(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009729
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/367 20210101AFI20250109BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20250109BHJP
H01M 50/35 20210101ALI20250109BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20250109BHJP
H01M 50/383 20210101ALI20250109BHJP
【FI】
H01M50/367
H01M50/262 S
H01M50/35 201
H01M50/342 201
H01M50/383
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023213903
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】202321670812.8
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522492196
【氏名又は名称】遠景動力技術(江蘇)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology(Jiangsu)Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.66 Shentai Road,Shengang Street,Jiangyin City,Wuxi City,Jiangsu Province,214443 China
(71)【出願人】
【識別番号】523454843
【氏名又は名称】遠景動力技術(湖北)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology (Hubei) Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】523454854
【氏名又は名称】遠景動力技術(鄂爾多斯市)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology (Ordos) Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】523454865
【氏名又は名称】遠景動力技術(河北)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology (Hebei) Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】522492200
【氏名又は名称】遠景睿泰動力技術(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Intelligent Innovation Dynamics Technology (Shanghai) Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 101,Building No.2,No.2555 Xiupu Road,Kangqiao Town,Pudong New District,Shanghai,201315 China
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】呉 航
(72)【発明者】
【氏名】陳 卓烈
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】袁 朱晨
(72)【発明者】
【氏名】呉 昌軍
(72)【発明者】
【氏名】何 亞飛
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB01
5H012BB02
5H012CC04
5H012CC10
5H040AA03
5H040AA33
5H040AA37
5H040AS01
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY05
5H040AY08
5H040NN03
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】本発明は電源電池の技術分野に属し、特に、電池パックに関するものである。箱体1と上蓋21、22、23、24を含み、箱体はセル取付室と排気室とを有する。上蓋は箱体を蓋し且つ気固分離流路を有し、気固分離流路は、気固分離流路を流れる煙ガス中の粒子状物質とガスを遠心分離するように使用される。気固分離流路の入気口はセル取付室と連通し、気固分離流路の排気口は排気室に連通する。
【効果】気固分離流路を上板に直接配置することにより、煙ガス中のガスと粒子状物質の分離が達成され、分離した気固分離部材を配置する必要がない。このようにして、構造が簡易となりコストが下がる。更に、気固分離流路は煙ガスの流れにおいて粒子状物質とガスを分離するために遠心力を用いることで、良好な分離効果が提供され、詰まりが発生する可能性が低く、電池パックの安全性能が向上する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル取付室と排気室とを有する箱体と、
前記箱体を蓋し、且つ気固分離流路を有する上蓋と
を含み、
前記気固分離流路は、前記気固分離流路を流れる煙ガス中の粒子状物質とガスを遠心分離するように使用され、
前記気固分離流路の入気口は前記セル取付室と連通し、前記気固分離流路の排気口は前記排気室と連通する、
電池パック。
【請求項2】
前記気固分離流路は同一の平面に位置する、
請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記気固分離流路が位置する前記平面は前記箱体の高さ方向に垂直である、
請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記気固分離流路は、互いに連通する複数の分離流路区域を含み、
