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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097518
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】給湯制御システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/152 20220101AFI20250624BHJP
   F24H 15/414 20220101ALI20250624BHJP
   F24H 15/355 20220101ALI20250624BHJP
   F24H 15/269 20220101ALI20250624BHJP
   F24H 15/168 20220101ALI20250624BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20250624BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20250624BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
F24H15/152
F24H15/414
F24H15/355
F24H15/269
F24H15/168
H02J3/14 130
H02J3/00 130
H02J13/00 311T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213746
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】島田 将行
(72)【発明者】
【氏名】早川 秀樹
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC06
5G064CB12
5G064CB21
5G064DA07
5G066AA02
5G066KA12
5G066KB03
5G066KD00
(57)【要約】
【課題】電力系統から施設に供給される電力を利用して水を加熱する加熱部を有する給湯器が運転できる期間を適切に設定できる給湯制御システムを提供する。
【解決手段】電力系統1から施設2に供給される電力を利用して水を加熱する加熱部17を有する給湯器16の動作を制御する給湯制御システムであって、複数の単位期間で構成される制御対象期間において、給湯器16が設けられている施設2で予測される単位期間毎の合計予測電力負荷のうち、給湯器16の予測第1電力負荷を含まない、単位期間毎の予測第2電力負荷を特定し、当該単位期間毎の予測第2電力負荷が所定の閾値より大きくなる単位期間を含む時間帯を、加熱部17の加熱運転を禁止する運転禁止期間に設定し、閾値は、制御対象期間での複数の単位期間毎の予測第2電力負荷の中央値より大きい値に設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から施設に供給される電力を利用して水を加熱する加熱部を有する給湯器の動作を制御する給湯制御システムであって、
複数の単位期間で構成される制御対象期間において、前記給湯器が設けられている前記施設で予測される前記単位期間毎の合計予測電力負荷のうち、前記給湯器の予測第1電力負荷を含まない、前記単位期間毎の予測第2電力負荷を特定し、
当該単位期間毎の前記予測第2電力負荷が所定の閾値より大きくなる前記単位期間を含む時間帯を、前記加熱部の加熱運転を禁止する運転禁止期間に設定し、
前記閾値は、前記制御対象期間での複数の前記単位期間毎の前記予測第2電力負荷の中央値より大きい値に設定する給湯制御システム。
【請求項2】
前記施設には、前記電力系統から一括して受電した電力が分配して供給される複数の需要者区画が設けられ、複数の前記需要者区画の少なくとも一つに前記給湯器が設けられる請求項1に記載の給湯制御システム。
【請求項3】
前記閾値は、前記施設に設けられている前記給湯器が前記単位期間の全てで運転した場合の単位電力負荷を所定値で除算した値を、前記中央値に対して加算して得られる値に設定される請求項2に記載の給湯制御システム。
【請求項4】
前記閾値は、前記施設に設けられている前記給湯器が前記単位期間の全てで運転した場合の単位電力負荷を、所定値で除算し、且つ、前記施設に設けられる前記需要者区画の数の内の前記給湯器が設けられている前記需要者区画の数の割合を乗算した値を、前記中央値に対して加算して得られる値に設定される請求項2に記載の給湯制御システム。
【請求項5】
