(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025097703
(43)【公開日】2025-07-01
(54)【発明の名称】アスファルト改質材
(51)【国際特許分類】
C08G 63/56 20060101AFI20250624BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20250624BHJP
C08L 67/06 20060101ALI20250624BHJP
E01C 7/26 20060101ALI20250624BHJP
【FI】
C08G63/56
C08L95/00
C08L67/06
E01C7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214046
(22)【出願日】2023-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋野 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良一
(72)【発明者】
【氏名】林 拓実
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
2D051AF06
2D051AG01
2D051AG13
2D051AG16
2D051AG18
2D051EB04
4J002AG001
4J002CF222
4J002DM006
4J002FD016
4J002GL00
4J029AA03
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD05
4J029AE18
4J029BA03
4J029BF20
4J029CB06A
4J029FA02
4J029FB02
4J029FB07
4J029GA12
4J029JB171
4J029JE162
4J029JF371
4J029KB16
4J029KE08
(57)【要約】
【課題】低い温度でアスファルト混合物を製造した場合でも施工性を維持して、耐久性に優れたアスファルト舗装を製造することができるアスファルト混合物を得るためのアスファルト改質材、並びに、アスファルト混合物及びその製造方法。
【解決手段】ポリエステルを含むアスファルト改質材であって、
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であり、かつ、下記条件(i)及び条件(ii)の少なくとも一方の条件を満たし、
(i)前記カルボン酸成分が1価のカルボン酸を含む
(ii)前記アルコール成分が1価のアルコールを含む
前記ポリエステル中の前記1価のカルボン酸由来の構成単位及び/又は前記1価のアルコール由来の構成単位の含有量が、前記アルコール成分由来の構成単位及び前記ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、5モル%以上20モル%以下である、アスファルト改質材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを含むアスファルト改質材であって、
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であり、かつ、下記条件(i)及び条件(ii)の少なくとも一方の条件を満たし、
(i)前記カルボン酸成分が1価のカルボン酸を含む
(ii)前記アルコール成分が1価のアルコールを含む
前記ポリエステル中の前記1価のカルボン酸由来の構成単位及び/又は前記1価のアルコール由来の構成単位の含有量が、前記アルコール成分由来の構成単位及び前記ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、5モル%以上20モル%以下である、アスファルト改質材。
【請求項2】
前記ポリエステル中の前記ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の含有量が、前記アルコール成分由来の構成単位及び前記ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、50モル%以上80モル%以下である、請求項1に記載のアスファルト改質材。
【請求項3】
前記カルボン酸成分が、芳香族ジカルボン酸を含む、請求項1又は2に記載のアスファルト改質材。
【請求項4】
前記1価のカルボン酸が、1価の芳香族カルボン酸である、請求項1~3のいずれかに記載のアスファルト改質材。
【請求項5】
前記ポリエステルの軟化点が100℃以下である、請求項1~4のいずれかに記載のアスファルト改質材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のアスファルト改質材と、アスファルトと、骨材と、を含有するアスファルト混合物。
【請求項7】
前記アスファルトが、ストレートアスファルト又は改質アスファルトである、請求項6に記載のアスファルト混合物。
【請求項8】
前記改質アスファルトが、熱可塑性エラストマーで改質したポリマー改質アスファルトである、請求項7に記載のアスファルト混合物。
【請求項9】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項8に記載のアスファルト混合物。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載のアスファルト改質材とアスファルトと骨材とを160℃以下で混合する工程を含む、アスファルト混合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト改質材、アスファルト混合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道や駐車場、貨物ヤード、歩道等の舗装には、敷設が比較的容易であり、舗装作業開始から交通開始までの時間が短くてすむことから、アスファルト混合物を用いるアスファルト舗装が行われている。このアスファルト舗装は、骨材をアスファルトで結合したアスファルト混合物によって路面が形成されているので、舗装道路は良好な硬度や耐久性を有している。
【0003】
特許文献1には、施工した舗装体表面のキメの深いことと舗装体内部の緻密性の両立ができるアスファルト改質剤として、アルコール成分由来の構成単位と、カルボン酸成分由来の構成単位とを含み、該アルコール成分がビスフェノール構造を有するアルコールを含み、該カルボン酸成分が1価のカルボン酸を含むポリエステルを含むアスファルト改質剤が開示されている。
特許文献2には、アスファルト合材の充填効率およびアスファルト舗装の強度が両立できるアスファルト混合物を得るためのアスファルト改質剤として、1価の脂肪族カルボン酸由来の構成単位及び/又は1価の脂肪族アルコール由来の構成単位結晶性ポリエステル(A)を含むアスファルト改質剤が開示されている。
特許文献3には、高温で長時間保管された後でも、ポリエステルがアスファルト中に均一に分散する、貯蔵安定性に優れたアスファルト組成物を得るためのアスファルト改質剤として、所定炭素数の脂肪族ジオール及びビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物をそれぞれ所定量含むアルコール成分由来の構成単位と、カルボン酸成分由来の構成単位とを含むポリエステルからなる、アスファルト改質剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2023-032859号公報
【特許文献2】特開2023-079026号公報
【特許文献3】特開2022-170725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の環境負荷低減および原油高騰の観点から、加熱アスファルト混合物の製造時の燃料を削減し、従来と比較して低い温度にて混錬する中温化の取組みがなされている。
