(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097131
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】遠隔作業システム、作業装置、及び、制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/14 20060101AFI20250623BHJP
【FI】
B25J9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213248
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山川 寛晶
(72)【発明者】
【氏名】一藁 秀行
(72)【発明者】
【氏名】吉村 祐哉
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS09
3C707CY13
3C707HS12
3C707JU12
3C707LV22
(57)【要約】
【課題】作業装置の移動性を向上させる。
【解決手段】遠隔作業システム1は、作業装置100と、作業装置100の動作を制御する制御装置200と、作業装置100と制御装置200を接続するケーブル300と、を備える。作業装置100は、流体500の圧力で駆動する流体圧駆動機構110と、電力600で駆動して流体圧駆動機構110の駆動量を調整する電動機構120と、電動機構120の動作を制御する機構制御部130と、を有する。制御装置200は、ケーブル300を介して、電力600と、流体圧駆動機構110の駆動に用いる流体500と、機構制御部130の制御に用いる流体信号502が付加された流体501と、を作業装置100に送る。流体信号502は、圧力を流体501に印加することで形成された任意のパターンの信号になっている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置と、
前記作業装置の動作を制御する制御装置と、
前記作業装置と前記制御装置を接続するケーブルと、を備え、
前記作業装置は、
流体の圧力で駆動する流体圧駆動機構と、
電力で駆動して前記流体圧駆動機構の駆動量を調整する電動機構と、
前記電動機構の動作を制御する機構制御部と、を有し、
前記制御装置は、前記ケーブルを介して、前記電力と、前記流体圧駆動機構の駆動に用いる流体と、前記機構制御部の制御に用いる流体信号が付加された流体と、を前記作業装置に送り、
前記流体信号は、圧力を流体に印加することで形成された任意のパターンの信号である、
ことを特徴とする遠隔作業システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔作業システムにおいて、
前記制御装置は、
前記圧力を前記流体に印加する流体圧力源と、
前記電力を前記作業装置に供給する電源と、
前記流体信号を生成して前記作業装置に発信する流体信号発信手段と、を有し、
前記ケーブルは、
前記電力を前記作業装置に送る電力伝達経路と、
前記駆動に用いる流体及び前記流体信号が付加された流体を、同一の流体として又は別々の流体として前記作業装置に送る流体伝達経路と、を有する、
ことを特徴とする遠隔作業システム。
【請求項3】
請求項2に記載の遠隔作業システムにおいて、
前記流体伝達経路は、前記作業装置の内部で複数の系統に分岐して設けられており、
前記流体圧駆動機構は、前記流体の圧力で駆動する複数のアクチュエータを有し、
前記電動機構は、前記流体伝達経路の各系統で前記流体の流れを切り替える弁を有する、
ことを特徴とする遠隔作業システム。
【請求項4】
請求項3に記載の遠隔作業システムにおいて、
前記流体圧駆動機構は、複数の系統を有し、
前記電動機構は、
1つの流路から複数の流路に流体を分配する流体分配部を有し、
前記流体伝達経路で供給される流体を前記流体分配部で前記流体圧駆動機構の系統ごとに分配する、
ことを特徴とする遠隔作業システム。
【請求項5】
請求項4に記載の遠隔作業システムにおいて、
前記作業装置は、
前記流体を流す流路を開閉する複数の電磁弁と、
関節部の駆動に用いる複数のアクチュエータと、を有し、
前記電磁弁を開放して前記アクチュエータの駆動を開始した後に、前記電磁弁の閉止と開放を繰り返し行い、さらに、前記電磁弁の閉止中に前記アクチュエータの駆動の停止を行う、
ことを特徴とする遠隔作業システム。
【請求項6】
請求項4に記載の遠隔作業システムにおいて、
前記流体を流す流路を開閉する複数の電磁弁を有し、
前記制御装置の前記流体信号発信手段は、前記流体信号の圧力を増やす加圧手段と、前記流体信号の圧力を減らす減圧手段と、を有し、前記加圧手段と前記減圧手段により、前記流体伝達経路内の前記流体信号に用いる流体の圧力を変更することで、前記流体信号の印可圧を制御し、
前記作業装置の前記機構制御部は、前記印可圧が任意の設定値以下の場合に自動的に閉止する背圧弁と、前記流体信号の印可圧を検知する圧力検知手段と、を有し、前記背圧弁が閉止することで、前記設定値以下の圧力領域で前記電動機構への前記電磁弁の閉止信号の送信が可能になる、
ことを特徴とする遠隔作業システム。
【請求項7】
請求項6に記載の遠隔作業システムにおいて、
前記機構制御部は、前記流体信号の圧力に応じて前記電力伝達経路で供給される電力を調整して前記電動機構へ出力する出力調整部を有し、
前記背圧弁は、前記圧力検知手段と前記流体分配部との間に配置される、
ことを特徴とする遠隔作業システム。
【請求項8】
請求項6に記載の遠隔作業システムにおいて、
前記電磁弁の閉止信号の値は、前記背圧弁の閉止用の設定値以下の圧力値に割り当てられており、
前記作業装置の前記機構制御部は、前記電磁弁の開放中であっても、前記設定値以下の圧力領域で前記電動機構への前記電磁弁の閉止信号の送信が可能になる、
ことを特徴とする遠隔作業システム。
【請求項9】
流体の圧力で駆動する流体圧駆動機構と、
電力で駆動して前記流体圧駆動機構の駆動量を調整する電動機構と、
前記電動機構の動作を制御する機構制御部と、を有し、
外部から、ケーブルを介して、前記電力と、前記流体圧駆動機構の駆動に用いる流体と、前記機構制御部の制御に用いる流体信号が付加された流体と、を受け付け、
前記流体信号は、圧力を流体に印加することで形成された任意のパターンの信号である、
ことを特徴とする作業装置。
【請求項10】
作業装置の動作を制御する制御装置であって、
圧力を流体に印加する流体圧力源と、
電力を前記作業装置に供給する電源と、
流体信号を生成して前記作業装置に発信する流体信号発信手段と、を有し、
前記流体信号は、圧力を流体に印加することで形成された任意のパターンの信号である、
ことを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔作業システム、作業装置、及び、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電所や、プラント、災害現場等の比較的過酷な労働環境における作業では、作業員の代わりとして作業装置(ロボット)を用いた遠隔作業システムが活用される。作業装置は、狭窄部を通過することがあるため、小型化が求められる。その一方で、作業装置は、ガレキの把持や不整地の移動等の高出力が要求される。また、比較的過酷な労働環境として放射線量が高い場所がある。しかしながら、作業装置の駆動に用いるステップモータや制御に用いる半導体センサ等の精密なエレクトロニクス機器は放射線に弱い。そのため、作業装置は、放射線量が高い場所で長時間使用することが困難である。そのため、作業装置では、モータやセンサ等のエレクトロニクス機器を極力使用しないことが望まれている。
【0003】
これらのことから、作業装置は、エネルギー密度が高い流体圧で駆動することが好ましい。そこで、作業環境から離れた整備環境に制御装置を設置し、ケーブルで制御装置と作業装置とを接続して、流体圧で作業装置を駆動する構成の遠隔作業システムが提供されている。この構成の遠隔作業システムは、遠隔地から作業地に動力を供給することによって、作業装置の小型化や、防塵性、防水性、耐放射線性等の耐環境性の向上を図ることが可能である。
【0004】