前記所定値は5~50の範囲の値である請求項3又は4に記載の給湯制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統から施設に供給される電力を利用して水を加熱する加熱部を有する給湯器の動作を制御する給湯制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統では、多くの電力需要者が同じ時間帯に電気機器を使用すると、その時間帯での複数の電力需要者による合計消費電力が大きくなる。例えば1日の中では、朝方や夕方などの特定の時間帯で、複数の電力需要者による合計消費電力が大きくなる傾向がある。
【0003】
気温が特に高くなる日や気温が特に低くなる日などでは、電力需要者による冷房用途や暖房用途での消費電力が大きくなり、電力系統での電気の使用率が非常に高くなることがある。その場合、電力需要者による合計消費電力を下げるために、電力需要者に対する節電要請などが出されることもある。他には、電力需要者が使用する特定の電気機器の運転時間帯を時間的にずらすことで、特定の時間帯での複数の電力需要者による合計消費電力を小さくさせる手法も提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2023-47383号公報)には、電力需要地に設置された複数の給湯機を制御する給湯制御装置等が記載されている。この給湯機は、電力を利用して水を加熱する加熱部としてのヒートポンプユニットを備える貯湯式の給湯機である。そして、特許文献1に記載の発明では、計画対象期間において電力需要地のうちの複数の給湯機以外で消費される消費電力が予測され、予測された時間帯別の消費電力に基づいて、複数の給湯機のそれぞれが沸上げ運転を実行することを禁止する沸上げ禁止期間が決定され、計画対象期間のうちの沸上げ禁止期間以外の時間帯に、複数の給湯機のそれぞれが沸上げ運転を実行する時間帯が計画される。
【0005】
特許文献1には、沸上げ運転の実行が禁止される沸上げ禁止期間として、第1の禁止期間と第2の禁止期間とが記載されている。第1の禁止期間は、1日の中で消費電力が大きいことが想定される予め定められた期間である。第2の禁止期間は、時間帯別の消費電力の予測値が基準値(例えば1日における時間帯別の消費電力の予測値の平均値など)より大きい時間帯とその前後の時間帯とに設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2023-47383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明では、第2の禁止期間を設定するために、1日における時間帯別の消費電力の予測値の平均値が利用されているが、消費電力の予測値が他と比べて非常に小さい時間帯が存在する場合、即ち、その時間帯の予測値によって平均値が非常に小さくなる場合、消費電力の予測値がその平均値を上回る時間帯の数が非常に多くなることも考えられる。
【0008】
その場合、1日の中の大部分の時間帯が第2の禁止期間に設定され、給湯機の沸上げ運転を実行できる時間帯が一部の時間帯に限定されてしまう。つまり、複数の給湯機の沸上げ運転が一部の時間帯に集中して実行され、その時間帯での消費電力が非常に大きくなってしまうという問題が生じ得る。
【0009】
或いは、消費電力の予測値が他と比べて非常に大きい時間帯が存在する場合、即ち、その時間帯の予測値によって平均値が非常に大きくなる場合、他の時間帯の消費電力の予測値は平均値を下回ることもある。その結果、消費電力の予測値が他と比べて非常に大きい時間帯及びその前後の時間帯のみが第2の禁止期間に設定され、他に消費電力が比較的大きい時間帯が存在していたとしても、その時間帯は沸上げ運転の実行が禁止されない時間帯になる場合もある。そして、沸上げ運転の実行が禁止されない時間帯に実際に沸上げ運転が実行されると、その時間帯での消費電力が非常に大きくなってしまうという問題が生じ得る。
【0010】
このように、特許文献1に記載のように1日における時間帯別の消費電力の予測値の平均値を利用して1日の各時間帯を沸上げ禁止期間とそれ以外の期間とに分けることは好ましくない。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力系統から施設に供給される電力を利用して水を加熱する加熱部を有する給湯器が運転できる期間を適切に設定できる給湯制御システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る給湯制御システムの特徴構成は、電力系統から施設に供給される電力を利用して水を加熱する加熱部を有する給湯器の動作を制御する給湯制御システムであって、
複数の単位期間で構成される制御対象期間において、前記給湯器が設けられている前記施設で予測される前記単位期間毎の合計予測電力負荷のうち、前記給湯器の予測第1電力負荷を含まない、前記単位期間毎の予測第2電力負荷を特定し、
当該単位期間毎の前記予測第2電力負荷が所定の閾値より大きくなる前記単位期間を含む時間帯を、前記加熱部の加熱運転を禁止する運転禁止期間に設定し、
