(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097574
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】オレフィン重合に用いる予備重合触媒の製造方法および当該予備重合触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 4/6592 20060101AFI20250624BHJP
C07F 7/00 20060101ALI20250624BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20250624BHJP
C08F 4/02 20060101ALI20250624BHJP
C07F 7/08 20060101ALN20250624BHJP
【FI】
C08F4/6592
C07F7/00 A
C08F10/00 510
C08F4/02
C07F7/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213821
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 直也
(72)【発明者】
【氏名】堅固山 千尋
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 孝
【テーマコード(参考)】
4H049
4J015
4J128
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VN06
4H049VP01
4H049VQ91
4H049VR22
4H049VR24
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4J015EA00
4J128AA01
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4J128AD08
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4J128BA01A
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4J128BB01A
4J128BB01B
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4J128EA01
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC02
4J128GA01
4J128GA26
4J128GB01
(57)【要約】
【課題】予備重合触媒の製造において、反応器内でのファウリングを防止でき、また、オレフィン重合体の製造において、安定して均一な物性を示すオレフィン重合体および分子量の高いオレフィン重合体を製造可能な、オレフィン重合に用いる予備重合触媒の製造方法を提供すること。
【解決手段】遷移金属錯体(A)と固体状担体(S)とを含む固体触媒成分(Sa)を、溶媒中の固体分を除く有機アルミニウム化合物の濃度が0.1mmol/L以上10mmol/L以下、かつ、予備重合温度が10~30℃の条件下、前記固体触媒成分(Sa)1gに対し、炭素数2以上のオレフィンを1~10L/hrの速度で供給し、予備重合させる工程を含むことを特徴とする、オレフィン重合に用いる予備重合触媒(X)の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属錯体(A)と固体状担体(S)とを含む固体触媒成分(Sa)を、
溶媒中の固体分を除く有機アルミニウム化合物の濃度が0.1mmol/L以上10mmol/L以下、かつ、予備重合温度が10~30℃の条件下、前記固体触媒成分(Sa)1gに対し、炭素数2以上のオレフィンを1~10L/hrの速度で供給し、予備重合させる工程を含むことを特徴とする、オレフィン重合に用いる予備重合触媒(X)の製造方法。
【請求項2】
前記炭素数2以上のオレフィンの予備重合量が、前記固体触媒成分(Sa)1gに対し、1g以上50g以下である、請求項1に記載の予備重合触媒(X)の製造方法。
【請求項3】
前記遷移金属錯体(A)が周期表第4族遷移金属原子を含み、かつ、前記固体状担体(S)が多孔質酸化物である、請求項1に記載の予備重合触媒(X)の製造方法。
【請求項4】
前記予備重合触媒(X)が有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)を含む、請求項1に記載の予備重合触媒(X)の製造方法。
【請求項5】
前記遷移金属錯体(A)が下記一般式[1]で表される、請求項1に記載の予備重合触媒(X)の製造方法。
【化1】
(一般式[1]中、Mは、周期表第4族遷移金属原子であり、
nは、遷移金属錯体(A)が電気的に中性となるように選択される1~4の整数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、前記アニオン配位子は、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系誘導体基であり、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよく、
Qは、周期表第14族原子であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、
R
1~R
6のうちの隣接した置換基同士は、互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
R
7~R
12のうちの隣接した置換基同士は、互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
R
13およびR
14は、互いに結合してQを含む環を形成してもよく、この環は置換基を有していてもよい。)
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の予備重合触媒(X)存在下に、オレフィンを重合または共重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合体の製造において、反応器内でのファウリングを防止でき、安定して均一な物性を示すオレフィン重合体および分子量の高いオレフィン重合体を製造可能な、オレフィン重合に用いる予備重合触媒の製造方法および当該予備重合触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オレフィン(共)重合体を製造する触媒として、ジルコノセン等の遷移金属錯体と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)等の助触媒成分とからなるオレフィン重合用触媒が知られており、中でも、スラリー重合あるいは気相重合を行う場合には、一般に、生成する重合体の粉体性状を良化させるため、遷移金属錯体や有機アルミニウムオキシ化合物をシリカゲル等の固体状担体に担持させた固体触媒が用いられている(非特許文献1)。
【0003】
加えて、重合反応において反応器壁面に重合体が付着するファウリングや反応器内でのポリマー塊形成を抑制する方法として、固体触媒にオレフィンを予備重合させる方法(特許文献1)、反応系内に特定の化合物を添加する方法(特許文献2、3)、等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-152608号公報
【特許文献2】特開2000-327707号公報
【特許文献3】特開2012-117043号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chem. Rev. 2005, 105, p.4073-4147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような固体触媒存在下にオレフィンを導入し、予備重合反応を行なうと、反応後の溶媒が濁り、反応器内でのファウリングが確認されることがあった。
ファウリングは反応器壁面からの除熱効率を低下させるため、反応温度の制御が難しくなり、また反応器の清掃による生産性の低下を招くことがある。
【0007】
また、予備重合触媒を用いてオレフィン重合体を製造する際に、予備重合触媒の水素応答性が高いと、水素濃度の微小な変動によりオレフィン重合体の物性が変動し、安定して均一な物性を示すオレフィン重合体を製造できないことがある。特に、オレフィン重合体を重合する際に、重合器内の水素濃度が高いと、分子量の高いオレフィン重合体を製造できないことがある。
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、予備重合触媒の製造において、反応器内でのファウリングを防止でき、また、オレフィン重合体の製造において、安定して均一な物性を示すオレフィン重合体および分子量の高いオレフィン重合体を製造可能な、オレフィン重合に用いる予備重合触媒の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の態様例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。本発明の態様例を以下に示す。
【0010】
[1]遷移金属錯体(A)と固体状担体(S)とを含む固体触媒成分(Sa)を、
溶媒中の固体分を除く有機アルミニウム化合物の濃度が0.1mmol/L以上10mmol/L以下、かつ、予備重合温度が10~30℃の条件下、前記固体触媒成分(Sa)1gに対し、炭素数2以上のオレフィンを1~10L/hrの速度で供給し、予備重合させる工程を含むことを特徴とする、オレフィン重合に用いる予備重合触媒(X)の製造方法。
[2]前記炭素数2以上のオレフィンの予備重合量が、前記固体触媒成分(Sa)1gに対し、1g以上50g以下である、項[1]に記載の予備重合触媒(X)の製造方法。
[3]前記遷移金属錯体(A)が周期表第4族遷移金属原子を含み、かつ、前記固体状担体(S)が多孔質酸化物である、項[1]または[2]に記載の予備重合触媒(X)の製造方法。
[4]前記予備重合触媒(X)が有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)を含む、項[1]~[3]のいずれか1項に記載の予備重合触媒(X)の製造方法。
[5]前記遷移金属錯体(A)が下記一般式[1]で表される、項[1]~[4]のいずれか1項に記載の予備重合触媒(X)の製造方法。
【化1】
(一般式[1]中、Mは、周期表第4族遷移金属原子であり、
nは、遷移金属錯体(A)が電気的に中性となるように選択される1~4の整数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、前記アニオン配位子は、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系誘導体基であり、nが2以上の場合は、複数存在するXで示される基は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよく、
Qは、周期表第14族原子であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13およびR
14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、
R
1~R
6のうちの隣接した置換基同士は、互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
R
7~R
12のうちの隣接した置換基同士は、互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成してもよく、
R
13およびR
14は、互いに結合してQを含む環を形成してもよく、この環は置換基を有していてもよい。)
[6]項[1]~[5]のいずれか1項に記載の予備重合触媒(X)存在下に、オレフィンを重合または共重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、予備重合触媒の製造において、反応器内でのファウリングを防止でき、また、オレフィン重合体の製造において、安定して均一な物性を示すオレフィン重合体および分子量の高いオレフィン重合体を製造可能な、オレフィン重合に用いる予備重合触媒の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るオレフィン重合に用いる予備重合触媒の製造方法、および当該触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法について具体的に説明する。
本発明において「重合」という語は、オレフィンの単独重合のみならず二種以上のオレフィンの共重合を包含した意で用いられることがあり、また「重合体」という語は単独重合体のみならず共重合体を包含した意で用いられることがある。
【0013】
以下に、まず本発明に係る予備重合触媒を形成する各成分について説明する。
本発明に係るオレフィン重合に用いる予備重合触媒の製造方法において、固体触媒成分(Sa)を構成する遷移金属錯体(A)と固体状担体(S)は何ら限定されるものではないが、好適な例を以下に示す。
【0014】
<遷移金属錯体(A)>
本発明に係る予備重合触媒の製造方法に用いられる遷移金属錯体(A)は、オレフィン重合用触媒として用いられるメタロセン化合物であれば特に限定されないが、好ましくは周期表第4族遷移金属原子を含み、より好ましくは下記一般式[1]で表される。
【0015】
【0016】
《M、n、X》
一般式[1]において、Mは、周期表第4族遷移金属原子であり、好ましくはジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、さらに好ましくはジルコニウム原子である。