この構成の遠隔作業システムに関連して、ケーブルが意図せぬ障害物に引っ掛かることを低減するために、例えば、特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1には、ケーブルを浮上させることで、流体圧で駆動する作業装置のケーブルの移動性への影響を軽減する技術が記載されている。このような特許文献1に記載された従来技術は、ケーブルを浮上させることにより、床面とケーブルの摩擦による移動性への影響を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術は、作業装置の到達可能範囲を増やすために、ケーブルを長くすると、ケーブルを浮上/移動させるための中間ノズルを多数設けなければならなくなる。これにより、中間ノズルを制御するための電気信号線が増え、ケーブルの重量と太さが増加する。つまり、特許文献1に記載された従来技術は、制御装置と作業装置とを接続する制御信号用の電気信号線を複数設けなければならないため、ケーブルの重量と太さが増加する。これにより、ケーブルの慣性や床面との摩擦が増加したり、ケーブルの可撓性(柔軟性)が低下したりする。そのため、ケーブルを牽引する作業装置の移動性を低下させている。
【0007】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、作業装置の移動性を向上させる遠隔作業システム、作業装置、及び、制御装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、遠隔作業システムであって、作業装置と、前記作業装置の動作を制御する制御装置と、前記作業装置と前記制御装置を接続するケーブルと、を備え、前記作業装置は、流体の圧力で駆動する流体圧駆動機構と、電力で駆動して前記流体圧駆動機構の駆動量を調整する電動機構と、前記電動機構の動作を制御する機構制御部と、を有し、前記制御装置は、前記ケーブルを介して、前記電力と、前記流体圧駆動機構の駆動に用いる流体と、前記機構制御部の制御に用いる流体信号が付加された流体と、を前記作業装置に送り、前記流体信号は、圧力を流体に印加することで形成された任意のパターンの信号である、構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御装置と作業装置とを接続する制御信号用の電気信号線を不要化して、ケーブルの重量と太さを減らすことで、作業装置の移動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る遠隔作業システム全体の概略構成図である。
【
図2】実施形態1に係る遠隔作業システムの内部ブロック図である。
【
図3】実施形態1に係る遠隔作業システムの内部の概略構成図である。
【
図4】実施形態1に係る遠隔作業システムの動作説明図である。
【
図5A】作業装置に用いるアクチュエータの概略構成図(1)である。
【
図5B】作業装置に用いるアクチュエータの概略構成図(2)である。
【
図6】流体信号に含まれる電磁弁の開閉信号成分の説明図である。
【
図7】実施形態1に係る遠隔作業システムの動作説明図である。
【
図8】実施形態1に係る遠隔作業システムの動作説明図である。
【
図9】アクチュエータの駆動開始後の課題の説明図である。
【
図10】課題を解決する作業装置の動作説明図である。
【
図11】実施形態2に係る遠隔作業システムの内部ブロック図である。
【
図12】実施形態2に係る遠隔作業システムの内部の概略構成図である。
【
図14】実施形態3に係る遠隔作業システムの内部の概略構成図である。
【
図17】実施形態3に係る遠隔作業システムの動作説明図である。
【
図19A】背圧弁を設けていない場合の流体信号の説明図である。
【
図19B】背圧弁を設けている場合の流体信号の説明図である。
【
図20A】背圧弁を設けていない場合の作業装置の動作説明図である。
【
図20B】背圧弁を設けている場合の作業装置の動作説明図である。
【
図21】比較例の遠隔作業システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
[実施形態1]
<遠隔作業システムの構成>
以下、
図1~
図4を参照して、本実施形態1に係る遠隔作業システム1の構成について説明する。
図1は、本実施形態1に係る遠隔作業システム1全体の概略構成図である。
図2は、遠隔作業システム1の内部ブロック図である。
図3は、遠隔作業システム1の内部の概略構成図である。
図4は、遠隔作業システム1の動作説明図である。
【0013】
図1に示すように、遠隔作業システム1は、作業対象に対して遠隔で所定の作業を行うために、操作装置10と、作業装置100と、制御装置200と、ケーブル300と、を備える。
【0014】
操作装置10は、操縦者2が操作する装置である。操作装置10は、操縦者2による操作入力を受け取るとともに、作業情報を操縦者2に提示する。
【0015】
作業装置100は、作業対象の近傍に移動して作業を行うロボット等の装置である。作業装置100は、複数の関節部101を有している。各関節部101は、流体500(
図3)の圧力(流体圧)と電力600(
図3)で駆動する。
【0016】
制御装置200は、操作装置10の操作入力に応じて作業装置100の動作を制御する装置である。制御装置200は、操縦者2による操作装置10への操作入力に基づいて流体と電気を調整して作業装置100に出力する。
【0017】
ケーブル300は、制御装置200と作業装置100とを接続する(繋ぐ)部材である。ケーブル300は、制御装置200から作業装置100に流体と電気を伝達する。
【0018】
図2に示すように、制御装置200は、作業装置100を駆動制御するために、流体圧力源210と、電源220と、流体信号発信手段230とを有している。
【0019】
流体圧力源210は、流体500,501(
図3)を流体伝達経路310に出力する構成要素である。流体圧力源210は、例えば、ポンプ、アキュムレータ、流体貯蔵用のタンク等によって構成される。なお、流体500,501(
図3)には圧力が付加される。流体500には、流体501よりも高い圧力が付加される。そのため、流体伝達経路310内において、流体500を流動させるチューブには、流体501を流動させるチューブよりも太いものが用いられる。換言すると、流体501を流動させるチューブには、流体500を流動させるチューブよりも細いものが用いられる。
【0020】
電源220は、電力600(
図3)を電力伝達経路320に出力する構成要素である。電源220は、例えば、電池、発電装置等によって構成される。電力600は、定格消費電力(つまり、指定された条件下で機器類が安全に達成できる最大の出力電力)になっている。
【0021】
流体信号発信手段230は、流体信号502(
図3)を生成して作業装置100に発信する構成要素である。流体信号発信手段230は、生成した流体信号502を流体伝達経路310の内部の流体501に付加(重畳)することで、流体501を介して流体信号502を作業装置100に発信する。
【0022】
流体信号502(
図3)は、流体伝達経路310の内部の流体501を伝搬して(通って)制御装置200から作業装置100に到達する信号である。遠隔作業システム1は、圧力、振動、音、光、その他を、流体信号502として用いることができる。ここでは、遠隔作業システム1が圧力を流体信号502として用いる場合を想定して説明する。
【0023】
なお、外部から圧力や電源の供給を受ける場合に、制御装置200は、内部に流体圧力源210や電源220を備えない構成にすることができる。
【0024】
作業装置100は、作業対象の近傍に移動して作業を行うために、関節部101と、流体圧駆動機構110と、電動機構120と、機構制御部130とを有している。
【0025】
流体圧駆動機構110は、流体500(
図3)の圧力(流体圧)で駆動する構成要素である。流体圧駆動機構110は、1つ以上の流路の系統をもち、系統ごとに制御装置200から流体500の供給を受ける。流体圧駆動機構110は、1つ以上のアクチュエータ110a(
図4)を有している。アクチュエータ110aは、例えば、流体圧シリンダ(
図5A)や流体圧モータ(
図5B)によって構成される。各アクチュエータ110aは、それぞれに対応する関節部101の動作に関連しており、アクチュエータ110aが動くことで関節部101が動く。関節部101は、作業装置100の腕や、脚、或いはクローラ(無限軌道)等である。
【0026】
電動機構120は、出力電力610(
図3)により駆動する構成要素である。電動機構120は、制御装置200から入力される電力600と流体信号502に応じて動作を切り替える。電動機構120は、1つ以上の系統をもち、系統ごとに機構制御部130の出力調整部132から出力電力610の供給を受ける。電動機構120は、系統ごとに、出力電力610により駆動して、流体信号502によって指定された系統(該当系統)の電磁弁120aを指示された開閉量分だけ開閉する。これにより、電動機構120は、流体圧駆動機構110に設けられた該当系統のアクチュエータ110a(