前記閾値は、前記制御対象期間での複数の前記単位期間毎の前記予測第2電力負荷の中央値より大きい値に設定する点にある。
【0013】
前記閾値は、前記施設に設けられている前記給湯器が前記単位期間の全てで運転した場合の単位電力負荷を所定値で除算した値を、前記中央値に対して加算して得られる値に設定されていてもよい。
【0014】
前記閾値は、前記施設に設けられている前記給湯器が前記単位期間の全てで運転した場合の単位電力負荷を、所定値で除算し、且つ、前記施設に設けられる前記需要者区画の数の内の前記給湯器が設けられている前記需要者区画の数の割合を乗算した値を、前記中央値に対して加算して得られる値に設定されていてもよい。
【0015】
前記所定値は5~50の範囲の値であってもよい。
【0016】
上記特徴構成によれば、給湯器が設けられている施設で予測される単位期間毎の合計予測電力負荷のうち、給湯器の予測第1電力負荷を含まない、単位期間毎の予測第2電力負荷が、制御対象期間での複数の単位期間毎の予測第2電力負荷の中央値より大きい値に設定される所定の閾値より大きくなる単位期間を含む時間帯が、加熱部の加熱運転を禁止する運転禁止期間に設定される。つまり、予測第2電力負荷が相対的に大きい単位期間には給湯器が運転されなくなるため、そのような予測第2電力負荷が相対的に大きい単位期間での施設の合計の電力負荷が給湯器の運転によって更に大きくなることを回避できる。そのため、施設の単位期間の電力負荷が大きいほど電気料金が高くなるような料金体系であっても、電気料金の増大を抑制できる。また、上記閾値は制御対象期間での複数の単位期間毎の予測第2電力負荷の中央値を用いて設定されるため、制御対象期間に含まれる複数の単位期間のうち、半数以上の単位期間は運転禁止期間には設定されない。つまり、給湯器を運転してもよい単位期間を数多く設定できるため、複数の給湯器が時間的に分散して運転されることが期待される。
従って、電力系統から施設に供給される電力を利用して水を加熱する加熱部を有する給湯器が運転できる期間を適切に設定できる給湯制御システムを提供できる。
【0017】
本発明に係る給湯制御システムの別の特徴構成は、前記施設には、前記電力系統から一括して受電した電力が分配して供給される複数の需要者区画が設けられ、複数の前記需要者区画の少なくとも一つに前記給湯器が設けられる点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、電力系統から電力を一括して受電する、複数の需要者区画が設けられる施設において、その施設で予測される単位期間毎の合計予測電力負荷のうち、給湯器の予測第1電力負荷を含まない、単位期間毎の予測第2電力負荷が相対的に大きい単位期間には給湯器が運転されなくなる。そのため、予測第2電力負荷が相対的に大きい単位期間での電力負荷が給湯器の運転によって更に大きくなることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】給湯制御システムが設けられる設備の構成を示す図である。
図2】制御装置が行う運転禁止期間設定処理を説明するフローチャートである。
図3】施設で予測される単位期間毎の合計予測電力負荷のうち、給湯器の予測第1電力負荷を含まない、単位期間毎の予測第2電力負荷の例を示す図である。
図4】単位期間毎の予測第2電力負荷と閾値との関係を示すグラフである。
図5】給湯制御システムが設けられる別の設備の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図面を参照して、本発明の実施形態に係る給湯制御システムについて説明する。
図1は、給湯制御システムが設けられる設備の構成を示す図である。図示するように、電力系統1から電力が供給される施設2には、複数の需要者区画10が設けられる。施設2では、受電設備3を用いて電力系統1から一括受電した電力が各需要者区画10に供給される。つまり、施設2には、電力系統1から一括して受電した電力が分配して供給される複数の需要者区画10が設けられる。例えば、施設2は集合住宅の建物であり、その場合には各需要者区画10は各住戸になる。或いは、施設2は店舗等の事業所が集まった建物であり、その場合には各需要者区画10は各事業所になる。図1には、2つの需要者区画10A、10Bを描いているが、施設2に設けられる需要者区画10の数は適宜設定可能である。
【0021】
尚、施設2は、受電設備3を介して電力が供給されるように実現された範囲を意味しており、複数の需要者区画10が単一の建物に含まれる場合や別々の建物に含まれる場合などがあり得る。
【0022】
需要者区画10には、給湯器16、電力負荷部18、貯湯タンク12などが設けられる。給湯器16は、電力系統1から施設2に供給される電力を利用して水を加熱する加熱部17を有する。加熱部17は、電動圧縮機を用いるヒートポンプユニットによって水を加熱する装置、電動圧縮機を用いるヒートポンプユニットと燃料を燃焼する燃焼器とを併用して水を加熱する装置、電気ヒーターによって水を加熱する装置などを用いて実現できる。
