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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097612
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】配車管理装置及び配車管理方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20250624BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20250624BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20250624BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20250624BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20250624BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G01C21/34
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023213894
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 奈都
(72)【発明者】
【氏名】古城 直樹
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA04
2F129BB03
2F129DD12
2F129DD15
2F129DD27
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE81
2F129EE83
2F129FF02
2F129FF11
2F129FF20
2F129FF62
2F129FF63
2F129FF67
2F129FF71
2F129GG17
2F129GG18
5H181AA14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF27
5H181MA01
5H181MA02
(57)【要約】
【課題】 目的地までの予想所要時間のばらつきを考慮して、ユーザの嗜好に合わせた走行ルートを提示する。
【解決手段】 本発明は、配車要求に基づき車両の配車を管理する配車管理装置である。前記装置は、ユーザの前記配車要求に応答して、走行ルートに基づく前記車両の配車計画を作成する配車計画作成部と、を備える。前記配車計画作成部は、配車された前記車両の走行実績情報を格納しておき、前記配車要求に基づいて走行ルート候補を抽出するとともに前記車両を抽出し、前記走行実績情報に基づいて算出される、前記走行ルート候補ごとの所要時間のばらつき度に対するばらつきしきい値に基づいて実効予想所要時間を算出し、前記配車要求が示す目的地までの平均予想所要時間のばらつき度に対する前記ユーザのばらつき許容度を決定し、前記ばらつき許容度及び前記実効予想所要時間に基づいて前記走行ルート候補の中から前記走行ルートを決定する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配車要求に基づいて車両の配車を管理する配車管理装置であって、
配車された前記車両の走行実績情報を格納する走行実績情報データベースと、
各ユーザの前記配車要求に応答して、走行ルートに基づく前記車両の配車計画を作成する配車計画作成部と、を備え、
前記配車計画作成部は、
前記配車要求に基づいて、走行ルート候補を抽出する走行ルート候補抽出部と、
前記配車要求に基づいて、前記車両を抽出する候補車両抽出部と、
前記走行実績情報に基づいて算出される、前記走行ルート候補ごとの所要時間のばらつき度に対するばらつきしきい値を決定し、前記ばらつきしきい値に基づいて、実効予想所要時間を算出する実効予想所要時間算出部と、
前記配車要求が示す目的地までの平均予想所要時間のばらつき度に対する前記ユーザのばらつき許容度を決定するばらつき許容度決定部と、
前記ばらつき許容度及び前記実効予想所要時間に基づいて、前記走行ルート候補の中から前記走行ルートを決定する走行ルート決定部と、
前記配車計画に基づいて前記車両に配車指示を行う配車指示部と、を備える、
配車管理装置。
【請求項2】
前記ばらつき許容度決定部は、前記配車要求に基づいて前記ばらつき許容度を決定する、
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項3】
前記ユーザのユーザ情報を管理するユーザ情報データベースを更に備え、
前記ユーザ情報は、前記ユーザによって入力された前記ばらつき許容度を含み、
前記ばらつき許容度決定部は、前記ユーザ情報に基づいて、前記ばらつき許容度を決定する、
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項4】
前記ばらつき許容度決定部は、前記ユーザ情報が示す前記ユーザの個人属性情報に基づいて、前記ばらつき許容度を決定する、
請求項3に記載の配車管理装置。
【請求項5】
少なくとも1以上の前記走行ルートに基づく配車計画を前記ユーザに提示するための配車計画提案部を更に備える、
請求項3に記載の配車管理装置。
【請求項6】
前記ユーザ情報は、前記ユーザが前記少なくとも1以上の走行ルートの中から過去に選択した走行ルートの履歴情報を示す走行ルート選択履歴情報を含み、
前記ばらつき許容度決定部は、前記走行ルート選択履歴情報に基づいて、前記ユーザの前記ばらつき許容度を決定する、
請求項5に記載の配車管理装置。
【請求項7】
前記ばらつき許容度決定部は、前記走行ルート選択履歴情報が示す前記走行ルートの平均予想所要時間のばらつき度に基づいて、前記ばらつき許容度を決定する、
請求項6に記載の配車管理装置。
【請求項8】
前記走行ルート決定部は、前記ばらつき許容度が第1の許容しきい値よりも小さい場合、平均予想所要時間のばらつき度がより小さい前記走行ルート候補を前記走行ルートに決定する、
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項9】
前記走行ルート決定部は、前記ばらつき許容度が第2の許容しきい値よりも大きい場合、平均予想所要時間のばらつき度がより大きい前記走行ルート候補を前記走行ルートに決定する、
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項10】
前記配車計画作成部は、前記ばらつき許容度が乗合基準値よりも大きい場合、前記ユーザに対して配車された前記車両での前記ユーザと他のユーザとの乗合を許容する、
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項11】
前記配車計画作成部は、前記ユーザの前記ばらつき許容度と前記他のユーザのばらつき許容度との差が所定値以下の場合に、前記他のユーザの配車要求に基づいて、前記ユーザに対して配車された前記車両での前記ユーザと他のユーザとが乗合うように、前記配車計画を作成する、
請求項10に記載の配車管理装置。
【請求項12】
前記ユーザに対する前記車両の前記走行ルートと前記他のユーザの前記ばらつき許容度に基づく走行ルート候補とが少なくとも一部において重複する場合に、前記ユーザと他のユーザとが乗合うように、前記配車計画を作成する、
請求項10に記載の配車管理装置。
【請求項13】
前記走行ルート候補抽出部は、抽出された前記走行ルート候補の平均予想所要時間を算出し、
前記走行ルート決定部は、前記平均予想所要時間と前記実効予想所要時間との差に基づいて、前記平均予想所要時間のばらつき度を算出する、
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項14】
前記走行ルート決定部は、抽出された前記走行ルート候補のうち、前記平均予想所要時間及び前記実効予想所要時間がともに他よりも大きい前記走行ルート候補を除外することにより前記走行ルート候補を絞り込む、
請求項1に記載の配車管理装置。
【請求項15】
配車要求に基づいて車両の配車を管理する配車管理方法であって、
配車された前記車両の走行実績情報を取得することと、
各ユーザの前記配車要求に応答して、走行ルートに基づく前記車両の配車計画を作成することと、を含み、
前記配車計画を作成することは、