図4)の駆動量(作動量)を調整して、該当系統のアクチュエータ110aを調整された駆動量分だけ駆動可能にする。電動機構120は、例えば、電気で運動する部品や演算する部品で構成される。電動機構120は、例えば、腕や脚、クローラ等の1つ以上の関節部101を駆動するアクチュエータや、電磁弁、PTZカメラ等である。アクチュエータや電磁弁は、応答性に優れているため、作業装置100は、アクチュエータや電磁弁を電動機構120に用いるとよい。
【0027】
機構制御部130は、流体信号502(
図3)に応じて電動機構120の動作を切り替える構成要素である。機構制御部130は、流体信号検知部131と、出力調整部132とを有している。流体信号検知部131は、流体信号502を電気信号として検知する構成要素である。流体信号検知部131は、例えば、圧力、振動、音、光、その他を検知する機械式検出器や半導体センサで構成される。出力調整部132は、電気信号として検知された流体信号502に基づいて電力600の電圧や電流を調整して出力電力610(
図3)として系統ごとに電動機構120に出力する構成要素である。出力調整部132は、例えば、電気出力を調整するリレーや半導体素子で構成される。
【0028】
図3に示すように、ケーブル300は、制御装置200から作業装置100に流体と電気を伝達する。そのための構成要素として、ケーブル300は、内部に、流体を伝達する流体伝達経路310と、電気を伝達する電力伝達経路320とを有している。
【0029】
流体伝達経路310は、流体500,501を伝達する構成要素である。流体500は、作業装置100の流体圧駆動機構110の駆動に用いる流体である。流体501は、作業装置100の機構制御部130の制御信号として用いる流体信号502が付加された流体である。流体500と流体501は、同一の流体として又は別々の流体として構成することができる。したがって、流体伝達経路310は、流体500と流体501を、同一の流体として又は別々の流体として作業装置100に送ることができる。
【0030】
流体圧駆動機構110は、1つ以上の、独立して駆動する系統を備えている。そのため、流体伝達経路310は、流体圧駆動機構110の系統と同じ数だけ分離された流路を持ち、系統ごとに制御装置200から作業装置100に流体500を供給する。流体伝達経路310は、柔軟性、耐圧性、耐水性等の特徴を有する水圧チューブで構成されている。流体伝達経路310は、例えば樹脂や金属によって筒状に形成されている。なお、流体伝達経路310の外側をカバーするケーブル300も、水がある作業環境で使用される可能性があるため、好ましくは、水圧チューブで構成されているとよい。また、流体伝達経路310と流体伝達経路310の外側をカバーするケーブル300は、好ましくは、耐放射線性樹脂で構成されるとよい。
【0031】
遠隔作業システム1は、制御装置200から作業装置100に、流体伝達経路310の1つの流路を使用して単一の流体信号502を送信してもよいし、複数の流路を使用して複数の流体信号502を同時に又は任意に送信してもよい。
【0032】
電力伝達経路320は、作業装置100の機構制御部130に電力600を供給する構成要素である。電力伝達経路320は、例えば銅等の金属線で構成されている。電力伝達経路320の表面は、樹脂製の保護材で被覆されているとよい。電力600は、電動機構120の駆動に用いられる。電動機構120は、流体圧駆動機構110と同様に、1つ以上の、独立して駆動する系統を備えている。しかしながら、電力伝達経路320は、電動機構120の系統の数によらずに単一の経路のみとなっている。
【0033】
図4に示すように、制御装置200は、流体圧力源210に、流体500,501を貯蔵するタンク211と、流体500,501に圧力を印加するポンプ212とを有している。また、作業装置100は、流体圧駆動機構110の駆動量を調整する電磁弁120aと、流体500の圧力(流体圧)により駆動するアクチュエータ110aとを有している。また、制御装置200は、流体信号502を流体501に付加する流体信号発信手段230を有している。制御装置200は、流体信号502を流体501に付加することで、作業装置100で駆動させる電磁弁120aの系統と電磁弁120aの開閉量を指示する。作業装置100では、流体信号502によって指示された系統の電磁弁120aが指示された開閉量分だけ開閉することで、指示された系統における流体圧駆動機構110のアクチュエータ110aの駆動量が変化する。このような遠隔作業システム1は、制御装置200と作業装置100との間から、作業装置100の動作を制御する制御信号用の電気信号線(専用の電気信号線)を不要化する(省略する)ことができる。
【0034】
図5A及び
図5Bは、それぞれ、作業装置100に用いるアクチュエータ110aの概略構成図である。
図5Aに示す例では、アクチュエータ110aが流体圧シリンダ111として構成されている。
図5Aに示す例では、流体圧シリンダ111の一方の空間111aに流体500が供給され、他方の空間111bから流体500が排出されることで、ピストン111cが押し出される。また、逆に、流体圧シリンダ111の一方の空間111aから流体500が排出され、他方の空間111bに流体500が供給されることで、ピストン111cが引き出される。作業装置100の関節部101は、ピストン111cの押出量又は引出量に応じて駆動する。また、
図5Bに示す例では、アクチュエータ110aが流体圧モータ112として構成されている。
図5Bに示す例では、流体圧モータ112の一方の空間112aに流体500が供給され、他方の空間112bから流体500が排出されることで、回転軸112cが正方向(白抜き矢印の方向)に回転する。また、逆に、流体圧モータ112の一方の空間112aから流体500が排出され、他方の空間112bに流体500が供給されることで、回転軸112cが逆方向に回転する。作業装置100の関節部101は、回転軸112cの正回転量又は逆回転量に応じて駆動する。
【0035】
<流体信号の構成>
以下、
図6を参照して流体信号502の構成について説明する。
図6は、流体信号502に含まれる電磁弁120aの開閉信号成分の説明図である。ここでは、アクチュエータ110aが流体圧シリンダ111(
図5A)として構成されている場合を想定して説明する。
【0036】
図6に示すように、流体信号502は、作業装置100に指示する動作内容に合わせて、多段階の印加圧値に対応する信号成分を有する構成になっている。
図6に示す例では、流体信号502は、信号成分Pc1a,Pc1b,…,Pnbを含む構成になっている。信号成分Pc1aは、第1シリンダを伸長する動作に対応している。信号成分Pc1aは、第1シリンダを収縮する動作に対応している。信号成分Pcnbは、第nシリンダを収縮する動作に対応している。第1シリンダ及び第nシリンダは、アクチュエータ110aとしての流体圧シリンダ111(
図5A)である。
【0037】
<遠隔作業システムの動作>
以下、
図3と
図7を参照して、遠隔作業システム1の動作について説明する。以下に説明される動作は、一例であって、遠隔作業システム1の動作は、以下に説明される動作に限定されない。
図7は、遠隔作業システム1の動作説明図である。
【0038】
まず、操縦者は、操作装置10(
図1)を操作して作業装置100の動作内容を入力する。すると、制御装置200が動作を開始する。制御装置200は、入力された動作内容に基づいて、流体圧駆動機構110を駆動させる必要があるか否かを判断する。流体圧駆動機構110を駆動させる必要がある場合に、制御装置200は、流体圧力源210により、流体伝達経路310に流体500を供給する。また、制御装置200は、流体圧力源210により、流体伝達経路310の複数の流路のうち、流体圧駆動機構110の駆動させる系統に対応した流路に流体501を供給する。このとき、流体圧力源210は、タンク211に貯蔵された流体をポンプ212で流体500,501を加圧して流路に送り込む。流路に送り込まれた流体500,501は、作業装置100に注入(注水)される。作業装置100の流体圧駆動機構110は、流体伝達経路310で供給される流体500に応じて駆動する。なお、作業装置100で不要になった流体500,501は、作業装置100から制御装置200に排出(排水)される。
【0039】
また、制御装置200は、入力された動作内容に基づいて、電動機構120を駆動させる必要があるか否かを判断する。電動機構120を駆動させる必要がある場合に、制御装置200は、電源220から電力600を電力伝達経路320に供給する。また、制御装置200は、流体信号発信手段230により、電動機構120の駆動させる系統と駆動量に対応した流体信号502を、流体伝達経路310の内部の流体501に付加する。
図7に示すように、流体信号発信手段230は、流体501に付加する印加圧を制御する印加圧制御部230aを有している。印加圧制御部230aは、印加圧切替手段230bにより流体501に付加する印加圧を切り替える。印加圧切替手段230bは、印加圧を切り替える構成要素であり、例えば流体501を加圧しながら一時的に出し入れする流体圧シリンダによって構成されている。
