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  • 特開-超音波診断装置、方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097516
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】超音波診断装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20250624BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213742
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓実
(72)【発明者】
【氏名】大井 伸秀
(72)【発明者】
【氏名】増田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 広治
(72)【発明者】
【氏名】平山 貢大
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 武
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601DD01
4C601DD09
4C601DD15
4C601EE11
4C601JB34
4C601JC06
4C601JC07
4C601JC11
4C601KK31
4C601KK47
(57)【要約】
【課題】厚み付き画像において適切な計測を可能にすること。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、生成部と、推定部とを備える。生成部は、被検体に対して送信された超音波の反射波信号に基づいて、厚み付き画像を生成する。推定部は、厚み付き画像上で指定された計測点の周囲の画像情報に基づいて、当該計測点の3次元的な位置を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して送信された超音波の反射波信号に基づいて、厚み付き画像を生成する生成部と、
前記厚み付き画像上で指定された計測点の周囲の画像情報に基づいて、当該計測点の3次元的な位置を推定する推定部と、
を備える、超音波診断装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記厚み付き画像において前記計測点を含む領域を設定し、前記厚み付き画像の厚み方向の各位置における前記領域に含まれる画素の輝度情報に基づいて、前記厚み方向における前記計測点の位置を推定する、請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記厚み方向の各位置において前記領域内の画素間における輝度差をそれぞれ算出し、算出した輝度差に基づいて、前記厚み方向における前記計測点の位置を推定する、請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記輝度差が閾値を超えた前記厚み方向の位置を、前記計測点の位置と推定する、請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記輝度差が閾値を超えた前記厚み方向の位置が複数ある場合に、ユーザーからの選択操作を受け付ける受付部をさらに備える、請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記推定部によって推定された前記計測点の3次元的な位置を示す表示画像を表示させる表示制御部をさらに備える、請求項1~5のいずれか1つに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記推定部によって推定された前記計測点の3次元的な位置と、前記厚み付き画像上で指定された計測点の位置とを比較表示させる、請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記推定部によって推定された前記計測点の3次元的な位置に基づいて計測処理を実行する計測部をさらに備え、
前記表示制御部は、前記計測処理の結果を表示させる、請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記生成部は、前記超音波の反射波信号に基づいて前記推定部によって推定された計測点の位置を含む断面画像又は3次元画像を生成し、
前記表示制御部は、前記断面画像又は前記3次元画像に前記計測点の3次元的な位置を示した表示画像を表示させる、請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
被検体に対して送信された超音波の反射波信号に基づいて、厚み付き画像を生成し、
前記厚み付き画像上で指定された計測点の周囲の画像情報に基づいて、当該計測点の3次元的な位置を推定する、
ことを含む、方法。
【請求項11】
被検体に対して送信された超音波の反射波信号に基づいて、厚み付き画像を生成し、
前記厚み付き画像上で指定された計測点の周囲の画像情報に基づいて、当該計測点の3次元的な位置を推定する、
各処理をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、超音波診断装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置は、超音波プローブから3次元的に送信された超音波の反射波信号に基づいて、MPR(Multi Planer Reconstruction)画像や、CPR(Curved Planar Reconstruction)画像を生成することができる。また、超音波診断装置は、所定の断面(例えば、MPR画像の断面やCPR画像の断面)に対して所定の厚みで画素値を投影した厚み付き画像を生成することもできる。
【0003】
上記した厚み付き画像は、胎児の背骨の観察や、子宮頸管の距離計測による早産リスクの評価、胎児の大腿骨の長さの計測などの産科での用途の他、腫瘍の大きさを計測するためにも利用することができ、今後の臨床での利用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-314518号公報
【特許文献2】特開平11-203454号公報
【特許文献3】特開2015-177928号公報
