(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097105
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20250623BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20250623BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 A
G02B7/02 B
G02B7/02 Z
G03B15/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213198
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松原 範幸
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA04
2H044AB10
2H044AD02
2H044AJ04
(57)【要約】
【課題】レンズ群が同一径であっても腐食への対応が可能な封止構造を実現したレンズユニットおよびカメラモジュールを提供する。
【解決手段】レンズユニット(101A)は、最も物体側に配置された第1レンズ(L1)の物体側に配された第1封止部材(3)と、第1レンズ(L1)の像側に配された第2封止部材(4)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒によって保持されたレンズとを備えるレンズユニットであって、
前記レンズは、最も物体側に配置された第1レンズを含み、
前記第1レンズの物体側において第1レンズの周縁全周に渡って配された第1封止部材と、
前記第1レンズの像側において第1レンズの周縁全周に渡って配された、前記第1封止部材とは異なる第2封止部材と、
前記レンズ鏡筒の軸方向に押圧して前記レンズを固定するリテーナと、
を更に備える、レンズユニット。
【請求項2】
前記第1封止部材および前記第2封止部材のうちの少なくとも一方は、Oリングである、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記第1封止部材および前記第2封止部材のうちの少なくとも一方は、ガスケットである、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記第1封止部材および前記第2封止部材のうちの一方の封止部材はOリングであり、他方の封止部材はガスケットである、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記第1レンズの像側における周縁には、第1レンズの周縁全周に渡って、面取りされた段付き部が設けられており、
前記段付き部には、前記第2封止部材が嵌めこみ可能である、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記リテーナは、前記レンズ鏡筒の外周面に対向する内周面を有し、
前記レンズ鏡筒の外周面と、前記リテーナの前記内周面との間に配され、前記レンズ鏡筒の外周面と、前記リテーナの前記内周面との間を封止するシーリング材を更に備える、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記リテーナは、前記第1レンズを軸方向に押圧するレンズキャップである、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項8】
電気的機能部品を更に備える、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記レンズ鏡筒は、樹脂または金属から構成されており、
前記リテーナは、樹脂または金属から構成されている、請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載のレンズユニットと撮像素子とを有するカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転の補助、衝突防止および運転の記録などの目的で自動車に車載カメラが搭載されている。このような車載カメラは、車室内に配置されるもの、車室外に配置されるものがある。車室外に配置される車載カメラのレンズ鏡筒においては、レンズ鏡筒内に水などが侵入することを防止するために、レンズ外周部に封止部材を装着させ鏡筒に組み込む手法が用いられることがある。
【0003】
例えば特許文献1に開示されたレンズユニットは、光軸方向の物体側に配置された第1レンズと、第1レンズに光軸方向の像側で対向する第2レンズを含む複数のレンズがレンズ鏡筒に保持された態様において、第1レンズとレンズ鏡筒との間を封止する第1封止部材と、第1封止部材より径方向内側で第1レンズの像側の面とレンズ鏡筒との間を封止する第2封止部材と、を有する。
【0004】