【0040】
作業装置100の流体信号検知部131は、流体伝達経路310の内部の流体501から流体信号502を電気信号として検知する。流体信号検知部131は、例えば、放射線に対する耐性が高い機械的な圧力スイッチで構成される。流体信号検知部131は、流体信号502に含まれる印加圧の信号成分(圧力信号)を電気信号として検知する。そして作業装置100の出力調整部132は、検知した圧力信号の内容に応じて、電力伝達経路320で供給される電力600の大きさを調整した上で、電動機構120の駆動させる系統に対して出力電力610(
図3)を供給する。作業装置100の電動機構120は、供給される出力電力610に応じて電磁弁120aを駆動する。
【0041】
係る構成において、制御装置200は、電力伝達経路320を介して電力600を作業装置100に送る。また、制御装置200は、流体伝達経路310を介して流体500と、流体信号502が付加された流体501とを作業装置100に送る。
【0042】
電力600は、作業装置100に供給されて、機構制御部130や電動機構120の駆動に用いられる。流体500は、作業装置100の流体圧駆動機構110に供給される。また、流体501は、作業装置100の機構制御部130に供給される。機構制御部130は、流体信号検知部131により、流体501に付加された流体信号502を検知する。この後、機構制御部130は、出力調整部132により、検知された流体信号502に基づいて電力600の電圧や電流を調整して出力電力610として系統ごとに電動機構120に出力する。
【0043】
電動機構120は、系統ごとに、出力電力610により駆動して、流体信号502によって指定された系統(該当系統)の電磁弁120aを指示された開閉量分だけ開閉する。これにより、電動機構120は、流体圧駆動機構110に設けられた該当系統のアクチュエータ110a(
図4)の駆動量を調整して、該当系統のアクチュエータ110aを調整された駆動量分だけ駆動可能にする。この後、流体500が、流体圧(流体500の圧力)により、流体圧駆動機構110に設けられた該当系統のアクチュエータ110a(
図4)を調整された駆動量分だけ駆動させる。これにより、関節部101が駆動する。
【0044】
なお、本実施形態1に係る遠隔作業システム1(
図4)は、
図21に示す比較例の遠隔作業システム1oldを改良した構成になっている。ここで、
図21に示す比較例の遠隔作業システム1oldの構成について説明する。比較例の遠隔作業システム1oldは、本実施形態1に係る遠隔作業システム1と同様に、制御装置200oldと作業装置100oldとの間から、作業装置100の動作を制御する制御信号用の電気信号線(専用の電気信号線)を省略したものである。
図21に示すように、比較例の遠隔作業システム1oldは、作業装置100oldと、制御装置200oldと、ケーブル300oldとを備えている。作業装置100oldは、複数の系統に対応して複数のアクチュエータ110aを有している。また、制御装置200oldは、タンク211とポンプ212とを有するとともに、複数の系統に対応して複数の電磁弁213aを有している。ここでは、アクチュエータ110aが流体圧シリンダ111(
図5A)として構成されている場合を想定して説明する。
【0045】
制御装置200oldは、ポンプ212で流路を複数の系統に分岐させている。各系統では、1つのアクチュエータ110a(流体圧シリンダ111)につき2つの水圧チューブが設けられている。各水圧チューブには、ポンプ212で高い圧力が付加された液体が供給されている。制御装置200oldは、系統ごとに電磁弁213aで2つの水圧チューブの開閉を行う。これにより、制御装置200oldは、系統ごとに作業装置100oldのアクチュエータ110aに注入させる液体の流れの方向を切り替える。これにより、作業装置100oldは、アクチュエータ110aが駆動して、関節部101(
図1)を駆動させる。
【0046】
このような比較例の遠隔作業システム1oldは、1つのアクチュエータ110aにつき2つの水圧チューブを設け、各水圧チューブに供給された液体で作業装置100oldのアクチュエータ110aを駆動する。各水圧チューブにはポンプ212で高い圧力が付加された液体が供給されている。そのため、各水圧チューブは、クリープ変形が発生する可能性がある。クリープ変形は、付加された圧力により、内径が拡幅するように変形してしまい、付加された圧力を解除した後もその変形が残ってしまう現象である。クリープ変形が発生すると、作業装置100oldのアクチュエータ110aの駆動量が変化してしまい、作業装置100oldの関節部101(
図1)を正確に駆動制御できなくなってしまう。
【0047】
そのため、比較例の遠隔作業システム1oldは、クリープ変形が発生しないように、各水圧チューブを太く頑丈にすることが望まれる。しかしながら、各水圧チューブを太く頑丈にすると、ケーブル300oldが重くなり、また、ケーブル300oldの可撓性(柔軟性)が低下する。そのため、ケーブル300oldを牽引する作業装置100oldの移動性を低下させてしまう。しかも、水圧チューブは1つのアクチュエータ110aにつき2つ設けられている。そのため、その分だけ、作業装置100oldの移動性をさらに低下させてしまう。また、ケーブル300oldが意図せぬ障害物に引っ掛かり易くなる。
【0048】
これに対して、本実施形態1に係る遠隔作業システム1(
図4)は、高い圧力が付加される流体500の水圧チューブのみを太く頑丈にすればよい。そのため、本実施形態1に係る遠隔作業システム1は、比較例の遠隔作業システム1oldよりもケーブル300を軽くすることができるとともに、可撓性(柔軟性)を向上させることができる。そのため、本実施形態に係る遠隔作業システム1は、作業装置100の移動性を向上させることができる。また、ケーブル300が意図せぬ障害物に引っ掛かる可能性を低減することができる。
【0049】
また、比較例の遠隔作業システム1old(
図21)は、2つの水圧チューブの開閉を電磁弁213aで切り替えることで、アクチュエータ110aを駆動させる流体の流動方向を切り替える構成になっている。しかしながら、流体の流動方向の切替には、タイムラグが発生し易い。そのため、比較例の遠隔作業システム1oldは、作業装置100oldの応答性を低下させてしまう。
【0050】
これに対して、本実施形態1に係る遠隔作業システム1(
図4)は、応答性に優れた電磁弁120aでアクチュエータ110aの駆動量を調整する構成になっている。そのため、本実施形態1に係る遠隔作業システム1は、作業装置100oldの応答性を向上させることができる。
【0051】
なお、
図8に示すように、制御装置200の流体信号発信手段230は、圧力の目標値P0に沿って流体信号502を流体501に付加する。
図8は、遠隔作業システム1の動作説明図である。作業装置100の機構制御部130は、圧力検知手段131aにより、流体501の圧力の実測値Pを計測して流体信号502に含まれる電磁弁120aの開閉信号成分を検知する。圧力検知手段131aは、制御装置200から作業装置100に供給される流体501の圧力を検知する構成要素である。機構制御部130は、検知された電磁弁120aの開閉信号成分を電動機構120に出力する。電動機構120は、電磁弁120aの開閉信号成分に応じて、系統ごとに電磁弁120aの開閉量を制御する。電磁弁120aの開閉量に応じて、アクチュエータ110aが駆動する。なお、アクチュエータ110aには、負荷Fがかかっている。
【0052】
このような動作を実行する過程で、電磁弁120aが閉止しており、アクチュエータ110aが静止している場合に、制御装置200は、流体501に付加する印加圧を制御できる。そのため、この場合に、制御装置200は、電磁弁120aの開放を指示する流体信号502を作業装置100に送信することができる。しかしながら、電磁弁120aが開放しており、アクチュエータ110aが駆動している場合に、アクチュエータ110aにかかる負荷Fにより、流体501に付加する印加圧が変動する可能性がある。これにより、制御装置200で、流体501に付加する印加圧の制御を阻害する現象が発生する可能性がある。そのため、この場合に、制御装置200は、電磁弁120aの閉止を指示する流体信号502を作業装置100に送信することができない可能性がある。この場合に、制御装置200は、作業装置100の動作を適正に制御することができない可能性がある。
【0053】
図9は、アクチュエータ110aの駆動開始後の課題の説明図である。