【特許文献4】特開2000-346616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、厚み付き画像において適切な計測を可能にすることである。ただし、本明細書等に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、本明細書等に開示の実施形態が解決する他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の超音波診断装置は、生成部と、推定部とを備える。生成部は、被検体に対して送信された超音波の反射波信号に基づいて、厚み付き画像を生成する。推定部は、前記厚み付き画像上で指定された計測点の周囲の画像情報に基づいて、当該計測点の3次元的な位置を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係る厚み付き画像の生成例を説明するための図である。
図2B図2Bは、第1の実施形態に係る厚み付き画像の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態に係る推定機能による推定処理の一例を説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る表示処理の一例を説明するための図である。
図6図6は、変形例1に係る表示処理の一例を説明するための図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る面積計測の一例を説明するための図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る面積計測の一例を説明するための図である。
図9図9は、第3の実施形態に係る計測処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本願に係る超音波診断装置、方法及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る超音波診断装置、方法及びプログラムは、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置10の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置10は、超音波プローブ1と、ディスプレイ2と、入力インターフェース3と、装置本体4とを有し、超音波プローブ1と、ディスプレイ2と、入力インターフェース3とが装置本体4と通信可能に接続される。
【0010】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、送受信回路41から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体からの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体4と着脱自在に接続される。
【0011】
超音波プローブ1から被検体に超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体の体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0012】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブであってもよく、或いは、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブや、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブであってもよい。
【0013】
ディスプレイ2は、超音波診断装置10の操作者が入力インターフェース3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)や、装置本体4において生成された超音波画像等を表示する。また、ディスプレイ2は、装置本体4の処理状況や処理結果を操作者に通知するために、各種のメッセージや表示情報を表示する。また、ディスプレイ2は、スピーカーを有し、音声を出力することもできる。
【0014】
入力インターフェース3は、所定の位置(例えば、ROI(Region Of Interest)の位置等)の設定等を行うために操作され、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース3は、後述する処理回路45に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し処理回路45へと出力する。なお、本明細書において入力インターフェース3は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路45へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0015】
装置本体4は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像を生成する装置であり、図1に示すように、送受信回路41と、信号処理回路42と、画像メモリ43と、記憶回路44と、処理回路45とを有する。送受信回路41、信号処理回路42、画像メモリ43、記憶回路44、及び、処理回路45は、相互に通知可能に接続される。図1に示す超音波診断装置10においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路44へ記憶されている。送受信回路41、信号処理回路42、及び、処理回路45は、記憶回路44からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0016】
送受信回路41は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延部は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0017】
なお、送受信回路41は、後述する処理回路45の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0018】
また、送受信回路41は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0019】
信号処理回路42は、例えば、送受信回路41から受信した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理等を行って、サンプル点ごとの信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。信号処理回路42により生成されたBモードデータは、処理回路45に出力される。
【0020】
