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特開2025-9768ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009768
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20250109BHJP
   B60K 35/234 20240101ALI20250109BHJP
   B60K 35/235 20240101ALI20250109BHJP
   B60K 35/40 20240101ALI20250109BHJP
   B60K 35/81 20240101ALI20250109BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/234
B60K35/235
B60K35/40
B60K35/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026230
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023105683
(32)【優先日】2023-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591182112
【氏名又は名称】NSウエスト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100138955
【弁理士】
【氏名又は名称】末次 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(72)【発明者】
【氏名】和田 真明
(72)【発明者】
【氏名】深山 和宏
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA17
2H199DA24
2H199DA33
2H199DA34
2H199DA43
3D344AA20
3D344AA21
3D344AA22
3D344AA27
3D344AB01
3D344AC25
3D344AD05
3D344AD13
(57)【要約】
【課題】虚像が視認しやすいヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法を提供する。
【解決手段】HUD装置1は、表示器20と、マイコン50と、を備える。表示器20は、表示光をコンバイナに投射することにより虚像を表示する。そして、マイコン50は、表示光のコンバイナに対する投射角度に基づいて表示器20が投射する表示光の輝度を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示光を被投射部材に投射することにより虚像を表示する表示器と、
前記表示光の前記被投射部材に対する投射角度に基づいて前記表示器が投射する前記表示光の輝度を制御する制御部と、
を備えるヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記表示器は、それぞれから前記表示光を投射することにより画像を表す前記虚像を表示する複数の画素を備え、
前記制御部は、前記複数の画素のうち、前記投射角度がブリュースター角に最も近い角度となる基準画素からの位置に基づいて前記複数の画素それぞれから発する前記表示光の輝度を制御する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記基準画素からの位置が離れるに従い、前記複数の画素それぞれから発する前記表示光の輝度を低くする、
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の画素それぞれが発する前記表示光の前記被投射部材に対する投射角度が大きくなるに従い、前記画素それぞれの前記表示光の輝度を低くする、
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記虚像を視認するユーザの視点情報を取得する視点情報取得機器を備え、
前記表示器は、前記複数の画素のうちの一部が前記表示光を投射させることにより、前記複数の画素全体が前記表示光を投射した場合に前記虚像を表示することが可能な表示領域内の一部領域に前記虚像を表示し、
前記制御部は、前記視点情報取得機器が取得した前記視点情報に基づいて、前記複数の画素のうちの前記一部となる画素を選択して前記表示光を投射させ、前記表示領域内での前記一部領域の位置を調整する、
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記複数の画素全体が前記表示光を投射した場合に前記虚像を表示することが可能な表示領域内での、前記複数の画素のうちの一部が前記表示光を投射させることにより、前記虚像が表示される一部領域の位置情報が入力される入力装置を備え、
前記制御部は、前記入力装置に入力された前記一部領域の位置情報に基づいて、前記複数の画素のうちの前記一部となる画素を選択して前記表示光を投射させ、前記一部領域に前記虚像を表示させる、
請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記表示器は、シンボルマークが形成されたダイヤルと、該ダイヤルを照射するバックライトとを有する、
請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項8】
前記虚像を視認するユーザの視点情報を取得する視点情報取得機器を備え、
