(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009722
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ポリアスパラティック塗料組成物、及び塗膜
(51)【国際特許分類】
C09D 175/02 20060101AFI20250109BHJP
C08G 18/78 20060101ALI20250109BHJP
C08G 18/72 20060101ALI20250109BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20250109BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20250109BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20250109BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20250109BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20250109BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C09D175/02
C08G18/78
C08G18/72 050
C08G18/73
C08G18/75
C08G18/42 069
C08G18/10
C08G18/79 020
C08G18/32 050
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209206
(22)【出願日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2023108593
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】夏海 樹明
(72)【発明者】
【氏名】東 昌嗣
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J034CA02
4J034CA03
4J034CA04
4J034CA05
4J034CA14
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4J038KA09
4J038NA04
4J038NA11
4J038PB05
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】得られる塗膜の高い硬度、耐薬品性を維持しながら、柔軟性および基材への密着性が優れるポリアスパラティック塗料組成物、及び塗膜を提供する。
【解決手段】アスパラギン酸エステル化合物(A)と、ポリイソシアネート組成物(B)及び(C)とを含み、(B)に対する(C)の質量比が5/95~95/5であり、(B)は脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネートから誘導され、イソシアヌレート基を、全体の官能基のモル数の総和を100%としたとき、30%以上含み、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比が1/99~70/30、重量平均分子量が500以上1200以下、25℃粘度が50~1500mPa・sであり、(C)は脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネートと数平均分子量500以上1500以下のポリカプロラクトンポリオールとから誘導され、イソシアネート基含有率が15質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスパラギン酸エステル化合物(A)と、第1のポリイソシアネート組成物(B)と、第2のポリイソシアネート組成物(C)とを含み、
前記第1のポリイソシアネート組成物(B)に対する前記第2のポリイソシアネート組成物(C)の質量比が5/95~95/5であり、
前記アスパラギン酸エステル化合物(A)は、下記一般式(I)で表されるアスパラギン酸エステル化合物であり、
【化1】
(一般式(I)中、X
11は、n11価のポリアミンの第一級アミノ基を除去することによって得られたn11価の有機基である。R
11及びR
12は反応条件下でイソシアネート基に対して不活性である同じ又は異なった有機基である。n11は2以上の整数である。)
前記第1のポリイソシアネート組成物(B)は、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート組成物であり、
イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、ウレトンイミノ基、ウレタン基、ビウレット基、ウレア基及びイミノオキサジアジンジオン基を少なくとも2種以上を含み、
B-a)下記一般式(II)で表される構造を有するイソシアヌレート基を、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、ウレトンイミノ基、ウレタン基、ビウレット基、ウレア基及びイミノオキサジアジンジオン基のモル数の総和を100%としたとき、30%以上含むこと、
【化2】
B-b)炭素数が1~20のモノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99~70/30であること、
B-c)重量平均分子量が500以上1200以下であること、及び、
B-d)無溶剤の条件で25℃における粘度が50mPa・s以上1500mPa・s以下であることを満たすポリイソシアネート組成物であり、
前記第2のポリイソシアネート組成物(C)は、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートと、数平均分子量500以上1500以下のポリカプロラクトンポリオールとから誘導され、イソシアネート基含有率が15質量%以下であるポリイソシアネート組成物である、ポリアスパラティック塗料組成物。
【請求項2】
前記第1のポリイソシアネート組成物(B)及び前記第2のポリイソシアネート組成物(C)のそれぞれの平均イソシアネート官能基数は、2.0以上4.0以下である、請求項1に記載のポリアスパラティック塗料組成物。
【請求項3】
前記アスパラギン酸エステル化合物(A)のアミノ基に対する、前記第1のポリイソシアネート組成物(B)及び前記第2のポリイソシアネート組成物(C)のイソシアネート基のモル比が1/10以上10/1以下である、請求項1又は2に記載のポリアスパラティック塗料組成物。
【請求項4】
前記第1のポリイソシアネート組成物(B)及び前記第2のポリイソシアネート組成物(C)の前記脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む、請求項1又は2に記載のポリアスパラティック塗料組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のポリアスパラティック塗料組成物を硬化させてなる、塗膜。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリアスパラティック塗料組成物を硬化させてなる、引張破断応力が7MPa以上、伸び率40%以上である塗膜。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のポリアスパラティック塗料組成物を硬化させてなる、ケーニッヒ硬度が40回以上である塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアスパラティック塗料組成物、及び塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレア塗料組成物のうち脂肪族系であるポリアスパラティック塗料組成物は、アミノ基を含有するアスパラギン酸エステル化合物並びにイソシアネート基を含有する脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネート組成物から形成される。芳香族系ポリウレア塗料組成物の欠点である紫外線暴露で塗膜黄変することが大きく低減されて、従来から床材、防水材等の範囲な用途で利用されている。
【0003】
アスパラギン酸エステル化合物は、ポリウレタン塗料組成物の主剤ポリオールと比較して粘度が低く、ポリアスパラティック塗料組成物中の希釈溶剤を大幅に低減させられるために、ハイソリッド処方や無溶剤処方とすることが可能である。また、アスパラギン酸エステル化合物のアミノ基と脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基との反応性が速いために、ポリアスパラティック塗料組成物はポリウレタン塗料組成物と比較して室温下でも硬化速度が速く、機械強度に優れているという特長を有している。
【0004】
例えば、特許文献1には、アスパラギン酸エステル骨格を有する第二級アミノ基を含有するポリアミン成分と、脂肪族ポリイソシアネート組成物でイソシアネート基を含有するポリイソシアネート成分とからなる。脂肪族系ポリウレア塗料組成物であるポリアスパラティック塗料組成物が開示されている。当該塗料組成物は比較的にポットライフが長く、塗膜硬度が高いことから高圧衝突混合スプレー機を使用せずに施工可能であることという特徴を有している。
【0005】
また、特許文献2には、ポリアスパラギン酸エステル化合物と、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基、ウレトジオン基、アロファネート基、及びビウレット基の含有量(モル%)が所定の関係にあるポリイソシアネート組成物と、を含有するポリアスパラティック塗料組成物が開示されている。当該ポリアスパラティック塗料組成物において、前記ポリイソシアネート組成物はハイソリッド処方や無溶剤処方に適した低粘度で、硬化性や乾燥性を維持しつつ、当該ポリアスパラティック塗料組成物を使用した塗膜が耐薬品性や硬度および耐候性にも優れるという特長を有している。
【0006】
さらに、特許文献3には、ポリアスパラティック塗料組成物の粘度を最適化し、無溶剤条件下における粘度及びポットライフが良好であり、かつ、塗膜としたときの外観、耐薬品、耐衝撃性、及び耐擦り傷性に優れるという特長を有している。
【0007】
しかしながら、特許文献2または特許文献3に提案されるようなポリアスパラティック塗料組成物については、基材への密着性と塗膜としたときの柔軟性について何ら言及されていない。また、粘度及びポットライフに関して更なる改善の余地を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3-43472号公報
【特許文献2】国際公開第2018/163953号
【特許文献3】特開2022-66853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来ポリアスパラティックの塗膜は頑丈ゆえに柔軟性がなく、使用用途が床材、防水材に限定されている。また、一般的なアクリル、シリコーン、フッ素系のポリオール系塗料より基材への密着性が弱く、特に金属材料への密着性が問題視された。
【0010】
そこで本発明は、得られる塗膜の高い硬度、耐薬品性を維持しながら、柔軟性および基材への密着性に優れるポリアスパラティック塗料組成物、及び塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1] アスパラギン酸エステル化合物(A)と、第1のポリイソシアネート組成物(B)と、第2のポリイソシアネート組成物(C)とを含み、
前記第1のポリイソシアネート組成物(B)に対する前記第2のポリイソシアネート組成物(C)の質量比が5/95~95/5であり、
前記アスパラギン酸エステル化合物(A)は、下記一般式(I)で表されるアスパラギン酸エステル化合物であり、
【0012】
【0013】
(一般式(I)中、X11は、n11価のポリアミンの第一級アミノ基を除去することによって得られたn11価の有機基である。R11及びR12は反応条件下でイソシアネート基に対して不活性である同じ又は異なった有機基である。n11は2以上の整数である。)
前記第1のポリイソシアネート組成物(B)は、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート組成物であり、
イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、ウレトンイミノ基、ウレタン基、ビウレット基、ウレア基及びイミノオキサジアジンジオン基を少なくとも2種以上を含み、
B-a)下記一般式(II)で表される構造を有するイソシアヌレート基を、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、ウレトンイミノ基、ウレタン基、ビウレット基、ウレア基及びイミノオキサジアジンジオン基のモル数の総和を100%としたとき、30%以上含むこと、
【0014】
【0015】
