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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097227
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】解析方法、解析装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20250623BHJP
【FI】
G21C17/00 220
G21C17/00 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213401
(22)【出願日】2023-12-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山路 和也
(72)【発明者】
【氏名】小池 啓基
(72)【発明者】
【氏名】浅野 耕司
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA10
2G075BA03
2G075CA08
2G075FB07
2G075FB18
(57)【要約】
【課題】黒鉛が隣接する効果を取り込んで実効断面積を計算する方法を提供する。
【解決手段】解析方法は、燃料体について計算した実効断面積およびダンコフ係数と、燃料体の周囲が黒鉛で囲まれている場合の実効断面積およびダンコフ係数とに基づいて実効断面積とダンコフ係数の関係を算出し、炉心の各燃料体に含まれる複数の燃料それぞれのダンコフ係数を黒鉛の隣接効果を取り込んで計算し、計算したダンコフ係数と、実効断面積とダンコフ係数の関係と、に基づいて、燃料それぞれの実効断面積を計算する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の燃料体が配置された黒鉛を減速材とする炉心における単一の前記燃料体について共鳴計算を行って得られる第1の実効断面積および第1のダンコフ係数と、前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定して前記共鳴計算を行って得られる第2の実効断面積および第2のダンコフ係数と、に基づいて実効断面積とダンコフ係数の関係を算出するステップと、
前記炉心の全ての前記燃料体について、前記燃料体に含まれる複数の燃料それぞれのダンコフ係数を前記黒鉛の隣接効果を取り込んで計算するステップと、
計算した前記燃料のダンコフ係数と、前記実効断面積とダンコフ係数の関係と、に基づいて、前記燃料それぞれの実効断面積を計算するステップと、
を有する解析方法。
【請求項2】
前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定した前記共鳴計算を行うために、前記燃料体の外周部における前記黒鉛の数密度に、前記黒鉛で囲まれていることを想定しない場合と比べて所定倍の値を設定する、
請求項1に記載の解析方法。
【請求項3】
前記関係を算出するステップでは、実効断面積とダンコフ係数が線形関係を有することに基づいて、前記第1の実効断面積および前記第1のダンコフ係数と、前記第2の実効断面積および前記第2のダンコフ係数とから前記実効断面積と前記ダンコフ係数の関係を示す関数またはテーブルを算出する、
請求項1または請求項2に記載の解析方法。
【請求項4】
前記ダンコフ係数を前記黒鉛の隣接効果を取り込んで計算するステップでは、全炉心体系の単色の輸送計算を行うことにより前記ダンコフ係数を計算する、
請求項1または請求項2に記載の解析方法。
【請求項5】
前記炉心には、前記燃料体と、黒鉛ブロックと、黒鉛および制御棒を含むブロックと、が配置される、
請求項1または請求項2に記載の解析方法。
【請求項6】
1つ又は複数の燃料体が配置された黒鉛を減速材とする炉心における単一の前記燃料体について共鳴計算を行って得られる第1の実効断面積および第1のダンコフ係数と、前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定して前記共鳴計算を行って得られる第2の実効断面積および第2のダンコフ係数と、に基づいて実効断面積とダンコフ係数の関係を算出する手段と、
前記炉心の全ての前記燃料体について、前記燃料体に含まれる複数の燃料それぞれのダンコフ係数を前記黒鉛の隣接効果を取り込んで計算する手段と、
計算した前記燃料のダンコフ係数と、前記実効断面積とダンコフ係数の関係と、に基づいて、前記燃料それぞれの実効断面積を計算する手段と、
