基準電位VCOMならびに出力源電位VPP2は、例えば検出回路15に接続された図示しない電源回路を介して供給される電力に基づいて、検出回路15が光センサWAへ供給するが、これに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0030】
出力源電位VPP2は、予め定められている。また、トランジスタ素子83のソース側の電位は、PD82の出力電位からトランジスタ素子83のゲート-ソース間の電圧(Vth)分下がった電位となる。この場合、トランジスタ素子83のソース側の電位は、リセット電位VReset及び基準電位VCOMの電位と、に応じる。PD82の出力の電位は、露光期間中にPD82が検出する光に応じてPD82が生じさせる光起電力に応じる。
【0031】
走査線6を介して走査回路14から与えられる信号によってスイッチング素子85のゲートがONになると、スイッチング素子85のソース-ドレイン間が導通状態になる。これによって、トランジスタ素子83を介してスイッチング素子85へ伝送される信号(電位)が、スイッチング素子85を通じて信号線7へ伝送される。このようにして、光センサWAからの出力が生じる。以後、走査信号と記載した場合、走査線6を介して走査回路14から与えられる信号(電位)をさす。走査回路14は、走査信号を出力する回路である。
【0032】
ある1つの光センサWAに設けられた1つのPD82の出力は、予め定められた露光期間内に当該PD82が検出した光の強さに応じる。PD82の出力は、リセット信号伝送線5を介してリセット回路13から与えられる信号に応じてリセットされる。当該信号によってスイッチング素子81のゲートがONになると、スイッチング素子81のソース-ドレイン間が導通状態になる。これによって、接続部CPの電位が、リセット電位VResetにリセットされる。
【0033】
図4は、検出装置1を含む構成として設けられる検出システム100の構成例を模式的に示す模式図である。
図4に示すように、検出システム100は、複数の検出装置1と、ホストIC70と、接続回路125と、を有する。複数の検出装置1は、接続回路125を介して、共通のホストIC70と電気的に接続される。
【0034】
図4に示すインキュベータ120は、扉を閉じた状態で、被検出体SUBの培養に適した環境(温度、湿度等)に維持される。複数の検出装置1はインキュベータ120の内部に配置され、後述するスキャン処理(
図10等参照)を実行する。
【0035】
図5は、1つの検出装置1と外部の構成との関係を示す概略図である。
図5に示すように、検出装置1と接続回路125との接続は、制御回路30と接続回路125との接続による。また、
図5に示すように、センサパネル10と光源パネル20とは対向する。また、センサパネル10と光源パネル20との間には、被検出体SUBを配置可能な間隙が設けられている。
【0036】
被検出体SUBは、透光性を有する部材からなり、上面側に培地が形成されている。当該培地は、コロニーが培養可能な培地である。以下、単にコロニーと記載した場合、被検出体SUBに形成された培地で培養した生物組織や微生物によるコロニーをさすものとする。より具体的には、被検出体SUBは、例えばガラス製のペトリ皿であるが、これに限られるものでなく、同様に機能する他の構成であってもよい。また、被検出体SUBに形成される培地は、完全な遮光性を発揮するものでなく、コロニーの有無及びコロニーの厚みに応じて透光の度合いが変化する程度の透光性を示す。
【0037】
図6は、検出装置1の主要構成と被検出体SUBとの位置関係を示す概略図である。センサパネル10と光源パネル20との間に被検出体SUBが配置される場合、
図6に示すように、被検出体SUBは、設置部材60に載置される。設置部材60は、検出領域SAと光源パネル20との間に被検出体SUBを介在させるよう被検出体SUBを設置可能に設けられた部材として機能する。
【0038】
図7は、センサパネル10からの光が照射される対象を平面視点で示す概略図である。平面視点とは、第1方向Dx及び第2方向Dyが沿う平面を正面視する視点をさす。設置部材60は、被検出体SUBが載置される透光部THAが透光性を有する部材からなり、平面視点で透光部THAの外周側に位置する遮光部SHAが遮光性を有する部材からなる構成である。具体例を挙げると、透光部THAはガラス又は無色の樹脂からなり、遮光部SHAは黒色の樹脂からなる。
図7では、透光部THAの外縁を縁EDとして示している。すなわち、縁EDを境として、内側が透光部THAであり、外側が遮光部SHAである。透光部THAは、少なくとも一部が透光領域として機能する。遮光部SHAは、少なくとも一部が遮光領域として機能する。
【0039】
例えば、
図7に示すコロニーSCのような形状及び大きさのコロニーが被検出体SUBの培地で生じた場合、被検出体SUBの培地が形成されている領域のうちコロニーSCの透光性は、コロニーSC以外の領域に比して透光性が下がる。
【0040】
図6に示すように、設置部材60は、センサパネル10と光源パネル20との間で被検出体SUBを載置可能に設けられる。光源パネル20は、基板21の設置部材60側に光源22が配置されている。光源22は、設置部材60側に向かって光を照射するよう設けられる。また、センサパネル10の基板11は、検出領域SA(
図1、
図2参照)が設置部材60側に向くよう設けられている。検出領域SA内の光センサWA(
図2、
図3参照)は、光源22から発せられ、透光部THA、被検出体SUB、被検出体SUBに形成された培地等を通って光センサWAに到達した光に応じた出力を生じる。従って、実施形態では、複数の光センサWAの各々の出力は、平面視点で各光センサWAが重なる地点で生じているコロニーの有無及びコロニーの厚みに基づいた出力を生じる。
【0041】
なお、複数の光センサWAのうち平面視点で設置部材60の遮光部SHAと重なる光センサWAと対向する位置の光源22からの光は、遮光部SHAによって遮光される。従って、当該光センサWAの出力は、実質的に光を検出しない状態の出力(最低出力)を生じる。言い換えれば、第1方向Dx及び第2方向Dyに沿って二次元的に配置されている複数の光センサWAを有する検出領域SAは、平面視点において、一部で透光部THAと重なり、他の一部で遮光部SHAと重なる。このように、平面視点で、検出領域SAは、透光領域(透光部THA)と遮光領域(遮光部SHA)の両方をカバーしている。