前記制御部は、前記視点情報取得機器が取得した前記視点情報に基づいて、前記ユーザに視認される前記表示光の前記被投射部材に対する投射角度を求め、求めた前記投射角度に基づいて前記バックライトの輝度を制御する、
請求項7に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項9】
前記表示器は、
前記バックライトが発する光を検出する受光センサと、
前記受光センサの出力が閾値未満のときに前記バックライトが断線したと判定するセンサ制御部と、
をさらに有し、
前記センサ制御部は、前記投射角度に基づいた前記バックライトの輝度に応じて前記閾値を変更する、
請求項7または8に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項10】
表示光を被投射部材に投射することにより虚像を表示する表示器を備えるヘッドアップディスプレイ装置の制御方法であって、
前記表示光の前記被投射部材に対する投射角度に基づいて前記表示器が投射する前記表示光の輝度を制御すること、
を含むヘッドアップディスプレイ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ装置には、表示器が発する表示光の、ウインドシールド等の被投射部材に対する投射角度を変えることにより、表示光の投射方向を調整するものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、表示光を発する表示器と、その表示器が発した表示光を反射させるミラーとを備え、ミラーが表示光を反射させて被投射部材に投射することにより、虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置において、ヘッドアップディスプレイ装置が設置された車両が走行する路面に対して虚像が傾くことを抑制するため、ミラーを回動させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-19874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した被投射部材では、表示光が入射する入射角、換言すると、投射角度によって表示光の反射率が変化する。このため、特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置でミラーを回動させて表示光の被投射部材に対する投射角度を変化させると、表示光の反射率が変化してしまい、表示光の輝度が低下してしまうことがある。その結果、ユーザが虚像を視認しにくくなってしまうことがある。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、虚像が視認しやすいヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の第一の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
表示光を被投射部材に投射することにより虚像を表示する表示器と、
前記表示光の前記被投射部材に対する投射角度に基づいて前記表示器が投射する前記表示光の輝度を制御する制御部と、
を備える。
【0008】
本発明の第二の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置の制御方法は、
表示光を被投射部材に投射することにより虚像を表示する表示器を備えるヘッドアップディスプレイ装置の制御方法であって、
前記表示光の前記被投射部材に対する投射角度に基づいて前記表示器が投射する前記表示光の輝度を制御すること、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の構成によれば、制御部が表示光の被投射部材に対する投射角度に基づいて表示器が投射する表示光の輝度を制御するので、虚像が視認しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1に係るヘッドアップディスプレイ装置の模式的な断面図である。
図2】実施の形態1に係るヘッドアップディスプレイ装置のブロック図である。
図3】実施の形態1に係るヘッドアップディスプレイ装置が搭載された車両の概念図である。
図4】実施の形態1に係るヘッドアップディスプレイ装置が備えるコンバイナに投射された表示光による画像の表示範囲を示す概念図である。
図5】(A)コンバイナの、投射角度に対する表示光の反射率のグラフである。(B)(A)に示すVB領域を拡大した図である。
図6】実施の形態1に係るヘッドアップディスプレイ装置が備える記憶装置に格納された輝度調整テーブルのデータ構造図である。
図7】実施の形態2に係るヘッドアップディスプレイ装置のブロック図である。
図8】実施の形態3に係るヘッドアップディスプレイ装置のブロック図である。
図9】実施の形態3に係るヘッドアップディスプレイ装置が備える表示器の断面図である。
図10】実施の形態3に係るヘッドアップディスプレイ装置が備える記憶装置に格納された輝度調整テーブルのデータ構造図である。
図11】実施の形態1に係るヘッドアップディスプレイ装置の変形例の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。また、明細書中、前後、左右、上下とは、ヘッドアップディスプレイ装置が設置される車両の前後、左右、上下のことである。
【0012】
(実施の形態1)