前記配車要求に基づいて、走行ルート候補を抽出することと、
前記配車要求に基づいて、前記車両を抽出することと、
前記走行実績情報に基づいて算出される、前記走行ルート候補ごとの所要時間のばらつき度に対するばらつきしきい値を決定することと、
前記ばらつきしきい値に基づいて、実効予想所要時間を算出することと、
前記配車要求が示す目的地までの平均予想所要時間のばらつき度に対する前記ユーザのばらつき許容度を決定することと、
前記ばらつき許容度及び前記実効予想所要時間に基づいて、前記走行ルート候補の中から前記走行ルートを決定することと、
前記配車計画に基づいて前記車両に配車指示を行うことと、を含む、
配車管理方法。
【請求項16】
コンピューティングデバイスに、プロセッサの制御の下、ユーザの配車要求に応答して車両の配車を管理する方法を実行させるコンピュータプログラムであって、
前記方法は、
配車された前記車両の走行実績情報を取得することと、
各ユーザの前記配車要求に応答して、走行ルートに基づく前記車両の配車計画を作成することと、を含み、
前記配車計画を作成することは、
前記配車要求に基づいて、走行ルート候補を抽出することと、
前記配車要求に基づいて、前記車両を抽出することと、
前記走行実績情報に基づいて算出される、前記走行ルート候補ごとの所要時間のばらつき度に対するばらつきしきい値を決定することと、
前記ばらつきしきい値に基づいて、実効予想所要時間を算出することと、
前記配車要求が示す目的地までの平均予想所要時間のばらつき度に対する前記ユーザのばらつき許容度を決定することと、
前記ばらつき許容度及び前記実効予想所要時間に基づいて、前記走行ルート候補の中から前記走行ルートを決定することと、
前記配車計画に基づいて前記車両に配車指示を行うことと、を含む、
るコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配車管理装置及び配車管理方法に関し、特に、車両の走行ルートを適切に選択する配車管理装置及び配車管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フリートマネジメントは、車両の稼働率を高めつつ、ユーザの利便性を向上させるように配車を管理する手法として知られている。例えば、ユーザの配車要求に応じて、配車可能な車両の走行ルートがいくつか探索され、その中から目的地に効率的に到達し得る走行ルートが決定される。
【0003】
例えば、下記特許文献1は、リアルタイムで乗合タクシーの配車依頼が可能な乗合自動車の配車方法及び乗合自動車の配車システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-020973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1に開示された配車システムは、車両の運行においてユーザの目的地までの予想所要時間のばらつきを何ら考慮していなかった。また、ユーザによっては、目的地までの予想所要時間が多少かかるとしても、提案された配車計画において提示された予想所要時間についてはできるだけ遵守してほしいという要望がある。したがって、かかるユーザに対して、予想所要時間は短いが実際の所要時間にばらつきが大きい走行ルートで車両を運行した場合、目的地に到着する予想到着時刻の不確実性から、配車サービスの信頼性を損ねる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、目的地までの予想所要時間のばらつき度を考慮して、ユーザの嗜好に合わせた走行ルートを提示するようにした配車管理装置及び配車管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、以下に示す発明特定事項乃至は技術的特徴を含んで構成される。
【0008】
ある観点に従う本発明は、配車要求に基づいて車両の配車を管理する配車管理装置である。前記配車管理装置は、配車された前記車両の走行実績情報を格納する走行実績情報データベースと、各ユーザの前記配車要求に応答して、走行ルートに基づく前記車両の配車計画を作成する配車計画作成部と、を備える。前記配車計画作成部は、前記配車要求に基づいて、走行ルート候補を抽出する走行ルート候補抽出部と、前記配車要求に基づいて、前記車両を抽出する候補車両抽出部と、前記走行実績情報に基づいて算出される、前記走行ルート候補ごとの所要時間のばらつき度に対するばらつきしきい値を決定し、前記ばらつきしきい値に基づいて、実効予想所要時間を算出する実効予想所要時間算出部と、前記配車要求が示す目的地までの平均予想所要時間のばらつき度に対する前記ユーザのばらつき許容度を決定するばらつき許容度決定部と、前記ばらつき許容度及び前記実効予想所要時間に基づいて、前記走行ルート候補の中から前記走行ルートを決定する走行ルート決定部と、前記配車計画に基づいて前記車両に配車指示を行う配車指示部と、を備える。
【0009】
また、本発明は、配車要求に応答して車両の配車を管理する配車管理装置による配車管理方法並びに該方法を実行するためのコンピュータプログラム及びこれを非一時的に記録した記録媒体としても成立する。
【0010】
なお、本開示において、「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことをいい、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは問わない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、目的地までの予想所要時間のばらつき度を考慮して、ユーザの嗜好に合わせた走行ルートを提示することができるようになる。
【0012】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る配車管理システムの一例を説明するための図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置の機能構成モデルの一例を示すブロックダイアグラム図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置の走行実績情報データベースにおける道路リンク所要時間情報の一例を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置の配車計画作成部の詳細の一例を示すブロックダイアグラム図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置におけるばらつきしきい値の一例を説明するための図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る配車管理システムにおける配車サービスの概要を説明するためのシーケンスチャートである。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置による配車管理処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置による配車管理処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置による配車管理処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図10図10は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置における走行ルート候補の中から走行ルートを決定する例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る配車管理システムの一例を説明するための図である。同図に示すように、配車管理システム1は、配車管理装置10と、端末装置20と、車両Vを含み、これらは通信ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。また、配車管理システム1は、リアルタイムで種々の交通情報を提供する道路交通情報管理システム30に通信ネットワークNを介して接続され得る。
【0016】
