(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009764
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20250109BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20250109BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/04 F
H01F27/32 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020807
(22)【出願日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2023108288
(32)【優先日】2023-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】新井 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】濱田 奈美
(72)【発明者】
【氏名】柏 智男
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA07
5E070AA01
5E070AB08
5E070BB03
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】絶縁層を備えたコイル部品の小型化を図る。
【解決手段】一態様に係るコイル部品によれば、金属磁性材料を含んだ磁性基体と、上記磁性基体の内部に設けられる導体と、上記導体と接続され、上記磁性基体の第1面に沿って広がり、上記磁性基体に埋まった第1電極部および上記磁性基体の外側に露出した第2電極部を有する外部電極と、上記第1面のうち上記外部電極を除いた領域を覆う絶縁層と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性材料を含む磁性基体と、
前記磁性基体の内部に設けられる導体と、
前記導体と接続され、前記磁性基体の第1面に沿って広がり、前記磁性基体に埋まった第1電極部および前記磁性基体の外側に露出した第2電極部を有する外部電極と、
前記第1面のうち前記外部電極を除いた領域を覆う絶縁層と、
を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1面に直交する方向で見て、前記第2電極部は、前記第1電極部の外周よりも内側に収まっていることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1電極部は、前記第2電極部および前記絶縁層によって外側が覆われていることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1面に直交する方向において、前記第1電極部の厚みの方が前記第2電極部の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1面に直交する方向において、前記第1面から前記外部電極の表面までの距離は前記第1面から前記絶縁層の表面までの距離よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記絶縁層は、表面の少なくとも一部に、前記外部電極から離れるにつれて前記第1面に近づく傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1面に占める割合において、前記絶縁層は前記第2電極部よりも広いことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記磁性基体は前記第1面と前記第1面とは異なる面とを含む複数の面を持ち、前記外部電極は、前記複数の面のうち前記第1面のみに設けられることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記絶縁層は、前記磁性基体より表面粗さが小さいことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記絶縁層は、樹脂、ガラスおよび金属酸化物のうち少なくとも1つの絶縁材料が用いられたものであることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1面に直交する方向において、前記第1面から前記絶縁層の表面までの距離は前記第1面から前記外部電極の表面までの距離よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第1電極部は、前記導体と同じ金属元素を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項13】
