(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009767
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】通信システム、通信方法、及び、制御装置
(51)【国際特許分類】
H04W 28/18 20090101AFI20250109BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20250109BHJP
H04W 72/0453 20230101ALI20250109BHJP
H04W 72/542 20230101ALI20250109BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20250109BHJP
【FI】
H04W28/18 110
H04W72/0446
H04W72/0453
H04W72/542
H04W16/28
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025783
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2023110994
(32)【優先日】2023-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年7月14日オンライン開催された電子情報通信学会無線システム研究会で「自律型Intelligent Reflecting Surfaceを用いた無線通信システムと量子コンピューティングによるリソース割当方法に関する-検討」を発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年11月17日オンライン開催された電子情報通信学会無線システム研究会で「自律型Intelligent Reflecting Surfaceを用いた無線通信システムと量子コンピューティングによるリソース割当方法に関する-検討-複数通信事業者によるIRSの共用」を発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】514066561
【氏名又は名称】株式会社パナソニックシステムネットワークス開発研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 貴博
(72)【発明者】
【氏名】菅原 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】川本 雄一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寧
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067CC02
5K067CC04
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067HH22
5K067HH23
(57)【要約】
【課題】反射板における位相シフト設計のためのチャネル推定処理及び、複数の無線通信事業者が反射板を共用する際における事業者間の連携制御を不要とする。
【解決手段】電波を用いて少なくとも1つの端末と無線通信を行う基地局と、複数の反射素子を備え、各反射素子での電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板と、基地局と各端末との間の無線通信に係る無線リソースの割り当てを制御する制御装置とを備え、反射板は1周期を構成する複数のタイムスロット毎に位相シフトパターンを切り替え、制御装置は、複数のタイムスロット毎に、反射板を経由する電波を用いて無線通信が可能な基地局と端末とを対応付けた無線リンク情報を記憶し、無線リンク情報に基づいて、各タイムスロットにおける無線リソースの割り当てを決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を用いて少なくとも1つの端末と無線通信を行う基地局と、
複数の反射素子を備え、各反射素子での前記電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、前記電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板と、
前記基地局と前記各端末との間の無線通信に係る無線リソースの割り当てを制御する制御装置と、を備え、
前記反射板は、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に前記位相シフトパターンを切り替え、
前記制御装置は、
前記複数のタイムスロット毎に、前記反射板を経由する前記電波を用いて無線通信が可能な前記基地局と前記端末とを対応付けた無線リンク情報を記憶し、
前記無線リンク情報に基づいて、前記各タイムスロットにおける前記無線リソースの割り当てを決定する、
通信システム。
【請求項2】
前記制御装置は、1つのタイムスロットにて1つの基地局が複数の端末と無線通信を行う場合、前記無線リソースの割り当てにおいて、当該複数の端末のそれぞれに対して異なる周波数リソースを割り当てることを決定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記1周期の各タイムスロットにおける前記端末の前記電波の受信品質を含む通信品質情報に基づいて、前記各タイムスロットにおいて前記基地局が前記反射板を経由して無線通信可能な端末を特定し、
前記各タイムスロットにおける前記基地局とその特定した端末とを対応付けた前記無線リンク情報を生成する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記基地局から提供される、1つのサブキャリア及び1つのタイムスロット当たりの通信量を算出し、
前記基地局と無線通信可能な複数の端末のそれぞれが要求する通信量に基づいて、当該複数の端末の全体が要求する通信量を満たし、かつ、タイムスロット数が最小となるように、前記各タイムスロットにおける前記無線リソースの割り当てを決定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記反射板は、受信電力を測定する受信電力計測器を備え、
前記反射板は、
前記受信電力計測器によって測定した受信電力に基づいて、前記位相シフトパターン毎の前記基地局による無線通信の実行頻度を算出し、
前記1周期の各タイムスロットの前記位相シフトパターンを、前記無線通信の実行頻度が所定の閾値以上である前記位相シフトパターンに変更する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記反射板を経由する前記電波が到達可能なエリアに含まれる複数の位置のそれぞれにおける、置き換え前の前記各位相シフトパターンのときの前記端末による前記電波の受信強度に基づいて生成されるフィンガープリントデータベースを予め記憶し、
前記端末による前記1周期の各タイムスロットでの前記電波の受信強度を含む無線環境情報を、前記フィンガープリントデータベースと照合することにより、前記エリアにおける前記端末の位置を推定する、
請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記位相シフトパターンが置き換え後の前記無線環境情報において、重複する前記位相シフトパターンの前記受信強度を平均化し、存在しない前記位相シフトパターンの前記受信強度を0として、照合用無線環境情報を生成し、
前記照合用無線環境情報を、前記フィンガープリントデータベースと照合することにより、前記エリアにおける前記端末の位置を推定する、
請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記無線環境情報が前記位相シフトパターンの置き換え後のものである場合、
前記位相シフトパターンが置き換え前の前記無線環境情報と置き換え後の前記無線環境情報とにおいて、重複する前記位相シフトパターンの前記受信強度を平均化し、置き換え後の無線環境情報に存在しない位相シフトパターンの前記受信強度を前記置き換え前の無線環境情報の同じ位相シフトパターンの前記受信強度として、照合用無線環境情報を生成し、
前記照合用無線環境情報を、前記フィンガープリントデータベースと照合することにより、前記エリアにおける前記端末の位置を推定する、
請求項6に記載の通信システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記重複する前記位相シフトパターンの前記受信強度を平均化した値に、当該重複する数に基づく重み付けを行い、前記照合用無線環境情報を生成する、
請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記無線リソースを構成する単位時間である1つのスロットに、前記端末が前記基地局を検出するための検出情報が2つ配置され、
前記1つのスロットに、前記反射板に係る前記タイムスロットが2つ割り当てられる、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項11】
前記割り当てられた2つの検出情報を、それぞれ、第1の検出情報及び第2の検出情報とし、
前記割り当てられた2つのタイムスロットを、それぞれ、第1のタイムスロット及び第2のタイムスロットとし、
前記反射板は、
受信した前記第1の検出情報を含むビームを、前記第1のタイムスロットに対応する前記位相シフトパターンによって反射し、
受信した前記第2の検出情報を含むビームを、前記第2のタイムスロットに対応する前記位相シフトパターンによって反射する、
請求項10に記載の通信システム。
【請求項12】
前記基地局は、
前記第1の検出情報を含む第1の方向のビームを送信すると共に、前記第1の検出情報を含む前記反射板の方向の専用ビームを送信し、
前記第2の検出情報を含む第2の方向のビームを送信すると共に、前記第2の検出情報を含む前記反射板の方向の前記専用ビームを送信し、
前記反射板が受信した前記第1の検出情報又は前記第2の検出情報を含むビームは、前記専用ビームである、
請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
前記無線リソースを構成する時間単位であるスロット2つ分のスロットペアに、前記端末が前記基地局を検出するための検出情報が所定数配置され、
1つの前記スロットペアに、各検出情報に対応して、各検出情報の時間以上の長さで、前記反射板に係る前記タイムスロットが、検出情報の数以上割り当てられる、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項14】
基地局が、無線通信に係る電波を送信し、
複数の反射素子を備え、各反射素子での前記電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、前記電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板が、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に前記位相シフトパターンを切り替え、
少なくとも1つの端末が、前記基地局から送信され、前記反射板にて反射された前記電波を受信可能であり、
制御装置が、前記複数のタイムスロット毎に、前記反射板を経由する前記電波を用いて無線通信が可能な前記基地局と前記端末とを対応付けた無線リンク情報を記憶し、前記無線リンク情報に基づいて、前記各タイムスロットにおける、前記基地局と前記各端末との無線通信に係る無線リソースの割り当てを決定する、
通信方法。
【請求項15】
基地局が、無線通信に係る電波を送信し、
複数の反射素子を備え、各反射素子での前記電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、前記電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板が、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に前記位相シフトパターンを切り替え、
少なくとも1つの端末が、前記基地局から送信され、前記反射板にて反射された前記電波を受信可能である通信システムにおいて、前記基地局と前記各端末との間の無線通信に係る無線リソースの割り当てを制御する、制御装置であって、
前記複数のタイムスロット毎に、前記反射板を経由する前記電波を用いて無線通信が可能な前記基地局と前記端末とを対応付けた無線リンク情報を記憶し、
前記無線リンク情報に基づいて、前記各タイムスロットにおける前記無線リソースの割り当てを決定する、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、通信方法、及び、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局(例えばBase Station(BS))からの電波が直接届かないエリアをカバーするために、複数の反射素子がアレー配置された反射板(例えばIntelligent Reflection Surface(IRS))を使用することが検討されている。反射板は、各反射素子の位相シフト(反射係数)を調整することにより、基地局から受信した電波を、例えば直接電波が届かないエリアに向けて反射する。反射板を用いることにより、好ましい伝搬特性となるように制御可能となるため、同じスループットを実現するための送信電力及び周波数帯域幅を減らすことができる。また、反射板は、パワーアンプが不要なため、省エネルギー及び省コストでの運用が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】D. Mishra and H. Johansson, "Channel estimation and low-complexity beamforming design for passive intelligent surface assisted MISO wireless energy transfer," IEEE ICASSP 2019, 2019, pp.4659-4663. DOI: 10.1109/ICASSP.2019.8683663
【非特許文献2】T. Haustein, J. McMenamy, L. Thiele and P. S. H. Leather, "Reconfigurable Intelligent Surface Deployment in 5G and Beyond 5G Cellular Networks, " 2022 IEEE 23rd Int. Workshop on Signal Process. Advances in Wireless Commun. (SPAWC), Oulu, Finland, 2022, pp.1-5.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IRSの各反射素子の位相シフトを設計するためには、すべての素子に対してチャネル推定処理を実施する必要がある。非特許文献1は、最も基本的なチャネル推定方法として、1つの反射素子のみが反射する状況で当該反射素子に対するチャネルを推定し、この推定をすべての反射素子に対して繰り返す方法を提案している。しかし、この方法を用いると、反射素子の数が増加するとともに、チャネル推定処理のオーバーヘッドも増加してしまう。
【0005】
また、非特許文献2では、IRSのブロードバンド性が異なる無線通信事業者の電波に影響を与える可能性について言及しており、複数の無線通信事業者間でIRSを制御する必要性を示している。しかし、複数の無線通信事業者間でIRSを制御するには、複数の事業者を統制するための制御装置の設置や、事業者間での情報の共有が必要となり、インフラコストや制御のコストが増加してしまう。
【0006】
本開示の目的は、反射板における位相シフト設計のためのチャネル推定処理、及び複数の無線通信事業者が反射板を共用する際における事業者間での連携制御を不要とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る通信システムは、電波を用いて少なくとも1つの端末と無線通信を行う基地局と、複数の反射素子を備え、各反射素子での前記電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、前記電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板と、前記基地局と前記各端末との間の無線通信に係る無線リソースの割り当てを制御する制御装置と、を備え、前記反射板は、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に前記位相シフトパターンを切り替え、前記制御装置は、前記複数のタイムスロット毎に、前記反射板を経由する前記電波を用いて無線通信が可能な前記基地局と前記端末とを対応付けた無線リンク情報を記憶し、前記無線リンク情報に基づいて、前記各タイムスロットにおける前記無線リソースの割り当てを決定する。
【0008】
本開示の一態様に係る通信方法は、基地局が、無線通信に係る電波を送信し、複数の反射素子を備え、各反射素子での前記電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、前記電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板が、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に前記位相シフトパターンを切り替え、少なくとも1つの端末が、前記基地局から送信され、前記反射板にて反射された前記電波を受信可能であり、制御装置が、前記複数のタイムスロット毎に、前記反射板を経由する前記電波を用いて無線通信が可能な前記基地局と前記端末とを対応付けた無線リンク情報を記憶し、前記無線リンク情報に基づいて、前記各タイムスロットにおける、前記基地局と前記各端末との無線通信に係る無線リソースの割り当てを決定する。
【0009】