本開示の配車管理システム1は、例えば、あるエリアを対象にした、複数の車両Vを用いた配車サービスを提供する。配車サービスは、「オンデマンド方式」又は「予約方式」のいずれであっても良い。「オンデマンド方式による配車サービス」は、ユーザからの配車要求に即時に応答して、該ユーザに所定の車両を割り当てる(配車する)サービスである。つまり、オンデマンド方式による配車サービスでは、ユーザが指定する配車予約時刻は存在しない。また、「即時に応答」とは、ユーザからの配車要求に対して間髪入れずに配車するだけでなく、ユーザが通常許容し得るようなある程度の幅をもった時間を含む概念である。これに対して、「予約方式による配車サービス」は、ユーザによって指定された配車予約時刻又はその時間枠に車両を配車するサービスである。車両Vは、有人型運転車両又は無人運転型車両のいずれであっても良い。
【0017】
配車管理装置10は、配車サービスの対象エリアにおける複数の車両Vによる配車サービスを統括的に管理するコンピューティングデバイスである。対象エリアは、いくつかのエリア(サブエリア)に分けられても良い。配車管理装置10は、例えば配車管理サーバプログラムを実装し、プロセッサの制御の下、配車管理サーバプログラムを実行することにより、配車サービスを実現する。
【0018】
配車管理装置10は、かかる配車サービスを実現するために必要なデータを蓄積し管理する各種のデータベース12を含む。データベース12は、例えば、ユーザ情報データベース12aと、道路地図情報データベース12bと、車両情報データベース12cと、配車計画データベース12dと、を含み得る(図2参照)。データベース12は、配車管理装置10の一部として構成されても良いし、その全部又は一部が配車管理装置10とは別体に構成されても良い。
【0019】
概略的には、配車管理装置10は、車両Vによる移動のための配車を希望するユーザや荷物の配送を希望するユーザから配車要求を受け付けて、該配車要求に基づいて複数の車両Vの中から抽出される候補となる車両Vに対して配車計画を作成する。配車管理装置10は、作成された配車計画の中から最適な車両Vに対する配車計画を確定し、確定した配車計画に従った配車指示を該車両Vに行う。配車計画の確定は、例えば、ユーザの承諾に応答して行われる。
【0020】
配車計画は、車両Vが待機する場所(起点となる待機場所)から、ユーザが乗降を行う途中のいくつかの地点(乗降地(出発地及び目的地))を経由して、終点となる待機場所(最初の待機場所と同じとは限らない。)までを定めた走行ルート及び各地点までの予想所要時間の平均値(以下「平均予想所要時間」という。)を含む。配車計画は、車両Vが待機中であれば、新規の配車要求に基づいて新規に作成される一方、車両Vが既にユーザを乗せて運行中であれば、新規の配車要求に基づいて更新され得る。ユーザを載せた車両Vについては、後のユーザの配車要求に基づいて、乗合となる場合がある。本開示では、配車管理装置10は、後述するように、車両Vが目的地までの予想所要時間(目的地に到着する予想到着時刻)のばらつき度が異なる走行ルートの候補の中から、ユーザのばらつき許容度に適合した走行ルートを走行ルートとして選択し、これに基づいて配車計画を作成する。
【0021】
車両Vは、ユーザの利用に供される、車両情報データベースに登録された車両である。車両Vの車種(例えば、セダン、ミニバン、SUV等)は問わない。車両Vは、車載バッテリーを動力源とする電気自動車(EV)であっても良い。また、車両Vは、完全な自律走行可能な自動運転車(無人運転型車両)であっても良く、自動運転化レベルを問わない。車両Vは、配車管理装置10による指示に従って車両V自体又はその搭載機器(例えばナビゲーション装置)を制御する制御装置CTLを備える(図2参照)。車両Vの制御装置CTLは、例えば、GPSシステムを介して車両Vの現在の位置情報を取得し、これを配車管理装置10に送信する。また、制御装置CTLは、配車管理装置10から配車指示を受け付けて、車両Vの各種の機器又は装置の動作を制御する。
【0022】
端末装置20は、例えば、乗車を希望するユーザがユーザインターフェースを操作して配車要求を行うためのコンピューティングデバイスである。端末装置20は、例えばスマートフォンやパッドコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、デスクトップ型コンピュータ等であるが、これらに限られない。端末装置20は、例えば、配車管理クライアントプログラム(いわゆる配車アプリ)を実装する。端末装置20は、プロセッサの制御の下、配車アプリを実行することにより、ユーザによる配車管理装置10の配車サービスの利用を可能にする。例えば、ユーザは、端末装置20のユーザインターフェース上の配車要求画面(図示せず)から配車要求を行い、これに応答して配車管理装置10が作成した配車計画を承諾することで、車両Vの乗車予約又は荷物配送予約を行い得る。ユーザは、配車要求に際して、平均予想所要時間のばらつき度に対する自身のばらつき許容度を入力し得る。或いは、ユーザは、配車アプリの利用に際してのユーザ登録において、ばらつき許容度を予め入力しておいても良い。
【0023】
道路交通情報管理システム30は、リアルタイムで道路交通情報を提供する情報通信システムである。例えば、道路交通情報管理システム30は、道路に設置された車両センサー及びカメラから道路交通データを収集するとともに、車両Vに搭載された制御装置CTLから走行データを収集し、これらを統合的に処理及び編集した道路交通情報を管理する。編集された道路交通情報は、例えば、通行止めや迂回ルートの情報、特定のルート経由での地点間の所要時間等を含み得る。道路交通情報管理システム30は、道路交通情報を配車管理装置10及び車両Vに適宜に提供する。
【0024】
図2は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置の機能構成モデルの一例を示すブロックダイアグラム図である。同図に示すように、配車管理装置10は、例えば、フロントエンド処理部110と、配車計画作成部120と、車両通信部130といった機能構成要素を含む機能構成モデルとして構成される。また、配車管理装置10は、上述したように、各種のデータベース12を含む。かかる機能構成モデルは、配車管理装置10が、プロセッサの制御の下、配車管理サーバプログラムを実行し、各種のハードウェア資源と協働することにより、実現される。ここに示す機能構成モデルは一例であって、ある機能構成要素における全部又は一部の機能が、他の機能構成要素によって実現されても良い。なお、同図では、説明の便宜上、ユーザの端末装置20、及び車両Vに搭載された制御装置CTLもまた示されている。
【0025】
ユーザ情報データベース12aは、配車サービスを利用するユーザに関する情報(以下「ユーザ情報」という。)を格納する。ユーザ情報は、例えば、ユーザID及びパスワード、個人属性情報(性別、年齢、子連れの有無等)、並びにばらつき許容度等を含む。かかるユーザ情報の全部又は一部は、例えば配車アプリの最初の起動時にユーザが所定の情報を入力することにより、配車管理装置10の制御の下、ユーザ情報データベース12aに登録される。
【0026】
ばらつき許容度は、ユーザが、目的地までの予想所要時間に対して実際の所要時間がどのくらいまでなら許容し得るかを示す値である。ばらつき許容度は、例えば0~5のスケールで示される。例えば、ばらつき許容度が大きいユーザは、目的地までの平均予想所要時間から多少の遅延が生じることを許容し得る一方、それが小さいユーザは、目的地までの平均予想所要時間をできるだけ厳守することを希望している。また、ばらつき許容度は、例えば、平均予想所要時間の10%までの遅延を許容するというように、平均予想所要時間に対する割合から算出されても良い。また、ばらつき許容度は、ユーザの個人属性情報に基づいて算出され又は調整され得る。更に、ばらつき許容度は、複数のユーザによる配車要求に基づく同じ車両Vでのユーザどうしの乗合の可否判断に用いられ得る。
【0027】
また、ユーザ情報は、走行ルート選択履歴情報を更に含み得る。走行ルート選択履歴情報は、過去に提案された走行ルート候補のうち、ユーザがどの走行ルート候補を選択したかを示す履歴情報である。走行ルート選択履歴情報は、ユーザのばらつき許容度を決定するために用いられる。例えば、ユーザが平均予想所要時間のばらつき度が大きい走行ルート候補を選択する傾向にある場合、ばらつき許容度は、相対的に大きな値に設定される一方、ユーザが平均予想所要時間のばらつき度が小さい走行ルート候補を選択する傾向にある場合、ばらつき許容度は、相対的に小さな値に設定される。
【0028】