また、例えば特許文献2に開示されたレンズユニットは、レンズ群の最も物体側に位置される前端レンズを鏡筒の物体側端部に固定してレンズ群を鏡筒内に光軸方向で保持する締結固定部材を備え、筒状の鏡筒と前端レンズと締結固定部材との間に、締結固定部材の締め付けに伴う前端レンズの共回りを防止する共回り防止部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-85116号公報
【特許文献2】特開2020-3688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1の態様では、最も物体側に配置されたレンズと像側に配置された複数のレンズが同一径であった場合、第1封止部材より内側(光軸寄り)に第二封止部材を設けていても、第1封止部材近傍に腐食が起こった際、第二レンズ以降の気密性を確保することが困難である。
【0007】
また、上述の特許文献2の態様は、共回り防止部材では腐食対策とならないため、アルミ鏡筒であった場合などに封止部材近傍の密封性が低下し、鏡筒内に水が侵入するおそれがある。
【0008】
本発明の一態様は、水の侵入に伴う腐食への対策がとられた封止構造を具備するレンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るレンズユニットは、レンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒によって保持されたレンズとを備えるレンズユニットであって、前記レンズは、最も物体側に配置された第1レンズを含み、前記第1レンズの物体側において第1レンズの周縁全周に渡って配された第1封止部材と、前記第1レンズの像側において第1レンズの周縁全周に渡って配された、前記第1封止部材とは異なる第2封止部材と、前記レンズ鏡筒の軸方向に押圧して前記レンズを固定するリテーナと、を更に備える。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るカメラモジュールは、上述のレンズユニットと撮像素子とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、水の侵入に伴う腐食への対策がとられた封止構造を具備するレンズユニットおよびカメラモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るカメラモジュールの構成を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態3に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態4に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態5に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態6に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図8】本発明の実施形態7に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態8に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
[レンズユニットの構成]
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係るレンズユニットの構成を模式的に示す断面図である。なお、レンズユニットに具備される各レンズの光学系の詳細については、図示を省略する。
【0014】
図1に示すように、レンズユニット101Aは、レンズL1~L5、レンズ鏡筒2A、スペーサーS1~S5、第1封止部材3、第2封止部材4、リテーナ5およびフィルター6を、少なくとも有している。
【0015】
<レンズ鏡筒>
レンズ鏡筒2Aは、像面側から順に、第1筒部2a、段部2bおよび第2筒部2cを一体的に含んだ構成である。第1筒部2aは、段部2bよりも像面側の部分である。段部2bは、第1筒部2aの軸に交差する方向(例えば当該軸に直交する方向)に沿って外側に拡がる部分である。第2筒部2cは、段部2bから物体側に連なる部分であり、第1筒部2aよりも大きな径を有する。
【0016】
レンズ鏡筒2Aは、筒内にレンズL1~L5を保持している。レンズL1は、最も物体側に位置するレンズ(前玉レンズ)である。レンズL1は、第2筒部2cにおいて保持されている。以下、レンズL2~L5は、物体側から像面側に向けてこの順で第1筒部2aに保持されている。
図1には、レンズL1~L5の光軸Xを示している。なお、光軸Xは、レンズ鏡筒2Aの軸と同一線上に位置する。
【0017】