【0023】
本実施形態では、給湯器16は、蓄熱装置としての貯湯タンク12に貯える湯水を加熱可能に構成されている。具体的には、貯湯タンク12と給湯器16との間で湯水が循環する循環路15が設けられ、貯湯タンク12から給湯器16に供給される湯水が給湯器16で加熱された後、貯湯タンク12へ戻るように構成されている。また、貯湯タンク12には、上水が供給される給水路13と、貯えている湯水が排出される出湯路14とが接続される。貯湯タンク12に貯えている湯水には、給水路13を介して給水圧が加わっている。そして、出湯路14を介して貯湯タンク12の内部の湯水が排出されると、それに応じて給水路13から貯湯タンク12へと上水が供給される。貯湯タンク12で熱を蓄えることができるため、需要者区画10で湯水が消費されるタイミングより前に給湯器16を運転しておくことができ、給湯器16の運転時期の自由度が高まる。
【0024】
電力負荷部18は、給湯器16とは別に、電力系統1から施設2に供給される電力を利用して動作する装置であり、例えば需要者区画10に設けられる照明装置や空調装置などの機器である。
【0025】
需要者区画10には、給湯器16及び電力負荷部18に供給される電力を測定する消費電力測定部11が設けられる。消費電力測定部11の測定結果は、個別制御部19に伝達される。また、個別制御部19は、給湯器16が加熱運転を開始した加熱開始時刻と加熱運転を終了した加熱停止時刻を監視して収集している。
【0026】
需要者区画10には、貯湯タンク12から出湯路14を介して出湯される熱量を測定する消費熱量測定部20が設けられる。例えば、消費熱量測定部20は、出湯される湯水の温度及び単位時間当たりの流量を測定する。消費熱量測定部20の測定結果は、個別制御部19に伝達される。
【0027】
需要者区画10において、個別制御部19は、過去の単位時間毎の消費電力及び消費熱量の推移についての情報を含む過去データを記憶部(図示せず)に記憶させている。例えば、過去データは、過去の4週間分などの単位時間毎の消費電力及び消費熱量の推移についての情報を、曜日、平日や祝日などの属性データと共に含む。その結果、個別制御部19は、過去データを参照して、例えば翌日の単位時間毎の予測消費電力及び予測消費熱量の推移を導出できる。そして、個別制御部19は、例えば電力系統1からの受電電力の消費一次エネルギー、エネルギーコスト及び排出二酸化炭素量や、貯湯タンク12からの放熱量などを考慮して、翌日の単位時間毎の予測消費熱量を賄えることを条件にして、給湯器16の運転メリット(例えば、消費一次エネルギーの少なさ度合、エネルギーコストの小ささ度合又は排出二酸化炭素量の少なさ度合、あるいはそれらの組み合わせ)が大きくなるような予定運転期間を決定し、その予定運転期間に、貯湯タンク12に貯えている湯水を加熱する加熱運転を行う。但し、個別制御部19は、加熱運転を行うことが禁止される運転禁止期間が設定されている場合、その運転禁止期間以外の期間に予定運転期間を設定して加熱運転を行う。
【0028】
本実施形態では、後述するように給湯制御システムが備える制御装置5が運転禁止期間を設定し、各需要者区画10の個別制御部19へ伝達する。
【0029】
施設2には、受電設備3を介して複数の需要者区画10に供給される合計電力を測定する合計電力測定部4が設けられる。合計電力測定部4の測定結果は制御装置5に伝達される。
【0030】
制御装置5は、例えば施設2及び各需要者区画10との間で情報通信可能なサーバ等を用いて実現される。制御装置5には、取り扱う情報を記憶する記憶部6が併設されている。
【0031】
制御装置5は、複数の需要者区画10の個別制御部19から、各給湯器16の加熱開始時刻及び加熱停止時刻についての情報を収集して記憶部6に記憶している。また、記憶部6には、各給湯器16が加熱運転を行っている間の消費電力についての情報も記憶している。従って、制御装置5は、例えば30分毎や1時間毎などの所定の単位期間毎での各給湯器16の電力負荷(例えば、単位期間での消費電力量、単位期間での平均消費電力など)を算出できる。
【0032】
単位期間の長さは適宜設定可能である。例えば、施設2では、過去の設定期間(例えば1年間など)内に含まれる所定期間毎(例えば30分毎など)の施設2の平均消費電力のうち、最大となった平均消費電力が大きいほど電気料金が高くなるような料金体系になっている場合がある。そのような場合、施設2の所定期間毎の平均消費電力を小さくすることが好ましい。そのような場合、本実施形態の単位期間は、その所定期間と同じ長さに設定することができる。即ち、その場合の単位期間は、施設2の電気料金を算出する基準となる電力負荷を算出するための期間に設定され、例えば、過去の設定期間内に含まれる所定期間毎の施設2の電力負荷が大きいほど、施設2の電気料金が高くなるような料金体系になっている場合において、上記所定期間と同じ期間に設定される。