B-b)炭素数が1~20のモノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99~70/30であること、
B-c)重量平均分子量が500以上1200以下であること、及び、
B-d)無溶剤の条件で25℃における粘度が50mPa・s以上1500mPa・s以下であることを満たすポリイソシアネート組成物であり、
前記第2のポリイソシアネート組成物(C)は、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートと、数平均分子量500以上1500以下のポリカプロラクトンポリオールとから誘導され、イソシアネート基含有率が15質量%以下であるポリイソシアネート組成物である、ポリアスパラティック塗料組成物。
[2] 前記第1のポリイソシアネート組成物(B)及び前記第2のポリイソシアネート組成物(C)のそれぞれの平均イソシアネート官能基数は、2.0以上4.0以下である、[1]に記載のポリアスパラティック塗料組成物。
[3] 前記アスパラギン酸エステル化合物(A)のアミノ基に対する、前記第1のポリイソシアネート組成物(B)及び前記第2のポリイソシアネート組成物(C)のイソシアネート基のモル比が1/10以上10/1以下である、[1]又は[2]に記載のポリアスパラティック塗料組成物。
[4] 前記第1のポリイソシアネート組成物(B)及び前記第2のポリイソシアネート組成物(C)の前記脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む、[1]又は[2]に記載のポリアスパラティック塗料組成物。
[5] [1]又は[2]に記載のポリアスパラティック塗料組成物を硬化させてなる、塗膜。
[6] [1]又は[2]に記載のポリアスパラティック塗料組成物を硬化させてなる、引張破断応力が7MPa以上、伸び率40%以上である塗膜。
[7] [1]又は[2]に記載のポリアスパラティック塗料組成物を硬化させてなる、ケーニッヒ硬度が40回以上である塗膜。
【発明の効果】
【0016】
本態様のポリアスパラティック塗料組成物によれば、塗膜の硬度と耐薬品を維持しながら、高い破断応力と高伸び率を提供でき、コンクリートなど基材のクラック、ひび割れや、プラスチックなど柔らかい基材の変形に追従することができる。また、塗布基材への密着性を向上し、特に従来使用困難な金属類へ密着性を改善した。さらに、より混合しやすい低粘度と長いポットライフによる塗工作業の利便性を改善することができるだけでなく、塗工外観の改善にも効果がある。従って、従来の従来の床材、防水材の用途のみならず、接着剤、粘着剤、エラストマー、シーリング材、フォーム、繊維処理、合皮処理、表面処理剤などとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0018】
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物(以下、「イソシアネートモノマー」と略記する)が複数結合した反応物を意味する。
【0019】
<ポリアスパラティック塗料組成物>
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、アスパラギン酸エステル化合物(A)と、第1のポリイソシアネート組成物(B)と、第2のポリイソシアネート組成物(C)とを含み、前記第1のポリイソシアネート組成物(B)に対する前記第2のポリイソシアネート組成物(C)の質量比が5/95~95/5である。前記アスパラギン酸エステル化合物(A)は、下記一般式(I)で表されるアスパラギン酸エステル化合物である。
【0020】
【0021】
(一般式(I)中、X11は、n11価のポリアミンの第一級アミノ基を除去することによって得られたn11価の有機基である。R11及びR12は反応条件下でイソシアネート基に対して不活性である同じ又は異なった有機基である。n11は2以上の整数である。)
【0022】
前記第1のポリイソシアネート組成物(B)は、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート組成物であり、
イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、ウレトンイミノ基、ウレタン基、ビウレット基、ウレア基及びイミノオキサジアジンジオン基を少なくとも2種以上を含み、
B-a)下記一般式(II)で表される構造を有するイソシアヌレート基を、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、ウレトンイミノ基、ウレタン基、ビウレット基、ウレア基及びイミノオキサジアジンジオン基のモル数の総和を100%としたとき、30%以上含むこと、
B-b)炭素数が1~20のモノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99~70/30であること、
B-c)重量平均分子量が500以上1200以下であること、及び、
B-d)無溶剤の条件で25℃における粘度が50mPa・s以上1500mPa・s以下であることを満たすポリイソシアネート組成物である。
【0023】
【0024】
前記第2のポリイソシアネート組成物(C)は、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートと、数平均分子量500以上1500以下のポリカプロラクトンポリオールとから誘導され、イソシアネート基含有率が15質量%以下であるポリイソシアネート組成物である。
【0025】
<アスパラギン酸エステル化合物(A)>
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、主剤成分としてアスパラギン酸エステル化合物(A)を含む。アスパラギン酸エステル化合物(A)は、前記一般式(I)で表される化合物である。
【0026】
前記一般式(I)中、X11は、n11価のポリアミンの第一級アミノ基を除去することによって得られたn11価の有機基である。R11及びR12は反応条件下でイソシアネート基に対して不活性である同じ又は異なった有機基である。n11は2以上の整数である。
【0027】
式(I)中のX11は、特に限定されないが、耐黄変性の観点から、芳香族基を有さない脂肪族及び/又は脂環族ポリアミンに基づく有機基であることが好ましく、例えば、下記群から選ばれるn11価のポリアミン:エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、2,4-及び/又は2,6-ヘキサヒドロトリレンジアミン、2,4’-及び/又は4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4,4’-トリアミノ-5-メチルジシクロヘキシルメタン、並びに148以上6000以下の数平均分子量を有し、第一級アミノ基が脂肪族的に結合したポリエーテルポリアミン等に基づく有機基である。
中でも、X11としては、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、又は3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンに基づく有機基であることが好ましい。また、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、又は3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンに基づく有機基であることより好ましい。
【0028】
式(I)中のR11及びR12に規定した、「反応条件下でイソシアネート基に対して不活性」とは、これらの基が、水酸基、アミノ基、又はチオール基のようなツェレビチノフ活性水素含有基(CH酸性化合物)を有さないことを意味する。
R11及びR12は相互に独立に、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、又はブチル基であることがより好ましい。
【0029】
式(I)中のn11は、2以上6以下の整数であることが好ましく、2以上4以下の整数であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
【0030】
好ましいアスパラギン酸エステル化合物(A)としては、例えば、第二級アミノ基を有するアスパラギン酸2分子と4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン1分子から誘導されるアスパラギン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0031】
アスパラギン酸エステル化合物(A)は市販品を用いてもよい。アスパラギン酸エステル化合物(A)の市販品としては、例えば、Evonik社製の商品名「Amicure IC-221」(アミン価188mgKOH/樹脂g、粘度450mPa.s(25℃測定代表値))、「Amicure IC-321」(アミン価190mgKOH/樹脂g、粘度450mPa.s(25℃測定代表値))、「Amicure IC-322」(アミン価189mgKOH/樹脂g、粘度150mPa.s(25℃測定代表値));Feiyang社製の商品名「Feispartic F420」(アミン価192mgKOH/樹脂g、粘度1450mPa.s(25℃測定代表値))、「Feispartic F520」(アミン価189mgKOH/樹脂g、粘度1400mPa.s(25℃測定代表値))等が挙げられる。
【0032】
上述したアスパラギン酸エステル化合物(A)は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
中でも、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、反応性が互いに異なる2種類のアスパラギン酸エステル化合物(A)を組み合わせて配合することが好ましい。これにより、ポットライフをより良好なものとし、且つ、得られる塗膜の外観がより良好なものとなる。
なお、ここでいう反応性とは、硬化剤成分(例えば、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基)との反応性を意味する。アスパラギン酸エステル化合物(A)の硬化剤成分との反応性はアスパラギン酸エステル化合物のアミン価を指標として評価することができる。
【0033】
アスパラギン酸エステル化合物(A)の製造方法は特に限定されないが、例えば、下記式(IV)で表される第一級ポリアミンと、下記式(V)で表されるマレイン酸エステル又はフマル酸エステルとの反応によって製造される。
【0034】
X11-[NH2]n11 (IV)
R11OOC-CH=CH-COOR12 (V)
【0035】
(上記式(IV)中、X11及びn11は、式(I)で表されるものと同義であり、上記式(V)中、R11及びR12は、式(I)で表されるものと同義である。)
【0036】
適当なポリアミンとしては、特に限定されないが、例えば、X11の基礎として上記したジアミンである。
【0037】
また、適当なマレイン酸エステル又はフマル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、式(I)中のR11及びR12に規定した基をR11及びR12として有するマレイン酸エステル又はフマル酸エステルである。中でも、R11及びR12が炭素数1以上10以下のアルキル基であるマレイン酸エステル又はフマル酸エステルが好ましく、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、又はフマル酸ジブチルがより好ましい。
【0038】
記載された出発物質からのアスパラギン酸エステル化合物(A)の調製は、0℃以上100℃以下の温度範囲で行なうことが好ましい。当該出発物質は、第一級アミノ基の各々において、少なくとも1つ、好ましくは1つだけオレフィン二重結合が存在するような比率で使用される。所望によって、反応後は蒸留することで、過剰に使用した出発原料を除去することができる。反応はバルクで、又は適当な溶剤(特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール又はジオキサン、或いはこのような溶剤の混合物)の存在下で行なうことができる。
【0039】
<第1のポリイソシアネート組成物(B)>
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、硬化剤成分として、第1のポリイソシアネート組成物(B)を含む。第1のポリイソシアネート組成物(B)は、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートから誘導されたもの、すなわち、2分子以上のジイソシアネートモノマーの反応物である。
【0040】
第1のポリイソシアネート組成物(B)は、イソシアヌレート基、アロファネート基、ウレトジオン基、ウレトンイミノ基、ウレタン基、ビウレット基、ウレア基及びイミノオキサジアジンジオン基(以下「全体の官能基」ともいう。)を少なくとも2種以上含む。
