(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097682
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20250624BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20250624BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20250624BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027 501
G03F7/075 501
G03F7/038 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214018
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】金谷 慎吾
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AC23
2H225AC43
2H225AC44
2H225AC46
2H225AD06
2H225AN38P
2H225AP11P
2H225BA05P
2H225BA20P
2H225CA15
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】硬化後の屈折率が低く、かつ、パターニング性に優れる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)光ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤で表面処理された、平均一次粒子径が100nm以下のナノシリカ粒子、(B)カルボキシル基、および光ラジカル重合性官能基を有する光ラジカル硬化性樹脂、ならびに(C)光ラジカル重合開始剤を含み、前記(A)成分を固形分中55~95重量%含む、感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤で表面処理された、平均一次粒子径が100nm以下のナノシリカ粒子、
(B)カルボキシル基、および光ラジカル重合性官能基を有する光ラジカル硬化性樹脂、ならびに
(C)光ラジカル重合開始剤を含み、
前記(A)成分を固形分中55~95重量%含む、
感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、ナノシリカ粒子100重量部に対し、光ラジカル重合性官能基を含むシランカップリング剤0.1~60重量部で処理したものである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分および前記(B)成分が有する光ラジカル重合性官能基が(メタ)アクリル基である、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物が硬化されてなる、屈折率が1.49以下である硬化膜。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化膜を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ分野やレンズ等の光学部品では、外部からの光が表面で反射すると視覚効果が損なわれる。光の反射を低減させるために、表面に低屈折率膜を積層する工夫がなされてきた。低屈折率膜の材料としてはフッ素系ポリマーが検討されているが、フッ素系ポリマーは、波長589nmにおける屈折率が1.37~1.46程度であり、屈折率がやや高い。また、人体に潜在的な危険性を持つとしてPFASの使用の規制が進められており、フッ素を含まない低屈折率膜が求められている。
【0003】
特許文献1は中空粒子又は多孔質粒子を含み、低屈折率のパターンを形成可能な感光性樹脂組成物を開示している。特許文献2はコロイド状シリカ、および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む光硬化性単量体を含む、ナノインプリント用の光硬化性組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2009/041646号
【特許文献2】特開2012-159689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硬化後の屈折率が低く、かつ、パターニング性に優れる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、(A)光ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤で表面処理された、平均一次粒子径が100nm以下のナノシリカ粒子、(B)カルボキシル基、および光ラジカル重合性官能基を有する光ラジカル硬化性樹脂、ならびに(C)光ラジカル重合開始剤を含む感光性樹脂組成物を硬化すると、屈折率が低くパターニング性に優れる硬化膜が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
<1>(A)光ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤で表面処理された、平均一次粒子径が100nm以下のナノシリカ粒子、
(B)カルボキシル基、および光ラジカル重合性官能基を有する光ラジカル硬化性樹脂、ならびに
(C)光ラジカル重合開始剤を含み、
前記(A)成分を固形分中55~95重量%含む、
感光性樹脂組成物。
【0008】