【0042】
なお、複数の光センサWAの各々の出力は、配線部19を介して制御回路30へ伝送される。
図6では、制御回路30(
図1参照)が実装された基板31が配線部19及び配線部29と接続されていることを概略的に図示している。配線部29は、制御回路30と光源パネル20とを接続する。配線部19及び配線部29は、例えばFPCであるが、これに限られるものでなく、同様に機能する他の構成であってもよい。また、
図6で概略的に示す検出回路15の配置はあくまで例示であり、配線部19と検出回路15との関係をこれに限定するものでない。また、
図5に示す制御回路30は、例えば
図6に示す基板31に形成された制御回路30を概略的に示すものであり、センサパネル10及び光源パネル20に対する制御回路30の相対的な大きさや形状を示すものでない。
【0043】
以上、検出領域SAに設けられた複数の光センサWAによる光の検出の前提となる構成について、
図1から
図7を参照して説明した。以下、検出領域SAの出力と記載した場合、検出領域SAに設けられた複数の光センサWAによる光の検出に応じた出力をさす。次に、検出領域SAの出力について、
図8を参照して説明する。
【0044】
図8は、検出領域SAの出力と、被検出体SUB上に形成された培地におけるコロニーの成長を伴う時間経過と、の関係の一例を示す概略的なグラフである。
図8及び後述する
図9に示すグラフの縦軸が示す「Rawdata」は、検出領域SAの出力を示す。
図8及び
図9に示すグラフの横軸は、時間を示す。
【0045】
上述したように、複数の光センサWAのうち平面視点で設置部材60の遮光部SHAと重なる光センサWAは、実質的に光を検出しない状態の出力(最低出力)を生じる。
図8では、係る最低出力を遮光領域出力GRBのグラフとして示している。なお、実施形態では、光センサWAは、最低出力であっても、電源OFF時の状態(無出力)よりも有意に高いレベルの出力を示す。
図8では、無出力に対する最低出力のレベルの高さをレベルD1で示している。
【0046】
一方、平面視点で透光部THA(
図7参照)及び被検出体SUBと重なる光センサWAは、係る最低出力よりも有意に高い出力を生じる。
図8では、平面視点で透光部THA(
図7参照)及び被検出体SUBと重なる光センサWAによる出力を透光領域出力GRAのグラフとして示している。
【0047】
被検出体SUBに形成された培地では、時間の経過に応じてコロニーが生じることがある。また、生じたコロニーは、時間の経過に応じて面積が拡大する等、培養の進行度合いに応じた変化を示す。
図8のグラフは、このようなコロニーの発生及び拡大を伴う培養が時間の経過に伴って進行する場合のグラフである。従って、タイミングT2を例外として、透光領域出力GRAが示す出力は、時間の経過に伴い低下している。これは、コロニーがセンサパネル10から光源パネル20に向かう光を遮る働きが、コロニーの発生及び拡大に伴ってより顕著になるからである。
【0048】
意図しないノイズがセンサパネル10に影響を与えない限り、遮光領域出力GRBで示される光センサWAの出力は時間の経過に関わらず一定であり、透光領域出力GRAで示される光センサWAの出力は、時間の経過に伴って生じたコロニーの培養の進行度合いに応じて低下する。一方、意図しないノイズが光センサWAの出力に影響を与える可能性をゼロにすることは困難である。
図8では、意図しないノイズがタイミングT2で生じた場合を示している。タイミングT2では、意図しないノイズによって全ての光センサWAの出力が一律に上昇してしまっている。このため、遮光領域出力GRBは、タイミングT2以外の時点における出力がレベルD1であるのに対し、タイミングT2における出力がレベルD1よりも有意に高いレベルD2になっている。また、透光領域出力GRAも、タイミングT2における出力がその前後の時点の出力よりも有意に高くなっている。
【0049】
仮に、透光領域出力GRAの出力をそのままコロニーの培養の進行度合いを示す出力として扱った場合、タイミングT2のように、意図しないノイズの影響を受けることで、出力がコロニーの培養の進行度合いを正確に示さなくなることがある。そこで、実施形態では、意図しないノイズの影響を抑制する仕組みが採用されている。
【0050】
具体的には、実施形態では、複数の光センサWAのうち平面視点で透光部THA(
図7参照)及び被検出体SUBと重なる光センサWAの出力レベルを示す値から、複数の光センサWAのうち平面視点で設置部材60の遮光部SHAと重なる光センサWAの出力レベルを示す値を差し引いた差分値を算出する処理が行われる。係る差分値の算出は、透光部THAと重なる光センサWAの出力と遮光部SHAと重なる光センサWAの出力との差分を得ることに相当する。
図8では、係る差分値に対応した出力を差分出力GRCのグラフとして示している。
【0051】
例えば、
図8のタイミングT1における透光領域出力GRAの出力レベルはレベルAR1である。また、
図8のタイミングT1における遮光領域出力GRBの出力レベルはレベルBR1である。レベルBR1は、上述した無出力を基準として、レベルD1だけ高い出力レベルである。従って、レベルAR1からレベルBR1を差し引いたレベルAC1が、タイミングT1の出力として扱われる。
図8において、レベルAR1からレベルAC1へ出力レベルを低下させる方向の変化を示す低下幅C1の大きさは、レベルD1に対応する。また、
図8のタイミングT2における透光領域出力GRAの出力レベルはレベルAR2である。また、
図8のタイミングT2における遮光領域出力GRBの出力レベルはレベルBR2である。レベルBR2は、上述した無出力を基準として、レベルD2だけ高い出力レベルである。レベルD2は、無出力との差がレベルD1に比して有意に大きい。タイミングT2の出力として扱われるのは、レベルAR2からレベルBR2を差し引いたレベルAC2になる。
図8において、レベルAR2からレベルAC2へ出力レベルを低下させる方向の変化を示す低下幅C2の大きさは、レベルD2に対応する。
【0052】