これらの官能基は、ジイソシアネートモノマーのイソシアネート基から誘導される窒素原子を少なくとも1つ有し、当該窒素原子にはジイソシアネートモノマーに由来する有機基が結合している。ジイソシアネートモノマーが脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートから選択される場合、窒素原子の隣にはメチレン基(-CH2-)、メチン基(-CH<)等を有する。
【0041】
第1のポリイソシアネート組成物(B)は、全体の官能基のモル数の総和を100%としたとき、前記一般式(II)で表されるイソシアヌレート基を30%以上含む。全体の官能基に対するイソシアヌレート基のモル比率が30%以上90%以下であることが好ましく、35%以上90%以下であることがより好ましく、40%以上90%以下含むことがより好ましく、45%以上90%以下含むことがより好ましく、50%以上90%以下含むことがより好ましく、55%以上85%以下含むことがより好ましく、57%以上85%以下含むことがより好ましい。
全体の官能基に対するイソシアヌレート基のモル比率が上記下限値以上であることで、耐薬品性が発現できる。一方で、上記上限値以下であることで、良好な塗膜外観とすることができる。
【0042】
第1のポリイソシアネート組成物(B)におけるイソシアヌレート基と全体の官能基のモル比は、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0043】
イソシアヌレート基のモル比を上記範囲内とする方法としては、例えば、後述する「第1のポリイソシアネート組成物(B)の製造方法」に記載の方法を適宜使用して調整する方法等が挙げられる。
【0044】
[ジイソシアネートモノマー]
第1のポリイソシアネート組成物(B)において、ジイソシアネートモノマーは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上である。
【0045】
脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、炭素数4以上30以下の脂肪族ジイソシアネートであることが好ましく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略す)、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。その中でも、工業的入手の容易さからHDIがより好ましい。上記に示した脂肪族ジイソシアネートは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
脂環族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、炭素数8以上30以下の脂環族ジイソシアネートであることが好ましく、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略す)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。その中でも、耐候性及び工業的入手の容易さから、IPDIがより好ましい。上記に示した脂環族ジイソシアネートは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ジイソシアネートモノマーとしては、1種以上の脂肪族ジイソシアネートと、1種以上の脂環族ジイソシアネートとを組み合わせて用いることもできる。
【0048】
[第1のポリイソシアネート組成物(B)の製造方法]
第1のポリイソシアネート組成物(B)の製造方法を以下に説明する。
第1のポリイソシアネート組成物(B)は、イソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応、アロファネート基を形成するアロファネート化反応を、過剰のジイソシアネートモノマー存在下で一度に製造して、反応終了後に、未反応のジイソシアネートモノマーを除去して得ることができる。
また、上記の反応を別々に行ない、それぞれ得たポリイソシアネートを特定比率で混合してもよい。ここで、製造の簡便さからは、上記反応を一度に行ないポリイソシアネートを得ることが好ましく、各官能基の含有量を自由に調整する観点からは、別々に製造した後に混合することが好ましい。
【0049】
ジイソシアネートモノマーからイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、一般的に使用されるイソシアヌレート化反応触媒が挙げられる。イソシアヌレート化反応触媒としては、特に限定されないが、好ましくは一般に塩基性を有するもので、例えば、(1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド;その酢酸塩、オクチル酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩、(2)トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド;その酢酸塩、オクチル酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩、(3)酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩、(4)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート、(5)ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、(6)マンニッヒ塩基類、(7)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、(8)トリブチルホスフィン等の燐系化合物が挙げられる。
【0050】
この中で、不要な副生成物を生じさせにくい観点から、4級アンモニウムの有機弱酸塩であることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩であることがより好ましい。
【0051】
上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、500質量ppmであることがより好ましく、100質量ppmであることがさらに好ましい。
一方、上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の下限値は、特別な限定はないが、例えば、10質量ppmであってもよい。
【0052】
イソシアヌレート化反応温度としては、50℃以上120℃以下であることが好ましく、60℃以上90℃以下であることがより好ましい。イソシアヌレート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0053】
所望の転化率(仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対する、イソシアヌレート化反応で生成したポリイソシアネートの質量の割合)になった時点で、イソシアヌレート化反応を、酸性化合物(例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等)の添加によって停止する。
【0054】
なお、ポリイソシアネートを得るためには、反応の進行を初期で停止する必要がある。しかしながら、イソシアヌレート化反応は、初期の反応速度が非常に速いため、反応の進行を初期で停止することに困難が伴い、反応条件、特に触媒の添加量及び添加方法は慎重に選択する必要がある。例えば、触媒の一定時間毎の分割添加方法等が好適なものとして推奨される。
【0055】
したがって、ポリイソシアネートを得るためのイソシアヌレート化反応の転化率は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
イソシアヌレート化反応の転化率が上記上限値以下であることによって、第1のポリイソシアネート組成物(B)をハイソリッド処方や無溶剤処方により適した低粘度とすることができる。
【0056】
また、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導する際に、上記イソシアネートモノマー以外に1価以上6価以下のアルコールを用いることができる。
使用することのできる1価以上6価以下のアルコールとしては、例えば、非重合性アルコール、重合性アルコールが挙げられる。
【0057】
非重合性アルコールとしては、例えば、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等の多価アルコールが挙げられる。
モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ノナノール、2-エチルブタノール、2,2-ジメチルヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、例えば、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0058】
重合性アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、重合性アルコールの水酸基平均数は、3以上8以下が好ましく、3以上6以下がより好ましく、3以上5以下がさらに好ましく、3又は4が特に好ましい。
重合性アルコールとして具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等、アクリルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類等が挙げられる。
【0059】
ジイソシアネートモノマーからアロファネート基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、特に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩;2-エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物;2-エチルヘキサン酸鉛等の有機鉛化合物;2-エチルヘキサン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;2-エチルヘキサン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム、2-エチルヘキサン酸ジルコニルが挙げられる。これらは、1種を単独又は2種以上を併用することができる。
【0060】
また、上述したイソシアヌレート化反応触媒もアロファネート化反応触媒となり得る。上述したイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行なう場合は、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートも当然のことながら生成する。アロファネート化反応触媒として、上述したイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応とイソシアヌレート反応を行なうことが経済的生産上、好ましい。
【0061】
上述したアロファネート化反応触媒は、仕込んだジイソシアネートモノマーの質量に対して、好ましくは10質量ppm以上1000質量ppm以下である。その下限値は、より好ましくは20質量ppmであり、さらに好ましくは40質量ppmであり、よりさらに好ましくは80質量ppmである。その上限値は、より好ましくは800質量ppmであり、さらに好ましくは600質量ppmであり、よりさらに好ましくは500質量ppm以下である。また、アロファネート化反応温度としては、好ましくは40℃以上180℃以下である。その下限値は、より好ましくは60℃であり、さらに好ましくは80℃であり、よりさらに好ましくは100℃である。その上限値は、より好ましくは160℃であり、さらに好ましくは140℃である。アロファネート化反応温度が40℃以上であることによって、反応速度を高く維持することが可能である傾向にある。アロファネート化反応温度が180℃以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等を効果的に抑制できる傾向にある。
【0062】
アロファネート基の形成に用いることのできるアルコールは、炭素数が1~20のモノアルコールであり、さらに好ましくは分子量200以下のモノアルコールである。その具体的な化合物は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。これらは1種を単独又は2種以上を併用してもよい。
【0063】
反応終了後の反応液から、未反応ジイソシアネートモノマーを薄膜蒸留、抽出等により除去し、本実施形態で用いられるポリイソシアネートを得ることができる。
【0064】
得られたポリイソシアネートに対して、例えば、貯蔵時の着色を抑制する目的で、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール等のヒンダードフェノール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、或いは、2種以上を併用してもよい。これらの添加量は、第1のポリイソシアネート組成物(B)の総質量に対して、10質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましい。