を備える解析装置。
【請求項7】
コンピュータに、
1つ又は複数の燃料体が配置された黒鉛を減速材とする炉心における単一の前記燃料体について共鳴計算を行って得られる第1の実効断面積および第1のダンコフ係数と、前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定して前記共鳴計算を行って得られる第2の実効断面積および第2のダンコフ係数と、に基づいて実効断面積とダンコフ係数の関係を算出するステップと、
前記炉心の全ての前記燃料体について、前記燃料体に含まれる複数の燃料それぞれのダンコフ係数を前記黒鉛の隣接効果を取り込んで計算するステップと、
計算した前記燃料のダンコフ係数と、前記実効断面積とダンコフ係数の関係と、に基づいて、前記燃料それぞれの実効断面積を計算するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析方法、解析装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軽水炉の炉心内が減速材(冷却水)で満たされている状態から喪失する状態までの幅広い計算条件に対応して、燃料集合体の共鳴領域における実効断面積を、計算精度を悪化させることなく計算する方法が開示されている。高温ガス炉では、減速材として冷却水ではなく黒鉛が用いられる。高温ガス炉における炉心の実効断面積を計算する場合、黒鉛の影響を考慮する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6433334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
黒鉛が隣接する効果を取り込んで実効断面積を計算する技術を提供する。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる解析方法、解析装置及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の解析方法は、1つ又は複数の燃料体が配置された、黒鉛を減速材とする炉心における単一の前記燃料体について共鳴計算を行って得られる第1の実効断面積および第1のダンコフ係数と、前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定して前記共鳴計算を行って得られる第2の実効断面積および第2のダンコフ係数と、に基づいて実効断面積とダンコフ係数の関係を算出するステップと、前記炉心の全ての前記燃料体について、前記燃料体に含まれる複数の燃料それぞれのダンコフ係数を前記黒鉛の隣接効果を取り込んで計算するステップと、計算した前記燃料のダンコフ係数と、前記実効断面積とダンコフ係数の関係と、に基づいて、前記燃料それぞれの実効断面積を計算するステップと、を有する。
【0007】
本開示の解析装置は、1つ又は複数の燃料体が配置された黒鉛を減速材とする炉心における単一の前記燃料体について共鳴計算を行って得られる第1の実効断面積および第1のダンコフ係数と、前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定して前記共鳴計算を行って得られる第2の実効断面積および第2のダンコフ係数と、に基づいて実効断面積とダンコフ係数の関係を算出する手段と、前記炉心の全ての前記燃料体について、前記燃料体に含まれる複数の燃料それぞれのダンコフ係数を前記黒鉛の隣接効果を取り込んで計算する手段と、計算した前記燃料のダンコフ係数と、前記実効断面積とダンコフ係数の関係と、に基づいて、前記燃料それぞれの実効断面積を計算する手段と、を備える。
【0008】
また、本開示のプログラムは、コンピュータに、1つ又は複数の燃料体が配置された、黒鉛を減速材とする炉心における単一の前記燃料体について共鳴計算を行って得られる第1の実効断面積および第1のダンコフ係数と、前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定して前記共鳴計算を行って得られる第2の実効断面積および第2のダンコフ係数と、に基づいて実効断面積とダンコフ係数の関係を算出するステップと、前記炉心の全ての前記燃料体について、前記燃料体に含まれる複数の燃料それぞれのダンコフ係数を前記黒鉛の隣接効果を取り込んで計算するステップと、計算した前記燃料のダンコフ係数と、前記実効断面積とダンコフ係数の関係と、に基づいて、前記燃料それぞれの実効断面積を計算するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の解析方法、解析装置及びプログラムによれば、黒鉛が隣接する効果を取り込んで実効断面積を計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る解析装置の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る高温ガス炉における炉心の一部の概略図である。