本開示の一態様に係る制御装置は、基地局が、無線通信に係る電波を送信し、複数の反射素子を備え、各反射素子での前記電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、前記電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板が、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に前記位相シフトパターンを切り替え、少なくとも1つの端末が、前記基地局から送信され、前記反射板にて反射された前記電波を受信可能である通信システムにおいて、前記基地局と前記各端末との間の無線通信に係る無線リソースの割り当てを制御する、制御装置であって、前記複数のタイムスロット毎に、前記反射板を経由する前記電波を用いて無線通信が可能な前記基地局と前記端末とを対応付けた無線リンク情報を記憶し、前記無線リンク情報に基づいて、前記各タイムスロットにおける前記無線リソースの割り当てを決定する。
【0010】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、反射板における位相シフト設計のためのチャネル推定処理が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る通信システムの構成例を示す図
【
図2】実施の形態1に係る初期の位相シフトスケジュールの一例を示す図
【
図3】実施の形態1に係る通信システムの動作例を示すシーケンスチャート
【
図4】実施の形態1に係る無線リンクテーブルの構成例を示す図
【
図5】実施の形態1に係る無線リンクテーブルの変形例を示す図
【
図6】変形例の手法Aに係る通信システムの構成例を示す図
【
図7】変形例の手法Bに係る通信システムの構成例を示す図
【
図8】変形例の手法Cに係る通信システムの構成例を示す図
【
図9】実施の形態2に係る通信システムの構成例を示す図
【
図10】実施の形態2に係る変更前と変更後の位相シフトスケジュールの一例を示す図
【
図11】実施の形態2に係る変更後の位相シフトスケジュールを用いた場合の通信システムの動作例を示すシーケンスチャート
【
図12】実施の形態2に係る無線リンクテーブルの構成例を示す図
【
図13】実施の形態2に係る反射板による位相シフトスケジュールの変更方法を説明するための図
【
図14】実施の形態3に係る通信システムの構成例を示す図
【
図15】実施の形態3に係る量子コンピュータを用いてフィンガープリントDBによる端末の測位を行う処理の一例を示すフローチャート
【
図16】実施の形態3に係るSWAPテスト回路を示す図
【
図17】フィンガープリントDBと測定RSSデータとを直接的に比較することができないことを説明するための図
【
図18】実施の形態3に係る測位方法1を説明するための図
【
図19】実施の形態3に係る測位方法2を説明するための図
【
図20】実施の形態3に係る測位方法3を説明するための図
【
図21】実施の形態3に係る測位方法4を説明するための図
【
図22】実施の形態3に係る制御装置が行う処理の一例を示すフローチャート
【
図23】実施の形態3に係る測位方法1~測位方法4の測位誤差を比較したグラフ
【
図24】本開示に係るコンピュータのハードウェア構成を示す図
【
図25】5G規格におけるセルサーチの概要を説明するための図
【
図26】端末が反射板を経由してSSBを受信する場合の課題を説明するための図
【
図27】実施の形態4に係る、反射板を経由したセルサーチの実現方法を説明するための図
【
図28】実施の形態4に係る、基地局と反射板と端末との動作シーケンスの一例を示す図
【
図29】実施の形態4に係る、120kHz SCSの場合における反射板の位相シフトパターン切替スケジュールの設計例を説明するための図
【
図30】実施の形態4に係る、15kHz SCSの場合における反射板の位相シフトパターン切替スケジュールの第1の設計例を説明するための図
【
図31】実施の形態4に係る、30kHz SCSの場合における反射板の位相シフトパターン切替スケジュールの第1の設計例を説明するための図
【
図32】実施の形態4に係る、30kHz SCSの場合における反射板の位相シフトパターン切替スケジュールの第2の設計例を説明するための図
【
図33】実施の形態4に係る、240kHz SCSの場合における反射板の位相シフトパターン切替スケジュールの設計例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0014】
(実施の形態1)
<システムの構成>
図1は、実施の形態1に係る通信システム1の構成例を示す図である。
【0015】
図1に示すように、通信システム1は、制御装置5と、基地局10と、反射板15と、端末20(20A、20B、20C、20D)とを含む。通信システム1に含まれる制御装置5、基地局10、反射板15、及び、端末20の数は、幾つであってもよい。基地局10は、Base Station(BS)と読み替えられてもよい。反射板15は、Intelligent Reflection Surface(IRS)、Reconfigurable Intelligent Surface(RIS)、又は、Standalone(SA)-IRSと読み替えられてもよい。端末20は、User Equipment(UE)と読み替えられてもよい。
【0016】
基地局10は、無線通信を行うための電波(無線信号)を送信する。また、基地局10は、各端末20から送信された電波(無線信号)を受信する。無線信号の通信方式は、4G、5G、6Gなどの移動通信システムの規格に準拠してよい。
【0017】
端末20は、基地局10から送信された電波(無線信号)を受信する。また、端末20は、電波(無線信号)を基地局10に送信する。
【0018】
制御装置5は、基地局10と端末20との間の無線通信に関する無線リソースの割り当てをスケジューリングする。無線リソースは、時間リソース及び周波数リソースを含む。なお、本実施の形態では、説明をわかり易くするために、制御装置5が1つの基地局10を制御するとして説明するが、制御装置5が複数の基地局10を制御してもよい。なお、本開示において制御装置5を主体として説明する処理又は機能は、
図24に示すプロセッサ1001(
図24)が行う処理又は機能であってよい。
【0019】
反射板15は、複数のパッシブな反射素子がアレー配置された装置である。反射板15は、各反射素子の位相シフト量(反射係数)を調整することができる。例えば、
図1に示すように、障害物2が存在するために、基地局10と各端末20A、20B、20C、20Dとが直接的に無線通信を行うことができない場合がある。このような場合、
図1に示すように、適切な場所に反射板15を設置し、反射板15が位相シフト量を適切に調整することにより、障害物2が存在しても、基地局10から送信された電波が、反射板15によって端末20A、20B、20C、20Dの方向に反射され、端末20A、20B、20C、20Dに到達できるようになる。同様に、端末20A、20B、20C、20Dから送信された電波が、反射板15によって基地局10の方向に反射され、基地局10に到達できるようになる。
【0020】
反射板15は、基地局10及び/又は制御装置5からの制御を受けずに、自律して動作する装置であってよい。このように自律して動作する反射板15は、SA-IRS又は自律IRSと読み替えられてよい。
【0021】
反射板15は、所定期間(タイムスロット)ごとに各反射素子の位相シフト量を変化させる。また、反射板15は、所定数のタイムスロットで1周期を構成する。本実施の形態では、説明をわかり易くするために、5つのタイムスロットで1周期を構成するとして説明する。ただし、1周期を構成するタイムスロットの数は、幾つであってもよい。
【0022】
本実施の形態では、1周期のうちの、1番目のタイムスロットをt=1、2番目のタイムスロットをt=2、3番目のタイムスロットをt=3、4番目のタイムスロットをt=4、5番目のタイムスロットをt=5と表現する。
【0023】
反射板15は、水平方向の位相シフト量及び垂直方向の位相シフト量のセットが互いに異なる(つまり反射した電波の伝搬特性が互いに異なる)複数の位相シフトパターンを有する。本実施の形態では、反射板15は、5つの互いに異なる位相シフトパターンs=1,2,3,4,5が設定されているとして説明する。ただし、反射板15に設定される位相シフトパターンの数は幾つであってもよい。また、本実施の形態では、説明をわかり易くするために、各位相シフトパターンは水平方向の位相シフト量が異なるとして説明する。
【0024】
反射板15は、位相シフトスケジュールに従って、タイムスロットごとに位相シフトパターンを切り替える。
【0025】
図2は、実施の形態1に係る初期の位相シフトスケジュールの一例を示す。次に、
図2を参照して、位相シフトスケジュールについて説明する。
【0026】
位相シフトスケジュールは、タイムスロットtと位相シフトパターンsとを対応付ける。例えば、
図2に示す位相シフトスケジュールに基づいて動作する反射板15は、1周期において、タイムスロットt=1では、位相シフトパターンs=1を設定し、タイムスロットt=2では、位相シフトパターンs=2を設定し、タイムスロットt=3では、位相シフトパターンs=3を設定し、タイムスロットt=4では、位相シフトパターンs=4を設定し、タイムスロットt=5では、位相シフトパターンs=5を設定する。
【0027】
なお、通信システム1に含まれる制御装置5、反射板15、基地局10、及び、端末20では、Global Navigation Satellite Systems(GNSS)等により、時刻が正確に同期される。これにより、制御装置5、反射板15、基地局10、及び、端末20の間で、タイムスロットの切り替えタイミングが同期される。
【0028】
<通信システムの動作>
図3は、実施の形態1に係る通信システム1の動作例を示すシーケンスチャートである。
【0029】
まず、1回目の周期での動作を説明する。
【0030】
(S101)基地局10は、タイムスロットt=1において、パイロット信号を送信する。
【0031】
(S102)反射板15は、タイムスロットt=1において、位相シフトパターンs=1を設定し、ステップS101のパイロット信号を反射する。
【0032】
(S103)端末20Aは、ステップS102の反射されたパイロット信号を受信できた場合、そのパイロット信号に対する通信品質情報を基地局10(制御装置5)へ送信する。通信品質情報には、端末20Aにおけるパイロット信号の受信強度を示すReceived Signal Strength(RSS)が含まれる。なお、RSSに代えて、Received Signal Strength Indicator(RSSI)が用いられてもよい。なお、RSS又はRSSIは一例であり、受信強度又は通信品質を示す指標であれば、RSS又はRSSIとは異なる指標が用いられてもよい。
【0033】
(S104)次に、基地局10は、タイムスロットt=2において、パイロット信号を送信する。
【0034】
(S105)反射板15は、タイムスロットt=2において、位相シフトパターンs=2を設定し、ステップS104のパイロット信号を反射する。ステップS105の反射されたパイロット信号がいずれの端末20にも受信されなかった場合、基地局10は、タイムスロットt=2に対応する通信品質情報を受信しない。
【0035】
(S106)次に、基地局10は、タイムスロットt=3において、パイロット信号を送信する。
【0036】
(S107)反射板15は、タイムスロットt=3において、位相シフトパターンs=3を設定し、ステップS106のパイロット信号を反射する。
【0037】
(S108)端末20Bは、ステップS107の反射されたパイロット信号を受信できた場合、そのパイロット信号の通信品質情報を基地局10(制御装置5)へ送信する。
【0038】
(S109)次に、基地局10は、タイムスロットt=4において、パイロット信号を送信する。
【0039】
(S110)反射板15は、タイムスロットt=4において、位相シフトパターンs=4を設定し、ステップS109のパイロット信号を反射する。
【0040】
(S111)端末20Cが、ステップS110の反射されたパイロット信号を受信できた場合、そのパイロット信号の通信品質情報を基地局10(制御装置5)へ送信する。
【0041】
(S112)次に、基地局10は、タイムスロットt=5において、パイロット信号を送信する。
【0042】
(S113)反射板15は、タイムスロットt=5において、位相シフトパターンs=5を設定し、ステップS112のパイロット信号を反射する。ステップS113の反射されたパイロット信号がいずれの端末20にも受信されなかった場合、基地局10は、タイムスロットt=5に対応する通信品質情報を受信しない。
【0043】
以上の処理により、制御装置5は、タイムスロットt=1において端末20Aから通信品質情報を受信できたので、タイムスロットt=1において基地局10は端末20Aと無線通信を行うことができると判断する。同様に、制御装置5は、タイムスロットt=3において基地局10は端末20Bと無線通信を行うことができると判断し、タイムスロットt=4において基地局10は端末20Cと無線通信を行うことができると判断する。
【0044】
なお、制御装置5は、あるタイムスロットにおいて基地局10がある端末20から通信品質情報を受信できたとしても、その通信品質情報に含まれるRSS(受信強度)が非常に小さい(例えば所定の閾値以下である)場合、そのタイムスロットにおいて基地局10はその端末20と無線通信を行うことはできないと判断してもよい。
【0045】
制御装置5は、各タイムスロットにおけるパイロット信号の送信と通信品質情報の受信結果とに基づいて、無線リンクテーブルを生成する。次に、無線リンクテーブルについて説明する。
【0046】
図4は、実施の形態1に係る無線リンクテーブルの構成例を示す。
【0047】
図4に示すように、無線リンクテーブルは、タイムスロットの番号tと、そのタイムスロットのときに無線通信が可能な基地局10と端末20とのリンクペアとを対応付けるテーブルである。なお、無線リンクテーブルは、無線リンク情報と読み替えられてもよい。
【0048】
制御装置5は、上述した1回目の周期での動作に基づき、
図4に示すような、タイムスロットt=1のときに、基地局10と端末20Aとが無線通信可能であり、タイムスロットt=3のときに、基地局10と端末20Bとが無線通信可能であり、タイムスロットt=4のときに、基地局10と端末20Cとが無線通信可能であることを示す無線リンクテーブルを作成し、所定のメモリ1002(
図24参照)に記憶する。
【0049】
制御装置5は、無線リンクテーブルを参照して、基地局10における2回目以降の無線リソース割当スケジュールを作成する(S120)。例えば、基地局10は、タイムスロットt=1に対応する無線リソースに、端末20Aとの無線通信を割り当て、タイムスロットt=3に対応する無線リソースに、端末20Bとの無線通信を割り当て、タイムスロットt=4に対応する無線リソースに、端末20Cとの無線通信を割り当てる、無線リソース割当スケジュールを作成する。
【0050】
次に、
図3に戻り、2回目の周期での動作を説明する。
【0051】
ステップ120にて制御装置5が作成した無線リソース割当スケジュールに基づいて、基地局10は、次の動作を行う。
【0052】
(S121)基地局10は、タイムスロットt=1において、端末20A向けの無線信号を送信する。
【0053】
(S122)反射板15は、タイムスロットt=1において、位相シフトパターンs=1を設定し、ステップS121の無線信号を反射する。端末20Aは、この反射された無線信号を受信する。なお、端末20Aは、このタイムスロットt=1に対応する無線リソースにて、基地局10に無線信号を送信してもよい。
【0054】
(S123)基地局10は、タイムスロットt=2において、無線信号を送信しない。タイムスロットt=2では、反射板15において位相シフトパターンs=2が設定されており、この位相シフトパターンs=2で反射された無線信号を受信できる端末20は存在しないためである。
【0055】
(S124)基地局10は、タイムスロットt=3において、端末20B向けの無線信号を送信する。
【0056】
(S125)反射板15は、タイムスロットt=3において、位相シフトパターンs=3を設定し、ステップS124の無線信号を反射する。端末20Bは、この反射された無線信号を受信する。なお、端末20Bは、このタイムスロットt=3に対応する無線リソースにて、基地局10に無線信号を送信してもよい。
【0057】
(S126)基地局10は、タイムスロットt=4において、端末20C向けの無線信号を送信する。
【0058】
(S127)反射板15は、タイムスロットt=4において、位相シフトパターンs=4を設定し、ステップS126の無線信号を反射する。端末20Cは、この反射された無線信号を受信する。なお、端末20Cは、このタイムスロットt=4に対応する無線リソースにて、基地局10に無線信号を送信してもよい。
【0059】
(S128)基地局10は、タイムスロットt=5において、無線信号を送信しない。タイムスロットt=5では、反射板15において位相シフトパターンs=5が設定されており、この位相シフトパターンs=5で反射された無線信号を受信できる端末20は存在しないためである。
【0060】
基地局10、反射板15、及び、端末20A、20B、20Cは、3回目以降の周期でも上述した2回目の周期と同様の動作を行ってよい。
【0061】
上述した処理によれば、制御装置5は、無線リンクテーブルにおいてリンクペアが存在しないタイムスロットtでは無線リソースを割り当てないので、無線リソースが効率的に利用される。
【0062】
なお、制御装置5は、上述した1回目の周期で説明したパイロット信号の送信、無線リンクテーブルの作成、及び、無線リソース割当スケジュールの作成を、定期的(例えば10周期毎)に行ってよい。つまり、制御装置5は、無線リソース割当スケジュールを、定期的に初期化してよい。これにより、制御装置5は、新たな端末20の参入、既存の端末20の退出、及び/又は、端末20の移動など、端末20の存在状況の変化に応じた制御を行うことができる。
【0063】