また、信号処理回路42は、例えば、送受信回路41から受信した反射波データより、移動体のドプラ効果に基づく運動情報を、走査領域内の各サンプル点で抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。具体的には、信号処理回路42は、反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。信号処理回路42により得られた運動情報(血流情報)は、処理回路45に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、若しくはこれらの組み合わせ画像としてディスプレイ2にカラー表示される。
【0021】
画像メモリ43は、処理回路45が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ43は、信号処理回路42が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ43が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、処理回路45を経由して表示用の超音波画像となる。
【0022】
記憶回路44は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路44は、送受信回路41、信号処理回路42、及び、処理回路45の処理結果を記憶する。また、記憶回路44は、必要に応じて、画像メモリ43が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、記憶回路44が記憶するデータは、図示しないインターフェースを介して、外部装置へ転送することができる。
【0023】
処理回路45は、超音波診断装置10の処理全体を制御する。具体的には、処理回路45は、入力インターフェース3を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路44から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路41、及び、信号処理回路42の処理を制御する。また、処理回路45は、画像メモリ43が記憶する表示用の超音波画像をディスプレイ2にて表示するように制御する。
【0024】
処理回路45は、図1に示すように、制御機能451と、画像生成機能452と、推定機能453と、計測機能454とを実行する。ここで、制御機能451は、受付部及び表示制御部の一例である。推定機能453は、推定部の一例である。計測機能454は、計測部の一例である。
【0025】
制御機能451は、入力インターフェース3を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路44から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路41、信号処理回路42の処理を制御する。ここで、制御機能451は、被検体の対象部位の厚み付き画像を生成するための超音波の送受信を制御することができる。また、制御機能451は、超音波画像や、種々の表示情報をディスプレイ2に表示させるように制御する。例えば、制御機能451は、推定機能453によって推定された計測点の3次元的な位置を示す表示画像を表示させる。また、制御機能451は、入力インターフェース3を介してユーザーからの操作を受け付け、受け付けた操作に応じた処理を実行する。なお、制御機能451による処理については、後に詳述する。
【0026】
画像生成機能452は、信号処理回路42により生成されたデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成機能452は、信号処理回路42が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表した超音波画像を生成する。また、画像生成機能452は、信号処理回路42が生成したドプラデータから移動体情報(血流情報や組織の移動情報)を表す超音波画像を生成する。ドプラデータに基づく超音波画像は、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
【0027】
ここで、画像生成機能452は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像を生成する。具体的には、画像生成機能452は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像を生成する。また、画像生成機能452は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成機能452は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0028】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成機能452が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、画像生成機能452は、信号処理回路42が3次元のデータ(3次元Bモードデータ及び3次元ドプラデータ)を生成した場合、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、ボリュームデータを生成する。そして、画像生成機能452は、ボリュームデータに対して、各種レンダリング処理を行って、表示用の2次元画像データを生成することもできる。
【0029】
例えば、画像生成機能452は、ボリュームデータを任意の断面で切り出して再構成することでMPR画像を生成したり、ボリュームデータを任意の曲線に沿った曲面で切り出して再構成することでCPR画像を生成したりすることができる。
【0030】
ここで、本実施形態に係る画像生成機能452は、被検体に対して送信された超音波の反射波信号に基づいて、厚み付き画像を生成する。具体的には、画像生成機能452は、所定の断面に対して所定の厚みで画素値を投影した厚み付き画像を生成する。例えば、画像生成機能452は、厚み方向に含まれる複数の断面(スライス)の反射波信号に対して厚み方向に各種処理を実行することで、厚み付き画像を生成する。一例を挙げると、画像生成機能452は、複数のスライスの輝度情報を厚み方向に加算した厚み付き画像を生成する。なお、画像生成機能452は、MPR画像の断面に基づく厚み付きMPR画像や、CPR画像の曲面に基づく厚み付きCPR画像、厚み方向に最大輝度を投影させた厚み付きMIP(Maximum Intensity Projection)画像などを生成することができる。
【0031】
推定機能453は、厚み付き画像上で指定された計測点の周囲の画像情報に基づいて、当該計測点の3次元的な位置を推定する。ここで、画像情報とは、反射波信号と、反射波信号に対して各種処理を行って得た反射波データと、反射波データに対して包絡線検波処理等を行って得たBモードデータと、Bモードデータから生成した超音波画像とを含む。なお、推定機能453による処理については、後に詳述する。