道路地図情報データベース12bは、配車サービスの対象地域における道路地図に関する情報(以下「道路地図情報」という。)を格納する。道路地図情報は、ルート探索に必要な情報、例えば、道路ネットワーク情報、道路属性情報、地物情報及び環境情報等を含み得る。道路ネットワーク情報は、リンク(道路リンク)及びノード(分岐点)を含み構成される。道路属性情報は、例えば、制限速度、一方通行路、右左折禁止、駐停車禁止、及び通行止めといった交通規制、生活道路や幹線道路等の道路種別(道路幅や通行帯を含む。)、及び交差点の信号機の制御等に関する情報を含む。地物情報は、例えば、建物と道路との間の状況(例えば歩道幅、ガードレールや植え込み等の歩車道区画帯の有無、見通しの程度等)等を含む。環境情報は、例えば、各地点における時間帯ごとの駐停車車両や歩行者の状況、交差点での右左折車両の頻度、駐停車頻度、及び交通事故発生頻度等を含む。
【0029】
車両情報データベース12cは、ユーザの利用に供される車両Vに関する情報(車両情報)を格納する。車両情報は、例えば、車両ID、車両属性(車両登録番号、車種、及び最大乗車人員/最大積載量、有人運転型又は無人運転型等)、車両性能、その他の諸元、現在の配車計画、現在位置、及び現在状態(サービス状態、バッテリー残容量(航続可能距離)、及び乗車人員等)等に関する情報を含む。車両Vの現在位置及び/又は状態は、車両Vから送信される位置情報に基づいて随時に更新され得る。
【0030】
配車計画データベース12dは、ユーザの配車要求に基づいて、配車管理装置10によって作成された車両Vの配車計画を格納する。配車計画は、起点となる待機場所からいくつかの地点を経由して終点となる待機場所までの走行ルート及び各目的地までの平均予想所要時間等を含む。
【0031】
走行実績情報データベース12eは、車両Vごとの過去の走行履歴に関する情報(以下「走行実績情報」という。)を格納する。走行実績情報は、例えば、各車両Vについて、稼働日及び時刻(運行開始時刻及び終了時刻等)、走行ルート、各地点(例えば目的地)の到着及び出発時刻、走行距離、並びに燃費(電費)等の各種の諸元情報を含む。走行ルートは、例えば、車両Vが走行したリンク及びノードによって構成される。本開示では、走行実績情報データベース12eは、走行実績情報に基づいて作成される、リンクごとの所要時間を示す道路リンク所要時間情報を格納する。道路リンク所要時間情報は、例えば、後述する走行実績情報管理部129によって作成される。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置の走行実績情報データベースにおける道路リンク所要時間情報の一例を示す図である。同図(a)に示すように、道路リンク所要時間情報は、識別子(ID)で示される各リンクについて、日にち種別及び時間帯ごとの平均所要時間及びばらつき度(例えば分散や標準偏差)を含む。道路リンク所要時間情報は、ユーザの配車要求に基づく出発地から目的地までの走行ルートの候補(以下「走行ルート候補」という。)ごとの目的地までの所要時間のばらつき度又は偏差を算出するために用いられる。なお、同図(b)は、同図(a)に基づいて算出される出発地及び目的地に対する走行ルートごとの平均予想所要時間及びばらつき度を示している。
【0033】
図2に戻り、フロントエンド処理部110は、ユーザの端末装置20との間での各種の処理を行う。一例として、フロントエンド処理部110は、ユーザの端末装置20上の配車アプリからのログイン要求に従って、ユーザ情報データベース12aを参照し、ログイン認証処理を行う。また、フロントエンド処理部110は、ユーザの端末装置20上の配車アプリからの配車要求を受け付けて、これを配車計画作成部120に引き渡し、これに応答して配車計画作成部120により作成された配車計画に対するユーザの諾否を受けるために、端末装置20とやり取りする。
【0034】
配車計画作成部120は、与えられた配車要求に基づいて、対象地域の車両Vの中から候補となる車両(候補車両v)を抽出し、その配車計画を仮作成する。仮の配車計画は、いくつかの異なる走行ルート候補(すなわち、走行ルート)ごとに作成されても良い。配車計画作成部120は、仮の配車計画をユーザに提案し、ユーザの承諾を受けてこれを確定する。そして、配車計画作成部120は、確定した配車計画を配車計画データベース12dに格納するとともに、車両通信部130を介して、対応する車両Vに配車指示する。また、配車計画作成部120は、ユーザがいくつかの配車計画の中からいずれかを選択した場合、選択された配車計画が示す走行ルートを走行履歴情報としてユーザ情報データベース12aに格納する。配車要求に基づいて配車された車両Vは、配車サービスを終えると、走行実績情報を配車管理装置10に送信し、配車計画作成部120は、これを走行実績情報データベース12eに格納する。
【0035】
本開示では、配車計画作成部120は、配車計画の作成において、配車要求に基づく走行ルート候補を抽出し、該走行ルート候補ごとに、走行実績情報で示される所要時間の実績値のばらつき度に基づいて算出される実効的な予想所要時間(以下「実効予想所要時間」という。)を算出する。そして、配車計画作成部120は、ユーザのばらつき許容度と実効予想所要時間とに従って走行ルート候補を絞り込む。
【0036】
車両通信部130は、通信ネットワークNを介して、車両Vとの間で各種の情報をやり取りする。例えば、車両通信部130は、車両Vの位置情報を含む車両情報を取得して配車計画作成部120に引き渡し、また、配車計画作成部120による配車計画に従った運行指示を車両Vに送信する。また、車両通信部130は、配車サービスを終えた車両Vから走行実績情報を取得して配車計画作成部120に引き渡す。
【0037】
次に、配車計画作成部120の詳細について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置の配車計画作成部の詳細の一例を示すブロックダイアグラム図である。同図に示す例では、配車計画作成部120は、配車要求取得部1201と、需要算出部1202と、候補車両抽出部1203と、走行ルート候補抽出部1204と、実効予想所要時間算出部1205と、ばらつき許容度決定部1206と、走行ルート決定部1207と、配車計画提案部1208と、配車指示部1209と、走行実績情報管理部1210と、を含み構成されている。
【0038】
配車要求取得部1201は、フロントエンド処理部110を介して、ユーザからの配車要求を取得し又は受け付ける。配車要求取得部1201が配車要求を取得した時刻は、各種の限界時間(例えば乗車限界時間や降車限界時間等)の計時開始時刻となる。配車要求取得部1201は、取得した配車要求を需要算出部1202、候補車両抽出部1203、走行ルート候補抽出部1204、及びばらつき許容度決定部1206等の各々に引き渡す。
【0039】
需要算出部1202は、例えば、各種のデータベース12を参照し、走行実績情報等に基づいて、ユーザによる車両Vの現在の需要量及び/又は予測される将来の需要量を算出して、これを需要情報として出力する。例えば、現在の需要量は、配車計画データベース12dに基づいて、配車要求を受け付けた時点においていずれの配車計画も割り当てられていない待機中の車両Vの台数(待機台数)であり得る。また、将来の需要量は、走行実績情報データベース12eに基づいて、基準時刻(例えば現在時刻)から10分後、20分後、30分後、及び1時間後等といった特定の将来時刻又はその時間帯において需要が見込まれる車両Vの台数であり得る。後述するように、例えば、現在及び/又は将来の需要量が高い場合には、ばらつきしきい値は、平均予想所要時間から遠位の値になるように決定される(図5参照)。これにより、ユーザの配車要求が多いことが予想される場合には、予定された配車の遅延が発生しないように、ばらつきしきい値に基づくより確実性の高い実効予想所要時間が算出される。また、このような需要予測の将来時刻又はその時間帯に応じて、ばらつきしきい値は動的に決定され得る。また、需要算出部1202は、走行実績情報に加えて、例えば、時間的・季節的要因やイベント開催といった環境的要因を考慮して、将来の需要量を予測しても良い。需要算出部1202は、例えば稼働実績情報等を説明変数とし、予測需要量を目的変数として、所定の機械学習アルゴリズムに従って機械学習が施された需要予測モデルを含み得る。このように、需要算出部1202は、現在及び/又は将来の需要量を利用することで、最適な走行ルートを含む車両計画が作成され、車両Vの効率的な運用が可能になる。
【0040】
候補車両抽出部1203は、配車要求に基づいて、1又はそれ以上の車両Vを候補車両vとして抽出する。例えば、候補車両抽出部1203は、配車要求が示す乗降地(出発地及び目的地)に基づいて、その近傍を走行する配車可能な車両Vを候補車両vとして抽出する。また、配車要求の受付時刻から各種の限界時間(例えば乗車限界時間や降車限界時間等)内にユーザに配車できない車両Vは除外される。