また、1つの基地局10が1つのタイムスロットで複数の端末20と無線通信を行う場合、制御装置5は、各端末20に対して互いに異なる周波数リソースを割り当ててよい。例えば、タイムスロットt=3において、端末20B及び端末20D(
図1参照)と無線通信が可能な場合、制御装置5は、無線リソース割当スケジュールを作成する際、端末20Bに第1の周波数リソースを割り当て、端末20Dに第2の周波数リソースを割り当ててよい。
【0064】
図5は、実施の形態1に係る無線リンクテーブルの変形例を示す。
【0065】
制御装置5が複数の基地局10A、10B、10Cを制御する場合、制御装置5は、上述した1回目の周期で説明した手法と同様に、タイムスロットごとに、複数の基地局10A、10B、10Cのそれぞれが、いずれの端末20A、20B、20C、20D、20Eと無線通信可能であるかを認識し、
図5に示すような無線リンクテーブルを作成してもよい。
【0066】
図5に示す無線リンクテーブルは、タイムスロットの番号と、そのタイムスロットのときに無線通信が可能な基地局10と端末20とのリンクペアとを対応付ける。
【0067】
例えば、
図5に示す無線リンクテーブルは、タイムスロットt=1のときに、基地局10Aは端末20Bと、基地局10Bは端末20Eと、基地局10Cは端末20Dと無線通信が可能であることを示す。他のタイムスロットについても同様である。
【0068】
なお、本実施の形態に係る通信システム1は、ミリ波などの比較的高い周波数帯域(例えば26GHz帯)を用いて無線通信を行ってよい。つまり、本実施の形態は、直接パスが支配的なフラットチャネルを想定してよい。
【0069】
また、本実施の形態では、無線リソース割当スケジュールが適用される期間では、端末20の移動は十分小さいと想定してよい。
【0070】
また、制御装置5は、無線リソース割当スケジュールを作成する際、各端末20が要求する通信量を考慮し、できるだけ短時間ですべての通信が完了するように、無線リソースの割り当てを最適化してよい。例えば、制御装置5は、基地局10から提供される無線通信帯域の1つのサブキャリア及び1つのタイムスロット当たりの通信量を算出し、基地局10と無線通信可能な複数の端末20のそれぞれが要求する通信量に基づいて、当該複数の端末20の全体が要求する通信量を満たし、かつ、タイムスロット数が最小となるように、各タイムスロットにおける無線リソースの割り当てを決定してよい。例えば、制御装置5は、量子コンピュータと通信可能に接続されており、当該量子コンピュータを用いて、次に説明する方法により、無線リソースの割り当てを最適化してよい。ただし、制御装置5は、量子コンピュータを使用せず、いわゆる古典コンピュータによる演算で、この無線リソースの割り当ての最適化を行ってもよい。
【0071】
<量子コンピューティングによる無線リソース割当の最適化>
近年、複雑な組合せ最適化問題を量子コンピューティングにより効率的に解く方法が注目されている。量子コンピューティングにより組合せ最適化問題を解く場合、解きたい問題に応じたイジングモデル式またはQUBO(Quadratic Unconstrained Binary Optimization)式を定式化する必要がある。以下に一般的なイジングモデル式を示す。
【0072】
【0073】
【0074】
Hは全スピンが存在する場のエネルギーを示している。
【0075】
【0076】
量子コンピューティングによる組合せ最適化では、Hが最小となるような各σの状態、
すなわち基底状態を探索することになる。そのため、対象とする問題における最適解が基底状態となるように定式化を行う必要がある。
【0077】
【0078】
式2において、xutfは、UEuに対しタイムスロットtにおいてサブキャリア数fを割り当てる場合に1を示すバイナリ変数である。また、ytbvは、タイムスロットtかつBSbにおいて、利用可能なサブキャリア数Fと、実際に割り当てたサブキャリア数の合計との差を示す2進の変数であり、vはビットインデックスを示す。Duは、UEuの要求通信量[bit]、Stは無線リンクテーブルにおいてタイムスロットtに含まれるUEの集合、UtbはタイムスロットtにおいてBSbと通信可能なUEの集合をそれぞれ示す。Tutは、UEuがタイムスロットtにおいて得られる1サブキャリア当たりの通信量[bit]を示す。また、λ1からλ4は、各項の強さを調整する0より大きい係数である。
【0079】
式2において、第1項は、所要タイムスロット数を最小化するためのコスト項である。
第2項は、各UEの要求通信量を満たすための制約項である。第3項は、各タイムスロットにおいて、無線リンクテーブルに含まれないUEへのリソース割当を回避するための制約項である。第4項は、各タイムスロットにおいて、各UEに割り当てるサブキャリア数を最大1種類に制限するための制約項である。第5項は、各タイムスロットにおいて、単一のBSが複数のUEと通信可能な場合、各UEへ割り当てたサブキャリア数の合計が利用可能な範囲を超えないための制約項である。
【0080】
式2を用いてリソース割当を行うにあたり、Tutを事前に計算しておく必要がある。
【0081】
前述した各UEから通知されるチャネル品質情報は、各BSのチャネル推定値、各BSbの信号電力Sb、および雑音電力Nを含む。
【0082】
タイムスロットtにおいてUEuが通信可能なBSが複数の場合に、各BSがチャネル推定値の逆位相をプリコーディング係数に用いることで、UEの受信点で同相加算されることを考慮すると、Tutは次の式3のようになる。
【0083】
【0084】
ここで、Bは1サブキャリアの帯域幅[Hz]、Tは1タイムスロットの時間[sec]、BsはUEuと通信を行うBSの集合である。
【0085】
<変形例>
<<手法A>>
図6は、変形例の手法Aに係る通信システム1aの構成例を示す。
【0086】
図6に示す、変形例の手法Aに係る通信システム1aは、特定の事業者Aが反射板15の制御権を持ち、他の事業者Bは反射板15の制御権を持たない。例えば、
図6において、事業者Aが、制御装置5Aと反射板15と基地局10Aとを制御可能であり、事業者Bが、制御装置5Bと基地局10Bとを制御可能であるとする。この場合、通信システム1aは、手法Aとして、次の動作を行ってよい。
【0087】
事業者Aは、自分が管理する制御装置5Aを使用して、自分が管理する基地局10Aと端末20A、20B、20Cとに対して無線通信が最適となるように反射板15の位相シフトパターンを制御する。
【0088】
事業者Bは、反射板15の位相シフトパターンを含むカスケードチャネル情報が未知の状態で通信を実施する。例えば、事業者Bは、自分が管理する制御装置5Bを使用して、自分が管理する基地局10Bから、自分が管理する端末20Eに対して無線信号を送信する。この送信された無線信号は、もし反射板15が位相シフトパターンs=2のときに反射された場合、自分が管理する端末20Eに到達する。一方で、この送信された無線信号は、もし反射板15が位相シフトパターンs=2でないときに反射された場合、自分が管理する端末20Eに到達しない。
【0089】
<<手法B>>
図7は、変形例の手法Bに係る通信システム1bの構成例を示す。
【0090】
図7に示す、変形例の手法Bに係る通信システム1bは、複数の事業者A、事業者Bで反射板15の制御権を共有する。例えば、
図7において、事業者Aが、制御装置5Aと基地局10Aとを制御可能であり、事業者Bが、制御装置5Bと基地局10Bとを制御可能であり、事業者Aと事業者Bが反射板15の制御権を共有するとする。この場合、通信システム1bは、手法Bとして、次の動作を行ってよい。
【0091】
反射板15の制御権を事業者Aと事業者Bに時分割で割り当てる。事業者Aは、自分に割り当てられた第1の時間では制御装置5Aを使用して、自分の基地局10Aと端末20A、20B、20Cとに対して最適となるように反射板15の位相シフトパターンを制御し、事業者Bは、この第1の時間では、反射板15の位相シフトパターンを含むカスケードチャネル情報が未知の状態で通信を実施する。また、事業者Bは、自分に割り当てられた(第1の時間とは異なる)第2の時間では制御装置5Bを使用して、自分の基地局10Bと端末20Eとに対して最適となるように反射板15の位相シフトパターンを制御し、事業者Aは、この第2の時間では、反射板15の位相シフトパターンを含むカスケードチャネル情報が未知の状態で通信を実施する。
【0092】
<<手法C>>
図8は、変形例の手法Cに係る通信システム1cの構成例を示す。
【0093】
手法Cに係る通信システム1cは、制御装置5が、各基地局10A、10Bと反射板15とを制御可能な構成である。そして、制御装置5は、全事業者A、Bが同時(一斉)に通信することを前提に反射板15の位相シフトを最適化する。すなわち、制御装置5は、各事業者A、Bのスループットを最大化するように反射板15の位相シフトを最適化する。
【0094】
上述した変形例の手法A、手法B、手法Cでは、反射板15は基地局10及び/又は制御装置5からの制御が必要となる。また、反射板15の位相シフトパターンを制御するために、反射板15の各反射素子に対するチャネル推定処理が必要となる。そのため、反射素子数が多い場合、各反射素子に対するチャネル推定処理のオーバーヘッドが大きくなり、実効的な通信速度が低下してしまう。基地局10及び/又は制御装置5からの制御が不要なSA-IRSを反射板15として利用することにより、各反射素子に対するチャネル推定処理は不要となるため、本実施形態はこのような課題を解決できる。
【0095】
また、変形例の手法Bでは、各事業者が反射板15を制御可能な時間を分割するために、事業者間での同期の実現や、割り当て時間に関する情報の共有が必要となる。また、変形例の手法Cでは、全事業者を統制するための新たな制御装置5が必要となることに加えて、制御装置5が反射板15の位相シフトを最適化するために、各事業者からチャネル推定結果などの情報を収集する必要がある。このように、事業者間での連携を実現するために、制御コストやインフラコストが増加する。一方、制御装置5としてSA-IRSを用いる場合、実施の形態1に記載したような無線リソース割り当てと、その結果に基づく通信とを、各事業者がそれぞれ独立して実施することで、事業者間での連携を行うことなく、各事業者が反射板15を共用することが可能となる。
【0096】
(実施の形態2)
実施の形態1において、
図3に示したシーケンスチャートでは、タイムスロットt=2、t=5のとき、反射板15を使用しても通信可能な端末20が存在しないため、制御装置5は、タイムスロットt=2、t=5に対して、時間リソースを割り当てていない。実施の形態2では、このように時間リソースが割り当てられないタイムスロットをできるだけ少なくし、無線リソースの利用効率を高める。
【0097】
<通信システムの構成>
図9は、実施の形態2に係る通信システム1の構成例を示す。
【0098】
通信システム1は、制御装置5と、基地局10と、反射板15と、当該反射板15に備えられた受信電力計測器16と、端末20(20A,20B,20C)とを含む。
【0099】
<位相シフトスケジュール>
図10は、実施の形態2に係る変更前と変更後の位相シフトスケジュールの一例を示す。
【0100】
図10に示すように、位相シフトスケジュールは、タイムスロットの番号と、そのタイムスロットのときの位相シフトパターンとを対応付ける。
【0101】
反射板15は、受信電力計測器16を用いて、タイムスロットtごとに受信電力を測定し、あまり使用されてない位相シフトパターンsを特定する。例えば、
図3に示すシーケンスチャートの動作では、反射板15は、タイムスロットt=2の位相シフトパターンs=2と、タイムスロットt=5の位相シフトパターンs=5とは使用されていないと判断する。
【0102】
そこで、反射板15は、変更前の位相シフトスケジュールから、使用されていない位相シフトパターンs=2、5を削除し、使用されている位相シフトパターンs=1,3,4のみを用いて、位相シフトスケジュールを変更する。例えば、反射板15は、タイムスロットt=1,2,3,4,5に対して、それぞれ、位相シフトパターンs=1,3,4,1,3を割り当て、変更後の位相シフトスケジュールを生成する。反射板15は、1周期に含まれるすべてのタイムスロットに対して、使用されている位相シフトパターンがすべて割り当てられるように、位相シフトスケジュールを変更する。
【0103】
すなわち、反射板15は、受信電力計測器16によって測定した受信電力に基づいて、位相シフトパターン毎の基地局10による無線通信の実行頻度を算出し、1周期の各タイムスロットの位相シフトパターンを、無線通信の実行頻度が閾値以上である位相シフトパターン(例えば上記の位相シフトパターンs=1,3,4のいずれか)のみが含まれるように変更する。なお、反射板15は、各タイムスロットのうちの、無線通信の実行頻度が所定の閾値未満である位相シフトパターン(例えば上記の位相シフトパターンs=2,5)を、無線通信の実行頻度が閾値以上である位相シフトパターンのみが含まれるように変更してもよいし、すべてのタイムスロットの位相シフトパターンを、無線通信の実行頻度が閾値以上である位相シフトパターンのみが含まれるように変更してもよい。すなわち、無線通信の実行頻度が閾値以上である位相シフトパターンであれば、各タイムスロットに対して、どのような並び順で位相シフトパターンが割り当てられてもよい。
【0104】
図11は、実施の形態2に係る変更後の位相シフトスケジュールを用いた場合の通信システム1の動作例を示すシーケンスチャートである。
【0105】
(S200)反射板15は、上述した方法により、位相シフトスケジュールを変更する。
【0106】
まず、位相シフトスケジュールが変更された後の1回目の周期での動作を説明する。
【0107】
(S201)基地局10は、タイムスロットt=1において、パイロット信号を送信する。
【0108】
(S202)反射板15は、タイムスロットt=1において、位相シフトパターンs=1を設定し、ステップS201のパイロット信号を反射する。
【0109】
(S203)端末20Aは、ステップS202の反射されたパイロット信号を受信できた場合、そのパイロット信号の通信品質情報を基地局10(制御装置5)へ送信する。通信品質情報には、少なくともRSSが含まれる。
【0110】
(S204)次に、基地局10は、タイムスロットt=2において、パイロット信号を送信する。
【0111】
(S205)反射板15は、タイムスロットt=2において、位相シフトパターンs=3を設定し、ステップS204のパイロット信号を反射する。
【0112】
(S206)端末20Bは、ステップS205の反射されたパイロット信号を受信できた場合、そのパイロット信号の通信品質情報を基地局10(制御装置5)へ送信する。
【0113】
(S207)次に、基地局10は、タイムスロットt=3において、パイロット信号を送信する。
【0114】
(S208)反射板15は、タイムスロットt=3において、位相シフトパターンs=4を設定し、ステップS207のパイロット信号を反射する。
【0115】
(S209)端末20Cが、ステップS208の反射されたパイロット信号を受信できた場合、そのパイロット信号の通信品質情報を基地局10(制御装置5)へ送信する。
【0116】
(S210)次に、基地局10は、タイムスロットt=4において、パイロット信号を送信する。
【0117】
(S211)反射板15は、タイムスロットt=4において、位相シフトパターンs=1を設定し、ステップS210のパイロット信号を反射する。
【0118】
(S212)端末20Aは、ステップS211の反射されたパイロット信号を受信できた場合、そのパイロット信号の通信品質情報を基地局10(制御装置5)へ送信する。
【0119】
(S213)次に、基地局10は、タイムスロットt=5において、パイロット信号を送信する。
【0120】
(S214)反射板15は、タイムスロットt=5において、位相シフトパターンs=3を設定し、ステップS213のパイロット信号を反射する。
【0121】
(S215)端末20Bは、ステップS214の反射されたパイロット信号を受信できた場合、そのパイロット信号の通信品質情報を基地局10(制御装置5)へ送信する。
【0122】
以上の処理により、制御装置5は、タイムスロットt=1、t=4において端末20Aから通信品質情報を受信できたので、タイムスロットt=1、t=4において基地局10は端末20Aと無線通信を行うことができると判断する。同様に、制御装置5は、タイムスロットt=2、t=5において基地局10は端末20Bと無線通信を行うことができると判断し、タイムスロットt=3において基地局10は端末20Cと無線通信を行うことができると判断する。
【0123】
制御装置5は、各タイムスロットにおけるパイロット信号の送信と通信品質情報の受信結果とに基づいて、無線リンクテーブルを生成する。次に、無線リンクテーブルについて説明する。
【0124】
図12は、実施の形態2に係る無線リンクテーブルの構成例を示す。
【0125】
制御装置5は、上述した1回目の周期での動作に基づき、
図12に示すような、タイムスロットt=1、t=4のときに、基地局10と端末20Aとが無線通信可能であり、タイムスロットt=2、t=5のときに、基地局10と端末20Bとが無線通信可能であり、タイムスロットt=3のときに、基地局10と端末20Cとが無線通信可能であることを示す無線リンクテーブルを作成し、所定のメモリ1002(
図24参照)に記憶する。
【0126】
制御装置5は、無線リンクテーブルを参照して、基地局10における2回目以降の無線リソース割当スケジュールを作成する(S220)。例えば、基地局10は、タイムスロットt=1、t=4に対応する無線リソースに、端末20Aとの無線通信を割り当て、タイムスロットt=2、t=5に対応する無線リソースに、端末20Bとの無線通信を割り当て、タイムスロットt=3に対応する無線リソースに、端末20Cとの無線通信を割り当てた、無線リソース割当スケジュールを作成する。
【0127】
次に、
図11に戻り、2回目の周期での動作を説明する。
【0128】
基地局10は、制御装置5によってステップS220で作成された無線リソース割当スケジュールに基づいて、次の動作を行う。
【0129】
(S221)基地局10は、タイムスロットt=1において、端末20A向けの無線信号を送信する。
【0130】