【0032】
計測機能454は、推定機能453によって推定された計測点の3次元的な位置に基づいて計測処理を実行する。具体的には、厚み付き画像上に指定された計測点について、推定機能453によって推定された計測点の3次元的な位置に基づく計測処理を実行する。例えば、計測機能454は、推定機能453によって推定された計測点で形成される直線や曲線の長さや、計測点で形成される領域の面積などを計測する。
【0033】
ここで、第1の実施形態に係る超音波診断装置10は、厚み付き画像において適切な計測を可能にする。例えば、厚み付き画像は、厚み方向のデータが欠落して、ユーザーが想定した位置とは異なる位置を計測する可能性があり、適切な計測が行えない場合がある。図2Aは、第1の実施形態に係る厚み付き画像の生成例を説明するための図である。図2Bは、第1の実施形態に係る厚み付き画像の一例を示す図である。
【0034】
例えば、図2Aに示すように、被検体Pの対象部位Tに対して5つの断面(スライスs1~s5)でスキャンが実行されて、厚み方向に加算することで厚み付き画像が生成される場合、各スライスに描出される対象部位Tを含む1つの領域が対象部位Tとして示された厚み付き画像が表示されることとなる。すなわち、厚み方向に並ぶスライスs1~s5では、それぞれ描出される対象部位T1が異なっているが、厚み付き画像では、その情報が反映されない(各スライスにおける対象部位T1のサイズ、形状の情報が欠落する)。従って、厚み付き画像上に描出された対象部位T1に対してユーザーが指定操作を行った場合、厚み方向の位置においてユーザーが意図した位置とは異なる位置が指定される可能性がある。
【0035】
例えば、対象部位t1が3次元空間内で図2Bに示す状態であり、ユーザーが左側から観察する厚み付き画像が生成された場合、ユーザーによって観察される厚み付き画像は、図2Bの左側面で示される状態となる。ここで、対象部位t1の長さ(対象部位t1の一方の端部Aから他方の端部A’までの距離)を計測するために、ユーザーが図2Bの左側面で示された厚み付き画像に対して端部の位置の指定操作を行った場合、厚み方向の情報が反映されず、左側面内の長さが計測されることとなる。
【0036】
具体的には、図2Bの左側面で示された厚み付き画像で対象部位t1の端部を指定すると、左側面上での位置が指定されることとなる。すなわち、本来計測したい対象部位t1の長さは、以下の式(1)で表される長さであるのに対して、実際に計測される長さは、以下の式(2)で表される長さとなる。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
このように、厚み付き画像を対象とした計測では、実際に計測している長さが、対象部位そのものの長さではなく、対象部位を任意の2次元断面に投影したときの長さとなる可能性があり、厚み付き画像において適切な計測が行えない場合がある。そこで、超音波診断装置10は、厚み付き画像上で指定された計測点の周囲の画像情報に基づいて、当該計測点の3次元的な位置を推定することで、厚み付き画像において適切な計測を可能にする。
【0040】
以下、超音波診断装置10による処理の手順について、図3を用いて説明した後、各処理の詳細について説明する。図3は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理の手順を示すフローチャートである。
【0041】
例えば、図3に示すように、本実施形態では、制御機能451が、厚み付き画像を生成するためのスキャンを実行する(ステップS101)。例えば、制御機能451は、対象部位に対して複数の断面でスキャンを行うことで、3次元的に反射波信号を収集するスキャンを実行する。上記ステップS101の処理は、例えば、処理回路45が、制御機能451に対応するプログラムを記憶回路44から呼び出して実行することにより実現される。
【0042】
続いて、画像生成機能452が、厚み付き画像を生成する(ステップS102)。さらに、制御機能451は、生成された厚み付き画像をディスプレイ2に表示させる。上記ステップS102の処理は、例えば、処理回路45が、画像生成機能452に対応するプログラムを記憶回路44から呼び出して実行することにより実現される。
【0043】
続いて、推定機能453は、厚み付き画像に対して計測点が指定されたか否かを判定して(ステップS103)、計測点が指定された場合に(ステップS103、Yes)、計測点の3次元的な位置(厚み方向の位置)を推定する(ステップS104)。上記ステップS103及びS104の処理は、例えば、処理回路45が、推定機能453に対応するプログラムを記憶回路44から呼び出して実行することにより実現される。
【0044】
続いて、制御機能451が、推定された位置をディスプレイ2に表示させる(ステップS105)。上記ステップS106の処理は、例えば、処理回路45が、制御機能451に対応するプログラムを記憶回路44から呼び出して実行することにより実現される。
【0045】
さらに、制御機能451が、推定した位置に基づく計測結果をディスプレイ2に表示させる(ステップS106)。上記ステップS106の処理は、例えば、処理回路45が、計測機能454及び制御機能451に対応するプログラムを記憶回路44から呼び出して実行することにより実現される。
【0046】
以下、超音波診断装置10によって実行される各処理の詳細について、説明する。なお、ユーザーは、以下のスキャンに先立ち、超音波診断装置10に被検体登録を行い、厚み付き画像での検査を開始する操作を実行する。また、以下の説明では、ユーザーは、超音波プローブ1を母体に当てて厚み付き2次元画像での胎児の大腿を描出して、大腿骨長(FL:Femur Length)を計測する検査を行う場合を例に挙げる。
【0047】
(スキャン)
ステップS101において説明したように、制御機能451は、厚み付き画像を生成するためのスキャンを実行する。例えば、制御機能451は、図2Bに示す対象部位t1(胎児の大腿)を対象とした厚み付き画像を生成するためのスキャンを実行する。一例を挙げると、制御機能451は、図2Bの厚み付き画像化領域に含まれる対象部位t1を3次元的に所定数の断面(スライス)でスキャンするように、送受信回路41を制御する。ここで、厚み付き画像化領域内のスライス数は、任意に設定することができる。
【0048】
なお、厚み付き画像を生成するためのスキャンは、3次元的に反射波信号を収集することができれば、どのようなスキャンが行われる場合でもよい。すなわち、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブを手動又は自動で移動させながらスキャンすることで反射波信号を収集する場合であってもよく、或いは、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブでスキャンすることで反射波信号を収集する場合でもよい。