図8では、意図しないノイズが生じた影響を受けて、透光領域出力GRAがタイミングT2でタイミングT2前後よりも有意に高い出力レベルを示しており、コロニーの培養の進行度合いを正確に反映していない。一方、上述したレベルAC1及びレベルAC2を含む差分出力GRCは、時間の経過に応じて出力レベルが徐々に低下する変化を示している。このような差分出力GRCは、時間の経過に応じたコロニーの培養の進行度合いをより正確に反映しているといえる。以上のように、差分値を算出する処理によって、光センサWAによる光の検出結果とコロニーの培養の進行度合いとの対応の精度をより高めることができる。係る差分値を算出する制御回路30は、複数の光センサWAの出力に基づいた処理を行う制御回路として機能する。
【0053】
また、実施形態では、差分値に基づいて「被検出体SUBに形成された培地に発生したコロニーが検出された」とみなすかの判定処理が行われる。具体例を挙げると、差分値と閾値との比較結果に基づいて、コロニーが検出されたか否かの判定が行われる。
図8に示す例では、閾値に対応した出力レベルとして閾値THが図示されている。差分出力GRCが閾値TH以下になった場合、コロニーが検出されたものとして判定される。差分出力GRCが閾値THを超えている場合、コロニーはまだ検出されていないものとして判定される。
【0054】
以上、検出領域SAの出力、検出領域SAの出力に対応した差分値の算出及び判定処理について説明した。ここで、差分値の算出に際して、平面視点で透光部THA(
図7参照)及び被検出体SUBと重なる光センサWA及び平面視点で設置部材60の遮光部SHAと重なる光センサWAの特定が要求される。
【0055】
ここで、平面視点で透光部THA(
図7参照)及び被検出体SUBが存在する領域は、コロニーの培養の進行度合いに応じて透光の度合いが変化する透光領域とみなせる。また、平面視点で設置部材60の遮光部SHAが存在する領域は、光が遮蔽される遮光領域とみなせる。従って、平面視点で透光部THA(
図7参照)及び被検出体SUBと重なる光センサWAは、原則として透光領域に設けられた光センサWAとみなせる。また、平面視点で設置部材60の遮光部SHAと重なる光センサWAは、原則として遮光領域に設けられた光センサWAとみなせる。ただし、後述する境界領域SWAと重なる光センサWAについてはこの原則にあてはまらない。
【0056】
実施形態では、透光領域に設けられた光センサWAと遮光領域に設けられた光センサWAの特定処理が行われる。なお、係る特定処理が行われる時点では、設置部材60に被検出体SUBが載置されていないものとする。すなわち、被検出体SUBは、係る特定処理の時点ではセンサパネル10と光源パネル20との間に介在しない。それ以外の点では、係る特定処理のために行われる光の照射及びセンサパネル10による光の検出は、
図5及び
図6を参照して説明したセンサパネル10、光源パネル20、設置部材60の位置関係を反映する。
【0057】
図9は、透光領域と遮光領域との区別に係る仕組みを示す概略図である。なお、
図9では、設置部材60の第1基準線FA1における第1方向Dxの透光の度合いを、検出領域SAの出力の高低を示すRawdataのグラフで表している。
【0058】
上述したように、透光部THAは透光性を有し、遮光部SHAは遮光性を有する。従って、第1基準線FA1において透光部THAと重なる高出力領域ARでは、検出領域SAの出力が最高出力MAX又は最高出力MAXとほぼ同等になっている。また、第1基準線FA1において遮光部SHAと重なる低出力領域BRでは、検出領域SAの出力が最低出力MIN又は最低出力MINとほぼ同等になっている。最高出力MAXは、最も高い出力を示した光センサWAの出力である。
【0059】
最低出力MINは、最も低い出力を示した光センサWAの出力である。実施形態では、最高出力MAX及び最低出力MINを得る根拠となる光センサWAの集合は、検出領域SA全体に設けられた複数の光センサWAであるが、後述する変形例では、部分領域単位又はセンサ行単位になる。
【0060】
一方、縁ED付近では、透光部THA側ほど検出領域SAの出力が高く、遮光部SHA側ほど検出領域SAの出力が低くなっているものの、第1方向Dxの位置によって検出領域SAの出力に高低差が生じている。また、縁ED付近では、透光部THA側でも最高出力MAXと同等といえるほどには検出領域SAの出力が高くなく、遮光部SHA側でも最低出力MINと同等といえるほどには検出領域SAの出力が低くない傾向がある。
【0061】
実施形態では、最高出力MAXと最低出力MINを基準とした第1閾値TH1に基づいて、透光領域に設けられているとみなされる光センサWAが特定される。具体的には、第1閾値TH1は、最高出力MAXを100%の出力とし、最低出力MINを0%の出力とみなした場合の第1割合(例えば、95%)の出力に対応する。実施形態では、検出領域SAに配置された複数の光センサWAのうち、出力が第1閾値TH1以上である光センサWAが、透光領域に設けられている光センサWAであると特定される。従って、
図9に示す例の場合、高出力領域AR内の光センサWAが、透光領域に設けられている光センサWAであると特定される。従って、
図9に示す高出力領域AR内の光センサWAの出力は、
図8を参照して説明した透光領域出力GRAに反映される。
【0062】
また、実施形態では、最高出力MAXと最低出力MINを基準とした第2閾値TH2に基づいて、遮光領域に設けられているとみなされる光センサWAが特定される。第2閾値TH2は、第1閾値TH1より低い出力に対応する。具体的には、第2閾値TH2は、最高出力MAXを100%の出力とし、最低出力MINを0%の出力とみなした場合の第2割合(例えば、5%)の出力に対応する。実施形態では、検出領域SAに配置された複数の光センサWAのうち、出力が第2閾値TH2以下である光センサWAが、遮光領域に設けられている光センサWAであると特定される。従って、
図9に示す例の場合、低出力領域BR内の光センサWAが、遮光領域に設けられている光センサWAであると特定される。従って、
図9に示す低出力領域BR内の光センサWAの出力は、
図8を参照して説明した遮光領域出力GRBに反映される。
【0063】