前記第2電極部は、表面にCuを含むことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項14】
前記外部電極は、3つ以上設けられることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項15】
前記導体を複数備え、前記導体のそれぞれがインダクタ素子であることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化および高機能化に伴い、基板への電子部品の実装において、より高密度な部品実装が求められている。しかし、高密度実装でも基板の表面に実装可能な電子部品の数には限界があるため、より小型かつ高性能な電子部品が求められる。これにより、基板に実装可能な電子部品の数が増えて、電子機器の小型化および高性能化がより一層進むことになる。
【0003】
電子部品を小型化する手段として、コイル部品においては磁性材料をフェライト磁性材料から金属磁性材料に変更することが行われている。磁気飽和特性の高い金属磁性材料が用いられることで、磁気飽和に必要な磁性材料の占める体積が小さくなる。
金属磁性材料が用いられるコイル部品は、金属磁性材料の抵抗が低いため、外部電極が設けられる表面において絶縁性の確保が必要となり、部品本体の外側が絶縁層で覆われた構造が採用される場合がある。
【0004】
例えば特許文献1には、金属磁性粉を含む絶縁体を用いた電子部品において、該絶縁体上に樹脂のコーティング膜を有する電子部品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、コイル部品が基板の表面に実装される場合でも、基板の内部に埋め込まれる場合でも、外部電極はある程度の厚みが必要となる。このため、部品本体に絶縁層が設けられる場合、外部電極と絶縁層それぞれの厚みが大きくなり、コイル部品としての外形寸法が増す原因となってしまう。
【0007】
逆に、外形寸法が決まっている場合には、磁性体部分を含む部品本体が絶縁層の厚みだけ目減りし、コイル部品の性能を落とすことになるのでコイル部品の小型化を妨げることになる。
上記事情に鑑み、本発明は、絶縁層を備えたコイル部品の小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、金属磁性材料を含む磁性基体と、上記磁性基体の内部に設けられる導体と、上記導体と接続され、上記磁性基体の第1面に沿って広がり、上記磁性基体に埋まった第1電極部および上記磁性基体の外側に露出した第2電極部を有する外部電極と、上記第1面のうち上記外部電極を除いた領域を覆う絶縁層と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第1面に直交する方向で見て、上記第2電極部は、上記第1電極部の外周よりも内側に収まっている。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第1電極部は、上記第2電極部および上記絶縁層によって外側が覆われている。
【0010】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第1面に直交する方向において、上記第1電極部の厚みの方が上記第2電極部の厚みよりも大きい。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第1面に直交する方向において、上記第1面から上記外部電極の表面までの距離は、上記第1面から上記絶縁層の表面までの距離よりも大きい。
【0011】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記絶縁層は、表面の少なくとも一部に、上記外部電極から離れるにつれて上記第1面に近づく傾斜面を有する。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第1面に占める割合において、上記絶縁層は上記第2電極部よりも広い。
【0012】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記磁性基体は上記第1面と上記第1面とは異なる面とを含む複数の面を持ち、上記外部電極は、上記複数の面のうち上記第1面のみに設けられる。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記絶縁層は、上記磁性基体より表面粗さが小さい。