一方で、熱可塑性樹脂、エラストマー等のポリマーを添加したアスファルトでの製造において、これらのポリマーの増粘又は弾性化により、施工不良及び強度不足を誘発する場合がある。
特許文献1に記載の技術により、耐久性の優れたアスファルト舗装が得られる。しかしながら、加熱アスファルト混合物を低い温度で製造すると改質効果は低下し、十分なアスファルト舗装の耐久性が得られない場合がある。
【0006】
本発明は、低い温度でアスファルト混合物を製造した場合でも施工性を維持して、耐久性に優れたアスファルト舗装を製造することができるアスファルト混合物を得るためのアスファルト改質材、並びに、アスファルト混合物及びその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕 ポリエステルを含むアスファルト改質材であって、
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であり、かつ、下記条件(i)及び条件(ii)の少なくとも一方の条件を満たし、
(i)前記カルボン酸成分が1価のカルボン酸を含む
(ii)前記アルコール成分が1価のアルコールを含む
前記ポリエステル中の前記1価のカルボン酸由来の構成単位及び/又は前記1価のアルコール由来の構成単位の含有量が、前記アルコール成分由来の構成単位及び前記ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、5モル%以上20モル%以下である、アスファルト改質材。
〔2〕 〔1〕に記載のアスファルト改質材と、アスファルトと、骨材と、を含有するアスファルト混合物。
〔3〕 〔1〕に記載のアスファルト改質材とアスファルトと骨材とを160℃以下で混合する工程を含む、アスファルト混合物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低い温度でアスファルト混合物を製造した場合でも施工性を維持して、耐久性に優れたアスファルト舗装を製造することができるアスファルト混合物を得るためのアスファルト改質材、並びに、アスファルト混合物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[アスファルト改質材]
本発明のアスファルト改質材は、ポリエステルを含むアスファルト改質材であって、
前記ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であり、かつ、下記条件(i)及び条件(ii)の少なくとも一方の条件を満たし、
(i)前記カルボン酸成分が1価のカルボン酸を含む
(ii)前記アルコール成分が1価のアルコールを含む
前記ポリエステル中の前記1価のカルボン酸由来の構成単位及び/又は前記1価のアルコール由来の構成単位の含有量が、前記アルコール成分由来の構成単位及び前記ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、5モル%以上20モル%以下である。
【0010】
本発明者らは、特定のポリエステルを含むアスファルト改質材であれば、低い温度でアスファルト混合物を製造した場合でも施工性を維持して、耐久性に優れたアスファルト舗装を製造することができるアスファルト混合物を得ることができることを見出した。
耐久性に優れるアスファルト舗装は、例えばホイールトラック試験により測定されるわだち掘れ量が少ない。施工性に優れるアスファルト混合物は、得られるアスファルト舗装の空隙率が小さい。
【0011】
本発明の効果が得られる詳細な機構は不明であるが、一部は以下のように考えられる。
ポリエステルによるアスファルトの改質効果は、アスファルトとポリエステルの間の相互作用、及び、骨材とポリエステルの間の相互作用が協調して発揮されると考えられる。低い温度でアスファルト混合物を製造する場合には、骨材とポリエステルの間の相互作用である水素結合が一層強固となり、アスファルトとポリエステルの間の相互作用が相対的に弱くなると考えられる。その結果、ポリエステルと各成分との相互座用のバランスが崩れ、十分なアスファルトの改質効果が発揮できなくなると推測される。
本発明のアスファルト改質材は、特定の構造を有するポリエステルを使用することで、低い温度でもアスファルトとポリエステルの間の相互作用が十分進行すると考えられる。その結果、ポリエステルと各成分との相互座用が制御され、ポリエステルによるアスファルトの優れた改質効果が発揮されると考えられる。
【0012】
<ポリエステル>
本発明のアスファルト改質材が含むポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であり、かつ、下記条件(i)及び条件(ii)の少なくとも一方の条件を満たし、
(i)前記カルボン酸成分が1価のカルボン酸を含む
(ii)前記アルコール成分が1価のアルコールを含む
前記ポリエステル中の前記1価のカルボン酸由来の構成単位及び/又は前記1価のアルコール由来の構成単位の含有量が、前記アルコール成分由来の構成単位及び前記ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、5モル%以上20モル%以下である。
以下、アルコール成分、カルボン酸成分及びポリエチレンテレフタレートについて説明する。
【0013】
(アルコール成分)
アルコール成分としては、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
脂肪族ジオールとしては、好ましくは主鎖の炭素数2以上12以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールであり、より好ましくは主鎖の炭素数2以上8以下の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールである。
また、脂肪族ジオールは好ましくは飽和脂肪族ジオールである。
脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
【0015】
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、水素添加ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。
【0016】
芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0017】
【0018】
〔式中、OR1及びR1Oはアルキレンオキシドであり、R1は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは4以下である。〕
【0019】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
3価以上の多価アルコールとしては、好ましくは3価アルコールである。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
【0021】
アルコール成分は、上記(ii)を満たす場合、1価のアルコールを含む。
1価のアルコールとしては、1価の脂肪族アルコールが挙げられる。これらの1価のアルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
1価の脂肪族アルコールは、主鎖が直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよい。また、1価の脂肪族アルコールは、好ましくは1価の飽和脂肪族アルコールである。