また、実施形態では、第1閾値TH1未満であり、第2閾値TH2を超える出力の光センサWAは、境界領域SWAの光センサWAとみなされる。境界領域SWAの光センサWAとは、平面視点で縁EDと重なるか、縁ED付近に配置されている光センサWAであり、透光領域又は遮光領域のいずれに設けられているかを出力に基づいて明確に判定することが困難な光センサWAをさす。境界領域SWAの光センサWAの出力は、差分値の算出に利用されない。すなわち、境界領域SWAの光センサWAの出力は、
図8を参照して説明した透光領域出力GRAにも遮光領域出力GRBにも反映されない。従って、透光領域と遮光領域との間の境界領域SWAと重なる光センサWAの出力は、差分を得るのに用いられない。
【0064】
なお、高出力領域ARのように出力が第1閾値TH1以上になる光センサWAの第1方向Dxの配置及び低出力領域BRのように出力が第2閾値TH2以下になる光センサWAの第1方向Dxの配置は、第2方向Dyの位置によって異なる。例えば、第1基準線FA1に比して第2方向Dyの端部側寄りの第2基準線FA2と重なる第2方向Dyの位置では、出力が第1閾値TH1以上になる光センサWAが第1方向Dxのより中心寄りに縮小し、出力が第2閾値TH2以下になる光センサWAが第1方向Dxのより中心寄り側に拡大する。また、第1方向Dx全体が遮光部SHAである第3基準線FA3と重なる第2方向Dyの位置では、どの光センサWAも出力が第2閾値TH2以下になる。
【0065】
透光領域に設けられた光センサWAと遮光領域に設けられた光センサWAの特定処理は、設置部材60に被検出体SUBが載置される前、すなわち、差分値に基づいたコロニーの検出に係る各種の工程の開始前に行われる。また、実施形態では、上述した差分値の算出処理、判定処理及び係る特定処理が制御回路30によって行われるが、検出装置1に含まれる他の構成によって行われてもよいし、検出装置1と接続された外部の情報処理装置によって行われてもよい。その場合、係る情報処理装置は、
図1に示す検出装置1の構成を含む検出装置全体の一部とみなされる。
【0066】
実施形態では、検出領域SAに設けられた複数の光センサWAの出力は、透光領域に設けられた光センサWAの出力と、遮光領域に設けられた光センサWAの出力と、に分類される。透光領域に設けられた光センサWAの出力及び遮光領域に設けられた光センサWAの出力は個別に平均化される。
【0067】
具体的には、透光領域に設けられた光センサWAの出力が足しあわされて透光領域に設けられた光センサWAの出力の数で除算されることで、透光領域に設けられた光センサWAの出力の平均値が得られる。実施形態で透光領域の輝度平均値と記載した場合、検出領域SA全体のうち透光領域に設けられた光センサWAの出力の平均値をさす。
図8を参照して説明した透光領域出力GRAは、透光領域の輝度平均値を反映しているといえる。
【0068】
また、遮光領域に設けられた光センサWAの出力が足しあわされて遮光領域に設けられた光センサWAの出力の数で除算されることで、遮光領域に設けられた光センサWAの出力の平均値が得られる。実施形態で遮光領域の輝度平均値と記載した場合、検出領域SA全体のうち遮光領域に設けられた光センサWAの出力の平均値をさす。
図8を参照して説明した遮光領域出力GRBは、遮光領域の輝度平均値を反映しているといえる。
【0069】
また、実施形態では、光源22からの光の明るさに基づいた補正処理が行われる。具体的には、
図9を参照して説明した最高出力MAXを100%の出力レベルとし、最低出力MINを0%の出力レベルとして透光領域出力GRA及び遮光領域出力GRBの出力レベルを0%以上100%の出力レベルとして扱うための処理が行われる。従って、補正処理は、透光領域出力GRAの出力レベルを光源22からの光の明るさに対応させるための処理であるといえる。なお、遮光領域出力GRBの出力レベルは、0%又は0%に極めて近しくなる。
【0070】
なお、
図8を参照して説明した、差分値に基づいた「被検出体SUBに形成された培地に発生したコロニーが検出された」とみなす判定処理のための閾値(例えば、閾値TH)は、補正処理の根拠となった最高出力MAX(100%)と最低出力MIN(0%)を基準とした割合であってもよいし、予め定められた絶対的な出力レベルであってもよい。いずれの方法が取られる場合であっても、事前の基準設定や実験等に基づいた運用基準において、被検出体SUBに形成された培地が、予め想定された「コロニーが検出されたと扱われるべき状態」となった場合に、差分値と当該閾値との関係に基づいた判定結果が当該運用基準を満たすように定められていればよい。
【0071】
図10は、検出装置1で行われる処理の流れを示すフローチャートである。検出装置1の電源がONになると(ステップS1)、透光領域及び遮光領域の特定が行われる(ステップS2)。ステップ2の処理で、上述した透光領域に設けられた光センサWAと遮光領域に設けられた光センサWAの特定処理が行われてもよいし、係る特定処理がステップS1の処理以前に行われた結果を示すデータが制御回路30に設けられた記憶装置又は記憶回路に保持されていて当該データがステップS2の処理で読み出される仕組みであってもよい。
【0072】
ステップS2の後に被検出体SUBの設置が行われる(ステップS3)。ステップS3の処理では、設置部材60の透光部THA上に被検出体SUBが載置され、設置部材60及び被検出体SUBがセンサパネル10と光源パネル20の間に介在するよう検出装置1に設置される。ステップS3の処理は、例えばヒトの手によって行われるが、機械的に行われてもよい。なお、ステップS3の処理前は、被検出体SUBはセンサパネル10と光源パネル20の間に介在しない。
【0073】
ステップS3の処理後、スキャン処理が行われる(ステップS4)。スキャン処理とは、光源22を発光させ、光源22からの光をセンサパネル10に向けて照射し、センサパネル10の検出領域SAに設けられた複数の光センサWAからの出力を得る処理である。ステップS3の処理後にステップS4の処理が行われることで、設置部材60及び被検出体SUBがセンサパネル10と光源パネル20の間に介在した状態でスキャン処理が行われる。すなわち、ステップS4の処理で得られる出力には、透光領域における透光の度合いにコロニーの培養の進行度合いが反映されることになる。
【0074】