【0065】
[第1のポリイソシアネート組成物(B)の物性]
第1のポリイソシアネート組成物(B)において、炭素数が1~20のモノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比は、1/99~70/30であり、20/80~70/30であることが好ましく、25/70~50/50であることがより好ましい。アロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比は、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0066】
第1のポリイソシアネート組成物(B)の重量平均分子量は、500以上1200以下であり、500以上1000以下であることが好ましく、500以上800以下であることがより好ましい。
重量平均分子量が上記下限値以上であることによって、耐薬品性をより維持することができる傾向にある。一方で、重量平均分子量が上記上限値以下であることによって、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物の無溶剤条件下での調整直後の25℃における粘度が無溶剤処方により適した粘度であり、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物のポットライフをより延長させることができる傾向にある。
重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0067】
第1のポリイソシアネート組成物(B)のイソシアネート含有量(以下、「NCO含有量」ともいう)の下限値は、当該第1のポリイソシアネート組成物(B)の総質量(100質量%)に対して、10質量%であることが好ましく、13質量%であることがより好ましく、15質量%であることがさらに好ましい。一方で、第1のポリイソシアネート組成物(B)のNCO含有量の上限値は、30質量%であることが好ましく、27質量%であることがより好ましく、25質量%であることがさらに好ましい。
すなわち、第1のポリイソシアネート組成物(B)のNCO含有量は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、13質量%以上27質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
NCO含有量が上記下限値以上であることによって、耐薬品性をより維持することができる傾向にある。一方、NCO含有量が上記上限値以下であることによって、ジイソシアネートモノマー質量濃度をより好適な範囲に調整することができる傾向にある。
NCO含有量は、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0068】
第1のポリイソシアネート組成物(B)の無溶剤の条件で25℃における粘度は、50mPa・s以上1500mPa・s以下である。粘度の下限値は、50mPa・sであることが好ましく、100mPa・sであることがより好ましく、200mPa・sであることがさらに好ましく、300mPa・sであることが特に好ましい。一方、粘度の上限値は、1500mPa・sであり、1000mPa・sであることが好ましく、800mPa・sであることがより好ましく、600mPa・sであることがさらに好ましく、550mPa・sであることが特に好ましい。
すなわち、第1のポリイソシアネート組成物(B)の25℃における粘度は、50mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以上800mPa・s以下であることがより好ましく、200mPa・s以上600mPa・s以下であることがさらに好ましく、300mPa・s以上550mPa・s以下であることが特に好ましい。
粘度が上記下限値以上であることで、塗料配合時の作業性をより維持することができる傾向にある。一方で、粘度が上記上限値以下であることで、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物の無溶剤条件下での調整直後の25℃における粘度が無溶剤処方により適した粘度であり、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物のポットライフをより延長させることができる傾向にある。
粘度は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0069】
第1のポリイソシアネート組成物(B)のイソシアネート基平均数(以下、「平均官能基数」ともいう。)は、好ましくは2.0以上4.0以下である。イソシアネート基平均数の下限値は2.0が好ましく、2.2がより好ましく、2.4がさらに好ましく、2.6が特に好ましく、2.8が最も好ましい。一方で、イソシアネート基平均数の上限値は6.0が好ましく、5.0がより好ましく、4.0がさらに好ましく、3.5が特に好ましく、3.0が最も好ましい。
すなわち、第1のポリイソシアネート組成物(B)のイソシアネート基平均数は、2.0以上6.0以下が好ましく、2.2以上5.0以下がより好ましく、2.3以上4.0以下がさらに好ましく、2.4以上3.5以下が最も好ましい。
イソシアネート基平均数が上記下限値以上であることによって、耐薬品性をより維持することができる傾向にある。一方で、イソシアネート基平均数が上記上限値以下であることによって、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物の無溶剤条件下での調整直後の25℃における粘度が無溶剤処方により適した粘度であり、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物のポットライフをより延長し、且つ、塗膜としたときの外観をより向上させることができる傾向にある。
イソシアネート基平均数は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0070】
第1のポリイソシアネート組成物(B)のジイソシアネートモノマー質量濃度は、第1のポリイソシアネート組成物(B)の総質量(100質量%)に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることがさらに好ましい。
ジイソシアネートモノマー質量濃度が上記上限値以下であることによって、耐薬品性をより維持することができる傾向にある。
ジイソシアネートモノマー質量濃度は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0071】
<第2のポリイソシアネート組成物(C)>
本実施形態で用いられる第2のポリイソシアネート組成物(C)は、脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートと数平均分子量500以上1500以下のポリカプロラクトンポリオールとから誘導され、イソシアネート基含有率が15質量%以下である。
【0072】
本実施形態で用いられる第2のポリイソシアネート組成物(C)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO含有量」ともいう。)は、当該ポリイソシアネート組成物の総量(100質量%)に対して、15質量%以下である。NCO含有量の下限値は、より好ましくは6質量%であり、さらに好ましくは7質量%である。NCO含有量の上限値は、好ましくは15質量%である。NCO含有量が5質量%以上であることによって、乾燥性や硬化性をより維持することができる傾向にある。NCO含有量が15質量%以下であることによって、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物を使用した塗膜の耐擦り傷性を向上させることができる傾向にある。NCO含有量は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0073】
本実施形態で用いられる第2のポリイソシアネート組成物(C)の25℃における粘度は、好ましくは500mPa.s以上50000mPa.s以下である。粘度の下限値は、より好ましくは1000mPa.sであり、さらに好ましくは1500mPa.sであり、よりさらに好ましくは2000mPa.sである。粘度の上限値は、より好ましくは40000mPa.sであり、さらに好ましくは30000mPa.sであり、よりさらに好ましくは25000mPa.sである。粘度が500mPa.s以上であることによって、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物を使用した塗膜の耐擦り傷性を向上させることができる傾向にある。粘度が50000mPa.s以下であることによって、乾燥性をより維持とすることができる傾向にある。粘度は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0074】
本実施形態で用いられる第2のポリイソシアネート組成物(C)の重量平均分子量は、好ましくは600以上5000以下である。重量平均分子量の下限値は、より好ましくは800であり、さらに好ましくは1000であり、よりさらに好ましくは1200である。重量平均分子量の上限値は、より好ましくは4000であり、さらに好ましくは3000であり、よりさらに好ましくは2000である。重量平均分子量が600以上であることによって、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物を使用した塗膜の耐擦り傷性を向上させることができる傾向にある。重量平均分子量が5000以下であることによって、乾燥性をより維持とすることができる傾向にある。重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0075】
本実施形態で用いられる第2のポリイソシアネート組成物(C)のイソシアネート基平均数(以下、「平均官能基数」ともいう。)は、好ましくは2.0以上4.0以下である。イソシアネート基平均数の下限値は、より好ましくは2.2であり、さらに好ましくは2.4であり、よりさらに好ましくは2.6であり、さらにより好ましくは2.8である。イソシアネート基平均数の上限値は、好ましくは4.0である。イソシアネート基平均数が2.0以上であることによって、乾燥性をより維持することができる傾向にある。イソシアネート基平均数が4.0以下であることによって、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物を使用した塗膜の耐擦り傷性及び耐候性を向上させることができる傾向にある。イソシアネート基平均数は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0076】
本実施形態で用いられる第2のポリイソシアネート組成物(C)のジイソシアネートモノマー質量濃度は、当該ポリイソシアネート成分の総量(100質量%)に対して、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である。ジイソシアネートモノマー質量濃度が1.0質量%以下であることによって、乾燥性をより維持することができる傾向にある。ジイソシアネートモノマー質量濃度は、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0077】
本実施形態で用いられる第2のポリイソシアネート組成物(C)のイソシアヌレートの含有量は、当該ポリイソシアネート成分の総量(100質量%)に対して、好ましくは10質量%以下(すなわち、0質量%または0質量%超~10質量%、以下同様)である。より好ましくは8.0質量%以下であり、さらに好ましくは6.0質量%以下であり、よりさらに好ましくは4.0質量%以下である。イソシアヌレートの含有量が10質量%以下であることによって、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物を使用した塗膜の耐擦り傷性を向上させることができる傾向にある。
【0078】
・ジイソシアネートモノマー
本実施形態で用いられるジイソシアネートモノマーは、脂肪族及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選択される。
本実施形態で用いられる脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、好ましくは炭素数4以上30以下の脂肪族ジイソシアネートであり、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略す)、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネートが挙げられる。その中でも、工業的入手の容易さからHDIがより好ましい。上記に示した脂肪族ジイソシアネートは、1種を単独で使用しても2種以上を併用しても構わない。
【0079】