1価の脂肪族アルコールの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは12以上であり、そして、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、
更に好ましくは20以下である。
1価のアルコールとしては、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ドコサノール等の1価の脂肪族アルコールが挙げられる。これらの1価のアルコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上6価以下の多価カルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
脂肪族ジカルボン酸としては、主鎖の炭素数が、好ましくは4以上であり、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、より好ましくは6以下の脂肪族ジカルボン酸、例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、炭素数1以上20以下のアルキル基若しくは炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。
【0024】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、又は、これらの無水物、これらのアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)が挙げられる。以上の芳香族ジカルボン酸の中でも、骨材飛散の抑制及び耐水性の観点から、イソフタル酸及びテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
【0025】
3価以上6価以下の多価カルボン酸は、好ましくは3価カルボン酸である。3価以上6価以下の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、又はこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0026】
カルボン酸成分は、上記条件(i)を満たす場合、1価のカルボン酸を含む。
1価のカルボン酸としては、1価の脂肪族カルボン酸、1価の芳香族カルボン酸が挙げられる。これらの1価のカルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
1価の脂肪族カルボン酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の1価の飽和脂肪族カルボン酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の1価の不飽和脂肪族カルボン酸が挙げられる。
1価の芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、けい皮酸、ナフトエ酸等が挙げられる。
1価のカルボン酸は、好ましくは1価の芳香族カルボン酸、より好ましくは安息香酸である。
【0027】
(ポリエチレンテレフタレート由来の構成単位)
ポリエステルは、その原料としてポリエチレンテレフタレート(本明細書において「PET」という場合がある。)を含む。すなわち、ポリエステルはポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位及びテレフタル酸由来の構成単位を含む。
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール由来の構成単位及びテレフタル酸由来の構成単位の他にブタンジオールやイソフタル酸等の成分の構成単位を少量含有してもよい。
ポリエチレンテレフタレートは、回収されたポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
ポリエステルにおいて、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位とポリエチレンテレフタレート由来のテレフタル酸由来の構成単位とは、交互にエステル結合を介して結合している。
【0028】
ポリエステルの原料中のポリエチレンテレフタレートの含有量は、ポリエチレンテレフタレート、アルコール成分及びカルボン酸成分の合計量中、好ましくは5質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0029】
(アルコール成分由来の構成単位に対するカルボン酸成分由来の構成単位のモル比)
アルコール成分由来の構成単位に対するカルボン酸成分由来の構成単位のモル比〔カルボン酸成分/アルコール成分〕は、好ましくは0.7以上1.5以下であり、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上であり、そして、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下である。
【0030】
(好ましい各構成単位の含有量)
ポリエステルの好ましい態様において、耐久性の観点から、ポリエステルの原料であるアルコール成分は、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物由来の構成単位を含む。
上記アルコール成分中のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物は、アルコール成分100モル%中、好ましくは60モル%以上100モル%以下であり、より好ましくは75モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。
ポリエステルにおけるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物由来の構成単位の含有量は、アルコール成分由来の構成単位及びポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、好ましくは10モル%以上70モル%以下であり、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下である。
【0031】
ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位を含む。ポリエステルにおけるポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の含有量は、アルコール成分由来の構成単位及びポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、好ましくは50モル%以上80モル%以下であり、より好ましくは55モル%以上であり、そして、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは65モル%以下である。
【0032】
ポリエステルの原料であるカルボン酸成分は、好ましくは芳香族ジカルボン酸を含む。芳香族ジカルボン酸は、好ましくはテレフタル酸及びイソフタル酸であり、より好ましくはテレフタル酸である。
ポリエステルはテレフタル酸由来の構成単位を含む。テレフタル酸由来の構成単位は、原料のポリエチレンテレフタレートのみに由来するものであっても、原料のカルボン酸成分がテレフタル酸を含む場合であってもよい。
ポリエステルにおけるテレフタル酸由来の構成単位の含有量は、アスファルト中のアスファルテンとの相溶性を担保する観点から、アルコール成分由来の構成単位及びポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、好ましくは50モル%以上100モル%以下であり、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、そしてより好ましくは95モル%以下である。