【0017】
nは、遷移金属錯体(A)が電気的に中性となるように選択される1~4の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは2である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、前記アニオン配位子は、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基、リン含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基または共役ジエン系誘導体基である。Xは、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基または酸素含有基であり、より好ましくはハロゲン原子である。
【0018】
nが2以上の場合は、複数存在するXは互いに同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。また、前記環が複数存在する場合には、前記環は互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる、好ましくは塩素または臭素であり、より好ましくは塩素である。
【0019】
前記炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基(ブタン-2-イル基)、tert-ブチル基(2-メチルプロパン-2-イル基)、iso-ブチル基(2-メチルプロピル基)、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基(3-メチルブチル基)、ネオペンチル基(2,2-ジメチルプロピル基)、シアミル基(1,2-ジメチルプロピル基)、iso-ヘキシル基(4-メチルペンチル基)、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基(2,3-ジメチルブタ-2-イル基)、4,4-ジメチルペンチル基等の直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、プロペニル基(プロパ-1-エン-1-イル基)、iso-プロペニル基(プロパ-1-エン-2-イル基)、アレニル基(プロパ-1,2-ジエン-1-イル基)、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基(ブタ-2-エン-1-イル基)、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基(2-メチルアリル基)、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基(3-メチルブタ-3-エン-1-イル基)、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基(3-メチルブタ-2-エン-1-イル基)等の直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基(プロパ-1-イン-1-イル基)等の直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基;
ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基(4-iso-プロピルベンジル基)、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基(ジフェニルメチル基)等の芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等の環状飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基(メチルフェニル基)、キシリル基(ジメチルフェニル基)、メシチル基(2,4,6-トリメチルフェニル基)、クメニル基(iso-プロピルフェニル基)、ジュリル基(2,3,5,6-テトラメチルフェニル基)、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基等の芳香族置換基が挙げられる。
【0020】
前記炭化水素基の中でも、メチル基、iso-ブチル基、ネオペンチル基、シアミル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基が好ましい。
【0021】
前記ハロゲン含有基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ヘキサクロロアンチモン酸アニオンが挙げられる。
【0022】
前記ハロゲン含有基の中でも、ペンタフルオロフェニル基が好ましい。
前記ケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、トリメチルシリルメチル基等が挙げられる。
【0023】
前記ケイ素含有基の中でも、トリメチルシリルメチル基が好ましい。
前記酸素含有基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-iso-プロピルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェノキシ基、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、過塩素酸アニオン、過ヨウ素酸アニオンが挙げられる。
【0024】
前記酸素含有基の中でも、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基が好ましい。
前記硫黄含有基としては、例えば、メシル基(メタンスルフォニル基)、フェニルスルホニル基、トシル基(p-トルエンスルホニル基)、トリフリル基(トリフルオロメタンスルホニル基)、ノナフリル基(ノナフルオロブタンスルホニル基)、メシラート基(メタンスルホナート基)、トシラート基(p-トルエンスルホナート基)、トリフラート基(トリフルオロメタンスルホナート基)、ノナフラート基(ノナフルオロブタンスルホナート基)が挙げられる。
【0025】
前記硫黄含有基の中でも、トリフラート(トリフルオロメタンスルホナート)が好ましい。
前記窒素含有基としては、例えば、アミノ基、シアノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基等が挙げられる。
【0026】
前記窒素含有基の中でも、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピロリル基、ビストリフリルイミド基が好ましい。
前記リン含有基としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸アニオンが挙げられる。
【0027】
前記ホウ素含有基としては、例えば、テトラフルオロホウ酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、(メチル)(トリス(ペンタフルオロフェニル))ホウ酸アニオン、(ベンジル)(トリス(ペンタフルオロフェニル))ホウ酸アニオン、テトラキス((3,5-ビストリフルオロメチル)フェニル)ホウ酸アニオン、BR4(Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子等を示す。)で表される基が挙げられる。
前記アルミニウム含有基としては、例えば、
【0028】
【化3】
(Mは、前記一般式(1)中のMを表す。)
を形成可能な、AlR
4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基またはハロゲン原子等を示す)で表される基が挙げられる。
【0029】
前記共役ジエン系誘導体基としては、例えば、1,3-ブタジエニル基、イソプレニル基(2-メチル-1,3-ブタジエニル基)、ピペリレニル基(1,3-ペンタジエニル基)、2,4-ヘキサジエニル基、1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル基、シクロペンタジエニル基等、メタロシクロペンテン基が挙げられる。
【0030】
孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン類、ピリジン、ピコリン、ルチジン、オキサゾリン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、チオフェン等の複素環式化合物、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン等の有機リン化合物が挙げられる。
【0031】
《Q》
前記一般式[1]において、Qは、周期表第14族原子であり、例えば、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子であり、好ましくは炭素原子またはケイ素原子であり、より好ましくはケイ素原子である。
【0032】
《R1~R14》
前記一般式[1]において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~40の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基である。
【0033】
R1~R14としての前記炭素数1~40の炭化水素基としては、炭素数1~20の炭化水素基が挙げられ、より具体的な例としては、上述したXの例として挙げられた炭化水素基の具体例が挙げられる。
【0034】
前記炭素数1~40の炭化水素基は、好ましくは、炭素数1~20の炭化水素基(但し、芳香族炭化水素基を除く)または炭素数6~40の芳香族炭化水素基である。前記の炭素数1~20の炭化水素基は、好ましくは炭素数1~20の脂肪族または脂環族の炭化水素基である。炭素数1~20の炭化水素基には、アリールアルキル基の様な芳香族構造を有する置換基も含まれる。
【0035】
前記炭素数1~40の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デカニル基、1-ウンデカニル基、1-ドデカニル基、1-エイコサニル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、ペンタン-2-イル基、2-メチルブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、シアミル基、ペンタン-3-イル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、iso-ヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基(2-メチルペンタン-2-イル基)、3-メチルペンタン-2-イル基、4-メチルペンタン-2-イル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基、3-メチルペンタン-3-イル基、3,3-ジメチルブタ-2-イル基、ヘキサン-3-イル基、2-メチルペンタン-3-イル基、ヘプタン-4-イル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-エチルペンタン-3-イル基、4,4-ジメチルペンチル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、4-プロピルヘプタン-4-イル基、2,3,3-トリメチルブタン-2-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基等の炭素原子数が1~40の直鎖状または分岐状のアルキル基;
ビニル基、アリル基、プロペニル基、iso-プロペニル基、アレニル基、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基、ブタ-3-エン-2-イル基、メタリル基、ブタ-1,3-ジエニル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-2-エン-1-イル基、iso-ペンテニル基、2-メチルブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-2-イル基、プレニル基、2-メチル-ブタ-2-エン-1-イル基、ペンタ-3-エン-2-イル基、2-メチル-ブタ-3-エン-2-イル基、ペンタ-1-エン-3-イル基、ペンタ-2,4-ジエン-1-イル基、ペンタ-1,3-ジエン-1-イル基、ペンタ-1,4-ジエン-3-イル基、iso-プレニル基(2-メチル-ブタ-1,3-ジエン-1-イル基)、ペンタ-2,4-ジエン-2-イル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基、ヘキサ-4-エン-1-イル基、ヘキサ-3-エン-1-イル基、ヘキサ-2-エン-1-イル基、4-メチル-ペンタ-4-エン-1-イル基、3-メチル-ペンタ-4-エン-1-イル基、2-メチル-ペンタ-4-エン-1-イル基、ヘキサ-5-エン-2-イル基、4-メチル-ペンタ-3-エン-1-イル基、3-メチル-ペンタ-3-エン-1-イル基、2,3-ジメチル-ブタ-2-エン-1-イル基、2-メチルペンタ-4-エン-2-イル基、3-エチルペンタ-1-エン-3-イル基、ヘキサ-3,5-ジエン-1-イル基、ヘキサ-2,4-ジエン-1-イル基、4-メチルペンタ-1,3-ジエン-1-イル基、2,3-ジメチル-ブタ-1,3-ジエン-1-イル基、ヘキサ-1,3,5-トリエン-1-イル基、2-(シクロペンタジエニル)プロパン-2-イル基、2-(シクロペンタジエニル)エチル基等の炭素原子数が2~40の直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基;
エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基、ブタ-1-イン-1-イル基、ブタ-2-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-1-イン-1-イル基、ペンタ-2-イン-1-イル基、ペンタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-1-イル基、3-メチル-ブタ-1-イン-1-イル基、ペンタ-3-イン-2-イル基、2-メチル-ブタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-2-イル基、ヘキサ-1-イン-1-イル基、3,3-ジメチル-ブタ-1-イン-1-イル基、2-メチル-ペンタ-3-イン-2-イル基、2,2-ジメチル-ブタ-3-イン-1-イル基、ヘキサ-4-イン-1-イル基、ヘキサ-5-イン-1-イル基等の炭素原子数が2~40の直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基;
ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、1-フェニルエチル基、ベンズヒドリル基、クミル基(2-フェニルプロパン-2-イル基)、2-(4-メチルフェニル)プロパン-2-イル基、2-(3,5-ジメチルフェニル)プロパン-2-イル基、2-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-2-イル基、2-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロパン-2-イル基、3-フェニルペンタン-3-イル基、4-フェニルヘプタ-1,6-ジエン-4-イル基、1,2,3-トリフェニルプロパン-2-イル基、1,1-ジフェニルエチル基、1,1-ジフェニルプロピル基、1,1-ジフェニル-ブタ-3-エン-1-イル基、1,1,2-トリフェニルエチル基、トリチル基(トリフェニルメチル基)、トリ-(4-メチルフェニル)メチル基、2-フェニルエチル基、スチリル基(2-フェニルビニル基)、2-(2-メチルフェニル)エチル基、2-(4-メチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジメチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル)エチル基、2-(4-tert-ブチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)エチル基、2-メチル-1-フェニルプロパン-2-イル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基(3-フェニルアリル基)、ネオフィル基(2-メチル-2-フェニルプロピル基)、3-メチル-3-フェニルブチル基、2-メチル-4-フェニルブタン-2-イル基、シクロペンタジエニルジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)プロパン-2-イル基、(1-インデニル)ジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)エチル基、2-(テトラヒドロ-1-インダセニル)プロパン-2-イル基、(テトラヒドロ-1-インダセニル)ジフェニルメチル基、2-(テトラヒドロ-1-インダセニル)エチル基、2-(1-ベンゾインデニル)プロパン-2-イル基、(1-ベンゾインデニル)ジフェニルメチル基、2-(1-ベンゾインデニル)エチル基、2-(9-フルオレニル)プロパン-2-イル基、(9-フルオレニル)ジフェニルメチル基、2-(9-フルオレニル)エチル基、2-(1-アズレニル)プロパン-2-イル基、(1-アズレニル)ジフェニルメチル基、2-(1-アズレニル)エチル基等の炭素原子数が7~40の芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、n-ブチルシクロペンタジエニル基、n-ブチル-メチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、1-メチルシクロペンチル基、1-アリルシクロペンチル基、1-ベンジルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アリルシクロヘキシル基、1-ベンジルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、1-メチルシクロヘプチル基、1-アリルシクロヘプチル基、1-ベンジルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基、シクロオクタトリエニル基、1-メチルシクロオクチル基、1-アリルシクロオクチル基、1-ベンジルシクロオクチル基、4-シクロヘキシル-tert-ブチル基、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、ノルボルナジエニル基、2-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、7-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-7-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-イル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、1-(2-メチルアダマンチル)、1-(3-メチルアダマンチル)、1-(4-メチルアダマンチル)、1-(2-フェニルアダマンチル)、1-(3-フェニルアダマンチル)、1-(4-フェニルアダマンチル)、1-(3,5-ジメチルアダマンチル)、1-(3,5,7-トリメチルアダマンチル)、1-(3,5,7-トリフェニルアダマンチル)、ペンタレニル基、インデニル基、フルオレニル基、インダセニル基、テトラヒドロインダセニル基、ベンゾインデニル基、アズレニル基等の炭素原子数が3~40の環状飽和および不飽和炭化水素基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ジュリル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、アリルフェニル基、(ブタ-3-エン-1-イル)フェニル基、(ブタ-2-エン-1-イル)フェニル基、メタリルフェニル基、プレニルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、3,5-ジ-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、アセナフタレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェロセニル基等の炭素原子数が6~40の芳香族置換基等が挙げられる。
【0036】
前記炭素原子数が1~40の直鎖状または分岐状のアルキル基の中でも、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ペンタン-3-イル基、iso-ヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、テキシル基、3-メチルペンタン-3-イル基、ヘプタン-4-イル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、3-エチルペンタン-3-イル基、4,4-ジメチルペンチル基、4-メチルヘプタン-4-イル基、4-プロピルヘプタン-4-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基等が好ましく、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、2,4-ジメチルペンタン-2-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基がより好ましく、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基がさらに好ましい。
【0037】
前記炭素原子数が2~40の直鎖状または分岐状のアルケニル基もしくは不飽和二重結合含有基の中でも、ビニル基、アリル基、ブタ-3-エン-1-イル基、クロチル基、メタリル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、プレニル基、ペンタ-1,4-ジエン-3-イル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基、2-メチルペンタ-4-エン-2-イル基、2-(シクロペンタジエニル)プロパン-2-イル基、2-(シクロペンタジエニル)エチル基等が好ましく、ビニル基、アリル基、ブタ-3-エン-1-イル基、ペンタ-4-エン-1-イル基、プレニル基、ヘキサ-5-エン-1-イル基がより好ましい。
【0038】
前記炭素原子数が2~40の直鎖状または分岐状のアルキニル基もしくは不飽和三重結合含有基の中でも、エチニル基、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基、ブタ-2-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-3-イン-1-イル基、ペンタ-4-イン-1-イル基、3-メチル-ブタ-1-イン-1-イル基、3,3-ジメチル-ブタ-1-イン-1-イル基、ヘキサ-4-イン-1-イル基、ヘキサ-5-イン-1-イル基等が好ましく、プロパ-2-イン-1-イル基、プロパルギル基、ブタ-2-イン-1-イル基、ブタ-3-イン-1-イル基がより好ましい。
【0039】
前記炭素原子数が7~40の芳香族含有直鎖状または分岐状のアルキル基および不飽和二重結合含有基の中でも、ベンジル基、2-メチルベンジル基、4-メチルベンジル基、2,4,6-トリメチルベンジル基、3,5-ジメチルベンジル基、クミニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルベンジル基、4-tert-ブチルベンジル基、3,5-ジ-tert-ブチルベンジル基、ベンズヒドリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリチル基、2-フェニルエチル基、2-(4-メチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジメチルフェニル)エチル基、2-(2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル)エチル基、2-(4-tert-ブチルフェニル)エチル基、2-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)エチル基、スチリル基、2-メチル-1-フェニルプロパン-2-イル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基、ネオフィル基、シクロペンタジエニルジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)プロパン-2-イル基、(1-インデニル)ジフェニルメチル基、2-(1-インデニル)エチル基、2-(9-フルオレニル)プロパン-2-イル基、(9-フルオレニル)ジフェニルメチル基、2-(9-フルオレニル)エチル基等が好ましく、ベンジル基、ベンズヒドリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基がより好ましい。
【0040】
前記炭素原子数が3~40の環状飽和および不飽和炭化水素基の中でも、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、1-メチルシクロペンチル基、1-アリルシクロペンチル基、1-ベンジルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アリルシクロヘキシル基、1-ベンジルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、1-メチルシクロヘプチル基、1-アリルシクロヘプチル基、1-ベンジルシクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、シクロオクタジエニル基、4-シクロヘキシル-tert-ブチル基、ノルボルニル基、2-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ペンタレニル基、インデニル基、フルオレニル基等が好ましく、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、1-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-アダマンチル基がより好ましい。
【0041】
前記炭素原子数が6~40の芳香族置換基の中でも、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、アリルフェニル基、プレニルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、フェロセニル基等が好ましく、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、アリルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基がより好ましい。
