(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097285
(43)【公開日】2025-06-30
(54)【発明の名称】腕時計コンポーネントをバッチ製造する方法
(51)【国際特許分類】
G04B 13/02 20060101AFI20250623BHJP
G04B 19/04 20060101ALI20250623BHJP
G04B 1/08 20060101ALI20250623BHJP
G04B 19/10 20060101ALI20250623BHJP
【FI】
G04B13/02 Z
G04B19/04 B
G04B1/08
G04B19/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024198026
(22)【出願日】2024-11-13
(31)【優先権主張番号】23217455.7
(32)【優先日】2023-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】サリフ、 ファトミール
(72)【発明者】
【氏名】バルフス、 フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】クーザン、 ピエール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】腕時計コンポーネントをバッチ製造する方法を提供する。
【解決手段】腕時計コンポーネントをバッチ製造する方法であって、a)導電性下塗り層2によって覆われた基板1を設けるステップと、b)基板1の表面の導電層2の上に感光性樹脂3の層を適用するステップと、c)コンポーネント5ならびにグリッド7および材料ブリッジ6のバッチの外形を画定するマスク4を通して樹脂層3に照射をするステップと、d)基板1の導電層2をところどころ露出させてモールドを形成するべく、感光性樹脂層3の非照射領域3bを溶解するステップと、e)導電層2から金属層をコンフォーマル電解ガルバニック析出させるステップと、f)こうして形成された一クラスタのコンポーネントを解放するべく感光性樹脂層3および基板1を除去するステップと、g)一クラスタからバッチのコンポーネントを解放すること、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計コンポーネントをバッチ製造する方法であって、
a)導電性下塗り層(2)によって覆われた基板(1)を設けるステップと、
b)前記基板(1)の表面の前記導電層(2)の上に感光性樹脂(3)の層を適用するステップと、
c)コンポーネント(5)ならびにグリッド(7)および材料ブリッジ(6)のバッチの外形を画定するマスク(4)を通して前記樹脂層(3)に照射をするステップであって、前記材料ブリッジ(6)は非機能表面において前記コンポーネント(5)を前記グリッド(7)に接続し、前記グリッド、前記材料ブリッジおよび前記腕時計コンポーネントが一クラスタのコンポーネントを形成する、ステップと、
d)前記基板の前記導電層(2)をところどころ露出させてモールドを形成するべく、前記感光性樹脂層(3)の非照射領域(3b)を溶解するステップと、
e)前記導電層(2)から金属層をコンフォーマル電解ガルバニック析出させるステップであって、前記金属層は前記一クラスタのコンポーネントを形成して前記感光性樹脂層の上面のレベルに達する、ステップと、
f)こうして形成された前記一クラスタのコンポーネントを解放するべく前記感光性樹脂層および前記基板を除去するステップと、
g)前記一クラスタから前記バッチのコンポーネントを解放することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップe)とステップf)との間にステップe’)を含み、ステップe’)の間に前記樹脂層と析出された前記金属層とを同じレベルにするために、前記樹脂層および電気析出された前記金属層が平坦化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
・少なくとも2つのレベルを有するモールドを得るべく、ステップd)の後、ステップc)およびステップd)を少なくとも一回繰り返すステップと、