【0013】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記絶縁層は、樹脂、ガラスおよび金属酸化物のうち少なくとも1つの絶縁材料が用いられたものである。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第1面に直交する方向において、上記第1面から上記絶縁層の表面までの距離は、上記第1面から上記外部電極の表面までの距離よりも大きい。
【0014】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第1電極部は、上記導体と同じ金属元素を主成分とする。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記第2電極部は、表面にCuを含む。
【0015】
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記外部電極は、3つ以上設けられる。
また、本発明の一態様に係るコイル部品によれば、上記導体を複数備え、上記導体のそれぞれがインダクタ素子である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、絶縁層を備えたコイル部品の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【
図3】比較例のコイル部品の製造方法における第1工程を示す図である。
【
図4】比較例のコイル部品の製造方法における第2工程を示す図である。
【
図5】比較例のコイル部品の製造方法における第3工程を示す図である。
【
図6】比較例のコイル部品の製造方法における第4工程を示す図である。
【
図7】第1実施形態のコイル部品の製造方法における第1工程を示す図である。
【
図8】第1実施形態のコイル部品の製造方法における第2工程を示す図である。
【
図9】第1実施形態のコイル部品の製造方法における第3工程を示す図である。
【
図10】第1実施形態のコイル部品の製造方法における第4工程を示す図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【
図18】本発明の第3実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。
【0019】
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。先に説明した図面に示された構成要素については、後の図面の説明で適宜に参照する場合がある。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す斜視図であり、
図2は、
図1のI-I線に沿った断面図である。
第1実施形態のコイル部品10は、金属磁性材料が用いられた磁性基体11と、磁性基体11の第1面11aに設けられた2つの外部電極12と、磁性基体11の一部に設けられた導体と、2つの外部電極12の間に設けられた絶縁層14とを備えている。例えば、導体の例としては、磁性基体11の内部に設けられた内部導体13が挙げられる。なお、「面に設けられる」とは、その面を見た場合に見える箇所に設けられることを意味し、面よりも外側に突き出して設けられてもよく、面から内部側に凹んで設けられてもよい。後述するように、外部電極12は、一部が第1面11aから突出し、一部が第1面11aに埋まっている。磁性基体11の第1面11aの範囲は、外部電極12が設けられている領域を含んだ、外周までの全範囲である。また、外部電極12が設けられた領域における第1面11aの位置は、外部電極12が設けられたことによる凹凸が無視されて平らに延長された位置とする。
【0021】
コイル部品10は、基板表面に実装されるか、あるいは基板内部に樹脂で埋設される。あるいは、コイル部品10は、パッケージ部品として樹脂でパッケージ化される。基板への埋設やパッケージ化に際しては、コイル部品10が樹脂封入される。
磁性基体11の磁性材料としては例えば軟磁性金属粒子が用いられる。磁性基体11は周知の任意の技術が採用されて形成される。
【0022】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、方向の説明は、
図1の「L軸」方向、「W軸」方向および「H軸」方向を基準に用い、それぞれ、「長さ」方向、「幅」方向および「高さ」方向と称する。
コイル部品10は、直方体形状の外形を有する。即ちコイル部品10は、長さ方向Lの両端と、高さ方向Hの両端と、幅方向Wの両端とのそれぞれに外面を有する。コイル部品10の外面はいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。また、コイル部品10の8つの角部および12の稜線部は、丸みを有していてもよい。