【0033】
従って、制御装置5は、受電設備3を介して複数の需要者区画10に供給される合計電力を測定する合計電力測定部4の測定結果と、算出した所定の単位期間毎での各給湯器16の電力負荷とに基づいて、施設2での単位期間毎の合計電力負荷のうち、給湯器16の第1電力負荷を含まない、単位期間毎の第2電力負荷を算出できる。
【0034】
制御装置5は、施設2での過去の単位期間毎の第2電力負荷の推移のデータに基づいて、その施設2での将来の制御対象期間(例えば1日など)を構成する複数の単位期間毎の予測第2予測電力負荷を算出できる。つまり、制御装置5は、複数の単位期間で構成される制御対象期間において、給湯器16が設けられている施設2で予測される単位期間毎の合計予測電力負荷のうち、給湯器16の予測第1電力負荷を含まない、単位期間毎の予測第2電力負荷を特定できる。例えば、制御装置5は、過去の4週間分などの単位時間毎の第2電力負荷の推移についての情報を、曜日、平日や祝日などの属性データと共に記憶部6に記憶させる。そして、制御装置5は、記憶部6に記憶されている情報を参照して、将来の制御対象期間を構成する単位時間毎の予測第2電力負荷の推移を算出できる。
【0035】
そして、制御装置5は、単位期間毎の予測第2電力負荷が所定の閾値より大きくなる単位期間を含む時間帯を、加熱部17の加熱運転を禁止する運転禁止期間に設定できる。制御装置5は、この閾値を、制御対象期間での複数の単位期間毎の予測第2電力負荷の中央値より大きい値に設定する。
【0036】
更に、制御装置5は、設定した運転禁止期間を各需要者区画10の個別制御部19に伝達する。その結果、個別制御部19は、その運転禁止期間以外の期間に給湯器16の加熱運転を行うようになる。
【0037】
図2は、制御装置5が行う運転禁止期間設定処理を説明するフローチャートである。制御装置5は設定期間毎にこの運転禁止期間設定処理を実行する。
【0038】
工程#10において制御装置5は、運転禁止期間を設定するタイミングであるか否かを判定する。例えば、1日に1回の頻度で運転禁止期間の設定及び更新が行われる場合、運転禁止期間を設定するタイミングは、例えば毎日の時刻0時などの24時間毎に到来する。そして、制御装置5は、運転禁止期間を設定するタイミングである場合には工程#11に移行し、運転禁止期間を設定するタイミングではない場合にはこのフローチャートを終了する。
【0039】
工程#11において制御装置5は、記憶部6に記憶している情報を参照して、複数の単位期間で構成される制御対象期間(例えば1日など)において、給湯器16が設けられている施設2で予測される単位期間毎の合計予測電力負荷のうち、給湯器16の予測第1電力負荷を含まない、単位期間毎の予測第2電力負荷を特定する。
【0040】
図3は、施設2で予測される1時間毎の合計予測電力負荷のうち、給湯器16の予測第1電力負荷を含まない、1時間毎の予測第2電力負荷の例を示す図である。尚、図示する例では、予測第2電力負荷を、施設2に含まれる複数の需要者区画10での平均値で示している。図示するように、1日の24時間が1時間という単位期間毎に区分けされ、1時間毎の予測第2電力負荷が特定されている。
【0041】
次に、工程#12において制御装置5は、制御対象期間での複数の単位期間毎の予測第2電力負荷の中央値を算出する。図3に示す例では、中央値は392Wになる。
【0042】
次に、工程#13において制御装置5は、中央値を用いて閾値を算出する。本実施形態では、制御装置5は、算出した中央値より大きい値を閾値に設定する。
【0043】
〔閾値の算出例1〕
例えば、閾値は、施設2に設けられている給湯器16が一つの単位期間の間で連続して運転した場合の単位電力負荷を所定値で除算した値を、中央値に対して加算して得られる値に設定される。所定値は、例えば5~50の範囲の値である。
【0044】
例えば、中央値が392Wであり、給湯器16を単位期間である1時間の全てで運転した場合の単位電力負荷(1時間の平均消費電力)が500Wであり、所定値が10である場合、閾値は以下の式1のように442Wになる。
【0045】
閾値=392W+500W÷10=442W ・・・(式1)
【0046】
〔閾値の算出例2〕
他には、閾値は、施設2に設けられている給湯器16が単位期間の全てで運転した場合の単位電力負荷を、所定値で除算し、且つ、施設2に設けられる需要者区画10の数の内の給湯器16が設けられている需要者区画10の数の割合を乗算した値を、中央値に対して加算して得られる値に設定される。
【0047】