・少なくとも一つの他の金属層をモールドの少なくとも第2のレベルに適用するステップと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モールドが、いくつかのレベルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記材料ブリッジ(6)は、前記コンポーネント(5)の厚さと同一の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記材料ブリッジ(6)は、前記コンポーネント(5)の厚さよりも小さい厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記腕時計コンポーネント(1)の前面、裏面および/または側面をウェハ仕上げするステップg)を含み、前記仕上げするステップは、例えば構造化層および/または装飾層などの層を堆積することから構成されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記一クラスタの腕時計コンポーネントは、ホイール、カム、針、レバー、スネイル、振動おもり、インデックスまたはアップリケから選択された同じ部品のバッチを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記一クラスタの腕時計コンポーネントは、ホイール、カム、針、レバー、振動おもり、スネイル、インデックスまたはアップリケのような異なるコンポーネントのバッチを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の腕時計コンポーネント(1)のバッチを製造する方法を実施することにより得られる腕時計コンポーネント(1)のバッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LIGA技術を用いた金属製腕時計コンポーネントのバッチを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の定義に対応する方法はすでに知られている。詳しくは、「Metallic Microstuctures Fabricated Using Photosensitive Polyimide Electroplating moulds」と題され、Journal of Microelectromechanical systems (Vol. 2, N deg. 2, June 1993)に掲載されたA. B. Frazierらによる論文には、感光性樹脂層のフォトリソグラフィによって作られたポリイミドモールド内でのガルバニック成長によるマルチレベル金属構造物の製造方法が記載されている。
【0003】
この方法は、
・基板上に犠牲金属層と、その後のガルバニック成長ステップのための下地層とを形成するステップと、
・感光性ポリイミド層を適用するステップと、
・当該ポリイミド層に、得ようとする構造物の一レベルの外形に対応するマスクを通してUV放射線を照射するステップと、
・当該ポリイミド層を、ポリイミドモールドを得るべく非照射部分を溶解することによって現像するステップと、
・当該モールドに、ガルバニック成長によってその高さまでニッケルを充填し、実質的に平坦な上面を得るステップと、
・当該上面全体に、真空スプレーによって薄いクロム層を堆積させるステップと、
・当該クロム層の上に新たな感光性樹脂層を堆積するステップと、
・得ようとする当該構造物の次レベルの外形に対応する新たなマスクを通して樹脂層に照射をするステップと、
・新しいモールドを得るべくポリイミド層を現像するステップと、
・新たなモールドに、ガルバニック成長によってその高さまでニッケルを充填するステップと、
・マルチレベル構造物およびポリイミドモールドを犠牲層および基板から分離するステップと、
・ポリイミドモールドからマルチレベル構造物を分離するステップと
を含む。
【0004】
理解すべきことだが、直前に述べた方法は、原理的には、2レベルを超える金属構造物を得るために反復的に実施され得る。
【0005】
かかる方法の欠点は、多くの部品が大量に製造されるため、衝撃、詰まり、絡み合いによって部品が劣化し得ることである。この欠点を克服するために、部品を選別することも可能だが、これにはコストと時間がかかる。
【0006】
かかる方法のもう一つの欠点は、一以上の仕上げステップを行う必要がある場合、作業中に個々の部品を正しく位置決めするために複雑な位置決めが必要になることである。この場合、部品は仕上げの段階ごとに再注文しなければならず、これにもコストと時間がかかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A. B. Frazier et al. entitled, “Metallic Microstuctures Fabricated Using Photosensitive Polyimide Electroplating moulds,” Journal of Microelectromechanical systems (Vol. 2, N deg. 2, June 1993)