(S222)反射板15は、タイムスロットt=1において、位相シフトパターンs=1を設定し、ステップS221の無線信号を反射する。端末20Aは、ステップS222の反射された無線信号を受信する。なお、端末20Aは、このタイムスロットt=1に対応する無線リソースにて、基地局10に無線信号を送信してもよい。
【0131】
(S223)基地局10は、タイムスロットt=2において、端末20B向けの無線信号を送信する。
【0132】
(S224)反射板15は、タイムスロットt=2において、位相シフトパターンs=3を設定し、ステップS223の無線信号を反射する。端末20Bは、ステップS224の反射された無線信号を受信する。なお、端末20Bは、このタイムスロットt=2に対応する無線リソースにて、基地局10に無線信号を送信してもよい。
【0133】
(S225)基地局10は、タイムスロットt=3において、端末20C向けの無線信号を送信する。
【0134】
(S226)反射板15は、タイムスロットt=3において、位相シフトパターンs=4を設定し、ステップS225の無線信号を反射する。端末20Cは、ステップS226の反射された無線信号を受信する。なお、端末20Cは、このタイムスロットt=3に対応する無線リソースにて、基地局10に無線信号を送信してもよい。
【0135】
(S227)基地局10は、タイムスロットt=4において、端末20A向けの無線信号を送信する。
【0136】
(S228)反射板15は、タイムスロットt=4において、位相シフトパターンs=1を設定し、ステップS227の無線信号を反射する。端末20Aは、ステップS228の反射された無線信号を受信する。なお、端末20Aは、このタイムスロットt=4に対応する無線リソースにて、基地局10に無線信号を送信してもよい。
【0137】
(S229)基地局10は、タイムスロットt=5において、端末20B向けの無線信号を送信する。
【0138】
(S230)反射板15は、タイムスロットt=5において、位相シフトパターンs=3を設定し、ステップS229の無線信号を反射する。端末20Bは、ステップS230の反射された無線信号を受信する。なお、端末20Bは、このタイムスロットt=5に対応する無線リソースにて、基地局10に無線信号を送信してもよい。
【0139】
基地局10、反射板15、及び、端末20A、20B、20Cは、3回目以降の周期でも上述した2回目の周期と同様の動作を行ってよい。
【0140】
上述した処理によれば、反射板15が、使用されていない位相シフトパターンを削除し、使用されている位相シフトパターンのみを用いて生成した変更後の位相シフトスケジュールに基づいて動作する。制御装置5は、基地局10がパイロット信号を送信する1回目の周期(S201~S215)では、いずれのタイムスロットでも端末20から通信品質情報を受信することとなり、その結果、いずれのタイムスロットにも時間リソースを割り当てる無線リソース割当スケジュールを作成することとなる。よって、基地局10が無線信号を送信する2回目以降の周期(S221~S230)において、実施の形態1と比較して、無線リソースの利用効率が向上する。
【0141】
図13は、実施の形態2に係る反射板15による位相シフトスケジュールの変更方法を説明するための図である。
【0142】
なお、
図13では、パイロット信号が送信される周期(1回目の周期)を周期Pと表現し、無線リソースが割り当てられてデータ通信が行われる周期(2回目以降の周期)を周期Dと表現している。また、1つの周期Pと、それに続く次回の周期Pまでの周期Dとのセットを、PDセットと称する。
【0143】
次に、
図13を参照しながら、反射板15による位相シフトスケジュールの変更方法について説明する。
【0144】
(S301)反射板15は、受信電力計測器16を用いて、複数のPDセットに含まれる、位相シフトパターンごとの受信電力(例えばRSS)の平均を算出する。例えば、反射板15は、複数のPDセットに含まれる、複数の位相シフトパターンs=1の受信電力の平均と、複数の位相シフトパターンs=2の受信電力の平均と、複数の位相シフトパターンs=3の受信電力の平均と、複数の位相シフトパターンs=4の受信電力の平均と、複数の位相シフトパターンs=5の受信電力の平均とを算出する。そして、反射板15は、その算出結果から、位相シフトパターンのうち、使用されてない位相シフトパターンを特定する。例えば、反射板15は、位相シフトパターンs=2のときの受信電力の平均と、位相シフトパターンs=5のときの受信電力の平均とが、所定の閾値よりも小さい場合、位相シフトパターンs=2、s=5は、使用されていないと判定する。この閾値は、例えば、各位相シフトパターンのときの受信電力の最大値と最小値との平均値であってよい。周期Pのときはいずれの位相シフトパターンでもパイロット信号により受信電力は検出されるものの、周期Dのときは使用されていない位相シフトパターンではほとんど受信電力は検出されないため、上述したように、位相シフトパターンごとに受信電力の平均値を算出することにより、使用されていない位相シフトパターンの受信電力の平均値は閾値よりも小さくなる。よって、上記の処理により、反射板15は、使用されていない位相シフトパターンを認識できる。
【0145】
(S302)反射板15は、使用されていない位相シフトパターンを削除し、使用されている位相シフトパターンのみを使用して、変更後の位相シフトスケジュールを生成する。
【0146】
(S303)反射板15は、変更後の位相シフトスケジュールに基づき、1周期の各タイムスロットに対して、位相シフトパターンを設定する。これにより、1周期の各タイムスロットには、使用されている位相シフトパターンが設定される。
【0147】
(S304)反射板15は、定期的に、変更後の位相シフトスケジュールを、初期(デフォルト)の位相シフトスケジュールに戻し、上述したように使用されてない位相シフトパターンの検出処理を行ってよい。これにより、反射板15は、位相シフトスケジュールを、端末20の存在状況、及び、位置変化等に適応するように更新できる。
【0148】
(実施の形態3)
実施の形態3では、電波(無線信号)と反射板15とを用いて、端末20の位置を測定(推定)する方法について説明する。
【0149】
<通信システムの構成>
図14は、実施の形態3に係る通信システム1の構成例を示す図である。
【0150】
通信システム1は、制御装置5と、基地局10と、反射板15と、端末20(20A,20B,20C)とを含む。通信システム1に含まれる制御装置5、基地局10、反射板15、及び、端末20の数は、幾つであってもよい。
【0151】
反射板15は、基地局10からの電波を受信可能な屋内の所定の位置(例えば屋内の壁)に設置される。端末20は、屋内のエリアにおいて、その反射板15によって反射された電波を受信可能な位置に存在する。なお、エリアは屋内に限られず、屋外であってもよい。
【0152】
反射板15における位相シフトパターンの切り替えタイミング、及び、1周期で使用される位相シフトパターン数などの情報は、通信システム1の制御装置5、基地局10、及び、端末20の間で共有及び同期されてよい。
【0153】
端末20は、エリア内に存在し、基地局10が送信し、屋内に設置された反射板15によって反射された電波を受信できる。端末20は、反射板15が設定した位相シフトパターンごとに、RSSを定期的に測定し、その測定したRSSを含む通信品質情報を、基地局10を通じて制御装置5へ通知する。
【0154】
制御装置5は、機能として、無線リソース割当部101、フィンガープリントデータベース(DB)102、及び、マッチング判定部103を備える。
【0155】
無線リソース割当部101は、端末20(20A、20B、20C)からの通信品質情報に基づき、実施の形態2で説明した方法にて、端末20(20A,20B,20C)への無線リソース割当スケジュールを最適化する。
【0156】
フィンガープリントDB102は、フィンガープリント法によって端末20の位置を測定するために用いられる。なお、フィンガープリントDB102の詳細については後述する。
【0157】
マッチング判定部103は、フィンガープリントDB102から、端末20から受信した測定RSSデータとマッチングするフィンガープリントデータを特定し、エリアにおける端末20の位置を測定する。
【0158】
<フィンガープリントDB>
例えば、
図14に示すように、屋内における、端末20が存在する可能性のある10m×10m四方のエリアを、1m四方のグリッドで分割し、各グリッドの中心をリファレンスポイントとする。この場合、リファレンスポイントの数は100個となる。
【0159】
各リファレンスポイントにおいて、位相シフトパターン毎のRSS(受信強度)を事前に測定しておき、これをフィンガープリントDB102とする。なお、フィンガープリントDB102において、1つのリファレンスポイントに対する、各位相シフトパターンでの測定RSSのセットを、フィンガープリントデータと称する。これにより、後述する
図18の初期のフィンガープリントDBに示すように、各リファレンスポイントrに対して、各位相シフトパターンs=1~5の測定RSS(つまりフィンガープリントデータ)が対応付けられた、フィンガープリントDB102が作成される。なお、
図14では、説明をわかり易くするために、水平方向の位相シフトパターンの切り替えのみを描いているが、垂直方向の位相シフトパターンの切り替えも含まれてよい。
【0160】
次に、フィンガープリントDB102を用いて端末20の位置を測定する方法について説明する。
【0161】
例えば、
図14に示すエリア内の位置に存在する端末20Bが、位相シフトパターンs=1,2,3,4,5に対応するRSSを、それぞれ、0、3、10、5、0と測定したとする。この場合、測定RSSデータは、0,3,10,5,0のセットとなる。制御装置5は、この測定RSSデータを、フィンガープリントDB102内の各フィンガープリントデータと比較し、測定RSSデータに最も近い(例えばコサイン類似度が最大となる)フィンガープリントデータに対応するリファレンスポイントrを、端末20の位置と測定する。なお、測定RSSデータは、無線環境情報と読み替えられてもよい。また、本実施の形態では、無線環境情報として電波の受信強度を使用して端末20の位置を測定する例を説明するが、受信強度に代えて、又は、受信強度と共に、強度伝搬遅延時間、及び/又は、伝搬チャネル情報などを使用して、端末20の位置を測定してもよい。
【0162】
<量子コンピュータを用いてフィンガープリントDBによる端末の測位を行う方法>
無線リソース割当部101が行う無線リソース割当スケジュールの最適化、及び、マッチング判定部103が行うフィンガープリントDB102とのマッチング処理は、量子コンピュータ30を用いて高速かつ省電力で実現することもできる。ただし、以下で説明するマッチング処理は、量子コンピュータ30を用いずに、古典コンピュータを用いて実現することもできる。
【0163】
図15は、実施の形態3に係る量子コンピュータ30を用いてフィンガープリントDB102による端末20の測位を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0164】
(S401)マッチング判定部103は、フィンガープリントDB102に含まれる複数のリファレンスポイントの数だけ、ステップS401~S403をループする。なお、マッチング判定部103は、各ループにおいて、未選択のリファレンスポイントを1つ選択する。当該ループ内の説明において、選択されたリファレンスポイントを、選択リファレンスポイントと称する。
【0165】
(S402)マッチング判定部103は、量子コンピュータ30を用いて、量子アルゴリズム「SWAPテスト」により、測定RSSデータと、選択リファレンスポイントに対応するフィンガープリントデータとのコサイン類似度を計算する。なお、この計算方法の詳細については後述する。
【0166】
(S403)マッチング判定部103は、フィンガープリントDB102に含まれるすべてのリファレンスポイントが選択されるまで、ステップS401~S403をループし、すべてのリファレンスポイントが選択された後、処理を次のステップS404に進める。なお、マッチング判定部103は、量子重ね合わせ状態にある補助量子ビットを用い、全てのリファレンスポイントに対応するフィンガープリントデータを重ね合わせに表現することで、1度のSWAPテストにより、全てのリファレンスポイントに対応するフィンガープリントデータとのコサイン類似度を計算してもよい。
【0167】
(S404)マッチング判定部103は、量子コンピュータ30を用いて、量子アルゴリズム「Grover Adaptive Search」により、S401~S403のループで算出された複数のコサイン類似度のうち、コサイン類似度が最も高いリファレンスポイントを選択する。そして、制御装置5は、その選択されたリファレンスポイントを、端末の位置とする。
【0168】
次に、
図16を参照して、
図15のステップS402で行う量子アルゴリズム「SWAPテスト」について説明する。
【0169】
図16は、実施の形態3に係る、1量子ビットつまり要素数が2のベクトル|a〉と|b〉の内積を計算するSWAPテスト回路を示す。
【0170】
アンシラビット(一番上の量子ビット)を測定したときに結果が|0〉である確率は、次の式4の通りである。
【0171】
【0172】
アンシラビットをK回測定し、結果が|0〉あった回数を#|0〉とすると、次の式5は、|a〉と|b〉が同じ場合は1、異なる場合は0に近い値となる(同じ場合はp0=
(#|0〉)/K=1、異なる場合は0.5となる)。
【0173】
【0174】
n個の要素を持つ古典ベクトルは、q=log2nビットの量子ビットで表現できるため、ベクトルのサイズnが大きいほど、量子計算による指数的な計算量の削減効果を大きく得ることができる。
【0175】
<課題>
図17は、フィンガープリントDBと測定RSSデータとを直接的に比較することができないことを説明するための図である。
【0176】
図17に示すように、初期の位相シフトスケジュールでフィンガープリントDB102を作成し、実施の形態2のように位相シフトスケジュールを変更した場合、フィンガープリントDB102と変更後の位相シフトスケジュールにて測定した測定RSSデータとは、タイムスロット列に対する位相シフトパターンの並びが異なるため、直接的に比較することができない。そこで、実施の形態3では、実施の形態2のように位相シフトスケジュールを変更した場合であっても、フィンガープリントDB102を用いて端末20を測位することができる測位方法について説明する。
【0177】
なお、実施の形態2で説明したように、反射板15は、位相シフトスケジュールを自律的に変更するが、この変更は、制御装置5による無線リソース割当スケジュールに基づいて行われる。したがって、無線リソース割当スケジュールを生成する制御装置5は、反射板15がどのように位相シフトスケジュールを変更したのかを推測することができる。
【0178】
<測位方法1>
図18は、実施の形態3に係る測位方法1を説明するための図である。
【0179】
測位方法1では、制御装置5は、反射板15が変更した位相シフトスケジュールを推測し、その変更後の位相シフトスケジュールに合わせて、フィンガープリントDB102を並べ替える。以下、具体例を説明する。
【0180】
例えば、制御装置5は、測定RSSデータに基づいて、変更後の位相シフトスケジュールにおけるタイムスロットt=1,2,3,4,5の位相シフトパターンがそれぞれs=1,3,4,1,3であると推測した場合、次の処理を行う。
【0181】
すなわち、制御装置5は、初期のフィンガープリントDB102の位相シフトパターンs=1のリファレンスポイント列r=1~100を、変更後のフィンガープリントDBのタイムスロットt=1,4のリファレンスポイント列とし、初期のフィンガープリントDB102の位相シフトパターンs=3のリファレンスポイント列r=1~100を、変更後のフィンガープリントDBのタイムスロットt=2,5のリファレンスポイント列とし、初期のフィンガープリントDB102の位相シフトパターンs=4のリファレンスポイント列r=1~100を、変更後のフィンガープリントDBのタイムスロットt=3のリファレンスポイント列とする。そして、制御装置5は、上述した方法により、変更後のフィンガープリントDBから、測定RSSデータに対応するリファレンスポイントrを特定することにより、端末20の位置を測定する。
【0182】
<測位方法2>
図19は、実施の形態3に係る測位方法2を説明するための図である。
【0183】
測位方法2では、制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールのときの測定RSSデータと、変更後の位相シフトスケジュールのときの測定RSSデータとに基づいて、フィンガープリントDB102との照合に用いる測定RSSデータ(以下、照合用測定RSSデータと称する)を生成する。なお、照合用測定RSSデータは、照合用無線環境情報と読み替えられてもよい。例えば、制御装置5は、以下のステップS501~S504の処理を行う。
【0184】
(S501)制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールのときの測定RSSデータを、所定のメモリ1002(
図24参照)に保存する。
【0185】
(S502)制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールのときの測定RSSデータ及び変更後の位相シフトスケジュールのときの測定RSSデータにおいて、位相シフトパターンが共通の測定RSSが複数存在する場合、それらの測定RSSの平均値を算出し、その平均値を、照合用測定RSSデータのその位相シフトパターンの測定RSSとする。例えば、制御装置5は、
図19に示すように、次の(1)、(2)及び(3)の処理を行う。
【0186】