レンズ鏡筒2Aは、一例として、樹脂製である。樹脂は、例えば導電部材(一例として配線)とのインサート成形が可能な樹脂である。この場合、樹脂は一種でもそれ以上でもよい。このような樹脂材料の例には、レニー(登録商標)およびポリフェニレンサルファイド(PPS)などのスーパーエンジニアリングプラスチックが含まれる。樹脂材料のほかに、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤およびフィラーなどの添加剤を含んでいてもよい。車載レンズは、自動運転またはドライバーのアシストおよび周辺監視など、車の運用上において搭乗者の安全および安心に関する用途で利用される。そのため、車載レンズには高い信頼性を求められる。そこで、高い耐熱性、耐久性および寸法安定性を有し、また金属部品と比べ製造コストが低く、大量生産に向いているスーパーエンジニアリングプラスチックを用いてレンズ鏡筒2Aを作成してもよい。
【0018】
なお、レンズ鏡筒2Aは、樹脂製に限らず、金属製であってもよい。
【0019】
段部2bには、外周縁に沿って凹溝2bTが設けられている。凹溝2bTには、後述する第2封止部材4の一部が嵌る構成となっている。
【0020】
第1筒部2aの像側には、レンズ基準面が設けられており、レンズL1~L5およびフィルター6を保持している。
【0021】
<レンズ>
レンズL1~L5は、レンズ鏡筒2Aの上述した部分に保持されている。レンズL1は、最も物体側に位置するレンズ(第1レンズ)である。なお、本実施形態では、5枚のレンズを具備しているが、レンズユニットが具備するレンズの枚数は、特に制限はない。レンズL1のみであってもよい。
【0022】
レンズL1~L5の材料は、十分な光透過性を有しており、一種でもそれ以上でもよい。レンズL1~L5の材料は、低コストおよび大量生産に適していることなどの観点から適宜に決めることができる。レンズL1~L5の材料の例には、ガラス、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリオレフィンが含まれる。
【0023】
レンズL1(第1レンズ)の物体側の面には、周縁全周に渡って、面取りされた物体側段付き部L1aが設けられている。
【0024】
<スペーサー>
スペーサーS1~S5は、隣り合うレンズとレンズとの間に配されている環状の構造物である。具体的には、レンズL1(第1レンズ)とレンズL2との間にスペーサーS1が配されている。また、レンズL2とレンズL3との間にスペーサーS2が配されている。また、レンズL3とレンズL4との間にスペーサーS3が配されている。また、レンズL4とレンズL5との間にスペーサーS4が配されている。また、レンズL5とフィルター6との間にスペーサーS5が配されている。スペーサーS1~S5は、周知のスペーサーの材料を用いて実現できる。
【0025】
<リテーナ>
リテーナ5は、レンズL1の周縁部に物体側から当接しており、レンズ鏡筒2Aの軸方向に押圧してレンズL1~L5およびフィルター6をレンズ鏡筒2Aに対して固定する。
【0026】
リテーナ5の物体側には、光軸Xを中心にした開口部5kが設けられており、開口部5kを通過してレンズL1の物体側の光学面に光が入射できる構成となっている。
【0027】
リテーナ5は、例えばその内周面に第1ねじ部を有し、当該第1ねじ部を、レンズ鏡筒2Aの外周面の物体側端部に形成されている第2ねじ部に螺合させることによってレンズ鏡筒2Aに固定されている。リテーナ5は、レンズL1の周縁部を押圧して当該周縁部に密着している。より具体的には、リテーナ5におけるレンズL1側の領域は、レンズL1の物体側の面に接するレンズ接触部分と、第1封止部材3に接触する封止部材接触部分とを含む。
【0028】
リテーナ5は、レンズL1を軸方向に押圧するレンズキャップであると換言できる。リテーナ5は、樹脂または金属から構成されている。
【0029】
<第1封止部材>
第1封止部材3は、レンズL1(第1レンズ)の物体側においてレンズL1(第1レンズ)の周縁全周に渡って配された封止部材である。第1封止部材3は、リテーナ5の上述した封止部材接触部分と、レンズL1(第1レンズ)の物体側段付き部L1aとに挟まれている。第1封止部材3は、光軸中心を中心とするリング状の構造物であり、レンズL1(第1レンズ)の周縁に沿って配されている。第1封止部材3は、リテーナ5がレンズ鏡筒2Aに固定されることにより押し潰され、第1封止部材3を境に、リテーナ5の開口部5k側と、レンズ鏡筒2A側との間を液密に封止する部材である。第1封止部材3は、Oリングにより構成することができる。
【0030】
第1封止部材3の材料としては特に制限はないが、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、VMQ(シリコーンゴム)等を用いることができる。なかでも、使用温度範囲と耐候性、耐水性、耐薬品性の観点から、EPDMを用いることが好適である。
【0031】
なお、
図1の例では、第1封止部材3は、レンズ鏡筒2Aの第2筒部2cの内周面に接触していないが、この例に限らず、第1封止部材3がレンズ鏡筒2Aの第2筒部2cの内周面に接触していてもよい。第1封止部材3は、レンズ鏡筒2Aの第2筒部2cの内周面と、リテーナ5と、レンズL1との何れにも密着することにより、より一層確実な封止を実現することができる。
【0032】
<第2封止部材>