【0049】
(厚み付き画像の生成処理)
ステップS102において説明したように、画像生成機能452は、制御機能451による制御によって生成されたBモードデータに基づいて、厚み付き画像を生成する。例えば、画像生成機能452は、図2Bの厚み付き画像化領域の矢印で示される方向をスライス方向とした複数の直線断面に基づいて、厚み付き画像を生成する。一例を挙げると、画像生成機能452は、スライス方向に並んだ複数のスライス画像の輝度値を加算した厚み付き画像を生成する。すなわち、画像生成機能452は、厚み付き画像化領域の矢印で示される方向を厚み方向とした厚み付き画像を生成する。
【0050】
なお、画像生成機能452は、3次元的に収集されたBモードデータに対して任意の断面を設定して厚み付き画像を生成することができる。すなわち、画像生成機能452は、3次元のBモードデータに対して任意の直線断面を設定して再構成することで得られるMPR画像を用いて複数のスライス画像を生成し、生成したスライス画像から厚み付き画像を生成することができる。また、画像生成機能452は、3次元のBモードデータに対して任意の曲線断面を設定して再構成することで得られるCPR画像を用いて複数のスライス画像を生成し、生成したスライス画像から厚み付き画像を生成することができる。
【0051】
(計測点の指定)
ステップS103において説明したように、推定機能453は、画像生成機能452によって生成された厚み付き画像に対して計測点が指定されたか否かを判定する。例えば、画像生成機能452によって厚み付き画像が生成されると、制御機能451は、生成された厚み付き画像をディスプレイ2に表示するように制御する。
【0052】
ユーザーは、ディスプレイ2に表示された厚み付き画像を観察しながら、入力インターフェース3を操作することで、厚み付き画像に対して計測点を指定する。例えば、ユーザーは、厚み付き画像を観察しながら、計測を行うためのGUIを操作して、距離計測や、面積計測などを行うための計測点を厚み付き画像上で指定する。一例を挙げると、ユーザーは、胎児の大腿の厚み付き画像に対して、FLを計測するために大腿骨の両端部に計測点を指定する。すなわち、ユーザーは、厚み付き画像に示された図2BにおけるA及びA’の位置を厚み付き画像上で指定する。
【0053】
推定機能453は、ユーザーによって厚み付き画像上に計測点が指定されたか否かを判定し、計測点が指定された場合に、以下で説明する計測点の3次元的な位置の推定処理を行う。
【0054】
(計測点の推定処理)
ステップS104において説明したように、推定機能453は、ユーザーによって計測点が指定されると、指定された計測点について、3次元的な位置を推定する推定処理を実行する。具体的には、推定機能453は、ユーザーによって厚み付き画像上で指定された計測点の厚み方向の位置を推定する。
【0055】
例えば、推定機能453は、厚み付き画像において計測点を含む領域を設定し、厚み付き画像の厚み方向の各位置における領域に含まれる画素の輝度情報に基づいて、厚み方向における計測点の位置を推定する。図4は、第1の実施形態に係る推定機能453による推定処理の一例を説明するための図である。なお、図4では、厚み付き画像化領域について4つの断面(スライス画像s11~s14)が生成され、生成されたスライス画像s11~s14が加算されて厚み付き画像が生成されている場合を示す。
【0056】
例えば、図4の厚み付き画像に示すように、対象部位t1(胎児の大腿)の端部に計測点p1が設置されると、推定機能453は、設置された計測点p1の周囲に計測点p1を含む領域r1を設定する。そして、推定機能453は、設定した領域r1に含まれる画素の輝度情報に基づいて、計測点p1の厚み方向(スライス方向)の位置がスライス画像s11~s14のいずれの位置に相当するかを推定する。なお、領域r1のサイズ、形状は、任意に設定することができる。例えば、妊娠20週の胎児のFLは約30mmであることから、このサイズに基づいて領域r1のサイズが設定されてもよい。
【0057】
例えば、推定機能453は、厚み方向の各位置において領域内の画素間における輝度差をそれぞれ算出し、算出した輝度差に基づいて、厚み方向における計測点の位置を推定する。一例を挙げると、推定機能453は、図4に示すスライス画像s11において領域r1に含まれる複数の画素の輝度値をそれぞれ取得し、取得した複数の画素間で輝度値を算出する。ここで、推定機能453は、例えば、領域r1に含まれる複数の画素において最も高い輝度値と最も低い輝度値との差を算出する。
【0058】
同様に、推定機能453は、図4に示すスライス画像s12~s14について、各画像の領域r1に含まれる画素の輝度値をそれぞれ取得する。そして、推定機能453は、各画像について、取得した輝度値の輝度差をそれぞれ算出する。
【0059】
推定機能453は、上記したように、各スライス画像における領域r1内の輝度差をそれぞれ算出すると、算出した輝度差に基づいて、厚み方向における計測点p1の位置を推定する。ここで、推定機能453は、例えば、輝度差が閾値を超えた厚み方向の位置を、計測点の位置と推定する。例えば、推定機能453は、図4に示すように、輝度差が閾値を超えたスライス画像s13に相当する厚み方向の位置を計測点p1の厚み方向の位置と推定する。上記した輝度差と比較する閾値は、任意に設定することができ、例えば、計測処理の対象となる対象部位の種別に応じて設定されてもよい。
【0060】
なお、図4では、対象部位t1(胎児の大腿)の一方の端部に対して計測点p1が指定された場合のみを示しているが、実際には、対象部位t1(胎児の大腿)の他方の端部に対しても計測点p2が指定される。そして、推定機能453は、指定された計測点p2についても、上記した推定処理を同様に実行する。
【0061】
上記した実施形態では、領域r1に含まれる画素の最も高い輝度値と最も低い輝度値との輝度差を算出して閾値と比較する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、領域r1において隣接する画素間(或いは、所定の画素数が離れた位置にある画素間)の輝度差をそれぞれ算出し、最も大きい輝度差を閾値と比較する場合でもよい。
【0062】
(推定した位置の表示処理)
ステップS105において説明したように、制御機能451は、推定機能453によって推定された計測点の3次元的な位置を表示するように制御する。具体的には、制御機能451は、推定された計測点の位置を示す表示画像をディスプレイ2に表示させる。例えば、制御機能451は、推定機能453によって推定された計測点の3次元的な位置と、厚み付き画像上で指定された計測点の位置とを比較表示させる。