本実施形態で用いられる脂環族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、好ましくは炭素数8以上30以下の脂環族ジイソシアネートであり、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略す)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、及び水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。その中でも、耐候性及び工業的入手の容易さから、IPDIがより好ましい。上記に示した脂環族ジイソシアネートは、1種を単独で使用しても2種以上を併用しても構わない。
【0080】
ジイソシアネートモノマーとして、脂肪族ジイソシアネートの1種又は2種以上と、脂環族ジイソシアネートの1種又は2種以上とを組み合わせて用いることもできる。
【0081】
・ポリカプロラクトンポリオール
本実施形態で用いられるポリカプロラクトンポリオールは、数平均分子量500以上1500以下のポリカプロラクトンポリオールである。好ましくは、-O(CH2)5CO-で表される繰り返し単位を含む2価以上4価以下のポリオールであり、2価以上4価以下のアルコールとε-カプロラクトン等から誘導することができる。また、特に限定されないが、例えば、ε-カプロラクトン等を2価以上4価以下のアルコールを開始剤として、触媒の存在下に開環重合して得ることができる。
【0082】
ポリカプロラクトンポリオールの数平均分子量は、500以上1500以下であり、500以上1200以下が好ましく、500以上1000以下がより好ましい。
【0083】
開始剤としては、2価アルコール:エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール等、3価アルコール:トリメチレングリコール、グリセリン等、4価アルコール:ペンタエリスリトール等が用いられる。低粘度のポリイソシアネート成分を得るという観点からは、分岐を有する多価アルコールが好ましい。
【0084】
触媒としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等の有機チタン系化合物、オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、塩化第1スズ、臭化第1スズ等のスズ系化合物等が好ましく用いられる。カプロラクトンダイマー含有量を本願規定の範囲に調整するという観点からは、スズ系化合物が好ましい。
【0085】
ε-カプロラクトン等の開環重合は窒素ガス雰囲気で、ε-カプロラクトン及び上記の開始剤を所定の分子量になるようにモル比を設定して仕込み、さらにε-カプロラクトンに対して触媒を0.1ppm以上100ppm以下添加し、150℃以上200℃以下の温度で4時間以上10時間以下反応させることが好ましい。ただし、反応の終点にてカプロラクトンダイマー含有量が100ppm以上1000ppm以下になるようにコントロールすることが重要である。必要であれば、生成したポリカプロラクトンポリオールから、抽出や蒸留等の方法によりカプロラクトンダイマーを除去してもよい。
なお、ε-カプロラクトン以外にもトリメチルカプロラクトンやバレロラクトンのような他の環状ラクトンを一部混合しても構わない。
【0086】
(第2のポリイソシアネート組成物(C)の製造方法)
本実施形態で用いられる第2のポリイソシアネート組成物(C)の製造方法を説明する。本実施形態で用いられる第2のポリイソシアネート組成物(C)は、過剰のジイソシアネートモノマー存在下で、ジイソシアネートモノマーのイソシアネート基とポリカプロラクトンポリオールの水酸基とを反応させ、ウレタン基を形成するウレタン化反応を行い、その後に、未反応のジイソシアネートモノマーを除去して得ることができる。
ウレタン化反応温度としては、好ましくは50以上160℃以下であり、より好ましくは60以上120℃以下である。ウレタン化反応温度が160℃以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等を効果的に抑制できる傾向にある。また、ウレタン化反応時間としては、好ましくは30分以上4時間以下であり、より好ましくは1以上3時間以下であり、さらに好ましくは1時間以上2時間以下である。
【0087】
ジイソシアネートモノマーのイソシアネート基とポリカプロラクトンポリオールの水酸基との当量比は、好ましくはイソシアネート基:水酸基=2:1以上50:1以下である。当量比がイソシアネート基:水酸基=2:1以上であることによって、脂肪族及び/又は脂環族ポリイソシアネート成分がハイソリッド処方や無溶剤処方に適した低粘度を発現することができる傾向にある。当量比がイソシアネート基:水酸基=50:1以下であることによって、ポリイソシアネートの収率を高められる傾向にある。
【0088】
<ポリイソシアネート組成物(B)及び(C)の質量比>
第1のポリイソシアネート組成物(B)に対する第2のポリイソシアネート組成物(C)の質量比は、5/95~95/5であり、好ましくは10/90~90/10、さらにより好ましくは20/80~80/20であり、最も好ましくは25/75~75/25である。
(C)/(B)の質量比が、上記下限値以上であることで、塗膜としたときの密着性及び伸び率をより向上させることができる傾向にある。一方で、(C)/(B)の質量比が、上記上限値以下であることで、塗料のポットライフと硬度をより良好とすることができる傾向にある。
【0089】
<イソシアネート基/アミノ基>
アスパラギン酸エステル化合物(A)のアミノ基に対するポリイソシアネート組成物(B)及び(C)のイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/アミノ基)は、1/10以上10/1以下であることが好ましく、3/10以上10/3以下であることがより好ましく、5/10以上10/5以下であることがさらに好ましい。
イソシアネート基/アミノ基が上記下限値以上であることで、塗膜としたときの外観及び耐薬品性をより向上させることができる傾向にある。
一方で、イソシアネート基/アミノ基が上記上限値以下であることで、塗料のポットライフをより良好とすることができる傾向にある。
【0090】
<その他の樹脂成分>
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、アスパラギン酸エステル化合物(A)並びにポリイソシアネート組成物(B)及び(C)に加えて、その他の樹脂成分(その他の主剤成分)として、多価活性水素化合物を更に含むことができる。
【0091】
[多価活性水素化合物]
多価活性水素化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリオール、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。これらの多価活性水素化合物を、1種単独で含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。中でも、多価活性水素化合物としては、ポリオールであることが好ましい。
【0092】
(ポリオール)
ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらポリオールを、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
中でも、ポリオールとしては、ポリエステルポリオール又はアクリルポリオールが好ましい。
【0093】
1.ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
【0094】
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0095】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0096】
又は、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
【0097】
2.ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、以下(1)~(3)に示すもの等が挙げられる。
(1)触媒を使用して、アルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム又はブロック付加して、得られるポリエーテルポリオール類。
前記触媒としては、例えば、水酸化物(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、強塩基性触媒(アルコラート、アルキルアミン等)、複合金属シアン化合物錯体(金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等)等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。
(2)ポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて、得られるポリエーテルポリオール類。
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、(1)で例示されたものと同様のものが挙げられる。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体として、アクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
【0098】
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下の(i)~(vi)に示すものが挙げられる。
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等。
(ii)エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物。
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類。
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類。
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類。
(vi)スタキオース等の四糖類。
【0099】
3.アクリルポリオール
アクリルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、を共重合させることにより得られるものが挙げられる。
【0100】
前記ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、アクリル酸ヒドロキシエチル又はメタクリル酸ヒドロキシエチルであることが好ましい。
【0101】
上記単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、例えば、以下の(1)~(6)に示すもの等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(1)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル。
(2)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステル。
(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和アミド。
(5)メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のビニル系単量体。
(6)ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニル系単量体。
【0102】
4.ポリオレフィンポリオール
ポリオレフィンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
【0103】
ポリオールの統計的1分子が持つ水酸基数(以下、「水酸基平均数」と称する場合がある)は2以上であることが好ましい。ポリオールの水酸基平均数が2以上であることによって、本実施形態の一液型コーティング組成物を硬化させて得られる塗膜の架橋密度の低下をより抑制することができる傾向にある。
【0104】
5.フッ素ポリオール
本明細書において、「フッ素ポリオール」とは、分子内にフッ素を含むポリオールを意味する。フッ素ポリオールとして具体的には、例えば、特開昭57-34107号公報(参考文献1)、特開昭61-275311号公報(参考文献2)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0105】
6.ポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、以下の(1)~(4)に示すもの等が挙げられる。
(1)ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;