図3】実施形態に係る単一燃料体の概略図である。
図4】実施形態に係るダンコフ係数と実効断面積の関係を説明する図である。
図5】実施形態に係る実効断面積の計算処理の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態の解析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の解析装置について、図1図6を参照しながら説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係る解析装置の一例を示すブロック図である。
解析装置10は、黒鉛を減速材とする高温ガス炉等の全炉心体系における実効断面積を多燃料体での共鳴計算を行うことなく、単一燃料体に対する共鳴計算によって計算する。解析装置10は、入力受付部11と、計算部12と、出力部13と、記憶部14と、を備える。
【0012】
入力受付部11は、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン等の入力装置を用いて入力された情報や指示などを受け付ける。例えば、入力受付部11は、炉心における燃料等の配置パターン情報など、実効断面積の計算に必要な情報の入力を受け付ける。入力受付部11は、受け付けた情報を記憶部14に記録したり、計算部12へ出力したりする。
【0013】
計算部12は、高温ガス炉の炉心の実効断面積の計算を行う。高温ガス炉の炉心の概略を図2に示す。炉心1は、制御棒挿入用の複数の孔2bと孔2bに挿入された制御棒2aを含む六角柱の制御棒ブロック2と、多数の燃料コンパクト3aを含む六角柱のブロックである燃料体3と、黒鉛が充填された六角柱の黒鉛ブロック4と、を含む。図2に例示する炉心1は、炉心の一部を例示したものであって、炉心全体では、より多くの制御棒ブロック2、燃料体3、黒鉛ブロック4が配置されている。また、図2の例では、制御棒ブロック2の周囲に5つの燃料体3と1つの黒鉛ブロック4が配置されているが、各ブロックの配置パターンは、これに限定されず、例えば、制御棒ブロック2を取り囲むようにして、6つの燃料体3が配置されてもよいし、6つのうち2つ以上の領域に黒鉛ブロック4が配置されてもよい。燃料体3の燃料コンパクト3a以外の領域および制御棒ブロック2の孔2bの外側の領域には黒鉛が充填されている。炉心1に燃料が装荷された状態での実効断面積は、燃料体3に隣接するブロックが制御棒ブロック2か、燃料体3か、あるいは黒鉛ブロック4かによって異なる。したがって、燃料が装荷された状態における共鳴が生じる燃料物質の実効断面積を計算するためには、全炉心体系で共鳴計算を行う必要がある。しかし、この方法は計算負荷が高い。そこで本実施形態では、ダンコフ係数と実効断面積に線形関係がある性質を利用して、全炉心体系についてはダンコフ係数を求めるための輸送計算だけを行い、共鳴計算は単一燃料体を対象に実行する。そして、それらの結果を用いて、全炉心体系での実効断面積を計算する。これにより、多燃料体での共鳴計算を行うことなく、全炉心体系の実効断面積を計算する。以下にその詳細を示す。
【0014】
計算部12は、炉心1のうち燃料コンパクト3aに存在するウラン等の燃料物質については、単一の燃料体3を対象に黒鉛の隣接効果を取り込んだ共鳴計算を行って実効断面積の計算を行う。燃料物質以外については、単一の燃料体3を対象に従来どおりの実効断面積の計算によって実効断面積の計算を行う。黒鉛の隣接効果を取り込んだ共鳴計算について、図3図4を参照して説明する。図3に例示するように、計算部12は、(a)単一の燃料体3についての共鳴計算と、(b)隣接する黒鉛反射体の影響を考慮した単一の燃料体3についての共鳴計算と、を行う。
【0015】
(a)単一の燃料体3についての共鳴計算では、炉心1に燃料体3のみが配置され、燃料体3によって周囲が取り囲まれていると想定して、計算対象とする単一の燃料体3について共鳴計算を行う。共鳴計算により実効断面積とダンコフ係数のセットが得られる。
【0016】