ステップS4の処理後、ステップS4の処理で得られた出力に補正処理が適用される(ステップS5)。ステップS5の処理は、上述した、光源22からの光の明るさに基づいた補正処理である。
【0075】
ステップS5の処理後、透光領域の輝度平均値と、遮光領域の輝度平均値と、の差分値の算出が行われる(ステップS6)。具体的には、例えば
図8を参照して説明したように、透光領域出力GRAと遮光領域出力GRBとの差分値としての差分出力GRCが得られる。なお、より具体的には、1回のステップS6の処理では、ある一時点の差分値の算出が行われる。例えば、タイミングT1では、算出される差分値はレベルAC1である。また、タイミングT2では、算出される差分値はレベルAC2である。
【0076】
ステップS6の処理後、差分値がコロニーの検出を示すかの判定が行われる(ステップS7)。具体的には、上述した、
図8を参照して説明した、差分値と閾値(例えば、閾値TH)に基づいた「被検出体SUBに形成された培地に発生したコロニーが検出された」とみなす判定処理が行われる。
【0077】
ステップS7の処理で差分値がコロニーの検出を示さないと判定された場合(ステップS7;No)、再度ステップS4の処理に移行する。ステップS7の処理後にステップS4の処理に移行することによって複数回行われることになるステップS4の処理は、所定時間間隔で行われるようにしてもよい。所定時間は、例えば5分であるが、これに限られるものでなく、任意の時間を所定時間とすることができる。
【0078】
ステップS7の処理で差分値がコロニーの検出を示すと判定された場合(ステップS7;Yes)、コロニーが検出されたことを示す出力が制御回路30によって行われる(ステップS8)。ステップS8の処理による出力は、接続回路125を介してホストIC70に伝送され、ホストIC70に「被検出体SUBの管理者向けの報知のための処理」を実行させるトリガーとして機能する。係る「被検出体SUBの管理者向けの報知のための処理」は、予め定められた処理であり、例えば登録済みの被検出体SUBの管理者のメールアドレスに向けた電子メールの送信処理であるが、これに限られるものでなく、被検出体SUBでコロニーが検出されたことを当該管理者が把握可能なあらゆる出力形態のいずれか一つ以上を伴う処理が採用されてよい。
【0079】
以上説明したように、実施形態によれば、検出装置1は、複数の光センサ(光センサWA)が二次元的に配置された検出領域(検出領域SA)を有するセンサパネル(センサパネル10)と、光を発する光源(光源22)と、当該検出領域と当該光源との間に被検出体(被検出体SUB)を介在させるよう当該被検出体を設置可能に設けられた部材(設置部材60)と、複数の当該光センサの出力に基づいた処理を行う制御回路(制御回路30)と、を備える。当該部材は、当該被検出体が設置される透光領域(透光部THA)と、当該透光領域の外周側に設けられた遮光領域(遮光部SHA)と、を有する。当該検出領域は、当該透光領域及び当該遮光領域の両方と重なるよう配置される。当該制御回路は、当該透光領域と重なる光センサの出力と当該遮光領域と重なる光センサの出力との差分を得る。
【0080】
これによって、仮に複数の光センサ(光センサWA)にノイズの影響があったとしても、係るノイズの影響は、透光領域(透光部THA)と重なる光センサの出力と遮光領域(遮光部SHA)と重なる光センサの出力の両方にもたらされる。従って、当該透光領域と重なる光センサの出力と当該遮光領域と重なる光センサの出力との差分は、ノイズの影響を実質的に受けない。例えば、当該透光領域と重なる光センサの出力をαとし、当該遮光領域と重なる光センサの出力をβとすると、ノイズの影響がない場合の差分は、α-βで表せる。また、ノイズの影響による出力の変化分をγとすると、ノイズがある場合の差分は、(α+γ)-(β+γ)=α-βで表せる。従って、実施形態によれば、ノイズによるセンシングの精度の低下を抑制できる。
【0081】
また、光センサ(光センサWA)がフォトダイオード(PD82)を有するので、光センサとして機能する他の構成に対して比較的高速、高感度とすることができる。また、当該光センサを並べることによってより容易に二次元的な検出面を形成できる。
【0082】
また、透光領域と遮光領域との間の境界領域(境界領域SWA)と重なる光センサ(光センサWA)の出力が差分を得るのに用いられないことで、透光領域と重なる光センサと、遮光領域と重なる光センサと、をより確実に区別できる。従って、差分の精度をより高められる。
【0083】
(変形例)
次に、
図1から
図10を参照して説明した実施形態と一部が異なる変形例について、
図11から
図17を参照して説明する。変形例の説明に係り、実施形態と同様の事項については同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0084】
(変形例1)
図11は、検出領域SAのブロック数及びマルチプレクサの入力数について、一例を示す概略図である。変形例1では、検出領域SAが複数の分割領域(ブロック)で区分される。
図11に示す例では、検出領域SAがブロックBlock1,Block2,Block3,Block4の計4つのブロックに区分されている。ブロックBlock1,Block2,Block3,Block4の並びで示すように、変形例1で検出領域SAを区分する複数のブロックは、第2方向Dyに並ぶ。変形例1では、検出領域SAに設けられる複数の光センサWAは、ブロックの数で等分又はほぼ等分される。係る複数のブロックが有する光センサWAの数は、同数又はほぼ同数である。
【0085】
変形例1では、nは、ブロックの数の倍数であることが望ましい。nがブロックの数の倍数である場合、複数のブロックの各々が有するリセット信号伝送線5の数及び走査線6の数は、nをブロックの数で除した数である。ただし、各ブロックが厳密に同数の光センサWAを有していることは必須でない。一部のブロックが他のブロックに比してより多い光センサWAを有していてもよい。なお、ブロックの数は4に限られるものでなく、2以上の自然数であればよい。
【0086】
また、変形例1では、マルチプレクサの入力数に応じた区分がさらに適用される。ここでいうマルチプレクサの入力数とは、