第2封止部材4は、レンズL1(第1レンズ)の像側においてレンズL1(第1レンズ)の周縁全周に渡って配された封止部材である。第2封止部材4は、レンズ鏡筒2Aにおける段部2bと第2筒部2cとの角に位置している。第2封止部材4は、第2筒部2cの内周面と段部2bの表面とレンズL1の像側周縁部とに全周にわたって密着し、レンズ鏡筒2AとレンズL1との間を液密に封止している。第2封止部材4と、第1封止部材3とは別体である。また、第1封止部材3と、第2封止部材4との間は、レンズL1におけるレンズ鏡筒2Aに当接している部分において完全に分断されている。
【0033】
第2封止部材4も、第1封止部材3と同様に、光軸Xを中心とするリング状の構造物であり、レンズL1(第1レンズ)の周縁に沿って配されている。第2封止部材4も、第1封止部材3と同様に、リテーナ5がレンズ鏡筒2Aに固定されることにより、レンズL1の像側と、段部2bとの間で押し潰される。これにより、第2封止部材4は、第2筒部2cの内周面と段部2bの表面とレンズL1の像側周縁部とに全周にわたって密着し、第2封止部材4を境に、レンズ鏡筒2A側と、光軸X側との間を液密に封止する。第2封止部材4も、Oリングにより構成することができる。
【0034】
第2封止部材4の材料としては、第1封止部材3の材料と同一材料から構成することができる。同一材料とすることにより、管理や析出の観点から好ましい。しかしながら、第2封止部材4と第1封止部材3とは異なる材料から構成してもよい。
【0035】
<フィルター>
フィルター6には、レンズユニットの像側に配置されて、光学的特性を有する周知のフィルターを採用できる。例えば、IRカットフィルター、偏光フィルター、NDフィルター、バンドパスフィルター等をフィルター6として採用できる。
【0036】
[レンズユニットの製造]
レンズユニット101Aの組み立て方法としては、レンズ鏡筒2Aを用意し、レンズ鏡筒2Aの物体側の開口から、フィルター6を入れて像側に配置した後、
図1に示した順で、スペーサーS5~S1と、レンズL5~L2とを交互に入れる。その後、露出している段部2bの凹溝2bTに第2封止部材4を嵌める。なお、第2封止部材4の配置タイミングは、このタイミングに限らず、これよりも前の段階でおこなってもよい。
【0037】
次いで、レンズL1(第1レンズ)を第2筒部2cに配置し、第1封止部材3を、レンズL1の物体側段付き部L1aに配置する。次いで、リテーナ5を、レンズ鏡筒2Aに固定する。
【0038】
以上の方法によって、レンズユニット101Aを組み立てることができる。
【0039】
[カメラモジュールの構成]
図2は、本実施形態に係るカメラモジュールの構成を模式的に示す図である。
図2に示されるように、カメラモジュール100は、レンズユニット101A、ケーシング102および撮像素子103を有する。カメラモジュール100は、車載用カメラに用いられる。
【0040】
ケーシング102は、筐体であり、レンズユニット101Aのレンズ鏡筒2Aが挿入される開口部を有する。レンズユニット101Aは、当該開口部に挿入され、レンズ鏡筒2Aの段部でケーシング102の開口縁部に当接した状態でケーシング102に固定されている。
【0041】
撮像素子103は、ケーシング102の底における、レンズ鏡筒2Aの軸を中心とする位置に固定されている。撮像素子103は、イメージセンサであり、その例には、CMOS(相補型金属酸化物半導体)カメラおよびCCD(電荷結合素子)カメラが含まれる。
【0042】
カメラモジュール100は、その他に、レンズユニット101Aを作動させる種々の構成を含んでいる。たとえば、カメラモジュール100は、不図示の配線および電源をさらに備えることが可能である。
【0043】
以上のように、本実施形態のレンズユニット101Aの構成によれば、レンズL1(第1レンズ)の物体側においてレンズL1の周縁全周に渡って配された第1封止部材3と、レンズL1の像側においてレンズL1の周縁全周に渡って配された、第1封止部材3とは異なる第2封止部材4とを具備している。これにより、レンズユニット101Aの物体側からレンズ鏡筒2A内に向かって水が浸入した場合であっても、第1封止部材3と、第2封止部材4の二重構造の封止機能が効き、レンズL1よりも像側に水が浸入し難い構成となっている。また、仮に、第1封止部材近傍に腐食が起こった場合であっても、第1封止部材3とは異なる第2封止部材4を、レンズL1の像側に有することにより、レンズL1よりも像側に水が浸入することをブロックすることができる。
【0044】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0045】
図3は、本発明の実施形態2に係るレンズユニット101Bの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態のレンズユニット101Bは、レンズL1(第1レンズ)の像側の面に、周縁全周に渡って、面取りされた像側段付き部L1bが設けられている。その点で、実施形態1のレンズユニット101Aと異なる。また、本実施形態のレンズユニット101Bは、レンズ鏡筒2Bが、光軸方向に同一径(内径)を有している。その点でも、実施形態1のレンズユニット101Aと異なる。
【0046】