【0023】
本明細書においては、コイル部品10の外面の一部が湾曲したり凹凸を有したりする場合や、コイル部品10の角部や稜線部が丸みを有している場合にも、かかる形状を「直方体形状」と称することがある。つまり、本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」を意味するものではない。
【0024】
第1実施形態の場合、磁性基体11の第1面は、コイル部品10の主面である。コイル部品10の主面は、コイル部品10が例えば基板表面に実装される際に実装面となる。また、第1実施形態の場合、外部電極12は磁性基体11の各面のうち第1面11aのみに設けられるため、外部電極12の厚みによるコイル部品10の寸法への影響は第1面11aに垂直な方向のみに限定され、コイル部品10の小型化に寄与する。
【0025】
第1実施形態のコイル部品10は、磁性基体11の第1面11aにおいて例えば長さ方向Lに互いに離間した位置に設けられた2つの外部電極12を備えている。外部電極12の表面には、基板との接続を目的とするためめっき層が設けられる。めっき層はCuを含むと基板との接続性が高くて好ましい。
【0026】
各外部電極12は、第1面11aに沿って長さ方向Lと幅方向Wとに広がっている。また、各外部電極12は、高さ方向Hについては、磁性基体11に埋まった第1電極部12aと、磁性基体11から外側に露出した第2電極部12bとを有する。第1電極部12aおよび第2電極部12bは、例えばAgあるいはCuからなる。第1電極部12aおよび第2電極部12bは、互いに同一の材料で構成されてもよく、あるいは異なる材料で構成されてもよい。
各外部電極12は、第1電極部12aを介して内部導体13の各一端と電気的に接続されている。内部導体13は、インダクタンスを生じさせる導体があればよく、例えば、導体は図示が省略されたコイル軸の周りに所定ターンだけ巻回される。
【0027】
コイル部品10は小型の電子部品であり、1つの部品が占める面積および体積は小さい。例えば第1実施形態の場合、1つの内部導体13と2つの外部電極12からなる電気的に繋がった素子が1つであり、第1面11aの面積は0.5mm2以上1.5mm2以下である。
【0028】
また、例えば素子が2つの場合、外部電極12の間隔が制約となるので第1面11aの面積は2.0mm2以上3.5mm2以下となる。外部電極12は例えば0.5mm以下の間隔で設けられる。
絶縁層14は、絶縁性に優れた絶縁材料によって形成され、外部電極12同士に挟まれた領域を覆っている。絶縁層14は磁性基体11よりも高い電気抵抗率を有する。絶縁層14の材料は、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの樹脂材料、ホウ珪酸ガラスなどのガラス、Pを含む酸化物などの金属酸化物である。絶縁層14の材料としては熱硬化性の材料が好ましい。
【0029】
第1実施形態のコイル部品10においては、磁性基体11の第1面11aのうち外部電極12の間の領域は全て絶縁層14で覆われている。また、第1面11aに占める割合において、絶縁層14は第2電極部12bよりも広い。言い換えると、絶縁層14の合計面積は第2電極部12bの合計面積よりも大きい。
【0030】
金属磁性材料が用いられた磁性基体11は、例えばフェライトが用いられる磁性基体よりも表面抵抗の低い部分を持つことがあり、磁性基体11に絶縁層14が設けられる。絶縁層14により、コイル部品は外部電極12にめっき層を設ける場合でも外部電極12の相互間における絶縁抵抗の低下による短絡発生が抑制される。一方で、外部電極12の第1電極部12aは磁性基体11に埋まっているため、絶縁層14の厚さは、外部電極12の第2電極部12bに相応した厚さに抑制される。従って、絶縁層14を備えたコイル部品10において小型化が実現される。
【0031】
絶縁層14の形成では、絶縁層14となる絶縁材料の磁性基体11表面に対する塗布、熱による硬化、および表面加工の各工程が施され、これらの工程の結果、必要な厚みの絶縁層14が得られる。なお、表面加工としては、サンドブラスト、研磨、バレル、レーザ、溶剤エッチングなどの加工手段が用いられる。
【0032】
絶縁層14の表面粗さは、磁性基体11の第1面11aの表面粗さよりも小さい。言い換えると、絶縁層14の表面は、磁性基体11の第1面11aよりも平滑である。絶縁層14の表面が平滑に形成されることにより、封止樹脂の流動が促進されるので、樹脂封入時のボイド形成が抑制される。
【0033】