図2を参照して説明したマルチプレクサ40が有する複数のスイッチ(例えば、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4)の数である。
図11では、マルチプレクサの入力数に応じた区分をマルチプレクサ入力MUXとして括られた「1」、「2」、「3」、「4」の値で示している。マルチプレクサ入力MUXの「1」は、スイッチSW1に接続される信号線7を示す。マルチプレクサ入力MUXの「2」は、スイッチSW2に接続される信号線7を示す。マルチプレクサ入力MUXの「3」は、スイッチSW3に接続される信号線7を示す。マルチプレクサ入力MUXの「4」は、スイッチSW4に接続される信号線7を示す。なお、実施形態、及び、変形例1を含む各種の変形例において、マルチプレクサの入力数は4に限られるものでなく、2以上の自然数であればよい。
【0087】
図12は、ブロックとマルチプレクサの入力との組み合わせによる個別検出フローの一例を示す図である。変形例1では、ブロックとマルチプレクサの入力との組み合わせに基づいて、スキャン処理における光センサWAの出力が区分される。
図12では、「Block1MUX1」からスキャン処理がスタート(START)し、順次、「Block1MUX2」、「Block1MUX3」、「Block1MUX4」、「Block2MUX1」、「Block2MUX2」、「Block2MUX3」、「Block2MUX4」、「Block3MUX1」、「Block3MUX2」、「Block3MUX3」、「Block3MUX4」、「Block4MUX1」、「Block4MUX2」、「Block4MUX3」、「Block4MUX4」の順でスキャン処理が進行し、「Block4MUX4」のスキャン処理完了を以て終了(END)することが例示されている。
【0088】
「Block1MUX1」は、ブロックBlock1に含まれる光センサWAであって、スイッチSW1に接続される信号線7を共有する光センサWAをさす。「Block1MUX2」は、ブロックBlock1に含まれる光センサWAであって、スイッチSW2に接続される信号線7を共有する光センサWAをさす。「Block2MUX1」は、ブロックBlock2に含まれる光センサWAであって、スイッチSW1に接続される信号線7を共有する光センサWAをさす。このように、「Block(t)MUX(r)」の記載において、(t)は、自然数であって、ブロックの数以下の値を取る。また、(r)は、自然数であって、マルチプレクサの入力数以下の値を取る。すなわち、「Block(t)MUX(r)」は、ブロックBlock(t)に含まれる光センサWAであって、スイッチSW(r)に接続される信号線7を共有する光センサWAをさす。
図11に示す例の場合、(t)及び(r)は、1、2、3、4のいずれかの値を取る。
【0089】
図11を参照して説明した変形例1では、「Block1MUX1」、「Block1MUX2」、「Block1MUX3」、「Block1MUX4」、「Block2MUX1」、「Block2MUX2」、「Block2MUX3」、「Block2MUX4」、「Block3MUX1」、「Block3MUX2」、「Block3MUX3」、「Block3MUX4」、「Block4MUX1」、「Block4MUX2」、「Block4MUX3」、「Block4MUX4」は、それぞれ検出領域SAの異なる部分領域をカバーする。例えば、「Block1MUX1」は、ブロックBlock1に含まれるセンサ行であって、スイッチSW1に接続されるセンサ列からなる検出領域SAの部分領域であると解することができる。これらの計16の部分領域の出力を全て合わせると、検出領域SA全体の出力と同義となる。
【0090】
「Block(t)MUX(r)」のスキャン処理では、ブロックBlock(t)が有する走査線6に走査信号が与えられ、他の走査信号には走査信号が与えられない。また、「Block(t)MUX(r)」のスキャン処理では、スイッチSW(r)がON(導通状態)になり、マルチプレクサ40に設けられたスイッチSW(r)以外のスイッチがOFF(非導通状態)になる。このようにして、「Block(t)MUX(r)」が示す光センサWAからの出力に限定した出力を得ることができる。
【0091】
変形例1によれば、
図12を参照して説明したスキャン処理を行うことで、検出領域SAの出力において意図しないノイズが影響する光センサWAの出力をより限定的にすることができる。また、光センサWAの出力に対するノイズの影響の抑制をより高精度に行いやすくなる。
【0092】
図13は、
図12に示すフローの実行過程でノイズNSが生じた場合を示す図である。
図13に示す例では、「Block1MUX2」のスキャン処理中にノイズNSが生じており、他のスキャン処理中には係るノイズNSが生じていない。このような例では、「Block1MUX2」のスキャン処理で得られた出力だけに、他のスキャン処理では現れないノイズの影響が反映されうる。従って、変形例1では、
図8におけるタイミングT2の際のレベルD2に応じた低下幅C2の適用による透光領域出力GRAからの差分出力GRCの生成のようなノイズ対策を、係るノイズNSが生じた「Block1MUX2」のスキャン処理で得られた出力に限定して適用すればよい。これによって、検出領域SAの一部に対するノイズの影響が検出領域SA全体で平均化されてしまう場合に比して、ノイズの影響の抑制をより高精度に行いやすくなる。
【0093】
図14は、変形例1の検出装置1で行われる処理の流れを示すフローチャートである。ステップS1からステップS5の処理までの流れは、以下に特筆するステップS4の処理に関する事項を除いて、
図10を参照して説明した実施形態と、
図14を参照して説明する変形例1と、で同様である。
【0094】
ただし、変形例1におけるステップS4の処理では、ブロックとマルチプレクサの入力との組み合わせに応じた出力の区分がされ、区分された出力に応じた個別のデータ保持が行われる。例えば、
図11及び