前記複数の分離流路区域は順に端と端で接続されて螺旋構造を形成する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記上蓋は前記分離流路区域にそれぞれに対応する固体格納室を有し、
各前記固体格納室は対応する前記分離流路区域の周囲外側に位置し、対応する前記分離流路区域と連通する、
請求項4に記載の電池パック。
【請求項6】
前記入気口は前記螺旋構造の外輪に位置し、前記排気口は螺旋構造の内輪に位置し、
各分離流路区域のフロー断面は前記入気口の近くから前記入気口から遠くへと順次減少する、
請求項4に記載の電池パック。
【請求項7】
前記気固分離流路のフロー断面は前記入気口に近い端から前記入気口から遠い端へと漸減する、
請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
前記上蓋は、上板と、下板と、前記上板と前記下板との間に挟まれた流路組板とを含み、
前記気固分離流路は前記流路組板に配置され、
前記下板は前記箱体に面し、前記下板の前記セル取付室を覆う領域に排気構造が配置され、
前記排気構造は前記入気口と連通する、
請求項1に記載の電池パック。
【請求項9】
前記流路組板は積層配置された流路板と緩衝板とを含み、前記流路板は前記上板と前記緩衝板との間に位置し、前記流路板の前記緩衝板に面する側には流路溝が配置され、
前記緩衝板は前記流路板に接続され、前記流路溝を覆い、且つ前記流路溝と共に前記気固分離流路を定義し、
前記流路溝の排気端は、前記排気口を形成するため前記流路板の前記上板に面する側を貫通し、
前記緩衝板には前記緩衝板を貫通する第1通気口が設けられ、前記第1通気口は前記入気口を定義するよう前記流路溝の入気端の少なくとも一部と重なる、
請求項8に記載の電池パック。
【請求項10】
前記緩衝板の前記下板に面する側には前記排気構造を覆うよう緩衝室が配置され、
前記第1通気口の入気端は、前記緩衝室と連通するよう前記緩衝室の内壁を貫通する、
請求項9に記載の電池パック。
【請求項11】
前記流路板と前記緩衝板と前記下板のそれぞれには、前記排気室と連通する第2通気口が設けられ、
前記上板の前記流路板に面する側には、前記排気口を前記流路板の前記第2通気口と連通させるよう溝が配置され、
前記セル取付室内の前記煙ガスは前記排気構造によって排出され、前記緩衝室、前記第1通気口、前記気固分離流路を順に流れ、次いで前記第2通気口を通って前記排気室に進入する、
請求項10に記載の電池パック。
【請求項12】
前記下板の前記箱体に面する側にはマイカ板が配置され、前記マイカ板には、前記排気構造に対応する脆弱構造と、前記排気室に対応する開口とが設けられる、
請求項8に記載の電池パック。
【請求項13】
前記箱体はチャンバを有し、前記チャンバ内に仕切りが取り付けられ、
前記仕切りは前記チャンバを前記セル取付室と前記排気室とに分割し、
前記セル取付室と前記排気室は、前記上蓋が前記箱体を覆ったとき前記気固分離流路のみによって互いに連通する、
請求項1に記載の電池パック。
【請求項14】
防爆弁
を更に含み、
前記防爆弁は前記箱体に取り付けられ、開状態のとき前記排気室内のガスを排出するように使用される、
請求項1に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源電池の技術分野に属し、特に、電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は交通やエネルギー貯蔵といった様々な分野で広く用いられている。一般的に、使用の要件を満たすため、リチウムセルは群を形成するよう、直列、並列、又は直列と並列の組合せで接続される。しかし、セルは、機械的酷使、電気的酷使、及び熱的酷使の単独又は組合せの下で熱暴走を起こしやすい。熱暴走を起こすセルの主な兆候は、一連の内部連鎖反応及び急激な温度上昇である。固体電解質界面(SEI)膜の分解と再生、及び電解液の気化は、セルの内圧の上昇を引き起こす。セルの内圧がセルの安全弁の開弁圧に達した場合、セルは大量のガスと粒子状物質を放出する。ここでの粒子状物質は、液滴、酸化ニッケル、銅箔を含み、そしてガスと粒子上物質は防爆弁を通じて電池パック外へ排出される。ガスと共に排出される高温の粒子状物質は、高温の煙ガスを点火させて電池パックの外で火災を起こす可能性があり、このリスクは人命と財産の安全を深刻に脅かす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、一般的な気固分離方法は、高温の粒子を遮断するために電池パックにフィルタを加えるというものである。しかし、高温の粒子を遮断するためのフィルタの使用には多くの欠点がある。セルで熱暴走が発生した後、特に熱暴走が蔓延したとき、大量の物質がセルから噴出する。フィルタの孔径が過度に小さい場合、フィルタが詰まりやすく電池パックの排気が劣り、フィルタの孔径が過度に大きい場合、フィルタは高温の粒子を遮断することができない。
【0004】
関連技術における上述した欠点を鑑み、本発明は、関連技術においてセルに熱暴走が発生した後の煙ガス中の粒子状物質の分離が困難であることによって引き起こされる、電池パック内部の劣った排気又は電池パック外の火災の問題を解決することを目的とした電池パックを提供し、電池パックの安全性能を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記を達成するため、本発明は、箱体と上蓋とを含む電池パックを提供する。箱体は、セル取付室と排気室とを有する。上蓋は箱体を蓋し且つ気固分離流路を備え、気固分離流路はそれを通過する煙ガス中の粒子状物質とガスを遠心分離するように使用される。気固分離流路の入気口はセル取付室と連通し、気固分離流路の排気口は排気室と連通する。
【0006】
任意的に、気固分離流路は同一の平面に位置する。
【0007】
任意的に、気固分離流路が位置する平面は箱体の高さ方向に垂直である。
【0008】
任意的に、気固分離流路は、互いに連通する複数の分離流路区域を含む。分離流路区域は螺旋構造を形成するよう順に端と端で接続される。
【0009】
任意的に、上蓋は分離流路区域にそれぞれに対応する固体格納室を有する。各固体格納室は対応する分離流路区域の周囲外側に位置し、対応する分離流路区域と連通する。
【0010】