【0042】
前記ハロゲン含有基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、ドデカフルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ジ-tert-ブチル-フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビストリフルオロメトキシフェニル基、トリフルオロメチルチオフェニル基、ビストリフルオロメチルチオフェニル基、フルオロビフェニル基、ジフルオロビフェニル基、トリフルオロビフェニル基、テトラフルオロビフェニル基、ペンタフルオロビフェニル基、ジ-tert-ブチル-フルオロビフェニル基、トリフルオロメチルビフェニル基、ビストリフルオロメチルビフェニル基、トリフルオロメトキシビフェニル基、ビストリフルオロメトキシビフェニル基、トリフルオロメチルジメチルシリル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、フルオロフェノキシ基、ジフルオロフェノキシ基、トリフルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、ジ-tert-ブチル-フルオロフェノキシ基、トリフルオロメチルフェノキシ基、ビストリフルオロメチルフェノキシ基、トリフルオロメトキシフェノキシ基、ビストリフルオロメトキシフェノキシ基、ジフルオロメチレンジオキシフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニルイミノメチル基、トリフルオロメチルチオ基、等が挙げられる。
【0043】
前記ハロゲン含有基の中でも、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、フルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ペンタフルオロビフェニル基、トリフルオロメチルビフェニル基、ビストリフルオロメチルビフェニル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、ビストリフルオロメチルフェノキシ基、ビストリフルオロメチルフェノキシ基、ジフルオロメチレンジオキシフェニル基、トリフルオロメチルチオ基が好ましく、トリフルオロメチル基、フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ビストリフルオロメチルフェニル基、ペンタフルオロビフェニル基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基がより好ましい。
【0044】
前記ケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、シクロペンタジエニルジメチルシリル基、ジ-n-ブチル(シクロペンタジエニル)シリル基、シクロペンタジエニルジフェニルシリル基、インデニルジメチルシリル基、ジ-n-ブチル(インデニル)シリル基、インデニルジフェニルシリル基、フルオレニルジメチルシリル基、ジ-n-ブチル(フルオレニル)シリル基、フルオレニルジフェニルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、4-tert-ブチルジフェニルシリルフェニル基、4-トリフェニルシリルフェニル基、4-トリス(トリメチルシリル)シリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基等が挙げられる。
【0045】
前記ケイ素含有基の中でも、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-iso-プロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、シクロペンタジエニルジメチルシリル基、シクロペンタジエニルジフェニルシリル基、インデニルジメチルシリル基、インデニルジフェニルシリル基、フルオレニルジメチルシリル基、フルオレニルジフェニルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、4-トリフェニルシリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基等が好ましく、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、4-トリメチルシリルフェニル基、4-トリエチルシリルフェニル基、4-トリ-iso-プロピルシリルフェニル基、3,5-ビス(トリメチルシリル)フェニル基がより好ましい。
【0046】
前記酸素含有基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、メタリルオキシ基、プレニルオキシ基、ベンジルオキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、トルイルオキシ基、iso-プロピルフェノキシ基、アリルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、iso-プロポキシフェノキシ基、アリルオキシフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ビナフチルオキシ基、メトキシメチル基、アリルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、アリルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシプロピル基、アリルオキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェノキシプロピル基、メトキシビニル基、アリルオキシビニル基、ベンジルオキシビニル基、フェノキシビニル基、メトキシアリル基、アリルオキシアリル基、ベンジルオキシアリル基、フェノキシアリル基、ジメトキシメチル基、ジ-iso-プロポキシメチル基、ジオキソラニル基、テトラメチルジオキソラニル基、ジオキサニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチレンジオキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、テトラヒドロフリル基、ピラニル基、テトラヒドロピラニル基、フロフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等が挙げられる。
【0047】
前記酸素含有基の中でも、メトキシ基、エトキシ基、iso-プロポキシ基、アリルオキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、プレニルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、トルイルオキシ基、iso-プロピルフェノキシ基、アリルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ビフェニルオキシ基、ビナフチルオキシ基、アリルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシアリル基、ベンジルオキシアリル基、フェノキシアリル基、ジメトキシメチル基、ジオキソラニル基、テトラメチルジオキソラニル基、ジオキサニル基、ジメチルジオキサニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、メチレンジオキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、テトラヒドロピラニル基、フロフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等が好ましく、メトキシ基、iso-プロポキシ基、tert-ブトキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基、ジメトキシメチル基、ジオキソラニル基、メトキシフェニル基、iso-プロポキシフェニル基、アリルオキシフェニル基、フェノキシフェニル基、3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基、フリル基、メチルフリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基がより好ましく、メトキシ基、3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル基がさらに好ましい。
【0048】
前記窒素含有基としては、例えば、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジデシルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モリホリル基、アゼピニル基、ジメチルアミノメチル基、ジベンジルアミノメチル基、ピロリジニルメチル基、ジメチルアミノエチル基、ベンジルアミノメチル基、ベンジルアミノエチル基、ピロリジニルエチル基、ジメチルアミノビニル基、ベンジルアミノビニル基、ピロリジニルビニル基、ジメチルアミノプロピル基、ベンジルアミノプロピル基、ピロリジニルプロピル基、ジメチルアミノアリル基、ベンジルアミノアリル基、ピロリジニルアリル基、アミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピロリルフェニル基、ピリジルフェニル基、キノリルフェニル基、イソキノリルフェニル基、インドリニルフェニル基、インドリルフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリルフェニル基、ピロリル基、メチルピロリル基、フェニルピロリル基、ピリジル基、キノリル基、テトラヒドロキノリル基、iso-キノリル基、テトラヒドロ-iso-キノリル基、インドリル基、インドリニル基、カルバゾリル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリル基、イミダゾリル基、ジメチルイミダゾリジニル基、ベンゾイミダソリル基、オキサゾリル基、オキサゾリジニル基、ベンゾオキサゾリル基等が挙げられる。
【0049】
前記窒素含有基の中でも、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基、ジメチルアミノメチル基、ベンジルアミノメチル基、ピロリジニルメチル基、ジメチルアミノエチル基、ピロリジニルエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ピロリジニルプロピル基、ジメチルアミノアリル基、ピロリジニルアリル基、アミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピロリルフェニル基、カルバゾリルフェニル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリルフェニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、テトラヒドロキノリル基、iso-キノリル基、テトラヒドロ-iso-キノリル基、インドリル基、インドリニル基、カルバゾリル基、ジ-tert-ブチルカルバゾリル基、イミダゾリル基、ジメチルイミダゾリジニル基、ベンゾイミダソリル基、オキサゾリル基、オキサゾリジニル基、ベンゾオキサゾリル基等が好ましく、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジメチル-4-ジメチルアミノフェニル基、3,5-ジ-iso-プロピル-4-ジメチルアミノフェニル基、ジュロリジニル基、テトラメチルジュロリジニル基、ピロリジニルフェニル基、ピロリル基、ピリジル基、カルバゾリル基、イミダゾリル基がより好ましい。
【0050】
前記硫黄含有基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ベンジルチオ基、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、メチルチオメチル基、ベンジルチオメチル基、フェニルチオメチル基、ナフチルチオメチル基、メチルチオエチル基、ベンジルチオエチル基、フェニルチオエチル基、ナフチルチオエチル基、メチルチオビニル基、ベンジルチオビニル基、フェニルチオビニル基、ナフチルチオビニル基、メチルチオプロピル基、ベンジルチオプロピル基、フェニルチオプロピル基、ナフチルチオプロピル基、メチルチオアリル基、ベンジルチオアリル基、フェニルチオアリル基、ナフチルチオアリル基、メルカプトフェニル基、メチルチオフェニル基、チエニルフェニル基、メチルチエニルフェニル基、ベンゾチエニルフェニル基、ジベンゾチエニルフェニル基、ベンゾジチエニルフェニル基、チエニル基、テトラヒドロチエニル基、メチルチエニル基、チエノフリル基、チエノチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、チエノベンゾフリル基、ベンゾジチエニル基、ジチオラニル基、ジチアニル基、オキサチオラニル基、オキサチアニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアゾリジニル基等が挙げられる。
【0051】
前記硫黄含有基の中でも、チエニル基、メチルチエニル基、チエノフリル基、チエノチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、チエノベンゾフリル基、ベンゾジチエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0052】