【0041】
走行ルート候補抽出部1204は、配車要求に基づいて、少なくとも1つ以上の走行ルート候補を抽出する。典型的には、走行ルート候補には、その平均予想所要時間が関連付けられる。或いは、走行ルート候補には、ばらつき度を考慮した所要時間が関連付けられても良い。例えば、走行ルート候補抽出部1204は、配車要求が示す乗車地及び降車地に基づいて、ルート探索エンジンが道路地図情報データベース12bを参照しながらルート探索を行うことにより、走行ルート候補を抽出するとともに、走行実績情報データベース12eを参照して、その平均予想所要時間を算出する。
【0042】
実効予想所要時間算出部1205は、抽出された各走行ルート候補について、走行実績情報データベース12eの道路リンク所要時間情報に基づいて、出発地から目的地までの複数のリンクを含み構成される走行ルートの平均予想所要時間のばらつき度を算出し、算出されたばらつき度に基づいて、実効予想所要時間を算出する。実効予想所要時間は、配車要求に対応する日にち及び時間帯に対応する、走行ルートを構成するリンクの所要時間の合計に基づいている。実効予想所要時間は、上述したように、走行実績情報で示される所要時間の実績値のばらつき度に対するばらつきしきい値に基づいて算出される所要時間である。後述するように、実効予想所要時間算出部1205は、所定の基準に従って、ばらつき度に対するばらつきしきい値を決定する。実効予想所要時間算出部1205は、決定されたばらつきしきい値をルート探索エンジンが算出した走行ルート候補での平均予想所要時間に適用することにより、実効予想所要時間を算出する。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置におけるばらつきしきい値の一例を説明するための図である。すなわち、同図は、ある走行ルートについて、走行実績情報に基づく予想所要時間の確率分布を示している。本開示では、例えば、予想所要時間の平均値に近位のばらつきしきい値を第1のばらつきしきい値とし、第1のばらつきしきい値よりも平均値から遠位のばらつきしきい値を第2のばらつきしきい値とする。つまり、第2のばらつきしきい値は、第1のばらつきしきい値よりもばらつきの分布範囲が大きい値(高い確率でその分布範囲内に収まることを示す値)である。標準正規分布でいう|±σ|及び|±2σ|は、各々、第1のばらつきしきい値及び第2のばらつきしきい値の一例である。
【0044】
図4に戻り、実効予想所要時間算出部1205は、候補車両vの配車計画に基づいて、該候補車両vの次の配車(例えば次の乗車地までの移動)に対して余裕があると判断する場合には、実効予想所要時間算出部1205は、平均値(平均予想所要時間)から近位の第1のばらつきしきい値をばらつきしきい値に設定し得る。つまり、候補車両vに次の配車までの余裕があれば、配車の自由度が高いので、他の基準に従ってばらつきしきい値を決定することができる。例えば、実効予想所要時間算出部1205は、他のユーザの配車要求に基づく次の乗車地での乗車時刻に対して、ユーザの降車地から該他のユーザの乗車地までの移動のための平均予想所要時間を用いて時間的な余裕度を算出し、該算出された余裕度が所定の余裕しきい値を上回っているか否かを判断する。
【0045】
この場合、追加的又は代替的に、実効予想所要時間算出部1205は、所定の需要しきい値を基準にして、車両Vの現在及び/又は将来の需要量が高いか否かを更に判断し、現在及び/又は将来の需要量が高いと判断する場合に、第2のばらつきしきい値をばらつきしきい値に設定するようにしても良い。これにより、ばらつきしきい値に基づく実効予想所要時間の確実性が高くなる。
【0046】
また、実効予想所要時間算出部1205は、候補車両vの配車計画に基づいて、該候補車両vの次の配車(例えば乗車地までの移動)に対して余裕がないと判断する場合や、余裕はあるが将来の需要量が低いと判断する場合に、第1のばらつきしきい値よりも平均値から遠位の第2のばらつきしきい値をばらつきしきい値に設定しても良い。これにより、ばらつきしきい値に基づく実効予想所要時間の確実性が高くなる。
【0047】
例えば、図3(b)を参照して、抽出された第1の走行ルート候補は、走行実績情報に基づく出発地から目的地までの平均予想所要時間が30分であるがそのばらつき度(標準偏差)が20分であり、抽出された第2の走行ルート候補は、平均所要時間が40分であるがそのばらつき度が5分であるとする。つまり、第1の走行ルート候補は、第2の走行ルート候補よりも、平均予想所要時間は短いがそのばらつき度は大きい。実効予想所要時間算出部1205は、所定の条件に従ってばらつきしきい値を例えばσに設定した場合、第1の走行ルート候補の実効予想所要時間は、全体の約68%を示す約50分であると算出し、第2の走行ルート候補の実効予想所要時間は、全体の約68%を示す約45分であると算出する。一方、実効予想所要時間算出部1205は、所定の基準に従ってばらつきしきい値を例えば2σに設定した場合、第1の走行ルート候補の実効予想所要時間は全体の約95%を示す約50分であると算出し、第2の走行ルート候補の実効予想所要時間は全体の約95%を示す約45分であると算出する。
【0048】
また、実効予想所要時間算出部1205は、需要算出部1202により需要予測された特定の将来時刻(例えば現在時刻から10分後、20分後、30分後、及び1時間後等)又はその時間帯に応じて、ばらつきしきい値を動的に設定し得る。例えば、実効予想所要時間算出部1205は、需要予測ための将来時刻が近いほど(例えば10分後)、ばらつきしきい値を平均予想所要時間から遠位(例えば第2のばらつきしきい値)に設定する。これにより、車両Vの配車計画において直近の将来の需要見込みが高い場合、予想所要時間のばらつき度の幅を広げることで、次の配車をできるだけ担保する走行ルートが決定されることになる。一方、実効予想所要時間算出部1205は、需要予測ための将来時刻が遠いほど(例えば30分後)、ばらつきしきい値を平均予想所要時間から近位(例えば第1のばらつきしきい値)に設定する。これにより、直近の将来の需要見込みが低い場合、次の配車への影響を抑えつつ、予想所要時間のばらつき度の幅を狭めることで、平均予想所要時間に近い走行ルートが決定され得ることになる。
【0049】
更に、実効予想所要時間算出部1205は、道路交通情報管理システム30から提供される道路交通情報、時間的・季節的要因及び/又はイベント開催といった環境的要因により、目的地までの予想所要時間に影響があると判断する場合、ばらつきしきい値を平均予想所要時間から近位に設定しても良い。これにより、突発的な要因によって交通流に影響があると予測される場合であっても、予想所要時間のばらつき度の幅を狭めることで、予想所要時間に近い走行ルートが決定され得ることになる。
【0050】
ばらつき許容度決定部1206は、取得された配車要求が示す目的地までの走行ルートの平均予想所要時間のばらつき度に対するユーザのばらつき許容度を決定する。ばらつき許容度は、上述したように、ユーザが、目的地までの予想所要時間に対して実際の所要時間がどのくらいまでなら許容し得るかを示す値である。例えば、ばらつき許容度決定部1206は、ユーザによって入力された配車要求が示すばらつき許容度を用いる。或いは、ばらつき許容度決定部1206は、ユーザ情報データベース12aを参照し、ユーザによって予め入力されたユーザ情報のばらつき許容度を用いても良い。これにより、ユーザが自身の嗜好に基づいて入力したばらつき許容度を用いることができる。
【0051】
また、ばらつき許容度決定部1206は、ユーザ情報が示すユーザの個人属性情報に基づいて、ばらつき許容度を算出又は調整しても良い。例えば、ユーザの個人属性情報が幼児を連れた保護者であることを示す場合、ばらつき許容度決定部1206は、相対的に小さな値のばらつき許容度に決定する。このように、ユーザの個人属性情報に従ってばらつき許容度が決定されることで、ユーザごとの個人属性を考慮した平均予想所要時間の確実性を担保することができるようになる。
【0052】