任意的に、入気口は螺旋構造の外輪に位置し、排気口は螺旋構造の内輪に位置する。各分離流路区域のフロー断面は入気口付近から入気口から遠くへと順次減少する。
【0011】
任意的に、気固分離流路の断面は入気口に近い端から入気口から遠い端へと漸減する。
【0012】
任意的に、上蓋は、上板と、下板と、上板と下板との間に挟まれた流路組板とを含む。気固分離流路は流路組板に配置される。下板は箱体に面し、排気構造は下板のセル取付室を覆う領域に配置される。排気構造は入気口と連通する。
【0013】
任意的に、流路組板は積層配置された流路板と緩衝板とを含み、流路板は上板と緩衝板との間に位置し、流路板の緩衝板に面する側には流路溝が配置される。緩衝板は流路板に接続され、流路溝を覆い、且つ流路溝と共に気固分離流路を定義する。流路溝の排気端は、排気口を形成するため流路板の上板に面する側を貫通する。緩衝板には緩衝板を貫通する第1通気口が設けられ、第1通気口は入気口を定義するよう流路溝の入気端の少なくとも一部と重なる。
【0014】
任意的に、緩衝板の下板に面する側には排気構造を覆うよう緩衝室が配置される。第1通気口の入気端は、緩衝室と連通するよう緩衝室の内壁を貫通する。
【0015】
任意的に、流路板と緩衝板と下板のそれぞれには、排気室と連通する第2通気口が設けられる。上板の流路板に面する側には、排気口を流路板の第2通気口と連通させるよう溝が配置される。セル取付室内の煙ガスは排気構造によって排出され、緩衝室、第1通気口、気固分離流路を順に流れ、次いで第2通気口を通って排気室に進入する。
【0016】
任意的に、下板の箱体に面する側にはマイカ板が配置され、マイカ板には、排気構造に対応する脆弱構造と、排気室に対応する開口とが設けられる。
【0017】
任意的に、箱体はチャンバを有し、チャンバ内に仕切りが取り付けられる。仕切りはチャンバをセル取付室と排気室とに分割する。セル取付室と排気室は、上蓋が箱体を覆ったとき気固分離流路のみによって互いに連通する。
【0018】
任意的に、防爆弁を含み、防爆弁は箱体に取り付けられ、開状態のとき排気室内のガスを排出するように使用される。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、本発明の電池パックによって提供される有益な効果には下記を含む。気固分離流路を上板に直接配置することにより、煙ガス中のガスと粒子状物質の分離が達成され、分離した気固分離部材を配置する必要がない。このようにして、構造が簡易となりコストが下がる。更に、気固分離流路は煙ガスの流れにおいて粒子状物質とガスを分離するために遠心力を用いる。このようにして、良好な分離効果が提供され、詰まりが発生する可能性が低く、電池パックの安全性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の1つの実施形態による電池パックの分解図である。
【
図2】
図1の電池パックの排気経路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施を特定の実施形態によって以下に表す。当業者であれば、本明細書の開示内容から、本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0022】
本明細書の添付図面に示される構造、縮尺、サイズ等は、当業者が理解して読むために本明細書に開示される内容と共に用いられるのみであり、本発明の実施の条件を定義することを意図しておらず、技術上の意義はないことに留意されたい。本発明により達成することのできる効果や目的に影響を与えることのない如何なる構造改変、比例関係変更、又はサイズ調整も、本発明で開示される技術内容の範囲内にあるものとする。また、本明細書で述べられる「上」、「下」、「左」、「右」、「中央」、「一方」といった用語は、説明の便宜のために使用されるのみであり、本発明の適用範囲を限定するために使用されるものではない。技術内容を実質的に変更することなくその相対関係を変更又は調整する場合も、本発明の適用範囲に含まれるものと見なされる。
【0023】
図1~
図4を参照し、いくつかの実施形態において、本発明は、箱体1と上蓋2とを含む電池パックを提供する。上記部材に加え、電池パックはセル5及び/又は防爆弁4を含んでもよい。
【0024】
図1~
図4を参照し、いくつかの実施形態において、箱体1はセル取付室11と排気室12とを有し、セル5はセル取付室11内に取り付けられる。上蓋2は箱体1を覆い、且つ気固分離流路221を備え、気固分離流路221はそれを通過する煙ガス中の粒子状物質とガスを遠心分離するように使用される。気固分離流路221の入気口222はセル取付室11と連通し、気固分離流路221の排気口223は排気室12と連通する。
【0025】
任意的に、箱体1はチャンバを有し、チャンバ内に仕切り3が取り付けられる。仕切り3はチャンバをセル取付室11と排気室12とに分離する。更に、セル取付室11と排気室12は、上蓋2が箱体1を覆ったとき気固分離流路221のみによって互いに連通する。即ち、上蓋2はセル取付室11内の煙ガスが排気室12に直接進入することを防ぐため、チャンバの上部開口を覆うことができる。このようにして、セル取付室11内の煙ガスは、排気室12に進入する前に気固分離のために気固分離流路221を通過する必要がある。更に、2つの仕切り3が存在してよく、2つの仕切りは2つの排気室12を分離するため箱体1の長さ方向において間隔が開けられる。セル取付室11は2つの排気室12の間に位置し、上蓋2の気固分離流路221は排気室12に一対一で対応するよう配置されてよい。当然ながら、気固分離流路221と排気室12の数は必要に応じて調整されてもよい。例えば、各排気室12は複数の気固分離流路221に対応する。ここで、箱体1の長さ方向は図におけるX方向であってよい。
【0026】
任意的に、防爆弁4が箱体1に取り付けられ、開状態のとき排気室12内のガスを排出するように使用される。更に、防爆弁4は箱体1の側壁に取り付けられる。防爆弁4が開状態のとき、排気室12は箱体1の外部と連通し、排気室12内のガスを防爆弁4を介して箱体1の外部へ排出することができる。
【0027】
任意的に、セル5を保護し、高温煙ガスが隣接するセル5を点火することを防ぐため、セル5の頂面にマイカパッチとマイカウィングが均等に分配される。