R1~R6のうちの隣接した置換基同士(例:R1とR2、R2とR3、R3とR4、R4とR5、およびR5とR6)は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、インデニル環部分に縮環する、置換基を有していてもよい、飽和炭化水素(前記インデニル環部分の炭化水素を除く。)または不飽和炭化水素からなる5~8員環が好ましい。なお、環が複数存在する場合には、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、前記環はより好ましくは5または6員環であり、この場合、前記環と母核のインデニル環部分とを併せた構造としては、例えば、置換ベンゾインデニル環、置換テトラヒドロインダセン環、置換シクロペンタテトラヒドロナフタレンが挙げられ、置換ベンゾインデニル環、置換テトラヒドロインダセン環が好ましい。
【0053】
R7~R12のうちの隣接した置換基同士(例:R7とR8、R8とR9、R9とR10、R10とR11、およびR11とR12)は、互いに結合して、置換基を有していてもよい環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、インデニル環部分に縮環する、置換基を有していてもよい、飽和炭化水素(前記インデニル環部分の炭化水素を除く。)または不飽和炭化水素からなる5~8員環が好ましい。なお、環が複数存在する場合には、これらは互いに同一でも異なっていてもよい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、前記環はより好ましくは5または6員環であり、この場合、前記環と母核のインデニル環部分とを併せた構造としては、例えば、置換ベンゾインデニル環、置換テトラヒドロインダセン環、置換シクロペンタテトラヒドロナフタレン、置換テトラヒドロフルオレン環、置換フルオレン環が挙げられ、置換ベンゾインデニル環、置換テトラヒドロインダセン環が好ましい。
【0054】
R13およびR14は、互いに結合してQを含む環を形成してもよい。この場合に形成される環としては、置換基を有していてもよい、3~8員環の飽和または不飽和環が好ましい。本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、前記環は好ましくは4~6員環であり、この場合、R13およびR14とQとを併せた構造として、例えば、置換シクロブタン環、置換シクロペンタン環、置換フルオレン環、置換シラシクロブタン(シレタン)環、置換シラシクロペンタン(シロラン)環、置換シラシクロヘキサン(シリナン)、置換シラフルオレン環が挙げられ、置換シクロペンタン環、置換シラシクロブタン環、置換シラシクロペンタン環が好ましい。
【0055】
R1およびR6は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、より好ましくは水素原子である。
【0056】
R2~R5およびR7~R14は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のケイ素含有基、炭素数1~20の酸素含有基または炭素数1~20の窒素含有基である。なお、R7、R9およびR12の少なくとも1つにおいては、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基が、後述する複素環式芳香族基であってもよい。
【0057】
《遷移金属錯体(A)の好ましい態様》
前記遷移金属錯体(A)の好ましい態様としては、
前記一般式[1]において、
Mが、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、
Xが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基または酸素含有基であり、
Qが、炭素原子またはケイ素原子であり、
R1~R6およびR8~R14が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、窒素含有基または硫黄含有基であり、
R7が、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ケイ素含有基、または窒素、酸素および硫黄からなる群から選ばれる原子を少なくとも1つ含む母骨格を5員環とする、置換基を有していてもよい複素環式芳香族基である
遷移金属錯体(A-1)
が挙げられ、より好ましい態様としては、
前記一般式[1]において、
Qが、ケイ素原子であり、
R1およびR6が、水素原子であり、
R2~R5およびR7~R14が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のケイ素含有基、炭素数1~20の酸素含有基または炭素数1~20の窒素含有基である
遷移金属錯体(A-2)
が挙げられる。
【0058】
前記遷移金属錯体(A-1)において、R7、R9およびR12の選択肢の1つである、窒素、酸素および硫黄からなる群から選ばれる原子を少なくとも1つ含む母骨格を5員環(以下「複素5員環」ともいう。)とする、置換基を有していてもよい複素環式芳香族基としては、例えば、下記一般式[4a]~[4h]で表される基が挙げられる。
【0059】
【0060】
前記一般式[4a]~[4h]中、Chは酸素原子あるいは硫黄原子であり、Rdはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
なお、前記一般式[4a]~[4h]中の波線はインデニル環との結合部位を示す。
【0061】
前記炭素数1~20の炭化水素基の例としては、上述したR1~R14としての前記炭素数1~40の炭化水素基の例として挙げたもののうち、炭素数が1~20のものが挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、アリル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクテニル基、ノルボルニル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、ベンジル基、ベンズヒドリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、シンナミル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、2,6-ジ-iso-プロピルフェニル基、2,4,6-トリ-iso-プロピルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、4-アダマンチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基、ビナフチル基、フェナントリル基、アントラセニル基、フェロセニル基が挙げられ、より好ましくは、メチル基、エチル基、1-プロピル基、1-ブチル基、iso-プロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、アリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、ビフェニル基、terフェニル基が挙げられる。
【0062】
Rdはそれぞれ独立に、隣接したRd同士で互いに結合して、複素5員環部分に縮環する、置換基を有していてもよい、複素5員環部分の原子と共に5~8員環を構成する飽和または不飽和炭化水素基を形成してもよい。前記5~8員環は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、好ましくは5または6員環であり、この場合、この環と母核の複素5員環部分とを併せた構造として、例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、カルバゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環等が挙げられる。
【0063】
前記一般式[4a]~[4h]で表される複素環式芳香族基の中でも、前記一般式[4a]で表される複素環式芳香族基が好ましい。
前記一般式[4a]で表される複素環式芳香族基の中でも、2-フリル基、5-メチル-2-フリル基、2-チエニル基、5-メチル-2-チエニル基が好ましい。
【0064】
《遷移金属錯体(A)の例示》
以下に前記遷移金属錯体(A)の具体例を示すが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0065】
便宜上、前記遷移金属錯体(A)のMXn(金属部分)で表される部分を除いたリガンド構造を、2-インデニル環部分、1-インデニル環部分、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基、インデニル環部分R2、R5、R9、およびR12置換基、インデニル環部分R3、R4、R10、およびR11置換基、1-インデニル環部分R7置換基、架橋部分の構造の7つに分ける。2-インデニル環部分の略称をα、1-インデニル環部分の略称をβ、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基の略称をγ、インデニル環部分R2、R5、R9、およびR12置換基の略称をδ、インデニル環部分R3、R4、R10、およびR11置換基の略称をε、1-インデニル環部分R7置換基の略称をζ、架橋部分の構造の略称をηとし、各置換基の略称を[表1]~[表7]に示す。
【0066】
【0067】
【表2】
なお、前記[表1]~[表2]中の波線は架橋部分との結合部位を示す。
【0068】
【表3】
前記[表3]中のR
1、R
6およびR
8置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
【0069】
【表4】
前記[表4]中のR
2、R
5、R
9、およびR
12置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
【0070】
【表5】
前記[表5]中のR
3、R
4、R
10、およびR
11置換基は、その組み合わせにおいて互いに同一でも異なっていてもよい。
【0071】
【0072】
【0073】
金属部分MXnの具体的な例示としては、TiF2、TiCl2、TiBr2、TiI2、Ti(Me)2、Ti(Bn)2、Ti(Allyl)2、Ti(CH2-tBu)2、Ti(1,3-ブタジエニル)、Ti(1,3-ペンタジエニル)、Ti(2,4-ヘキサジエニル)、Ti(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Ti(CH2-Si(Me)3)2、Ti(ОMe)2、Ti(ОiPr)2、Ti(NMe2)2、Ti(ОMs)2、Ti(ОTs)2、Ti(ОTf)2、ZrF2、ZrCl2、ZrBr2、ZrI2、Zr(Me)2、Zr(Bn)2、Zr(Allyl)2、Zr(CH2-tBu)2、Zr(1,3-ブタジエニル)、Zr(1,3-ペンタジエニル)、Zr(2,4-ヘキサジエニル)、Zr(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Zr(CH2-Si(Me)3)2、Zr(ОMe)2、Zr(ОiPr)2、Zr(NMe2)2、Zr(ОMs)2、Zr(ОTs)2、Zr(ОTf)2、HfF2、HfCl2、HfBr2、HfI2、Hf(Me)2、Hf(Bn)2、Hf(Allyl)2、Hf(CH2-tBu)2、Hf(1,3-ブタジエニル)、Hf(1,3-ペンタジエニル)、Hf(2,4-ヘキサジエニル)、Hf(1,4-ジフェニル-1,3-ペンタジエニル)、Hf(CH2-Si(Me)3)2、Hf(ОMe)2、Hf(ОiPr)2、Hf(NMe2)2、Hf(ОMs)2、Hf(ОTs)2、Hf(ОTf)2等が挙げられる。Meはメチル基、Bnはベンジル基、tBuはtert-ブチル基、Si(Me)3はトリメチルシリル基、ОMeはメトキシ基、ОiPrはiso-プロポキシ基、NMe2はジメチルアミノ基、ОMsはメタンスルホナート基、ОTsはp-トルエンスルホナート基、ОTfはトリフルオロメタンスルホナート基である。
【0074】
上記の表記に従えば、2-インデニル環部分が[表1]中のα-1、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-5、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2およびR5置換基がいずれも[表4]中のδ-1、2-インデニル環部分R3およびR4置換基がいずれも[表5]中のε-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-30、1-インデニル環部分R9置換基が[表4]中のδ-38、1-インデニル環部分R12置換基が[表4]中のδ-3、架橋部分が[表7]中のη-20の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがZrCl2の場合は、下記式[5]で表される化合物を例示している。
【0075】
【0076】
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-1、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-2、インデニル環部分R1、R6およびR8置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2およびR5置換基がいずれも[表4]中のδ-2、2-インデニル環部分R3およびR4置換基がいずれも[表5]中のε-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-1、架橋部分が[表7]中のη-4の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがZr(NMe2)2の場合は、下記式[6]で表される化合物を例示している。