また、ポリエステルにおけるテレフタル酸由来の構成単位の含有量は、同様の観点から、カルボン成分由来の構成単位及びポリエチレンテレフタレート由来のテレフタル酸由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、好ましくは50モル%以上100モル%以下であり、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、そしてより好ましくは95モル%以下である。
【0033】
ポリエステルにおけるポリエチレンテレフタレート由来のテレフタル酸由来の構成単位の含有量は、アルコール成分由来の構成単位及びポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、好ましくは50モル%以上80モル%以下であり、より好ましくは55モル%以上であり、そして、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは65モル%以下である。
【0034】
ポリエステルの原料は、カルボン酸成分として1価のカルボン酸及び/又はアルコール成分として1価のアルコールを含む。ポリエステルの原料は、1価のカルボン酸及びアルコール成分の両方を含んでも、いずれか一方のみを含んでもよい。好ましくは1価のカルボン酸又はアルコール成分、より好ましくは1価のカルボン酸を含む。
ポリエステル中の1価のカルボン酸由来の構成単位及び/又は前記1価のアルコール由来の構成単位の含有量は、アルコール成分由来の構成単位及びポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、5モル%以上20モル%以下であり、好ましくは6モル%以上、より好ましく7モル%以上であり、そして、好ましくは18モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。
アルコール成分が1価のアルコールを含む場合、ポリエステルにおける1価のアルコール由来の構成単位の含有量は、アルコール成分由来の構成単位及びポリエチレンテレフタレート由来のエチレングリコール由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、好ましくは5モル%以上20モル%以下であり、より好ましくは6モル%以上、更に好ましくは7モル%以上であり、そして、より好ましくは18モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。
カルボン酸成分が1価のカルボン酸を含む場合、ポリエステルにおける1価のカルボン酸由来の構成単位の含有量は、アルコール成分由来の構成単位及びポリエチレンテレフタレート由来のテレフタル酸由来の構成単位の合計含有量100モル%に対して、好ましくは0.1モル%以上20モル%以下であり、より好ましくは1モル%以上、更に好ましくは3モル%以上であり、そして、より好ましくは15モル%以下、更に好ましくは12モル%以下である。
【0035】
(ポリエステルの物性)
ポリエステルの軟化点は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは60℃以上120℃以下であり、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、より好ましくは115℃以下、更に好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
ポリエステルの重量平均分子量Mwは、同様の観点から、好ましくは3000以上25000以下であり、より好ましくは4000以上、更に好ましくは5000以上であり、そして、より好ましくは10000以下、更に好ましくは8000以下である。
【0036】
ポリエステル樹脂の軟化点、重量平均分子量Mw、酸価及び水酸基価は、実施例に記載の方法により測定することができる。なお、軟化点、重量平均分子量Mw、酸価及び水酸基価は、原料モノマー組成、分子量、触媒量又は反応条件により調整することができる。
【0037】
ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルは、具体的には、特開平11-133668号公報、特開平10-239903号公報、特開平8-20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルが挙げられる。好ましい変性されたポリエステル樹脂は、ポリエステルをポリイソシアネート化合物でウレタン伸長したウレタン変性ポリエステルが挙げられる。
【0038】
(ポリエステルの製造方法)
ポリエステルの製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、上述したポリエチレンテレフタレート、アルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合することにより製造することができる。
【0039】
ポリエチレンテレフタレート、アルコール成分及びカルボン酸の夫々の配合量は、アルコール成分由来の構成単位に対するカルボン酸成分由来の構成単位のモル比〔カルボン酸成分/アルコール成分〕が上述した数値範囲内になるような配合量である。
原料のポリエチレンテレフタレート、アルコール成分及びカルボン酸におけるポリエチレンテレフタレートの含有量は、原料の総量中、好ましくは5質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0040】
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応の際にポリエチレンテレフタレートを添加することで、エステル交換反応が起こり、ポリエチレンテレフタレートの構成単位がアルコール成分由来の構成単位及びカルボン酸成分由来の構成単位中に取り込まれたポリエステルを得ることができる。
ポリエチレンテレフタレートは、重縮合反応開始時から存在させていても、重縮合反応途中で反応系に添加してもよい。ポリエチレンテレフタレートの添加時期は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との反応率が10%以下の段階が好ましく、5%以下の段階がより好ましい。なお、反応率とは、生成反応水量(モル)/理論生成水量(モル)×100の値をいう。
【0041】
重縮合反応の温度は、特に限定されるものではないが、反応性の観点から、好ましくは160℃以上260℃以下であり、より好ましくは190℃以上、更に好ましくは200℃以上であり、そして、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0042】
重縮合反応には、反応速度の観点から、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)等のSn-C結合を有していない錫(II)化合物をエステル化触媒として使用することができる。エステル化触媒の使用量は、原料の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上1.5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、そして、より好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.6質量部以下である。