(1)制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=1のときに位相シフトパターンs=1にて測定された測定RSSと、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=1のときに位相シフトパターンs=1にて測定された測定RSSと、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=4のときに位相シフトパターンs=1にて測定された測定RSSとの平均値を算出する。そして、制御装置5は、その平均値を、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=1の測定RSSとする。
【0187】
(2)制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=3のときに位相シフトパターンs=3にて測定された測定RSSと、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=2のときに位相シフトパターンs=3にて測定された測定RSSと、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=5のときに位相シフトパターンs=3にて測定された測定RSSとの平均値を算出する。そして、制御装置5は、その平均値を、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=3の測定RSSとする。
【0188】
(3)制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=4のときに位相シフトパターンs=4にて測定された測定RSSと、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=3のときに位相シフトパターンs=4にて測定された測定RSSとの平均値を算出する。そして、制御装置5は、その平均値を、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=4の測定RSSとする。
【0189】
(S503)制御装置5は、変更後の位相シフトスケジュールでは変更前の位相シフトスケジュールから削除されている位相シフトパターンのときの測定RSSについては、ステップS501で保存した測定RSSデータから、変更前の位相シフトスケジュールのときに同じ位相シフトパターンで測定された測定RSSを取得し、照合用測定RSSデータのその位相シフトパターンの測定RSSとする。例えば、制御装置5は、
図19に示すように、次の(1)及び(2)の処理を行う。
【0190】
(1)制御装置5は、位相シフトパターンs=2については、変更後の位相シフトスケジュールから削除されているので、ステップS501で保存した測定RSSデータから、位相シフトパターンs=2のときの測定RSSを取得(コピー)し、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=2の測定RSSとする。
【0191】
(2)制御装置5は、位相シフトパターンs=5については、変更後の位相シフトスケジュールから削除されているので、ステップS501で保存した測定RSSデータから、位相シフトパターンs=5のときの測定RSSを取得(コピー)し、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=5の測定RSSとする。
【0192】
(S504)制御装置5は、上述した方法により、フィンガープリントDB102から、照合用測定RSSデータに対応するリファレンスポイントrを特定することにより、端末20の位置を測定する。
【0193】
すなわち、制御装置5は、無線環境情報(測定RSSデータ)が位相シフトパターンの置き換え後(変更後の位相シフトスケジュールのとき)のものである場合、位相シフトパターンが置き換え前(変更前の位相シフトスケジュールのとき)の無線環境情報と置き換え後(変更前の位相シフトスケジュールのとき)の無線環境情報とにおいて、重複する位相シフトパターンの受信強度(測定RSS)を平均化し、置き換え後の無線環境情報に存在しない位相シフトパターンの受信強度を置き換え前の無線環境情報の同じ位相シフトパターンの受信強度として、照合用無線環境情報(照合用測定RSSデータ)を生成し、照合用無線環境情報を、フィンガープリントDB102と照合することにより、エリアにおける端末20の位置を推定する。
【0194】
<測位方法3>
図20は、実施の形態3に係る測位方法3を説明するための図である。
【0195】
測位方法3では、制御装置5は、位相シフトスケジュール変更後の測定RSSデータに基づいて、フィンガープリントDB102との照合用測定RSSデータを生成する。例えば、制御装置5は、以下のステップS601~S603の処理を行う。
【0196】
(S601)制御装置5は、変更後の位相シフトスケジュールのときの測定RSSデータにおいて、共通する位相シフトパターンのときの測定RSSが1又は複数存在する場合、それらの測定RSSの平均値を算出し、その平均値を、照合用測定RSSデータのその位相シフトパターンの測定RSSとする。例えば、制御装置5は、
図20に示すように、次の(1)、(2)及び(3)の処理を行う。
【0197】
(1)制御装置5は、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=1のときに位相シフトパターンs=1にて測定された測定RSSと、タイムスロットt=4のときに位相シフトパターンs=1にて測定された測定RSSとの平均値を算出する。そして、制御装置5は、その平均値を、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=1の測定RSSとする。
【0198】
(2)制御装置5は、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=2のときに位相シフトパターンs=3にて測定された測定RSSと、タイムスロットt=5のときに位相シフトパターンs=3にて測定された測定RSSとの平均値を算出する。そして、制御装置5は、その平均値を、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=3の測定RSSとする。
【0199】
(3)制御装置5は、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=3のときに位相シフトパターンs=4にて測定された測定RSSの平均値を算出する。なお、この場合の平均値は、タイムスロットt=3のときに位相シフトパターンs=4にて測定された測定RSSと同じとなる。そして、制御装置5は、その平均値を、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=4の測定RSSとする。
【0200】
(S602)制御装置5は、変更後の位相シフトスケジュールでは変更前の位相シフトスケジュールから削除されている位相シフトパターンのときの測定RSSについては0とし、照合用測定RSSデータのその位相シフトパターンの測定RSSとする。例えば、制御装置5は、
図20に示すように、次の(1)及び(2)の処理を行う。
【0201】
(1)制御装置5は、位相シフトパターンs=2については、変更後の位相シフトスケジュールから削除されているので、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=2の測定RSSを0とする。
【0202】
(2)制御装置5は、位相シフトパターンs=5については、変更後の位相シフトスケジュールから削除されているので、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=5の測定RSSを0とする。
【0203】
(S603)制御装置5は、フィンガープリントDB102から、照合用測定RSSデータに対応するリファレンスポイントrを特定することにより、端末20の位置を測定する。
【0204】
すなわち、制御装置5は、位相シフトパターンが置き換え後(変更後の位相シフトスケジュールのとき)の無線環境情報(測定RSSデータ)において、重複する位相シフトパターンの受信強度(測定RSS)を平均化し、存在しない位相シフトパターンの受信強度を0として、照合用無線環境情報((照合用測定RSSデータ))を生成し、照合用無線環境情報を、フィンガープリントDB102と照合することにより、エリアにおける端末20の位置を推定する。
【0205】
<測位方法4>
図21は、実施の形態3に係る測位方法4を説明するための図である。
【0206】
測位方法4では、制御装置5は、位相シフトスケジュール変更前の測定RSSデータと、位相シフトスケジュール変更後の測定RSSデータとに基づいて、フィンガープリントDB102との照合に用いる照合用測定RSSデータを生成する。測位方法4は、照合用測定RSSデータを生成する際に重み付けを行う点で、測位方法3と異なる。例えば、制御装置5は、以下のステップS701~S704の処理を行う。
【0207】
(S701)制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールのときの測定RSSデータを所定のメモリ1002(
図24参照)に保存する。
【0208】
(S702)制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールのときの測定RSSデータ及び変更後の位相シフトスケジュールのときの測定RSSデータにおいて、位相シフトパターンが共通の測定RSSが複数存在する場合、それらの測定RSSの平均値を算出する。そして、制御装置5は、その平均値に対して、その平均値の算出に用いた測定RSSの数に基づく重み付けを行い、照合用測定RSSデータのその位相シフトパターンの測定RSSとする。例えば、制御装置5は、
図21に示すように、次の(1)、(2)及び(3)の処理を行う。
【0209】
(1)制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=1のときに位相シフトパターンs=1にて測定された測定RSSと、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=1のときに位相シフトパターンs=1にて測定された測定RSSと、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=4のときに位相シフトパターンs=1にて測定された測定RSSとの平均値を算出する。そして、制御装置5は、平均値の算出に用いた測定RSSの数が「3」であるので、その平均値に対して重み付け係数「3」を乗算し、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=1の測定RSSとする。
【0210】
(2)制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=3のときに位相シフトパターンs=3にて測定された測定RSSと、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=2のときに位相シフトパターンs=3にて測定された測定RSSと、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=5のときに位相シフトパターンs=3にて測定された測定RSSとの平均値を算出する。そして、制御装置5は、平均値の算出に用いた測定RSSの数が「3」であるので、その平均値に対して重み付け係数「3」を乗算し、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=3の測定RSSとする。
【0211】
(3)制御装置5は、変更前の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=4のときに位相シフトパターンs=4にて測定された測定RSSと、変更後の位相シフトスケジュールにおいて、タイムスロットt=3のときに位相シフトパターンs=4にて測定された測定RSSとの平均値を算出する。そして、制御装置5は、平均値の算出に用いた測定RSSの数が「2」であるので、その平均値に対して重み付け係数「2」を乗算し、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=4の測定RSSとする。
【0212】
(S703)制御装置5は、変更後の位相シフトスケジュールでは変更前の位相シフトスケジュールから削除されている位相シフトパターンのときの測定RSSについては、ステップS701で保存した測定RSSデータから、変更前の位相シフトスケジュールのときに同じ位相シフトパターンで測定された測定RSSを取得(コピー)し、照合用測定RSSデータのその位相シフトパターンの測定RSSとする。例えば、制御装置5は、
図21に示すように、次の(1)及び(2)の処理を行う。
【0213】
(1)制御装置5は、位相シフトパターンs=2については、変更後の位相シフトスケジュールから削除されているので、ステップS701で保存した測定RSSデータから、位相シフトパターンs=2のときの測定RSSを取得(コピー)し、その測定RSSに対して重み付け係数「1」を乗算し、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=2の測定RSSとする。
【0214】
(2)制御装置5は、位相シフトパターンs=5については、変更後の位相シフトスケジュールから削除されているので、ステップS701で保存した測定RSSデータから、位相シフトパターンs=5のときの測定RSSを取得(コピー)し、その測定RSSに対して重み付け係数「1」を乗算し、照合用測定RSSデータの位相シフトパターンs=5の測定RSSとする。
【0215】
(S704)制御装置5は、フィンガープリントDB102から、照合用測定RSSデータに対応するリファレンスポイントrを特定することにより、端末20の位置を測定する。
【0216】
すなわち、制御装置5は、測位方法2の処理において、重複する位相シフトパターンの受信強度(測定RSS)を平均化した値に、当該重複数に基づく重み付けを行い、照合用環境情報(照合用測定RSSデータ)を生成する。このように重み付けを行うことにより、照合用測定RSSデータにおいて、測定頻度が相対的に低い位相シフトパターンの受信強度を相対的に小さくし、測定頻度が相対的に高い位相シフトパターンの受信強度を相対的に大きくすることができる。
【0217】
<フローチャート>
図22は、実施の形態3に係る制御装置5が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【0218】
(S801)制御装置5は、すべてのリファレンスポイントにおける、すべての位相シフトパターンでのRSSを測定し、フィンガープリントDB102を生成する。
【0219】
(S802)制御装置5は、端末20から、1周期分の各タイムスロットでの測定RSSを受信し、測定RSSデータを生成する。
【0220】
(S803)制御装置5は、ステップS802における測定RSSの測定が、変更後の位相シフトスケジュールにて行われたものであるか否かを判定する。
【0221】
(S803:NO)ステップS802における測定RSSの測定が、変更前の位相シフトスケジュールにて行われたものである場合、制御装置5は、処理をステップS804に進める。
【0222】
(S804)制御装置5は、フィンガープリントDB102から、ステップS802で生成した測定RSSデータに対応するリファレンスポイントrを特定し、端末20の位置を測定する。そして、本処理は終了する。
【0223】
(S803:YES)ステップS802におけるRSSの測定が、変更後の位相シフトスケジュールにて行われたものである場合、制御装置5は、処理をステップS805に進める。
【0224】
(S805)制御装置5は、上述した測位方法1~4のいずれかの方法で端末20の位置を測定する。そして、本処理は終了する。
【0225】
なお、制御装置5は、ステップS802~S805の処理を繰り返し行ってよい。
【0226】
以上の処理により、制御装置5は、RSSの測定が変更前の位相シフトスケジュールで行われたものか、変更後の位相シフトスケジュールで行われたものかに応じて、フィンガープリントDB102との照合方法を切り替えることができる。
【0227】
図23は、実施の形態3に係る測位方法1~測位方法4の測位誤差を比較したグラフである。
図23に示すグラフは、横軸がSNR[dB]を示し、縦軸が測位誤差の大きさを示す。
【0228】
このグラフから、測位方法3,4がSNRの大小に関わらず、比較的測位誤差が小さいことがわかる。
【0229】
また、測位方法3,4は、位相シフトスケジュールを変更せずに測位した場合と比較しても、測位誤差が小さいことがわかる。すなわち、実施の形態2のように位相シフトスケジュールを変更することで、測位方法3,4を使用することにより、測位誤差を低減させることができる。
【0230】
また、測位方法2,4は、位相シフトスケジュールの変更前と変更後との間において端末20の移動が大きい場合、測位誤差が大きくなりやすい。したがって、位相シフトスケジュールの変更前と変更後との間において端末20が移動する可能性を考慮すると、測位方法3が、他の測位方法1,2,4と比較して、好適であると考えられる。
【0231】
(ハードウェア構成)
上述した制御装置5の機能ブロックは、コンピュータプログラムにより実現され得る。
【0232】
図24は、制御装置5の機能ブロックをコンピュータプログラムにより実現するコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【0233】
コンピュータ1000は、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、入力装置1004、出力装置1005、通信装置1006、GPU(Graphics Processing Unit)1007、読取装置1008、及び、バス1009を備える。
【0234】
プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、入力装置1004、出力装置1005、通信装置1006、GPU1007、及び、読取装置1008は、バス1009に接続され、バス1009を介して双方向にデータを送受信できる。
【0235】