(b)隣接する黒鉛反射体の影響を取り込んだ単一の燃料体3についての共鳴計算では、黒鉛ブロック4のみが計算対象の燃料体3の外側を取り囲んでいると想定して共鳴計算を行う。この状態を模擬するため、計算対象の燃料体3の外周部3bにおける黒鉛の数密度に、例えば、通常(黒鉛ブロック4によって囲まれていることを想定しない場合)の数倍程度(5倍~10倍でもよい)の値を設定して共鳴計算を行う。高温ガス炉の減速材は黒鉛であり、炉心に燃料体3が装荷された状態では、隣に黒鉛ブロック4や制御棒ブロック2が配置される可能性がある。このような配置の場合、共鳴領域の実効断面積は、黒鉛反射体の影響を強く受けることになるが黒鉛反射体の影響を取り込んで実効断面積を計算する一つの方法として、外周部3bに黒鉛を配置した状況を想定し、共鳴計算を行う。共鳴計算により、黒鉛反射体の影響を取り込んだ実効断面積とダンコフ係数のセットが得られる。
【0017】
実効断面積とダンコフ係数には強い線形関係が存在する。したがって、(a)の共鳴計算で得られた実効断面積とダンコフ係数のセットと、(b)の共鳴計算で得られた黒鉛反射体の影響を取り込んだ実効断面積とダンコフ係数のセットから、図4に例示するような関係性が算出できる。図4の縦軸は実効断面積、横軸はダンコフ係数である。ダンコフ係数は0~1の値をとり、1に近いほど周囲に燃料がない状態を示す。したがって(b)隣接する黒鉛反射体の影響を取り込んだ単一燃料体3の共鳴計算で得られたダンコフ係数は、(a)の共計計算で得られたダンコフ係数よりも1に近い側の値をとる。図4の点4aは(a)の共計計算で得られたダンコフ係数と実効断面積のセットに対応し、点4bは(b)の共計計算で得られたダンコフ係数と実効断面積のセットに対応する。点4aと点4bを結ぶ線4cは実効断面積とダンコフ係数の関係を示している。計算部12は、単一燃料体に対する(a)、(b)の2回の共鳴計算から実効断面積とダンコフ係数の関係を示す関数やテーブル(例えば、線4c)等を算出する。
【0018】
続いて、計算部12は、2次元全炉心体系で単色の輸送計算を行って炉心1に含まれるすべての燃料コンパクト3aのそれぞれについてダンコフ係数を計算する。この計算は、ダンコフ係数を計算するために実行する。単色の輸送計算では中性子のエネルギーについて1群のみを考慮して輸送計算が実行されるため、計算負荷が軽量で、短時間で各燃料コンパクト3aのダンコフ係数を算出することができる。また、2次元全炉心体系で輸送計算を行うことにより、炉心1における各ブロックの配置パターンに応じたダンコフ係数、つまり、実際の装荷パターンにおける燃料体3に隣接する黒鉛ブロック4や制御棒ブロック2による黒鉛の隣接効果を取り込んだ各燃料コンパクト3aのダンコフ係数が算出される。各燃料コンパクト3aのダンコフ係数を算出すると、計算部12は、各燃料コンパクト3aのダンコフ係数と実効断面積とダンコフ係数の関係を示すテーブル(例えば、線4c)から、各燃料コンパクト3aの実効断面積を計算する。例えば、ある燃料コンパクト3aについて計算されたダンコフ係数の値が図4のc1であれば、線4cから当該燃料コンパクト3aの実効断面積はe1と算出できる。また、他の燃料コンパクト3aのダンコフ係数がc2であれば、当該燃料コンパクト3aの実効断面積はe2と算出できる。このように、全炉心体系で計算したダンコフ係数を線4cで内挿または外挿することにより、計算部12は、すべての燃料コンパクト3aについての実効断面積を計算する。
【0019】
黒鉛の隣接効果は、燃料コンパクト3aの実効断面積のみに反映する。燃料コンパクト3a以外では共鳴物質が含まれないことから単一燃料体3に対して行った従来通りの実効断面積の計算結果を用いる。
【0020】
出力部13は、計算部12によって計算された実効断面積を他の装置や電子ファイル等に出力する。
記憶部14は、炉心1において制御棒ブロック2、燃料体3、黒鉛ブロック4がどのように配置されているか、燃料体3にどのような燃料がどのように配置されているかといった燃料等の配置パターン情報、各種の設定情報、計算中の処理データなどを記憶している。また、記憶部14は、実効断面積を計算するコンピュータプログラムである計算コードと、中性子輸送計算を行うコンピュータプログラムである計算コードと、を記憶している。計算部12は、実効断面積を計算する計算コードを用いて、上記の(a)、(b)の共鳴計算や燃料コンパクト3a以外の実効断面積の計算を行う。計算部12は、中性子輸送計算を行う計算コードを用いて全炉心体系の燃料コンパクト3aごとのダンコフ係数の計算を行う。
【0021】
(動作)