図12を参照して説明した例では、「Block1MUX1」、「Block1MUX2」、「Block1MUX3」、「Block1MUX4」、「Block2MUX1」、「Block2MUX2」、「Block2MUX3」、「Block2MUX4」、「Block3MUX1」、「Block3MUX2」、「Block3MUX3」、「Block3MUX4」、「Block4MUX1」、「Block4MUX2」、「Block4MUX3」、「Block4MUX4」の計16の区分の各々で個別に光センサWAの出力に対応したデータが制御回路30によって保持される。具体的には、制御回路30は、係るデータを記憶可能なバッファメモリを有する。また、これら個別のデータの生成のためのスキャン処理は、
図12を参照して説明した順序でのスキャン処理の進行に対応して行われる。
【0095】
変形例1では、ステップS5の処理後、ブロックの数を管理するための変数の設定及びマルチプレクサの入力数を管理するための変数の設定が行われる(ステップS11)。
図14に示す例では、ブロックの数を管理するための変数としてjが設定されている。また、
図14に示す例では、マルチプレクサの入力数を管理するための変数としてkが設定されている。j及びkは、初期値0で設定される。
【0096】
ステップS11の処理後、jがブロック数に対応する値であるかの判定が行われる(ステップS12)。例えば、
図11及び
図12に示す例の場合、ブロック数に対応する値は4である。
【0097】
ステップS12の処理でjがブロック数に対応する値でないと判定された場合(ステップS12;No)、kがマルチプレクサの入力数に対応する値であるかの判定が行われる(ステップS13)。例えば、
図11及び
図12に示す例の場合、マルチプレクサの入力数は4である。
【0098】
ステップS13の処理でkがマルチプレクサの入力数に対応する値でないと判定された場合(ステップS13;No)、「Block(j+1)MUX(k+1)」における透光領域の輝度平均値と、遮光領域の輝度平均値と、の差分値の算出が行われる(ステップS14)。ステップS14の処理は、処理の対象になる光センサWAの出力が「Block(j+1)MUX(k+1)」に限定される点を除いて、ステップS6の処理と同様である。なお、例えばj=0かつk=0の場合、「Block(j+1)MUX(k+1)」は、「Block1MUX1」である。
【0099】
ステップS14の処理後、kに1が加算され(ステップS15)、ステップS12の処理に移行する。その後、ステップS13の処理でkがマルチプレクサの入力数に対応する値であると判定された場合(ステップS13;Yes)、jに1が加算され(ステップS16)、kの値が0にリセットされる(ステップS17)。ステップS16の処理とステップS17の処理とは順不同である。ステップS16の処理及びステップS17の処理後、ステップS12の処理に移行する。
【0100】
ステップS12の処理でjがブロック数に対応する値であると判定された場合(ステップS12;Yes)、複数回のステップS14の処理で算出された差分値のいずれかがコロニーの検出を示すかの判定が行われる(ステップS18)。ステップS18の処理は、判定の対象となる差分値がステップS14の処理回数に応じて複数ある点を除いて、ステップS7の処理と同様である。
【0101】
ステップS18の処理で差分値がコロニーの検出を示さないと判定された場合(ステップS18;No)、再度ステップS4の処理に移行する。ステップS18の処理後にステップS4の処理に移行することによって複数回行われることになるステップS4の処理は、上述した所定時間間隔で行われるようにしてもよい。
【0102】
ステップS18の処理で差分値がコロニーの検出を示すと判定された場合(ステップS18;Yes)、ステップS8の処理に移行する。以上、特筆した事項を除いて、変形例1は、実施形態と同様である。
【0103】
変形例1によれば、複数の光センサ(光センサWA)が行列状に配置され、複数の部分領域を有する検出領域(検出領域SA)であり、制御回路(制御回路30)が、透光領域(透光部THA)と重なる光センサの出力と遮光領域(遮光部SHA)と重なる光センサの出力との差分を当該部分領域毎に得ることで、ノイズの影響の抑制をより高精度に行いやすくなる。
【0104】
(変形例2)
図15は、変形例2の検出装置1で行われる処理の流れを示すフローチャートである。ステップS1からステップS5の処理までの流れは、以下に特筆するステップS4の処理に関する事項を除いて、
図10を参照して説明した実施形態と、
図15を参照して説明する変形例2と、で同様である。
【0105】
ただし、変形例2におけるステップS4の処理では、走査線6単位で出力の区分がされ、区分された出力に応じた個別のデータ保持が行われる。従って、変形例2では、n本の走査線6に対応したn行のセンサ行の各々で個別に光センサWAの出力に対応したデータが制御回路30によって保持される。具体的には、制御回路30は、係るデータを記憶可能なバッファメモリを有する。
【0106】
変形例2では、ステップS5の処理後、走査線6の数を管理するための変数の設定が行われる(ステップS21)。
図15に示す例では、走査線6の数を管理するための変数としてqが設定されている。qは、初期値0で設定される。
【0107】
ステップS21の処理後、qが走査線6の数に対応する値であるかの判定が行われる(ステップS22)。例えば、
図2に示す例の場合、走査線6の数に対応する値はnである。
【0108】
ステップS22の処理でqが走査線6の数に対応する値でないと判定された場合(ステップS22;No)、(q+1)番目のセンサ行における透光領域の輝度平均値と、遮光領域の輝度平均値と、の差分値の算出が行われる(ステップS23)。ステップS23の処理は、処理の対象になる光センサWAの出力が(q+1)番目のセンサ行に限定される点を除いて、ステップS6の処理と同様である。
【0109】
ステップS23の処理後、qに1が加算され(ステップS24)、ステップS22の処理に移行する。その後、ステップS22の処理でqが走査線6の数に対応する値であると判定された場合(ステップS22;Yes)、複数回のステップS23の処理で算出された差分値のいずれかがコロニーの検出を示すかの判定が行われる(ステップS25)。ステップS25の処理は、判定の対象となる差分値がステップS23の処理回数に応じて複数ある点を除いて、ステップS7の処理と同様である。
【0110】