実施の形態1に係るヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUD装置という)は、車両に設置されて、画像、例えば、車両に関する情報(車両の速度、ナビゲーション情報等。以下、車両情報という)を含む画像を表す表示光を被投射部材に投射する装置である。このHUD装置では、虚像を見えやすくするため、制御部が表示光の被投射部材に対する投射角度(以下、入射角という)に基づいて表示光の輝度を制御する。以下、被投射部材がコンバイナであり、制御部がマイクロコントローラ(以下、マイコンという)である形態を例に、HUD装置とそのマイコンの構成を説明する。まず、HUD装置の全体の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、HUD装置1は、筐体10と、表示器20と、ミラー部材30と、コンバイナ40と、マイコン50とを備える。
【0014】
筐体10は、箱状に形成されている。また遮光性を有する材料で形成されている。これにより、筐体10は、内部に部品を収容可能であると共に、内部での不要な光の反射が防がれている。そして、筐体10の内部には、表示光Lを生成するため、表示器20、ミラー部材30等の各部品が収容されている。
【0015】
表示器20は、表示光Lを生成するため、光を発するバックライト21と、そのバックライト21の光の透過の程度を調整して画像を表す表示光Lを生成する液晶パネル22とを有する。そして、これらバックライト21と液晶パネル22は、筐体10の内部の前方F部分に配置されている。
【0016】
バックライト21は、例えば、複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)により構成されている。そして、バックライト21は、図2に示すLEDドライバ23が生成するPWM(Pulse Width Modulation)信号によって駆動される。そのPWM信号は、マイコン50が出力する指令信号に基づいて生成される。また、バックライト21は、そのPWM信号に応じて発光すると共に、そのPWM信号に応じた輝度で発光する。その結果、バックライト21は、マイコン50が出力する指令信号に基づいて点灯し、点灯時に指令信号に基づく輝度で発光する。図1に示すように、バックライト21の後方Bには液晶パネル22が配置され、バックライト21は、点灯時にその液晶パネル22を照射する。
【0017】
液晶パネル22は、例えば、透過型のTFT(Thin Film Transistor)液晶パネルにより構成されている。液晶パネル22は、図示しないが複数の画素がマトリックス状に配列された表示部を有し、図2に示す液晶ドライバ24に制御されることにより、画素毎の光の透過率を変化させる。液晶パネル22は、図1に示すように、上述したバックライト21に前方Fから照射される。液晶パネル22は、バックライト21から照射された光の透過率を画素毎に調整して、画像を含む表示光Lを生成する。そして、生成した表示光Lをさらに後方Bへ発する。液晶パネル22の後方Bには、ミラー部材30が配置されている。液晶パネル22は、表示光Lをそのミラー部材30へ発する。
【0018】
なお、表示器20は、バックライト21および液晶パネル22を有する代わりに、蛍光表示管を有していてもよい。その場合、表示器20は、蛍光表示管が生成した表示光Lをミラー部材30へ発するとよい。
【0019】
ミラー部材30は、矩形状かつ平板状の反射面を有する。そして、ミラー部材30は、その反射面を前方F斜め上に向けた状態で、筐体10に固定されている。これにより、ミラー部材30は、液晶パネル22から発せられた表示光Lを前方F斜め上へ向けて反射する。その前方F斜め上方向には、筐体10の上面部に形成された開口部11が位置している。
【0020】
開口部11は、ミラー部材30が反射した表示光Lを外部へ出射させるために設けられている。その形状は、略矩形状である。そして、開口部11の前端部分には、出射した表示光Lを運転者(ユーザともいう)に向けるため、コンバイナ40が設けられている。そして、筐体10は、図3に示すように、そのコンバイナ40が設けられた開口部11の前端部分をウインドシールド3側に向けた状態で、車両2のダッシュボード4に設置されている。その結果、コンバイナ40は、ウインドシールド3の後方近くに配置されている。
【0021】
コンバイナ40は、図示しないが、凹面を有する形状に屈曲した矩形状の板の形状に形成されている。また、ある程度の厚みで可視光がほぼ透過しない不透明な材料により形成されている。そして、コンバイナ40は、板面の長手方向を左右方向に向けている。その状態で、図1に示すように、コンバイナ40の板面の短手方向にある一端が開口部11内の前端部分に配置された支持部材41によって支持されている。
【0022】
支持部材41は、図示しないが、コンバイナ40の板面の長手方向と平行に配置された回動軸に固定されている。また、その回動軸は、マイコン50が出力する回動指令に基づいて動作する、図2に示すコンバイナ駆動モータ25によって回動する。これにより、支持部材41は、マイコン50の回動指令に基づいて回動軸を中心に回動する。その結果、コンバイナ40の向きは、図1に実線で示す、HUD装置1を使用するときの向きである起立方向と、図1に点線で示す、HUD装置1を使用しないときの向きである倒伏方向とに変更可能である。
【0023】
コンバイナ40は、起立方向に向けられているとき、後方Bの板面をやや斜め下に向ける。これにより、コンバイナ40は、図3に示すように、ミラー部材30に反射された表示光Lを入射させ、その表示光Lを、後方B斜め上にある運転席の運転者5の方向へ反射する。その結果、コンバイナ40は、運転者5に虚像Vを視認させる。