また、ばらつき許容度決定部1206は、ユーザ情報が示す走行ルート選択履歴情報に基づいて、ばらつき許容度を決定し得る。例えば、ばらつき許容度決定部1206は、走行ルート選択履歴情報に基づいて、ユーザが平均予想所要時間のばらつき度が大きい走行ルート候補を選択する傾向にあると判断する場合、ばらつき許容度決定部1206は、相対的に大きな値にばらつき許容度を決定する。一方、ばらつき許容度決定部1206は、ユーザが平均予想所要時間のばらつき度が小さい走行ルート候補を選択する傾向にあると判断する場合、ばらつき許容度決定部1206は、相対的に小さな値にばらつき許容度を決定する。ばらつき許容度は、例えば、過去に選択された走行ルート候補のばらつき度の平均値が用いられ得る。これにより、過去に選択された走行ルートから、ユーザが平均予想所要時間のばらつき度をどのくらい許容し得るかを認識することができるようになる。
【0053】
走行ルート決定部1207は、平均予想所要時間のばらつき度に対するばらつき許容度と実効予想所要時間とに基づいて、走行ルート候補の中からユーザに提示すべき1つ又は複数の走行ルートを決定する。すなわち、走行ルート決定部1207は、まず、各走行ルート候補について、走行実績情報データベース12eを参照して、平均予想所要時間のばらつき度を取得する。或いは、走行ルート決定部1207は、平均予想所要時間と実効予想所要時間との差に基づいて平均予想所要時間のばらつき度を算出しても良い。例えば、平均予想所要時間と実効予想所要時間との差が小さければばらつき度は小さく、平均予想所要時間と実効予想所要時間との差が小さければ、平均予想所要時間のばらつき度は小さく、該差が大きければばらつき度は大きくなる。これにより、走行ルート候補ごとの平均予想所要時間のばらつき度を算出することができる。また、走行ルート決定部1207は、走行ルート候補どうしを比較して、平均予想所要時間及び実効予想所要時間がともに他よりも大きい走行ルート候補を除外することにより、走行ルート候補を絞り込む。つまり、走行ルート決定部1207は、平均予想所要時間及び実効予想所要時間の少なくとも一方が小さい走行ルートに絞り込む。これにより、走行ルート候補の選別がより効率的になる。続いて、走行ルート決定部1207は、絞り込まれた走行ルート候補の中から、ユーザのばらつき許容度に適合するものを走行ルートとして決定する。より具体的には、走行ルート決定部1207は、各走行ルート候補の平均予想所要時間を基準にばらつき許容度を適用し、ばらつき許容度に対応する予想所要時間が実効予想所要時間内に収まっている走行ルート候補を最終的なユーザに提示すべき走行ルートとして決定する。走行ルート決定部1207は、ばらつき許容度に適合する走行ルート候補が複数ある場合、実効予想所要時間が最小の走行ルート候補を走行ルートとして選択しても良いし、或いは、車両Vの航続可能距離や配車計画といった他の条件に従って、実効予想所要時間が小さい走行ルート候補を走行ルートとして決定しても良い。或いは、走行ルート決定部1207は、ばらつき許容度に適合する複数の走行ルート候補の全部又はいくつかをユーザに提示すべき複数の走行ルートとして決定しても良い。この場合、例えば、複数の走行ルートの各々に実効予想所要時間を関連付け、各走行ルートが実効予想所要時間に応じて推奨される順に視覚的に区別されて表示されるようにしても良い。これにより、ユーザは走行ルートを選択し易くなり、また、ユーザが最終的に選択した走行ルートに基づく走行ルート選択履歴情報を収集することができ、ユーザのばらつき許容度に対する嗜好を得ることができるようになる。
【0054】
また、走行ルート決定部1207は、ばらつき許容度が第1の許容しきい値よりも小さい場合、平均予想所要時間のばらつき度がより小さい走行ルート候補を走行ルートに決定しても良い。また、走行ルート決定部1207は、ばらつき許容度が第2の許容しきい値よりも大きい場合、平均予想所要時間のばらつき度がより大きい走行ルート候補を走行ルートに決定しても良い。第2の許容しきい値は、第1の許容しきい値と同じ又はそれよりも大きな値である。これにより、平均予想所要時間のばらつき度に対するユーザの嗜好に応じて、適切な走行ルート候補を選択し、これを走行ルートとしてユーザに提案することができるようになる。
【0055】
このようにして走行ルートが決定されると、配車計画作成部120は、該走行ルートに基づいて、候補車両vの配車計画を作成する。なお、配車計画作成部120は、決定された走行ルートが複数ある場合、各走行ルートに基づく配車計画を作成する。この場合、配車計画作成部120は、各走行ルートが実効予想所要時間に応じて推奨される順に視覚的に区別されて表示されるように配車計画を作成し得る。
【0056】
配車計画作成部120は、複数のユーザによる配車要求に基づいて、1台の車両Vにユーザが乗合うように、配車計画を作成しても良い。例えば、配車計画作成部120は、一のユーザが配車要求を行った後、所定の時間内に、他のユーザが配車要求を行った場合や、一のユーザの配車要求に対して車両Vが配車され、目的地までの走行ルートを走行中に、他のユーザが配車要求を行った場合に、このようなユーザの乗合の成否を判断する。
【0057】
より具体的には、配車計画作成部120は、各ユーザのばらつき許容度が所定の乗合基準値よりも大きい場合、一のユーザに対して配車された車両Vでの他のユーザとの乗合を許容する。したがって、配車計画作成部120は、他のユーザからの配車要求を受け付けた場合、ユーザどうしの乗合を成立させるか否かを判断する。これにより、ばらつき許容度が大きいユーザどうしで車両Vでの乗合を促進することができ、配車効率を向上させることができるようになる。或いは、配車計画作成部120は、一のユーザのばらつき許容度と他のユーザのばらつき許容度との差が所定値以下の場合に、一のユーザに対して配車された車両Vでの他のユーザとの乗合を許容し、他のユーザの配車要求に基づいて、前記ユーザに対して配車された前記車両での前記ユーザと他のユーザとが乗合うように、配車計画を作成しても良い。これにより、平均予想所要時間のばらつき度合いに対する嗜好が近いユーザどうしの乗合が促進されるようになる。
【0058】
また、配車計画作成部120は、一のユーザに対する車両Vの走行ルートと、他のユーザに対する該車両Vの走行ルート候補とが少なくとも一部において重複する場合に、一のユーザと他のユーザとが乗合うように、配車計画を作成し得る。これにより、既に確定しているユーザの走行ルートを変更する必要がなく、ユーザの利便性が過度に損なわれることを抑制することができる。
【0059】
配車計画提案部1208は、決定された走行ルートに基づいて作成された配車計画をユーザに提案し、これに対するユーザの承諾を受け付けると、該配車計画を確定する。すなわち、配車計画提案部1208は、フロントエンド処理部110を介して、ユーザの端末装置20に候補車両vの配車計画を送信し、端末装置20のユーザインターフェース上に該配車計画を表示させる。ユーザは、配車計画に対する承諾又は拒否を行い、これを受けて、端末装置20は、その承諾又は拒否の通知を送信する。配車計画提案部127は、フロントエンド処理部110を介してユーザの承諾通知を受信すると、該配車計画を確定する。
【0060】
また、配車計画提案部1208は、複数の走行ルートの各々に基づく配車計画がある場合、これらをユーザに選択可能に提示し得る。例えば、配車計画は、各走行ルートが実効予想所要時間に応じて推奨される順に視覚的に区別されて表示されるようにユーザに提示され得る。これにより、ユーザは走行ルートを選択し易くなる。配車計画提案部1208は、ユーザの承諾通知に従って確定された配車計画が示す走行ルートを該ユーザの走行ルート選択履歴情報としてユーザ情報データベース12aに格納する。
【0061】
また、配車計画提案部1208は、車両Vでのユーザどうしの乗合の場合、各ユーザに対して配車計画を提案して、同様に、各ユーザの承諾を求める。例えば、先のユーザに対して車両Vが既に配車されている場合、配車計画提案部1208は、後のユーザの配車要求に基づく該車両Vでの乗合の配車計画を提案し、後のユーザの承諾を求める。
【0062】
配車指示部1209は、確定された配車計画に従って、対応する車両Vに配車指示を行う。運行指示を受信した車両Vの制御装置CTLは、ナビゲーション機能により、例えばユーザインターフェース上に、配車計画に従った走行ルートを表示する。或いは、無人運転型車両であれば、制御装置CTLは、配車計画の走行ルートに従って詳細な実走行ルートを決定し、実走行ルートに沿った自律走行がなされるように制御を行う。
【0063】