<2>前記(A)成分が、ナノシリカ粒子100重量部に対し、光ラジカル重合性官能基を含むシランカップリング剤0.1~60重量部で処理したものである、項1に記載の感光性樹脂組成物。
【0009】
<3>前記(A)成分および前記(B)成分が有する光ラジカル重合性官能基が(メタ)アクリル基である、項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【0010】
<4>項1または2に記載の感光性樹脂組成物が硬化されてなる、屈折率が1.49以下である硬化膜。
【0011】
<5>項4に記載の硬化膜を有する積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化すると、屈折率が低くパターニング性に優れる硬化膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】硬化膜の断面のSEM画像(倍率10万倍)を示す。
【
図2】硬化膜の断面のSEM画像(倍率20万倍)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<感光性樹脂組成物>>
本発明の感光性樹脂組成物は、
(A)光ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤で表面処理された、平均一次粒子径が100nm以下のナノシリカ粒子、
(B)カルボキシル基、および光ラジカル重合性官能基を有する光ラジカル硬化性樹脂、ならびに
(C)光ラジカル重合開始剤を含み、
前記(A)成分を固形分中55~95重量%含むことを特徴とする。
【0015】
<ナノシリカ粒子>
ナノシリカ粒子は、感光性樹脂組成物からなる硬化膜の屈折率を低下させる。ナノシリカ粒子としては、球状の中実シリカ粒子、中空シリカ粒子、数珠状シリカ粒子、メソポーラスシリカ粒子等を使用できる。本発明では光ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤での表面処理を行うため、球状の中実シリカ粒子を使用しても、低屈折率の硬化膜を得ることができる。また、内部に空洞を持つ中空シリカ粒子、複数のシリカ単粒子が数珠状につながり表面積の大きい数珠状シリカ粒子、メソポーラスシリカ粒子を使用すれば低屈折率の硬化膜を得やすい。
【0016】
ナノシリカ粒子の平均一次粒子径は100nm以下であるが、60nm以下が好ましい。平均一次粒子径が100nm以下のときには感光性樹脂組成物の透明度が高くなる傾向があり、硬化のための光が透過しやすいため硬化性に優れる傾向にある。平均一次粒子径の下限は特に限定されないが一般的には5nm以上である。
【0017】
<表面処理>
ナノシリカ粒子としては、光ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものを使用する。シランカップリング剤に含まれる加水分解性シリル基としては、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基が挙げられる。これらのアルコキシシリル基を構成するアルキル基の炭素数は1~4が好ましく、1~2がより好ましい。
【0018】
シランカップリング剤の加水分解性シリル基と光ラジカル重合性官能基は、直接結合、エチレン、プロピレン、ブチレン等のアルキレン;フェニレン、ビフェニレン等のアリーレン;オキシエチレン、オキシプロピレン等のオキシアルキレン等を介して結合している。なかでも、アルキレンを介して結合していることが好ましい。
【0019】
シランカップリング剤に含まれる光ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の具体例として、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0021】
ビニル基を有するシランカップリング剤の具体例として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0022】
以上のシランカップリング剤の中でも、樹脂成分との相溶性や光架橋性の点で(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤が好ましく、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランがより好ましい。
【0023】
シランカップリング剤によるナノシリカ粒子の表面処理では、シランカップリング剤の加水分解性シリル基の加水分解によりシラノール基を生じさせ、このシラノール基とナノシリカ粒子のシラノール基との間で脱水縮合を形成する。その結果、表面にシロキサン結合を介した光ラジカル重合性官能基を持つナノシリカ粒子が得られる。
【0024】
表面処理の反応は、溶媒中でシランカップリング剤とナノシリカ粒子を共存させて、シランカップリング剤の加水分解性シリル基の加水分解と、シランカップリング剤のシラノール基とナノシリカ粒子のシラノール基との間の脱水縮合を一段階で行うことができる。具体的には、例えばシランカップリング剤を含む溶液にナノシリカ粒子を浸漬する方法、ナノシリカ粒子にシランカップリング剤を含む溶液を噴霧する方法、ナノシリカ粒子の分散液にシランカップリング剤を添加する方法等が挙げられる。
【0025】
表面処理の反応時の温度条件は20~100℃が好ましく、40~60℃がより好ましい。時間条件は5~20時間が好ましく、10~15時間がより好ましい。表面処理の反応において、シランカップリング剤の使用量はナノシリカ粒子の固形分100重量部に対し0.1~60重量部が好ましく、1~40重量部がより好ましい。
【0026】