(2)エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;
(3)ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート;
(4)上記(1)~(3)等の低分子カーボネート化合物を縮重合して得られるもの。
【0106】
7.ポリウレタンポリオール
ポリウレタンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、常法によりカルボキシ基を含有しないポリオールとイソシアネート成分とを反応させることにより得ることができる。
前記カルボキシ基を含有しないポリオールとしては、例えば低分子量のものとして、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。また、例えば高分子量のものとして、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0107】
(ポリオールの水酸基価)
ポリオールの樹脂あたりの水酸基価は、特に限定されないが、10mgKOH/樹脂g以上300mgKOH/樹脂g以下であることが好ましい。
樹脂あたりの水酸基価が上記下限値以上であることによって、架橋密度が減少することを抑制し、目的とする物性をより十分に達成することができる傾向にある。樹脂あたりの水酸基価が上記上限値以下であることによって、架橋密度が過度に増大することを抑制し、本実施形態の一液型コーティング組成物を硬化させて得られる塗膜の機械的物性をより向上させることができる傾向にある。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
【0108】
(水酸基/イソシアネート基)
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物において、ポリオールを含む場合に、ポリイソシアネート組成物(B)及び(C)のイソシアネート基に対するポリオールの水酸基のモル比(水酸基/イソシアネート基)は、1/10以上10/1以下であることが好ましい。
【0109】
(ポリアミン)
ポリアミンとしては、特に限定されないが、一級アミノ基又は二級アミノ基を1分子中に2個以上有するものが好ましく、一級アミノ基又は二級アミノ基を1分子中に3個以上有するものがより好ましい。
ポリアミンとして具体的には、例えば、以下の(1)~(3)に示すもの等が挙げられる。
(1)エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、イソホロンジアミン等のジアミン類;
(2)ビスヘキサメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチレンヘキサミン、テトラプロピレンペンタミン等の3個以上のアミノ基を有する鎖状ポリアミン類;
(3)1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロオクタデカン、1,4,7,10-テトラアザシクロデカン、1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン等の環状ポリアミン類。
【0110】
(アルカノールアミン)
本明細書において、「アルカノールアミン」とは、1分子中に、アミノ基と水酸基とを有する化合物を意味する。
アルカノールアミンとして具体的には、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、モノ-、ジ-(n-又はイソ-)プロパノールアミン、エチレングリコール-ビス-プロピルアミン、ネオペンタノールアミン、メチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0111】
<その他成分>
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、必要に応じて、既存のメラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂をさらに含むことができる。
【0112】
また、上述したポリオールがカルボキシ基を有する場合には、オキサゾリン基含有化合物、及びカルボジイミド基含有化合物を配合することができる。また、上述したポリオールがカルボニル基を有する場合には、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物を配合することができる。これらの化合物は1種単独で配合してもよく、2種以上を併用して配合してもよい。
【0113】
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、塗膜としたときの外観により優れることから、添加剤として表面調整剤を更に含むことが好ましい。表面調整剤の種類は、特に限定されず、例えば、シリコーン系、アクリル系等が挙げられる。
表面調整剤の含有量は、ポリアスパラティック塗料組成物の樹脂分に対して0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましい。表面調整剤の含有量が上記下限値以上であることで、塗膜としたときの外観をより向上させることができる。一方で、表面調整剤の含有量が上記上限値以下であることで、塗膜としたときの耐ハジキ性、リコート性、及び耐汚染等がより良好なものとなる。
【0114】
シリコーン系表面調整剤としては、市販品を用いることができ、例えば、BYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-313、BYK-315N、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-326、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-342、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-378、BYK-3760(BYK社製);ディスパロン1711EF、ディスパロン1761、ディスパロンLS-001、ディスパロンLS-050、ディスパロンLS-280、ディスパロンLS-460、ディスパロンLS-480(楠本化成社製);Tego Flow 425、Tego Glide 100、Tego Glide 110、Tego Glide 130、Tego Glide 406、Tego Glide 420、Tego Glide 432、Tego Glide 435、Tego Glide 440、Tego Glide 450、Tego Glide 482、Tego Glide 485、Tego Glide ZG400、Tego wet KL245、Tego wet 250、Tego wet 260、Tego wet 265、Tego wet 270、Tego wet 280(Evonic Tego Chemie社製)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0115】
アクリル系表面調整剤としては、市販品を用いることができ、例えば、BYK-350、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358N、BYK-361N、BYK-392、BYK-394、BYK-3441(BYK社製);ディスパロンLF-1983、ディスパロンLF-1984、LF-1985、ディスパロンUVX-35、ディスパロンUVX-36(楠本化成社製);Tego Flow 300、Tego Flow 370、Tego Flow ATF2、Tego Flow ZFS460等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0116】
上記以上のその他の種類の表面調整剤としては、市販品を用いることができ、例えば、BYK-399、BYK-3440、BYK-3550、BYK-3560、BYK-3565、BYK-SILCLEAN 3700、BYK-SILCLEAN 3701、BYKETOL-OK(BYK社製);ディスパロンUVX-272、ディスパロンUVX-2285、ディスパロンLHP-810、ディスパロンNSH-8430HF、ディスパロンLHP-90、ディスパロンLHP-91、ディスパロンLHP-95、ディスパロンLHP-96(楠本化成社製)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0117】
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、塗膜としたときの外観により優れることから、添加剤として消泡・抑泡・脱泡剤を更に含むことが好ましい。消泡・抑泡・脱泡剤の種類は、特に限定されず、例えば、シリコーン系、ポリマー系等が挙げられる。
消泡・抑泡・脱泡剤の含有量は、ポリアスパラティック塗料組成物の樹脂分に対して0.05質量%以上5質量%以下であることが好ましい。消泡・抑泡・脱泡剤の含有量が上記下限値以上であることで、配合及び攪拌時の作業性を向上させ、且つ、塗膜としたときの外観を向上させることができる。一方で、消泡・抑泡・脱泡剤の含有量が上記上限値以下であることで、塗膜としたときの耐ハジキ性、リコート性、及び耐汚染等がより良好なものとなる。
【0118】
シリコーン系消泡・抑泡・脱泡剤としては、市販品を用いることができ、例えば、BYK-063、BYK-065、BYK-066N、BYK-067A、BYK-077、BYK-081、BYK-1799(BYK社製);ディスパロン1930N、ディスパロン1934、ディスパロンSPX-44(楠本化成社製);Tego Airex 900、Tego Airex 916、Tego Airex 931、Tego Airex 935、Tego Airex 962、Tego Airex 980、Tego Foamex N(Evonic Tego Chemie社製)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0119】
ポリマー系消泡・抑泡・脱泡剤としては、市販品を用いることができ、例えば、BYK-051N、BYK-052N、BYK-054、BYK-055、BYK-057、BYK-354、BYK-392、BYK-1752、BYK-1788、BYK-1790、BYK-1791、BYK-1794(BYK社製);ディスパロンOX-60、ディスパロンOX-6140、ディスパロンOX-70、ディスパロンOX-710、ディスパロンOX-750HF、ディスパロンOX-77EF、ディスパロンOX-880EF、ディスパロンOX-881、ディスパロンOX-883HF、ディスパロンLAP-10、ディスパロンLAP-20、ディスパロンLAP-30、ディスパロン1952、ディスパロン1958、ディスパロン1960、ディスパロンP-410EF、ディスパロンPD-7、ディスパロンP-420、ディスパロンP-450、ディスパロンOX-881、ディスパロンOX-883HF、ディスパロンLAP-10、ディスパロンP-425、ディスパロンUVX-188、ディスパロンUVX-189、ディスパロンUVX-190(楠本化成社製);Tego Airex 910、Tego Airex 920、Tego Airex 936、Tego Airex 944、Tego Airex 955(Evonic Tego Chemie社製)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0120】
上記以上のその他の種類の消泡・抑泡・脱泡剤としては、市販品を用いることができ、例えば、BYK-088、BYK-141(BYK社製);ディスパロンOX-66EF、ディスパロンOX-715(楠本化成社製);Tego Airex 940、Tego Airex 945、Tego Airex 950、Tego Airex 986(Evonic Tego Chemie社製)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0121】
<ポリアスパラティック塗料組成物の製造方法>
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、上述のアスパラギン酸エステル化合物(A)に、必要に応じて、多価活性水素化合物、及びその他成分等を混合して混合物を得た後、当該混合物に、硬化剤成分である上述のポリイソシアネート組成物(B)及び(C)を配合して、公知の方法を用いて混合することで得られる。このとき、溶剤を用いてもよく、或いは溶剤を用いなくてもよい。
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、100mPa・s以上12000mPa・s以下の粘度にすることもでき、無溶剤処方でも作業性を維持しながら製造することができる。ポリアスパラティック塗料組成物の使用可能時間は、調整から粘度が12000mPa・sに到達するまでの時間とした場合に、20分以上であることが好ましく、40分以上であることがより好ましい。
【0122】
<用途>