【0077】
【0078】
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-3、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-1、2-インデニル環部分R1およびR6置換基がいずれも[表3]中のγ-2、インデニル環部分R2、R5およびR12置換基がいずれも[表4]中のδ-1、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-12、1-インデニル環部分R8置換基が[表3]中のγ-1、1-インデニル環部分R9置換基が[表4]中のδ-42、1-インデニル環部分R10置換基が[表5]中のε-3、1-インデニル環部分R11置換基が[表5]中のε-12、架橋部分が[表7]中のη-31の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがHfMe2の場合は、下記式[7]で表される化合物を例示している。
【0079】
【0080】
また、2-インデニル環部分が[表1]中のα-1、1-インデニル環部分が[表2]中のβ-1、2-インデニル環部分R1およびR6置換基がいずれも[表3]中のγ-1、2-インデニル環部分R2置換基が[表4]中のδ-7、2-インデニル環部分R3、R4、R10およびR11置換基がいずれも[表5]中のε-1、2-インデニル環部分R5置換基が[表4]中のδ-2、1-インデニル環部分R7置換基が[表6]中のζ-1、1-インデニル環部分R8置換基が[表3]中のγ-9、1-インデニル環部分R9およびR12置換基がいずれも[表4]中のδ-1、架橋部分が[表7]中のη-29の組み合わせで構成され、金属部分のMXnがTi(1,3-ペンタジエニル)の場合は、下記式[8]で表される化合物を例示している。
【0081】
【0082】
また、前記遷移金属錯体(A)は、架橋部分を挟んで中心金属と結合するインデニル環部分の面が2方向存在する(表面と裏面)。故に、2-インデニル環部分に対称面が存在しない場合、一例として下記一般式[9a]あるいは[9b]で示される2種類の構造異性体が存在する。
【0083】
【化9】
同様に、架橋部分の置換基R
13とR
14が同一でない場合にも、一例として下記一般式[10a]あるいは[10b]で示される2種類の構造異性体が存在する。
【0084】
【0085】
これら構造異性体混合物の精製、分取、あるいは構造異性体の選択的な製造は、公知の方法によって可能であり、特に製造法が限定されるわけではない。公知の製造方法としては、前記遷移金属錯体(A)の製造方法として挙げたものの他に、特開平10-109996号公報、「Оrganometallics 1999,18,5347.」、「Оrganometallics 2012,31,4340.」、特表2011-502192号公報等に開示された製造方法が挙げられる。
【0086】
なお、前記遷移金属錯体(A)の範囲内で、遷移金属錯体を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、構造異性体混合物を用いてもよく、構造異性体を1種単独で用いてもよく、2種以上の構造異性体混合物を用いてもよい。上述のとおり本発明によれば、予備重合触媒の製造方法に用いられる遷移金属錯体として前記遷移金属錯体(A)のみを使用して長鎖分岐が多く導入されたエチレン系重合体を高い触媒活性で製造することができるが、この効果が損なわれない範囲で、前記遷移金属錯体として前記遷移金属錯体(A)とは別の1種以上の遷移金属錯体を併用してもよい。この際、遷移金属錯体(A)は上記のいずれの態様であってもよい。
【0087】
《遷移金属錯体(A)の製造方法》
前記遷移金属錯体(A)は、従来公知の方法を利用して製造することができ、代表的な合成経路の例を以下に示すが、特に製造法が限定されるわけではない。なお、以下の[式1]~[式5]において、R1~R14、Q、M、Xおよびnは、上記一般式[1]に記載されたものと同義である。
【0088】
出発物質である置換インデン化合物は、公知の方法によって製造可能であり、特に製造法が限定されるわけではない。公知の製造方法として例えば、「Оrganometallics 1994,13,954.」、「Оrganometallics 2006,25,1217.」、特表2006-509059号公報、「Bioorg.Med.Chem. 2008,16,7399.」、WО2009/080216号公報、「Оrganometallics 2011,30,5744.」、特表2011-500800号公報、「Оrganometallics 2012,31,4962.」、「Chem.Eur.J. 2012,18,4174.」、特開2012-012307号公報、特開2012-121882号公報、特開2014-196319号公報、特表2014-513735号公報、特開2015-063495号公報、特開2016-501952号公報等に開示された製造方法が挙げられる。
【0089】
前記置換インデン化合物のうち、2位無置換のものに関しては、以下の様な公知の方法によって2位を臭素化可能であり、特に製造法が限定されるわけではない。
【0090】
【0091】
なお、前記[式1]中、NBSはN-ブロモコハク酸イミドを示し、PTSAはp-トルエンスルホン酸またはその一水和物を示している。インデン化合物には、5員環部分二重結合位置異性体が存在するが、それら異性体の混合物を用いてもよい。公知の製造方法として例えば、前記で示した特開2012-121882号公報、特開2015-063495号公報の他に、特開2014-111568号公報等に開示された製造方法が挙げられる。
【0092】
前記2位臭素化置換インデン化合物および4位臭素化置換インデン化合物は、以下の様なパラジウム触媒による鈴木-宮浦カップリング反応等の公知の方法によって、対応するカップリング生成物を製造可能であり、特に製造法が限定されるわけではない。
【0093】
【0094】
前記同様に、インデン化合物5員環部分二重結合位置異性体が存在するが、それら異性体の混合物を用いてもよい。
なお、ボロン酸の代わりに各種ボロン酸エステルやボロキシン等、他のホウ素化合物を用いてもよく、ハロゲン化合物と金属試薬、次いでホウ素化合物との反応混合物を単離精製せずに用いてもよく、パラジウム触媒の代わりにニッケル触媒または鉄触媒を用いてもよい。公知の製造方法として例えば、前記で示したものの他に、特開2014-196274号公報等が挙げられる。
【0095】
また、カップリング生成物の製造には、ホウ素化合物による鈴木-宮浦カップリングの代わりに、有機亜鉛試薬との根岸カップリング、アルケン化合物との溝呂木-Heck反応、有機ケイ素化合物との檜山カップリング、末端アルキン化合物との薗頭-萩原カップリング、有機スズ化合物との右田-小杉-Stilleカップリング、有機マグネシウム化合物との熊田-玉尾-Corriuカップリング、Buchwald-Hartwigカップリング、Goldbergアミノ化反応またはUllmannエーテル合成反応を用いてもよい。公知の製造方法として例えば、前記で示したものの他に、特開平8-183814号公報、特表2005-529865号公報、特表2006-509046号公報等が挙げられる。
【0096】
カップリング生成物の製造には、前記2位無置換インデン化合物と芳香族ハロゲン化物を用い、パラジウム触媒による直接カップリング反応等の公知の方法を用いてもよい。
【0097】
【0098】
前記[式3]中、Arは芳香族置換基を示し、インデン化合物5員環部分二重結合位置異性体の混合物を用いてもよい。公知の製造方法として例えば、特表2000-512661号公報、特開2014-201519号公報等が挙げられる。
遷移金属錯体(A)および前駆体化合物(配位子)は、前記手法等で製造した各種置換インデン化合物を用いて公知の方法によって製造できる。Qがケイ素原子、ゲルマニウム原子またはスズ原子の場合、以下の様な方法によって製造可能であり、特に製造法が限定されるわけではない。
【0099】
【0100】
前記[式4]中、前駆体化合物(配位子)合成において、2-臭素化置換インデン化合物より調整される有機マグネシウム試薬、および置換1-インデン化合物より調整される有機リチウム試薬は、段階的にQを含む塩化物と反応することが好ましく、その順序はいずれでもよい。一段階目の有機金属試薬との反応の後、不活性雰囲気化で副生無機化合物を除去してもよく、反応生成物を蒸留、晶析または洗浄等の操作で単離してから使用してもよい。二段階目の有機金属試薬との反応の際、DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、DMPU(N,N'-ジメチルプロピレン尿素)またはHMPA(ヘキサメチルリン酸トリアミド)等を、有機金属試薬に対して0.1~5.0当量添加することが好ましく、より好ましくはDMIであり、1.0当量である。なお、置換インデン化合物および前駆体化合物(配位子)には、インデン化合物5員環部分二重結合位置異性体が存在するが、それら異性体の混合物を用いてもよい。
【0101】
遷移金属錯体(A)および前駆体化合物(配位子)の公知の製造方法として例えば、前記で示したものの他に、特開平11-315089号公報、特開2001-302687号公報、特開2001-220404号公報、「高分子論文集 2002,59,243.」、特表2003-522194号公報、「Macromolecules 2004,37,2342.」、特開2007-320935号公報、特開2011-126813号公報等が挙げられる。
【0102】
Qが炭素原子の場合、以下の様な方法によって製造可能であり、特に製造法が限定されるわけではない。
【0103】
【0104】
前記[式5]中、baseは、インデニルアニオンを生成可能な塩基性物質であり、例えば水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、Grignard試薬のような有機金属化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような無機塩基および、ジエチルアミン、ピロリジンのような有機塩基が挙げられるが、特に限定されるわけではない。塩基性物質存在下、置換1-インデン化合物とカルボニル化合物より、公知の方法によってフルベン化合物が合成でき、2-臭素化置換インデン化合物より調整される有機マグネシウム試薬との反応によって、前駆体化合物(配位子)を製造することが可能である。なお、置換インデン化合物および前駆体化合物(配位子)には、インデン化合物5員環部分二重結合位置異性体が存在するが、それら異性体の混合物を用いてもよい。
【0105】
遷移金属錯体(A)および前駆体化合物(配位子)の公知の製造方法として例えば、前記で示したものの他に、「Macromolecules 2003,36,9325.」、「Organometallics 2004,23,5332.」、「Eur.J.Inorg.Chem. 2005,1003.」、「Eur.J.Inorg.Chem. 2009,1759.」、等が挙げられる。
【0106】
<固体状担体(S)>
本発明に係る固体状担体(S)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられ、後述するような多孔質酸化物、無機塩化物等の無機ハロゲン化物が挙げられる。
前記遷移金属錯体(A)が周期表第4族遷移金属原子を含む場合、固体状担体(S)が多孔質酸化物であることが、オレフィン重合体のモルフォロジーを性状良く、かつオレフィン重合体を高い生産性で製造できる点から好ましい。
【0107】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al2O3、MgO、ZrO、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-V2O5、SiO2-Cr2O3、SiO2-TiO2-MgO等を使用することができる。これらのうち、SiO2を主成分とするものが好ましい。
【0108】
なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3、Na2O、K2O、Li2O等の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
【0109】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明で用いられる固体状担体としては、粒径が通常0.2~300μm、好ましくは1~200μm、より好ましくは20~100μm、さらに好ましくは40~80μmであって、比表面積が通常50~1200m2/g、好ましくは100~1000m2/g、より好ましくは200~600m2/g、さらに好ましくは300~400m2/gの範囲にあり、細孔容積が通常0.3~30cm3/g、好ましくは0.5~10cm3/g、より好ましくは0.8~5cm3/g、さらに好ましくは1.0~2.0cm3/gの範囲にあるものが好ましい。このような担体は、必要に応じて、例えば、100~1000℃、好ましくは150~700℃、より好ましくは175~500℃、さらに好ましくは200~300℃で焼成して用いられる。
【0110】
無機ハロゲン化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0111】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0112】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。