図9に示す例では、破線で示す圧力の目標値P0と実線で示す圧力の実測値Pとの関係を示している。電磁弁120aが閉止しており、アクチュエータ110aが静止している場合に、作業装置100に制御装置200は、電磁弁120aの開放を指示する流体信号502を作業装置100に送信することができる。そのため、作業装置100は、流体信号502に応じて電磁弁120aを開放する。これに対し、電磁弁120aが開放しており、アクチュエータ110aが駆動している場合に、アクチュエータ110aにかかる負荷Fにより、制御装置200で、流体501に付加する印加圧の制御を阻害する現象が発生している。そのため、この場合に、制御装置200は、電磁弁120aの閉止を指示する流体信号502を作業装置100に送信することができない。
【0054】
そこで、遠隔作業システム1は、
図10に示す制御を行うことによって、
図9に示す課題(流体501に付加する印加圧の制御を阻害する現象が発生こと)を解決する。
図10は、課題を解決する作業装置100の動作説明図である。
図10に示す例では、電磁弁120aが開放しており、アクチュエータ110aが駆動している場合に、作業装置100が既定の時間(時刻)で電磁弁120aを自動的に閉止している。そして、作業装置100は、閉止信号の待機中や、閉止信号の受信時、電磁弁120aの開放後に、任意の時間間隔で電磁弁120aの閉止と開放とを繰り返し行い、アクチュエータ110aをパルス状に駆動する。これにより、遠隔作業システム1は、アクチュエータ110aにかかる負荷Fにより、流体501に付加する印加圧の制御を阻害する現象が発生することを回避することができる。そのため、遠隔作業システム1は、作業装置100の動作を適正に制御することができる。
【0055】
<遠隔作業システムの主な特徴>
本実施形態に係る遠隔作業システム1は、以下のような特徴を有する構成にすることができる。
(1)
図3に示すように、本実施形態に係る遠隔作業システム1は、作業装置100と、作業装置100の動作を制御する制御装置200と、作業装置100と制御装置200を接続するケーブル300と、を備える。作業装置100は、流体500の圧力で駆動する流体圧駆動機構110と、電力600で駆動して流体圧駆動機構110の駆動量を調整する電動機構120と、電動機構120の動作を制御する機構制御部130と、を有する。制御装置200は、ケーブル300を介して、電力600と、流体圧駆動機構110の駆動に用いる流体500と、機構制御部130の制御に用いる流体信号502が付加された流体501と、を作業装置100に送る。流体信号502は、圧力を流体に印加することで形成された任意のパターンの信号になっている。
【0056】
本実施形態に係る遠隔作業システム1は、ケーブル300を介して、電力600と流体500と流体信号502が付加された流体501とを制御装置200から作業装置100に送る。そして、本実施形態に係る遠隔作業システム1は、流体信号502を作業装置100の制御信号として用いる構成になっている。このような本実施形態に係る遠隔作業システム1は、制御装置200と作業装置100との間から制御信号用の電気信号線(専用の電気信号線)を不要化する(省略する)ことができる。そのため、比較例に対して、ケーブル300の重量と太さを減らす一方で可撓性を増すことができる。これにより、本実施形態に係る遠隔作業システム1は、作業装置100の移動性を向上させることができる。また、ケーブル300が意図せぬ障害物に引っ掛かる可能性を低減することができる。
【0057】
(2)
図3に示すように、本実施形態に係る遠隔作業システム1において、流体圧力源210と、電源220と、流体信号発信手段230と、を有する。流体圧力源210は、圧力を流体500,501に印加する構成要素である。電源220は、電力を作業装置100に供給する構成要素である。流体信号発信手段230は、流体信号502を生成して作業装置100に発信する構成要素である。ケーブル300は、電力を作業装置100に送る電力伝達経路320と、駆動に用いる流体500及び流体信号502が付加された流体501を、同一の流体として又は別々の流体として作業装置100に送る流体伝達経路310と、を有する。
【0058】
本実施形態に係る遠隔作業システム1は、流体伝達経路310を介して、作業装置100の電動機構120の動作を制御する制御信号として機能する流体信号502の伝達を実現する。このような本実施形態に係る遠隔作業システム1は、制御装置200と作業装置100との間から制御信号用の電気信号線(専用の電気信号線)を不要化する(省略する)ことができる。そのため、ケーブル300の重量と太さを減らす一方で可撓性を増すことができる。これにより、本実施形態に係る遠隔作業システム1は、作業装置100の移動性を向上させることができる。また、ケーブル300が意図せぬ障害物に引っ掛かる可能性を低減することができる。
【0059】
(3)
図3に示すように、前記(2)の構成の遠隔作業システム1において、流体伝達経路310は、作業装置100の内部で複数の系統に分岐して設けられている。流体圧駆動機構110は、流体500の圧力で駆動する複数のアクチュエータ110a(
図4)を有する。電動機構120は、流体伝達経路310の各系統で流体500の流れを切り替える電磁弁120a(
図4)を有する。
【0060】
本実施形態に係る遠隔作業システム1は、複数の系統に分岐して設けられた流体伝達経路310で流体信号502が付加された流体501を制御装置200から作業装置100に送信する。これにより、本実施形態に係る遠隔作業システム1は、作業装置100の電動機構120を系統ごとに細かく制御することができる。しかも、本実施形態に係る遠隔作業システム1は、制御信号用の電気信号線を設けることなく、作業装置100の電動機構120を制御できる。これにより、遠隔作業システム1は、制御装置200と作業装置100との間から制御信号用の電気信号線(専用の電気信号線)を不要化する(省略する)ことができる。そのため、ケーブル300の重量と太さを減らす一方で可撓性を増すことができる。これにより、本実施形態に係る遠隔作業システム1は、作業装置100の移動性を向上させることができる。また、ケーブル300が意図せぬ障害物に引っ掛かる可能性を低減することができる。
【0061】
(4)
図3に示すように、本実施形態に係る作業装置100は、流体500の圧力で駆動する流体圧駆動機構110と、電力600で駆動して流体圧駆動機構110の駆動量を調整する電動機構120と、電動機構120の動作を制御する機構制御部130と、を有する。本実施形態に係る作業装置100は、外部から、ケーブル300を介して、電力600と、流体圧駆動機構110の駆動に用いる流体500と、機構制御部130の制御に用いる流体信号502が付加された流体501と、を受け付ける。流体信号502は、圧力を流体に印加することで形成された任意のパターンの信号になっている。
【0062】
本実施形態に係る作業装置100は、外部(制御装置200)から、ケーブル300を介して、電力600と流体500と流体信号502が付加された流体501と、を受け付ける構成になっている。流体信号502は、作業装置100の制御信号として用いられる。このような本実施形態に係る作業装置100は、制御装置200と作業装置100との間から制御信号用の電気信号線(専用の電気信号線)を不要化する(省略する)ことができる。そのため、ケーブル300の重量と太さを減らす一方で可撓性を増すことができる。これにより、本実施形態に係る作業装置100は、移動性を向上させることができる。
【0063】
(5)
図3に示すように、本実施形態に係る制御装置200は、作業装置100の動作を制御する制御装置200である。本実施形態に係る制御装置200は、圧力を流体500に印加する流体圧力源210と、電力600を作業装置100に供給する電源220と、流体信号502を生成して作業装置100に発信する流体信号発信手段230と、を有する。流体信号502は、圧力を流体に印加することで形成された任意のパターンの信号になっている。
【0064】
このような本実施形態に係る制御装置200は、流体信号502を生成して作業装置100に発信する流体信号発信手段230を有する。流体信号502は、作業装置100の制御信号として用いられる。このような本実施形態に係る制御装置200は、制御装置200と作業装置100との間から制御信号用の電気信号線(専用の電気信号線)を不要化する(省略する)ことができる。そのため、ケーブル300の重量と太さを減らす一方で可撓性を増すことができる。これにより、本実施形態に係る制御装置200は、作業装置100の移動性を向上させることができる。
【0065】
(6)
図3に示すように、本実施形態に係る遠隔作業システム1において、機構制御部130は、流体信号502の圧力に応じて電力伝達経路320で供給される電力を調整して電動機構120へ出力する出力調整部132を有する。