走行実績情報管理部1210は、配車計画に従った配車サービスを終えた車両Vから送信される走行実績情報を、車両通信部130を介して取得すると、これを走行実績情報データベース12eに格納する。また、走行実績情報管理部1210は、取得された走行実績情報に基づいて、図3に示したようなばらつき度を含む道路リンク所要時間情報を作成する。例えば、走行実績情報管理部129は、取得された走行実績情報に基づいて、各道路リンクの日にち種別及び時間帯に対応する所要時間を含む道路リンク所要時間情報に基づいて、道路リンクごとの所要時間のばらつき度を算出する。
【0064】
図6は、本発明の一実施形態に係る配車管理システムにおける配車サービスの概要を説明するためのシーケンスチャートである。
【0065】
まず、車両Vは、GPSシステムから取得される自身の位置情報を、所定のタイミングで、配車管理装置10に送信する(S601)。なお、車両Vによる位置情報の取得及び送信は、定期的に又は配車管理装置10からの送信要求に応じて行われる。これにより、配車管理装置10は、車両Vから送信される位置情報を取得する(S602)。
【0066】
一方、配車サービスを利用しようとするユーザは、端末装置20に実装された配車アプリを実行して、ユーザインターフェース上に表示された配車要求画面に対して配車要求のための必要な情報を入力し、これにより、端末装置20は、配車要求を配車管理装置10に送信する(S603)。例えば、乗車を希望するユーザは、乗車地及び降車地、乗車人数、ばらつき許容度等を入力する。乗車地及び降車地は、例えば、配車アプリにより表示された地理的マップから選択され得る。また、乗車地(荷積地)は、例えばユーザのスマートフォンに搭載されたGPS機能により取得される現在位置であっても良い。
【0067】
配車管理装置10は、端末装置20から配車要求を受信すると(S604)、受信した配車要求に対して、走行ルート候補の中から、ユーザのばらつき許容度と実効予想所要時間とに基づいて、走行ルートを決定し、車両V(候補車両v)の配車計画を作成する(S605)。すなわち、配車管理装置10は、各走行ルート候補について、平均予想所要時間と実効予想所要時間との差に基づいて平均予想所要時間のばらつき度を算出する。続いて、配車管理装置10は、絞り込まれた走行ルート候補の中から、ユーザのばらつき許容度に適合する少なくとも1つを走行ルートとして決定する。配車管理装置10は、これをユーザに提案するために、作成した配車計画の内容を端末装置20に送信する。配車計画には、視覚的に区別される複数の走行ルートが含まれても良い。
【0068】
端末装置20は、配車計画の内容を受信すると、これをユーザインターフェース上に配車計画提案画面として表示して、提案した配車計画に対する承諾又は拒否(諾否)をユーザに促す(S606)。ユーザが配車計画提案画面に対して諾否を入力すると、これを受けて、端末装置20は、諾否通知を配車管理装置10に送信し(S607)、配車管理装置10は、端末装置20から送信される諾否通知を受信する(S608)。例えば、諾否通知が配車計画の承諾を示すものである場合、配車管理装置10は、配車計画に従った車両Vの配車計画を確定し、配車予約の確定通知を端末装置20に送信するともに、車両Vに対して該配車計画に従った配車指示を送信する(S609)。
【0069】
端末装置20は、配車予約の確定通知を受信すると、これをユーザインターフェース上に表示してユーザに配車の予約が確定したことを知らせる(S610)。一方、車両Vは、配車指示を受信すると、ドライバをナビゲートするために、例えばナビゲーション画面に配車指示が示す配車計画に従った走行ルートを表示する(S611)。なお、図示していないが、配車計画に従った配車サービスが終了した車両Vは、走行実績情報を配車管理装置10に送信する。配車管理装置10は、車両Vから受信した走行実績情報を走行実績情報データベース12eに格納し、道路リンク所要時間情報を更新する。
【0070】
図7図9は、本発明の一実施形態に係る配車管理装置による配車管理処理の一例を説明するためのフローチャートである。かかる処理は、配車管理装置が、プロセッサの制御の下、配車管理サーバプログラムを実行することにより、各種のハードウェア資源との協働がなされ、実現される。
【0071】
図7に示すように、配車管理装置10は、ユーザからの新規の配車要求があるまで待機している(S701)。一方で、例えば、乗車を希望するユーザは、端末装置20のユーザインターフェース上で配車アプリを操作して、配車要求を入力する。本例では、配車要求は、ユーザによって入力されたばらつき許容度を含むものとする。配車管理装置10は、ユーザからの配車要求があると(S701のYes)、該配車要求に基づいて、道路地図情報データベース12bを参照し、出発地及び目的地(発着地)を決定する(S702)。
【0072】
次に、配車管理装置10は、決定された発着地に基づいて、道路地図情報データベース12bを参照して、1つ以上の走行ルート候補を抽出する(S703)。すなわち、各走行ルート候補は、発着地を同じにするが、途中の道路(リンク)は異なっている。各走行ルート候補には、平均予想所要時間が関連付けられている。
【0073】
次に、配車管理装置10は、発着地及び走行ルート候補に従って1又はそれ以上の候補車両vを抽出する(S704)。例えば、配車管理装置10は、出発地の近傍で待機している又は移動中である車両Vを候補車両vとして抽出する。
【0074】
次に、配車管理装置10は、抽出された走行ルート候補について、走行実績情報データベース12eを参照して、実効予想所要時間を算出する(S705)。配車管理装置10は、実効予想所要時間の算出に際し、所定の条件に従って、ばらつきしきい値を決定する。実効予想所要時間の算出処理の詳細は後述する。
【0075】
次に、配車管理装置10は、走行ルート候補の平均予想所要時間のばらつき度に対するユーザのばらつき許容度と実効予想所要時間とに基づいて、走行ルート候補の中から最適なものを走行ルートとして決定する(S706)。走行ルートの決定処理の詳細については後述する。
【0076】
続いて、配車管理装置10は、決定された走行ルートに基づいて、配車計画を作成又は更新する(S707)。つまり、配車管理装置10は、候補車両vの中から、決定された走行ルートに割り当てる車両Vを決定する。例えば、配車管理装置10は、新規の配車要求を行ったユーザの乗車待ち時間が配車遅延限界時間を超えるような候補車両vを除外する。また、図示していないが、配車管理装置10は、複数のユーザによる配車要求に基づいて、1台の車両Vにユーザが乗合うように、配車計画を作成しても良い。例えば、配車計画作成部120は、一のユーザが配車要求を行った後、所定の時間内に、他のユーザが配車要求を行った場合や、一のユーザの配車要求に対して車両Vが配車され、目的地までの走行ルートを走行中に、他のユーザが配車要求を行った場合に、このようなユーザの乗合の成否を判断する。
【0077】
次に、配車管理装置10は、作成・更新された配車計画の内容をユーザに提案する(S708)。すなわち、配車管理装置10は、作成・更新された配車計画の内容を端末装置20に送信し、これに応答して、端末装置20は、ユーザインターフェース上にその内容を表示して、ユーザに提案された配車計画の諾否を促す。
【0078】
配車管理装置10は、配車計画の提案に対してユーザから承諾を受け付けたか否かを判断する(S709)。配車管理装置10は、配車計画の提案に対してユーザから承諾を受け付けた場合(S709のYes)、配車管理装置10は、現在の配車計画を確定する(S710)。配車管理装置10は、確定した配車計画を配車計画データベース12dに格納する。続いて、配車管理装置10は、配車予約の確定通知を端末装置20に送信するとともに、配車計画に基づく配車指示を車両Vに送信する(S711)。
【0079】
これに対して、配車管理装置10は、配車計画の提案に対してユーザから不承諾(拒否)を受け付けた場合(S709のNo)、該ユーザの配車要求に基づく現在の配車計画をキャンセルする(S712)。この場合、配車管理装置10は、配車計画の再作成のために使用された一時的に保留されていた配車計画を元の保留中の配車計画に戻す。ユーザは、別の配車サービスを希望する場合には、新たな配車要求を行うことになる。
【0080】
次に、配車管理装置10における実効予想所要時間の算出処理について、図8を参照して説明する。すなわち、図8は、図7に示した実効予想所要時間の算出処理(S705)の詳細を示すフローチャートである。
【0081】
同図に示すように、配車管理装置10は、候補車両vの配車計画に基づいて、該候補車両vの次の配車(例えば次の乗車地又は降車地までの移動)に対して余裕があるか否かを判断する(S801)。例えば、配車管理装置10は、他のユーザの配車要求に基づく次の乗車地での乗車時刻に対して、ユーザの降車地から該他のユーザの乗車地までの移動のための平均予想所要時間を適用することにより時間的な余裕度を算出し、該算出された余裕度が所定の余裕許容値を上回っているか否かを判断する。