【0113】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト等が挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO4)2・H2O、α-Zr(HPO4)2、α-Zr(KPO4)2・3H2O、α-Ti(HPO4)2、α-Ti(HAsO4)2・H2O、α-Sn(HPO4)2・H2O、γ-Zr(HPO4)2、γ-Ti(HPO4)2、γ-Ti(NH4PO4)2・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩等が挙げられる。
【0114】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cm3/g以上のものが好ましく、0.3~5cm3/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20Å~3×104Åの範囲について測定される。
【0115】
半径20Å以上の細孔容積が0.1cm3/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、いずれも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0116】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)、[Al13O4(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+等の金属水酸化物イオン等が挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)等を加水分解して得た重合物、SiO2等のコロイド状無機化合物等を共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物等が挙げられる。
【0117】
粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分け等の処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
有機化合物としては、粒径が1~300μmの範囲にある顆粒状あるいは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2~14のオレフィンを主成分とする(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレン、ジビニルベンゼンを主成分とする(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0119】
また上記の無機または有機の化合物と後述する成分(B)とを接触させたもの、ならびに、特開平11-140113号公報、特開2000-38410号公報、特開2000-95810号公報、国際公開WO2010/55652号パンフレット等に記載された方法で、後述する成分(B)を不溶化させて得られる固体成分も、固体状担体(S)として用いることができる。
【0120】
<成分(B)>
本発明に係る固体触媒成分(Sa)は、上記遷移金属錯体(A)および上記固体状担体(S)に加え、必要に応じて、下記に記載の成分(B)をさらに用いることができる。
【0121】
本発明で用いることができる成分(B)は、下記(B-1)~(B-3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
(B-1)下記一般式(II)、(III)または(IV)で表される有機金属化合物、
Rd
mAl(ORe)nHpXq・・・(II)
〔一般式(II)中、RdおよびReは、炭素数が1~15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。〕
MaAlRf
4・・・(III)
〔一般式(III)中、MaはLi、NaまたはKを示し、Rfは炭素数が1~15の炭化水素基を示す。〕
Rg
rMbRh
sXt・・・(IV)
〔一般式(IV)中、RgおよびRhは、炭素数が1~15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、MbはMg、ZnまたはCdを示し、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。〕
【0122】
(B-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、
(B-3)遷移金属錯体(A)と反応してイオン対を形成する化合物、
から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0123】
上記一般式(II)において、RdおよびReは互いに同一でも異なっていてもよく、炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基であるが、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基等であり、好ましくは、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基である。
【0124】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記一般式(III)において、Rfの炭化水素基としては、上記RdおよびReと同様の炭化水素基が例示される。
【0125】
上記一般式(IV)において、RgおよびRhは互いに同一でも異なっていてもよく、炭化水素基としては、上記RdおよびReと同様の炭化水素基が例示される。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0126】
一般式(II)、(III)または(IV)で表される有機金属化合物(B-1)の中では、一般式(II)で示されるものが好ましく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム
;ならびにジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ-n-ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドおよびジイソヘキシルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0127】
有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)としては、トリアルキルアルミニウムまたはトリシクロアルキルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製されたアルミノキサンがより好ましく、トリメチルアルミニウムから調製されたアルミノキサンがさらに好ましい。なお、トリメチルアルミニウムから調製されたアルミノキサンをメチルアルミノキサンまたはMAOとも呼ぶ。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0128】
遷移金属錯体(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-3)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報およびUS5321106等に記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物を制限無く使用することができる。
【0129】
本発明においては、遷移金属錯体(A)に加えてアルミノキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)を助触媒成分として用いると、非常に高い重合活性を示す。したがって、有機アルミニウムオキシ化合物(B-2)を成分(B)として用いることが好ましい。
【0130】
<予備重合触媒(X)の製造方法>
本発明に係るオレフィン重合に用いる予備重合触媒(X)の製造方法は、前記遷移金属錯体(A)と前記固体状担体(S)とを含む固体触媒成分(Sa)を、溶媒中の固体分を除く有機アルミニウム化合物の濃度が0.1mmol/L以上10mmol/L以下、かつ、予備重合温度が10~30℃の条件下、前記固体触媒成分(Sa)1gに対し、炭素数2以上のオレフィンを1~10L/hrの速度で供給し、予備重合させる工程を含むことを特徴としている。
本発明の予備重合触媒(X)の製造方法を採用することにより、予備重合反応器内のファウリングが抑制され、安定的に均一な物性のオレフィン重合体を製造でき、かつ、分子量の高いオレフィン重合体を製造できる。
【0131】
<固体触媒成分(Sa)>
本発明の予備重合触媒(X)の製造方法で用いる固体触媒成分(Sa)は、前記固体状担体(S)と、前記遷移金属錯体(A)とを不活性炭化水素中、-50℃以上200℃以下、好ましくは-20℃以上150℃以下、より好ましくは0℃以上100℃以下、さらに好ましくは15℃以上30℃以下の温度で接触させて得られる。接触時間は0.01~48時間、好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.3~6時間、さらに好ましくは0.5~2時間である。
【0132】
固体触媒成分(Sa)の調製に用いられる不活性炭化水素としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素、ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼンおよびジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物等を挙げることができる。
【0133】
遷移金属錯体(A)を2種以上用いる場合、固体状担体(S)との接触順序は任意であり、2種以上の遷移金属錯体(A)を任意の順序で接触させてもよく、または同時に接触させてもよい。
【0134】
固体触媒成分(Sa)を調製するに際して、遷移金属錯体(A)は、固体状担体(S)1g当たり、通常1μmol~1.0mmol、好ましくは3μmol~0.5mmol、より好ましくは5μmol~0.3mmol、さらに好ましくは10μmol~0.1mmolの量で用いられる。
【0135】
ここで、本発明に係る固体触媒成分(Sa)の調製においては、上記成分(B)を好適に併用することができ、その態様は何ら限定されるものではないが、好ましい態様の例を以下に示す。
【0136】
(i)固体状担体(S)と成分(B)を混合接触させ、次いで遷移金属錯体(A)を接触させて固体触媒成分(Sa)を調製する方法。
(ii)遷移金属錯体(A)と成分(B)を混合接触させ、次いで固体状担体(S)を接触させて固体触媒成分(Sa)を調製する方法。
【0137】
成分(B)と固体状担体(S)との接触は不活性炭化水素溶媒中で行うのが好ましく、不活性炭化水素溶媒としては、前記固体触媒成分(Sa)の調製に用いられる不活性炭化水素と同様のものが挙げられる。成分(B)と固体状担体(S)との接触時間は、通常0.1~48時間、好ましくは0.5~20時間、より好ましくは1~12時間、さらに好ましくは3~6時間であり、接触温度は、通常-50~200℃、好ましくは-20~120℃、より好ましくは-10~110℃、さらに好ましくは-5~100℃である。成分(B)と固体状担体(S)との接触モル比(成分(B)/固体状担体(S))は、通常0.1~1000、好ましくは0.1~100である。
【0138】
<予備重合触媒(X)>
本発明に係る予備重合触媒(X)は、予備重合触媒(Sa)を上記条件下で予備重合して得ることができる。
【0139】
予備重合触媒(X)の調製に用いる溶媒は不活性炭化水素溶媒が好ましく、不活性炭化水素溶媒としては、固体触媒成分(Sa)を調製する際に用いられる不活性炭化水素溶媒と同様のものが挙げられる。
【0140】
予備重合は回分式、半連続式、連続式いずれの方法においても実施することができ、また減圧、常圧または加圧下のいずれでも行うことができる。予備重合系における固体触媒成分(Sa)の濃度は、固体触媒成分(Sa)/重合容積1リットル比で、通常1~1000g/L、好ましくは5~500g/L、より好ましくは10~200g/L、さらに好ましくは20~100g/Lである。
【0141】
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物は何ら限定されるものではないが、好ましくは成分(B-1)の一般式(II)、(III)もしくは成分(B-2)が挙げられる。
有機アルミニウム化合物の濃度は、固体触媒成分(Sa)に由来する固体分を除き、0.1mmol/L以上10mmol/L以下、好ましくは0.3mmol/L以上5.0mmol/L以下、より好ましくは0.5mmol/L以上2.0mmol/L以下、さらに好ましくは1.0mmol/L以上1.5mmol/L以下の範囲にある。
有機アルミニウム化合物の濃度が前記範囲内にあると、分子量の高いオレフィン重合体を製造できる点で好ましい。
【0142】
予備重合温度は、通常10~30℃、好ましくは15~30℃であり、また予備重合時間は、通常0.5~100時間、好ましくは1~50時間程度である。
予備重合温度が前記範囲内にあると、予備重合触媒の製造において、反応器内でのファウリングを抑制できる点で好ましい。
【0143】
予備重合させる炭素数2以上のオレフィンの供給速度は、固体触媒成分(Sa)1gに対し、通常1~10L/hr、好ましくは1~7L/hr、より好ましくは1~4L/hrである。
【0144】
予備重合させる炭素数2以上のオレフィンの量は、固体触媒成分(Sa)1gに対し、好ましくは1g以上50g以下、より好ましくは1.5g以上30g以下、さらに好ましくは2g以上20g以下である。