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装、浸漬、ローラー塗装、刷毛塗装等によって、鋼板や表面処理鋼板等の金属、プラスチック、無機材料等のセラミック、ガラス、コンクリートに対して、プライマー、中塗り又は上塗りとして好適に使用される。
本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装部、プラスチック塗装部等に、美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性、密着性等を付与するために好適に用いられる。
また、本実施形態のポリアスパラティック塗料組成物は、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等としても有用である。
【0123】
≪塗膜≫
本実施形態の塗膜は、上述したポリアスパラティック塗料組成物を硬化させてなる。本実施形態の塗膜は、外観、耐薬品性、耐衝撃性、及び耐擦り傷性に優れる。本実施形態の塗膜は、上述したコーティング組成物を、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて塗装し、常温乾燥又は焼付け工程を経て、硬化させることで得られる。
【0124】
本実施形態の塗膜は、引張破断応力が7MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましく、40MPa以上であることがさらにより好ましく、50MPa以上であることが特に好ましい。
塗膜の引張破断応力は、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0125】
本実施形態の塗膜は、伸び率が40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
塗膜の伸び率は、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0126】
本実施形態の塗膜は、ケーニッヒ硬度が40回以上であることが好ましく、45回以上であることがより好ましく、50回以上であることがさらにより好ましく、55回以上であることが特に好ましい。
塗膜のケーニッヒ硬度は、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0127】
≪塗装物品≫
本実施形態の塗装物品は、上述した塗膜を備える。本実施形態の塗装物品は、上述した塗膜を備えることで、外観、耐薬品性、耐衝撃性、及び耐擦り傷性に優れる。
【実施例0128】
以下、実施例により本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。合成例、実施例および実施例表に示す略号で表される各種材料を用意した。
【0129】
[合成例]
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
【0130】
[実施例、比較例]
(アスパラギン酸エステル化合物(A))
A-1:アスパラギン酸エステル化合物、商品名「Feispartic F420」Feiyang社製、アミン価192mgKOH/樹脂g、粘度1450mPa・s(25℃測定代表値)
A-2:アスパラギン酸エステル化合物、商品名「Feispartic F520」Feiyang社製、アミン価189mgKOH/樹脂g、粘度1400mPa・s(25℃測定代表値)
【0131】
Tego wet 250:シリコーン系表面調整剤、Evonik社製
Tego Airex 944:ポリマー系消泡剤、Evonik社製
Moiecular sieves 4A-Powder:脱水剤、ユニオン昭和社製
アジピン酸ジメチル:塗料塗膜改質剤、東京化成工業社製
グルタル酸ジメチル:塗料の塗膜改質剤、東京化成工業社製
【0132】
(ポリイソシアネートB-1~B-4及びB`-1~B`-4)
[合成例1]ポリイソシアネートB-1の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、2-エチルヘキサノール3部、イソブタノール1.5部を仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持し、イソシアヌレート化反応触媒であるテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が14.5%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。160℃の熱処理後、反応液をろ過した。薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートB-1を得た。得られたB-1の諸物性を表1に記載する。
【0133】
[合成例2]ポリイソシアネートB-2の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、2-エチルヘキサノール35部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃に保持し、イソシアヌレート化反応触媒であるテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が27%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。85℃の熱処理後、反応液をろ過した。薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートB-2を得た。得られたB-2の諸物性を表1に記載する。
【0134】
[合成例3]ポリイソシアネートB-3の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、2-エチルヘキサノール32部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃に保持し、イソシアヌレート化反応触媒であるテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が21%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。85℃の熱処理後、反応液をろ過した。薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートB-3を得た。得られたB-3の諸物性を表1に記載する。
【0135】
[合成例4]ポリイソシアネートB-4の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、2-エチルヘキサノール110部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃に保持し、イソシアヌレート化反応触媒であるテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が18%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。90℃の熱処理後、反応液をろ過した。薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートB-4を得た。得られたB-4の諸物性を表1に記載する。
【0136】
[合成例5]ポリイソシアネートB`-1の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000gを仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持し、イソシアヌレート化反応触媒であるテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が23%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。100℃の熱処理後、反応液をろ過した。薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートB`-1を得た。得られたB`-1の諸物性を表1に記載する。
表1の合成例5~6において、「アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比」欄の「なし」は、「アロファネート基なし」を意味する。
【0137】
[合成例6]ポリイソシアネートB`-2の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000gを仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持し、イソシアヌレート化反応触媒であるテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が41%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。100℃の熱処理後、反応液をろ過した。薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートB`-2を得た。得られたB`-2の諸物性を表1に記載する。
【0138】
[合成例7]ポリイソシアネートB`-3の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、2-エチルヘキサノール80部を仕込み、撹拌下反応器内温度を130℃に保持し、アロファネート化反応触媒である2-エチルヘキサン酸ジルコニルを加え、収率が24%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。85℃の熱処理後、反応液をろ過した。薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートB`-3を得た。得られたB`-3の諸物性を表1に記載する。
【0139】
[合成例8]ポリイソシアネートB`-4の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、1,3-ブチレングリコール18gを仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃に保持し、イソシアヌレート化反応触媒であるテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が41%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。85%の熱処理後、反応液をろ過した。薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートB`-4を得た。得られたB`-4の諸物性を表1に記載する。
【0140】
(ポリイソシアネートC-1、C-2及びC`-1~C`-2)
[合成例9]ポリイソシアネートC-1の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、数平均分子量850のポリカプロラクトポリオール340部を仕込み、攪拌下反応器内温度を収率39%になるまで保持し、ウレタン化反応を行った。冷却した反応液をろ過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートC-1を得た。得られたC-1の諸物性を表2に記載する。
【0141】
[合成例10]ポリイソシアネートC-2の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、数平均分子量550のポリカプロラクトポリオール72部、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール127部を仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃で120分間を保持し、ウレタン化反応を行った。冷却した反応液をろ過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートC-2を得た。得られたC-2の諸物性を表2に記載する。
【0142】
[合成例11]ポリイソシアネートC`-1の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、数平均分子量330のポリカプロラクトポリオール268gを仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃で120分間を保持し、ウレタン化反応を行った。冷却した反応液をろ過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートC`-1を得た。得られたC`-1の諸物性を表2に記載する。
【0143】