【0082】
配車管理装置10は、該候補車両vの次の配車に対して余裕があると判断する場合(S801のYes)、続いて、配車管理装置10は、所定の需要しきい値を基準にして、需要情報に基づいて将来の需要見込みが高いか否かを判断する(S802)。例えば、配車管理装置10は、走行実績情報データベース12e等を参照し、将来のある時間帯における配車可能な車両Vの台数に対するユーザの配車要求の見込み量で示される将来の需要量を算出し、算出された将来の需要量が所定の需要しきい値を上回っているか否かを判断する。なお、本例では、配車管理装置10は、将来の需要見込みに基づいて判断しているが、これに限られず、現在の需要に基づいて判断しても良い。
【0083】
配車管理装置10は、将来の需要見込みが高くないと判断する場合(S802のNo)、配車管理装置10は、ばらつきしきい値を第1のばらつきしきい値に設定する(S803)。上述したように、第1のばらつきしきい値は、第2のばらつきしきい値よりも平均予想所要時間(平均値)から近位の値である。したがって、ばらつきしきい値として平均予想所要時間から近位の第1のばらつきしきい値が選択されることにより、所要時間のばらつき度をより抑えた走行ルートが選択されることが期待される。つまり、車両Vの配車計画に余裕がある場合、及び/又は、将来の需要見込みが低い場合、車両Vの実際の所要時間が平均予想所要時間にできるだけ一致するような走行ルートが決定されることになる。
【0084】
一方、配車管理装置10は、将来の需要見込みが高いと判断する場合(S802のYes)、配車管理装置10は、ばらつきしきい値を第2のばらつきしきい値に設定する(S804)。上述したように、第2のばらつきしきい値は、第1のばらつきしきい値よりも平均値から遠位の値である。したがって、ばらつきしきい値として平均予想所要時間から遠位の第2のばらつきしきい値が選択されることにより、所要時間のばらつき度が大きい走行ルートが選択されることが期待される。つまり、車両Vの配車計画に余裕があるが、将来の需要見込みが高い場合、予想所要時間のばらつき度の幅を広げて、次の配車をできるだけ担保する走行ルートが決定されることになる。
【0085】
また、配車管理装置10は、該候補車両vの次の配車に余裕がないと判断する場合(S801のNo)、配車管理装置10は、配車管理装置10は、ばらつきしきい値を第2のばらつきしきい値に設定する(S804)。したがって、ばらつきしきい値として平均値から遠位の第2のばらつきしきい値が選択されることにより、所要時間のばらつき度が大きい走行ルートが選択されることが期待される。つまり、車両Vの配車計画に余裕がない場合、予想所要時間のばらつき度の幅を広げて、次の配車をできるだけ担保する走行ルートが決定されることになる。
【0086】
そして、配車管理装置10は、設定されたばらつきしきい値に基づいて、ルート探索エンジンが算出した走行ルート候補での平均予想所要時間に適用することにより、実効予想所要時間を算出する(S805)。
【0087】
次に、配車管理装置10におけるばらつき許容度に基づく走行ルートの決定処理について、図9を参照して説明する。すなわち、図9は、図7に示したばらつき許容度に基づく走行ルートの決定処理(S706)の詳細を示すフローチャートである。
【0088】
同図に示すように、配車管理装置10は、抽出された走行ルート候補のうち、平均予想所要時間及び実効予想所要時間のいずれもが、他の走行ルート候補よりも大きいものを除外する(S901)。次に、配車管理装置10は、ばらつき許容度を満たす走行ルート候補があるか否かを判断する(S902)。配車管理装置10は、ばらつき許容度を満たす走行ルート候補があると判断する場合(S902のYes)、配車管理装置10は、ばらつき許容度を満たす走行ルート候補のうち、実効予想所要時間が小さいものをユーザに提示するための走行ルートとして決定する(S903)。
【0089】
例えば、配車管理装置10は、走行ルート候補R1~R3について、図10(a)に示すような走行実績情報に基づく確率密度関数のグラフを示すデータを取得したとする。ここで、走行ルート候補R1~R3について、その平均値(平均予想所要時間)を、各々、T1_ave~T3_aveとし、ばらつきしきい値2σとした場合の実効予想所要時間を、各々、T1_2σ~T3_2σであるものとする。つまり、同図(a)に示す確率密度関数のグラフにおいて、ばらつきの分布幅が狭いほど(例えば平均予想所要時間と実効予想所要時間との差が小さいほど)、平均予想所要時間のばらつき度が小さいことを示している。配車管理装置10は、このような走行ルート候補R1~R3について、まず、平均予想所要時間及び実効予想所要時間のいずれもが、他の走行ルート候補よりも大きいものを除外する。すなわち、本例では、走行ルート候補R3が除外され、走行ルート候補R1及びR2に絞り込まれる(同図(b)参照)。
【0090】
続いて、配車管理装置10は、走行ルート候補R1及びR2について、ユーザのばらつき許容度に適合する走行ルート候補を走行ルートとして決定する。例えば、同図(b)に示すように、配車管理装置10は、走行ルート候補R1及びR2の平均予想所要時間T1_ave及びT2_aveを基準にばらつき許容度を適用し、実効予想所要時間T1_2σ及びT2_2σと比較する。本例では、走行ルート候補R1の実効予想所要時間T1_2σはばらつき許容度に対応する予想所要時間を超えているのに対して、走行ルート候補R2の実効予想所要時間T2_2σはばらつき許容度に対応する予想所要時間内に収まっていることから、配車管理装置10は、走行ルート候補R2をユーザに提示するための走行ルートとして決定する。
【0091】
また、配車管理装置10は、例えば、ユーザのばらつき許容度が第1の許容しきい値よりも小さい場合、配車管理装置10は、平均予想所要時間のばらつき度がより小さい方の走行ルート候R2を走行ルートに決定しても良い。これに対して、ユーザのばらつき許容度が第2の許容しきい値よりも大きい場合、配車管理装置10は、平均予想所要時間のばらつき度が大きい方の走行ルート候補R1を走行ルートに決定しても良い。なお、ばらつき許容度に適合する走行ルート候補が複数ある場合、典型的には、平均予想所要時間が小さい方の走行ルート候補がユーザに提示するための走行ルートとして決定される。
【0092】
一方、配車管理装置10は、ばらつき許容度を満たす走行ルート候補がないと判断する場合(S902のNo)、配車管理装置10は、今ある走行ルート候補のうち、平均予想所要時間がより小さいものをユーザに提示するための走行ルートとして決定する(S904)。
【0093】
以上のように、本実施形態によれば、目的地までの予想所要時間のばらつき度を考慮して、ユーザの嗜好に合わせた走行ルートを提示することができるようになる。とりわけ、本実施形態によれば、ユーザのばらつき許容度及び実効予想所要時間に基づいて、抽出された走行ルート候補の中から走行ルートを選択するので、ユーザの嗜好に合った最適な走行ルートに基づいた配車計画を作成することができるようになる。
【0094】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0095】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0096】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1…配車管理システム
10…配車管理装置
110…フロントエンド処理部
120…配車計画作成部
1201…配車要求取得部
1202…需要算出部
1203…候補車両抽出部
1204…走行ルート候補抽出部
1205…実効予想所要時間算出部
1206…ばらつき許容度決定部
1207…走行ルート決定部
1208…配車計画提案部
1209…配車指示部
1210…走行実績情報管理部
130…車両通信部
12…データベース
12a…ユーザ情報データベース
12b…道路地図情報データベース
12c…車両情報データベース
12d…配車計画データベース
12e…走行実績情報データベース
20…端末装置
30…道路交通情報管理システム
N…通信ネットワーク
V…車両
CTL…制御装置
図1
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図10