プロセッサ1001は、メモリ1002に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、上述した機能ブロックを実現する装置である。プロセッサ1001の例として、Central Processing Unit(CPU)、Micro Processing Unit(MPU)、コントローラ、Large Scale Integration(LSI)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、Programmable Logic Device(PLD)、Field-Programmable Gate Array(FPGA)が挙げられる。
【0236】
メモリ1002は、コンピュータ1000が取り扱うコンピュータプログラム及びデータを記憶する装置である。メモリ1002は、Read-Only Memory(ROM)及びRandom Access Memory(RAM)を含んでよい。
【0237】
ストレージ1003は、不揮発性記憶媒体で構成され、コンピュータ1000が取り扱うコンピュータプログラム及びデータを記憶する装置である。ストレージ1003の例として、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)が挙げられる。
【0238】
入力装置1004は、プロセッサ1001に入力するデータを受け付ける装置である。入力装置1004の例として、キーボード、マウス、タッチパッド、マイクが挙げられる。
【0239】
出力装置1005は、プロセッサ1001が生成したデータを出力する装置である。出力装置1005の例として、ディスプレイ、スピーカーが挙げられる。
【0240】
通信装置1006は、サーバ装置に代表される他の装置と、通信ネットワークを介して、データを送受信する装置である。通信装置1006は、データを送信する送信部とデータを受信する受信部を含んでよい。通信装置1006は、有線通信及び無線通信の何れに対応してもよい。有線通信の例として、Ethernet(登録商標)が挙げられる。無線通信の例として、IEEE802.11、Bluetooth、LTE、4G、5G、6Gが挙げられる。
【0241】
GPU1007は、画像描写を高速に処理する装置である。なお、GPU1007は、AI(artificial intelligence)の処理(例えばディープラーニング)に利用されてもよい。また、GPU1007は、前述した量子コンピュータによる処理をシミュレートするために利用されてもよい。
【0242】
読取装置1008は、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)又はUSB(Universal Serial Bus)メモリといった記録媒体からデータを読み取る装置である。
【0243】
なお、制御装置5の機能ブロックは、集積回路であるLSIとして実現されてもよい。これらの機能ブロックは、個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。
【0244】
(実施の形態1,2,3のまとめ)
以上の実施の形態1,2,3の記載により、下記の技術が開示される。
【0245】
<技術1>
通信システム1は、電波を用いて少なくとも1つの端末20と無線通信を行う基地局10と、複数の反射素子を備え、各反射素子での電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板15と、基地局10と各端末20との間の無線通信に係る無線リソースの割り当てを制御する制御装置5とを備える。反射板15は、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に位相シフトパターンを切り替える。制御装置5は、複数のタイムスロット毎に、反射板15を経由する電波を用いて無線通信が可能な基地局10と端末20とを対応付けた無線リンク情報(例えば無線リンクテーブル)を記憶し、無線リンク情報に基づいて、各タイムスロットにおける無線リソースの割り当てを決定する。
これにより、制御装置5は、無線リンク情報を参照することにより、基地局10が反射板15を利用して端末20と無線通信可能となるような無線リソースの割り当てを行うことができる。したがって、反射板15における位相シフト設計のためのチャネル推定処理が不要となる。さらに、無線リソースの割り当てを各事業者がそれぞれ実施することで、事業者間での連携制御を行うことなく、複数の事業者が反射板を共用することができる。
【0246】
<技術2>
技術1に記載の通信システム1において、制御装置5は、1つのタイムスロットにて1つの基地局10が複数の端末20と無線通信を行う場合、無線リソースの割り当てにおいて、当該複数の端末20のそれぞれに対して異なる周波数リソースを割り当てることを決定する。
これにより、基地局10は、1つのタイムスロットにて複数の端末20と無線通信を行うことができる。
【0247】
<技術3>
技術1又は2に記載の通信システム1において、制御装置5は、1周期の各タイムスロットにおける端末20の電波の受信品質を含む通信品質情報(例えば測定RSS)に基づいて、各タイムスロットにおいて基地局10が反射板15を経由して無線通信可能な端末20を特定し、各タイムスロットにおける基地局10とその特定した端末20とを対応付けた無線リンク情報(例えば無線リンクテーブル)を生成する。
これにより、制御装置5は、無線リンク情報を参照することにより、各タイムスロットにおいて基地局10が反射板15を利用して無線通信可能な端末20を特定できる。
【0248】
<技術4>
技術1から3のいずれか1つに記載の通信システム1において、制御装置5は、基地局10から提供される、1つのサブキャリア及び1つのタイムスロット当たりの通信量を算出し、基地局10と無線通信可能な複数の端末20のそれぞれが要求する通信量に基づいて、当該複数の端末20の全体が要求する通信量を満たし、かつ、タイムスロット数が最小となるように、各タイムスロットにおける無線リソースの割り当てを決定する。
これにより、制御装置5は、無線リソースの利用効率を向上させることができる。
【0249】
<技術5>
技術1から4のいずれか1つに記載の通信システム1において、反射板15は、受信電力を測定する受信電力計測器16を備える。反射板15は、受信電力計測器16によって測定した受信電力に基づいて、位相シフトパターン毎の基地局10による無線通信の実行頻度を算出し、1周期の各タイムスロットの位相シフトパターンを、無線通信の実行頻度が所定の閾値以上である位相シフトパターンに変更する。
これにより、反射板15は、1周期の各タイムスロットの位相シフトパターンを、使用されている位相シフトパターンに変更することができ、通信システム1における無線リソースの利用効率が向上する。
【0250】
<技術6>
技術5に記載の通信システム1において、制御装置5は、反射板15を経由する電波が到達可能なエリアに含まれる複数の位置のそれぞれにおける、置き換え前の各位相シフトパターンのときの端末20による電波の受信強度に基づいて生成されるフィンガープリントデータベース102を予め記憶し、端末20による1周期の各タイムスロットでの電波の受信強度を含む無線環境情報(例えば測定RSSデータ)を、フィンガープリントデータベース102と照合することにより、エリアにおける端末20の位置を推定する。
これにより、制御装置5は、反射板15を経由した電波を用いて、エリアにおける端末20の位置を推定することができる。
【0251】
<技術7>
技術6に記載の通信システム1において、制御装置5は、位相シフトパターンが置き換え後の無線環境情報において、重複する位相シフトパターンの受信強度を平均化し、存在しない位相シフトパターンの受信強度を0として、照合用無線環境情報(例えば照合用測定RSSデータ)を生成し、照合用無線環境情報を、フィンガープリントデータベース102と照合することにより、エリアにおける端末20の位置を推定する。
これにより、位相シフトパターンが置き換え後の無線環境情報を、フィンガープリントデータベース102と照合することができるので、エリアにおける端末20の位置を推定できる。
【0252】
<技術8>
技術6に記載の通信システム1において、制御装置5は、無線環境情報が位相シフトパターンの置き換え後のものである場合、位相シフトパターンが置き換え前の無線環境情報と置き換え後の無線環境情報とにおいて、重複する位相シフトパターンの受信強度を平均化し、置き換え後の無線環境情報に存在しない位相シフトパターンの受信強度を置き換え前の無線環境情報の同じ位相シフトパターンの受信強度として、照合用無線環境情報を生成し、照合用無線環境情報を、フィンガープリントデータベース102と照合することにより、エリアにおける端末20の位置を推定する。
これにより、位相シフトパターンが置き換え後の無線環境情報を、フィンガープリントデータベース102と照合することができるので、エリアにおける端末20の位置を推定できる。
【0253】
<技術9>
技術8に記載の通信システム1において、制御装置5は、重複する位相シフトパターンの受信強度を平均化した値に、当該重複する数に基づく重み付けを行い、照合用環境情報を生成する。
これにより、位相シフトパターンが置き換え後の無線環境情報を、フィンガープリントデータベース102と照合することができるので、エリアにおける端末20の位置を推定できる。
【0254】
<技術10>
通信方法として、基地局10が、無線通信に係る電波を送信し、複数の反射素子を備え、各反射素子での前記電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板15が、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に前記位相シフトパターンを切り替え、少なくとも1つの端末20が、基地局10から送信され、反射板15にて反射された電波を受信可能であり、制御装置5が、複数のタイムスロット毎に、反射板15を経由する電波を用いて無線通信が可能な基地局10と端末20とを対応付けた無線リンク情報(例えば無線リンクテーブル)を記憶し、無線リンク情報に基づいて、各タイムスロットにおける、基地局10と各端末20との無線通信に係る無線リソースの割り当てを決定する。
これにより、制御装置5は、無線リンク情報を参照することにより、基地局10が反射板15を利用して端末20と無線通信可能となるような無線リソースの割り当てを行うことができる。したがって、反射板15における位相シフト設計のためのチャネル推定処理が不要となる。
【0255】
<技術11>
基地局10が、無線通信に係る電波を送信し、複数の反射素子を備え、各反射素子での電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板15が、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に位相シフトパターンを切り替え、少なくとも1つの端末20が、基地局10から送信され、反射板15にて反射された電波を受信可能である通信システム1において、基地局10と各端末20との間の無線通信に係る無線リソースの割り当てを制御する制御装置5は、複数のタイムスロット毎に、反射板15を経由する電波を用いて無線通信が可能な基地局10と端末20とを対応付けた無線リンク情報(例えば無線リンクテーブル)を記憶し、無線リンク情報に基づいて、各タイムスロットにおける無線リソースの割り当てを決定する。
これにより、制御装置5は、無線リンク情報を参照することにより、基地局10が反射板15を利用して端末20と無線通信可能となるような無線リソースの割り当てを行うことができる。したがって、反射板15における位相シフト設計のためのチャネル推定処理が不要となる。
【0256】
(実施の形態4)
図25は、5G規格におけるセルサーチの概要を説明するための図である。
【0257】
基地局10(gNB)は、時間でビームを切り替えながら(つまりビームをスイープしながら)、SSB(SS/PBCH block)を送信する。端末20(UE)は、初期状態(例えば電源ON時)に、SSBを受信することで、基地局(gNB、セル)の検出及び同期(つまりセルサーチ)を行う。なお、SSBは検出情報と読み替えられてもよい。
【0258】
図25に示すように、SSBは、PSS(Primary Synchronization Signal)、SSS(Secondary Synchronization Signal)、及び、PBCH(Physical Broadcast Channel)を含む。PSSは、DL(DownLink)信号同期、Call IDの一部の検出に用いられる。SSSは、DL信号同期、セルのPCI(Physical Cell ID)の検出に用いられる。PBCHは、MIB(Master Information Block:基本的なシステム情報)の伝送、SSB Index(ビームindex)の通知に用いられる。
【0259】
図26は、端末20が反射板15を経由してSSBを受信する場合の課題を説明するための図である。
【0260】
初期状態において端末20は反射板(SA-IRS)の存在を把握できないため、端末20は、基地局10から直接電波を受信するか、それとも反射板15を経由して電波を受信するかに関わらず、同じ手順でセルサーチを実行できることが求められる。
【0261】
図26に示すように、基地局10はビームスイープを行い、反射板15も、前述の実施の形態で説明したように、位相シフトパターンを切り替えて、ビームスイープを行う。この場合、基地局10のビームパターン数m(mは1以上の自然数)と、反射板の位相シフトパターン数n(nは1以上の自然数)との組み合わせのそれぞれに対してSSBを割り当てることが考えられる。例えば、
図26に示すように、基地局の1回目のビームスイープに含まれるビームパターン1~m(例えばm=64)に対して反射板15の位相シフトパターン1を割り当て、基地局10の2回目のビームスイープに含まれるビームパターン1~mに対して反射板15の位相シフトパターン2を割り当てることを、反射板15の位相シフトパターンnまで繰り返す。この場合、(m×n)個のSSBを送信することになる。さらに、これらのSSBのうち、基地局10から反射板15に向けて送信されたビームのSSBのみが、反射板15を経由して端末20に到達できる。つまり、基地局10からのビームが反射板15を向いたタイミングでのみ、反射板15を経由する端末20へSSBが到達する。よって、
図26に示す方法では、反射板15を経由してビームを受信する端末20がセルサーチを完了するまで、長い時間を要してしまうという課題がある。本実施の形態は、反射板15を経由してビームを受信する環境においても、基地局10から直接ビームを受信する場合とあまり変わらない時間で端末20がセルサーチを完了できる方法について説明する。
【0262】
図27は、実施の形態4に係る、反射板15を経由したセルサーチの実現方法を説明するための図である。
【0263】
実施の形態4に係る基地局10は、反射板15の方向へ向いている専用のビーム(以下、専用ビーム50と称する)を用意し、反射板15を経由する通信ではこの専用ビームを用いる。専用ビームは、時間で切り替えられずに(つまりスイープされずに)、反射板15の方向に固定される。基地局10は、専用ビーム以外のビーム(以下、通常ビーム51と称する)については、当該基地局10と直接通信可能な端末20のために、従来通りスイープを行う。
【0264】
反射板15は、基地局10のSSBの送信タイミングに合わせて位相シフトパターンを切り替える。反射板15の反射ビーム52とSSBとを対応付けることで、反射板15が基地局10の代わりとなる。
【0265】
基地局10は、反射板15へ向けた専用ビーム50でSSBを送信することにより、反射板15を経由する端末20も5Gに準拠したセルサーチが可能となる。このとき、端末20は、反射板15を経由してビームを受信したか否かを意識する必要はない。
【0266】
例えば、基地局10は、SSB1を含む通常ビーム51を送信するタイミングで、当該SSB1を含む専用ビーム50を送信し、反射板15は、基地局10による当該SSB1の送信タイミングに合わせて、当該SSB1に対応する位相シフトパターンで当該SSB1を含む専用ビーム50を反射する。次に、基地局10は、SSB2を含む通常ビーム51を送信するタイミングで、当該SSB2を含む専用ビーム50を送信し、反射板15は、基地局10による当該SSB2の送信タイミングに合わせて、当該SSB2に対応する位相シフトパターンで当該SSB2を含む専用ビーム50を反射する。これを繰り返すことにより、端末20は、反射板15を経由してビームを受信したか否かを意識することなく、SSBを受信してセルサーチを行うことができる。
【0267】
図28は、実施の形態4に係る、基地局10と反射板15と端末20との動作シーケンスの一例を示す図である。
【0268】
まず、セルサーチの動作の一例について説明する。基地局10は、通常ビーム51をスイープしながらSSBを送信する。このとき、基地局10は、当該通常ビーム51で送信するSSBに相当するSSBを含む、反射板15の方向に向いている専用ビーム50を合わせて送信する。反射板15は、当該専用ビーム50を反射ビーム52としてスイープしながら送信する。基地局10と直接通信できる端末20Fは、基地局10から直接送信される通常ビーム51でSSBを受信する。基地局10と反射板15を経由して通信できる端末20Gは、反射板15からの反射ビーム52でSSBを受信する。これにより、基地局10から直接ビームを受信できる端末20Fも、基地局10から反射板15を経由してビームを受信できる端末20Gも、同じようにSSBを受信して基地局10を検出する(つまりセルサーチを行う)ことができる。
【0269】
次に、ランダムアクセスの動作について説明する。基地局10と直接通信できる端末20Fは、SSBを受信したビームで基地局10とランダムアクセスを実施する。基地局10と反射板15を経由して通信できる端末20Gは、SSBを受信した反射ビーム52と、基地局10と反射板15との間の専用ビーム50とによって、ランダムアクセスを実施する。これにより、基地局10と直接通信できる端末20Fも、基地局10と反射板15を経由して通信できる端末20Gも、同じように自身の存在を基地局10に通知することができる。