表面処理は、酸性または塩基性条件で行うことができる。酸性条件はpH2~5が好ましく、pH3~4がより好ましい。pH調整のためにはギ酸、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルフォン酸、及びp-トルエンスルホン酸等の水溶液を使用できる。
【0027】
塩基性条件はpH8~12が好ましく、pH8~10がより好ましい。pH調整のために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の水溶液を使用できる。
【0028】
表面処理の反応系は水を含むことができる。水の量は、シランカップリング剤とナノシリカ粒子の合計量100重量部に対し、0.05~50重量部が好ましく、0.1~10重量部がより好ましい。また、溶媒としては、水の他に、有機溶媒を使用できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチル-1-アセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類が挙げられる。
【0029】
感光性樹脂組成物に含まれる、光ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤で表面処理された、平均一次粒子径が100nm以下のナノシリカ粒子の量は、固形分中55~95重量%であるが、60~90重量%が好ましい。55重量%未満では屈折率が高くなる傾向がある。95重量%を超えると現像性が低下する傾向がある。なお、ここでいう固形分とは、溶媒を除いた非揮発成分のことである。
【0030】
<光ラジカル硬化性樹脂>
感光性樹脂組成物は、バインダーとしてカルボキシル基、および光ラジカル重合性官能基を有する光ラジカル硬化性樹脂を含む。光ラジカル重合性官能基は、バインダーの硬化に寄与すると同時に、表面処理されたナノシリカ粒子を硬化膜中に保持する。カルボキシル基は硬化膜のアルカリ溶解性に寄与する。
【0031】
光ラジカル硬化性樹脂の光ラジカル重合性官能基としては、炭素炭素二重結合を有するものが好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基がより好ましい。カルボキシル基と(メタ)アクリル基を含む光ラジカル硬化性樹脂としては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、β-カルボキシエチルアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸アクリレート、またはこれらの重合体が挙げられる。カルボキシル基と(メタ)アクリル基を含む光ラジカル硬化性樹脂として、脂環式骨格を有するカルボキシル基含有アクリル共重合体を挙げることができ、この樹脂を含む製品として、サイクロマーP(ACA)Z250((株)ダイセル社製、固形分45%、Mw22,000)、サイクロマーP(ACA)Z300((株)ダイセル社製、固形分39%、Mw21,000)、サイクロマーP(ACA)Z320((株)ダイセル社製、固形分39%、Mw23,000)が挙げられる。カルボキシル基とビニル基を含む光ラジカル硬化性樹脂としては、アクリル酸ビニルエステル、ビニル酢酸、またはこれらの重合体等が挙げられる。
【0032】
また、(A)表面処理されたナノシリカ粒子が有する光ラジカル重合性官能基と、(B)光ラジカル硬化性樹脂が有する光ラジカル重合性官能基のいずれもが、(メタ)アクリル基であることが好ましい。このとき、ナノシリカ粒子と他の成分との相溶性の向上や、三次元架橋の形成による不溶化などの効果がある。
【0033】
光ラジカル硬化性樹脂は、酸価が20~300mgKOH/gであることが好ましく、30~ 200mgKOH/gであることがより好ましく、40~150mgKOH/gであることがさらに好ましい。20mgKOH/g未満では現像性が著しく低下する傾向があり、300mgKOH/gを超えると溶解性が高すぎる傾向がある。
【0034】
光ラジカル硬化性樹脂の重量平均分子量は、1,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましく、8,000~50,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が1,000未満では塗布性が低下する傾向があり、100,000を超えると現像性が低下する傾向がある。
【0035】
感光性樹脂組成物に含まれる光ラジカル硬化性樹脂の量は、(A)表面処理されたナノシリカ粒子の100重量部に対し3~70重量部であることが好ましく、3~50重量部であることがより好ましく、5~40重量部であることがさらに好ましい。光ラジカル硬化性樹脂の量が3重量部未満では硬化不十分となる傾向があり、70重量部を超えると黄変が強くなる傾向がある。
【0036】
<光ラジカル重合開始剤>
光ラジカル重合開始剤は、光の照射により遊離ラジカルを発生し、(A)表面処理されたナノシリカ粒子、および(B)光ラジカル硬化性樹脂の重合を促進する。
【0037】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。これらを含む製品名としてはIrgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03、Irgacure OXE04(BASF製)等が挙げられる。
【0038】
感光性樹脂組成物に含まれる光ラジカル重合開始剤の量は、(A)表面処理されたナノシリカ粒子、および(B)カルボキシル基、および光ラジカル重合性官能基を有する光ラジカル硬化性樹脂の合計量100重量部に対して、0.1~25重量部が好ましく、0.5~15重量部がより好ましく、1~10重量部がさらに好ましい。
【0039】