具体的には、レンズ鏡筒2Bが、同一径を有する構成であり、レンズL1(第1レンズ)と、他のレンズL2~L5とが同一径(外径)を有する。また、スペーサーS1~S5も、レンズL1~L5と同一径である。
【0047】
レンズユニット101Bは、レンズL1(第1レンズ)の物体側の面に、周縁全周に渡って、面取りされた物体側段付き部L1aが設けられている点においては、実施形態1と同じであるが、レンズL1(第1レンズ)の像側の面にも、周縁全周に渡って、面取りされた像側段付き部L1bが設けられている点において、実施形態1と相違している。
【0048】
第2封止部材4は、レンズL1の像側段付き部L1bに嵌るように配置されている。ここで、レンズL1とレンズL2との間に配されたスペーサーS1は、レンズL1の像面側の面と、レンズL2の物体側の面に当接してこれらの間隔を所定の間隔に規定している。第2封止部材4は、そのように所定の間隔が実現されている状態において、レンズL1の像側段付き部L1bを構成する溝内面と、レンズ鏡筒2Bの内面との間に密着して、液密に封止している。これを実現するために、第2封止部材4の光軸に沿った長さは、リテーナ5がレンズ鏡筒2Bに未だ固定されていない状態において、像側段付き部L1bの幅(光軸と垂直方向に沿った溝の幅)よりも長いことが好ましい。換言すれば、この状態において、レンズL1の段付き部の幅よりも、第2封止部材4が僅かに大きいことが好ましい。これにより、リテーナ5がレンズ鏡筒2Bに完全に固定される際に、第2封止部材4がレンズL1の像面側段付き部L1bと、レンズ鏡筒2Bの内面との間に押し込まれることで、良好に密封することが可能となる。
【0049】
以上のように、本実施形態のレンズユニット101Bによれば、従来技術では不都合があったレンズ同一径の態様であっても、水の侵入を良好に防ぐことができる。
【0050】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0051】
図4は、本発明の実施形態3に係るレンズユニット101Cの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態のレンズユニット101Cは、実施形態1のOリングの第1封止部材3に代えて、ガスケットの第1封止部材3Cを採用している点において、実施形態1と異なる。
【0052】
また、本実施形態のレンズユニット101Cは、実施形態1のOリングの第2封止部材4に代えて、ガスケットの第2封止部材4Cを採用している点において、実施形態1と異なる。
【0053】
図4に示すように、第1封止部材3Cおよび第2封止部材4Cのガスケットは、断面が四角形である。第1封止部材3Cは、断面長方形であり、長径が光軸に対して垂直な方向に沿っている。なお、
図4に示すように、第1封止部材3Cおよび第2封止部材4Cは、ガスケットの幅が互いに異なっていてもよく、レンズ鏡筒2Aの設置場所に適合するサイズであればよい。
【0054】
ガスケットとしては周知のガスケット材料からなるガスケットを用いることができる。ガスケット(第2封止部材4C)の材料としては特に制限はないが、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、VMQ(シリコーンゴム)等を用いることができる。なかでも、使用温度範囲と耐候性、耐水性、耐薬品性の観点から、EPDMを用いることが好適である。
【0055】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0056】
図5は、本発明の実施形態4に係るレンズユニット101Dの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態のレンズユニット101Dは、実施形態1のOリングの第1封止部材3に代えて、ガスケットの第1封止部材3Cを採用している点において、実施形態1と異なる。なお、第2封止部材4は、実施形態1のそれと同様に、Oリングの第2封止部材4である。
【0057】
図5に示すように、レンズL1の物体側と像側とにそれぞれ配置される封止部材を、異なる断面形状の封止部材にすることによって、組立性の向上(リテーナ固定時のねじれやすさ、挿入しやすさを考慮した組立性)、あるいは、外力がかかった際の封止部材の移動、液漏れなどの項目について最適化をできるというメリットがある。
【0058】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0059】
図6は、本発明の実施形態5に係るレンズユニット101Eの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態のレンズユニット101Eは、リテーナ5とレンズ鏡筒2Aとの間にシーリング材7が配されている点において、実施形態1の構成と相違する。
【0060】