【0028】
本実施形態により提供される電池パックにおいて、気固分離流路221を上蓋2に直接設けることにより、高温の煙ガス中のガスと粒子状物質が分離され、粒子状物質は電池パック内に残留する。このようにして、粒子状物質が電池パックの外部に噴出して電池パックの外部で火災を引き起こすことが防止され、安全性能が向上する。更に、気固分離部材を別に配置する必要がなく、部品数が減り構造が簡略化される。気固分離流路221は粒子状物質とガスを分離するために遠心力を用い、フィルタ詰まりが防止され、気固分離の信頼性が確保される。
【0029】
図1~
図4を参照し、いくつかの任意的な実施形態において、気固分離流路221は同一の平面に位置する。
【0030】
任意的に、気固分離流路221が位置する平面は、箱体1の高さ方向に垂直である。ここで、箱体1の高さ方向は垂直方向、即ち図におけるZ方向であってよい。即ち、気固分離流路221は水平面に位置してよい。
【0031】
任意的に、上蓋2と箱体1はZ方向に配置される。
【0032】
本実施形態により提供される電池パックにおいて、気固分離流路221は同一平面一位置し、これは構造レイアウトの小型化に有益である。特に、同一水平面における配置は、箱体1の高さ方向において占有される空間を減少させることができ、電池パックの全体的な体積が減少する。
【0033】
図1~
図9を参照し、いくつかの任意的な実施形態において、上蓋2は、上板21と、下板24と、上板21と下板24との間に挟まれた流路組板とを含む。気固分離流路21は流路組板に配置される。下板24は箱体1を向く、即ち、下板24は流路組板と箱体1との間に位置する。更に、下板24のセル取付室11を覆う領域に排気構造241が設けられ、排気構造241は入気口222と連通する。ここで、排気構造241は下板24をZ方向に貫通する貫通溝であってよい。
【0034】
任意的に、流路組板は、積層された流路板22と緩衝板23とを含み、流路板22は上板21と緩衝板23との間に位置する。即ち、上板21、流路板22、緩衝板23、下板24はZ方向において上から下へ順に積層されてよい。ここで、流路板22の緩衝板23に面する側に流路溝が配置される。緩衝板23は流路板22に接続され、流路溝を覆い、且つ流路溝と共に気固分離流路221を定義する。流路溝の排気端は、排気口223を形成するため流路板22の上板21に面する側を貫通する。緩衝板23には、緩衝板23を貫通する第1通気口232が設けられ、第1通気口232は排気口222を定義するよう流路溝の入気端の少なくとも一部と重なる。この構造設計の使用は加工を単純化して便利にし、生産及び加工の難易度を下げ、生産効率と製品品質の向上に貢献する。
【0035】
任意的に、排気構造241を覆うため、緩衝板23の下板24に面する側に緩衝室231が配置される。第1通気口232の入気端は、緩衝室231と連通するよう緩衝室231の内壁を貫通する。セル取付室11内の煙ガスが排気構造241から排出された後、煙ガスは先ず緩衝のため緩衝室231に進入し、煙ガスの流速が緩衝室231によって低下する。流速が低下した煙ガスは第1通気口232から排出され、流路溝の入気端に進入する。
【0036】
任意的に、流路板22、緩衝板23、各下板24には、排気室12と連通する第2通気口25が設けられる。排気口223を流路板22の第2通気口25と連通させるため、上板21の流路板22に面する側には溝211が配置される。セル取付室11内の煙ガスは排気構造241によって排出され、緩衝室231、第1通気口232、気固分離流路221を順に流れ、次いで第2通気口25を通って排気室12に進入する。具体的には、セル取付室11内の煙ガスは気固分離流路221を通過して排気口223から溝211内に排出される。溝211内の煙ガスは、流路板22の第2通気口25、緩衝板23の第2通気口25、下板24の第2通気口25を順に通過し、次いで排気室12に進入する。更に、溝211は「I」字状の溝であってよい。「I」字状溝の2つの端は第2通気口25に対応し、煙ガスは「I」字状の溝の両端から対応する第2通気口25に進入することができ、よってガス排出効率が向上する。
【0037】
任意的に、下板24の箱体1に面する側にはマイカ板26が配置される。マイカ板26は高温耐性と耐火性を有し、マイカ板26は上蓋2を保護することができる。マイカ板26には、排気構造241に対応する脆弱構造261と、排気室12に対応する開口262とが設けられる。更に、脆弱構造261はマイカ板26の一部領域を薄くすることにより形成されてよい。或いは、マイカ板261はマイカ板26をZ方向に貫通する貫通溝であってよく、セル取付室11内の煙ガスは脆弱構造261を通じて排出されて入気口222に進入することができる。
【0038】
本実施形態により提供される電池パックにおいて、上蓋2と箱体1の構造レイアウトは小型であり、占有する空間が小さく、電池パックの全体的な体積が減少する。更に、煙ガスは、上蓋2を流れるとき所定のフロー経路に従って流れることができる。このようにして、指向性排気が達成され、煙ガスが上蓋2の他の脆弱部に影響することが防止され、上蓋2の脆弱部での失敗のリスクが低減され、電池パックの安全性と信頼性が向上する。
【0039】
図1、
図2、
図4、
図5を参照し、いくつかの任意的な実施形態において、気固分離流路221は、互いに連通する複数の分離流路区域を含む。分離流路区域は順に、螺旋構造を形成するよう端と端で接続される。分離流路区域の構造はレイアウト上で小型であるのみならず、煙ガスが気固分離流路221を流れるとき円運動させることを可能とし、ガスと粒子状物質の分離が達成される。ここで、煙ガス中のガスと粒子状物質は異なる重量を有する。気固分離流路221は、煙ガスが円運動するときにガスが受ける遠心力における差を利用することによって、粒子状物質とガスを分離することができる。煙ガスは円運動に限定されないことを理解されたい。例えば、分離流路区域は接続されて波状構造を形成し、煙ガスの遠心力は連続した方向転換過程の間に粒子状物質とガスを分離するために用いられてよい。
【0040】
任意的に、上蓋2は分離流路区域に対応する固体格納室224を有する。各固体格納室224は分離流路区域の周囲外側に位置し、且つ分離流路区域と連通しており、対応する分離流路区域からの粒子状物質を対応する固体格納室224内に格納することができる。