絶縁層14の表面粗さおよび磁性基体11の第1面11aの表面粗さは、例えばISO25178に準拠した測定器が用いられて算出される算術表面粗さSaで表され得る。算術表面粗さSaは、例えば株式会社キーエンス製の形状解析レーザ顕微鏡(VK-X250)等、算術表面粗さSaが測定可能な市販の機器によって測定される。
【0034】
<コイル部品の製造方法>
図3~
図6は、比較例のコイル部品の製造方法を示す図であり、
図7~
図10は、本実施形態のコイル部品10の製造方法を示す図である。
比較例では、
図3に示す第1工程で、金属磁性材料が用いられた磁性基体部21と、導体からなる内部導体部23が形成される。なお、
図3~
図10では、内部導体部について模式的に端部のみが示されている。
【0035】
磁性基体部21と内部導体部23の形成は、金属磁性材料が用いられたシートに対する導体パターンの印刷またはめっきと、複数のシートの積層とが組み合わされて実現される。内部導体部23は、一端が磁性基体部21の表面に露出した状態に形成される。
【0036】
図4に示す第2工程では、磁性基体部21の表面(内部導体部23の一端が露出した面)に対して絶縁層24が形成される。この絶縁層24の厚みD1は、外部電極12の厚みに相当する厚みであることが求められるため、絶縁層24は十分な厚みで形成される。
【0037】
図5に示す第3工程では、絶縁層24に対して穴Hが形成される。即ち、絶縁層24の一部が取り除かれて内部導体部23が露出される。
図6に示す第4工程では、絶縁層24の穴Hの箇所に対し、例えばめっきによって外部電極22が形成される。外部電極22としては、所定の厚みが求められるため、絶縁層24の上述した厚みD1も厚くなり、コイル部品の小型化が難しい。また、絶縁層24の厚みD1が厚いことで樹脂封止の際にボイドが発生しやすい。
【0038】
これに対し、本実施形態のコイル部品10では、
図7に示す第1工程で、金属磁性材料が用いられた磁性基体部31、導体からなる内部導体部33および第1電極部32aが形成される。磁性基体部31、内部導体部33および第1電極部32aの形成も、金属磁性材料が用いられたシートに対する導体パターンの印刷またはめっきと、複数のシートの積層とが組み合わされて実現される。従って、内部導体部33と第1電極部32aとが同種の導体である(即ち同じ金属元素を主成分とする)と形成が容易である。
【0039】
磁性基体部31、内部導体部33、第1電極部32aなどは、例えば複数のコイル部品10に相当する積層体として形成されてその後に個片化されることでコイル部品10の製造の効率化が図られる。
【0040】
図8に示す第2工程では、磁性基体部31の第1面31aに対して絶縁層34が形成される。この絶縁層34の厚みD2は、外部電極12における第2電極部12bの厚みに相当する厚みであるため、比較例における絶縁層24の厚みD1よりも薄く、コイル部品の小型化に寄与する。なお、絶縁層34は、積層体形成時に形成されてもよいし、個片化後に形成されてもよい。
【0041】
図9に示す第3工程では、絶縁層34の一部が取り除かれて穴Hが形成され、第1電極部32aが露出される。穴Hが第1電極部32aの外周内に収まっていることで、第1電極部32aの周囲に在る磁性基体部31の表面に対するダメージが避けられる。なお、絶縁層34は、一部を取り除くのではなく、形成段階で第1電極部32aの露出部分を除いて形成されてもよい。
【0042】
図10に示す第4工程では、第1電極部32aの露出した部分に第2電極部32bが例えばめっきなどによって形成される。その結果、第1電極部32aと第2電極部32bからなる外部電極32が形成される。外部電極32としての厚みは所定の厚みを満たしているが、外部電極32の一部である第1電極部32aが磁性基体部31に埋まっているため、絶縁層34の厚みが抑制され、コイル部品10の小型化に寄与する。
【0043】
<変形例>
次に、コイル部品10の変形例について説明する。以下では、上述した第1実施形態と同様の構成については重複説明を省略する。
【0044】
図11~
図13は、外部電極12の構造が異なる第1変形例~第3変形例を示す図であり、
図14は、絶縁層14の構造が異なる第4変形例を示す図である。
図11~
図14には、
図2と同様の断面図が示されている。
【0045】
図11に示す第1変形例では、第2電極部12bが第1電極部12aよりも薄くて小さい。即ち、第1面に直交する厚み方向において、第1電極部12aの厚みの方が第2電極部12bの厚みよりも大きく、かつ、第1面11aに向かう方向から見て、第2電極部12bは、第1電極部12aの外周よりも内側に収まっている。第2電極部12bが第1電極部12aよりも薄いことで絶縁層14の厚みが抑制され、第1電極部12aが第2電極部12bよりも広くて厚いことにより磁性基体11との密着性が増して外部電極12の強度が向上する。