重縮合反応には、エステル化触媒に加えて、反応速度の観点から、没食子酸等のピロガロール化合物を助触媒として使用することができる。助触媒の使用量は、原料の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.15質量部以下であり、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上であり、そして、より好ましくは0.10質量部以下、更に好ましくは0.08質量部以下である。
重縮合反応には、触媒に加えて、4-tert-ブチルカテコール等の重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤の使用量は、原料の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.10質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、より好ましくは0.05質量部以下である。
【0043】
(アスファルト改質材中のポリエステルの含有量)
アスファルト改質材は、ポリエステルのみからなるものであっても、ポリエステルと他の成分を含むものであってもよい。
アスファルト改質材中のポリエステルの含有量は、アスファルト改質材の総質量中、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは85質量%以上である。
【0044】
本発明のアスファルト改質材は、例えばアスファルトと混合し、アスファルト組成物を得るために使用することができる。得られたアスファルト組成物に、加熱した骨材を添加して、アスファルト混合物とした後に、舗装に使用することができる。本発明のアスファルト改質材は、骨材を含むアスファルト混合物に配合するためのアスファルト改質材として好適に使用することができる。
【0045】
[アスファルト混合物]
本発明のアスファルト混合物は、上記アスファルト改質材と、アスファルトと、骨材と、含有する。本発明のアスファルト混合物は、上記アスファルト改質材、アスファルト及び骨材を配合してなるものであってよい。
【0046】
<アスファルト>
アスファルトとしては、種々のアスファルトが使用できる。例えば舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトの他、改質アスファルトが挙げられる。改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料で改質したポリマー改質アスファルト等が挙げられる。ストレートアスファルトとは、原油を常圧蒸留装置、減圧蒸留装置等にかけて得られる残留瀝青物質のことである。また、ブローンアスファルトとは、ストレートアスファルトと重質油との混合物を加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって得られるアスファルトを意味する。アスファルトは、ストレートアスファルト及びポリマー改質アスファルトから選択されることが好ましく、アスファルト舗装の耐久性の観点からはポリマー改質アスファルトがより好ましく、汎用性の観点からはストレートアスファルトがより好ましい。ポリマー改質アスファルトとしては、熱可塑性エラストマーで改質されたアスファルトがより好ましい。
改質アスファルトは、好ましくはポリマー改質アスファルトであり、より好ましくは熱可塑性エラストマーで改質したポリマー改質アスファルトである。
【0047】
(熱可塑性エラストマー)
熱可塑性エラストマーで改質したポリマー改質アスファルトにおける熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、イソブチレン/イソプレン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、上記以外の合成ゴム、及び天然ゴムから選択される少なくとも1種が挙げられる。改質アスファルトにおける熱可塑性エラストマーとしては、好ましくは、スチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体から選択される少なくとも1種である。
これらの中でも、熱可塑性エラストマーとしては、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくはスチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレンランダム共重合体及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体から選択される少なくとも1種、より好ましくはスチレン/ブタジエンブロック共重合体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/ブタジエンランダム共重合体、スチレン/イソプレンブロック共重合体及びスチレン/イソプレンランダム共重合体から選択される少なくとも1種、更に好ましくはスチレン/ブタジエンランダム共重合体及びスチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体から選択される少なくとも1種である。
ポリマー改質アスファルト中の熱可塑性エラストマーの含有量は、アスファルト舗装の耐久性及び表面美観の観点から、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、そして、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0048】
〔骨材〕
本発明のアスファルト混合物は、骨材を含むことができる。
具体的な骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、セラミックス等を任意に選択して用いることができる。また、骨材としては、粒径2.36mm以上の粗骨材、粒径0.075mm以上2.36mm未満の細骨材、粒径0.075mm未満のフィラーを使用することができる。
【0049】
粗骨材としては、例えば、粒径範囲2.36mm以上4.75mm未満の砕石、粒径範囲4.75mm以上12.5mm未満の砕石、粒径範囲12.5mm以上19mm未満の砕石、粒径範囲19mm以上31.5mm未満の砕石が挙げられる。
細骨材としては、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂が挙げられる。
粗骨材及び細骨材の粒径は、JIS A5001:2008に規定されるふるい分け試験方法に基づく値である。
フィラーとしては、砂、フライアッシュ、石灰石粉末等の炭酸カルシウム粉末、消石灰等が挙げられる。これらの中でも、アスファルト舗装の強度向上の観点から、炭酸カルシウム粉末が好ましい。
フィラーの平均粒径は、アスファルト舗装の強度向上の観点から、好ましくは0.001mm以上であり、そして、好ましくは0.05mm以下、より好ましくは0.03mm以下、更に好ましくは0.02mm以下である。
ここで、平均粒径とは、体積累積50%の平均粒径(D50)を意味し、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定することができる。
【0050】
骨材として、粗骨材と細骨材を併用することが好ましい。
この場合、粗骨材と細骨材との質量比率(粗骨材/細骨材)は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは10/90以上90/10以下であり、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは20/80以上であり、そして、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
【0051】
本発明のアスファルト混合物は、骨材としてアスファルト再生骨材を含むことができる。骨材が新規骨材を含まず、アスファルト再生骨材のみから構成されてもよい。