感光性樹脂組成物は、(A)表面処理されたナノシリカ粒子、(B)光ラジカル硬化性樹脂、および(C)光ラジカル重合開始剤、ならびに必要に応じて後述する任意成分を混合することにより得られる。混合は、撹拌機を用いた撹拌混合や、ロールミルを用いた混練等により行うことができる。各成分の混合順は特に限定されない。混合時の温度は1~60℃が好ましい。
【0040】
<任意成分>
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)表面処理されたナノシリカ粒子、(B)光ラジカル硬化性樹脂、および(C)光ラジカル重合開始剤に加えて、任意に他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば溶媒、レベリング剤、(A)表面処理されたナノシリカ粒子以外の無機微粒子、導電性高分子、炭素材料等が挙げられる。
【0041】
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチル-1-アセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物が溶媒を含む場合、その含有量は特に限定されず、感光性樹脂組成物の固形分率が所望の値となるように適宜調整することができる。本発明の感光性樹脂組成物の固形分率は、特に限定されないが、1~80重量%であることが好ましく、5~30重量%であることがより好ましい。固形分率が1重量%未満であると膜厚が不十分となることがあり、80重量%を超えると成膜が困難となることがある。
【0043】
レベリング剤としては特に限定されず、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン系化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素系化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体等のポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;アクリル系化合物等が挙げられる。レベリング剤の配合量は、感光性樹脂組成物の固形分中0.001~5重量%が好ましく、0.01~1重量%がより好ましい。
【0044】
(A)表面処理されたナノシリカ粒子以外の無機微粒子としては、例えば、金属酸化物微粒子、窒化物、2種以上の金属元素から構成される複合酸化物、金属酸化物に異種の元素がドープされた化合物等が挙げられる。金属酸化物微粒子として、具体的には、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3、FeO、Fe3O4)、酸化銅(CuO、Cu2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化インジウム(In2O3、In2O)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化タングステン(WO3、W2O5)、酸化鉛(PbO、PbO2)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化セリウム(CeO2、Ce2O3)、酸化アンチモン(Sb2O5、Sb2O5)、酸化ゲルマニウム(GeO2、GeO)等が挙げられる。無機微粒子の配合量は、(A)表面処理されたナノシリカ粒子100重量部に対して0.1~35重量部が好ましい。
【0045】
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、これらの誘導体、及び、これらとドーパントとの複合体等が挙げられ、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、又は、ポリ(3,4-二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体が好ましい。導電性高分子の配合量は、(A)表面処理されたナノシリカ粒子100重量部に対して0.1~35重量部が好ましい。
【0046】
炭素材料としては、例えば、カーボンナノ材料、グラフェン、フラーレン等が挙げられる。炭素材料の配合量は、(A)表面処理されたナノシリカ粒子100重量部に対して0.1~35重量部が好ましい。
【0047】
<<硬化膜>>
本発明の硬化膜は、前記感光性樹脂組成物が硬化されてなり、屈折率が1.49以下であることを特徴とする。屈折率は1.49以下であるが、1.45以下が好ましい。屈折率の下限は限定されないが、一般的には1.20以上である。なお、硬化膜の屈折率は波長589nmで測定される値である。
【0048】
硬化膜は、前記感光性樹脂組成物を基材に塗布した後、光硬化させることにより得られる。基材への塗布は、バーコート、ディップコート、スピンコート、スリットコート、インクジェット等の一般的な方法により行うことができる。硬化のための光照射量は特に限定されず、例えば5~2000mJ/cm2の光照射量が挙げられる。
【0049】
硬化膜の厚みは0.1~10μmであることが好ましく、0.1~5μmであることがより好ましい。厚みが0.1μm未満では現像後に膜が残らないことがあり、10μmを超えると、パターニング性が低下することがある。
【0050】
硬化膜を形成する基材の材質は、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン樹脂、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリサルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂等が挙げられる。基材の厚みは特に限定されないが、50~200μmが好ましい。