なお、コンバイナ40は、上述した不透明な材料のほか、可視光を透過する材料によって形成されていてもよい。その場合、コンバイナ40は、車両2の前方Fからの光を透過させて、前方Fの風景に重ねて虚像Vを運転者5に視認させるとよい。
【0024】
一方、コンバイナ40は、倒伏方向に向けられているとき、板面を筐体10の上面部に沿わせる方向に向けて開口部11に被さる。これにより、コンバイナ40は、開口部11を塞ぐ。また、運転者5の視界を遮らないようにする。
【0025】
マイコン50は、このようなコンバイナ40の向きの制御等を行う。続いて、マイコン50の構成について説明する。
【0026】
マイコン50は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53等を有する。
【0027】
CPU51は、CAN(Controller Area Network)信号線60を介して、車両2が備える、車両2各部を制御するECU(Electronic Control Unit)61およびイグニッションスイッチ(以下、IGSWという)62と通信可能に接続されている。そして、CPU51は、ROM52に記憶されている制御プログラムを実行することにより、HUD装置1が備えるLEDドライバ23、液晶ドライバ24およびコンバイナ駆動モータ25を動作させる各種制御処理を行う。
【0028】
例えば、CPU51は、IGSW62の出力信号に基づいて、コンバイナ駆動モータ25を駆動する。これにより、CPU51は、コンバイナ40の向きを、上述した起立方向と倒伏方向とに切り替える。なお、HUD装置1が起動ボタンを備え、その起動ボタンのオン信号、またはオフ信号に基づき、CPU51がコンバイナ40の向きを切り替えてもよい。
【0029】
また、CPU51は、コンバイナ40の向きを起立方向にすると、ECU61から出力される車両情報に基づいた画像情報を液晶ドライバ24に送信すると共に、輝度情報をLEDドライバ23に送信する。これにより、CPU51は、表示器20が備える液晶パネル22の表示部内にある画素の光透過率を調整すると共に、バックライト21のLEDを発光させる。その結果、CPU51は、表示器20に車両情報を含む画像を表す表示光Lを放射させる。
【0030】
さらに、CPU51は、HUD装置1が備える調整ボタン26、27(入力装置ともいう)と電気的に接続され、それら調整ボタン26、27の出力に基づいて、液晶パネル22の表示部内の表示光Lを発する画素群を決定する。
【0031】
詳細には、CPU51は、上述した液晶パネル22の表示部内の一部領域(以下、表示領域という)にある画素群の光透過率を調整して、それら画素群だけで表示光Lを生成する。調整ボタン26、27は、運転者5の体格に応じた方向へ表示光Lを向けるため、液晶パネル22の表示部内で、その表示領域をシフトさせて、表示領域の位置を調整するためのボタンである。
【0032】
調整ボタン26、27について詳細に説明すると、調整ボタン26は、表示領域の位置を上へシフトさせるためのボタンである。例えば、図4に実線で示す表示領域Aの位置を、一点鎖線で示す表示領域Aの位置へシフトさせるためのボタンである。調整ボタン26は、運転者5に押される度に、上シフト信号(位置情報ともいう)を出力する。これに対して、調整ボタン27は、表示領域の位置を下へシフトさせるためのボタンである。例えば、図4に示す実線で示す表示領域Aの位置を、点線で示す表示領域Aの位置へシフトさせるためのボタンである。調整ボタン27は、運転者5に押される度に、下シフト信号(位置情報ともいう)を出力する。
【0033】
CPU51は、調整ボタン26の上シフト信号を受信すると、液晶ドライバ24へ送信する画像情報を調整して、液晶パネル22の表示部内の表示領域Aの位置を現在位置から一定の距離だけ上へシフトさせる。また、CPU51は、調整ボタン27の下シフト信号を受信すると、液晶ドライバ24へ送信する画像情報を調整して、表示領域Aの位置を現在位置から一定の距離だけ下へシフトさせる。これにより、CPU51は、調整ボタン26、27の押下に応じて表示領域Aをシフトさせて、その表示領域Aに含まれる画素群に表示光Lを生成させる。その結果、CPU51は、調整ボタン26、27の押下に応じた方向へ表示光Lを向ける。
【0034】
なお、液晶パネル22の表示部の大きさから表示領域Aの位置をシフトできる範囲に限度があるため、CPU51は、表示領域Aの現在位置が上限位置に達している場合、上シフト信号ではなく下シフト信号だけに応じて、表示領域Aの位置をシフトさせる。また、CPU51は、表示領域Aの現在位置が下限位置に達している場合、下シフト信号ではなく上シフト信号だけに応じて、表示領域Aの位置をシフトさせる。
【0035】
このように、CPU51は、調整ボタン26、27の押下に応じて表示領域Aの位置を調整して、表示光Lが投射される方向を調整する。
【0036】
しかしながら、表示領域Aの位置が調整されると、図1に示す、表示光Lのコンバイナ40に対する入射角θが変化してしまい、その結果、コンバイナ40が表示光Lを反射したときの反射率が変化してしまうことがある。これにより、表示光Lの輝度が変化してしまい、運転者5の視認性が低下してしまうことがある。
【0037】
図5(A)および(B)を参照して、この運転者5の視認性の低下について、さらに詳細に説明する。図5(A)および(B)は、コンバイナ40の、入射角θに対する表示光Lの反射率のグラフである。なお、図5(A)および(B)では、表示光Lに含まれるs偏光のグラフGsを実線で示している。また、表示光Lに含まれるp偏光のグラフGpを点線で示している。
【0038】