【0063】
図5は、第1の実施形態に係る表示処理の一例を説明するための図である。ここで、図5では、図2Bに示した対象部位t1を対象として、ユーザーによって指定された計測点p1及びp2の厚み方向の位置を推定した場合の例を示す。例えば、図5に示すように、厚み付き画像化領域に含まれる対象部位t1(胎児の大腿)の端部Aに対して計測点P1が指定され、端部A’に対して計測点p2が指定されると、推定機能453が、上記した推定処理により、計測点P1に基づいて推定点p3を推定し、計測点p2に基づいて推定点p4を推定する。
【0064】
制御機能451は、図5の右側の図に示すように、計測点p1及びp2と、推定点P3及びp4とが示された表示画像を表示させる。例えば、制御機能451は、胎児の大腿骨に対する、計測点p1、計測点p2、推定点P3及び推定点p4の位置が示されたレンダリング画像を表示させる。かかる場合には、画像生成機能452が、被検体に対して3次元的に送信された超音波の反射波信号に基づいて3次元画像(例えば、レンダリング画像)を生成する。そして、制御機能451は、生成された3次元画像に対して計測点p1、計測点p2、推定点P3及び推定点p4の位置を示した表示画像を表示させる。
【0065】
ここで、制御機能451は、計測点と推定点とを異なる表示形態で表示させることで、計測点と推定点とが識別可能となるように表示させることができる。例えば、制御機能451は、計測点p1及び計測点p2を白抜きの点で表示させ、推定点p3及び推定点p4を黒塗りの点で表示させる。
【0066】
なお、推定された計測点の3次元的な位置の表示は、上記した比較表示に限らない。すなわち、制御機能451は、推定された計測点の3次元的な位置のみを示した表示画像を表示させることもできる。例えば、制御機能451は、推定点P3及び推定点p4の位置のみを示した表示画像を表示させることもできる。かかる場合には、例えば、画像生成機能452は、被検体に対して3次元的に送信された超音波の反射波信号に基づいて推定機能453によって推定された計測点(推定点p3及びp4)の位置を含む断面画像を生成する。制御機能451は、生成された断面画像に対して推定点P3及び推定点p4の位置を示した表示画像を表示させる。
【0067】
(計測結果の表示処理)
ステップS106において説明したように、制御機能451は、推定機能453によって推定された計測点の位置に基づく計測結果を表示させる。具体的には、制御機能451は、推定機能453によって推定された計測点の位置に基づいて計測機能454が計測した結果を表示させる。例えば、制御機能451は、図5に示す推定点p3と推定点p4との間の距離を、表示画像とともに表示させる。かかる場合には、まず、計測機能454が、推定点p3から推定点p4までの長さを計測する。そして、制御機能451は、計測された結果を表示画像とともに表示させる。
【0068】
ここで、計測結果を表示するタイミングは、適宜設定することができる。例えば、推定機能453によって推定点p3及びp4が推定された時点で計測機能454が計測処理を実行して表示される場合でもよく、或いは、推定点p3及びp4がユーザーによって承認された時点で計測機能454が計測処理を実行して表示される場合でもよい。ユーザーの承認を受ける場合、制御機能451は、推定点p3及びp4を示す表示画像を表示させる際に、承認を受け付けるためのGUIをディスプレイ2に表示させるように制御することができる。
【0069】
上記したように、超音波診断装置10は、ユーザーによって指定された計測点の厚み方向の位置を推定した推定点により計測処理を実行することで、厚み付き画像において適切な計測を可能にする。例えば、超音波診断装置10は、厚み付き画像の厚み方向(奥行方向)に傾いたFLをずれなく計測することができる。
【0070】
(変形例1)
上記した実施形態では、ユーザーによって指定された1つの計測点に対して1つの推定点が推定される場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、1つの計測点に対して複数の推定点が推定される場合でもよい。
【0071】
例えば、推定機能453が、ユーザーによって指定された計測点を含む領域内の画素の輝度差を閾値と比較した場合に、閾値を超えるスライス画像が複数となる可能性がある。かかる場合には、制御機能451は、輝度差が閾値を超えた厚み方向の位置が複数ある場合に、ユーザーからの選択操作を受け付ける。具体的には、制御機能451は、推定機能453によって推定された複数の推定点を示す表示画像を表示させるとともに、複数の推定点に対する選択操作を行うためのGUIを表示させる。
【0072】
図6は、変形例1に係る表示処理の一例を説明するための図である。ここで、図6では、ユーザーによって指定された計測点p1に基づいて推定点p3及びp5が推定され、計測点p2に基づいて推定点p4及びp6が推定された場合の表示処理を示す。例えば、制御機能451は、図6に示すように、胎児の大腿骨に対して、計測点p1及びp2と、推定点P3、p4、p5及びp6とが示された表示画像を表示させる。
【0073】
そして、制御機能451は、推定点p3及びp5から1点を選択する選択操作と、推定点p4及びp6から1点を選択する選択操作とを、入力インターフェース3を介してユーザーから受け付ける。計測機能454は、制御機能451が選択操作を受け付けると、選択された推定点を用いた計測処理を実行する。そして、制御機能451は、計測機能454による計測結果をディスプレイ2に表示させる。
【0074】
なお、制御機能451は、推定点の位置のみを示した断面画像を表示させることもできる。かかる場合には、例えば、画像生成機能452は、被検体に対して3次元的に送信された超音波の反射波信号に基づいて推定機能453によって推定された計測点の位置を含む複数の断面画像を生成する。すなわち、画像生成機能452は、推定点p3及びp4を含む断面画像と、推定点p3及びp6を含む断面画像と、推定点p5及びp4を含む断面画像と、推定点p5及びp4を含む断面画像とを生成する。制御機能451は、生成された各断面画像に対して推定点の位置をそれぞれ示した表示画像を表示させる。
【0075】
上記した変形例1では、複数の推定点からユーザーが1つの推定点を選択する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、複数の推定点から自動で1つの推定点が選択される場合でもよい。例えば、推定機能453は、計測点を含む領域内の画素における輝度差が閾値を超えた推定点のうち、輝度差が最大となる推定点を、計測点の3次元的な位置として推定する。一例を挙げると、推定機能453は、推定点p3及びp5のうち、輝度差が大きい方の推定点を選択する。また、推定機能453は、推定点p4及びp6のうち、輝度差が大きい方の推定点を選択する。