アスファルト再生骨材とは、使用済みのアスファルト舗装体を回収し、破砕及び分級したものである。
アスファルト再生骨材が由来する使用済みのアスファルト舗装体は、アスファルト及び骨材を含み、必要に応じて他の添加剤を含むことができる。
【0052】
なお、アスファルト再生骨材に含まれるアスファルトは、熱及び光等の環境因子の影響によって物理的及び化学的性状が、新規アスファルトと比較して劣化している。アスファルトの物理的及び化学的性状は、アスファルトの針入度、軟化点、曲げ強度、破断時歪み、アスファルト組成等を測定することで評価することができる。一般的には、アスファルト中のマルテン留分がアスファルテンに移行し、針入度が低下したアスファルトを劣化アスファルトと呼ぶことが多い。ただし、再生アスファルトの針入度が新規アスファルトの針入度と同等であったとしても、他の性状が変化することで新規アスファルトと同等の性能を発揮できないことがある。
【0053】
使用済みのアスファルト舗装体が由来するアスファルト混合物は、骨材を含む。このような骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、セラミックス等の道路舗装用アスファルト混合物に一般的に使用されている骨材が挙げられる。また、当該使用済みのアスファルト舗装体が由来するアスファルト混合物自体が、骨材としてアスファルト再生骨材を使用したものであってもよい。
【0054】
<各成分の含有量>
アスファルト混合物中のアスファルトの含有量は、耐久性とたわみ性を両立する観点から、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0055】
本発明において、骨材がアスファルト再生骨材を含む場合、アスファルトの含有量とは、アスファルト舗装に使用された経歴のないアスファルトである新規アスファルトとアスファルト再生骨材に含まれるアスファルトの合計含有量である。本発明ではアスファルト再生骨材に含まれるアスファルトは、新規アスファルトと区別するために再生骨材由来のアスファルトともいう。再生骨材由来のアスファルトは、劣化アスファルトという場合もある。
新規アスファルトの含有量は、耐久性とたわみ性を両立する観点から、アスファルト中、好ましくは50質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上であり、そして、より好ましくは70質量%以下である。再生骨材由来のアスファルトの含有量は、耐久性とたわみ性を両立する観点から、アスファルト中、好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上であり、そして、より好ましくは40質量%以下である。
アスファルト再生骨材中の再生骨材由来のアスファルトの含有量は、溶媒抽出法又は強熱減量法により測定することができる。通常、使用済みのアスファルト舗装に由来するアスファルト再生骨材に含まれるアスファルトの含有量は、概ね5.5質量%程度である。
本発明において再生骨材由来のアスファルトの含有量は、強熱減量測定であるAASHTO(American Association of State Highway and Transportation Officials;米国全州道路交通運輸行政官協会) T 308-10(2015)に規定される手法に従って行う。骨材としてアスファルト再生骨材を含むため、アスファルト再生骨材の強熱減量からアスファルト量を求めて、配合計算に用いる。
【0056】
アスファルト混合物中のアスファルト改質材の含有量は、アスファルト100質量部に対して、好ましくは3質量部以上30質量部以下であり、耐久性の観点から、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして、たわみ性を維持する観点から、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
【0057】
アスファルト混合物中の骨材の含有量は、耐久性とたわみ性を両立する観点から、好ましくは50質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、そして、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは96質量%以下である。
【0058】
本発明において、骨材がアスファルト再生骨材を含む場合、骨材の含有量とは、新規骨材とアスファルト再生骨材の合計含有量である。なお、骨材の含有量に再生骨材由来のアスファルトの含有量は算入する。
骨材が新規骨材とアスファルト再生骨材を含む場合、新規骨材の含有量は、アスファルト再生骨材の使用と優れた舗装物性を両立する観点から、新規骨材及びアスファルト再生骨材の合計含有量100質量部中、好ましくは40質量部以上80質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上であり、そして、より好ましくは75質量部以下である。アスファルト再生骨材の含有量は、アスファルト舗装の廃材を再利用する観点から、新規骨材及びアスファルト再生骨材の合計含有量100質量部中、好ましくは15質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは25質量部以上であり、アスファルト再生骨材の使用と優れた舗装物性を両立する観点から、より好ましくは50質量部以下である。
【0059】
アスファルト混合物における好適な骨材の配合例として、以下の(1)~(3)が挙げられる。(1)30容量%以上45容量%未満の粗骨材と、30容量%以上50容量%以下の細骨材と、5容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む細粒度アスファルト。(2)一例のアスファルト混合物は、例えば、45容量%以上70容量%未満の粗骨材と、20容量%以上45容量%以下の細骨材と、3容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む密粒度アスファルト。(3)70容量%以上80容量%以下の粗骨材と、10容量%以上20容量%以下の細骨材と、3容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含むポーラスアスファルト。
なお、従来の骨材とアスファルトを含むアスファルト混合物におけるアスファルトの配合割合については、通常、公益社団法人日本道路協会発行の「舗装設計施工指針」に記載されている「アスファルト組成物の配合設計」から求められる最適アスファルト量に従って用いられている。
本発明においては、上記の最適アスファルト量が、アスファルト及びアスファルト改質材の合計量に相当する。ただし、「舗装設計施工指針」に記載の方法に限定する必要はなく、他の方法によって決定してもよい。
【0060】
[アスファルト混合物の製造方法]
本発明のアスファルト混合物の製造方法は、上記アスファルト改質材とアスファルトと骨材とを加熱条件下で混合する工程を含む。
混合する工程は、アスファルト改質材、アスファルト及び骨材を同時に又は順不同で混合することができる。アスファルト舗装の耐久性及びたわみ性の観点から、好ましくは、上記、アスファルト改質材を、アスファルトと同時又はアスファルトの後に、骨材と混合する。
加熱条件下での混合は、加熱した骨材を使用する態様であることが好ましい。
アスファルト混合物が新規骨材とアスファルト再生骨材を含む場合、新規骨材とアスファルト再生骨材を、例えば上記含有量となるように、混合して使用することができる。
アスファルト混合物の具体的な製造方法としては、従来のプラントミックス方式、プレミックス方式等といわれるアスファルト混合物の製造方法が挙げられる。