図5(A)および(B)に示すように、表示光Lがs偏光である場合と表示光Lがp偏光である場合のいずれの場合でも、コンバイナ40の反射率は入射角θに応じて変化する。詳細には、図5(A)に示すように、表示光Lがs偏光である場合、入射角θが大きくなるに従い、コンバイナ40の反射率が大きくなっている。また、表示光Lがp偏光である場合、入射角θが0からブリュースター角(Brewster's angle)θbになるまでコンバイナ40の反射率が小さくなり、その後、入射角θが大きくなるに従い、コンバイナ40の反射率が大きくなっている。
【0039】
このように、コンバイナ40では反射率が入射角θに応じて変動する。その結果、図5(B)に示すように、HUD装置1で表示光Lの入射角θとなることが多い60-70°付近で、上述した表示領域Aの位置が調整されて入射角θが数度変化してしまうと、反射率が大きく変化してしまう。例えば、表示領域Aの位置が調整された結果、表示光Lの入射角θが65°から70°に変化すると、p偏光の場合で2-3倍程度も反射率が変化してしまう。また、s偏光の場合で1.5-1.6倍程度、反射率が変化してしまう。逆に、表示領域Aの位置が調整された結果、表示光Lの入射角θが70°から65°に変化すると、p偏光の場合で約0.3-0.5倍程度、反射率が変化し、s偏光の場合で0.6-0.7倍程度、反射率が変化してしまう。このような反射率の変化により、運転者5に到達する表示光Lの輝度が変化してしまい、場合により運転者5の視認性が低下してしまうことがある。
【0040】
そこで、視認性の低下を抑制するため、HUD装置1では、マイコン50が、調整ボタン26、27によって表示領域Aの位置がシフトされた場合に、そのシフトされた位置に応じてバックライト21の輝度を調整する。
【0041】
詳細にマイコン50の構成について説明すると、マイコン50は、図2に示すように、輝度調整テーブル55が記憶された記憶装置54を備えている。その輝度調整テーブル55は、予め実験により求めたものである。輝度調整テーブル55では、図6に示すように、液晶パネル22の表示部内での表示領域Aの位置P0、+Pn、-Pn(n=1、2、3・・)と、それらの位置から表示光Lを発したときのコンバイナ40の表示光Lの反射率R1,R2、R3・・とが対応付けられている。
【0042】
なお、位置P0は、表示領域Aの原点位置である。位置+Pn、-Pnは、原点位置P0から一定の距離のn倍だけ上または下へシフトした位置である。
また、位置P0、+Pn、-Pnは、液晶パネル22の表示部内での位置で特定されるものとして説明しているが、位置P0、+Pn、-Pnは、表示光Lの、コンバイナ40に対する入射角θで特定されていることが望ましい。その場合、位置+Pn、-Pnは、原点位置P0から一定の角度だけ上または下へシフトした位置であることが望ましい。輝度調整テーブル55で、これら位置P0、+Pn、-Pnに対応付けられる反射率R1、R2、R3・・が入射角θに対する反射率だからである。
【0043】
また、記憶装置54には、図2に示すように、位置算出データ56が記憶されている。そして、位置算出データ56には、表示領域Aの現在位置と表示領域Aを上または下へシフトさせたときのシフト量が格納されている。
【0044】
マイコン50は、調整ボタン26、27の上シフト信号、下シフト信号に応じて表示領域Aの位置がシフトさせる毎に、記憶装置54から位置算出データ56を読み出し、その位置算出データ56に含まれる表示領域Aの現在位置とシフト量からシフト後の表示領域Aの現在位置を求める。そして、マイコン50は、求めた表示領域Aの現在位置を、次回の現在位置の算出のデータとするため、表示領域Aの現在位置として位置算出データ56に書き込む。
【0045】
さらに、マイコン50は、記憶装置54から輝度調整テーブル55を読み出し、読み出した輝度調整テーブル55において、求めた表示領域Aの現在位置に対応する位置を特定する。そして、マイコン50は、その特定した位置における反射率で原点位置P0における反射率を除算して、原点位置P0が特定した位置の何倍の反射率であるかを表す反射率の比率を算出する。マイコン50は、算出した反射率の比率だけ輝度が変化する輝度情報を生成して、その輝度情報をLEDドライバ23に送信する。これにより、バックライト21が、通常の輝度よりも算出した反射率の比率だけ高い輝度で発光する。または低い輝度で発光する。マイコン50は、このような処理を行うことにより、調整ボタン26、27の上シフト信号、下シフト信号を受信して表示領域Aの位置をシフトする毎に、表示光Lの輝度を調整する。その結果、マイコン50は、表示光Lによって形成される虚像Vの視認性を保つ。
【0046】
以上のように、実施の形態1に係るHUD装置1では、マイコン50は、表示器20での表示領域Aの位置に基づいて、換言すると、表示光Lのコンバイナ40での投射位置に基づいて、表示器20がコンバイナ40へ投射する表示光Lの輝度を制御する。このため、表示光Lのコンバイナ40での投射位置が調整された場合でも、運転者5によって虚像Vが視認しやすい。
【0047】
マイコン50は、表示領域Aの位置から、その位置でのコンバイナ40の表示光Lの反射率データを取得し、取得した表示光Lの反射率データから表示光Lの輝度を制御する。このため、マイコン50は、表示光Lの輝度の制御を正確に行うことができる。その結果、虚像Vの視認性が均一に保たれやすい。
【0048】
(変形例1)