【0076】
また、例えば、推定機能453は、領域に含まれる画素の輝度値のヒストグラムを生成し、生成したヒストグラムに基づいて、複数の推定点から1つの推定点を選択することもできる。一例を挙げると、推定機能453は、領域内の画素における輝度差が閾値を超えた推定点のうち、領域内の輝度値のヒストグラムが所定の状態となる推定点を計測点の3次元的な位置として推定する。ここで、上記した所定の状態としては、例えば、輝度値の分布が、高輝度側及び低輝度側にそれぞれ偏っている状態が挙げられる。すなわち、中間の輝度値が少ないほどよい状態として、推定機能453が選択処理を実行する。
【0077】
また、例えば、厚み付き画像MIP画像を対象として計測点が設置された場合、設置された位置の輝度値に近い輝度値を有するスライス画像が選択される場合でもよい。すなわち、推定機能453は、領域内の画素における輝度差が閾値を超えた推定点のうち、推定点における輝度値がユーザーによって指定された計測点における輝度値に最も近い推定点を、計測点の3次元的な位置として推定する。
【0078】
上記したように、第1の実施形態によれば、画像生成機能452は、被検体に対して送信された超音波の反射波信号に基づいて、厚み付き画像を生成する。推定機能453は、厚み付き画像上で指定された計測点の周囲の画像情報に基づいて、当該計測点の3次元的な位置を推定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置10は、厚み付き画像上で指定された計測点の厚み方向の位置を推定することができ、厚み付き画像上での計測におけるずれを無くし、厚み付き画像において適切な計測を可能にする。
【0079】
また、第1の実施形態によれば、推定機能453は、厚み付き画像において計測点を含む領域を設定し、厚み付き画像の厚み方向の各位置における領域に含まれる画素の輝度情報に基づいて、厚み方向における計測点の位置を推定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置10は、厚み付き画像上で指定された計測点の厚み方向の位置を精度良く推定することを可能にする。
【0080】
また、第1の実施形態によれば、推定機能453は、厚み方向の各位置において領域内の画素間における輝度差をそれぞれ算出し、算出した輝度差に基づいて、厚み方向における計測点の位置を推定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置10は、厚み付き画像上において輝度のギャップがある位置に配置された計測点の3次元的な位置を精度良く推定することを可能にする。
【0081】
また、第1の実施形態によれば、推定機能453は、輝度差が閾値を超えた厚み方向の位置を、計測点の位置と推定する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置10は、計測点の厚み方向の位置を容易に推定することを可能にする。
【0082】
また、第1の実施形態によれば、制御機能451は、推定機能453によって推定された計測点の3次元的な位置を示す表示画像を表示させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置10は、推定した計測点の3次元的な位置をユーザーに提示することを可能にする。
【0083】
また、第1の実施形態によれば、制御機能451は、推定機能453によって推定された計測点の3次元的な位置と、厚み付き画像上で指定された計測点の位置とを比較表示させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置10は、ユーザーに対してよりわかりやすい情報を提示することを可能にする。
【0084】
また、第1の実施形態によれば、計測機能454は、推定機能453によって推定された計測点の3次元的な位置に基づいて計測処理を実行する。制御機能451は、計測処理の結果を表示させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置10は、適切な結果を表示することを可能にする。
【0085】
また、第1の実施形態によれば、画像生成機能452は、超音波の反射波信号に基づいて推定機能453によって推定された計測点の位置を含む断面画像又は3次元画像を生成する。制御機能451は、断面画像又は3次元画像に計測点の3次元的な位置を示した表示画像を表示させる。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置10は、計測点の3次元的な位置を観察しやすい表示画像で表示させることを可能にする。
【0086】
また、変形例1によれば、制御機能451は、輝度差が閾値を超えた厚み方向の位置が複数ある場合に、ユーザーからの選択操作を受け付ける。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置10は、計測点の3次元的な位置をより正確に決定することを可能にする。
【0087】
(第2の実施形態)
上記した第1の実施形態では、距離を計測する場合の処理について説明した。第2の実施形態では面積を計測する場合の処理について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態と比較して、計測機能454による計測処理の内容が異なる。以下、この点を中心に説明する。
【0088】
図7は、第2の実施形態に係る計測処理の一例を説明するための図である。ここで、図7においては、心臓の右心室の面積を計測する場合の例を示す。例えば、心臓を対象とした計測では、右心室の収縮期の面積と拡張期の面積とがそれぞれ計測される場合があり、この場合、右心室の壁を明瞭に観察することができるように厚み付き画像が用いられるケースがある。
【0089】
かかる場合には、まず、制御機能451は、心臓を3次元的にスキャンした反射波信号を経時的に収集することで、収縮期における心臓の3次元のBモードデータと、拡張期における心臓の3次元のBモードデータとを収集する。そして、画像生成機能452は、各Bモードデータから、図7に示すように右心室が描出された、収縮期の厚み付き画像と拡張期の厚み付き画像をそれぞれ生成する。制御機能451は、収縮期の厚み付き画像と拡張期の厚み付き画像を表示させ、各厚み付き画像に対して右心室の位置を指定するための曲線L1の入力操作を受け付ける。なお、図7では、右心室を指定するために曲線L1を用いているが、実施形態はこれに限定されるものではなく、複数の点で指定される場合でもよい。
【0090】
推定機能453は、収縮期の右心室に対して指定された曲線L1上の各位置について、第1の実施形態で説明したように厚み方向の位置を推定することで、収縮期の右心室の内壁の位置を推定する。また、推定機能453は、拡張期の右心室に対して指定された曲線L1上の各位置について、第1の実施形態で説明したように厚み方向の位置を推定することで、拡張期の右心室の内壁の位置を推定する。