例えば、中央値が392Wであり、給湯器16を単位期間である1時間の全てで運転した場合の単位電力負荷(1時間の平均消費電力)が500Wであり、所定値が10であり、施設2に設けられる需要者区画10の数(例えば20など)の内の給湯器16が設けられている需要者区画10の数(例えば10など)の割合が0.5(=10/20)である場合、閾値は以下の式2のように417Wになる。
【0048】
閾値=392W+500W÷10×0.5=417W ・・・(式2)
【0049】
次に、工程#14において制御装置5は、予測第2電力負荷が閾値より大きくなる単位期間を含む時間帯を運転禁止期間に設定する。図4は、単位期間毎の予測第2電力負荷と閾値との関係を示すグラフである。図示するように、閾値の算出例2で算出した閾値である417Wを採用した場合、予測第2電力負荷がその閾値よりも大きくなる単位期間で構成される時間帯は、7時台~9時台、16時台~23時台である。その結果、制御装置5は、7時台~9時台、16時台~23時台を運転禁止期間に設定する。
【0050】
そして、制御装置5は、設定した運転禁止期間を複数の需要者区画10の個別制御部19に伝達する。その結果、各需要者区画10の給湯器16は、7時台~9時台、16時台~23時台には運転されなくなる。そして、個別制御部19は、図4に示す例であれば、例えば予測第2電力負荷が閾値よりも小さい例えば14時台から15時台などの期間に加熱部17の加熱運転を行うための予定運転期間を設定する。その結果、その予定運転期間において加熱部17での加熱運転のための消費電力が増大しても、施設2の合計の電力負荷が特に大きくなることを回避できる。
【0051】
以上のように、給湯器16が設けられている施設2で予測される単位期間毎の合計予測電力負荷のうち、給湯器16の予測第1電力負荷を含まない、単位期間毎の予測第2電力負荷が、制御対象期間での複数の単位期間毎の予測第2電力負荷の中央値より大きい値に設定される所定の閾値より大きくなる単位期間を含む時間帯が、加熱部17の加熱運転を禁止する運転禁止期間に設定される。つまり、予測第2電力負荷が相対的に大きい単位期間には給湯器16が運転されなくなるため、予測第2電力負荷が相対的に大きい単位期間での施設2の合計の電力負荷が給湯器16の運転によって更に大きくなることを回避できる。そのため、施設2の単位期間の電力負荷が大きいほど電気料金が高くなるような料金体系であっても、電気料金の増大を抑制できる。また、上記閾値は制御対象期間での複数の単位期間毎の予測第2電力負荷の中央値を用いて設定されるため、制御対象期間に含まれる複数の単位期間のうち、半数以上の単位期間は運転禁止期間には設定されない。つまり、給湯器16を運転してもよい単位期間を数多く設定できるため、複数の給湯器16が時間的に分散して運転されることが期待される。
【0052】
<別実施形態>
上記実施形態では、給湯制御システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
図5は、別実施形態の給湯制御システムの構成を示す図である。図示するように、施設2には、電力系統1から受電した電力が供給される一つの需要者区画10が設けられ、その需要者区画10に給湯器16が設けられている。この場合も、制御装置5は、複数の単位期間で構成される制御対象期間(例えば1日など)において、給湯器16が設けられている施設2で予測される単位期間毎の予測電力負荷のうち、給湯器16の予測第1電力負荷を含まない、単位期間毎の予測第2電力負荷を特定し、当該単位期間毎の予測第2電力負荷が所定の閾値より大きくなる単位期間を含む時間帯を、加熱部17の加熱運転を禁止する運転禁止期間に設定する。また、閾値は、制御対象期間での複数の単位期間毎の予測第2電力負荷の中央値より大きい値に設定される。尚、個別制御部19と制御装置5は、一体となっていても構わない。
【0053】
上記実施形態では、閾値の導出手法について具体例を挙げて説明したが、その導出手法は適宜設定可能である。
【0054】
上記実施形態において、予測第2電力負荷が閾値よりも大きくなる単位期間だけでなく、例えばその単位期間の前後の単位期間なども、運転禁止期間に含めてもよい。
【0055】
上記実施形態では、いくつかの数値例を挙げたが、それらは例示目的で記載したものであり、適宜変更可能である。
【0056】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、電力系統から施設に供給される電力を利用して水を加熱する加熱部を有する給湯器が運転できる期間を適切に設定できる給湯制御システムに利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 電力系統
2 施設
3 受電設備
4 合計電力測定部
5 制御装置
6 記憶部
10 需要者区画
11 消費電力測定部
12 貯湯タンク
13 給水路
14 出湯路
15 循環路
16 給湯器
17 加熱部
18 電力負荷部
19 個別制御部
20 消費熱量測定部
図1
図2
図3
図4
図5