炭素数2以上のオレフィンの予備重合量が少ないとその後の重合反応において固体触媒成分(Sa)からの遷移金属成分の遊離が促進され、予備重合量が多いと予備重合成分の帯電により、予備重合中に静電付着が起こりやすくなる虞がある。
【0145】
予備重合時に用いられる炭素数2以上のオレフィンとしては、炭素数2~20のα-オレフィンが挙げられ、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が例示される。これらのうち、エチレン、プロピレンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0146】
また、環状オレフィンおよび芳香族ビニル化合物から選択される少なくとも1種を反応系に共存させて重合を進めることもできる。また、ジエンを併用することも可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ビニルシクロヘキサン等のその他の成分を共重合してもよい。炭素数2~20のα-オレフィン100質量部に対して、他のモノマーは、例えば20質量部以下、好ましくは10質量部以下の量で用いることができる。
【0147】
環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンが挙げられる。
【0148】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のモノもしくはポリアルキルスチレン;3-フェニルプロピレン、4-フェニルプロピレン、α-メチルスチレンが挙げられる。
【0149】
ジエンとしては、例えば、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン等のα,ω-非共役ジエン;エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等の非共役ジエン;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンが挙げられる。
【0150】
上記製造方法で得られた予備重合触媒(X)は、懸濁液のままオレフィン重合に用いてもよいし、懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させてオレフィン重合に用いてもよいし、また、乾燥させた後、オレフィン重合に用いてもよい。
【0151】
本発明に係る上記予備重合触媒(X)の製造において、本発明に係る上記予備重合触媒(X)を製造する工程前、工程中、あるいは工程後に下記の成分(G)を添加(と接触)させてもよい。
【0152】
<成分(G)>
本発明で所要により用いることができる成分(G)は、通常、界面活性剤と呼称されている化合物であり、具体的には、下記(g-1)~(g-6)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
(g-1)ポリアルキレンオキサイドブロック、
(g-2)高級脂肪族アミド、
(g-3)ポリアルキレンオキサイド、
(g-4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、
(g-5)アルキルジエタノールアミン、および
(g-6)ポリオキシアルキレンアルキルアミン。
【0153】
成分(G)は、触媒もしくは重合体の静電付着による重合器内でのファウリングを抑制する、あるいは生成重合体の粒子性状を改善する目的で、オレフィン重合用触媒中に共存させることができる。成分(G)の中では、(g-1)、(g-2)、(g-3)および(g-4)が好ましく、(g-1)および(g-2)が特に好ましい。(g-2)の具体例としては、高級脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
【0154】
<オレフィン重合体の製造方法>
本発明に係る前記予備重合触媒(X)は、炭素数2以上のオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等のオレフィン単独重合体、あるいはオレフィン共重合体の製造に用い得る。
【0155】
以下、本発明に係るオレフィン重合体の製造方法について、オレフィン重合体の代表例であるエチレン系重合体の製造方法に関して説明する。
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法によって得られる好適なエチレン系重合体は、エチレンと炭素数3以上10以下のα-オレフィンとの共重合体である。エチレンとの共重合に用いられる炭素数3~10のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。
【0156】
本発明のオレフィン重合体の製造方法においては、オレフィンの重合は、溶液重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。不活性炭化水素媒体は1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、重合に供給されうる液化オレフィン自身を溶媒として用いる、いわゆるバルク重合法を用いることもできる。
【0157】
重合条件は、遷移金属錯体(A)が、反応容積1L当たり、通常10-12~10-1mol、好ましくは10-8~10-2molになる量で用いられる。また、重合温度は、通常-50~200℃、好ましくは0~170℃、より好ましくは30~170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式および連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに反応条件の異なる2種以上の条件下で多段反応として行うこともできる。
【0158】
得られるエチレン系重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。特に水素は、触媒の重合活性を向上させる効果や、重合体の分子量を増加または低下させる効果が得られることがあり、好ましい添加物であるといえる。系内に水素を添加する場合、その量はオレフィン1モルあたり0.00001~100NL程度が適当である。系内の水素濃度は、水素の供給量を調整する以外にも、水素を生成または消費する反応を系内で行う方法や、膜を利用して水素を分離する方法、水素を含む一部のガスを系外に放出することによっても調整することができる。
【0159】
得られるエチレン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは80,000g/mol以上、より好ましくは100,000g/mol以上、さらに好ましくは120,000g/mol以上、特に好ましくは140,000g/mol以上である。上限値は、特に限定されないが、例えば1,000,000g/mol以下であってもよい。エチレン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求められる。具体的には、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0160】
さらに重合系には、触媒もしくは重合体の静電付着による重合器内でのファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、上記成分(G)を共存させることができる。
本発明の製造方法で得られたオレフィン重合体に対しては、上記方法で合成した後に、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行ってよい。
【0161】
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたオレフィン重合体粒子および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒等を施される。
【実施例0162】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0163】
<評価方法>
〔予備重合後のファウリング有無〕
予備重合後のファウリング有無については、予備重合触媒調製後の反応器壁および撹拌翼への付着物を目視で観察することにより評価した。
【0164】
〔重合体の重量平均分子量(Mw)〕
エチレン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。Waters社製「Alliance GPC 2000」ゲル浸透クロマトグラフ(高温サイズ排除クロマトグラフ)により得られる分子量分布曲線から計算したものであり、操作条件は、下記の通りである:
<使用装置および条件>
測定装置;ゲル浸透クロマトグラフ allianceGPC2000型(Waters社)
解析ソフト;クロマトグラフィデータシステム Empower(商標、Waters社)
カラム;TSKgel GMH6-HT×2 + TSKgel GMH6-HT×2(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相;o-ジクロロベンゼン〔=ОDCB〕(富士フイルム和光純薬(株) 特級試薬)
検出器;示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度;140℃
流速;1.0mL/min
注入量;400μL
サンプリング時間間隔;1秒
試料濃度;0.15%(w/v)
分子量較正 単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495から分子量2060万
【0165】
[実施例1]
<固体触媒スラリーの調製>
内容積270Lの撹拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、シリカゲル(富士シリシア株式会社製:平均粒径70μm、比表面積340m2/g、細孔容積1.3cm3/g、250℃で10時間乾燥)10kgを77Lのトルエンに懸濁させた後0~5℃に冷却した。この懸濁液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mmol/mL)19.4Lを30分間かけて滴下した。この際、系内温度を0~5℃に保った。引き続き0~5℃で30分間接触させた後、約1.5時間かけて系内温度を95℃まで昇温して、引き続き95℃で4時間接触させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量115Lのトルエンスラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:270.0g/L、Al濃度:1.322mol/Lであった。
【0166】
充分に窒素置換した内容積1Lの撹拌機付き反応器に、トルエン37.5mL、および上記で得られたトルエンスラリー230.0mL(固体分=62.1g、Al=304.08mmol)を装入した。次いで、ジメチルシリレン(2-インデニル)(4-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル)-7-メトキシ-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド[特開2019-059933号公報記載の方法によって合成した]0.0076mol/Lに、トルエン溶液を200mL加え、系内温度20~25℃で1時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した後、全量410mLの固体触媒スラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:154.0g/L、Al濃度:0.742mol/Lであった。
【0167】
<予備重合触媒の調製>
充分に窒素置換した内容積1Lのステンレス製撹拌機付き反応器に、ヘキサン228.6mLおよび上記固体触媒スラリー75.0mL(固体分として11.6g)を装入した。次いでジイソブチルアルミニウムハイドライドを、系内溶媒中の有機アルミニウム濃度が1.1mmol/Lとなるように添加した。固体触媒成分1gに対し15gのエチレンを、固体触媒成分1gに対し3.3L/hrの速度で供給した。ジイソブチルアルミニウムハイドライドを装入してからエチレン供給を停止させる間、系内温度を25℃に制御した。予備重合触媒調製後の反応器壁や撹拌翼への付着物は認められなかった。得られたスラリーを全量、充分に窒素置換した内容積1Lのガラスフィルターに、窒素雰囲気下で装入した後、約1時間かけて-68kPaGまで減圧し、-68kPaGに到達したところで約2時間真空乾燥し、予備重合触媒を得た。また得られた予備重合触媒の流動性は良好だった。
【0168】
<エチレン系重合体の製造>
充分に窒素置換した内容積1Lのステンレス製オートクレーブにヘプタン500mLを装入し、系内をエチレンで置換した後、1-ヘキセン3mL、トリイソブチルアルミニウム0.375mmolおよび上記で調製した予備重合触媒1.00gを装入し、系内の温度を80℃に昇温した。次いで、エチレンを連続的に導入することにより全圧0.8MPaG、80℃の条件で90分間重合反応を行った。濾過によりポリマーを回収し、減圧下、80℃で一晩乾燥することにより、エチレン系重合体125.8gを得た。生産性(固体触媒成分1gに対するエチレン系重合体の生成量)は1,840gで、重量平均分子量は143,000g/molだった。
【0169】
[実施例2]、[比較例1]~[比較例4]
実施例1の予備重合触媒の調製において、エチレン供給量、エチレン供給速度、系内温度を表8に示すとおりに変更した以外は同様に実施した。なお、比較例2については、予備重合触媒調製後の反応器壁や撹拌翼にファウリングが見られたため、エチレン系重合体の製造は行わなかった。結果を表8に示す。
【0170】