上述した輝度調整テーブル55では、表示領域Aの各位置に、それら各位置でのコンバイナ40の反射率が単に対応付けられているだけであるが、輝度調整テーブル55はこれに限定されない。輝度調整テーブル55では、生成した表示光Lのコンバイナ40への入射角が、図5(A)に示すブリュースター角θbとなる位置、またはブリュースター角θbに最も近くなる位置が原点位置P0であり、かつ、表示領域Aの位置+Pn、-Pnに、原点位置P0からの距離に基づいた反射率が対応付けられることが望ましい。このような輝度調整テーブル55であれば、表示光Lが主としてp偏光である場合に、虚像Vの視認性を保つ輝度調整ができるからである。
【0049】
この場合、輝度調整テーブル55の表示領域Aの位置+Pn、-Pnには、原点位置P0から離れるに従い大きくなる反射率が対応付けられることが望ましい。このような輝度調整テーブル55であれば、表示領域Aの位置+Pn、-Pnが原点位置P0から離れるに従い、バックライト21の輝度を低くする制御をマイコン50ができるからである。そして、表示光Lが主としてp偏光である場合に、虚像Vの視認性を効果的に保つことができるからである。
【0050】
なお、マイコン50は、このような輝度調整テーブル55を用いないで、液晶パネル22の輝度調整をしてもよい。その場合、マイコン50は、生成した表示光Lのコンバイナ40への入射角がブリュースター角θbとなる位置、またはブリュースター角θbに最も近くなる位置にある液晶パネル22の画素を基準画素とし、その基準画素からの位置に基づいて、液晶パネル22の画素それぞれから発せられる光の輝度を制御するとよい。
【0051】
(変形例2)
また、輝度調整テーブル55では、表示領域Aの位置P0、+Pn、-Pnそれぞれから発せられる表示光Lの、コンバイナ40への入射角が大きくなるに従い、対応付けられる反射率が大きくなることが望ましい。このような輝度調整テーブル55であれば、表示光Lが主としてs偏光である場合に、虚像Vの視認性を保つ輝度調整ができるからである。
【0052】
なお、この場合も、マイコン50は、このような輝度調整テーブル55によらないで、液晶パネル22の輝度調整をしてもよい。その場合、マイコン50は、液晶パネル22の画素それぞれから発せられる光のコンバイナ40への入射角が大きくなるに従い、画素それぞれが発する光の輝度を低くする制御を行うとよい。
【0053】
(実施の形態2)
実施の形態1では、HUD装置1が調整ボタン26、27を備え、運転者5がそれら調整ボタン26、27を押下することにより、運転者5が所望する高さに表示光Lが向けられる。しかし、本発明はこれに限定されない。HUD装置1は、調整ボタン26、27の代わりに、運転者5の視点を検出する視点情報取得機器を備えてもよい。
【0054】
実施の形態2では、HUD装置1が視点情報取得機器の一種であるアイトラッカーを備える。以下、図7を参照して、実施の形態2の構成について説明する。実施の形態2では、実施の形態1と異なる構成を中心に説明する。
【0055】
アイトラッカー28は、図示しないが、運転者5を撮像する撮像装置と、その撮像装置が撮像した画像から運転者5の瞳孔または虹彩の画像部分を抽出して視線を計測する画像処理装置とを備え、計測した視線のデータが含まれる視点情報を出力する。
【0056】
マイコン50は、アイトラッカー28が出力する視線のデータを受信して、その視線のデータから、実施の形態1で説明した表示領域Aの位置を、視線の先に対応した位置に調整する。詳細には、マイコン50は、アイトラッカー28が計測した視線のデータから表示領域Aの位置の、原点位置P0からのシフト量を求める。そして、マイコン50は、求めたシフト量から液晶ドライバ24へ送信する画像情報を調整する。これにより、マイコン50は、表示領域Aの位置を、視線の先に対応した位置に調整する。
【0057】
さらに、マイコン50は、記憶装置54から輝度調整テーブル55を読み出し、輝度調整テーブル55で、表示領域Aの調整後の位置に相当する位置に対応付けられた反射率を読み取る。マイコン50は、読み取った反射率で、原点位置P0での反射率を除算して、原点位置p0が表示領域Aの調整後の位置の何倍の反射率であるかを表す反射率の比率を算出する。マイコン50は、実施の形態1で説明したように、算出した反射率の比率だけ輝度が変化する輝度情報を生成し、その輝度情報をLEDドライバ23に送信する。これにより、バックライト21が、通常の輝度よりも算出した反射率の比率だけ高い輝度で発光する。または低い輝度で発光する。その結果、マイコン50は、表示光Lの輝度を調整して、表示光Lによって形成される虚像Vの視認性を保つ。
【0058】
以上のように、実施の形態2に係るHUD装置1では、アイトラッカー28が出力する視線のデータに基づいて、マイコン50が表示光Lの表示領域Aの位置を視線の先に対応した位置に調整する。このため、運転者5が変わって視線の高さが変化しても、その視線に対応した位置に表示光Lによる虚像Vを表示できる。
【0059】
また、マイコン50は、調整後の視線の先に対応した位置に基づいて、表示器20がコンバイナ40へ投射する表示光Lの輝度を制御する。このため、実施の形態2に係るHUD装置1では、運転者5が変わっても、虚像Vの視認性が低下しにくい。
【0060】
(実施の形態3)
実施の形態1および2では、表示器20がバックライト21と液晶パネル22で構成されているが、本発明はこれに限定されない。本発明では、表示器20は、表示光Lを被投射部材、例えば、コンバイナ40に投射することにより虚像を表示するものであればよい。このため、表示器20は、バックライト21と液晶パネル22以外の構成であってもよいし、バックライト21と液晶パネル22以外の構成を備えてもよい。例えば、表示器20は、シンボルマークが形成されたダイヤルと、そのダイヤルを照射するバックライトとを備えていてもよい。
【0061】