図6に示すように、リテーナ5は、レンズ鏡筒2Aの外周面2iに対向する内周面5iを有する。レンズ鏡筒2Aの外周面2iと、リテーナ5の内周面5iとにはネジ構造が設けられ、螺合する構成となっている。そして、シーリング材7は、レンズ鏡筒2Aの外周面2iと、リテーナ5の内周面5iとの間における、外部に近接した位置に、配されている。シーリング材7は、Oリングやパッキンの態様であってよく、レンズ鏡筒2Aの外周面2iと、リテーナ5の内周面5iとの間を液密に封止している。シーリング材7としては、UV硬化型(光硬化型)接着剤または熱硬化型接着剤を採用することができる。また、UV硬化と熱硬化とを併せた複合タイプの接着剤を採用することも可能である。
【0061】
〔実施形態6〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0062】
図7は、本発明の実施形態6に係るレンズユニット101Fの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態のレンズユニット101Fは、円環状のヒーター8(電気的機能部品)を更に備える点において、実施形態1と相違する。
【0063】
図7に示すように、レンズユニット101Fは、レンズ鏡筒2Aの段部2bにおける、凹溝2bTよりも光軸寄りの位置に、ヒーター8を配している。ヒーター8には、図示しない電力供給ルートが設けられている。ヒーター8はレンズユニットに搭載可能な周知のヒーターであればよい。
【0064】
このように、ヒーター8をレンズL1の像側に配することにより、ヒーター8の熱によってレンズL1を昇温させることが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態では、ヒーター8を搭載した例を説明したが、これに限らず、電気的機能部品を、先述のヒーター8設置箇所に設置してもよい。一例として、クーラーが挙げられる。
【0066】
〔実施形態7〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0067】
図8は、本発明の実施形態7に係るレンズユニット101Gの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態のレンズユニット101Gは、レンズ鏡筒2Gの構成が、実施形態1のレンズ鏡筒2Aと異なっている点において相違する。
【0068】
図8に示すレンズ鏡筒2Gは、同一径(内径)に構成されており、物体側の端部には、レンズ基準面25が設けられて縮径した態様となっている。レンズL1(第1レンズ)は、レンズ基準面25によって支持される。レンズ鏡筒2Gの像側の端部は、レンズL1~L5(互いに同一の外径を有する)と同じかそれよりも広く開口した像側開口部を有している。
【0069】
なお、
図8に示す第1封止部材3Gは、実施形態3と同様に、ガスケットの第1封止部材3Cを採用している。
【0070】
レンズ鏡筒2GへのレンズL1~L5等の組み立ては、像側開口部から行う。
図8では、図面下側から上側に向かって各構成要素を、レンズ鏡筒2Gに入れるかたちである。具体的には、レンズ鏡筒2Gを準備した後に、先ず、第1封止部材3Cを、像側開口部からレンズ鏡筒2G内に入れて、レンズ基準面25と、レンズ鏡筒2Gの内周面との間に形成される溝に配置する。次に、レンズL1(第1レンズ)を、像側開口部からレンズ鏡筒2G内に入れる。レンズL1には、物体側段付き部L1aが設けられており、第1封止部材3Cと、レンズ基準面25の先端部とは、物体側段付き部L1aに当接するように構成されている。
【0071】
次いで、像側開口部からレンズ鏡筒2G内に第2封止部材4を入れ、レンズL1の像側段付き部L1bに配置する。その後は、
図8に示すように、スペーサーとレンズとを交互に入れて、スペーサーS5を入れた後に、フィルター6を入れ、レンズ鏡筒2Gの像側開口部を、押さえ環である像側リテーナ50(リテーナ)により封じる。レンズ鏡筒2Gの像側開口部の内周面と、像側リテーナ50の外周面には、螺合可能なねじ構造が設けられている。
【0072】
〔実施形態8〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0073】
図9は、本発明の実施形態8に係るレンズユニット101Hの構成を模式的に示す断面図である。本実施形態のレンズユニット101Hは、レンズ鏡筒2Hの構成が、実施形態7のレンズ鏡筒2Gと異なっている点において相違する。
【0074】
図9に示すように、レンズユニット101Hのレンズ鏡筒2Hは、像側開口部がカシメ構造部27を有する。レンズ鏡筒2Hは、カシメを実現するために、金属製ではなく、樹脂製である。樹脂製のレンズ鏡筒2Hは、レンズ鏡筒内に配置する各種構成要素を像側開口部からレンズ鏡筒内に入れる際には、カシメ構造部27は像側に向かって立ち上がっている状態である。各種構成要素を像側開口部からレンズ鏡筒内に入れた後、像側に向かって立ち上がったカシメ構造部27を
図9に示すように光軸側に曲げた状態とすることによって、レンズ等を固定している。