【発明の概要】
【0008】
本発明は、コンポーネントを、グリッドを介して互いに取り付けられたままとし、バッチで取り扱われ、作業され、および/または装飾されるようにする解決策を与えることによって、上述した欠点を解決する。
【0009】
本発明はまた、コンポーネントをウェハのようにグリッドに取り付けたままとする一方で裏面をクリアにすることができるので、裏面作業を行うためにコンポーネントを裏返しながらコンポーネントを個々に位置決めしておく複雑な技術的手段を実施する必要なしに、作業および/または装飾を容易に行うことができる。ひとたびコンポーネントがひっくり返されると、意図された機械的手直し作業を行うには、正確な位置決めが不可欠である。
【0010】
この目的に向けて、本発明は、腕時計コンポーネントをバッチ製造する方法に関し、方法は、
a)導電性下塗り層によって覆われた基板を設けるステップと、
b)基板表面の導電性部分に感光性樹脂層を適用するステップと、
c)コンポーネントならびにグリッドおよび材料ブリッジのバッチの外形を画定するマスクを通して樹脂層に照射をするステップであって、材料ブリッジは非機能表面においてコンポーネントをグリッドに接続し、グリッド、材料ブリッジおよび腕時計コンポーネントが一クラスタのコンポーネントを形成する、ステップと、
d)基板の導電性表面をところどころ露出させてモールドを形成するべく、感光性樹脂層の非照射エリアを溶解するステップと、
e)導電層から金属層をコンフォーマル電解ガルバニック析出させるステップであって、金属層は当該一クラスタのコンポーネントを形成して感光性樹脂層の上面のレベルに達する、ステップと、
f)こうして形成された一クラスタのコンポーネントを解放するべく感光性樹脂層および基板を除去するステップと、
g)クラスタからコンポーネントを解放するステップと
を含む。
【0011】
本発明の他の有利な変形例によれば、
・方法は、ステップe)とステップf)との間にステップe’)を含み、ステップe’)の間に、樹脂層と電着金属層とを同じレベルにするために、樹脂層および電着金属層が平坦化され、
・方法は、
・少なくとも2つのレベルを有するモールドを得るべく、ステップd)の後、ステップc)およびステップd)を少なくとも一回繰り返すステップと、
・少なくとも一つの他の金属層をモールドの少なくとも第2のレベルに適用するステップと
を含み、
・モールドはいくつかのレベルを有し、
・材料ブリッジは、コンポーネントと同じ厚さを有し、
・材料ブリッジはコンポーネントよりも薄く、
・方法は、腕時計部品の前面、裏面および/または側面のウェハ仕上げのステップg)を含み、この仕上げステップは、例えば構造化層および/または装飾層などの層を堆積することからなり、
・一クラスタの腕時計コンポーネントは、ホイール、カム、針、レバー、スネイル、振動おもり、インデックスまたはアップリケから選択された同じコンポーネントの一バッチを含み、
・一クラスタの腕時計コンポーネントは、ホイール、カム、針、レバー、振動おもり、スネイル、インデックスまたはアップリケのような異なるコンポーネントの一バッチを含む。
【0012】
本発明はまた、本発明に係る製造方法を実施することによって得られる一バッチまたは一クラスタの腕時計コンポーネントに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の他の特徴及び利点が、添付図面を参照しながら、非限定的な例として与えられる以下の詳細な説明から明らかになる。
【0014】
【
図2】本発明に係る方法を使用して得られた一クラスタのコンポーネントの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、腕時計コンポーネントを製造する方法に関する。
【0016】
機能的な外形により、外形が他の腕時計部品および/またはコンポーネントと協働するように設計された機能表面を形成する腕時計コンポーネントが理解される。
【0017】
本発明に係る方法のステップa)において使用される基板1は、例えばシリコン基板によって形成される。
方法の第1のステップa)の間、導電層2が、すなわちガルバニック法により金属堆積を開始できる層が、例えば物理的気相成長法(PVD)によって堆積される。典型的には、導電層2は、Au、Ti、Pt、Ag、Cr、Pd型、またはこれらの材料のうち少なくとも2つの積層体であり、50nmから500nmの厚さを有する。