【0270】
次に、データ及び制御情報の通信の動作について説明する。基地局10は、当該基地局10と直接通信できる端末20Fの方向に向けられた通常ビーム51によって、当該端末20Fとデータ及び制御情報の通信を行う。基地局10は、当該基地局10と反射板15を経由して通信できる端末20Gについては、専用ビーム50と、当該専用ビーム50が反射板15にてスイープされて当該端末20Gの方向に向けられた反射ビーム52とによって、当該端末20Gとデータ及び制御情報等の通信を行う。これにより、基地局10と直接通信できる端末20Fも、基地局10と反射板15を経由して通信できる端末20Gも、同じように基地局10と通信を行うことができる。
【0271】
図29は、実施の形態4に係る、120kHz SCS(Subcarrier Spacing)の場合における反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールの設計例を説明するための図である。
【0272】
120kHz SCSの場合、1つのハーフフレーム(Half-frame)は、40個のスロット(Slot)で構成される。SSBは、所定のハーフフレームに配置される。
図29は、ハーフフレーム0、4、…にSSBが配置されることを示す。スロットは、所定の単位時間を示す。SSBは、所定のスロットに配置される。
図29は、スロット0~7、10~17、20~27、30~37にSSBが配置されることを示す。DL(DownLink)及びUL(UpLink)の割り当てはスロット単位である。1つのスロットは、14個のOFDMシンボルで構成される。SSBは、所定のOFDMシンボルに配置される。
【0273】
1つのハーフフレームを、位相シフトパターン切り替えスケジュールの1周期とする。つまり、すべてのハーフフレームで同じ位相シフトパターン切替スケジュールを用いる。反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、基地局10のSSBの送信タイミングに合わせて、位相シフトパターンを切り替えるように設計される。また、DL/ULの割り当てはスロット単位のため、位相シフトパターン切替スケジュールは、位相シフトパターンがスロット間を跨がないように設計される。これは、後述する15kHz SCS、30kHz SCSの場合においても同様である。さらに、位相シフトパターン切替スケジュールは、位相シフトパターンができるだけ公平に割り当てられるように設計される。これは、後述する15kHz SCS、30kHz SCS,240kHz SCSの場合においても同様である。
【0274】
また、位相シフトパターン切替スケジュールは、SSBが配置されないスロット8,9,18,19,28,29,38,39に対して、1つのハーフフレームで見たときに、各位相シフトパターンの登場回数ができるだけ公平になるように、位相シフトパターンを割り当てる設計となっていてよい。
【0275】
図29に示すように、スロット0を構成するOFDMシンボル0~13のうち、OFDMシンボル4~7にSSB1が配置され、OFDMシンボル8~11にSSB2が配置される。この場合、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、OFDMシンボル0~7の時間に対して位相シフトパターン1を割り当て、OFDMシンボル8~13の時間に対して位相ソフトパターン2を割り当てるように設計される。
【0276】
すなわち、1つのスロットに2つのSSB1、2が配置されており、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、当該1つのスロットに対して2つの位相シフトパターン1,2が割り当てられるように設計される。また、位相シフトパターン切替スケジュールは、1つのSSBが配置されている時間を、1つの位相シフトパターンの時間が包含するように設計される。
【0277】
これにより、反射板15は、専用ビーム50に含まれるSSB1を、位相シフトパターン1による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB2を、位相シフトパターン2による反射ビーム52として送信することができる。
【0278】
図29に示すように、スロット1を構成するOFDMシンボル14~27のうち、OFDMシンボル16~19にSSB3が配置され、OFDMシンボル20~23にSSB4が配置される。この場合、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、OFDMシンボル14~19の時間に対して位相シフトパターン3を割り当て、OFDMシンボル20~27の時間に対して位相ソフトパターン4を割り当てるように設計される。
【0279】
すなわち、1つのスロットに2つのSSB3,4が配置されており、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、当該1つのスロットに対して2つの位相シフトパターン3,4が割り当てられるように設計される。また、位相シフトパターン切替スケジュールは、1つのSSBが配置されている時間を、1つの位相シフトパターンの時間が包含するように設計される。
【0280】
これにより、反射板15は、専用ビーム50に含まれるSSB3を、位相シフトパターン3による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB4を、位相シフトパターン4による反射ビーム52として送信することができる。
【0281】
したがって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20Gは、基地局10が通常ビーム51でSSBを送信するタイミングに合わせて、当該SSBに相当するSSBを含む反射ビーム52を、反射板15を経由して受信することができる。よって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20Gは、基地局10と直接通信する端末20Fとほぼ同じ時間かつほぼ同じ方法で、セルサーチを行うことができる。
【0282】
図30は、実施の形態4に係る、15kHz SCSの場合における反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールの第1の設計例を説明するための図である。
【0283】
15kHz SCSの場合、1つのハーフフレームは、5個のスロットで構成される。
図30は、15kHz SCSの場合、スロット0~1にSSBが配置されるパターンと、スロット0~3にSSBが配置されるパターンとがあることを示す。
【0284】
図30に示すように、スロット0を構成するOFDMシンボル0~13のうち、OFDMシンボル2~5にSSB1が配置され、OFDMシンボル8~11にSSB2が配置される。この場合、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、OFDMシンボル0~6の時間に対して位相シフトパターン1を割り当て、OFDMシンボル7~13の時間に対して位相シフトパターン2を割り当てるように設計される。
【0285】
すなわち、1つのスロットに2つのSSB1、2が配置されており、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、当該1つのスロットに対して2つの位相シフトパターン1,2が割り当てられるように設計される。また、位相シフトパターン切替スケジュールは、1つのSSBが配置されている時間を、1つの位相シフトパターンの時間が包含するように設計される。
【0286】
これにより、反射板15は、専用ビーム50に含まれるSSB1を、位相シフトパターン1による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB2を、位相シフトパターン2による反射ビーム52として送信することができる。
【0287】
したがって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20Gは、基地局10が通常ビームでSSBを送信するタイミングに合わせて、当該SSBに相当するSSBを含む反射ビーム52を、反射板15を経由して受信することができる。よって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20Gは、基地局10と直接通信する端末20Fとほぼ同じ時間かつほぼ同じ方法で、セルサーチを行うことができる。
【0288】
図31は、実施の形態4に係る、30kHz SCSの場合における反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールの第1の設計例を説明するための図である。
【0289】
30kHz SCSの場合、1つのハーフフレームは、10個のスロットで構成される。
図31は、30kHz SCSの場合、スロット0~1にSSBが配置されるパターンと、スロット0~3にSSBが配置されるパターンとがあることを示す。
【0290】
図31に示すように、スロット0を構成するOFDMシンボル0~13のうち、OFDMシンボル4~7にSSB1が配置され、OFDMシンボル8~11にSSB2が配置される。この場合、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、OFDMシンボル0~7の時間に対して位相シフトパターン1を割り当て、OFDMシンボル8~13の時間に対して位相シフトパターン2を割り当てるように設計される。
【0291】
すなわち、1つのスロットに2つのSSB1、2が配置されており、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、当該1つのスロットに対して2つの位相シフトパターン1,2が割り当てられるように設計される。また、位相シフトパターン切替スケジュールは、1つのSSBが配置されている時間を、1つの位相シフトパターンの時間が包含するように設計される。
【0292】
これにより、反射板15は、専用ビーム50に含まれるSSB1を、位相シフトパターン1による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB2を、位相シフトパターン2による反射ビーム52として送信することができる。
【0293】
図31に示すように、スロット1を構成するOFDMシンボル14~27のうち、OFDMシンボル16~19にSSB3が配置され、OFDMシンボル20~23にSSB4が配置される。この場合、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、OFDMシンボル14~19の時間に対して位相シフトパターン3を割り当て、OFDMシンボル20~27の時間に対して位相シフトパターン4を割り当てるように設計される。
【0294】
すなわち、1つのスロットに2つのSSB3,4が配置されており、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、当該1つのスロットに対して2つの位相シフトパターン3,4が割り当てられるように設計される。また、位相シフトパターン切替スケジュールは、1つのSSBが配置されている時間を、1つの位相シフトパターンの時間が包含するように設計される。
【0295】
これにより、反射板15は、専用ビーム50に含まれるSSB3を、位相シフトパターン3による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB4を、位相シフトパターン4による反射ビーム52として送信することができる。
【0296】
したがって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20Gは、基地局10が通常ビーム51でSSBを送信するタイミングに合わせて、当該SSBに相当するSSBを含む反射ビーム52を、反射板15を経由して受信することができる。よって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20Gは、基地局10と直接通信する端末20Fとほぼ同じ時間かつほぼ同じ方法で、セルサーチを行うことができる。
【0297】
図32は、実施の形態4に係る、30kHz SCSの場合における反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールの第2の設計例を説明するための図である。
【0298】
30kHz SCSの場合、1つのハーフフレームは、10個のスロットで構成される。
図32は、30kHz SCSの場合、スロット0~1にSSBが配置されるパターンと、スロット0~3にSSBが配置されるパターンとがあることを示す。
【0299】
図32に示すように、スロット0を構成するOFDMシンボル0~13のうち、OFDMシンボル2~5にSSB1が配置され、OFDMシンボル8~11にSSB2が配置される。この場合、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、OFDMシンボル0~6の時間に対して位相シフトパターン1を割り当て、OFDMシンボル7~13の時間に対して位相シフトパターン2を割り当てるように設計される。
【0300】
すなわち、1つのスロットに2つのSSB1、2が配置されており、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、当該1つのスロットに対して2つの位相シフトパターン1,2が割り当てられるように設計される。また、位相シフトパターン切替スケジュールは、1つのSSBが配置されている時間を、1つの位相シフトパターンの時間が包含するように設計される。
【0301】
これにより、反射板15は、専用ビーム50に含まれるSSB1を、位相シフトパターン1による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB2を、位相シフトパターン2による反射ビーム52として送信することができる。
【0302】
図32に示すように、スロット1を構成するOFDMシンボル14~27のうち、OFDMシンボル16~19にSSB3が配置され、OFDMシンボル22~25にSSB4が配置され。この場合、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、OFDMシンボル14~20の時間に対して位相シフトパターン3を割り当て、OFDMシンボル21~27の時間に対して位相シフトパターン4を割り当てるように設計される。
【0303】
すなわち、1つのスロットに2つのSSB3,4が含まれており、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、当該1つのスロットに対して2つの位相シフトパターン3,4が割り当てられるように設計される。また、位相シフトパターン切替スケジュールは、1つのSSBが配置されている時間を、1つの位相シフトパターンの時間が包含するように設計される。
【0304】
これにより、反射板15は、専用ビーム50に含まれるSSB3を、位相シフトパターン3による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB4を、位相シフトパターン4による反射ビーム52として送信することができる。
【0305】
したがって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20Gは、基地局10が通常ビームでSSBを送信するタイミングに合わせて、当該SSBに相当するSSBを含む反射ビームを、反射板15を経由して受信することができる。よって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20Gは、基地局10と直接通信する端末20Fとほぼ同じ時間かつほぼ同じ方法で、セルサーチを行うことができる。
【0306】
図33は、実施の形態4に係る、240kHz SCSの場合における反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールの設計例を説明するための図である。
【0307】
240kHz SCSの場合、1つのハーフフレームは、80個のスロットで構成される。
【0308】
図33に示すように、240kHz SCSの場合、上述した120kHz SCS、15kHz SCS、30kHz SCSと異なり、スロット間に跨ってSSBが配置される箇所がある。よって、2つのスロットのペア(以下、スロットペアと称する)を単位とし、位相シフトパターン切替スケジュールは、位相シフトパターンがスロットペア間を跨がないように設計される。
【0309】
図33に示すように、スロット0、1のスロットペアを構成するOFDMシンボル0~27のうち、OFDMシンボル8~11にSSB1が配置され、OFDMシンボル12~15にSSB2が配置され、OFDMシンボル16~19にSSB3が配置され、OFDMシンボル20~23にSSB4が配置される。この場合、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、OFDMシンボル0~3の時間に対して位相シフトパターン1を割り当て、OFDMシンボル4~7の時間に対して位相シフトパターン2を割り当て、OFDMシンボル8~11の時間に対して位相シフトパターン1を割り当て、OFDMシンボル12~15の時間に対して位相シフトパターン2を割り当て、OFDMシンボル16~19の時間に対して位相シフトパターン3に割り当て、OFDMシンボル20~23の時間に対して位相シフトパターン4を割り当て、OFDMシンボル24~27の時間に対して位相シフトパターン3を割り当てるように設計される。
【0310】
すなわち、1つのスロットペアに4つのSSB1、2、3、4が配置されており、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、当該1つのスロットペアに対して4つの位相シフトパターン1、2、3、4が割り当てられるように設計される。また、位相シフトパターン切替スケジュールは、1つのSSBが配置されている時間を、1つの位相シフトパターンの時間が包含するように設計される。