【0041】
任意的に、入気口222は螺旋構造の外輪に位置し、排気口223は螺旋構造の内輪に位置する。更に、各分離流路区域のフロー断面は入気口222付近から入気口222から遠くへと順次減少する。即ち、入気口222に近い分離流路区域のフロー断面の面積は、入気口222から遠い分離流路区域のフロー断面の面積よりも大きい。このようにして、煙ガスの流速は入気口222に近い方向から入気口222から遠い方向へと漸増する。流路区域の面積サイズを変化させることによって煙ガスの流速を制御することは、ガスと粒子状物質の分離に有益であり、防爆弁4から粒子状物質が噴出する可能性も下がる。更に、気固分離流路221のフロー断面は入気口222に近い端から入気口222から遠い端へと漸減する。即ち、各分離流路区域のフロー断面の面積は入気口222に近い端から入気口222から遠い端へと漸減する。2つの隣接する分離流路区域の接続部でのフロー断面の面積も円滑に移り変わる。
【0042】
任意的に、分離流路区域の数は2つである。分離流路区域は、一次分離流路区域2211と、二次分離流路区域2212とを含む。高温煙ガスは一次分離流路区域2211において高温ガスと高温粒子状物質の第1の分離を完了し、第1の分離で分離された高温粒子状物質は一次分離流路区域2211に対応する固体格納室224内に格納される。本ステップにおいて、高温煙ガス中の粒子状物質が大きいほど、即ち、粒子状物質が重いほど、分離されることができる。次に、高温煙ガスと高温粒子状物質の第2の分離を完了するため、残留した高温ガスと高温粒子状物質は二次分離流路区域2212に進入する。第2の分離で分離された高温粒子状物質は二次分離流路区域2212に対応する固体格納室224内に格納される。本ステップの後に分離された煙ガスは排気口223によって気固分離流路221から排出され、この時点で、高温煙ガス中のガスと粒子状物質の分離が完了する。分離流路区域の数は必要に応じて設定されてよく、1つの区域又は2つ以上の区域であってよく、この数は本実施形態において言及した2つに限定されないことを理解されたい。異なる区域数の分離流路区域の動作原理は同じであり、ここでは繰り返し説明しない。
【0043】
本実施形態により提供される電池パックにおいて、ガスと粒子状物質の分離は、煙ガスの流速を変化させるために気固分離流路221のフロー断面の面積を変化させることによって達成される、及び/又は、ガスと粒子状物質の分離は、煙ガスの遠心動作によって達成される。このようにして、粒子状物質がガスと共に電池パックから排出されることを防止し、電池パックの外部での粒子状物質によって引き起こされる火災のリスクが低下する。
【0044】
本発明により提供される電池パックにおいて、気固分離流路221を上蓋2に配置することにより、構造を簡略化しつつ煙ガスの中のガスと粒子状物質が達成される。このようにして、電池パックの安全性能が向上し、電池パックのコストが下がり、電池パックの全体的な体積が減少する。
【0045】
本明細書の説明において、「本実施形態」、「実施例」、「具体例」といった用語を用いた説明は、該実施形態又は実施例と組み合わせて説明される特定の特徴、構造、材料、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれることを意味する。本明細書において、上述した用語の概略表現は必ずしも同一の実施形態又は実施例を指すものではない。更に、説明される特定の特徴、構造、材料、又は特性は、任意の1つ以上の実施形態又は実施例において適切な方法で組み合わせることができる。
【0046】
上述した実施形態は、本発明の原理及び効果を例示するものであり、本発明を限定することを意図していない。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく上述した実施形態を改変又は変更することができる。このため、本発明において開示される精神及び技術的思想から逸脱することなく当業者によって成される全ての同等な改変又は変更は、やはり本発明の特許請求の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電池パックは、電源電池の分野に応用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:箱体
11:セル取付室
12:排気室
2:上蓋
21:上板
211:溝
22:流路板
221:気固分離流路
2211:一次分離流路区域
2212:二次分離流路区域
222:入気口
223:排気口
224:固体格納室
23:緩衝板
231:緩衝室
232:第1通気口
24:下板
241:排気構造
25:第2通気口
26:マイカ板
261:脆弱構造
262:開口
3:仕切り
4:防爆弁
5:セル
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源電池の技術分野に属し、特に、電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は交通やエネルギー貯蔵といった様々な分野で広く用いられている。一般的に、使用の要件を満たすため、リチウムセルは群を形成するよう、直列、並列、又は直列と並列の組合せで接続される。しかし、セルは、機械的酷使、電気的酷使、及び熱的酷使の単独又は組合せの下で熱暴走を起こしやすい。熱暴走を起こすセルの主な兆候は、一連の内部連鎖反応及び急激な温度上昇である。固体電解質界面(SEI)膜の分解と再生、及び電解液の気化は、セルの内圧の上昇を引き起こす。セルの内圧がセルの安全弁の開弁圧に達した場合、セルは大量のガスと粒子状物質を放出する。ここでの粒子状物質は、液滴、酸化ニッケル、銅箔を含み、そしてガスと粒子上物質は防爆弁を通じて電池パック外へ排出される。ガスと共に排出される高温の粒子状物質は、高温の煙ガスを点火させて電池パックの外で火災を起こす可能性があり、このリスクは人命と財産の安全を深刻に脅かす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、一般的な気固分離方法は、高温の粒子を遮断するために電池パックにフィルタを加えるというものである。しかし、高温の粒子を遮断するためのフィルタの使用には多くの欠点がある。セルで熱暴走が発生した後、特に熱暴走が蔓延したとき、大量の物質がセルから噴出する。フィルタの孔径が過度に小さい場合、フィルタが詰まりやすく電池パックの排気が劣り、フィルタの孔径が過度に大きい場合、フィルタは高温の粒子を遮断することができない。