例えば、導電層2は、金または銅の層によって覆われたクロムまたはチタンの下地層から形成されてよい。
【0018】
この方法において使用される感光性樹脂3は、好ましくは、UV放射線の作用下で重合するように設計されたオクトファンクショナル(8官能性)エポキシに基づくネガ型樹脂である。
【0019】
本発明の特定の実施形態によれば、樹脂はドライフィルムの形態であり、その後、樹脂は基板1にラミネーションによって適用される。
【0020】
代替的に、感光性樹脂は、紫外線の作用下で分解するように設計されたポジ型フォトレジストとしてもよい。理解すべきことだが、本発明は、いくつかの特定の型の感光性樹脂に限定されるわけではない。当業者であれば、UVフォトリソグラフィに適した既知の樹脂すべての中から、自分のニーズに適した感光性樹脂を選択することができる。
【0021】
ステップb)の間に、遠心コーティング、スピンコーティング、スプレーなど、任意の適切な手段により、基板1上に樹脂3の層が所望の厚さまで堆積される。典型的に、樹脂の厚さは10μmから1,000μmの間、好ましくは30μmから300μmの間である。所望の厚さおよび使用される堆積または蒸着の技術に応じて、第1の樹脂層3は一以上の層に堆積される。
【0022】
その後、第1の樹脂層3が、典型的には90から120℃の間まで、堆積厚さに応じた時間、加熱され、溶媒が除去される(プリベーク段階)。この加熱によって樹脂は乾燥および硬化する。
【0023】
図1に示される次のステップc)は、形成されるコンポーネントのモールドを、ひいては光重合エリア3aおよび非光重合エリア3bを画定するマスク4を通して、第1の樹脂層3に紫外線を照射することからなる。
【0024】
本発明によれば、ステップc)の間に、マスクは、コンポーネント5のバッチの外形、ならびにグリッド7および材料ブリッジ6の外形を画定することを許容する。材料ブリッジは、非機能表面においてコンポーネントをグリッドに接続することを許容する。
【0025】
こうして、グリッド、材料ブリッジおよび腕時計部品が、プロセスの最後に一クラスタのコンポーネントを形成する。
【0026】
当業者が必要とするように、グリッドおよび/または材料ブリッジは、コンポーネントよりも薄い。
【0027】
有利には、材料ブリッジはコンポーネントを、当該コンポーネントの非機能外形においてグリッドに接続する。これは、コンポーネントの外形が他の腕時計部品および/またはコンポーネントと協働するように設計された機能表面を形成する腕時計コンポーネントを意味し、それゆえ非機能外形(または表面)とは、類推によって、他のコンポーネントと協働する可能性がない外形といえる。
【0028】
UV照射によって誘導された光重合を完了させるべく、第1の樹脂層3をアニーリングするステップ(ポストベークステップ)が必要となるかもしれない。このアニーリング工程は、90℃から95℃までの間で行われることが好ましい。光重合されたエリア3aは、ほとんどの溶媒に対して鈍感になる。しかしながら、光重合していないエリアは、引き続いての溶媒によって溶解され得る。
【0029】
その後、第1の感光性樹脂層3の非光重合エリア3bが溶解され、基板1の導電層2がところどころ露出する。この作業は、PGMEA(プロピレングリコールメチルエチルアセテート)のような適切な溶媒を使用して非光重合エリア3bを溶解することによって行われる。こうして、コンポーネントの第1のレベルを画定する光重合感光性樹脂3aのモールドが作られる。
【0030】
図1に示される次のステップd)は、電鋳法またはガルバニック析出により、導電層2から金属層を、モールドの高さよりも小さい高さに達することが好ましいブロックが形成されるまでモールド内に析出させることからなる。これにより、引き続いての機械加工時の機械的強度が良好になる。この文脈における金属という用語は、当然ながら金属合金も含む。典型的には、金属は、ニッケル、銅、金または銀を含む群から、および、合金として金・銅、ニッケル・コバルト、ニッケル・鉄、ニッケル・リン、またはニッケル・タングステンを含む群から選択される。
【0031】
随意的に、このプロセスは、ステップe)の後に、ステップe’)を含み、このステップは、機械的プロセスによって、コンポーネント5を形成する金属層、および必要に応じて光重合樹脂層3aを、製造されるコンポーネントの厚さによって予め画定された厚さまで機械加工することを含む。
【0032】
ステップf)は、基板、導電層および樹脂層を、当業者にとってその作業がよく知られているウェットエッチングステップまたはドライエッチングステップに続いて除去することにより、一クラスタのコンポーネントを解放することから構成される。