【0075】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の態様のレンズユニットは、レンズ鏡筒と、前記レンズ鏡筒によって保持されたレンズとを備えるレンズユニットであって、前記レンズは、最も物体側に配置された第1レンズを含み、前記第1レンズの物体側において第1レンズの周縁全周に渡って配された第1封止部材と、前記第1レンズの像側において第1レンズの周縁全周に渡って配された、前記第1封止部材とは異なる第2封止部材と、前記レンズ鏡筒の軸方向に押圧して前記レンズを固定するリテーナと、を更に備える。前記第1の態様によれば、レンズユニットの物体側からレンズ鏡筒内に向かって水が浸入した場合であっても、第1封止部材と、第2封止部材の二重構造の封止機能が効き、第1レンズよりも像側に水が浸入し難い構成となっている。また、仮に、第1封止部材近傍に腐食が起こった場合であっても、第1封止部材とは異なる第2封止部材を、第1レンズの像側に有することにより、第1レンズよりも像側に水が浸入することをブロックすることができる。
【0076】
本発明の第2の態様のレンズユニットは、前記第1の態様において、前記第1封止部材および前記第2封止部材のうちの少なくとも一方は、Oリングであってもよい。前記第2の態様によれば、Oリングによって、液密に封止することが可能である。
【0077】
本発明の第3の態様のレンズユニットは、前記第1の態様において、前記第1封止部材および前記第2封止部材のうちの少なくとも一方は、ガスケットであってもよい。前記第3の態様によれば、ガスケットによって、液密に封止することが可能である。
【0078】
本発明の第4の態様のレンズユニットは、前記第1の態様において、前記第1封止部材および前記第2封止部材のうちの一方の封止部材はOリングであり、他方の封止部材はガスケットであってもよい。前記第4の態様によれば、ガスケットとOリングとによって、第1レンズの物体側と像側とのそれぞれを、液密に封止することが可能である。
【0079】
本発明の第5の態様のレンズユニットは、前記第1の態様から前記第4の態様のいずれかにおいて、前記第1レンズの像側における周縁には、第1レンズの周縁全周に渡って、面取りされた段付き部が設けられており、前記段付き部には、前記第2封止部材が嵌めこみ可能であってもよい。前記第5の態様によれば、第1レンズの像側における周縁において、第2封止部材が位置ずれすることなく、良好な封止機能を発揮することができる。
【0080】
本発明の第6の態様のレンズユニットは、前記第1の態様から前記第5の態様のいずれかにおいて、前記リテーナは、前記レンズ鏡筒の外周面に対向する内周面を有し、前記レンズ鏡筒の外周面と、前記リテーナの前記内周面との間に配され、前記レンズ鏡筒の外周面と、前記リテーナの前記内周面との間を封止するシーリング材を更に備えてもよい。前記第6の態様によれば、レンズ鏡筒の外周面と、リテーナの内周面との間の隙間から、レンズ鏡筒内に水が浸入することを防ぐことができる。
【0081】
本発明の第7の態様のレンズユニットは、前記第1の態様から前記第6の態様のいずれかにおいて、前記リテーナは、前記第1レンズを軸方向に押圧するレンズキャップであってもよい。前記第7の態様によれば、レンズキャップと第1レンズとの間で、第1封止部材によって封止することが可能となる。
【0082】
本発明の第8の態様のレンズユニットは、前記第1の態様から前記第7の態様のいずれかにおいて、電気的機能部品を更に備えてもよい。前記第8の態様によれば、電気的機能部品として例えばヒーターを搭載すれば、レンズを昇温させることができる。
【0083】
本発明の第9の態様のレンズユニットは、前記第1の態様から前記第8の態様のいずれかにおいて、前記レンズ鏡筒は、樹脂または金属から構成されており、前記リテーナは、樹脂または金属から構成されていてよい。
【0084】
本発明の第10の態様のカメラモジュールは、前記第1の態様から前記第9の態様のいずれかのレンズユニットと撮像素子とを有する。前記第11の態様によれば、信頼性の高い車載用カメラを提供することができる。
【0085】
このような構成によれば、車載用カメラに好適なレンズユニットを提供することが可能である。これにより、自動車の自動運転などの自動化を推進する環境が整備されることが期待される。よって、本発明は、技術革新の拡大と持続可能な産業化の推進とに関する持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献することが期待される。
【0086】
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
2A、2B、2G、2H レンズ鏡筒
2bT 凹溝
2i 外周面
3、3C、3G 第1封止部材
4、4C 第2封止部材
5 リテーナ
5i 内周面
5k 開口部
6 フィルター
7 シーリング材
8 ヒーター(電気的機能部品)
27 カシメ構造部
50 像側リテーナ
100 カメラモジュール
101A、101B、101C、101D、101E、101F、101G、101H レンズユニット
102 ケーシング
103 撮像素子
L1 第1レンズ(レンズ)
L1a 物体側段付き部
L1b 像側段付き部
L2、L3、L4、L5 レンズ
S1、S2、S3、S4、S5 スペーサー