次に図5を用いて、解析装置10の動作について説明する。図5は、実施形態に係る実効断面積の計算処理の一例を示すフローチャートである。前提として、記憶部14には、燃料等の配置パターン情報が登録されている。最初にユーザが解析装置10へ実効断面積の計算を指示する。入力受付部11は、この指示を受け付け、計算部12は実効断面積の計算を開始する。まず、計算部12は、所定の単一の燃料体3について実効断面積の計算を行う(ステップS1)。計算部12は、燃料体3だけが一面に配置された炉心1を想定した場合の共鳴計算を行い、単一の燃料体3のダンコフ係数および実効断面積のセットを計算する。ステップS1では、単一の燃料体3に含まれる共鳴がない物質についても実効断面積が計算される。
【0022】
次に計算部12は、黒鉛反射体の隣接効果を取り込んで単一燃料体3の実効断面積の計算を行う(ステップS2)。計算部12は、黒鉛反射体の隣接効果を共鳴計算に取り込むべく、例えば、ステップS1と同じ燃料体3の外周部3bに十分に大きな値の黒鉛の数密度を設定し、共鳴計算を行う。これにより、周囲が6つの黒鉛ブロック4で囲まれた単一の燃料体3のダンコフ係数および実効断面積のセットが計算される。なお、ステップS1とステップS2の実効順序は逆でもよい。
【0023】
次に計算部12は、実効断面積とダンコフ係数の関係を示すテーブルを作成する(ステップS3)。例えば、計算部12は、ステップS1で計算したダンコフ係数および実効断面積のセットと、ステップS2で計算したダンコフ係数および実効断面積のセットを、図4に例示するようなダンコフ係数と実効断面積を座標軸とする2次元座標系にプロットし、この2点を結ぶ直線を引く。この直線が実効断面積とダンコフ係数の関係を示すテーブルである。
【0024】
次に計算部12は、全炉心体系で輸送計算を行い、黒鉛反射体を考慮して、すべての燃料コンパクト3aのダンコフ係数を計算する(ステップS4)。計算部12は、炉心1の配置パターン情報に基づいて単色の輸送計算を行うことにより、炉心1に配置された制御棒ブロック2や黒鉛ブロック4、燃料体3内の黒鉛の影響を取り込んで、炉心1に配置されたすべての燃料コンパクト3aのダンコフ係数を計算する。
【0025】
次に計算部12は、すべての燃料コンパクトの実効断面積を計算する(ステップS5)。計算部12は、ステップS4で計算したダンコフ係数のそれぞれを、ステップS3で作成した実効断面積とダンコフ係数の関係を示すテーブルで線形内外挿して、各燃料コンパクト3aの実効断面積を計算する。計算部12は、各燃料コンパクト3aの実効断面積を記憶部14に書き込んで保存する(ステップS6)。また、計算部12は、炉心1における燃料物質以外の物質(共鳴がない物質)の実効断面積については、ステップS1の単一燃料体に対する実効断面積の計算で算出された実効断面積を記憶部14に書き込んで保存する。記録された全炉心体系における実効断面積は、炉心1の炉心計算(中性子輸送計算など)に用いることができる。
【0026】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、炉心1に装荷された各種ブロック(制御棒ブロック2、燃料体3、黒鉛ブロック4)の配置パターンごとに隣接するブロックの影響を模擬する必要がなく、単一の燃料体計算において、1回の条件を変えた計算(上記の(b)の共鳴計算)を追加するだけで、隣接する黒鉛反射体を考慮した共鳴計算が可能となる。本実施形態によれば、単一の燃料体3の外周部3bにダンコフ係数が1に近づくような黒鉛の数密度を設定する。これにより、隣接する黒鉛反射体の効果を取り込んだ実効断面積の計算が可能になる。本実施形態によれば、多燃料体計算なしで、単一燃料体計算のまま、隣接する黒鉛反射体の影響を取り込んだ実効断面積の計算が可能になる。これにより、黒鉛を減速材とする炉心の実効断面積を少ない計算負荷で短時間(高速に)に計算することができる。
【0027】
図6は、解析装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。上述の解析装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0028】
なお、解析装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0029】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0030】
<付記>
実施形態に記載の解析方法、解析装置及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0031】