[合成例12]ポリイソシアネートC`-2の製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管及び滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000g、数平均分子量2000のポリカプロラクトポリオール420gを仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃で120分間を保持し、ウレタン化反応を行った。冷却した反応液をろ過後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去し、ポリイソシアネートC`-2を得た。得られたC`-2の諸物性を表2に記載する。
【0144】
<ポリアスパラティック塗料組成物の調合>
[実施例1]ポリアスパラティック塗料組成物Pa-a1の調合
アスパラギン酸エステル化合物A-1、シリコーン系表面調整剤、ポリマー系消泡剤、脱水剤、並びに、改質剤を表3に示す配合量で事前にブレンドして混合物を得た。得られた混合物と、ポリイソシアネートB-1、C-1とを、表3に示す配合量で、ポリイソシアネート組成物(B)とポリイソシアネート組成物(C)のイソシアネート基に対するアスパラギン酸エステル化合物(A)のアミノ基のモル比が1.1となるように配合して、ポリアスパラティック塗料組成物Pa-a1を得た。
【0145】
[実施例2~19及び比較例1~8]
(ポリアスパラティック塗料組成物Pa-a2~Pa-a19及びPa-b1~Pa-b8の調合)
表3~表8に示す組成となるように配合した以外は、実施例1と同様の方法を用いて各ポリアスパラティック塗料組成物を調合した。
【0146】
各種物性の測定方法及び各種評価の方法について以下に説明する。なお、特に明記しない場合は、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0147】
<物性の測定方法>
[物性1]
ポリイソシアネート組成物(B)及び(C)のNCO含有量(イソシアネート含有量、質量%)は次のように測定した。三角フラスコに製造例したポリイソシアネート組成物(B)又は(C)を1g以上3g以下精秤(Wg)後、トルエン20mlを添加し、ポリイソシアネート組成物(B)を完全に溶解した。その後、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mlを添加し、完全に混合後、15分間室温放置した。さらに、この溶液にイソプロピルアルコール70mlを加えて、完全混合した。この溶液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬を用いて滴定して、滴定値V2mLを得た。同様の滴定操作についてポリイソシアネートを用いていないで行い、滴定値V1mLを得た。得られた滴定値V2mL及び滴定値V1mLから、ポリイソシアネートのNCO含有量(質量%)を、下記式に基づいて算出した。
(NCO含有量(質量%))=(V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0148】
[物性2]
(粘度(mPa.s))
ポリイソシアネート組成物(B)及び(C)の粘度は、E型粘度計(商品名:RE-85R、東機産業社製)を用いて25℃で測定した。測定に際しては、標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下のとおりで設定した。
(回転数)
100r.p.m.(128mPa・s未満の場合)
50r.p.m.(128mPa・s以上256mPa・s未満の場合)
20r.p.m.(256mPa・s以上640mPa・s未満の場合)
10r.p.m.(640mPa・s以上1280mPa・s未満の場合)
5r.p.m.(1280mPa・s以上2560mPa・s未満の場合)
2.5r.p.m.(2560mPa・s以上5120mPa・s未満の場合)
1.0r.p.m.(5120mPa・s以上10240mPa・s未満の場合)
0.5r.p.m.(10240mPa・s以上20480mPa・s未満の場合)
【0149】
[物性3]
(重量平均分子量及び数平均分子量)
ポリイソシアネート組成物(B)及び(C)の重量平均分子量及び数平均分子量は、下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下、「GPC」と略す。)測定によるポリスチレン基準の重量平均分子量及び数平均分子量で求めた。測定条件は以下に示すとおりである。
(測定条件)
装置:東ソー社製「HLC-8120GPC」(商品名)
カラム:東ソー社製「TSKgel SuperH1000」(商品名)×1本
「TSKgel SuperH2000」(商品名)×1本
「TSKgel SuperH3000」(商品名)×1本
キャリア:テトラハイドロフラン
検出器:示差屈折計
【0150】
[物性4]
(イソシアネート基平均数)
ポリイソシアネート組成物(B)及び(C)のイソシアネート基平均数は、物性1で得られたNCO含有量及び物性3で得られた数平均分子量を用いて下記式に基づいて算出した。
(イソシアネート基平均数)=(数平均分子量)×(NCO含有量)/100/42
【0151】
[物性5]
(ジイソシアネートモノマー質量濃度(質量%))
ポリイソシアネート組成物(B)及び(C)のジイソシアネート質量濃度は、次のように求めた。最初に、20mLサンプル瓶をデジタル天秤に乗せ、試料を約1g精秤した。次に、ニトロベンゼン(内部標準液)0.03g以上0.04g以下を加え精秤した。最後に、酢酸エチル約9mLを加えた後、蓋をしっかりして十分に混合し、サンプルを調製した。調製したサンプルを以下の条件で、ガスクロマトグラフィー分析し、定量した。
(測定条件)
装置:SHIMADZU社製「GC-8A」
カラム:信和化工社製「Silicone OV-17」
カラムオーブン温度:120℃
インジェクション/ディテクター温度:160℃
【0152】
[物性6]と[物性7]
(イソシアヌレート基と全体の官能基のモル比、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比)
ポリイソシアネート組成物(B)におけるイソシアヌレート基と全体の官能基のモル比、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比は、Bruker社製Biospin Avance600(商品名)を用いた、13C-NMRの測定を行った。具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
(測定条件)
13C-NMR装置:AVANCE600(ブルカー社製)
クライオプローブ(ブルカー社製):CryoProbe(登録商標)CPDUL600S3-C/H-D-05Z
共鳴周波数:150MHz
濃度:60wt/vol%
シフト基準:CDCl3(77ppm)
積算回数:10000回
パルスプログラム:zgpg30(プロトン完全デカップリング法、待ち時間2sec)
【0153】
以下のシグナルの積分値を、測定している炭素の数で除して、アロファネート基、イソシアヌレート基の各モル比率を求めた。
イソシアヌレート基:(148.6ppm付近の積分値)÷3
アロファネート基:(154ppm付近の積分値)÷1
ウレトジオン基:(157ppm付近の積分値)÷2
ウレトンイミノ基:(159.5ppm付近の積分値)÷1
ウレタン基:(156.5ppm付近の積分値)÷1
ビウレット基:(156.2ppm付近の積分値)÷2
ウレア基:(157.8ppm付近の積分値)÷1
イミノオキサジアジンジオン基:(135.5ppm付近の積分値)÷1
【0154】
<評価方法>
[評価1]
(ポットライフ)
調整から10分後の各ポリアスパラティック塗料組成物の粘度を上記物性2に記載の方法と同様の方法で測定し、下記の基準でポットライフを評価した。
(評価基準)
◎:配合直後の粘度に対して増粘程度が50%未満
○:配合直後の粘度に対して増粘程度が50%以上100%未満
△:配合直後の粘度に対して増粘程度が100%以上200%未満
×:配合直後の粘度に対して増粘程度が200%以上
【0155】
[評価2]
(可能使用時間)
調整から5分ごとに各ポリアスパラティック塗料組成物の粘度を測定し、粘度が12000mPa・sに到達するまでの時間に基づいて、下記の基準で可能使用時間を評価した。
(評価基準)
◎:粘度が12000mPa・sに到達するまでの時間が40分以上
○:粘度が12000mPa・sに到達するまでの時間が20分以上、40分未満
△:粘度が12000mPa・sに到達するまでの時間が10分以上、20分未満
×:粘度が12000mPa・sに到達するまでの時間が10分未満
【0156】
[評価3]
(塗膜外観)
調整から10分後の各ポリアスパラティック塗料組成物をガラス板にアプリケーターで乾燥膜厚が80μm以上100μm以下になるように塗布した。次いで、23℃で1日間乾燥後、目視により下記の基準で塗膜外観を評価した。
(評価基準)
◎:膜が透明であり、蛍光灯の移りが鮮明である。
○:膜が透明であり、蛍光灯の移りに少し波がある。
△:膜に多少曇りがあり、蛍光灯の移りに少し波がある。
×:膜に曇りがあり、蛍光灯の移りに波がある。
【0157】
[評価4]
(ケーニッヒ硬度)
調整した各ポリアスパラティック塗料組成物をガラス板にアプリケーターで乾燥膜厚が80μm以上100μm以下になるように塗布した。次いで、23℃で7日間乾燥後、TQC社の全自動ペンデュラム硬度試験機による測定し、以下の評価基準に従い、評価した。
(評価基準)
◎:50回以上
○:45回以上、50回未満
△:40回以上、45回以下
×:40回未満
【0158】
[評価5]
(密着性)
調整した各ポリアスパラティック塗料組成物を軟鋼板にアプリケーターで乾燥膜厚が80μm以上100μm以下になるように塗布した。次いで、23℃で7日間乾燥後、JIS K5600-5-6に準じて行い、以下の評価基準に従い、評価した。
(評価基準)
◎:100マス中90マス以上基材上に残る。
○:100マス中70マス以上90マス未満基材上に残る。
△:100マス中50マス以上70マス未満基材上に残る。
×:100マス中50マス未満基材上に残る。
【0159】
[評価6]
(耐アルコール性)
調整から5分後の各ポリアスパラティック塗料組成物をガラス板にアプリケーターで乾燥膜厚が80μm以上100μm以下になるように塗布した。次いで、23℃で7日間乾燥させることで硬化塗膜を得た。その後、80%エタノール水溶液を染込ませたコットンボールを塗膜に60分間乗せた後の塗膜の外観変化を目視で確認し、下記の基準で耐薬品性を評価した。
(評価基準)
◎:塗膜の外観変化なし
○:塗膜の外観変化僅かにあり
△:塗膜の外観変化あり、若干のひび割れや塗膜剥がれが発生
×:塗膜全面にひび割れや剥がれが発生
【0160】
[評価7]
(耐酸性)
調整から5分後の各ポリアスパラティック塗料組成物をガラス板にアプリケーターで乾燥膜厚が80μm以上100μm以下になるように塗布した。次いで、23℃で7日間乾燥させることで硬化塗膜を得た。その後、10%硫酸水溶液を染込ませたコットンボールを塗膜に24時間乗せた後の塗膜の外観変化を目視で確認し、下記の基準で耐薬品性を評価した。
(評価基準)
◎:塗膜の外観変化なし
○:塗膜の外観変化僅かにあり
△:塗膜の外観変化あり、若干のひび割れや塗膜剥がれが発生
×:塗膜全面にひび割れや剥がれが発生
【0161】
[評価8]
(破断応力)
調整から5分後の各ポリアスパラティック塗料組成物をガラス板にアプリケーターで乾燥膜厚が80μm以上100μm以下になるように塗布した。次いで、23℃で7日間乾燥させることで硬化塗膜を得た。温度23℃、湿度50%RHの条件で、引張り試験器(島津製作所製、AGS 500G)を用いて、引張り速度20mm/分、掴み間隔20mmで測定した。
(評価基準)
◎:50MPa以上
○:40MPa以上、50MPa未満
△:30MPa以上、40MPa未満
×:30MPa未満
【0162】
[評価9]
(伸び率)
調整から5分後の各ポリアスパラティック塗料組成物をガラス板にアプリケーターで乾燥膜厚が80μm以上100μm以下になるように塗布した。次いで、23℃で7日間乾燥させることで硬化塗膜を得た。温度23℃、湿度50%RHの条件で、引張り試験器(島津製作所製、AGS 500G)を用いて、引張り速度20mm/分、掴み間隔20mmで測定した。
(評価基準)
◎:80%以上
○:60%以上、80%未満
△:40%以上、60%未満
×:40%未満
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
実施例1~17では、得られる塗膜の高い硬度、耐薬品性を維持しながら、柔軟性および基材への密着性が優れていた。
【0172】
比較例1は、ポットライフ、塗膜外観、密着性及び伸び率に劣っていた。
比較例2は、ポットライフ、塗膜外観及び伸び率に劣っていた。
比較例3は、密着性及び伸び率に劣っていた。
比較例4は、ポットライフ、塗膜外観、ケーニッヒ硬度及び破断応力に劣っていた。
比較例5は、ケーニッヒ硬度、耐アルコール性、耐酸性及び破断応力に劣っていた。
比較例6は、ポットライフ、塗膜外観、ケーニッヒ硬度及び伸び率に劣っていた。
比較例7は、密着性、耐アルコール性及び伸び率に劣っていた。
比較例8は、塗膜外観、密着性及び耐アルコール性に劣っていた。
本実施形態によれば、得られる塗膜の高い硬度、耐薬品性を維持しながら、柔軟性および基材への密着性が優れるポリアスパラティック塗料組成物、及び塗膜を提供することができる。