【0004】
関連技術における上述した欠点を鑑み、本発明は、関連技術においてセルに熱暴走が発生した後の煙ガス中の粒子状物質の分離が困難であることによって引き起こされる、電池パック内部の劣った排気又は電池パック外の火災の問題を解決することを目的とした電池パックを提供し、電池パックの安全性能を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記を達成するため、本発明は、箱体と上蓋とを含む電池パックを提供する。箱体は、セル取付室と排気室とを有する。上蓋は箱体を蓋し且つ気固分離流路を備え、気固分離流路はそれを通過する煙ガス中の粒子状物質とガスを遠心分離するように使用される。気固分離流路の入気口はセル取付室と連通し、気固分離流路の排気口は排気室と連通する。
【0006】
任意的に、気固分離流路は同一の平面に位置する。
【0007】
任意的に、気固分離流路が位置する平面は箱体の高さ方向に垂直である。
【0008】
任意的に、気固分離流路は、互いに連通する複数の分離流路区域を含む。分離流路区域は螺旋構造を形成するよう順に端と端で接続される。
【0009】
任意的に、上蓋は分離流路区域にそれぞれに対応する固体格納室を有する。各固体格納室は対応する分離流路区域の周囲外側に位置し、対応する分離流路区域と連通する。
【0010】
任意的に、入気口は螺旋構造の外輪に位置し、排気口は螺旋構造の内輪に位置する。各分離流路区域のフロー断面は入気口付近から入気口から遠くへと順次減少する。
【0011】
任意的に、気固分離流路の断面は入気口に近い端から入気口から遠い端へと漸減する。
【0012】
任意的に、上蓋は、上板と、下板と、上板と下板との間に挟まれた流路組板とを含む。気固分離流路は流路組板に配置される。下板は箱体に面し、排気構造は下板のセル取付室を覆う領域に配置される。排気構造は入気口と連通する。
【0013】
任意的に、流路組板は積層配置された流路板と緩衝板とを含み、流路板は上板と緩衝板との間に位置し、流路板の緩衝板に面する側には流路溝が配置される。緩衝板は流路板に接続され、流路溝を覆い、且つ流路溝と共に気固分離流路を定義する。流路溝の排気端は、排気口を形成するため流路板の上板に面する側を貫通する。緩衝板には緩衝板を貫通する第1通気口が設けられ、第1通気口は入気口を定義するよう流路溝の入気端の少なくとも一部と重なる。
【0014】
任意的に、緩衝板の下板に面する側には排気構造を覆うよう緩衝室が配置される。第1通気口の入気端は、緩衝室と連通するよう緩衝室の内壁を貫通する。
【0015】
任意的に、流路板と緩衝板と下板のそれぞれには、排気室と連通する第2通気口が設けられる。上板の流路板に面する側には、排気口を流路板の第2通気口と連通させるよう溝が配置される。セル取付室内の煙ガスは排気構造によって排出され、緩衝室、第1通気口、気固分離流路を順に流れ、次いで第2通気口を通って排気室に進入する。
【0016】
任意的に、下板の箱体に面する側にはマイカ板が配置され、マイカ板には、排気構造に対応する脆弱構造と、排気室に対応する開口とが設けられる。
【0017】
任意的に、箱体はチャンバを有し、チャンバ内に仕切りが取り付けられる。仕切りはチャンバをセル取付室と排気室とに分割する。セル取付室と排気室は、上蓋が箱体を覆ったとき気固分離流路のみによって互いに連通する。
【0018】
任意的に、防爆弁を含み、防爆弁は箱体に取り付けられ、開状態のとき排気室内のガスを排出するように使用される。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、本発明の電池パックによって提供される有益な効果には下記を含む。気固分離流路を上板に直接配置することにより、煙ガス中のガスと粒子状物質の分離が達成され、分離した気固分離部材を配置する必要がない。このようにして、構造が簡易となりコストが下がる。更に、気固分離流路は煙ガスの流れにおいて粒子状物質とガスを分離するために遠心力を用いる。このようにして、良好な分離効果が提供され、詰まりが発生する可能性が低く、電池パックの安全性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の1つの実施形態による電池パックの分解図である。
【
図2】
図1の電池パックの排気経路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施を特定の実施形態によって以下に表す。当業者であれば、本明細書の開示内容から、本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0022】
本明細書の添付図面に示される構造、縮尺、サイズ等は、当業者が理解して読むために本明細書に開示される内容と共に用いられるのみであり、本発明の実施の条件を定義することを意図しておらず、技術上の意義はないことに留意されたい。本発明により達成することのできる効果や目的に影響を与えることのない如何なる構造改変、比例関係変更、又はサイズ調整も、本発明で開示される技術内容の範囲内にあるものとする。また、本明細書で述べられる「上」、「下」、「左」、「右」、「中央」、「一方」といった用語は、説明の便宜のために使用されるのみであり、本発明の適用範囲を限定するために使用されるものではない。技術内容を実質的に変更することなくその相対関係を変更又は調整する場合も、本発明の適用範囲に含まれるものと見なされる。
【0023】
図1~
図4を参照し、いくつかの実施形態において、本発明は、箱体1と上
蓋とを含む電池パックを提供する。上記部材に加え、電池パックはセル5及び/又は防爆弁4を含んでもよい。
【0024】
図1~
図4を参照し、いくつかの実施形態において、箱体1はセル取付室11と排気室12とを有し、セル5はセル取付室11内に取り付けられる。上蓋2は箱体1を覆い、且つ気固分離流路221を備え、気固分離流路221はそれを通過する煙ガス中の粒子状物質とガスを遠心分離するように使用される。気固分離流路221の入気口222はセル取付室11と連通し、気固分離流路221の排気口223は排気室12と連通する。
【0025】