【0033】
例えば、導電層2および基板1が、ウェットエッチングによって除去される。これにより、基板1を損傷することなく、基板1から一クラスタのコンポーネントを解放することができる。特に、シリコン基板の例において、これは、水酸化カリウム(KOH)溶液でエッチングされてよい。
【0034】
この第1のシーケンスが完了すると、ステップg)に示すように、樹脂層に埋め込まれた一クラスタのコンポーネントが得られる。
【0035】
第2のシーケンスは、中間金属層のウェットエッチングとは別に、O2プラズマエッチングによって樹脂の第1の層3および第2の層6を除去することから構成される。
【0036】
その後、方法は、例えば、コンポーネントの可視面のエッジを面取りすること、またはコンポーネントにネジ切り若しくは皿穴加工を施すことのような、機械加工作業を実施するステップを含んでよい。この作業が、最終的に得られるコンポーネントの幾何学形状によって異なることは明らかである。
【0037】
このステップが完了すると、得られた一クラスタのコンポーネントが洗浄され、クラスタに固定されたままの当該一クラスタのコンポーネントが、様々な装飾的および/または機能的処理、典型的には物理的堆積または化学的堆積を受け得る。
【0038】
コンポーネントは、クランプによってクラスタに正確かつ容易に保持されたまま、様々な表面仕上げ作業を受けてよい。すなわち、腕時計コンポーネントの前面、裏面および/または側面が、コンポーネントがウェハに依然として保持されたまま作業を受け得る。仕上げステップは、腕時計コンポーネントの異なる面を覆うように、層を堆積すること、層を構造化または装飾することから構成される。これらの作業は、PVDまたはCVDを使用した機能的なもの(補強、トライボロジーなど)や美観的なもの(着色、パターニングなど)となり得る。
【0039】
最後に、最終ステップが、形成されたクラスタからコンポーネントを解放することから構成される。コンポーネントは、レーザー切断、スタンピング、機械的破断など、異なる方法を使用してクラスタから分離され得る。
【0040】
随意的なステップによれば、ステップb)の後、樹脂層3は、一定厚さまで機械加工される。有利には、この作業により、部品の幾何学形状を基板1のスケールに合わせて細かく制御することができる。ひとたび樹脂が厚くされると、機械加工の痕跡を消すべく熱処理が行われる。
【0041】
上記例は、単一レベルのコンポーネントのために記載されてきた。方法は、複数のレベルまたは段階を有するコンポーネントにも適用してよい。
【0042】
これを行うべく、ステップc)において光重合エリア3aの上に少なくとも一つの第2の導電層を堆積させることにより、マルチレベルモールドが作られる。
この第2の導電層は、第1の導電層2と同じ特性を有してよい。すなわち、Au、Ti、Pt、Ag、Cr、Pd型、またはこれらの材料の少なくとも2つの積層体であり、50nmから500nmまでの間の厚さを有してよい。
【0043】
その後、新たな感光性樹脂層が第2の導電層の上に、それを覆い、先に現像された樹脂層の開口を埋めるように堆積される。
【0044】
代替的に、プロセス開始時に形成された開口にフォトレジストが侵入することなく、第1の樹脂層を覆うように第2の樹脂層のフォトレジストを塗布することも可能である。このような結果を得るべく、例えば、ラミネートによって接着される「固形」樹脂が使用され得る。
【0045】
第2の樹脂層には、所望の微細構造の第2のレベルの外形を画定するマスクの開口を通して照射がされる。このステップでは、マスクを第1のレベルの開口に合わせる必要がある。
【0046】
当業者であれば、第2の導電層5を堆積するべく3D印刷を実施してもよい。
【0047】
このような解決策により、第2の導電層を選択的かつ正確に堆積させることができるので、光重合樹脂3aの側壁にわたって堆積物を有することがない。
【0048】
図示された次のステップは、前のステップで得られた構造物を覆うように感光性樹脂の第2の層を堆積することからなる。このステップの間も同じ樹脂が使用され、厚さはステップa)で堆積されたものよりも大きくてもよい。一般に、厚さは、得ようとするコンポーネントの幾何学形状によって異なる。
【0049】
次のステップは、コンポーネントの第2のレベルを画定するマスクを通して第2の樹脂層に照射をすることと、第2の感光性樹脂層の非照射エリアを溶解することとからなる。この段階の最後に、第1の導電層2および第2の導電層がところどころに露出した第1および第2のレベルを含むモールドが得られる。
【0050】