【0091】
計測機能454は、推定機能453によって推定された収縮期の右心室の内壁の位置を用いて、収縮期の右心室の面積を計測する。また、計測機能454は、推定機能453によって推定された拡張期の右心室の内壁の位置を用いて、拡張期の右心室の面積を計測する。なお、制御機能451は、第1の実施形態と同様に、推定機能453によって推定された右心室の内壁の位置を示す表示画像を表示させることができる。
【0092】
また、厚み付き画像を用いて面積を計測するケースとしては、例えば、頸動脈の狭窄率を算出する場合も挙げられる。図8は、第2の実施形態に係る計測処理の一例を説明するための図である。ここで、図8においては、頸動脈の面積を計測する場合の例を示す。例えば、頸動脈を観察する場合、最も狭窄している部分を探索するために、厚み付き画像を用いることが有用であることから、図8に示すように、頸動脈に対して厚み付き画像化領域が設定され、厚み付き画像が生成される。
【0093】
ここで、頸動脈を観察するための厚み付き画像は、図8の中央の図に示すように、短軸断面画像が用いられる。すなわち、ユーザーは、頸動脈の短軸断面がきれいに描出された厚み付き画像を表示させ、入力インターフェース3を用いて面積を計測するための計測点を配置する。例えば、ユーザーは、図8の中央の図に示すように、頸動脈の短軸断面を示す厚み付き画像に対して、プラークを除く血管部分に複数の計測点p7を配置する。
【0094】
推定機能453は、複数の計測点p7について、第1の実施形態で説明したように厚み方向の位置をそれぞれ推定することで、計測点p7それぞれに対応する推定点p8を推定する。そして、制御機能451は、推定点p8を示す表示画像を表示させる。
【0095】
計測機能454は、推定機能453によって推定された推定点p8を用いて、頸動脈の面積を計測する。ここで、厚み付き画像では、最も狭窄している断面が示されている。したがって、上記した処理によって推定された推定点を用いて計測される面積は、最も狭窄している断面の面積となる。計測機能454は、上記した断面で血管全体の面積と、プラークを除いた血管部分の面積とを算出することで、狭窄率を算出する。
【0096】
上記したように、第2の実施形態によれば、超音波診断装置10は、厚み付き画像において面積を計測する場合にも適切な計測を行うことができる。
【0097】
(第3の実施形態)
上記した第1、第2の実施形態では、直線断面に基づいて生成された厚み付き画像を対象とする場合について説明した。第3の実施形態では、曲線断面に基づいて生成された厚み付き画像を対象とする場合について説明する。第3の実施形態では、第1、第2の実施形態と比較して、計測の対象となる厚み付き画像が異なる。以下、この点を中心に説明する。
【0098】
曲線断面に基づく厚み付き画像(例えば、CPR画像の曲面に基づく厚み付きCPR画像)を用いて計測するケースとしては、例えば、胎児の背骨の長さを計測する場合が挙げられる。図9は、第3の実施形態に係る計測処理の一例を説明するための図である。ここで、図9においては、胎児の背骨の長さを計測する場合の例を示す。
【0099】
ユーザーは、胎児の背骨がきれいに描出された厚み付きCPR画像を表示させ、入力インターフェース3を用いて長さを計測するための計測点を配置する。例えば、ユーザーは、図9に示すように、胎児の背骨の曲線(曲線L2)に沿って計測点p11~p16を配置する。
【0100】
推定機能453は、計測点p11~p16について、第1の実施形態で説明したように厚み方向の位置をそれぞれ推定することで、計測点p11~p16に対応する推定点をそれぞれ推定する。ここで、推定機能453は、厚み付きCPR画像の生成に用いた複数の曲線断面を対象として、計測点p11~p16に対応する推定点を推定する。すなわち、推定機能453は、計測点p11~p16に対してそれぞれ領域を設定し、設定した領域の輝度情報を取得する際に、厚み付きCPR画像の生成に用いた複数の曲線断面からそれぞれ取得する。そして、推定機能453は、取得した輝度情報に基づいて、計測点p11~p16に対応する推定点を推定する。
【0101】
計測機能454は、推定機能453によって推定された計測点を用いて、胎児の背骨の長さを計測する。なお、制御機能451は、第1の実施形態と同様に、推定機能453によって推定された推定点を示す表示画像を表示させることができる。
【0102】
上記したように、第3の実施形態によれば、超音波診断装置10は、曲線断面に基づく厚み付き画像においても適切な計測を行うことができる。
【0103】
(その他の実施形態)
上記した実施形態では、推定機能453が、スライス画像(厚み付き画像を生成した断面)ごとの領域について、輝度情報を用いた処理を行う場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、ユーザーによって指定された計測点を含む3次元の領域について、輝度情報を用いた処理を行う場合でもよい。例えば、3次元の領域内に含まれる複数の画素の輝度差を算出して、算出した輝度差に基づいて推定点が推定される場合でもよい。
【0104】
また、上記した実施形態では、計測点を含む画素の輝度情報を用いて推定処理が行われる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、画像情報であればどのようなデータが用いられる場合でもよい。すなわち、反射波信号、反射波データ、Bモードデータなどを用いて推定処理が行われる場合でもよい。
【0105】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0106】
なお、上記の実施形態の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0107】
また、上述した実施形態で説明した方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD、USBメモリ及びSDカードメモリ等のFlashメモリ等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0108】
以上、説明したとおり、実施形態によれば、厚み付き画像において適切な計測を可能にする。
【0109】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0110】
10 超音波診断装置
451 制御機能
452 画像生成機能
453 推定機能
454 計測機能
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9