いずれも加熱した骨材にアスファルトとアスファルト改質材を添加する方法である。プレミックス方式は、アスファルト及びアスファルト改質材を予め溶解させる添加方法である。プラントミックス法は、アスファルトを加熱した骨材に添加し、その後に上記アスファルト改質材を同時に又は順不同で投入する添加方法である。これらの中でも、アスファルト性能を発揮する観点から、プラントミックス方式が好ましい。
より具体的には、アスファルト混合物の製造方法は、当該混合する工程において、好ましくは、
(i)加熱した骨材に、アスファルトを添加及び混合して混合物を得た後、上記アスファルト改質材を添加及び混合する、
(ii)加熱した骨材に、アスファルト及び上記アスファルト改質材を同時に添加及び混合する、又は
(iii)加熱した骨材に、事前に加熱混合したアスファルト及び上記アスファルト改質材を添加及び混合する。
これらの中でも、当該混合する工程は、(i)の方法が好ましい。
【0061】
加熱温度は、十分な混合によって耐久性を向上させる観点から、好ましくは130℃以上350℃以下であり、より好ましくは140℃以上、さらに好ましくは145℃以上である。そして、性能安定性の観点から、好ましくは350℃以下、より好ましくは250℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
本発明のアスファルト混合物は、いわゆる中温領域での混合を行っても、優れた耐久性を有するアスファルト舗装が得られる。中温領域での混合条件は、好ましくは160℃以下である。
また、混合時間は特に限定されず、効率的にアスファルト中にアスファルト改質材を均一に分散させ、アスファルト性能を発揮する観点から、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上、更に好ましくは2分以上、より更に好ましくは5分以上であり、時間の上限は、特に限定されず、好ましくは約30分程度である。
【0062】
混合物を調製する方法は特に限定されないが、アスファルトを加熱溶融し、上記アスファルト改質材及び必要に応じて他の添加剤を添加し、通常用いられている混合機にて、各成分が均一に分散するまで撹拌混合する工程を含むことが好ましい。通常用いられている混合機としては、ホモミキサー、ディゾルバー、パドルミキサー、リボンミキサー、スクリューミキサー、プラネタリーミキサー、ドラムミキサー、二軸強制ミキサー、パグミルミキサー、真空逆流ミキサー、ロールミル、二軸押出機等が挙げられる。
【0063】
本発明のアスファルト混合物は、水を実質的に含まない加熱アスファルト混合物として使用してもよく、また、上記アスファルト混合物に乳化剤や水を配合してアスファルト乳剤とし、これに骨材等を配合し、常温アスファルト混合物として使用してもよい。本発明のアスファルト混合物は、好ましくは加熱アスファルトとして使用する。アスファルト混合物は、アスファルト性能を発揮する観点から、好ましくは水を実質的に含まない。
【0064】
アスファルト混合物を加熱アスファルト混合物として使用する場合のアスファルト混合物の製造方法については、特に制限はなく、いかなる方法で製造してもよいが、通常、骨材とアスファルト組成物とを含むアスファルト混合物の製造方法に準じて行えばよい。
【0065】
[舗装の施工方法]
本発明のアスファルト混合物は、舗装用として好適である。本発明の舗装の施工方法は、好ましくは、本発明のアスファルト混合物を道路、駐車場等の舗装対象に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する。アスファルト舗装材層は、通常は基層又は表層であり、耐久性の効果を発揮する観点から、好ましくは表層である。
【0066】
なお、道路舗装方法において、アスファルト混合物は、通常のアスファルト混合物と同様の施工機械編成で、同様の方法によって締固め施工すればよい。加熱アスファルト混合物として使用する場合のアスファルト混合物の締固め温度は、アスファルト性能を発揮する観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは170℃以下である。
【実施例0067】
各種物性については、以下の方法により、測定及び評価を行った。
なお、以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、部及び%は質量基準である。
【0068】
(1)ポリエステルの軟化点(Ts)
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0069】
(2)ポリエステルの分子量
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により重量平均分子量を求めた。
(i)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料をクロロホルムに、40℃で溶解させた。次いで、この溶液を孔径0.20μmのPTFEタイプメンブレンフィルター「DISMIC-25JP」(東洋濾紙株式会社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(ii)分子量測定 下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液200μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いた。括弧内は分子量を示す。
測定装置:「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「TSKgel Super HZM」+「TSKgel Super H-RC」×2本(東ソー株式会社製)
【0070】
製造例1~4、9~10(ポリエステルA1~A4、B2~B3)
表1に示すアルケニル無水コハク酸以外の原料を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて表1に示す量のジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)を添加し、マントルヒーター中で6時間かけて235℃まで昇温を行い235℃到達後5時間保持し、反応物からPET粒が消失したことを目視で確認後、180℃まで冷却した。180℃まで冷却後、アルケニル無水コハク酸を投入し、210℃まで2時間かけて昇温後210℃で1時間保持し、8.3kPaにて減圧反応を行った後、表1に示す軟化点に達するまで反応を行い、目的のポリエステルA1~A4、B2~B3を得た。
【0071】
製造例5~6(ポリエステルA5~A6)
表1に示すアルケニル無水コハク酸以外の原料を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて表1に示す量のジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)を添加し、マントルヒーター中で4時間かけて235℃まで昇温を行い235℃到達後5時間保持し、反応物からPET粒が消失したことを目視で確認後、180℃まで冷却した。180℃まで冷却後、アルケニル無水コハク酸を投入し、210℃まで2時間かけて昇温後210℃で1時間保持し、8.3kPaにて減圧反応を行った後、表1に示す軟化点に達するまで反応を行い、目的のポリエステルA5~A6を得た。
【0072】
製造例7(ポリエステルA7)
表1に示すアルケニル無水コハク酸以外の原料を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて表1に示す量のジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)を添加し、マントルヒーター中で6時間かけて235℃まで昇温を行い235℃到達後5時間保持し、反応物からPET粒が消失したことを目視で確認後、180℃まで冷却した。180℃まで冷却後、アルケニル無水コハク酸を投入し、210℃まで2時間かけて昇温後210℃で1時間保持し、8.3kPaにて減圧反応を行った後、表1に示す軟化点に達するまで反応を行い、目的のポリエステルA7を得た。