【0066】
本実施形態に係る遠隔作業システム1は、流体信号502の圧力に応じて電力伝達経路320で供給される電力を調整して電動機構120へ出力することができる。このような本実施形態に係る遠隔作業システム1は、作業装置100の電動機構120を細かく制御することができる。
【0067】
以上の通り、本実施形態1に係る遠隔作業システム1によれば、作業装置100の移動性を向上させることができる。
【0068】
[実施形態2]
前記した実施形態1に係る遠隔作業システム1(
図2及び
図3)は、流体伝達経路310は流体圧駆動機構110の系統と同じ数だけ複数の流体501用の流路(
図4)を持ち、系統ごとに流体501を作業装置100に供給する構成になっている。そのため、複数の流体501用の流路(
図4)の分だけ、ケーブル300の重量と太さが増加する。このような実施形態1に係る遠隔作業システム1は、作業装置100の移動性を向上させる余地がある。
【0069】
これに対して、本実施形態2では、単一の流体501用の流路を持ち、作業装置100Aで流体501を系統ごとに分配する構成の遠隔作業システム1Aを提供する。
【0070】
以下、
図11及び
図12を参照して、本実施形態2に係る遠隔作業システム1Aの構成について説明する。
図11は、本実施形態2に係る遠隔作業システム1Aの内部ブロック図である。
図12は、遠隔作業システム1Aの内部の概略構成図である。
【0071】
図11及び
図12に示すように、本実施形態2に係る遠隔作業システム1Aは、実施形態1に係る遠隔作業システム1(
図2及び
図3)と比較すると、以下の点で相違する。
(1)作業装置100Aの流体圧駆動機構110が複数の系統を持つ点。
(2)流体伝達経路310が単一の流体501用の流路のみを持つ点。
(3)作業装置100Aの電動機構120が流体分配部121を有する点。なお、流体分配部121は、電動機構120の内部で単一の流体501用の流路から複数の流路に流体501を分配する構成要素である。
(4)作業装置100Aが流体分配部121で分配された流体501を流体圧駆動機構110の各系統に供給する点。
【0072】
図12に示すように、作業装置100Aの機構制御部130は、流体信号検知部131により流体信号502を電気信号として検知する。また、機構制御部130は、出力調整部132により、電気信号として検知された流体信号502に基づいて電力600の電圧や電流を調整して出力電力610として系統ごとに電動機構120に出力する。
【0073】
作業装置100Aの電動機構120は、出力電力610と流体信号502に応じて動作を切り替える。このとき、電動機構120の流体分配部121は、系統ごとに、出力電力610により駆動して、流体信号502によって指定された系統(該当系統)の電磁弁120aを指示された開閉量分だけ開閉する。
図13A及び
図13Bは、それぞれ、流体分配部121の動作説明図である。
図13A及び
図13Bは、開閉される電磁弁120aの状態を示している。流体分配部121は、例えば、系統ごとに分かれた流路と流体の流動方向の切替手段とを備えた構成になっている。流体分配部121の切替手段は、例えば、電磁弁、リレー、半導体素子等である。流体分配部121は、系統ごとに出力流体510の供給開始と供給停止を切り替えることができる。流体分配部121は、系統ごとに、任意の電磁弁120aを開閉することで、流体500を注入するアクチュエータ110aの空間を切り替える。これにより、流体分配部121は、流体圧駆動機構110に設けられた該当系統のアクチュエータ110aの駆動量(作動量)を調整して、該当系統のアクチュエータ110aを調整された駆動量分だけ駆動させる。そして、流体分配部121は、作業装置100に供給される流体500を系統ごとに分配して出力流体510として流体圧駆動機構110に供給する。流体圧駆動機構110は、供給された出力流体510に応じて駆動する。
【0074】
このような遠隔作業システム1Aは、流体信号502に基づいて出力調整部132から流体分配部121に出力電力610を出力することで、流体分配部121を制御する。そして、遠隔作業システム1Aは、作業装置100の複数の系統を持つ流体圧駆動機構110の動作を制御する。つまり、遠隔作業システム1Aは、単一の流路しか持たない流体伝達経路310で、流体501を作業装置100Aに一括して供給した上で、複数の系統を持つ流体圧駆動機構110の動作を系統ごとに制御する。このような遠隔作業システム1Aは、単一の流路しか持たない流体伝達経路310で、複数の系統を備えた流体圧駆動機構110を良好に制御することができる。そのため、遠隔作業システム1Aは、ケーブル300の重量と太さをさらに減らして、作業装置100Aの移動性をさらに向上させることができる。
【0075】
本実施形態に係る遠隔作業システム1Aは、以下のような特徴を有する構成にすることができる。
(1)
図11に示すように、本実施形態に係る遠隔作業システム1Aにおいて、流体圧駆動機構110は、複数の系統を有する。電動機構120は、1つの流路から複数の流路に流体500を分配する流体分配部121を有する。電動機構120は、流体伝達経路310で供給される流体500を流体分配部121で流体圧駆動機構110の系統ごとに分配する。
【0076】
本実施形態に係る遠隔作業システム1Aは、単一の流路しか持たない流体伝達経路310で、複数の系統を備えた流体圧駆動機構110を制御することができる。そのため、遠隔作業システム1Aは、ケーブル300の重量と太さをさらに減らして、作業装置100Aの移動性をさらに向上させることができる。
【0077】
(2)
図13A及び
図13Bに示すように、本実施形態に係る遠隔作業システム1Aにおいて、作業装置100は、流体500を流す流路を開閉する複数の電磁弁120aと、関節部の駆動に用いる複数のアクチュエータ110aと、を有する。本実施形態に係る遠隔作業システム1Aは、実施形態1に係る遠隔作業システム1(
図10)と同様に、電磁弁120aを開放してアクチュエータ110aの駆動を開始する。その後に、遠隔作業システム1Aは、任意の時間間隔で電磁弁120aの閉止と開放を繰り返し行い、さらに、電磁弁120aの閉止中にアクチュエータ110aの駆動の停止を行う。
【0078】
このような本実施形態に係る遠隔作業システム1Aは、実施形態1に係る遠隔作業システム1と同様に、アクチュエータ110aにかかる負荷Fにより、流体501に付加する印加圧の制御が阻害されることを回避することができる。そのため、本実施形態2に係る遠隔作業システム1Aは、作業装置100Aの動作を適正に制御することができる。このような本実施形態に係る遠隔作業システム1Aは、アクチュエータ110aの駆動開始後に、アクチュエータ110aを停止できなくなることを回避することができる。
【0079】
以上の通り、本実施形態2に係る遠隔作業システム1Aによれば、実施形態1に係る遠隔作業システム1と同様に、作業装置100の移動性を向上させることができる。しかも、本実施形態2に係る遠隔作業システム1Aによれば、実施形態1に係る遠隔作業システム1に比べて、単一の流路しか持たない流体伝達経路310で、複数の系統を備えた流体圧駆動機構110を制御することができる。そのため、遠隔作業システム1Aは、ケーブル300の重量と太さをさらに減らす一方で可撓性を増して、作業装置100Aの移動性をさらに向上させることができる。
【0080】
[実施形態3]
流体信号502としては、例えば、圧力、振動、音、光、その他を用いることができる。そのうち、流体信号502として圧力を用いた場合に、アクチュエータ110aにかかる負荷Fにより、流体501に付加する印加圧の制御を阻害する現象が発生する可能性がある。前記した実施形態2に係る遠隔作業システム1A(
図12)は、電磁弁120aの開放後に、電磁弁120aの閉止と開放とを繰り返し行い、アクチュエータ110aをパルス状に駆動することで、このような現象の発生を回避している。
【0081】
これに対して、本実施形態3では、作業装置100Bの機構制御部130に背圧弁131bを設け、背圧弁131bを利用することで、このような現象の発生を回避する遠隔作業システム1Bを提供する。
【0082】
以下、
図14を参照して、本実施形態3に係る遠隔作業システム1Bの構成について説明する。
図14は、本実施形態3に係る遠隔作業システム1Bの内部の概略構成図である。
【0083】
図14に示すように、本実施形態3に係る遠隔作業システム1Bは、実施形態2に係る遠隔作業システム1A(
図12)と比較すると、以下の点で相違する。
(1)制御装置200Bは、流体信号発信手段230に加圧手段231と減圧手段232とを有する点。