(1)第1の態様に係る解析方法は、1つ又は複数の燃料体が配置された黒鉛を減速材とする炉心における単一の前記燃料体について共鳴計算を行って得られる第1の実効断面積および第1のダンコフ係数と、前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定して前記共鳴計算を行うことにより得られる第2の実効断面積および第2のダンコフ係数と、に基づいて実効断面積とダンコフ係数の関係を算出するステップ、前記炉心の全ての前記燃料体について、前記燃料体に含まれる複数の燃料それぞれのダンコフ係数を前記黒鉛の隣接効果を取り込んで計算するステップ、計算した前記燃料のダンコフ係数と、前記実効断面積とダンコフ係数の関係と、に基づいて、前記燃料それぞれの実効断面積を計算するステップ、を有する。
これにより、多燃料体計算を行うことなく、単一燃料体の計算だけで、黒鉛の隣接効果を考慮した全炉心体系の実効断面積を計算することができる。
【0032】
(2)第2の態様に係る解析方法は、(1)の解析方法であって、前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定した前記共鳴計算を行うために、前記燃料体の外周部における前記黒鉛の数密度に、前記黒鉛で囲まれていることを想定しない場合と比べて所定倍の値を設定する。
これにより、黒鉛の隣接効果を取り込むことができる。
【0033】
(3)第3の態様に係る解析方法は、(1)~(2)の解析方法であって、前記関係を算出するステップでは、実効断面積とダンコフ係数が線形関係を有することに基づいて、前記第1の実効断面積および前記第1のダンコフ係数と、前記第2の実効断面積および前記第2のダンコフ係数とから前記実効断面積と前記ダンコフ係数の関係を示す関数またはテーブルを算出する。
これにより、実効断面積とダンコフ係数の関係を算出することができる。
【0034】
(4)第4の態様に係る解析方法は、(1)~(3)の解析方法であって、前記ダンコフ係数を前記黒鉛の影響を考慮して計算するステップでは、全炉心体系の単色の輸送計算を行うことにより前記ダンコフ係数を計算する。
これにより、低負荷、短時間にすべての燃料コンパクトのダンコフ係数を計算することができる。
【0035】
(5)第5の態様に係る炉心解析方法は、(1)~(4)の炉心解析方法であって、前記炉心には、前記燃料体と、黒鉛ブロックと、黒鉛および制御棒を含むブロックと、が配置される。
これにより、高温ガス炉にも適用することができる。
【0036】
(6)第6の態様に係る解析装置は、1つ又は複数の燃料体が配置された黒鉛を減速材とする炉心における単一の前記燃料体について共鳴計算を行って得られる第1の実効断面積および第1のダンコフ係数と、前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定して前記共鳴計算を行って得られる第2の実効断面積および第2のダンコフ係数と、に基づいて実効断面積とダンコフ係数の関係を算出する手段と、前記炉心の全ての前記燃料体について、前記燃料体に含まれる複数の燃料それぞれのダンコフ係数を前記黒鉛の隣接効果を取り込んで計算する手段と、計算した前記燃料のダンコフ係数と、前記実効断面積とダンコフ係数の関係と、に基づいて、前記燃料それぞれの実効断面積を計算する手段と、を備える。
【0037】
(7)第7の態様に係るプログラムは、コンピュータを、1つ又は複数の燃料体が配置された黒鉛を減速材とする炉心における単一の前記燃料体について共鳴計算を行って得られる第1の実効断面積および第1のダンコフ係数と、前記燃料体の周囲が黒鉛で囲まれていることを想定して前記共鳴計算を行って得られる第2の実効断面積および第2のダンコフ係数と、に基づいて実効断面積とダンコフ係数の関係を算出するステップと、前記炉心の全ての前記燃料体について、前記燃料体に含まれる複数の燃料それぞれのダンコフ係数を前記黒鉛の隣接効果を取り込んで計算するステップと、計算した前記燃料のダンコフ係数と、前記実効断面積とダンコフ係数の関係と、に基づいて、前記燃料それぞれの実効断面積を計算するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・炉心
2・・・制御棒ブロック
2a・・・制御棒
2b・・・孔
3・・・燃料体
3a・・・燃料コンパクト
4・・・黒鉛ブロック
10・・・解析装置
11・・・入力受付部
12・・・計算部
13・・・出力部
14・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6