また、実施の形態1および2では、マイコン50が調整ボタン26、27の出力または、アイトラッカー28の視点情報に基づいて、液晶パネル22の表示部内の表示領域Aの位置を調整し、調整した位置に応じてバックライト21の輝度を調整する。しかし、本発明はこれに限定されない。本発明では、マイコン50,すなわち、制御部は、表示光Lの被投射部材に対する投射角度に基づいて、詳細には入射角θに基づいて、表示器20が投射する表示光Lの輝度を制御すればよい。このため、本発明では、例えば、マイコン50が調整ボタン26、27の出力または、アイトラッカー28の視点情報に基づいて、液晶パネル22の表示部内の表示領域Aの位置を調整し、かつ調整した位置に応じてバックライト21の輝度を調整すると共に、調整した位置に応じて、上記ダイヤルを照射するバックライトの輝度を調整してもよい。または、マイコン50が調整ボタン26、27の出力または、アイトラッカー28の視点情報に基づいて、直接、上記ダイヤルを照射するバックライトの輝度を調整してもよい。
【0062】
実施の形態3では、HUD装置1が、上記のダイヤルおよびバックライトを備えると共に、実施の形態2で説明した視点情報取得機器の一種であるアイトラッカー28を備える。そして、マイコン50がアイトラッカー28の視点情報に基づいて、直接、上記バックライトの輝度を調整する。以下、図8図10を参照して、実施の形態3の構成について説明する。実施の形態3では、実施の形態1、2と異なる構成を中心に説明する。
【0063】
図8に示すように、表示器20は、実施の形態1と2で説明したバックライト21と液晶パネル22に加え、シンボルマークが形成されたダイヤルプレート71と、そのダイヤルプレート71を照射する第2バックライト72とを有する。
【0064】
ダイヤルプレート71(単にダイヤルともいう)は、図9に示すように平板状である。液晶パネル22と第2バックライト72は、並んで配置されているが、ダイヤルプレート71は、それら液晶パネル22と第2バックライト72の両方を覆っている。そして、ダイヤルプレート71は、液晶パネル22を覆う部分が開口し、第2バックライト72を覆う部分に、図示しないウォーニング(警告)をするためのシンボルマークが形成されている。そのシンボルマークが形成された部分は、着色透明または無色透明若しくは半透明に形成され、光が透過可能である。そして、そのシンボルマークが形成された部分の下には、図9に示す第2バックライト72が設けられている。
【0065】
なお、ウォーニング(警告)をするためのシンボルマークは、単にウォーニングシンボルマーク、またはテルテールシンボルマークともいい、例えば、シートベルトの非着用やガソリン不足等を警告するマークのことである。
【0066】
第2バックライト72(単にバックライトともいう)は、例えば、LEDにより構成されている。そして、第2バックライト72は、図8に示すマイコン50の指令信号に基づいて第2LEDドライバ74がPWM信号を生成することにより、駆動され、そのPWM信号に応じて点灯すると共に、そのPWM信号に応じた輝度で発光する。そして、第2バックライト72は、点灯時に、ダイヤルプレート71の上述したシンボルマーク部分を照射し、シンボルマークを含む表示光Lを生成する。
【0067】
一方、マイコン50は、実施の形態2で説明したアイトラッカー28が出力する視点情報を受信して、その視点情報に含まれる視線のデータから、上記第2バックライト72の輝度を調整する。
【0068】
詳細には、マイコン50は、アイトラッカー28が計測した視線のデータから、その視線で視認できる表示光Lを運転者5に向けて発するとした場合の、そのときの表示光Lのコンバイナ40への入射角θを求める。そして、マイコン50は、さらに記憶装置54から輝度調整テーブル57を読み出す。
【0069】
ここで、輝度調整テーブル57について説明すると、実施の形態1では、輝度調整テーブル55において、液晶パネル22の表示部内での位置P0、+Pn、-Pnが表示光Lの、コンバイナ40に対する入射角θで特定されていることが望ましいと説明したが、実施の形態3の輝度調整テーブル57では、その望ましい特定方法でデータが構成されている。具体的には、輝度調整テーブル57は、液晶パネル22の表示部内での位置P0、+Pn、-Pnに、その位置P0、+Pn、-Pnで発せられる表示光Lのコンバイナ40への入射角θが対応付けられている。
【0070】
詳細には、図10に示すように、輝度調整テーブル57では、液晶パネル22の表示部内での表示領域Aの位置P0、+Pn、-Pnに、それらの位置から表示光Lを発したときのコンバイナ40への表示光Lの入射角θ1,θ2,θ3・・と、それらの位置から表示光Lを発したときのコンバイナ40の表示光Lの反射率R1,R2、R3・・とが対応付けられている。
【0071】
図8に戻って、マイコン50は、この輝度調整テーブル57を読み出し、読み出した輝度調整テーブル57に含まれる入射角θ1,θ2,θ3・・と表示光Lの反射率R1,R2、R3・・とのデータに基づいて、求めた入射角θでのコンバイナ40の反射率を求める。また、実施の形態1で原点位置は位置P0であると説明したが、マイコン50は、輝度調整テーブル57から、その原点位置である位置P0での反射率を取得する。マイコン50は、求めた入射角θでのコンバイナ40の反射率で原点位置P0での反射率を除算して、原点位置P0が特定した位置の何倍の反射率であるかを表す反射率の比率を算出する。マイコン50は、算出した反射率の比率だけ輝度が変化する輝度情報を生成して、その輝度情報を、図8に示す第2LEDドライバ73に送信する。これにより、第2バックライト72が、通常の輝度よりも算出した反射率の比率だけ高い輝度で発光する。または低い輝度で発光する。その結果、アイトラッカー28が計測した視線のデータに応じた輝度に表示光Lの輝度が調整される。これにより、マイコン50は、ダイヤルプレート71と第2バックライト72により生成される表示光Lの虚像Vの視認性を保つ。