任意的に、箱体1はチャンバを有し、チャンバ内に仕切り3が取り付けられる。仕切り3はチャンバをセル取付室11と排気室12とに分離する。更に、セル取付室11と排気室12は、上蓋2が箱体1を覆ったとき気固分離流路221のみによって互いに連通する。即ち、上蓋2はセル取付室11内の煙ガスが排気室12に直接進入することを防ぐため、チャンバの上部開口を覆うことができる。このようにして、セル取付室11内の煙ガスは、排気室12に進入する前に気固分離のために気固分離流路221を通過する必要がある。更に、2つの仕切り3が存在してよく、2つの仕切りは2つの排気室12を分離するため箱体1の長さ方向において間隔が開けられる。セル取付室11は2つの排気室12の間に位置し、上蓋2の気固分離流路221は排気室12に一対一で対応するよう配置されてよい。当然ながら、気固分離流路221と排気室12の数は必要に応じて調整されてもよい。例えば、各排気室12は複数の気固分離流路221に対応する。ここで、箱体1の長さ方向は図におけるX方向であってよい。
【0026】
任意的に、防爆弁4が箱体1に取り付けられ、開状態のとき排気室12内のガスを排出するように使用される。更に、防爆弁4は箱体1の側壁に取り付けられる。防爆弁4が開状態のとき、排気室12は箱体1の外部と連通し、排気室12内のガスを防爆弁4を介して箱体1の外部へ排出することができる。
【0027】
任意的に、セル5を保護し、高温煙ガスが隣接するセル5を点火することを防ぐため、セル5の頂面にマイカパッチとマイカウィングが均等に分配される。
【0028】
本実施形態により提供される電池パックにおいて、気固分離流路221を上蓋2に直接設けることにより、高温の煙ガス中のガスと粒子状物質が分離され、粒子状物質は電池パック内に残留する。このようにして、粒子状物質が電池パックの外部に噴出して電池パックの外部で火災を引き起こすことが防止され、安全性能が向上する。更に、気固分離部材を別に配置する必要がなく、部品数が減り構造が簡略化される。気固分離流路221は粒子状物質とガスを分離するために遠心力を用い、フィルタ詰まりが防止され、気固分離の信頼性が確保される。
【0029】
図1~
図4を参照し、いくつかの任意的な実施形態において、気固分離流路221は同一の平面に位置する。
【0030】
任意的に、気固分離流路221が位置する平面は、箱体1の高さ方向に垂直である。ここで、箱体1の高さ方向は垂直方向、即ち図におけるZ方向であってよい。即ち、気固分離流路221は水平面に位置してよい。
【0031】
任意的に、上蓋2と箱体1はZ方向に配置される。
【0032】
本実施形態により提供される電池パックにおいて、気固分離流路221は同一平面に位置し、これは構造レイアウトの小型化に有益である。特に、同一水平面における配置は、箱体1の高さ方向において占有される空間を減少させることができ、電池パックの全体的な体積が減少する。
【0033】
図1~
図9を参照し、いくつかの任意的な実施形態において、上蓋2は、上板21と、下板24と、上板21と下板24との間に挟まれた流路組板とを含む。気固分離流路2
21は流路組板に配置される。下板24は箱体1を向く、即ち、下板24は流路組板と箱体1との間に位置する。更に、下板24のセル取付室11を覆う領域に排気構造241が設けられ、排気構造241は入気口222と連通する。ここで、排気構造241は下板24をZ方向に貫通する貫通溝であってよい。
【0034】
任意的に、流路組板は、積層された流路板22と緩衝板23とを含み、流路板22は上板21と緩衝板23との間に位置する。即ち、上板21、流路板22、緩衝板23、下板24はZ方向において上から下へ順に積層されてよい。ここで、流路板22の緩衝板23に面する側に流路溝が配置される。緩衝板23は流路板22に接続され、流路溝を覆い、且つ流路溝と共に気固分離流路221を定義する。流路溝の排気端は、排気口223を形成するため流路板22の上板21に面する側を貫通する。緩衝板23には、緩衝板23を貫通する第1通気口232が設けられ、第1通気口232は排気口222を定義するよう流路溝の入気端の少なくとも一部と重なる。この構造設計の使用は加工を単純化して便利にし、生産及び加工の難易度を下げ、生産効率と製品品質の向上に貢献する。
【0035】
任意的に、排気構造241を覆うため、緩衝板23の下板24に面する側に緩衝室231が配置される。第1通気口232の入気端は、緩衝室231と連通するよう緩衝室231の内壁を貫通する。セル取付室11内の煙ガスが排気構造241から排出された後、煙ガスは先ず緩衝のため緩衝室231に進入し、煙ガスの流速が緩衝室231によって低下する。流速が低下した煙ガスは第1通気口232から排出され、流路溝の入気端に進入する。
【0036】
任意的に、流路板22、緩衝板23、各下板24には、排気室12と連通する第2通気口25が設けられる。排気口223を流路板22の第2通気口25と連通させるため、上板21の流路板22に面する側には溝211が配置される。セル取付室11内の煙ガスは排気構造241によって排出され、緩衝室231、第1通気口232、気固分離流路221を順に流れ、次いで第2通気口25を通って排気室12に進入する。具体的には、セル取付室11内の煙ガスは気固分離流路221を通過して排気口223から溝211内に排出される。溝211内の煙ガスは、流路板22の第2通気口25、緩衝板23の第2通気口25、下板24の第2通気口25を順に通過し、次いで排気室12に進入する。更に、溝211は「I」字状の溝であってよい。「I」字状溝の2つの端は第2通気口25に対応し、煙ガスは「I」字状の溝の両端から対応する第2通気口25に進入することができ、よってガス排出効率が向上する。
【0037】
任意的に、下板24の箱体1に面する側にはマイカ板26が配置される。マイカ板26は高温耐性と耐火性を有し、マイカ板26は上蓋2を保護することができる。マイカ板26には、排気構造241に対応する脆弱構造261と、排気室12に対応する開口262とが設けられる。更に、脆弱構造261はマイカ板26の一部領域を薄くすることにより形成されてよい。或いは、脆弱構造261はマイカ板26をZ方向に貫通する貫通溝であってよく、セル取付室11内の煙ガスは脆弱構造261を通じて排出されて入気口222に進入することができる。
【0038】