【0046】
第2電極部12bが第1電極部12aよりも小さいことで、例えば
図9に示す第3工程において、穴Hの外周が第1電極部12aの外周に対して内側に形成される。このため、穴Hの形成に際して第1電極部32aの周囲にダメージが及ばず、磁性基体11の第1面11aにダメージが生じない。また、結果として、第1電極部32aは、第2電極部12bおよび絶縁層14によって外側が覆われた形状となる。
【0047】
図12に示す第2変形例では、第1電極部12aの一部が楔状となっている。当該楔状の箇所で第1電極部12aの外縁は、第1面11aから離れるに従い広がり、これによって第1電極部12aは磁性基体11との密着性が一層増す。従って、外部電極12の面積がちいさくても電極剥がれなどが防止される。
【0048】
図13に示す第3変形例では、第1電極部12aの外周は磁性基体11の側面11bよりも内側に位置している。この構造も第1電極部12aと磁性基体11との密着性を増すので、外部電極12の強度が向上する。
また、第3変形例では、第1面11aに直交する厚み方向において、絶縁層14は外部電極12よりも外側に及んでいる。このため、滑らかな絶縁層14によってコイル部品10におけるハンドリング性などが向上する。
【0049】
図14に示す第4変形例では、第1面11aを基準面とした絶縁層14の厚みが、外部電極12に近い近傍部分で大きく、中央部分で小さい。例えば、絶縁層14は、外部電極12から離れるにつれて第1面11aに近づく傾斜面14aを有する。絶縁層14がこのような形状を有することで、樹脂封止の際に封止樹脂の流動阻害が抑制され、ボイドなどの発生が防がれる。更に、第4変形例では、第1面11aに直交する厚み方向において、外部電極12は絶縁層14よりも外側に及んでいるので、封止樹脂の流動阻害が一層抑制される。
【0050】
絶縁層14の中央部における厚さは、第2電極部12bの厚さ(即ち第1面11aから突き出した距離)に対して例えば0.2倍以下が好ましい。第2電極部12bの厚さの0.2倍以下であると、樹脂封入時に磁性基体11と、コイル部品10の接地面との間に空間が大きく確保されるので、封止樹脂が絶縁層14の表面に沿って流動しやすくなる。樹脂封入時の樹脂が流動する空間をより大きく確保するために、絶縁層14の中央部における厚さは、第2電極部12bの厚さの0.1倍以下であることが更に好ましく、更には、測定が困難なほど薄くてもよい。
【0051】
中央部分で厚みが小さい絶縁層14は、例えば表面加工によって形成される。絶縁層14への表面加工は、サンドブラスト、研磨、バレル加工、及びこれら以外の公知の表面加工手段により実施される。バレル加工では、外部電極12の相互間隔よりも直径の大きいメディアが用いられることにより、絶縁層14の中央部にメディアが接触する一方で、絶縁層14の外部電極12近傍に存在する領域にはメディアが接触しない加工が可能となる。このような表面加工により、絶縁層14の上面が、中央部に向かって凹む湾曲面に形成される。
【0052】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るコイル部品について説明する。
図15は、本発明の第2実施形態に係るコイル部品を示す斜視図であり、
図16は、
図15のII-II線に沿った断面図であり、
図17は、
図15のIII-III線に沿った断面図である。
【0053】
第2実施形態に係るコイル部品40は、金属磁性材料が用いられた磁性基体41と、磁性基体41の第1面41aに設けられた外部電極42と、磁性基体41の内部に設けられた内部導体43と、外部電極42の間に設けられた絶縁層44とを備えている。第2実施形態における磁性基体41、外部電極42、内部導体43、絶縁層44は、それぞれ、第1実施形態における磁性基体11、外部電極12、内部導体13、絶縁層14に相応している。
【0054】
第2実施形態に係るコイル部品40は、2つの外部電極42と1つの内部導体43が電気的に繋がった素子を複数備えたアレイ型の電子部品である。アレイ型の電子部品においては、複数の素子が1つの部品としてパッケージ化されているので、複数の素子の実装スペースが縮小される。コイル部品40は複数の内部導体43を備え、それぞれが例えばインダクタ素子である。
【0055】
複数の素子を備えたコイル部品40は、3つ以上(
図15の例では8つ)の外部電極42を備えている。第2実施形態のコイル部品40では、8つの外部電極42が、例えば、第1面41aに沿って長さ方向Lと幅方向Wとのそれぞれに相互に離間して並んでいる。即ち、外部電極42は、長さ方向Lに4つ並び、幅方向Wには2つ並んでいる。