【0073】
製造例8(ポリエステルB1)
表1に示すアルケニル無水コハク酸以外の原料を、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて表1に示す量のジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)を添加し、マントルヒーター中で3時間かけて235℃まで昇温を行い235℃到達後5時間保持し、反応物からPET粒が消失したことを目視で確認後、180℃まで冷却した。180℃まで冷却後、アルケニル無水コハク酸を投入し、210℃まで2時間かけて昇温後210℃で1時間保持し、8.3kPaにて減圧反応を行った後、表1に示す軟化点に達するまで反応を行い、目的のポリエステルB1を得た。
【0074】
製造例11(ポリエステルB4)
表1に示す原料モノマーのうちアルコール成分およびテレフタル酸、ステアリン酸を温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、流下式コンデンサーおよび窒素導入管を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)及び没食子酸を加え、窒素雰囲気下にて4時間かけて235℃まで昇温を行い235℃で5時間保持した後、8.0kPaにて1時間減圧反応を行った。180℃まで冷却後、アルケニル無水コハク酸を投入し、210℃まで2時間かけて昇温後、210℃で1時間保持し、8.3kPaにて減圧し、表1に示す軟化点に達するまで反応を行い、目的のポリエステルB4を得た。
【0075】
【0076】
実施例1-1
150℃に加熱した骨材(骨材の組成は以下を参照)15kgをアスファルト用混合機に入れ、150℃にて60秒間混合した。次いでストレートアスファルト(60-80)(三菱商事エネルギー株式会社製)820gを加え、アスファルト用混合機にて1分間混合した。次いでポリエステルA1を82g加え、アスファルト用混合機にて2分間混合した。
得られたアスファルト混合物を速やかに300mm×300mm×50mmの型枠に充填し、ローラーコンパクター(株式会社岩田工業所製)を用い、温度150℃、荷重0.44kPaにて25回転圧処理を行い、150℃1時間熱養生をかけアスファルト供試体を作製した。また、アスファルト合材1.2kgを計量し、マーシャル試験つき固め機(株式会社ナカジマ技販製、「アスファルト自動つき固め装置」)で円柱状の供試体を作製した。供試体は常温まで徐冷し、脱型機により脱型を行った。
【0077】
<骨材の組成>
6号砕石 40.0質量部
7号砕石 13.0質量部
砕砂 10.0質量部
川砂 22.0質量部
山砂 10.0質量部
石粉(炭酸カルシウム)5.0質量部
通過質量%:
ふるい目 15 mm: 100 質量%
ふるい目 10 mm: 88.7質量%
ふるい目 5 mm: 60.5質量%
ふるい目 2.5 mm: 42.6質量%
ふるい目 1.2 mm: 29.9質量%
ふるい目 0.6 mm: 19.8質量%
ふるい目 0.3 mm: 11.5質量%
ふるい目 0.15mm: 6.2質量%
【0078】
[評価]
前記アスファルト供試体を下記の評価試験に供した。
<わだち掘れ量の測定(ホイールトラッキング試験)>
60℃恒温室にて5時間保温したアスファルト供試体を、ホイールトラッキング試験機(株式会社岩田工業所製、荷重1716N、鉄輪幅47mm、線圧291.5N/cm)を用いて、速度15回往復/分にて供試体上に車輪を往復させ、通過回数800往復回時の変位量を測定した。その他の測定条件は、公益社団法人日本道路協会出版の「舗装調査・試験法便覧」に記載される「B003ホイールトラッキング試験」に従った。
なお、ホイールトラッキング試験におけるわだち掘れ量は、アスファルト舗装の耐久性の指標である。
結果を表2に示す。
【0079】
<空隙率の測定>
脱型した円柱供試体の空隙率を、公益社団法人日本道路協会出版の「舗装調査・試験法便覧」に記載される「B008-1密粒度アスファルト混合物等の密度試験方法」に従って測定した。
なお、空隙率は作業性の指標である。空隙率が6.0%以上である場合、規格外となる。
結果を表2に示す。
【0080】
実施例1-2~1-7、比較例1-1~1-5
表2に示した配合に変更したこと以外、実施例1-1と同様にして、アスファルト供試体を調製し、わだち掘れ量及び空隙率を測定した。結果を表2に示す。
【0081】
【0082】
実施例2-1
150℃に加熱した骨材(骨材の組成は以下を参照)15kgをアスファルト用混合機に入れ、150℃にて60秒間混合した。次いでストレートアスファルト(80-100)(三菱商事エネルギー株式会社製)378g加え、アスファルト用混合機にて1分間混合した。次いでポリエステルA2を79g加え、アスファルト用混合機にて2分間混合した。
得られたアスファルト混合物を速やかに300×300×50mmの型枠に充填し、ローラーコンパクター(株式会社岩田工業所製)を用い、温度150℃、荷重0.44kPaにて25回転圧処理を行い、150℃1時間熱養生をかけアスファルト供試体を作製した。また、アスファルト合材1.2kgを計量し、マーシャル試験つき固め機(株式会社ナカジマ技販製、「アスファルト自動つき固め装置」)で円柱状の供試体を作製した。供試体は常温まで徐冷し、脱型機により脱型を行った。
【0083】
<骨材の組成>
6号砕石 30.0質量部
7号砕石 8.0質量部
砕砂 3.0質量部
川砂 6.0質量部
山砂 3.0質量部
アスファルト再生骨材 50.0質量部
【0084】
通過質量%:
ふるい目 15 mm: 100 質量%
ふるい目 10 mm: 82.9質量%
ふるい目 5 mm: 58.1質量%
ふるい目 2.5 mm: 39.8質量%
ふるい目 1.2 mm: 28.4質量%
ふるい目 0.6 mm: 15.9質量%
ふるい目 0.3 mm: 8.4質量%
ふるい目 0.15mm: 2.6質量%
【0085】
アスファルト再生骨材7.5kg中のアスファルトの含有量は、411gであった。アスファルト再生骨材が含むアスファルトの含有量は、AASHTO T 308-10(2015)に規定される手法に従って含有量を求めた。
従って、アスファルト混合物中の新規アスファルト及び再生骨材由来のアスファルトの合計含有量は789gであり、アスファルト混合物中のアスファルトの新規アスファルト及び再生骨材由来のアスファルトの合計量は5.0質量%であった。
アスファルト混合物中のポリエステル樹脂A2の含有量は、新規アスファルト及び再生骨材由来のアスファルトの合計含有量100質量部に対して10質量部であった。
【0086】
[評価]
前記アスファルト供試体を実施例1-1と同様にして、わだち掘れ量及び空隙率を測定した。結果を表3に示す。
【0087】
実施例2-2~2-3、比較例2-1~1-3
表2に示した配合に変更したこと以外、実施例2-1と同様にして、アスファルト供試体を調製し、わだち掘れ量及び空隙率を測定した。結果を表3に示す。
【0088】
【0089】
実施例1-1~1-7は比較例1-1~1-5と比較して、わだち掘れ量が大幅に低減しており、中温領域においても優れた耐久性を示すことがわかる。また、比較例1-2は比較例1-1と比較するとわだち掘れ量は低減しているが、空隙率が大幅に向上しており、作業性が大幅に悪化している。これに対して、実施例1-1~1-7は比較例1-1とほぼ同値で推移しており、作業性が良好であるといえる。
以上のことから、本発明により中温領域であっても優れた耐久性と作業性を両立することが可能である。アスファルト再生骨材を使用した配合である実施例2-1~2-3に関しても、同様の傾向であった。