【0051】
<<積層体>>
本発明の積層体は、前記硬化膜を有することを特徴とする。積層体は、硬化膜との他に、粘着層、導電層、反射防止層等を有していてもよい。積層体は、屈折率が低く、かつ、パターニング性に優れるため、光学用途での保護層、帯電防止層や、電子機器や半導体での絶縁等に好適に使用できる。
【実施例0052】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0053】
(1)使用材料
(1-1)ナノシリカ粒子
球状シリカ粒子(プロピレングリコールモノメチルエーテル分散シリカゾル、SiO2 30%、平均一次粒子径12nm、日産化学社製、PGM-ST)
数珠状シリカ粒子(プロピレングリコールモノメチルエーテル分散シリカゾル、SiO2 15%、平均一次粒子径12nm、日産化学社製、PGM-ST-UP)
(1-2)シランカップリング剤
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-5103)
(1-3)光ラジカル硬化性樹脂
カルボキシル基含有アクリル樹脂(ダイセル社製、サイクロマーP(ACA)Z250)
(1-4)光ラジカル重合開始剤
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)](BASF社製、Irgacure OXE01)
【0054】
(2)ナノシリカ粒子の表面処理(製造例1~4)
表1に記載の各成分を混合し、50℃で12時間撹拌することにより、シランカップリング剤で表面処理されたナノシリカ粒子分散液を得た。
【0055】
【0056】
(3)感光性樹脂組成物の作製(実施例1~6、比較例1~4)
下記表2に記載の重量比で各成分を混合し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを使用し、全固形分を20重量%に調節し、感光性樹脂組成物を得た。なお、表2において(A)表面処理ナノシリカ粒子、ナノシリカ粒子、(B)光ラジカル硬化性樹脂は固形分の重量比を示す。
【0057】
(4)評価方法
(4-1)屈折率
得られた感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いてシリコンウエハ基材上に塗布し、500mJ/cm2の条件で露光を行い、感光性樹脂組成物を硬化させることにより、基材、および硬化膜からなる積層体を得た。硬化膜の膜厚は1μmであった。エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム社製、M-2000U)を用いて、膜厚1μm、波長589nmにおける屈折率を測定した。結果を表2に示す。
【0058】
(4-2)パターニング性
得られた感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いてシリコンウエハ基材上に塗布し、フォトマスクを介して500mJ/cm2の条件で露光を行い、露光部の感光性樹脂組成物を硬化させた。その後、2.35重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液に浸漬し、非露光部の感光性樹脂組成物を除去する現像処理によって、パターンを形成し、基材、およびパターニングされた硬化膜からなる積層体を得た。硬化膜の膜厚は1μmであった。パターンをマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-5000)で観察し、下記の基準により評価した。結果を表2に示す。
○:パターン形状が確認できる(100μmL/S)
×:パターン形状が確認できない(100μmL/S)
【0059】
【0060】
比較例1および3では、表面処理していないナノシリカ粒子を使用した結果、硬化膜からナノシリカ粒子が脱落し、硬化膜の表面外観が劣っていた。比較例2では、比較例1の組成にシランカップリング剤を追加したが、硬化膜の表面外観が劣っていた。比較例4では、ナノシリカ粒子を含まないため、硬化膜の屈折率が高かった。実施例1~6では、屈折率が充分に低減され、パターニング性は良好であった。
【0061】
実施例4の硬化膜の断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、Regulus8220)で観察した。
図1(倍率10万倍)、
図2(倍率20万倍)に示すように、多数の空隙構造が確認された。これらの空隙構造により硬化膜の屈折率が低下したと考えられる。
【0062】
本発明は、例えば以下の態様を包含してよい。
<1>(A)光ラジカル重合性官能基を有するシランカップリング剤で表面処理された、平均一次粒子径が100nm以下のナノシリカ粒子、
(B)カルボキシル基、および光ラジカル重合性官能基を有する光ラジカル硬化性樹脂、ならびに
(C)光ラジカル重合開始剤を含み、
前記(A)成分を固形分中55~95重量%含む、
感光性樹脂組成物。
【0063】
<2>前記(A)成分が、ナノシリカ粒子100重量部に対し、光ラジカル重合性官能基を含むシランカップリング剤0.1~60重量部で処理したものである、項1に記載の感光性樹脂組成物。
【0064】
<3>前記(A)成分および前記(B)成分が有する光ラジカル重合性官能基が(メタ)アクリル基である、項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【0065】
<4>項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物が硬化されてなる、屈折率が1.49以下である硬化膜。
【0066】
<5>項4に記載の硬化膜を有する積層体。