【0311】
これにより、反射板15は、専用ビーム50に含まれるSSB1を、位相シフトパターン1による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB2を、位相シフトパターン2による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB3を、位相シフトパターン3による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB4を、位相シフトパターン4による反射ビーム52として送信することができる。
【0312】
図33に示すように、スロット2、3のスロットペアを構成するOFDMシンボル28~55のうち、OFDMシンボル32~35にSSB5が配置され、OFDMシンボル36~39にSSB6が配置され、OFDMシンボル40~43にSSB7が配置され、OFDMシンボル44~47にSSB8が配置される。この場合、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、OFDMシンボル28~31の時間に対して位相シフトパターン4を割り当て、OFDMシンボル32~35の時間に対して位相シフトパターン5を割り当て、OFDMシンボル36~39の時間に対して位相シフトパターン6を割り当て、OFDMシンボル40~43の時間に対して位相シフトパターン7を割り当て、OFDMシンボル44~47の時間に対して位相シフトパターン8を割り当て、OFDMシンボル48~51の時間に対して位相シフトパターン5を割り当て、OFDMシンボル52~55の時間に対して位相シフトパターン6を割り当てるように設計される。
【0313】
すなわち、1つのスロットペアに4つのSSB5、6、7、8が配置されており、反射板15の位相シフトパターン切替スケジュールは、当該1つのスロットペアに対して4つの位相シフトパターン5、6、7、8が割り当てられるように設計される。また、位相シフトパターン切替スケジュールは、1つのSSBが配置されている時間を、1つの位相シフトパターンの時間が包含するように設計される。
【0314】
これにより、反射板15は、専用ビーム50に含まれるSSB5を、位相シフトパターン5による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB6を、位相シフトパターン6による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB7を、位相シフトパターン7による反射ビーム52として送信し、専用ビーム50に含まれるSSB8を、位相シフトパターン8による反射ビーム52として送信することができる。
【0315】
なお、
図33では、4つのスロット(スロット0~3)の中で、位相シフトパターン7、8が1度しか登場しておらず、不公平な割り当てとなっている。よって、位相シフトパターン割当スケジュールは、これらの位相シフトパターン7、8が、スロット16~19、36~79、…のようなSSBが配置されないスロットにおいて、他の位相シフトパターンよりも多く割り当てられるように設計される。これにより、1つのハーフフレーム(位相シフトパターン切替スケジュールの1周期)で見たときに、できるだけ公平になるように位相シフトパターンを割り当てることができる。
【0316】
(実施の形態4のまとめ)
以上の実施の形態4の記載により、下記の技術が開示される。
【0317】
<技術1>
通信システム1は、電波を用いて少なくとも1つの端末20と無線通信を行う基地局10と、複数の反射素子を備え、各反射素子での電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板15と、基地局10と各端末20との間の無線通信に係る無線リソースの割り当てを制御する制御装置5とを備える。反射板15は、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に位相シフトパターンを切り替える。制御装置5は、複数のタイムスロット毎に、反射板15を経由する電波を用いて無線通信が可能な基地局10と端末20とを対応付けた無線リンク情報(例えば無線リンクテーブル)を記憶し、無線リンク情報に基づいて、各タイムスロットにおける無線リソースの割り当てを決定する。
これにより、制御装置5は、無線リンク情報を参照することにより、基地局10が反射板15を利用して端末20と無線通信可能となるような無線リソースの割り当てを行うことができる。したがって、反射板15における位相シフト設計のためのチャネル推定処理が不要となる。
【0318】
<技術2>
技術1に記載の通信システム1において、無線リソースを構成する単位時間である1つのスロットに、端末20が基地局10を検出するための検出情報(例えばSSB)が2つ配置され、当該1つのスロットに、反射板15に係る上記タイムスロット(位相シフトパターン)が2つ割り当てられる。
これにより、反射板15は、スロットに配置される2つの検出情報(SSB)を、2つのタイムスロットのそれぞれに割り当てられた位相シフトパターンによる反射ビームで送信することができる。よって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20も、基地局10と直接通信する端末20とほぼ同じ時間及びほぼ同じ方法で、検出情報を受信して基地局10の検出(セルサーチ)を行うことができる。
【0319】
<技術3>
技術2に記載の通信システム1において、割り当てられた2つの検出情報を、それぞれ、第1の検出情報(例えばSSB1)及び第2の検出情報(例えばSSB2)とし、割り当てられた2つのタイムスロットを、それぞれ、第1のタイムスロット(例えば位相シフトパターン1)及び第2のタイムスロット(例えば位相シフトパターン2)とし、反射板15は、受信した第1の検出情報を含むビームを、前記第1のタイムスロットに対応する位相シフトパターン(例えば位相シフトパターン1)によって反射し、受信した第2の検出情報を含むビームを、第2のタイムスロットに対応する位相シフトパターン(例えば位相シフトパターン2)によって反射する。
これにより、反射板15は、第1の検出情報を第1の位相シフトパターンによる反射ビームで送信し、第2の検出情報を第2の位相シフトパターンによる反射ビームで送信することができる。すなわち、反射板15は、基地局10が通常ビームをスイープしながら検出情報を送信するように、反射ビームをスイープしながら検出情報を送信することができる。
【0320】
<技術4>
技術2又は3に記載の通信システム1において、基地局10は、第1の検出情報を含む第1の方向のビーム(例えば通常ビーム)を送信すると共に、前記第1の検出情報を含む反射板15の方向の専用ビームを送信し、第2の検出情報を含む第2の方向のビーム(例えば通常ビーム)を送信すると共に、第2の検出情報を含む反射板15の方向の上記専用ビームを送信し、反射板15が受信した上記の第1の検出情報又は第2の検出情報を含むビームは、当該専用ビームである。
これにより、反射板15は、基地局10が検出情報を送信するタイミングで、基地局10から当該検出情報を含む専用ビームを受信し、当該検出情報を含む反射ビームを送信することができる。よって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20も、基地局10と直接通信する端末20とほぼ同じ時間及びほぼ同じ方法で、検出情報を受信して基地局10の検出(セルサーチ)を行うことができる。
【0321】
<技術5>
技術1に記載の通信システム1において、前記無線リソースを構成する時間単位であるスロット2つ分のスロットペアに、端末20が基地局10を検出するための検出情報(例えばSSB)が所定数配置され、当該1つのスロットペアに、各検出情報に対応して、各検出情報の時間以上の長さで、反射板15に係るタイムスロット(位相シフトパターン)が、検出情報の数以上割り当てられる。
これにより、反射板15は、スロットペアに配置される各検出情報を、各タイムスロットのそれぞれに割り当てられた位相シフトパターンによる反射ビームで送信することができる。よって、基地局10と反射板15を経由して通信する端末20も、基地局10と直接通信する端末20とほぼ同じ時間及びほぼ同じ方法で、検出情報を受信して基地局10の検出(セルサーチ)を行うことができる。
【0322】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0323】
本開示の技術は、反射板を使用する無線通信に有用である。
【符号の説明】
【0324】
1、1a、1b、1c 通信システム
2 障害物
5、5A、5B 制御装置
10、10A、10B、10C 基地局
15 反射板
16 受信電力計測器
20、20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G 端末
30 量子コンピュータ
50 専用ビーム
51 通常ビーム
52 反射ビーム
101 無線リソース割当部
102 フィンガープリントDB
103 マッチング判定部
1000 コンピュータ
1001 プロセッサ
1002 メモリ
1003 ストレージ
1004 入力装置
1005 出力装置
1006 通信装置
1007 GPU
1008 読取装置
1009 バス
【手続補正書】
【提出日】2024-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を用いて少なくとも1つの端末と無線通信を行う基地局と、
複数の反射素子を備え、各反射素子での前記電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、前記電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板と、
前記基地局と前記各端末との間の無線通信に係る無線リソースの割り当てを制御する制御装置と、を備え、
前記反射板は、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に前記位相シフトパターンを切り替え、
前記制御装置は、
前記複数のタイムスロット毎に、前記反射板を経由する前記電波を用いて無線通信が可能な前記基地局と前記端末とを対応付けた無線リンク情報を記憶し、
前記無線リンク情報に基づいて、前記各タイムスロットにおける前記無線リソースの割り当てを決定する、
通信システム。
【請求項2】
前記制御装置は、1つのタイムスロットにて1つの基地局が複数の端末と無線通信を行う場合、前記無線リソースの割り当てにおいて、当該複数の端末のそれぞれに対して異なる周波数リソースを割り当てることを決定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記1周期の各タイムスロットにおける前記端末の前記電波の受信品質を含む通信品質情報に基づいて、前記各タイムスロットにおいて前記基地局が前記反射板を経由して無線通信可能な端末を特定し、
前記各タイムスロットにおける前記基地局とその特定した端末とを対応付けた前記無線リンク情報を生成する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記基地局から提供される、1つのサブキャリア及び1つのタイムスロット当たりの通信量を算出し、
前記基地局と無線通信可能な複数の端末のそれぞれが要求する通信量に基づいて、当該複数の端末の全体が要求する通信量を満たし、かつ、タイムスロット数が最小となるように、前記各タイムスロットにおける前記無線リソースの割り当てを決定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記反射板は、受信電力を測定する受信電力計測器を備え、
前記反射板は、
前記受信電力計測器によって測定した受信電力に基づいて、前記位相シフトパターン毎の前記基地局による無線通信の実行頻度を算出し、
前記1周期の各タイムスロットの前記位相シフトパターンを、前記無線通信の実行頻度が所定の閾値以上である前記位相シフトパターンに変更する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記反射板を経由する前記電波が到達可能なエリアに含まれる複数の位置のそれぞれにおける、置き換え前の前記各位相シフトパターンのときの前記端末による前記電波の受信強度に基づいて生成されるフィンガープリントデータベースを予め記憶し、
前記端末による前記1周期の各タイムスロットでの前記電波の受信強度を含む無線環境情報を、前記フィンガープリントデータベースと照合することにより、前記エリアにおける前記端末の位置を推定する、
請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記位相シフトパターンが置き換え後の前記無線環境情報において、重複する前記位相シフトパターンの前記受信強度を平均化し、存在しない前記位相シフトパターンの前記受信強度を0として、照合用無線環境情報を生成し、
前記照合用無線環境情報を、前記フィンガープリントデータベースと照合することにより、前記エリアにおける前記端末の位置を推定する、
請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記無線環境情報が前記位相シフトパターンの置き換え後のものである場合、
前記位相シフトパターンが置き換え前の前記無線環境情報と置き換え後の前記無線環境情報とにおいて、重複する前記位相シフトパターンの前記受信強度を平均化し、置き換え後の無線環境情報に存在しない位相シフトパターンの前記受信強度を前記置き換え前の無線環境情報の同じ位相シフトパターンの前記受信強度として、照合用無線環境情報を生成し、
前記照合用無線環境情報を、前記フィンガープリントデータベースと照合することにより、前記エリアにおける前記端末の位置を推定する、
請求項6に記載の通信システム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記重複する前記位相シフトパターンの前記受信強度を平均化した値に、当該重複する数に基づく重み付けを行い、前記照合用無線環境情報を生成する、
請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記無線リソースを構成する単位時間である1つのスロットに、前記端末が前記基地局を検出するための検出情報が2つ配置され、前記検出情報はSS/PBCH blockであり、
前記1つのスロットに、前記反射板に係る前記タイムスロットが2つ割り当てられる、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項11】
前記割り当てられた2つの検出情報を、それぞれ、第1の検出情報及び第2の検出情報とし、
前記割り当てられた2つのタイムスロットを、それぞれ、第1のタイムスロット及び第2のタイムスロットとし、
前記反射板は、
受信した前記第1の検出情報を含むビームを、前記第1のタイムスロットに対応する前記位相シフトパターンによって反射し、
受信した前記第2の検出情報を含むビームを、前記第2のタイムスロットに対応する前記位相シフトパターンによって反射する、
請求項10に記載の通信システム。
【請求項12】
前記基地局は、
前記第1の検出情報を含む第1の方向のビームを送信すると共に、前記第1の検出情報を含む前記反射板の方向の専用ビームを送信し、
前記第2の検出情報を含む第2の方向のビームを送信すると共に、前記第2の検出情報を含む前記反射板の方向の前記専用ビームを送信し、
前記反射板が受信した前記第1の検出情報又は前記第2の検出情報を含むビームは、前記専用ビームである、
請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
前記無線リソースを構成する時間単位であるスロット2つ分のスロットペアに、前記端末が前記基地局を検出するための検出情報が所定数配置され、前記検出情報はSS/PBCH blockであり、
1つの前記スロットペアに、各検出情報に対応して、各検出情報の時間以上の長さで、前記反射板に係る前記タイムスロットが、検出情報の数以上割り当てられる、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項14】
基地局が、無線通信に係る電波を送信し、
複数の反射素子を備え、各反射素子での前記電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、前記電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板が、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に前記位相シフトパターンを切り替え、
少なくとも1つの端末が、前記基地局から送信され、前記反射板にて反射された前記電波を受信可能であり、
制御装置が、前記複数のタイムスロット毎に、前記反射板を経由する前記電波を用いて無線通信が可能な前記基地局と前記端末とを対応付けた無線リンク情報を記憶し、前記無線リンク情報に基づいて、前記各タイムスロットにおける、前記基地局と前記各端末との無線通信に係る無線リソースの割り当てを決定する、
通信方法。
【請求項15】
基地局が、無線通信に係る電波を送信し、
複数の反射素子を備え、各反射素子での前記電波の反射に関する位相シフト量を調整することにより、前記電波の伝搬特性が互いに異なる複数の位相シフトパターンを切り替える反射板が、1周期を構成する複数のタイムスロット毎に前記位相シフトパターンを切り替え、
少なくとも1つの端末が、前記基地局から送信され、前記反射板にて反射された前記電波を受信可能である通信システムにおいて、前記基地局と前記各端末との間の無線通信に係る無線リソースの割り当てを制御する、制御装置であって、
前記複数のタイムスロット毎に、前記反射板を経由する前記電波を用いて無線通信が可能な前記基地局と前記端末とを対応付けた無線リンク情報を記憶し、
前記無線リンク情報に基づいて、前記各タイムスロットにおける前記無線リソースの割り当てを決定する、
制御装置。