(2)作業装置100Bは、機構制御部130に圧力検知手段131aと背圧弁131bを有する点。
(3)ケーブル300は、流体伝達経路310に、後記する流体501aを伝達する経路と後記する流体501bを伝達する経路とを有する点。
【0084】
加圧手段231は、目標値に達するまで流体伝達経路310に流体501を注入することで、流体501の印可圧を増やす構成要素である。
【0085】
図15Aは、加圧手段231の概略構成図である。
図15Aに示すように、加圧手段231は、流体500を加圧して、流体圧力源210からケーブル300に流体500を送る。
図15Bは、加圧手段231の動作説明図である。
図15Bは、加圧手段231が設定値まで流体500を加圧していることを示している。ここで、「設定値」は、背圧弁131bを自動的に閉止させるために設定されたものである。背圧弁131bは、自動閉止用に、運用に応じて任意の値の設定値が設定される。以下、「設定値」を「閉止用設定値」と称する場合がある。
【0086】
図14に戻り、減圧手段232は、流体伝達経路310から流体501を排出することで、流体501の印可圧を減らす構成要素である。
【0087】
図16Aは、減圧手段232の概略構成図である。
図16Aに示すように、減圧手段232は、流体500を減圧して、流体圧力源210からケーブル300に流体500を送る。
図16Bは、減圧手段232の動作説明図である。
図16Bは、減圧手段232が任意の値まで流体500を減圧していることを示している。
【0088】
図14に戻り、加圧手段231と減圧手段232は、例えば、減圧弁、背圧弁、電磁弁等で構成される。以下、加圧手段231によって印可圧が増やされた流体501を「流体501a」と称し、流体501aに付加された流体信号502を「流体信号502a」と称する。また、減圧手段232によって印可圧が減らされた流体501を「流体501b」と称し、流体501bに付加された流体信号502を「流体信号502b」と称する。
【0089】
圧力検知手段131aは、流体伝達経路310の流体500,501の圧力を検知する構成要素である。圧力検知手段131aは、例えば、圧力スイッチ等の機械式圧力検出器や半導体センサ等の電子式圧力検出器で構成される。
【0090】
背圧弁131bは、流体501の圧力維持用の弁である。背圧弁131bは、圧力検知手段131a側の一次側流路(図示せず)と流体分配部121側の二次側流路(図示せず)との間に配置される。背圧弁131bは、一次側流路内の流体501の圧力を事前に設定した値以上に保つ圧力維持用の構成要素である。背圧弁131bは、一次側流路内の流体501の圧力が設定値より大きい場合に開放して、一次側流路から二次側流路に流体501を通過させる。また、背圧弁131bは、一次側流路内の流体501の圧力が設定値以下である場合に閉止して、一次側流路から二次側流路への流体501の流動を遮断する。
【0091】
流体501aを伝達する経路と流体501bを伝達する経路は、例えば、水圧チューブで構成され、系統ごとに複数設けられている。
【0092】
図17は、遠隔作業システム1Bの動作説明図である。
図17に示すように、作業装置100Bは、圧力検知手段131aと電磁弁120aとの間に背圧弁131bを有する。遠隔作業システム1Bは、
図8に示す遠隔作業システム1と同様に動作する。このとき、遠隔作業システム1Bでは、電動機構120は、圧力検知手段131aにより流体信号502から検知された電磁弁120aの開閉信号成分に応じて、系統ごとに電磁弁120aの開閉量を制御する。その際に、制御装置200は、電磁弁120aと背圧弁131bのいずれか一方が閉止していれば、アクチュエータ110aにかかる負荷Fにより、流体501に付加する印加圧が変動することを抑制することができる。そのため、遠隔作業システム1Bは、アクチュエータ110aにかかる負荷Fにより、流体501に付加する印加圧の制御を阻害する現象が発生することを回避することができる。
【0093】
図18は、電磁弁120aと背圧弁131bの動作説明図である。
図18の左側の例は、背圧弁131bを設けていない場合において、制御装置200Bの流体信号発信手段230が印加圧制御を行うことが可能であるか否かの状態を示している。一方、
図18の右側の例は、背圧弁131bを設けている場合において、制御装置200Bの流体信号発信手段230が印加圧制御を行うことが可能であるか否かの状態を示している。
【0094】
図18の左側の例と
図18の右側の例では、ともに、電磁弁120aが閉止している場合に、流体信号発信手段230が印加圧制御を行うことができる。しかしながら、
図18の左側の例では、電磁弁120aが開放している場合に、流体信号発信手段230が印加圧制御を行うことができない。そのため、この場合に、制御装置200Bは、流体信号発信手段230で電磁弁120aを開放させる信号成分を含む流体信号502を生成することができない。これに対して、
図18の右側の例では、電磁弁120aが開放している場合であっても、背圧弁131bが閉止していれば、流体信号発信手段230が印加圧制御を行うことができる。そのため、この場合に、制御装置200Bは、流体信号発信手段230で電磁弁120aを開放させる信号成分を含む流体信号502を生成することができる。つまり、遠隔作業システム1Bは、流体501の圧力が閉止用設定値以下になると、背圧弁131bが自動的に閉止する。これにより、遠隔作業システム1Bは、アクチュエータ110aにかかる負荷Fにより、流体501に付加する印加圧の制御を阻害する現象が発生することを回避する。このような遠隔作業システム1Bは、閉止用設定値以下の圧力領域を活用することで、電動機構120への電磁弁120aの閉止信号の送信が可能になる。
【0095】
ここで、
図17に示すように、作業装置100Bは、流体信号検知部131の圧力検知手段131aで検知される圧力の実測値Pを計測して流体信号502に含まれる電磁弁120aの開閉信号成分を検知する。そして、作業装置100Bは、検知された電磁弁120aの開閉信号成分に基づいて電磁弁120aを開閉する。
【0096】
その際に、電磁弁120aが開放されて流体500が制御装置200Bから作業装置100Bに供給されると、背圧弁131bを設けていない場合と背圧弁131bを設けている場合とで、圧力の実測値が
図19Aに示す例又は
図19Bに示す例のように変化する。また、背圧弁131bを設けていない場合と背圧弁131bを設けている場合とで、作業装置100の動作が
図20Aに示す例又は
図20Bに示す例のように変化する。
【0097】
図19Aは、背圧弁131bを設けていない場合の流体信号502の説明図である。
図19Bは、背圧弁131bを設けている場合の流体信号502の説明図である。
図19A及び
図19Bは、加圧手段231又は減圧手段232で設定される圧力の目標値P0を実線で示し、圧力検知手段131aで検知される圧力の実測値Pを二点鎖線で示している。また、
図20Aは、背圧弁131bを設けていない場合の作業装置100Bの動作説明図である。
図20Bは、背圧弁131bを設けている場合の作業装置100Bの動作説明図である。
図20A及び
図20Bは、加圧手段231又は減圧手段232で設定される圧力の目標値P0を実線で示し、圧力検知手段131aで検知される圧力の実測値Pを破線で示している。
【0098】
図19Aに示すように、背圧弁131bを設けていない場合に、流体500が作業装置100Bに供給されると、圧力検知手段131aで検知される圧力の実測値Pがアクチュエータ110aにかかる負荷と釣り合う値に低下する。
図20Aは、この場合の作業装置100の動作を示している。
図20Aに示す例では、電磁弁120aを開放したときに、圧力の実測値Pが低下している。この場合に、流体信号502の中に電磁弁120aの閉止信号成分が含まれていても、作業装置100Bは閉止信号成分を検知できない。そのため、背圧弁131bを設けていない場合に、作業装置100Bは、電磁弁120aの開閉制御を適切に行うことができない。
【0099】
これに対して、
図19Bに示すように、背圧弁131bを設けている場合に、流体500が作業装置100Bに供給されると、圧力検知手段131aで検知される圧力の実測値Pが背圧弁131bの設定値付近で多段階に変化する。
図20Bは、この場合の作業装置100の動作を示している。
図20Bに示す例では、電磁弁120aを開放したときに、圧力の実測値Pが、背圧弁131bの閉止用設定値で維持されるように推移する。その後に、圧力の実測値Pが、流体信号502に含まれる電磁弁120aの閉止信号成分に追従して任意の値まで低下している。このように、流体信号502の中に電磁弁120aの閉止信号成分が含まれている場合に、作業装置100Bは閉止信号成分を検知できる。そのため、背圧弁131bを設けている場合に、作業装置100Bは、電磁弁120aの開閉制御を適切に行うことができる。