【0072】
なお、表示器20は、第2バックライト72が発する光を検出する受光センサ74を備え、マイコン50(センサ制御部ともいう)は、その受光センサ74の出力値により第2バックライト72の異常の有無を判定する。例えば、マイコン50は、受光センサ74の出力値が閾値よりも小さい場合に、第2バックライト72の電線に断線があると判定する。このとき、マイコン50は、上記の反射率の比率の算出ステップで算出した反射率の比率に応じて閾値を変動させ、その変動する閾値を用いて第2バックライト72の断線を判定してもよい。
【0073】
以上のように、実施の形態3に係るHUD装置1では、表示器20が、シンボルマークを備えるダイヤルプレート71と、ダイヤルプレート71を照射する第2バックライト72とを有する。そして、マイコン50が、アイトラッカー28が出力する視線のデータに基づいて、第2バックライト72の輝度を調整する。このため、運転者5の視線の高さが変化しても、表示光Lの明るさが保たれ、虚像Vの視認性が低下しにくい。
【0074】
以上、本発明の実施の形態1、2に係るヘッドアップディスプレイ装置およびヘッドアップディスプレイ装置の制御方法について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0075】
例えば、実施の形態1、2では、輝度調整テーブル55で表示領域Aの各位置P0、+Pn、-Pnに、それら各位置での反射率が対応付けられている。また、マイコン50が輝度調整テーブル55を読み出して、輝度調整テーブル55の反射率のデータからLEDドライバ23へ送信する輝度情報を生成している。しかし、本発明はこれに限定されない。輝度調整テーブル55では、表示領域Aの各位置P0、+Pn、-Pnに、バックライト21の輝度を示す輝度データが対応付けられていてもよい。そして、マイコン50は、その輝度調整テーブル55を読み出して、輝度調整テーブル55の輝度データからLEDドライバ23へ送信する輝度情報を決めてもよい。
【0076】
実施の形態1、2では、HUD装置1がコンバイナ40を備えているが、本発明では、HUD装置1がコンバイナ40を備えず、ウインドシールド3に表示光Lを投射して、表示光Lがウインドシールド3で反射することにより虚像Vを形成してもよい。この場合、輝度調整テーブル55での、表示領域Aの各位置P0、+Pn、-Pnに対応付けられた反射率は、表示光Lのコンバイナ40での反射率ではなく、表示光Lのウインドシールド3での反射率であるとよい。
【0077】
また、本発明では、コンバイナ40を備えるHUD装置1とコンバイナ40を備えないHUD装置が併用されてもよい。
【0078】
さらに、実施の形態1、2では、HUD装置1がミラー部材30を備える。しかし、本発明では、HUD装置1はこれに限定されない。本発明では、HUD装置1は、表示光Lを被投射部材に投射することにより虚像Vを表示する表示器20と、表示光Lの被投射部材に対する入射角、すなわち投射角度に基づいて表示器20が投射する表示光Lの輝度を制御するマイコン50、すなわち制御部と、を備えていればよい。従って、本発明では、ミラー部材30は任意の部材である。HUD装置1は、表示器20がコンバイナ40に表示光Lを直接投影してもよい。例えば、HUD装置1は、図11に示すように、筐体10に収容された表示器20であって、天板部に形成され、かつ防塵カバー12に覆われた開口部11に向けて表示光Lを発する表示器20と、筐体10の上に設けられたホルダ42に保持され、開口部11から出射する表示光Lが投射されるコンバイナ40と、を備えるものであってもよい。
【0079】
実施の形態1、2では、表示器20が備える液晶パネル22の表示部内での表示領域Aを変更することにより、表示光Lのコンバイナ40への投射位置、詳細には表示光Lのコンバイナ40への入射角を調整する。しかし、本発明は、これに限定されない。本発明では、上述したように、表示器20は、表示光Lを被投射部材に投射することにより虚像Vを表示するものであればよい。従って、液晶パネル22の表示部内での表示領域Aを変更することによらないで、表示光Lを被投射部材に投射するときの投射角度を調整してもよい。例えば、HUD装置1は、表示器20からの表示光Lを反射して、反射された表示光Lをコンバイナ40へ向ける可動ミラーを備え、その可動ミラーを可動させることにより、表示光Lのコンバイナ40への入射角を調整してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 HUD装置
2 車両
3 ウインドシールド
4 ダッシュボード
5 運転者
10 筐体
11 開口部
12 防塵カバー
20 表示器
21 バックライト
22 液晶パネル
23 LEDドライバ
24 液晶ドライバ
25 コンバイナ駆動モータ
26,27 調整ボタン
28 アイトラッカー
30 ミラー部材
40 コンバイナ
41 支持部材
42 ホルダ
50 マイコン
51 CPU
52 ROM
53 RAM
54 記憶装置
55,57 輝度調整テーブル
56 位置算出データ
60 CAN信号線
61 ECU
62 IGSW
71 ダイヤルプレート
72 第2バックライト
73 第2LEDドライバ
74 受光センサ
A 表示領域
B 後方
F 前方
Gp,Gs グラフ
L 表示光
V 虚像
θ 入射角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11