本発明の方法は、バネ、アンカー、ホイールなどの時計用コンポーネントの製造に特に有利に適用される。この方法のおかげで、ロバストかつ幾何学的に信頼できるコンポーネントのクラスタを得ることができる。
【0051】
方法は、クラスタ全体を「ウェハ」スケールで作るべく、または同じウェハ上でミニクラスタのサブアセンブリを作るべく、使用することができる。「ウェハ」とは、クラスタを形成するために使用される基板プレートであることが理解される。
【0052】
このような方法によれば、シリコンウェハ上のコンポーネント製造と同様の方法でコンポーネントのクラスタを使用することもできる。
【0053】
もちろん、本発明は、図示の例、すなわちカムの製造に限定されることはなく、当業者にとって明らかになる様々な変形例および修正例の影響を受けてよい。
【手続補正書】
【提出日】2025-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計コンポーネントをバッチ製造する方法であって、
a)導電層(2)によって覆われた基板(1)を設けるステップと、
b)前記基板(1)の表面の前記導電層(2)の上に感光性樹脂層(3)を適用するステップと、
c)腕時計コンポーネント(5)ならびにグリッド(7)および材料ブリッジ(6)のバッチの外形を画定するマスク(4)を通して前記感光性樹脂層(3)に照射をするステップであって、前記材料ブリッジ(6)は非機能表面において前記腕時計コンポーネント(5)を前記グリッド(7)に接続し、前記グリッド、前記材料ブリッジおよび前記腕時計コンポーネント(5)が一クラスタのコンポーネントを形成する、ステップと、
d)前記基板の前記導電層(2)をところどころ露出させてモールドを形成するべく、前記感光性樹脂層(3)の非照射領域(3b)を溶解するステップと、
e)前記導電層(2)から金属層をコンフォーマル電解ガルバニック析出させるステップであって、前記金属層は前記一クラスタのコンポーネントを形成して前記感光性樹脂層の上面のレベルに達する、ステップと、
f)こうして形成された前記一クラスタのコンポーネントを解放するべく前記感光性樹脂層(3)および前記基板(1)を除去するステップと、
g)前記一クラスタから前記バッチの前記腕時計コンポーネント(5)を解放することと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップe)とステップf)との間にステップe’)を含み、ステップe’)の間に前記感光性樹脂層(3)と析出された前記金属層とを同じレベルにするために、前記感光性樹脂層(3)および析出された前記金属層が平坦化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
・少なくとも2つのレベルを有するモールドを得るべく、ステップd)の後、ステップc)およびステップd)を少なくとも一回繰り返すステップと、
・少なくとも一つの他の金属層をモールドの少なくとも第2のレベルに適用するステップと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モールドが、いくつかのレベルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記材料ブリッジ(6)は、前記腕時計コンポーネント(5)の厚さと同一の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記材料ブリッジ(6)は、前記腕時計コンポーネント(5)の厚さよりも小さい厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記腕時計コンポーネント(5)の前面、裏面および/または側面をウェハ仕上げするステップg)を含み、前記ウェハ仕上げするステップは、層を堆積することから構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記一クラスタのコンポーネントは、ホイール、カム、針、レバー、スネイル、振動おもり、インデックスまたはアップリケから選択された同じ部品のバッチを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記一クラスタのコンポーネントは、ホイール、カム、針、レバー、振動おもり、スネイル、インデックスまたはアップリケのような異なるコンポーネントのバッチを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記堆積された層は、構造化層および/または装飾層を含む、請求項7に記載の方法。
【外国語明細書】