【0056】
コイル部品40が備える複数の素子は、例えば、互いに同等な特性を有し、回路上で互いに独立な素子である。コイル部品40は、特性の異なる複数の素子を備えてもよいし、磁気的あるいは電気的に相互作用する複数素子の組み合わせ(例えばトランスやLCフィルタなど)を備えてもよい。
【0057】
第2実施形態のコイル部品40でも、外部電極42は、磁性基体41に埋まった第1電極部42aと磁性基体41から露出した第2電極部42bとを有するので、外部電極42の相互間に設けられる絶縁層44の厚みが抑制され、コイル部品40の小型化に寄与する。
【0058】
第2実施形態における絶縁層44は、
図14に示す第4変形例と同様に、厚みが、外部電極42に近い近傍部分で大きく、中央部分で小さい。また、第2実施形態における絶縁層44は、長さ方向Lで表面が湾曲しているとともに、幅方向Wでも表面が湾曲している。
第1面41aに対して絶縁層44が占める合計面積は、第1面41aに対して8つの外部電極42が占める合計面積よりも広い。このため、絶縁層44によって外部電極42の相互の絶縁性が保たれる。
【0059】
図17では、外部電極42の長さ方向Lの寸法L1は、絶縁層44の長さ方向Lの寸法L2(即ち、外部電極42の長さ方向Lの相互間隔)より大きい例が示されている。但し、絶縁層44の長さ方向Lの寸法L2は、外部電極42の長さ方向Lの寸法L1より大きくてもよい。
【0060】
外部電極42の長さ方向Lの寸法L1に対し、絶縁層44の長さ方向Lの寸法L2が小さい場合、
図16に示すように、絶縁層44の幅方向Wの寸法W2は、外部電極42の幅方向Wの寸法W1よりも大きい。この結果、上述したように第1面41aに対して占める合計面積としては外部電極42よりも絶縁層44の方が広い。特に、
図16に示すように、幅方向Wにおいて外部電極42が2つ配置される場合、絶縁層44の幅方向Wの寸法W2は、外部電極42の幅方向Wの寸法W1の合計(即ち2つ分の寸法W1+W1)よりも大きいことで十分に広い絶縁層44となる。
【0061】
逆に、絶縁層44の幅方向Wの寸法W2が、外部電極42の幅方向Wの寸法W1よりも小さい場合、絶縁層44の長さ方向Lの寸法L2は、外部電極42の長さ方向Lの寸法L1より大きくなり、外部電極42よりも絶縁層44の方が広い状態が保たれる。つまり、幅方向Wに沿った外部電極42の間隔と長さ方向Lに沿った外部電極42の間隔は、一方が小さくなると他方が大きくなる関係にある。
【0062】
コイル部品40の寸法が、幅方向Wよりも長さ方向Lで長い場合には、外部電極42は幅方向Wよりも長さ方向Lに多く並べられる方が設計上好ましい。このため、コイル部品40の長手方向における外部電極42の間隔よりも短手方向における外部電極42の間隔の方が大きい配置が好ましい。また、この場合、コイル部品40の短手方向における外部電極42の間隔は、短手方向における外部電極42の寸法よりも大きいことで十分な絶縁性が得られる。
【0063】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図18は、本発明の第3実施形態を示す断面図である。
第3実施形態では、上述した第2実施形態のコイル部品40が用いられて、電子部品内蔵の基板50が構成される。
【0064】
基板50は、コイル部品40と、絶縁層52と、第1樹脂層53と、第2樹脂層54と、配線パターン55を備えている。
絶縁層52は、多層プリント基板の一部であり、ガラスエポキシ等の絶縁材料で形成される。コイル部品40は、絶縁層52の相互間に配置される。
【0065】
第1樹脂層53は、絶縁層52の相互間に配置されたコイル部品40の周囲に形成される。第1樹脂層53は、例えば、熱硬化性樹脂で形成される。
第2樹脂層54は、コイル部品40の絶縁層44側を覆うように形成される。第2樹脂層54は、第1樹脂層53と同じ熱硬化性樹脂から構成されてもよい。第2樹脂層54により、コイル部品40は基板50内に封止されることになる。絶縁層44の表面が湾曲しているため、樹脂の流動が促進される。よって、コイル部品40を封止する第2樹脂層54におけるボイドの発生を抑制することができる。
【0066】
配線パターン55は、第2樹脂層54に対するビアホールの形成、めっき処理、エッチングを経て形成され、外部電極42と接続される。
コイル部品40が基板50に内蔵されることにより、基板50における部品搭載密度が向上し、電子機器の小型化に寄与する。
【符号の説明】
【0067】
10,40 コイル部品
11,41 磁性基体
11a,41a 第1面
12,42 外部電極
13,43 内部導体
14,44 絶縁層
50 基板