ステップS25の処理で差分値がコロニーの検出を示さないと判定された場合(ステップS25;No)、再度ステップS4の処理に移行する。ステップS25の処理後にステップS4の処理に移行することによって複数回行われることになるステップS4の処理は、上述した所定時間間隔で行われるようにしてもよい。
【0111】
ステップS25の処理で差分値がコロニーの検出を示すと判定された場合(ステップS25;Yes)、ステップS8の処理に移行する。
【0112】
図8を参照して説明した差分値の算出を、変形例2のように走査線6単位で行うことで、光センサWAのリセットに伴い生じることがあるフィードスルーによる筋の発生をより確実に抑制できる。係るフィードスルーによる筋は、センサ行によって光センサWAのリセット電位に差が生じてしまうことがあることによる。
【0113】
図3を参照して説明したように、PD82の出力がリセット信号伝送線5を介してリセット回路13から与えられる信号に応じてリセットされることで、接続部CPの電位がリセットされる。ここで、接続部CPの電位は、原則としてリセット電位VResetになるが、リセット前のPD82による光の検出の度合い等の各種要因によってもたらされるリセット前の電位の高低の影響によって、リセット後の電位が完全に統一されないことがある。このため、隣接するセンサ行の一方と他方とでリセット後の電位に差があると、係る差がセンサ行単位での光センサWAの出力の高低差として顕在化することがある。このような隣接するセンサ行同士の光センサWAの出力の高低差は、「検出された光の明るさ」として光センサWAの出力を解釈した場合の明暗差として、あたかもセンサ行が明暗の筋を形成しているかのように働く。フィードスルーによる筋とは、このような現象の発生をさす。
【0114】
そこで、変形例2では、走査線6単位、すなわち、センサ行単位で差分値を算出することで、フィードスルーによる筋の発生をより確実に抑制している。なぜならば、
図8を参照して説明した差分値の算出をセンサ行単位で行うということは、センサ行単位の透光領域出力GRAの高低だけでなくセンサ行単位の遮光領域出力GRBの高低にも各センサ行のリセット後の電位が反映されているからである。すなわち、変形例2では、透光領域出力GRAと遮光領域出力GRBの両方がセンサ行単位で取り扱われることによって、センサ行単位で差が生じ得るリセット電位の影響を透光領域出力GRAからの遮光領域出力GRBの差し引きによってセンサ行単位で完結させることができる。従って、変形例2で得られる差分出力GRCには、各センサ行のリセット後の電位の影響が実質的に現れない。このように、変形例2によれば、光センサWAのリセットに伴い生じることがあるフィードスルーによる筋の発生をより確実に抑制できる。以上、特筆した事項を除いて、変形例2は、実施形態と同様である。
【0115】
変形例2によれば、複数の光センサ(光センサWA)が行列状に配置された検出領域(検出領域SA)であり、制御回路(制御回路30)が、透光領域(透光部THA)と重なる光センサの出力と遮光領域(遮光部SHA)と重なる光センサの出力との差分を光センサの行毎に得ることで、フィードスルーによる筋の影響を抑制できる。
【0116】
以下、
図16を参照して、上述した実施形態及び各種の変形例に係り共通する構成についての例示を行う。
図16は、光源22の構成例を示す概略図である。
図16に示すように、光源22は、第1光源22Rと、第2光源22Gと、第3光源22Bと、を有する。第1光源22Rと、第2光源22Gと、第3光源22Bと、はそれぞれ異なる色の光を発する発光素子(例えば、LD)である。実施形態では、第1光源22Rは、赤色(R)の光を発する。第2光源22Gは、緑色(G)の光を発する。第3光源22Bは、青色(B)の光を発する。第1光源22Rと、第2光源22Gと、第3光源22Bと、が同時に点灯することで、白色光が照射される。
【0117】
なお、
図16に示す光源22は、第1光源22R、第2光源22G及び第3光源22Bの長手方向が第2方向Dyに沿っており、かつ、第1方向Dxの一方側から他方側に向かって第1光源22R、第2光源22G、第3光源22Bの順で並んでいる構成であるが、これは光源22の形態例であってこれに限られるものでない。例えば、光源22における第1光源22R、第2光源22G及び第3光源22Bの平面視点での形状及び第1光源22R、第2光源22G、第3光源22Bの位置関係は適宜変更可能である。また、単一の白色光源が第1光源22R、第2光源22G及び第3光源22Bに代えて設けられていてもよい。
【0118】
また、
図3に示すスイッチング素子81及びスイッチング素子85は、単一のスイッチング素子による構成に限定されない。
図17は、
図3とは一部構成が異なる光センサを示す回路図である。例えばスイッチング素子81を、
図17に示すようにスイッチング素子81aとスイッチング素子81bのいわゆるダブルゲート構成にしてもよい。また、スイッチング素子85を、
図17に示すようにスイッチング素子85aとスイッチング素子85bのいわゆるダブルゲート構成にしてもよい。
【0119】
また、被検出体SUBのような被検出体は、培地が形成されたペトリ皿に限られるものでなく、他の形態であってもよい。例えば、浮遊培養用のプレート等であってもよい。
【0120】
また、光センサWAの配置は第1方向Dx及び第2方向Dyに沿った行列状に限られない。例えば、第2方向Dyに隣り合うセンサ行の各々に配置された光センサWAがともに第2方向Dyに沿う直線状に位置していなくてもよい。具体的には、いわゆる千鳥状であってもよい。なお、リセット信号伝送線5及び走査線6を共有する観点で、複数の光センサWAのうち第1方向Dxに沿う並びは、第1方向Dxに沿う直線上に位置する並びであることが望ましいが、これも必須ではなく、光センサWA及び検出領域SAの機能を損なわない範囲内で適宜変更可能である。光源パネル20における光源22の配置についてもマトリクス状に限られるものでなく、任意の配置とすることができる。
【0121】
また、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0122】
1 検出装置
10 センサパネル
20 光源パネル
22 光源
30 制御回路
60 設置部材
82 PD
THA 透光部
SHA 遮光部
SUB 被検出体
WA 光センサ