本実施形態により提供される電池パックにおいて、上蓋2と箱体1の構造レイアウトは小型であり、占有する空間が小さく、電池パックの全体的な体積が減少する。更に、煙ガスは、上蓋2を流れるとき所定のフロー経路に従って流れることができる。このようにして、指向性排気が達成され、煙ガスが上蓋2の他の脆弱部に影響することが防止され、上蓋2の脆弱部での失敗のリスクが低減され、電池パックの安全性と信頼性が向上する。
【0039】
図1、
図2、
図4、
図5を参照し、いくつかの任意的な実施形態において、気固分離流路221は、互いに連通する複数の分離流路区域を含む。分離流路区域は順に、螺旋構造を形成するよう端と端で接続される。分離流路区域の構造はレイアウト上で小型であるのみならず、煙ガスが気固分離流路221を流れるとき円運動させることを可能とし、ガスと粒子状物質の分離が達成される。ここで、煙ガス中のガスと粒子状物質は異なる重量を有する。気固分離流路221は、煙ガスが円運動するときにガスが受ける遠心力における差を利用することによって、粒子状物質とガスを分離することができる。煙ガスは円運動に限定されないことを理解されたい。例えば、分離流路区域は接続されて波状構造を形成し、煙ガスの遠心力は連続した方向転換過程の間に粒子状物質とガスを分離するために用いられてよい。
【0040】
任意的に、上蓋2は分離流路区域に対応する固体格納室224を有する。各固体格納室224は分離流路区域の周囲外側に位置し、且つ分離流路区域と連通しており、対応する分離流路区域からの粒子状物質を対応する固体格納室224内に格納することができる。
【0041】
任意的に、入気口222は螺旋構造の外輪に位置し、排気口223は螺旋構造の内輪に位置する。更に、各分離流路区域のフロー断面は入気口222付近から入気口222から遠くへと順次減少する。即ち、入気口222に近い分離流路区域のフロー断面の面積は、入気口222から遠い分離流路区域のフロー断面の面積よりも大きい。このようにして、煙ガスの流速は入気口222に近い方向から入気口222から遠い方向へと漸増する。流路区域の面積サイズを変化させることによって煙ガスの流速を制御することは、ガスと粒子状物質の分離に有益であり、防爆弁4から粒子状物質が噴出する可能性も下がる。更に、気固分離流路221のフロー断面は入気口222に近い端から入気口222から遠い端へと漸減する。即ち、各分離流路区域のフロー断面の面積は入気口222に近い端から入気口222から遠い端へと漸減する。2つの隣接する分離流路区域の接続部でのフロー断面の面積も円滑に移り変わる。
【0042】
任意的に、分離流路区域の数は2つである。分離流路区域は、一次分離流路区域2211と、二次分離流路区域2212とを含む。高温煙ガスは一次分離流路区域2211において高温ガスと高温粒子状物質の第1の分離を完了し、第1の分離で分離された高温粒子状物質は一次分離流路区域2211に対応する固体格納室224内に格納される。本ステップにおいて、高温煙ガス中の粒子状物質が大きいほど、即ち、粒子状物質が重いほど、分離されることができる。次に、高温煙ガスと高温粒子状物質の第2の分離を完了するため、残留した高温ガスと高温粒子状物質は二次分離流路区域2212に進入する。第2の分離で分離された高温粒子状物質は二次分離流路区域2212に対応する固体格納室224内に格納される。本ステップの後に分離された煙ガスは排気口223によって気固分離流路221から排出され、この時点で、高温煙ガス中のガスと粒子状物質の分離が完了する。分離流路区域の数は必要に応じて設定されてよく、1つの区域又は2つ以上の区域であってよく、この数は本実施形態において言及した2つに限定されないことを理解されたい。異なる区域数の分離流路区域の動作原理は同じであり、ここでは繰り返し説明しない。
【0043】
本実施形態により提供される電池パックにおいて、ガスと粒子状物質の分離は、煙ガスの流速を変化させるために気固分離流路221のフロー断面の面積を変化させることによって達成される、及び/又は、ガスと粒子状物質の分離は、煙ガスの遠心動作によって達成される。このようにして、粒子状物質がガスと共に電池パックから排出されることを防止し、電池パックの外部での粒子状物質によって引き起こされる火災のリスクが低下する。
【0044】
本発明により提供される電池パックにおいて、気固分離流路221を上蓋2に配置することにより、構造を簡略化しつつ煙ガスの中のガスと粒子状物質が達成される。このようにして、電池パックの安全性能が向上し、電池パックのコストが下がり、電池パックの全体的な体積が減少する。
【0045】
本明細書の説明において、「本実施形態」、「実施例」、「具体例」といった用語を用いた説明は、該実施形態又は実施例と組み合わせて説明される特定の特徴、構造、材料、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれることを意味する。本明細書において、上述した用語の概略表現は必ずしも同一の実施形態又は実施例を指すものではない。更に、説明される特定の特徴、構造、材料、又は特性は、任意の1つ以上の実施形態又は実施例において適切な方法で組み合わせることができる。
【0046】
上述した実施形態は、本発明の原理及び効果を例示するものであり、本発明を限定することを意図していない。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく上述した実施形態を改変又は変更することができる。このため、本発明において開示される精神及び技術的思想から逸脱することなく当業者によって成される全ての同等な改変又は変更は、やはり本発明の特許請求の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の電池パックは、電源電池の分野に応用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1:箱体
11:セル取付室
12:排気室
2:上蓋
21:上板
211:溝
22:流路板
221:気固分離流路
2211:一次分離流路区域
2212:二次分離流路区域
222:入気口
223:排気口
224:固体格納室
23:緩衝板
231:緩衝室
232:第1通気口
24:下板
241:排気構造
25:第2通気口
26:マイカ板
261:脆弱構造
262:開口
3:仕切り
4:防爆弁
5:セル
【外国語明細書】