【0100】
以下に、このような作業装置100Bの動作について補足する。なお、流体500に付加する印加圧がアクチュエータ110a(
図17)にかかる想定最大負荷よりも小さい場合に、流体500,501の供給開始時に、アクチュエータ110aが本来の駆動方向とは逆向きに駆動する現象が発生する可能性がある。このような現象の発生を回避するために、遠隔作業システム1Bは、流体500,501の供給開始前に、アクチュエータ110aにかかる想定最大負荷よりも十分に大きな値に印可圧を設定する。そのため、ここでは、流体500,501の供給開始後に、印可圧が上がる場合については説明せずに、印可圧が下がる場合についてのみ説明する。
【0101】
作業装置100Bの制御装置200は、背圧弁131bの有無によらず、流体圧駆動機構110のいずれの系統にも出力流体510を供給していない状態では、流体501を加圧したり減圧したりすることができる。つまり、流体伝達経路310の片側が流体分配部121で閉止された固定壁面の状態において、制御装置200は、加圧手段231と減圧手段232により、流体伝達経路310に対して流体501を注入したり排出したりすることができる。これにより、制御装置200は、印可圧制御(任意の値に流体伝達経路310の印可圧を調整する制御)を行うことができる。そして、制御装置200は、印可圧制御された流体信号502を作業装置100に送信する。
【0102】
しかしながら、背圧弁131bを設けていない場合に、1つ以上の系統に流体500,501の供給を開始すると、流体伝達経路310の片側が流体圧駆動機構110の流体圧シリンダ等の移動壁面となる。液圧シリンダの移動壁面には、流体伝達経路310の印可圧とは別に、流体圧駆動機構110に対する外部負荷が加わっている。そのため、印可圧と外部負荷の大小関係によって移動壁面が移動し、釣り合ったところで移動壁面が静止する。この際の印可圧は、外部負荷と釣り合う値になり、事前に指定することはできない。
【0103】
背圧弁131bを設けていない場合に、加圧手段231又は減圧手段232が流体伝達経路310に対して流体500を注入したり排出したりすると、流体圧駆動機構110の移動壁面が移動する。この場合に、遠隔作業システム1Bは、流体501の印可圧を変更することができない。そのため、遠隔作業システム1Bは、印可圧制御された流体信号502を制御装置200Bから作業装置100Bに送信することができない。
【0104】
これに対して、背圧弁131bを設けている場合に、流体500,501の供給を開始した後に、流体501の印可圧が背圧弁131bの閉止用設定値まで減少すると、背圧弁131bが閉止する。このとき、流体501の印可圧は、事前に設定した背圧弁131bの閉止用設定値で維持される。この後、さらに、流体501の印可圧が背圧弁131bの設定値以下の圧力領域になると、背圧弁131bが閉止状態を維持する。このとき、流体500,501の供給開始前と同様に、流体伝達経路310の片側は固定壁面となる。この場合に、遠隔作業システム1Bは、加圧手段231と減圧手段232により、流体501の印可圧を任意の値に制御することができる。そのため、遠隔作業システム1Bは、印可圧制御された流体信号502を制御装置200Bから作業装置100Bに送信することができる。
【0105】
このような遠隔作業システム1Bでは、例えば、任意に設定された閾値で作業装置100の背圧弁131bが自動的に閉止する。その後に、制御装置200の減圧手段232が減圧する。さらにその後に、制御装置200の加圧手段231が増圧する。これにより、流体信号502の圧力を元の状態に戻すことができる。
【0106】
本実施形態に係る遠隔作業システム1Bは、以下のような特徴を有する構成にすることができる。
(1)
図14に示すように、本実施形態に係る遠隔作業システム1Bは、流体500を流す流路を開閉する複数の電磁弁120aを有する。制御装置200の流体信号発信手段230は、流体信号502の圧力を増やす加圧手段231と、流体信号502の圧力を減らす減圧手段232と、を有する。流体信号発信手段230は、加圧手段231と減圧手段232により、流体伝達経路310の内部の流体501の圧力を変更することで、流体信号502の印可圧を制御する。作業装置100の機構制御部130は、印可圧が任意の設定値以下の場合に自動的に閉止する背圧弁131bと、流体信号502の印可圧を検知する圧力検知手段131aと、を有する。機構制御部130は、背圧弁131bが閉止することで、設定値以下の圧力領域で電動機構120への電磁弁120aの閉止信号の送信が可能になる。
【0107】
このような本実施形態に係る遠隔作業システム1Bは、流体分配部121で流体圧駆動機構110に流体500を供給している状態であっても、流体信号502を送信することができる。
【0108】
(2)
図14に示すように、本実施形態に係る遠隔作業システム1Bにおいて、機構制御部130は、流体信号502の圧力に応じて電力伝達経路320で供給される電力を調整して電動機構120へ出力する出力調整部132を有する。背圧弁131bは、圧力検知手段131aと流体分配部121との間に配置される。
【0109】
本実施形態に係る遠隔作業システム1Bは、流体信号502の圧力に応じて電力伝達経路320で供給される電力を調整して電動機構120へ出力することができる。このような本実施形態に係る遠隔作業システム1Bは、作業装置100の電動機構120を細かく制御することができる。
【0110】
(3)
図20Bに示すように、本実施形態に係る遠隔作業システム1Bにおいて、電磁弁120aの閉止信号の値は、背圧弁131bの閉止用の設定値以下の圧力値に割り当てられている。作業装置100の機構制御部130は、電磁弁120aの開放中であっても、前記設定値以下の圧力領域で電動機構120への電磁弁120aの閉止信号の送信が可能になる。
【0111】
このような本実施形態に係る遠隔作業システム1Bは、電磁弁120aの開放中であっても、背圧弁131bの閉止用の設定値以下の圧力領域で電動機構120への電磁弁120aの閉止信号を送信することができる。
【0112】
以上の通り、本実施形態3に係る遠隔作業システム1Bによれば、実施形態1に係る遠隔作業システム1と同様に、作業装置100の移動性を向上させることができる。しかも、本実施形態3に係る遠隔作業システム1Bによれば、実施形態1に係る遠隔作業システム1に比べて、背圧弁131bの設定値未満の圧力領域を使って、加圧手段231や減圧手段232で印可圧を制御することができる。つまり流体分配部121が流体圧駆動機構110に対して出力流体510を供給している状態でも、加圧手段231や減圧手段232で印可圧を制御できる。そのため、流体伝達経路310の印可圧信号として流体信号502を作業装置100に良好に伝達して、流体圧駆動機構110を安定して制御することができる。
【0113】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0114】
また、例えば、前記した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路にて設計する等によってハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、ファイル等の情報は、半導体メモリ、HDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記録装置、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0115】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1,1A,1B,1old 遠隔作業システム
2 操縦者
10 操作装置
100,100old 作業装置
101 関節部
110 流体圧駆動機構
110a アクチュエータ
111 流体圧シリンダ
111a,111b,112a,112b 空間
111c ピストン
112 流体圧モータ
112c 回転軸
120 電動機構
120a,213a 電磁弁(弁)
121 流体分配部
130 機構制御部
131 流体信号検知部
131a 圧力検知手段
131b 背圧弁
132 出力調整部
200,200old 制御装置
210 流体圧力源
211 タンク
212 ポンプ
220 電源
230 流体信号発信手段
230a 印加圧制御部
230b 印加圧切替手段
231 加圧手段
232 減圧手段
300,300old ケーブル
310 流体伝達経路
320 電力伝達経路
500,501,501a,501b 流体
502,502a,502b 流体信号
510 出力流体
600 電力
610 出力電力